三角形の面積比

同義語:ratios of triangle areas

概要

三角形の面積比(ratios of triangle areas)とは、2 つの三角形の面積の比を長さの比で表す基本の形である。頂点と底辺の直線の距離(高さ)が等しい三角形では、面積の比は底辺の比に等しい。底辺を共有する三角形では、2 つの頂点を結ぶ直線が底辺の直線と交わる点で分けられる 2 つの長さの比に等しい。1 つの角を共有する(または角が補角の)三角形では、面積の比はその角を挟む 2 辺の積の比に等しく、相似比 $k$ の三角形の面積の比は $k^2$ である。大学数学では、面積は 2 本のベクトルの行列式の半分(符号付き面積)の絶対値で、行列式が双線形で交代的であることから基本の形が出る。面積の比はアフィン変換で変わらないので、辺を決まった比に分ける点でできる図形の面積の比は、どの三角形で計算しても同じになる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角形の面積の公式, 三角比と鈍角への拡張, 内分点・外分点の座標

高校での出発点:面積を比べる

三角形の面積は「$\dfrac12\times$底辺$\times$高さ」で求まる。面積そのものを求めなくても、2 つの三角形の面積の 比 なら、長さの比だけで分かることが多い。この記事では、その基本の形を 3 つにまとめ、なぜそれでよいのかを証明する。まず具体的な三角形で計算してみる。

底辺を 1:2 に分ける

座標平面に $A(1,4)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ をとる。辺 $BC$ は $x$ 軸の上にあり、$A$ の $y$ 座標が $4$ なので、$A$ から直線 $BC$ までの距離(高さ)は $4$ である。三角形 $ABC$ の面積は $\dfrac12\cdot6\cdot4=12$ である。
辺 $BC$ を $1:2$ に分ける点 $D(2,0)$ をとり、三角形を線分 $AD$ で 2 つに切る。
(1) 三角形 $ABD$ は底辺 $BD=2$、高さ $4$ なので、面積は $\dfrac12\cdot2\cdot4=4$ である。
(2) 三角形 $ADC$ は底辺 $DC=4$、高さ $4$ なので、面積は $\dfrac12\cdot4\cdot4=8$ である。
面積の比は $4:8=1:2$ で、底辺の比 $BD:DC=2:4=1:2$ と同じである。高さが共通なので、面積は底辺に比例する。

1 つの角を共有する三角形

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(3,4)$ の三角形を考える。$AB=6$、$AC=\sqrt{3^2+4^2}=5$、面積は $\dfrac12\cdot6\cdot4=12$ である。
辺 $AB$ の上に $AP=2$ となる点 $P(2,0)$、辺 $AC$ の上に $AQ=3$ となる点 $Q$ をとる。$Q$ は $A$ から $C$ へ向かって $\dfrac35$ だけ進んだ点なので $Q=\dfrac35(3,4)=\left(\dfrac95,\dfrac{12}5\right)$ である。
三角形 $APQ$ は底辺 $AP=2$($x$ 軸の上)、高さ $\dfrac{12}5$($Q$ の $y$ 座標)なので、面積は $\dfrac12\cdot2\cdot\dfrac{12}5=\dfrac{12}5$ である。よって
$$ \frac{\triangle APQ}{\triangle ABC}=\frac{12/5}{12}=\frac15 $$
である。一方、角 $A$ を挟む 2 辺の比を掛けると $\dfrac{AP}{AB}\cdot\dfrac{AQ}{AC}=\dfrac26\cdot\dfrac35=\dfrac6{30}=\dfrac15$ で、同じ値になる。

2 つの例で、面積の比が長さの比で書けた。この記事で答える問いは次の 4 つである。

  1. 高さが等しい三角形の面積の比は、なぜ底辺の比になるのか。底辺が共通なときはどうか。→ prop-tar-base、prop-tar-common-base
  2. 1 つの角を共有する三角形の面積の比は、なぜ挟む 2 辺の積の比になるのか。→ thm-tar-angle
  3. 相似な三角形の面積の比は、なぜ相似比の 2 乗になるのか。→ cor-tar-similar
  4. 面積の比の問題で、三角形を「直角二等辺三角形」のような計算しやすい形に取り替えてよいのはなぜか。→ thm-tar-affine、cor-tar-standard
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    高さが等しければ面積の比=底辺の比底辺の比の命題符号付き面積は 1 つの頂点について 1 次式
    角を共有すれば面積の比=挟む辺の積の比角を共有する三角形の定理符号付き面積は双線形(2 本のベクトルそれぞれについて 1 次)
    同じ 2 本のベクトルの三角形は面積 $0$(つぶれた三角形)符号付き面積は交代的
    相似比 $k$ なら面積の比 $k^2$相似な三角形の系2 次元の量は長さの 2 乗で拡大する
    三角形の形を取り替えて計算する標準の三角形への帰着面積の比はアフィン変換で変わらない

