Nisnevich位相

同義語:Nisnevich topology

概要

Nisnevich位相(Nisnevich topology)とは、スキーム $X$ への有限個のエタール射の族で、$X$ の各点の上に剰余体を変えない点をもつものを被覆とする Grothendieck 位相であり、Zariski 位相より細かくエタール位相より粗い。Nisnevich 層は、開埋め込みとエタール射からなる基本的な区別された正方形を集合のデカルト正方形に写し、逆に空なスキームでの値が一点である前層はこの性質から層になる。局所環が Hensel であることは、そのスペクトルのどの Nisnevich 被覆も切断をもつことと同値であり、Hensel 化が Nisnevich 位相の点の役割を果たす。$\mathbb A^1$ ホモトピー論や代数的 K 理論の降下の基礎になる位相である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: エタール射, エタール位相, Grothendieck位相, 剰余体, Hensel局所環

Nisnevich 位相は、エタール射の族のうち「各点の上に、剰余体を変えない点がある」ものを被覆とする、スキームの圏の上の Grothendieck位相 である。Y. Nisnevich が導入した。Zariski位相より細かく、エタール位相より粗い。エタール射を「開集合」として使うので、Zariski 位相では見えない局所的な分岐を扱えるが、剰余体の拡大は許さないので、体のスペクトルは Nisnevich 位相では分解されない。この中間の性質のために、代数的K理論の降下や A¹ホモトピー論の構成の基礎の位相として使われる。
主定理は二つある。一つは、Nisnevich 位相の層の条件が「基本的な区別された正方形」と呼ばれる 2 項の被覆で判定できることで、層からその正方形の条件が従う向きをこの記事で証明する(thm-nis-square-sheaf)。もう一つは、Hensel 局所環のスペクトルの Nisnevich 被覆が必ず切断をもち、この性質が Hensel 性を特徴づけることである(thm-nis-henselian)。後者が、Nisnevich 位相の点が Hensel 化であることの理由になる。

定義

Nisnevich 被覆

スキーム $X$ への有限個のエタール射の族 $\{p_i\colon U_i\to X\}_{i\in I}$ が Nisnevich 被覆であるとは、$X$ の各点 $x$ について、ある $i$ と $U_i$ の点 $u$ で $p_i(u)=x$ かつ剰余体の射 $\kappa(x)\to\kappa(u)$ が同型になるものが存在することをいう。

条件から $\coprod_iU_i\to X$ は全射なので、Nisnevich 被覆はエタール被覆(エタール位相 の定義「エタール被覆」)である。
$S$ を Noether で有限 Krull 次元のスキームとし、$\mathrm{Sm}/S$ を $S$ 上滑らかな有限型スキームの圏とする(滑らかな射、有限型射)。$\mathrm{Sm}/S$ の対象への $\mathrm{Sm}/S$ の射からなるエタールな族で Nisnevich 被覆であるものを被覆として、Nisnevich 位相を定める。これが Grothendieck 位相の公理を満たすことを次に示す。この景を $(\mathrm{Sm}/S)_{\mathrm{Nis}}$ と書き、その上の層を Nisnevich 層という。この定義は MV99 §3 Proposition 1.1・Definition 1.2(pp. 95–96)による。同 Proposition 1.1 は、被覆の条件が「各点 $x$ で $\coprod_iU_i\times_X\operatorname{Spec}\mathcal O^h_{X,x}\to\operatorname{Spec}\mathcal O^h_{X,x}$ が切断をもつ」こと($\mathcal O^h_{X,x}$ は局所環の Hensel 化)と同値であることを述べる。

Nisnevich 被覆は Grothendieck 位相をなす

$\mathrm{Sm}/S$ の Nisnevich 被覆の全体は、Grothendieck位相 の定義「Grothendieck位相」の 3 条件(同型・合成・底変換)を満たす。

