h同境定理(h-cobordism theorem)とは、コンパクトな同境 $(W;M_0,M_1)$ で $W$、$M_0$、$M_1$ が単連結、$H_*(W,M_0;\mathbb{Z})=0$、$\dim W\ge6$ なら、$W$ は積 $M_0\times[0,1]$ と微分同相であるという Smale の定理である。単連結性のもとで、仮定 $H_*(W,M_0;\mathbb{Z})=0$ は両端の包含がホモトピー同値である($h$ 同境である)ことと同値である。証明は Morse 関数の臨界点(ハンドル)を 2 つずつ打ち消すもので、打ち消せるかどうかをハンドルの鎖複体の交点数の行列で判定し、Whitney のトリックで幾何的に実現する。単連結性を外すと成り立たず、$s$ 同境に強めれば成り立つ。帰結として高次元の Poincaré 予想が得られる。
前提知識: 同境, ハンドル分解, 相対ホモロジーと長完全列, 自由アーベル群
同境 $(W;M_0,M_1)$ が積 $M_0\times[0,1]$ なら、両端 $M_0$ と $M_1$ は微分同相である。では、$W$ が「ホモトピーの上では積と区別できない」とき、すなわち両端の包含 $M_0\to W$、$M_1\to W$ がともにホモトピー同値であるとき、$W$ は本当に積だろうか。このような同境を h 同境(h-cobordism)という。h同境定理(h-cobordism theorem)は、$W$ と両端が単連結で $\dim W\ge6$ なら、h 同境は積であると主張する。Smale(1962)の定理で、その帰結として 一般次元のPoincaré予想 や、円板の特徴づけが得られる。
証明の方針は、$W$ の ハンドル分解 からハンドルを 2 つずつ打ち消して、最後にハンドルを 1 つも残さないことである。どのハンドルを打ち消せるかは、ハンドルから作られる鎖複体の境界写像(交点数の行列)で代数的に判定でき、代数的に打ち消せるものを幾何的に打ち消すところで、単連結性と次元の条件、そして Whitney のトリックが使われる。この記事では、定理の正確な主張と証明の骨格を所在付きで述べ、そのうち代数の部分(基底の取り替えが基本変形の合成であること、非輪状な自由鎖複体の分解)と、h 同境の相対ホモロジーによる言い換え、次元の条件 $\dim W\ge6$ がどこで効くかを完全に証明する。
この記事では、多様体は Hausdorff かつ第 2 可算で、「滑らか」は $C^\infty$ 級を指す。同境の記法は 同境 の記事に従い、$(W;M_0,M_1)$ は $W$ がコンパクトで $\partial W=M_0\sqcup M_1$ となるものを表す。ホモロジーは整数係数の特異ホモロジーである。
同境 $(W;M_0,M_1)$ で、包含写像 $M_0\to W$ と $M_1\to W$ がどちらもホモトピー同値であるものを h 同境という。$M_0$ と $M_1$ の間に h 同境があるとき、$M_0$ と $M_1$ は h 同境である(h-cobordant)という。
積の同境 $M\times[0,1]$ は h 同境である。包含 $M\times\{0\}\to M\times[0,1]$ は、射影 $M\times[0,1]\to M$ をホモトピー逆写像にもつからである。h同境定理は、この逆がある条件のもとで成り立つことを主張する。
$(W;M_0,M_1)$ を同境とする。
1 を示す(2 はこの記事では証明しない。下の段落を見よ)。$i\colon M_0\to W$ はホモトピー同値なので、すべての $k$ で $i_*\colon H_k(M_0)\to H_k(W)$ は同型である(ホモトピー同値 の命題「基本群・ホモロジーへの帰結」)。対 $(W,M_0)$ の長完全列(相対ホモロジーと長完全列 の定理「対の長完全列」)
$$
H_k(M_0)\xrightarrow{i_*}H_k(W)\xrightarrow{j_*}H_k(W,M_0)\xrightarrow{\partial}H_{k-1}(M_0)\xrightarrow{i_*}H_{k-1}(W)
$$