言葉の準備

以下、三角形 $XYZ$ の面積を $\triangle XYZ$ と書く。点 $Z$ から直線 $\ell$ に下ろした垂線の長さを、$Z$ と $\ell$ の 距離 という(直線の方程式と点と直線の距離)。三角形 $XYZ$ の辺 $XY$ を底辺とみると、高さは $Z$ と直線 $XY$ の距離である。
「$D$ が線分 $BC$ を $m:n$ に分ける」は内分($D$ が $B$ と $C$ の間にある)の意味で使い、線分の外にある場合(外分)はそのつど断る(内分と外分は 内分点・外分点の座標 で扱う)。

高校数学で解く:面積の比の 3 つの基本形

基本形 1:高さが等しい三角形

ex-tar-start で見た「高さが共通なら面積は底辺に比例する」を、一般の形で述べる。直線の上に並んだ線分を底辺とし、直線の外の 1 点を頂点とする三角形を比べる。

高さが等しい三角形の面積の比

直線 $\ell$ の上に線分 $XY$ と線分 $X'Y'$ があり(どちらも長さは正)、点 $Z$、$Z'$ はどちらも $\ell$ の上になく、$\ell$ との距離が等しいとする。このとき
$$ \frac{\triangle ZXY}{\triangle Z'X'Y'}=\frac{XY}{X'Y'} $$
である。特に、点 $D$ が辺 $BC$ の上にあって $D\ne B$、$D\ne C$ なら
$$ \frac{\triangle ABD}{\triangle ADC}=\frac{BD}{DC} $$
である。

共通の高さで割る

方針:2 つの三角形の底辺を $\ell$ の上の線分とみると、高さが共通であることを使う。
段 1(高さ)。$Z$ と $\ell$ の距離を $h$ とする。仮定により $Z'$ と $\ell$ の距離も $h$ であり、$Z$ は $\ell$ の上にないので $h>0$ である。$X$、$Y$ は $\ell$ の上にあるので、直線 $XY$ は $\ell$ そのものである。よって三角形 $ZXY$ の辺 $XY$ を底辺とみたときの高さは $h$ である。同じように、三角形 $Z'X'Y'$ の辺 $X'Y'$ を底辺とみたときの高さも $h$ である。
段 2(面積)。三角形の面積は $\dfrac12\times$底辺$\times$高さなので、$\triangle ZXY=\dfrac12\cdot XY\cdot h$、$\triangle Z'X'Y'=\dfrac12\cdot X'Y'\cdot h$ である。
段 3(比)。$h>0$、$X'Y'>0$ なので割り算ができて
$$ \frac{\triangle ZXY}{\triangle Z'X'Y'}=\frac{\frac12\cdot XY\cdot h}{\frac12\cdot X'Y'\cdot h}=\frac{XY}{X'Y'} $$
である。
段 4(特別な場合)。$\ell$ を直線 $BC$、$Z=Z'=A$、線分 $XY$ を $BD$、線分 $X'Y'$ を $DC$ とすると、$A$ は直線 $BC$ の上にない($A$、$B$、$C$ は三角形の頂点)ので段 1〜3 が使えて、$\dfrac{\triangle ABD}{\triangle ADC}=\dfrac{BD}{DC}$ を得る。$\square$

左は、高さ 4 が共通な 2 つの三角形 ABD(面積 4)と ADC(面積 8)で、面積の比が底辺の比 1:2 に等しいことを見る図。右は、底辺 BC を共有する三角形 ABC(面積 12)と DBC(面積 6)で、面積の比が直線 AD を E で分けた比 AE:ED=2:1 に等しいことを見る図 左は、高さ 4 が共通な 2 つの三角形 ABD(面積 4)と ADC(面積 8)で、面積の比が底辺の比 1:2 に等しいことを見る図。右は、底辺 BC を共有する三角形 ABC(面積 12)と DBC(面積 6)で、面積の比が直線 AD を E で分けた比 AE:ED=2:1 に等しいことを見る図

中線は面積を 2 等分する
  1. 三角形 $ABC$ の辺 $BC$ の中点を $M$ とすると、$BM=MC$ なので prop-tar-base により $\triangle ABM=\triangle AMC$ である。中線は三角形の面積をちょうど半分に分ける。ex-tar-start の三角形では $M(3,0)$ で、$\triangle ABM=\dfrac12\cdot3\cdot4=6$、$\triangle AMC=\dfrac12\cdot3\cdot4=6$ である。
  2. 辺 $BC$ を 3 等分する点を $B$ に近い方から $D_1$、$D_2$ とすると、3 つの三角形 $ABD_1$、$AD_1D_2$、$AD_2C$ はどれも面積が $\triangle ABC$ の $\dfrac13$ である。ex-tar-start の三角形では $D_1(2,0)$、$D_2(4,0)$ で、3 つの面積はどれも $\dfrac12\cdot2\cdot4=4=\dfrac{12}3$ である。