$\mathrm{Sm}/S$ は一般のファイバー積をもたないが、$U\to X$ がエタールで $Y\to X$ が $\mathrm{Sm}/S$ の射なら、$U\times_XY\to Y$ はエタール(Stacks Lemma 29.37.4、Tag 02GO)で、$Y$ が $S$ 上滑らかなので $U\times_XY$ も $S$ 上滑らかかつ有限型であり、$\mathrm{Sm}/S$ に入る。したがって 3 条件は意味をもつ。
(同型)同型はエタールで、各点の逆像は同じ剰余体をもつ。
(合成)$\{U_i\to X\}$ と各 $i$ の $\{V_{ij}\to U_i\}$ を Nisnevich 被覆とする。エタール射の合成はエタールである(Stacks Lemma 29.37.3、Tag 02GN)。$x\in X$ について $u\in U_i$ を $\kappa(x)\cong\kappa(u)$ ととり、$u$ について $v\in V_{ij}$ を $\kappa(u)\cong\kappa(v)$ ととれば、合成 $\kappa(x)\to\kappa(v)$ は同型である。族は有限のままである。
(底変換)$\{U_i\to X\}$ を Nisnevich 被覆、$Y\to X$ を射とする。$y\in Y$ の像を $x$ とし、$u\in U_i$ を $\kappa(x)\cong\kappa(u)$ ととる。$\operatorname{Spec}\kappa(y)\to\operatorname{Spec}\kappa(x)\cong\operatorname{Spec}\kappa(u)\to U_i$ と $\operatorname{Spec}\kappa(y)\to Y$ は $X$ 上で一致するので、射 $g\colon\operatorname{Spec}\kappa(y)\to U_i\times_XY$ が定まる。$g$ の像の点を $w$ とすると、$w$ は $y$ の上にあり、$g$ は体の射 $\kappa(w)\to\kappa(y)$ を与え、$\kappa(y)\to\kappa(w)\to\kappa(y)$ は恒等写像である。体の射は単射なので $\kappa(y)\to\kappa(w)$ は全射でもあり、同型である。よって $\{U_i\times_XY\to Y\}$ は Nisnevich 被覆である。$\square$

Zariski 位相・エタール位相との比較

有限個の開集合による開被覆は Nisnevich 被覆である。開埋め込みはエタールで、点の剰余体を変えないからである。$\mathrm{Sm}/S$ の対象は準コンパクトなので、開被覆は有限部分被覆をもつ。また上で見たように Nisnevich 被覆はエタール被覆である。どちらの包含も真である。

エタールだが Nisnevich でない被覆

$\{\operatorname{Spec}\mathbb C\to\operatorname{Spec}\mathbb R\}$ は全射なエタール射一つからなるエタール被覆だが、$\operatorname{Spec}\mathbb R$ のただ一つの点の上の点の剰余体は $\mathbb C\neq\mathbb R$ なので、Nisnevich 被覆でない。より一般に、体 $K$ のスペクトルの Nisnevich 被覆は、ある $U_i$ が剰余体 $K$ の点をもつので、エタールな $K$ スキームの分解(Stacks Lemma 29.37.7、Tag 02GL)により $U_i$ の連結成分として $\operatorname{Spec}K$ を含み、切断をもつ。

Zariski 被覆で細分できない Nisnevich 被覆

$k$ を標数 $2$ でない体、$X=\mathbb A^1_k=\operatorname{Spec}k[t]$ とする。$U:=X\setminus\{1\}$、$V:=\mathbb G_m\setminus\{-1\}=\operatorname{Spec}k[s,s^{-1},(s+1)^{-1}]$ とし、$p\colon V\to X$ を $t\mapsto s^2$ で定める。$\{U\hookrightarrow X,\ p\}$ は Nisnevich 被覆だが、どの開被覆もこれを細分しない(開被覆の各開集合が $U$ か $V$ を経由することはない)。

$k[s]$ は $k[t]=k[s^2]$ 上 $1,s$ を基底とする自由加群で、$V$ はその局所化のスペクトルなので、$p$ は平坦で有限型である。相対微分加群 $\Omega_{V/X}$ は $ds$ で生成され、$d(s^2)=2s\,ds=0$ で $2s$ は $V$ 上の単数なので $\Omega_{V/X}=0$、すなわち $p$ は不分岐であり、エタールである(エタール射)。$U$ の点は $U$ 自身が覆う。点 $1$ の上の $V$ の点は $s^2=1$、$s\neq-1$ より $s=1$ だけで、剰余体は $k$ である。よって Nisnevich 被覆である。
開被覆 $\{W_\lambda\}$ がこれを細分するとし、$1\in W_\lambda$ とする。$1\notin U$ なので $W_\lambda\to X$ は $V$ を経由し、$X$ 上の射 $W_\lambda\to V$ は $W_\lambda$ 上の正則関数 $s$ で $s^2=t$ となるものを与える。すると $t$ は有理関数体 $k(t)$ の中で平方になるが、$t$ の $t=0$ での位数は $1$ で奇数なので不可能である。$\square$