で、左の $i_*$ は全射なので $j_*=0$ であり、$\partial$ は単射である。右の $i_*$ は単射なので $\partial$ の像は $0$ である。単射で像が $0$ なので $H_k(W,M_0)=0$ である($k=0$ では $H_{-1}=0$ とみればよい)。$M_1$ についても同じである。$\square$
2 は、相対 Hurewicz の定理で $\pi_k(W,M_0)=0$(すべての $k$)を導き、$(W,M_0)$ が三角形分割できることから $M_0$ が $W$ の強変形レトラクトであることを示す議論による(Mil65 p. 108、Kos93 Ch. VIII (5.1) Lemma、p. 156)。また、Poincaré–Lefschetz の双対性により $H_*(W,M_0)=0$ と $H_*(W,M_1)=0$ は同値である(Mil65 p. 107 の注意と Theorem 7.5、p. 90)。これらもこの記事では証明しない。
$(W;M_0,M_1)$ を同境とし、次を仮定する。
仮定 1 の単連結性を外すと、ホモトピー同値であるだけでは足りず、Whitehead 捩れという別の障害が現れる。仮定 3 の次元条件は、ハンドルを打ち消す議論で Whitney のトリックを使うためのものである。仮定 2 は、$(W;M_0,M_1)$ が h 同境であることから従う(prop-hcob-homology の 1)。
Mil65 Theorem 9.1(p. 107)は結論を「$W$ は $M_0\times[0,1]$ と微分同相」と書くが、証明は Theorem 7.8(p. 97)を経て、$W$ が積の同境(Definition 3.3、p. 21)であることを示している。積の同境としての微分同相写像 $G\colon W\to M_0\times[0,1]$ があれば、$g(x):=\mathrm{pr}_1(G(x))$ は $M_0$ の微分同相写像で、$F(x,t):=G^{-1}(g(x),t)$ は $F(x,0)=x$ をみたす。Kos93 Ch. VIII (4.3)(p. 153)も同じ定理を述べる。仮定 1・2 のもとで $(W;M_0,M_1)$ は h 同境なので(prop-hcob-homology の 2)、定理は「単連結な h 同境は、次元が $6$ 以上なら積である」と言い換えられる。
$M_0$、$M_1$ を次元 $5$ 以上の単連結な閉多様体とする。$M_0$ と $M_1$ が h 同境なら、$M_0$ と $M_1$ は微分同相である。
h 同境 $(W;M_0,M_1)$ をとる。包含 $M_0\to W$ はホモトピー同値なので $\pi_1(W)\cong\pi_1(M_0)=1$ であり、同様に $\pi_1(M_1)\cong\pi_1(W)=1$ である(ホモトピー同値 の命題「基本群・ホモロジーへの帰結」)。$M_0$ は連結なので $W$ も連結である。prop-hcob-homology の 1 により $H_*(W,M_0)=0$ で、$\dim W=\dim M_0+1\ge6$ である。thm-hcob-main の $F$ について、$x\mapsto F(x,1)$ は $M_0$ から $M_1$ への微分同相写像である。$\square$
これは Mil65 Theorem 9.2(p. 108)である。
$f\colon W\to[0,1]$ を $f^{-1}(0)=M_0$、$f^{-1}(1)=M_1$ で臨界点がすべて内部にあって非退化な関数(同境の Morse 関数、Mil65 Definition 2.3、p. 8)とし、$\xi$ をその勾配的なベクトル場(Definition 3.1・Lemma 3.2、p. 20)とする。そのような $f$ は必ず存在する(Theorem 2.5、p. 9)。臨界点 $p$ を越えるとハンドルが付く(ハンドル分解 の定理「臨界点を越える」、Mil65 Theorem 3.13、p. 31)。$p$ のすぐ下の等位面で、$\xi$ の流れで $p$ に流れ込む点の集合が $p$ のハンドルの貼り付け球面、すぐ上の等位面で $p$ から流れ出る点の集合が帯球面である(Milnor の用語では left-hand sphere、right-hand sphere、Definition 3.9、p. 28)。