底辺が共通な三角形

prop-tar-base は底辺の直線と高さを固定した。今度は底辺 $BC$ を共通にして、頂点を動かす。面積は高さに比例するが、高さを直接測る代わりに、2 つの頂点を結ぶ直線が $BC$ を横切る点で比を読むことができる。

底辺が共通な三角形の面積の比

点 $A$、$D$ はどちらも直線 $BC$ の上になく、直線 $AD$ は直線 $BC$ と平行でないとし、2 直線の交点を $E$ とする。このとき
$$ \frac{\triangle ABC}{\triangle DBC}=\frac{AE}{DE} $$
である。$A$ と $D$ が直線 $BC$ の同じ側にあっても、反対側にあっても成り立つ。

座標軸を直線 $BC$ にとる

方針:直線 $BC$ を $x$ 軸にとると、高さは $y$ 座標の絶対値になる。$E$ から $A$、$D$ へのベクトルが平行であることから、$y$ 座標の比が長さの比に等しいことを出す。
段 1(座標をとる)。直線 $BC$ を $x$ 軸とし、$E$ を原点とする座標をとる(長さと面積は座標の取り方によらない)。$A(a_1,a_2)$、$D(d_1,d_2)$ とすると、$A$、$D$ は $x$ 軸の上にないので $a_2\ne0$、$d_2\ne0$ である。
段 2(高さ)。$A$ と $x$ 軸の距離は $|a_2|$、$D$ と $x$ 軸の距離は $|d_2|$ である。三角形 $ABC$ と $DBC$ は底辺 $BC$ が共通なので
$$ \frac{\triangle ABC}{\triangle DBC}=\frac{\frac12\cdot BC\cdot|a_2|}{\frac12\cdot BC\cdot|d_2|}=\frac{|a_2|}{|d_2|} $$
である。
段 3($E$ から見たベクトル)。$E$ は直線 $AD$ の上にあり、$E\ne A$($A$ は $x$ 軸の上にないが $E$ は $x$ 軸の上にある)なので、ベクトル $\overrightarrow{ED}$ は $\overrightarrow{EA}$ の実数倍で、$\overrightarrow{ED}=t\,\overrightarrow{EA}$ と書ける。$E$ は原点なので、これは $(d_1,d_2)=t(a_1,a_2)$、特に $d_2=ta_2$ である。
段 4(長さの比)。$DE=|\overrightarrow{ED}|=|t|\,|\overrightarrow{EA}|=|t|\cdot AE$ なので $\dfrac{AE}{DE}=\dfrac1{|t|}$ である。一方、段 3 から $|d_2|=|t|\,|a_2|$ なので $\dfrac{|a_2|}{|d_2|}=\dfrac1{|t|}$ である。段 2 と合わせて $\dfrac{\triangle ABC}{\triangle DBC}=\dfrac{AE}{DE}$ を得る。段 1〜4 では $A$、$D$ が $x$ 軸のどちら側にあるかを使っていない($t>0$ なら同じ側、$t<0$ なら反対側)。$\square$

底辺が共通な三角形を 2 通りに調べる
  1. 反対側にある場合。ex-tar-start の $A(1,4)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ と、$D(3,-2)$ をとる。直線 $AD$ の点は $(1+2s,\ 4-6s)$ と書け、$y=0$ となるのは $s=\dfrac23$ のときなので、$E\left(\dfrac73,0\right)$ である。$E$ は $A$ から $D$ まで $\dfrac23$ 進んだ点なので $AE:ED=\dfrac23:\dfrac13=2:1$ である。面積は $\triangle ABC=12$、$\triangle DBC=\dfrac12\cdot6\cdot2=6$ で、比は $2:1$ に等しい(図 1 の右)。
  2. 同じ側にある場合。三角形の内部の点 $P(2,2)$ をとる。直線 $AP$ の点は $(1+s,\ 4-2s)$ と書け、$y=0$ となるのは $s=2$ のときなので、直線 $AP$ は辺 $BC$ と $D(3,0)$ で交わる。$P$ は $s=1$、$D$ は $s=2$ の点なので $PD=\dfrac12AD$ である。prop-tar-common-base を $A$ と $P$ に使うと $\dfrac{\triangle PBC}{\triangle ABC}=\dfrac{PD}{AD}=\dfrac12$ となる。実際 $\triangle PBC=\dfrac12\cdot6\cdot2=6=\dfrac12\cdot12$ である。
  1. の形「$\dfrac{\triangle PBC}{\triangle ABC}=\dfrac{PD}{AD}$」は、三角形の内部の点 $P$ が 3 つの頂点と結ぶ線分をどんな比に分けるかを調べるときに使う。Cevaの定理(高校数学) で扱う国際数学オリンピック(1961 年)第 4 問は、この形で解かれる。