基本的な区別された正方形

基本的な区別された正方形

$\mathrm{Sm}/S$ のデカルト正方形
$$ \begin{array}{ccc} U\times_XV & \longrightarrow & V\\ \downarrow & & \downarrow{\scriptstyle p}\\ U & \xrightarrow{\ j\ } & X \end{array} $$
で、$j$ が開埋め込み、$p$ がエタール射であり、$Z:=X\setminus j(U)$ に被約な閉部分スキームの構造を入れたとき $p^{-1}(Z)_{\mathrm{red}}\to Z$ が同型であるものを、基本的な区別された正方形(elementary distinguished square)という(MV99 §3 Definition 1.3、p. 96)。

ex-nis-not-zariski の $U,V$ は基本的な区別された正方形をなす($Z=\{1\}$、$p^{-1}(Z)=\{1\}$)。

区別された正方形は被覆である

基本的な区別された正方形について、$\{j\colon U\to X,\ p\colon V\to X\}$ は Nisnevich 被覆である。

$x\in j(U)$ なら $U$ の点 $x$ が同じ剰余体をもつ。$x\in Z$ なら、$p^{-1}(Z)_{\mathrm{red}}\to Z$ が同型なので $x$ の上の $V$ の点はただ一つの点 $v$ で、被約な閉部分スキームの点の剰余体はもとの点の剰余体と同じだから、$\kappa(x)\to\kappa(v)$ は同型である。$\square$

主定理 1:区別された正方形での層の条件

層は区別された正方形をデカルトにする

$F$ を $(\mathrm{Sm}/S)_{\mathrm{Nis}}$ 上の Nisnevich 層とする。任意の基本的な区別された正方形について、
$$ F(X)\longrightarrow F(U)\times_{F(U\times_XV)}F(V),\qquad s\longmapsto(j^*s,\ p^*s) $$
は全単射である。すなわち $F$ を施した集合の正方形はデカルトである。

prop-nis-square-covering により $\{U\to X,V\to X\}$ は Nisnevich 被覆である。単射性は層の条件(切断は被覆への制限で決まる)からわかる。全射性を示す。$a\in F(U)$、$b\in F(V)$ が $U\times_XV$ への制限で一致するとする。層の条件により、$a,b$ が四つの重なり $U\times_XU$、$U\times_XV$、$V\times_XU$、$V\times_XV$ の上で両立すれば、$a,b$ を制限にもつ $s\in F(X)$ が存在する。$j$ は開埋め込みでモノ射なので $U\times_XU=U$ で、そこでは両立は自明である。$U\times_XV$ と $V\times_XU$ での両立は仮定である。残るのは、$V\times_XV$ の二つの射影 $\mathrm{pr}_1,\mathrm{pr}_2$ について $\mathrm{pr}_1^*b=\mathrm{pr}_2^*b$ を示すことである。
$p$ はエタールなので不分岐であり(Stacks Lemma 29.37.5、Tag 02GK)、対角射 $\Delta\colon V\to V\times_XV$ は開埋め込みである(Stacks Lemma 29.36.13、Tag 02GE)。$V_U:=U\times_XV$ とおき、$V\times_XV$ の開集合 $W:=V_U\times_UV_U$($U$ の上にある部分)をとる。$\Delta(V)$ と $W$ は $V\times_XV$ を覆う。実際、$U$ の上にない点 $t$ は $z\in Z$ の上にあり、二つの射影の像はどちらも $z$ の上のただ一つの点 $v$ である。$V\times_XV$ の点で $(v,v)$ の上にあるものは $\operatorname{Spec}(\kappa(v)\otimes_{\kappa(z)}\kappa(v))=\operatorname{Spec}\kappa(v)$ の点、すなわち一つだけで、それは $\Delta(v)$ だから、$t=\Delta(v)$ である。
$\{\Delta(V),W\}$ は開被覆、したがって Nisnevich 被覆なので、$\mathrm{pr}_1^*b$ と $\mathrm{pr}_2^*b$ が両方の上で一致することを見ればよい。$\Delta(V)$ の上では $\mathrm{pr}_i\circ\Delta=\mathrm{id}_V$ なので、どちらも $b$ である。$W$ の上では、$q\colon V_U\to U$ を射影、$\mathrm{pr}'_i\colon W\to V_U$ を射影とすると、$b|_{V_U}=q^*a$(仮定)なので
$$ \mathrm{pr}_i^*b\,\big|_W=\mathrm{pr}_i'^*\bigl(b|_{V_U}\bigr)=\mathrm{pr}_i'^*q^*a=(q\circ\mathrm{pr}'_i)^*a $$
であり、$W$ は $U$ 上のファイバー積なので $q\circ\mathrm{pr}'_1=q\circ\mathrm{pr}'_2$ である。よって $\mathrm{pr}_1^*b=\mathrm{pr}_2^*b$ であり、$s$ が存在する。$\square$