各臨界点 $p$ で $f(p)$ が $p$ の指数に等しいとき、$f$ は自己指数的であるという。どの同境にも、指数を変えずに自己指数的な Morse 関数がある(Mil65 Theorem 4.8・Definition 4.9、p. 44)。以下、$f$ は自己指数的とし、$W_\lambda:=f^{-1}([0,\lambda+\frac12])$、$W_{-1}:=f^{-1}([0,\frac12])$ とおく。
$C_\lambda:=H_\lambda(W_\lambda,W_{\lambda-1})$ とし、$\partial\colon C_{\lambda+1}\to C_\lambda$ を三対 $(W_{\lambda+1},W_\lambda,W_{\lambda-1})$ の長完全列の連結準同型とする。$(C_*,\partial)$ を $f$ のハンドルの鎖複体という。
次の事実はこの記事では証明しない。$C_\lambda$ は指数 $\lambda$ の臨界点の個数を階数とする自由アーベル群で、各臨界点のハンドルの芯(向きを選ぶ)の類が基底をなす(Mil65 p. 86)。$\partial$ はこの基底について、等位面 $f^{-1}(\lambda+\frac12)$ の中の、指数 $\lambda$ の点の帯球面と指数 $\lambda+1$ の点の貼り付け球面の交点数(横断的な交点の符号の和、Definition 6.1、pp. 67–68)を成分とする行列で表される(Corollary 7.3、p. 87)。そして $\partial\circ\partial=0$ で、$H_*(C_*)\cong H_*(W,M_0)$ である(Theorem 7.4、p. 90)。これは各ハンドルを胞体とみたときの胞体ホモロジーにあたる(ハンドル分解 の補題「ハンドルの相対ホモロジー」が 1 つのハンドルの場合である)。
証明で使う幾何的な定理を挙げる(どれも Mil65 による。この記事では証明しない)。
$C$ を階数 $k$ の自由アーベル群とし、$(a_1,\dots,a_k)$ と $(b_1,\dots,b_k)$ をその基底とする。基底 $(c_1,\dots,c_k)$ に対する次の 2 つの操作を有限回くり返して、$(a_i)$ から $(b_i)$ に移ることができる。
現在の基底 $(c_j)$ について $b_i=\sum_jQ_{ij}c_j$ と書き、整数行列 $Q=(Q_{ij})$ を考える。はじめ $(c_j)=(a_j)$ で、$(b_i)$ と $(a_j)$ はどちらも基底なので $Q$ は整数行列の逆行列をもち、$\det Q=\pm1$ である(自由アーベル群 の命題「行列式による基底の判定」)。$Q$ が単位行列になれば $(c_j)=(b_j)$ なので、$Q$ を単位行列にすればよい。
操作と $Q$ の変化.(E1) で $c_i'=c_i+\varepsilon c_j$ とすると $c_i=c_i'-\varepsilon c_j$ なので、$Q$ の第 $j$ 列が「第 $j$ 列 $-\varepsilon\cdot$ 第 $i$ 列」に変わり、ほかの列は変わらない。(E2) は第 $i$ 列の符号を変える。$i,j,\varepsilon$ は任意なので、次の列の基本変形が使える:(C1) ある列に別の列の $\pm1$ 倍を足す、(C2) ある列の符号を変える。どちらも $\lvert\det Q\rvert=1$ を保つ。
$\det Q=\pm1$ の整数行列が (C1)(C2) で単位行列にできることを $k$ に関する帰納法で示す。$k=1$ なら $Q=(\pm1)$ で、(C2) で $(1)$ にできる。$k\ge2$ とする。