基本形 2:1 つの角を共有する三角形

ex-tar-start-angle では、角 $A$ を共有する 2 つの三角形の面積の比が、角 $A$ を挟む 2 辺の比の積になった。これを定理として述べる。証明には三角関数を使わず、prop-tar-base を 2 回使う。

1 つの角を共有する三角形の面積の比

三角形 $ABC$ で、点 $P$ が半直線 $AB$ の上に、点 $Q$ が半直線 $AC$ の上にあり、$P\ne A$、$Q\ne A$ とする。このとき
$$ \frac{\triangle APQ}{\triangle ABC}=\frac{AP\cdot AQ}{AB\cdot AC} $$
である。

中間の三角形 $ABQ$ を通る

方針:三角形 $APQ$ と $ABC$ の間に三角形 $ABQ$ をはさむ。$APQ$ と $ABQ$ は頂点 $Q$ を共有し、$ABQ$ と $ABC$ は頂点 $B$ を共有するので、どちらにも prop-tar-base が使える。
段 1($Q$ は直線 $AB$ の上にない)。$Q$ は半直線 $AC$ の上にあって $Q\ne A$ である。直線 $AC$ と直線 $AB$ は $A$ だけを共有する($A$、$B$、$C$ は一直線上にない)ので、$Q$ は直線 $AB$ の上にない。同じように、$B$ は直線 $AC$ の上にない。
段 2($APQ$ と $ABQ$)。線分 $AP$ と線分 $AB$ はどちらも直線 $AB$ の上にあり、2 つの三角形 $QAP$、$QAB$ は同じ頂点 $Q$ をもつ。段 1 より $Q$ は直線 $AB$ の上にないので、prop-tar-base を $\ell=$ 直線 $AB$、$Z=Z'=Q$ として使えて
$$ \frac{\triangle APQ}{\triangle ABQ}=\frac{AP}{AB} $$
である。
段 3($ABQ$ と $ABC$)。線分 $AQ$ と線分 $AC$ はどちらも直線 $AC$ の上にあり、2 つの三角形 $BAQ$、$BAC$ は同じ頂点 $B$ をもつ。段 1 より $B$ は直線 $AC$ の上にないので、prop-tar-base により
$$ \frac{\triangle ABQ}{\triangle ABC}=\frac{AQ}{AC} $$
である。
段 4(掛ける)。段 2 と段 3 の式を掛けると、$\triangle ABQ$ が約分されて
$$ \frac{\triangle APQ}{\triangle ABC}=\frac{\triangle APQ}{\triangle ABQ}\cdot\frac{\triangle ABQ}{\triangle ABC}=\frac{AP}{AB}\cdot\frac{AQ}{AC}=\frac{AP\cdot AQ}{AB\cdot AC} $$
である。$\square$

中間の三角形を数値で確かめる

ex-tar-start-angle の $A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(3,4)$、$P(2,0)$、$Q\left(\dfrac95,\dfrac{12}5\right)$ で、中間の三角形 $ABQ$ は底辺 $AB=6$、高さ $\dfrac{12}5$ なので面積 $\dfrac12\cdot6\cdot\dfrac{12}5=\dfrac{36}5$ である。
段 2 の比は $\dfrac{\triangle APQ}{\triangle ABQ}=\dfrac{12/5}{36/5}=\dfrac13=\dfrac{AP}{AB}$、段 3 の比は $\dfrac{\triangle ABQ}{\triangle ABC}=\dfrac{36/5}{12}=\dfrac35=\dfrac{AQ}{AC}$ で、積は $\dfrac13\cdot\dfrac35=\dfrac15$ である(図 2)。

角 A を共有する三角形 APQ(面積 12/5)と ABC(面積 12)。面積の比 1/5 は AP/AB=2/6 と AQ/AC=3/5 の積に等しいことを見る図 角 A を共有する三角形 APQ(面積 12/5)と ABC(面積 12)。面積の比 1/5 は AP/AB=2/6 と AQ/AC=3/5 の積に等しいことを見る図