逆向きと Mayer–Vietoris 完全列

逆に、集合値の前層 $F$ で $F(\emptyset)$ が一点であり、すべての基本的な区別された正方形について上の写像が全単射であるものは Nisnevich 層である。MV99 §3 Proposition 1.4(p. 96)は、Nisnevich 被覆 $\mathcal W$ に対し、閉集合の列 $\emptyset=Z_{n+1}\subset Z_n\subset\cdots\subset Z_0=X$ で各 $Z_i\setminus Z_{i+1}$ の上で $\mathcal W$ が切断をもつもの(分裂列、同 Lemma 1.5、p. 97)を Noether 帰納法で作り、その長さについての帰納法でこれを示す(この記事では証明しない)。$F(\emptyset)$ の条件は同命題の言明には書かれていないが、空な族が $\emptyset$ の Nisnevich 被覆であることから層には必要である。エタール位相では、層の条件をこのような 2 項の被覆に帰着させることはできない(同 p. 96 の注意)。
正方形の条件から、Nisnevich 位相のアーベル群の層 $\mathcal F$ について、Mayer–Vietoris 型の長完全列
$$ \cdots\to H^n_{\mathrm{Nis}}(X,\mathcal F)\to H^n_{\mathrm{Nis}}(U,\mathcal F)\oplus H^n_{\mathrm{Nis}}(V,\mathcal F)\to H^n_{\mathrm{Nis}}(U\times_XV,\mathcal F)\to H^{n+1}_{\mathrm{Nis}}(X,\mathcal F)\to\cdots $$
が得られる(MV99 §3 Remark 1.7、p. 98。この記事では証明しない)。

主定理 2:Hensel 局所環と点

ここでは $\mathrm{Sm}/S$ に限らず、任意のスキームへのエタール射の族について def-nis-covering の意味で Nisnevich 被覆を考える。族 $\{U_i\to X\}$ が 切断をもつ とは、ある $i$ について $U_i\to X$ が切断 $X\to U_i$ をもつことをいう。

Hensel 局所環の Nisnevich 被覆

$(R,\mathfrak m,\kappa)$ を局所環とする。次は同値である。

  1. $R$ は Hensel 局所環である。
  2. $\operatorname{Spec}R$ の任意の Nisnevich 被覆は切断をもつ。

証明には Stacks Lemma 10.153.3(Tag 04GG)の (1)⇔(7)、すなわち「$R$ が Hensel であることと、任意のエタールな環準同型 $R\to A$ と $\mathfrak m$ の上の素イデアル $\mathfrak q$ で $\kappa(\mathfrak q)=\kappa$ となるものについて、レトラクション $A\to R$ が存在することは同値」を使う(Hensel局所環 の定理「Hensel 局所環の特徴づけ」も参照)。
1⇒2。$\{U_i\to\operatorname{Spec}R\}$ を Nisnevich 被覆とする。閉点 $\mathfrak m$ について、ある $U_i$ の点 $u$ が $\mathfrak m$ の上にあり $\kappa(u)\cong\kappa$ である。$u$ を含むアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A\subset U_i$ をとると、$R\to A$ はエタールで、$u$ に対応する素イデアル $\mathfrak q$ は $\kappa(\mathfrak q)=\kappa$ を満たす。レトラクション $A\to R$ は切断 $\operatorname{Spec}R\to\operatorname{Spec}A\subset U_i$ を与える。
2⇒1。エタールな $R\to A$ と、$\mathfrak m$ の上の素イデアル $\mathfrak q$ で $\kappa(\mathfrak q)=\kappa$ となるものをとる。$\operatorname{Spec}R\setminus\{\mathfrak m\}$ は開集合で、その包含はエタールで剰余体を変えない。閉点は $\mathfrak q$ が覆う。よって
$$ \{\operatorname{Spec}R\setminus\{\mathfrak m\}\hookrightarrow\operatorname{Spec}R,\ \operatorname{Spec}A\to\operatorname{Spec}R\} $$
は Nisnevich 被覆であり、仮定により切断をもつ。切断は閉点を閉点に写すので、開集合 $\operatorname{Spec}R\setminus\{\mathfrak m\}$ を経由することはない。よって $\operatorname{Spec}R\to\operatorname{Spec}A$ の切断があり、環のレトラクション $A\to R$ を与える。Stacks の補題により $R$ は Hensel である。$\square$