段 1(第 1 行を $(1,0,\dots,0)$ にする).第 1 行の成分 $Q_{11},\dots,Q_{1k}$ の生成する $\mathbb{Z}$ の部分群を $d\mathbb{Z}$($d\ge0$)とする。第 1 行で余因子展開すると $\pm1=\det Q=\sum_jQ_{1j}\tilde Q_{1j}$ なので $d=1$ である。(C1)(C2) は第 1 行の成分の生成する部分群を変えない。第 1 行に $0$ でない成分が 2 つ以上あるあいだ、そのうち $\lvert Q_{1i}\rvert\ge\lvert Q_{1j}\rvert$ となる 2 つを選び、第 $i$ 列に第 $j$ 列の $\mp1$ 倍を足して $\lvert Q_{1i}\rvert$ を $\lvert Q_{1i}\rvert-\lvert Q_{1j}\rvert$ に減らす。$\sum_l\lvert Q_{1l}\rvert$ は正の整数で真に減るので、この手続きは有限回で止まり、第 1 行の $0$ でない成分はただ 1 つになる。その値 $e$ は部分群 $e\mathbb{Z}=\mathbb{Z}$ を生成するので $e=\pm1$ である。それが第 $i$ 列($i\ne1$)にあれば、第 1 列に第 $i$ 列を足し($Q_{11}$ が $e$ になる)、第 $i$ 列から第 1 列の $1$ 倍を引く($Q_{1i}$ が $0$ になる)。最後に必要なら (C2) で $Q_{11}=1$ にする。
段 2(帰納法).いま $Q=\begin{pmatrix}1&0\\v&Q'\end{pmatrix}$($v\in\mathbb{Z}^{k-1}$、$Q'$ は $(k-1)$ 次)で、$\det Q'=\det Q=\pm1$ である。第 $2$ 列から第 $k$ 列のあいだの (C1)(C2) は第 1 行の $0$ を保ち、$Q'$ に列の基本変形として働き、第 1 列を変えない。帰納法の仮定により $Q'$ を単位行列にできる。
段 3(第 1 列を掃き出す).このとき第 $(l+1)$ 列は第 $(l+1)$ 成分だけが $1$ の単位ベクトルなので、第 1 列から第 $(l+1)$ 列を $v_l$ 回($v_l< 0$ なら $-v_l$ 回足す)引けば第 1 列の第 $(l+1)$ 成分が $0$ になり、ほかの成分は変わらない。$l=1,\dots,k-1$ について行えば $Q$ は単位行列になる。$\square$
$(C_*,\partial)$ を有限生成の自由アーベル群の鎖複体で、$H_*(C_*)=0$、$k< \lambda$ で $C_k=0$、$C_\lambda\ne0$ とする。$(a_1,\dots,a_m)$ を $C_\lambda$ の基底とすると、$\partial\colon C_{\lambda+1}\to C_\lambda$ は全射で、$C_{\lambda+1}$ の基底 $(b_1,\dots,b_r)$ で
$$
\partial b_i=a_i\quad(1\le i\le m),\qquad\partial b_i=0\quad(m< i\le r)
$$
となるものがある。とくに $C_{\lambda+1}\ne0$ である。
$C_{\lambda-1}=0$ なので $C_\lambda$ のすべての元は輪体であり、$0=H_\lambda(C_*)=C_\lambda/\partial(C_{\lambda+1})$ から $\partial$ は全射である。自由アーベル群 の命題「自由アーベル群への全射は分裂する」により、準同型 $s\colon C_\lambda\to C_{\lambda+1}$ で $\partial\circ s=\mathrm{id}$、$C_{\lambda+1}=\ker\partial\oplus s(C_\lambda)$ となるものがある。$\ker\partial$ は有限階数の自由アーベル群の部分群なので自由で有限階数である(同記事の命題「有限階数の自由アーベル群の部分群」)。その基底を $z_1,\dots,z_{r-m}$ とし、$b_i:=s(a_i)$($i\le m$)、$b_{m+j}:=z_j$ とおけば、直和の基底の和として $(b_i)$ は $C_{\lambda+1}$ の基底で、求める性質をもつ。$C_\lambda\ne0$ なので $m\ge1$ で、$b_1\ne0$ である。$\square$