三角比を使う証明

三角形の面積の公式 $\triangle ABC=\dfrac12\cdot AB\cdot AC\cdot\sin A$(三角形の面積の公式)を使うと、thm-tar-angle は 1 行で出る。三角形 $APQ$ の角 $A$ は三角形 $ABC$ の角 $A$ と同じなので
$$ \frac{\triangle APQ}{\triangle ABC}=\frac{\frac12\cdot AP\cdot AQ\cdot\sin A}{\frac12\cdot AB\cdot AC\cdot\sin A}=\frac{AP\cdot AQ}{AB\cdot AC} $$
である。prf-tar-angle は、この公式を知らなくても「$\dfrac12\times$底辺$\times$高さ」だけで同じ結論が出ることを示している。

三角比を使う形の利点は、角が等しくない場合にも広げられることである。$\sin(180^\circ-\theta)=\sin\theta$(三角比と鈍角への拡張)なので、2 つの角が 補角(和が $180^\circ$)の場合にも同じ式が成り立つ。

補角をはさむ三角形の面積の比

三角形 $ABC$ と三角形 $A'B'C'$ で $\angle A+\angle A'=180^\circ$ ならば
$$ \frac{\triangle A'B'C'}{\triangle ABC}=\frac{A'B'\cdot A'C'}{AB\cdot AC} $$
である。

補角の正弦は等しい

方針:三角形の面積の公式に代入し、$\sin A'=\sin A$ を使う。
段 1。三角形の面積の公式により $\triangle ABC=\dfrac12\cdot AB\cdot AC\cdot\sin A$、$\triangle A'B'C'=\dfrac12\cdot A'B'\cdot A'C'\cdot\sin A'$ である。
段 2。$A'=180^\circ-A$ なので $\sin A'=\sin(180^\circ-A)=\sin A$ である。$0^\circ< A<180^\circ$ なので $\sin A>0$ である。
段 3。段 1 の 2 つの式を割り、段 2 の $\sin A'=\sin A\ne0$ で約分すると、求める式を得る。$\square$

補角をはさむ三角形

$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,3)$ の三角形の面積は $\dfrac12\cdot4\cdot3=6$ である。$P(-2,0)$ は半直線 $AB$ と反対向きの半直線の上にあり、$Q(2,6)$ は半直線 $AC$ の上にあって $AQ=2AC$ である。$\angle PAQ$ は $\angle BAC$ の補角である(半直線 $AP$ は半直線 $AB$ の反対向きで、半直線 $AQ$ は半直線 $AC$ と同じだから)。
cor-tar-supplement により $\dfrac{\triangle APQ}{\triangle ABC}=\dfrac{AP\cdot AQ}{AB\cdot AC}=\dfrac{2\cdot2AC}{4\cdot AC}=1$ である。直接計算すると、三角形 $APQ$ は底辺 $AP=2$($x$ 軸の上)、高さ $6$ なので面積 $\dfrac12\cdot2\cdot6=6$ で、確かに $\triangle ABC$ と等しい。

基本形 3:相似な三角形

相似な三角形は、角をそろえて重ねると thm-tar-angle の形になる。

相似な三角形の面積の比

三角形 $A'B'C'$ が三角形 $ABC$ と相似で、相似比が $k$($A'B'=k\cdot AB$、$A'C'=k\cdot AC$、$B'C'=k\cdot BC$)ならば、$\triangle A'B'C'=k^2\cdot\triangle ABC$ である。

角 $A$ をそろえて重ねる

方針:三角形 $A'B'C'$ を面積を変えずに動かし、角 $A$ を共有する位置に置いてから thm-tar-angle を使う。
段 1(重ねる)。相似な三角形の対応する角は等しいので $\angle B'A'C'=\angle BAC$ である。三角形 $A'B'C'$ を平行移動・回転・(必要なら)裏返しで動かして、$A'$ を $A$ に、半直線 $A'B'$ を半直線 $AB$ に重ねる。角の大きさが等しいので、裏返しを適切に選べば半直線 $A'C'$ は半直線 $AC$ に重なる。動かしても長さと面積は変わらない。
段 2(定理を使う)。動かした後の $B'$ は半直線 $AB$ の上、$C'$ は半直線 $AC$ の上にあるので、thm-tar-angle により
$$ \frac{\triangle AB'C'}{\triangle ABC}=\frac{AB'\cdot AC'}{AB\cdot AC}=\frac{k\cdot AB\cdot k\cdot AC}{AB\cdot AC}=k^2 $$
である。$\square$