$X\in\mathrm{Sm}/S$ と点 $x\in X$ について、局所環の Hensel 化を $\mathcal O^h_{X,x}$ とする。前層 $F$ に対し $F(\operatorname{Spec}\mathcal O^h_{X,x})$ を、$x$ の Nisnevich 近傍(エタール射 $U\to X$ と $x$ の上の点で剰余体が $\kappa(x)$ のもの)にわたる $F(U)$ の有向余極限と定める。対 $(X,x)$ を動かしたこれらの関手は $(\mathrm{Sm}/S)_{\mathrm{Nis}}$ の点の族で、層の射の同型を判定できる(MV99 §3、p. 99。この記事では証明しない)。thm-nis-henselian により Hensel 局所環のスペクトルの上では Nisnevich 被覆がすべて自明になるので、Hensel 化が Nisnevich 位相の点の役割を果たす。Zariski 位相では、Zariski 近傍にわたる同じ余極限、すなわち局所環 $\mathcal O_{X,x}$ での値が同じ役割を果たす(この余極限の記述は同 p. 99。この記事では証明しない)。

Nisnevich 位相の性質

次の性質は MV99 §3 の冒頭(pp. 94–95)に列挙され、一部はそこで証明される。この記事では証明しない。

  1. Krull 次元 $d$ の Noether スキーム $S$ について、$H^n_{\mathrm{Nis}}(S,\mathcal F)=0$($n>d$)である(同 Proposition 1.8、p. 98)。Zariski 位相と同じ挙動である。
  2. Nisnevich コホモロジーは Čech コホモロジーで計算できる(同 Proposition 1.9、p. 99)。Zariski 位相ではこれが成り立たない例がある(同 Example 1.10)。
  3. 体のスペクトルは自明でない Nisnevich コホモロジーをもたない。体のスペクトルの Nisnevich 被覆が切断をもつこと(ex-nis-not-nisnevich)がその背景である。エタールコホモロジーでは体の Galois コホモロジーが現れるのと対照的である。
  4. 代数的 K 理論は Nisnevich 位相について降下を満たす。

条件を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
剰余体が同型な点の存在(Nisnevich 被覆であること)$\{\operatorname{Spec}\mathbb C\to\operatorname{Spec}\mathbb R\}$Hensel 局所環 $\mathbb R$ のスペクトルの被覆が切断をもつ(thm-nis-henselian)
$R$ が Hensel であること$R=k[t]_{(t)}$($\operatorname{char}k\neq2$)と、$\operatorname{Spec}R\setminus\{\mathfrak m\}$ および $A=R[s,s^{-1}]/(s^2-1-t)$ の族Nisnevich 被覆が切断をもつ
$p^{-1}(Z)_{\mathrm{red}}\to Z$ が同型であること$X=\mathbb A^1_{\mathbb R}$、$U=X\setminus\{0\}$、$V=\mathbb A^1_{\mathbb C}\to X$$\{U,V\}$ が Nisnevich 被覆である(prop-nis-square-covering)
表の各行の確かめ

1 行目:ex-nis-not-nisnevich のとおり、点の上の剰余体は $\mathbb C$ で、$\mathbb R$ への切断 $\operatorname{Spec}\mathbb R\to\operatorname{Spec}\mathbb C$ は存在しない。

2 行目:$R\to A$ は、$2s$ が $A$ の単数なので(ex-nis-not-zariski の証明と同じ計算で)エタールであり、$\mathfrak q=(\mathfrak m,s-1)$ は閉点の上にあって剰余体 $k$ をもつ($t=0$ で $s^2=1$)。よって族は Nisnevich 被覆である。切断があれば、閉点を写す成分は $\operatorname{Spec}A$ なので $R$ の元 $\sigma$ で $\sigma^2=1+t$ となるものがある。$1+t$ は $k[t]$ の既約元なので、$k(t)$ の中で $1+t$ での位数が $1$ で奇数になり、平方でない。これは Hensel局所環 の例「反例:$k[t]_{(t)}$ は Hensel 局所環でない」と同じ現象である。

3 行目:$V\to X$ は $\operatorname{Spec}\mathbb C\to\operatorname{Spec}\mathbb R$ の底変換なのでエタールで、$p^{-1}(\{0\})=\operatorname{Spec}\mathbb C\to\operatorname{Spec}\mathbb R$ は同型でない。点 $0$ の上の点は $V$ の点 $0$ だけで、剰余体は $\mathbb C$ なので、$0$ の上に剰余体が $\mathbb R$ の点がなく、$\{U,V\}$ は Nisnevich 被覆でない(エタール被覆ではある)。

関連項目

参考文献

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