証明は、臨界点の個数を減らしていき、最後に臨界点のない Morse 関数を得ることである。臨界点がなければ $W$ は積である(Mil65 Theorem 3.4、p. 21。ハンドル分解 の定理「臨界点のない区間」の境界付きの版で、勾配的なベクトル場を $\xi f=1$ に正規化して流すと、$M_0$ の各点から出る流線が時刻 $1$ でちょうど $M_1$ に着き、$F(x,t)$ を時刻 $t$ での位置とすればよい)。
段 1(指数を $2$ 以上 $n-2$ 以下にする).$f$ を自己指数的な Morse 関数とする。$H_0(W,M_0)=0$ で、$W$ と $M_0$ は単連結、$n\ge5$ なので、(G5) により指数 $0$ と $1$ の臨界点をなくせる(指数 $1$ の点は指数 $3$ の点に替わる)。次に $-f$ を同境 $(W;M_1,M_0)$ の Morse 関数とみる。指数 $\lambda$ の臨界点は $-f$ の指数 $n-\lambda$ の臨界点である(Morse関数 の命題「指数と極値」の 2 と同じ計算)。$H_*(W,M_1)=0$(prop-hcob-homology の後の段落の双対性)で、$M_1$ も単連結なので、$-f$ に (G5) を使えば、$f$ の指数 $n$ と $n-1$ の臨界点をなくせる($f$ の指数 $n-1$ の点は指数 $n-3$ の点に替わる)。$n\ge5$ なので $n-3\ge2$ であり、段 1 の途中で指数 $0,1$ の点が再び現れることはない。以上で、$f$ のすべての臨界点の指数は $2\le\lambda\le n-2$ にある(Mil65 p. 107 の証明はこの形である)。最後に、指数を変えずに自己指数的な Morse 関数に取り替える(Mil65 Theorem 4.8、p. 44)。
段 2(帰納法の設定).臨界点の個数 $N$ に関する帰納法で示す。$N=0$ なら上の段落により $W$ は積である。$N>0$ とし、臨界点の最小の指数を $\lambda$ とする。ハンドルの鎖複体 $C_*$ は $\lambda\le k\le n-2$ の範囲でだけ $0$ でなく、$H_*(C_*)\cong H_*(W,M_0)=0$ である(Theorem 7.4)。
段 3(基底を選ぶ).$C_\lambda$ の基底として、指数 $\lambda$ の臨界点 $p_1,\dots,p_m$ の芯の類 $a_1,\dots,a_m$ をとる。lem-hcob-split により $C_{\lambda+1}\ne0$ で、$C_{\lambda+1}$ の基底 $(b_i)$ で $\partial b_1=a_1$ となるものがある。$C_{\lambda+1}\ne0$ なので $\lambda+1\le n-2$ で、$2\le\lambda+1\le n-2$ なので、指数 $\lambda+1$ の臨界点だけを含む部分の同境 $f^{-1}([\lambda+\frac12,\lambda+\frac32])$ に (G4) を使える(この部分は連結である。等位面は、連結な $M_0$ から、指数が $2$ 以上 $n-2$ 以下の臨界点を越えるたびに余次元 $2$ 以上の球面に沿った手術を受けるだけなので連結で、部分の同境の各点は勾配的なベクトル場に沿って下の等位面か指数 $\lambda+1$ の臨界点の下向きの円板を通って下の等位面につながる。Mil65 p. 98 も 7.6 をこの部分に使っている)。$f$ と $\xi$ をその部分の中で変えて、指数 $\lambda+1$ の臨界点 $q_1,\dots,q_r$ の芯の類がちょうど $(b_i)$ になるようにできる。$\partial$ の行列の成分は交点数なので、$\partial b_1=a_1$ は、等位面 $f^{-1}(\lambda+\frac12)$ の中で $p_1$ の帯球面と $q_1$ の貼り付け球面の交点数が $1$、$p_i$($i\ge2$)の帯球面と $q_1$ の貼り付け球面の交点数が $0$ であることを意味する。
段 4(次元の数え上げ).$p_1$ と $q_1$ に (G3) が使えることを確かめる。$\lambda\ge2$ はすでにわかっている。