辺に平行な直線で切る

ex-tar-start の三角形 $ABC$(面積 $12$)で、辺 $AB$ を $2:1$ に分ける点 $P\left(\dfrac13,\dfrac43\right)$ を通り $BC$ に平行な直線が辺 $AC$ と交わる点を $Q\left(\dfrac{13}3,\dfrac43\right)$ とする($Q$ も $AC$ を $2:1$ に分ける)。三角形 $APQ$ は三角形 $ABC$ と相似で、相似比は $\dfrac23$ である。
cor-tar-similar により $\triangle APQ=\left(\dfrac23\right)^2\cdot12=\dfrac49\cdot12=\dfrac{16}3$ である。直接計算すると、$PQ=\dfrac{13}3-\dfrac13=4$、$A$ と直線 $PQ$($y=\dfrac43$)の距離は $4-\dfrac43=\dfrac83$ なので、$\triangle APQ=\dfrac12\cdot4\cdot\dfrac83=\dfrac{16}3$ である。残りの台形 $PBCQ$ の面積は $12-\dfrac{16}3=\dfrac{20}3$ で、三角形と台形の面積の比は $4:5$ である。

面積の比が相似比の 2 乗になるのは、面積が「長さ$\times$長さ」の量だからである。体積なら 3 乗になる(体積と回転体)。

使い方:分けられた三角形の面積

3 つの基本形を組み合わせると、辺を分ける点でできる図形の面積が、座標を使わずに求まる。

3 辺を 1:2 に分ける点でできる三角形

三角形 $ABC$ の辺 $BC$、$CA$、$AB$ を、それぞれ $1:2$ に分ける点を $D$、$E$、$F$ とする($BD:DC=CE:EA=AF:FB=1:2$)。三角形 $DEF$ の面積は $\triangle ABC$ の何倍か。
段 1(角のそばの三角形)。三角形 $AFE$ は三角形 $ABC$ と角 $A$ を共有し、$AF=\dfrac13AB$、$AE=\dfrac23AC$ なので、thm-tar-angle により $\triangle AFE=\dfrac13\cdot\dfrac23\cdot\triangle ABC=\dfrac29\triangle ABC$ である。同じように、角 $B$ で $BD=\dfrac13BC$、$BF=\dfrac23BA$ なので $\triangle BDF=\dfrac29\triangle ABC$、角 $C$ で $CE=\dfrac13CA$、$CD=\dfrac23CB$ なので $\triangle CED=\dfrac29\triangle ABC$ である。
段 2(引く)。三角形 $ABC$ は 3 つの三角形 $AFE$、$BDF$、$CED$ と三角形 $DEF$ に分かれるので
$$ \triangle DEF=\left(1-3\cdot\frac29\right)\triangle ABC=\frac13\triangle ABC $$
である。
段 3(座標で確かめる)。ex-tar-start の $A(1,4)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ では $D(2,0)$、$E\left(\dfrac{13}3,\dfrac43\right)$、$F\left(\dfrac23,\dfrac83\right)$ で、角のそばの 3 つの三角形はどれも面積 $\dfrac29\cdot12=\dfrac83$、三角形 $DEF$ の面積は $\dfrac13\cdot12=4$ である(図 3。三角形 $DEF$ の面積は 靴ひも公式 でも $4$ と確かめられる)。

3 辺を 1:2 に分ける点 D、E、F。角のそばの 3 つの三角形の面積はどれも 8/3、三角形 DEF の面積は 4 で、三角形 ABC(面積 12)の 1/3 であることを見る図 3 辺を 1:2 に分ける点 D、E、F。角のそばの 3 つの三角形の面積はどれも 8/3、三角形 DEF の面積は 4 で、三角形 ABC(面積 12)の 1/3 であることを見る図

3 本の中線は三角形を 6 等分する

三角形 $ABC$ の重心を $G$、辺 $BC$、$CA$、$AB$ の中点を $M_a$、$M_b$、$M_c$ とする。3 本の中線で三角形は 6 つの小さな三角形に分かれる。
段 1。$G$ は中線 $AM_a$ を $2:1$ に分ける(三角形の重心(高校数学))ので、$GM_a=\dfrac13AM_a$ である。prop-tar-common-base を $A$ と $G$ に使うと $\triangle GBC=\dfrac{GM_a}{AM_a}\triangle ABC=\dfrac13\triangle ABC$ である。
段 2。$M_a$ は $BC$ の中点なので、prop-tar-base により $\triangle GBM_a=\triangle GM_aC=\dfrac12\triangle GBC=\dfrac16\triangle ABC$ である。
段 3。ほかの 2 本の中線についても同じなので、6 つの三角形の面積はどれも $\dfrac16\triangle ABC$ である。ex-tar-start の三角形では $G\left(\dfrac73,\dfrac43\right)$ で、6 つの面積はどれも $2$ である。

四角形の対角線でできる 4 つの三角形にも、面積の比の関係がある。

対角線でできる 4 つの三角形

凸四角形 $ABCD$ の対角線 $AC$、$BD$ の交点を $P$ とする。このとき
$$ \triangle PAB\cdot\triangle PCD=\triangle PBC\cdot\triangle PDA $$
である。

同じ比 $\frac{PA}{PC}$ が 2 回現れる

方針:頂点 $B$ と頂点 $D$ のそれぞれから見て、対角線 $AC$ の上の線分 $PA$、$PC$ を底辺とする三角形の比をとる。
段 1。凸四角形なので、$P$ は対角線 $AC$ の上で $A$、$C$ と異なり、対角線 $BD$ の上で $B$、$D$ と異なる。また $B$、$D$ は直線 $AC$ の上にない。
段 2。三角形 $PAB$ と $PBC$ は頂点 $B$ を共有し、底辺 $PA$、$PC$ は直線 $AC$ の上にあるので、prop-tar-base により $\dfrac{\triangle PAB}{\triangle PBC}=\dfrac{PA}{PC}$ である。
段 3。三角形 $PDA$ と $PCD$ は頂点 $D$ を共有し、底辺 $PA$、$PC$ は直線 $AC$ の上にあるので、同じく $\dfrac{\triangle PDA}{\triangle PCD}=\dfrac{PA}{PC}$ である。
段 4。段 2 と段 3 から $\dfrac{\triangle PAB}{\triangle PBC}=\dfrac{\triangle PDA}{\triangle PCD}$ であり、分母を払うと $\triangle PAB\cdot\triangle PCD=\triangle PBC\cdot\triangle PDA$ である。$\square$

台形の対角線

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(4,2)$、$D(0,2)$ の台形($AB\parallel DC$、$AB=6$、$DC=4$、面積 $\dfrac{(6+4)\cdot2}2=10$)で、対角線の交点は $P\left(\dfrac{12}5,\dfrac65\right)$ である($P=\dfrac35C$ で、$AP:PC=3:2$)。
$AB\parallel DC$ なので三角形 $PAB$ と $PCD$ は相似で、相似比は $AB:CD=6:4=3:2$ である。よって cor-tar-similar により面積の比は $9:4$ である。prf-tar-quad の段 2 から $\triangle PBC=\dfrac{PC}{PA}\triangle PAB=\dfrac23\triangle PAB$、段 3 から $\triangle PDA=\dfrac{PA}{PC}\triangle PCD=\dfrac32\triangle PCD$ で、4 つの面積の比は $\triangle PAB:\triangle PBC:\triangle PCD:\triangle PDA=9:6:4:6$ である。合計 $25$ が台形の面積 $10$ にあたるので、面積は順に $\dfrac{18}5$、$\dfrac{12}5$、$\dfrac85$、$\dfrac{12}5$ である。prop-tar-quad のとおり $\dfrac{18}5\cdot\dfrac85=\dfrac{144}{25}=\dfrac{12}5\cdot\dfrac{12}5$ となる(図 4)。

台形 ABCD の対角線でできる 4 つの三角形の面積 18/5、12/5、8/5、12/5。向かい合う 2 組の積が等しいことを見る図 台形 ABCD の対角線でできる 4 つの三角形の面積 18/5、12/5、8/5、12/5。向かい合う 2 組の積が等しいことを見る図

大学数学で見る:符号付き面積とアフィン変換

高校の 3 つの基本形は、大学の言葉では「面積は 2 本のベクトルの 双線形 で 交代的 な関数である」という 1 つの性質から出てくる。さらに、面積の比が アフィン変換(1 次変換と平行移動の組み合わせ)で変わらないことから、面積の比の問題はどの三角形で計算してもよいことが分かる。

3 点の符号付き面積

3 点の符号付き面積

平面のベクトル $\vec u=(u_1,u_2)$、$\vec w=(w_1,w_2)$ に対して
$$ \det(\vec u,\vec w):=u_1w_2-u_2w_1 $$
とおく($\vec u$、$\vec w$ を列に並べた $2\times2$ 行列の 行列式 である)。座標平面の 3 点 $X$、$Y$、$Z$ に対して
$$ [XYZ]:=\frac12\det\bigl(\overrightarrow{XY},\overrightarrow{XZ}\bigr) $$
を 3 点の 符号付き面積 という。$X(x_1,y_1)$、$Y(x_2,y_2)$、$Z(x_3,y_3)$ なら $[XYZ]=\dfrac12\bigl\{(x_2-x_1)(y_3-y_1)-(y_2-y_1)(x_3-x_1)\bigr\}$ である。