この証明は、Mil65 Theorem 7.8 の証明(pp. 97–99)を、最小の指数についての帰納法に並べ直したものである。段 4 で、$n=5$ なら $\lambda=2$、$\lambda+1=3=n-2$ のとき、6.4 の条件 $\lambda+1\le n-3=2$ も 6.5 の条件 $\lambda\ge3$ もみたされない。これが $n\ge6$ を仮定する理由である。このとき等位面は $4$ 次元で、$p_1$ の帯球面($n-\lambda-1=2$ 次元)と $q_1$ の貼り付け球面($\lambda=2$ 次元)の交わりを Whitney のトリックで整理する必要があるが、(G2) の条件 $r+s\ge5$ がみたされない。
2 は h同境定理の最も重要な使い方で、Mil65 §9 の Proposition A(p. 108)、Kos93 Ch. VIII (4.5)(p. 154)にあたる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $H_*(W,M_0)=0$ | $n\ge6$、$W=(S^{n-1}\times[0,1])\#(S^2\times S^{n-2})$ | $W$ は積 |
| 単連結 | $L(7,1)\times S^4$ と $L(7,2)\times S^4$ を結ぶ h 同境 | 両端は微分同相 |
| h 同境を s 同境に強める(単純ホモトピー同値) | 上の行の h 同境(Whitehead の捩れが $0$ でない) | 単連結でなくても積 |
| $\dim W\ge6$ | 単連結な滑らかな 4 次元多様体を結ぶ 5 次元の h 同境(Donaldson) | 両端は微分同相 |
1 行目:$M:=S^{n-1}\times[0,1]$ の内部の点と $N:=S^2\times S^{n-2}$ の点のまわりで連結和をとったもの $W$ は、$S^{n-1}\times\{0\}$ から $S^{n-1}\times\{1\}$ への同境で、単連結である。しかし $H_2(W,M_0)\ne0$ なので、prop-hcob-homology の 1 により h 同境でなく、積でもない(積なら $H_*(W,M_0)=0$)。両端はどちらも $S^{n-1}$ で微分同相なので、破れるのは「$W$ は積」という結論のほうである。満たす性質は「単連結」「$\dim W\ge6$」、破る仮定は 2 である。
$M_f$、$N_g$ を円板の内部を除いたものとする。$M$ は $M_f$ と円板の和で、共通部分は $S^{n-1}\times$(区間)とホモトピー同値で $n-1\ge2$ なので単連結である。Van Kampenの定理 の系「単連結性の判定」の議論(開近傍に太らせて使う)から $\pi_1(M_f)\cong\pi_1(M)=1$、同様に $\pi_1(N_g)\cong\pi_1(N)=1$ で、$W=M_f\cup N_g$ も単連結である。ホモロジーについて、対 $(N,N_g)$ の相対ホモロジーは切除により $H_k(D^n,S^{n-1})$ と同型で $k=n$ でだけ $0$ でないので、$n\ge5$ なら長完全列から $H_2(N_g)\cong H_2(N)$ である。$S^2$ は $S^2\times S^{n-2}$ のレトラクト($x\mapsto(x,y_0)$ と射影)なので $H_2(N)\ne0$ である。$W=M_f\cup N_g$ の Mayer–Vietoris完全列 で共通部分は $S^{n-1}$ とホモトピー同値で $H_2(S^{n-1})=H_1(S^{n-1})=0$ なので、$H_2(W)\cong H_2(M_f)\oplus H_2(N_g)\ne0$ である。$H_2(M_0)=H_1(M_0)=0$($M_0=S^{n-1}$、$n-1\ge5$)なので、対 $(W,M_0)$ の長完全列から $H_2(W,M_0)\cong H_2(W)\ne0$ である。
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