符号付き面積を計算する
  1. ex-tar-start の $A(1,4)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ では $\overrightarrow{AB}=(-1,-4)$、$\overrightarrow{AC}=(5,-4)$ なので
    $$ [ABC]=\frac12\bigl\{(-1)(-4)-(-4)\cdot5\bigr\}=\frac12(4+20)=12 $$
    で、$\triangle ABC=12$ と一致する。
  2. 順番を入れ替えると $\overrightarrow{AC}=(5,-4)$、$\overrightarrow{AB}=(-1,-4)$ なので $[ACB]=\dfrac12\bigl\{5\cdot(-4)-(-4)(-1)\bigr\}=\dfrac12(-20-4)=-12$ である。絶対値は面積で、符号は $A\to B\to C$ と回る向きを表す(反時計回りなら正、時計回りなら負。1次変換と行列式:面積の拡大率、靴ひも公式)。
符号付き面積の絶対値は面積

3 点 $X$、$Y$、$Z$ が一直線上になければ $|[XYZ]|=\triangle XYZ$ であり、一直線上にあれば $[XYZ]=0$ である。

2 乗して内積と比べる

方針:$\det(\vec u,\vec w)^2$ を内積で書き直し、三角形の面積の公式 $\dfrac12|\vec u||\vec w|\sin\theta$ と比べる。
段 1(恒等式)。$\vec u=\overrightarrow{XY}=(u_1,u_2)$、$\vec w=\overrightarrow{XZ}=(w_1,w_2)$ とする。展開すると
$$ (u_1^2+u_2^2)(w_1^2+w_2^2)-(u_1w_1+u_2w_2)^2=u_1^2w_2^2+u_2^2w_1^2-2u_1w_1u_2w_2=(u_1w_2-u_2w_1)^2 $$
である($u_1^2w_1^2$ と $u_2^2w_2^2$ の項が打ち消し合う)。つまり $\det(\vec u,\vec w)^2=|\vec u|^2|\vec w|^2-(\vec u\cdot\vec w)^2$ である。同じ計算は 三角形の面積の公式 の座標による面積の公式でも行う。
段 2(一直線上にない場合)。$\vec u$、$\vec w$ のなす角を $\theta$($0<\theta<\pi$)とすると $\vec u\cdot\vec w=|\vec u||\vec w|\cos\theta$ なので(ベクトルの内積(高校数学))、段 1 から $\det(\vec u,\vec w)^2=|\vec u|^2|\vec w|^2(1-\cos^2\theta)=|\vec u|^2|\vec w|^2\sin^2\theta$ である。$\sin\theta>0$ なので $|\det(\vec u,\vec w)|=|\vec u||\vec w|\sin\theta$ であり、三角形の面積の公式(三角形の面積の公式)により $|[XYZ]|=\dfrac12XY\cdot XZ\cdot\sin\theta=\triangle XYZ$ である。
段 3(一直線上にある場合)。$X=Y$ なら $\vec u=\vec 0$ で $\det(\vec u,\vec w)=0$ である。$X\ne Y$ なら、$Z$ は直線 $XY$ の上にあるので $\vec w=s\vec u$ と書け、$\det(\vec u,s\vec u)=u_1\cdot su_2-u_2\cdot su_1=0$ である。$\square$

双線形性と交代性

行列式の双線形性・交代性と、1 次変換で $\det M$ 倍になること(下の thm-tar-affine)は、1次変換と行列式:面積の拡大率 でも別の証明(双線形で交代的な関数の一意性)で示している。ここでは成分の計算で確かめる。

2 本のベクトルの行列式の性質

平面のベクトル $\vec u$、$\vec u'$、$\vec w$、$\vec w'$ と実数 $s$、$s'$ について次が成り立つ。

  1. (1 本目について 1 次)$\det(s\vec u+s'\vec u',\vec w)=s\det(\vec u,\vec w)+s'\det(\vec u',\vec w)$
  2. (2 本目について 1 次)$\det(\vec u,s\vec w+s'\vec w')=s\det(\vec u,\vec w)+s'\det(\vec u,\vec w')$
  3. (交代性)$\det(\vec u,\vec u)=0$、$\det(\vec w,\vec u)=-\det(\vec u,\vec w)$
成分で書く

方針:定義 $\det(\vec u,\vec w)=u_1w_2-u_2w_1$ に成分を代入して整理する。
段 1(1)。$s\vec u+s'\vec u'$ の成分は $(su_1+s'u'_1,\ su_2+s'u'_2)$ なので
$$ \det(s\vec u+s'\vec u',\vec w)=(su_1+s'u'_1)w_2-(su_2+s'u'_2)w_1=s(u_1w_2-u_2w_1)+s'(u'_1w_2-u'_2w_1) $$
である。
段 2(2)。同じように $\det(\vec u,s\vec w+s'\vec w')=u_1(sw_2+s'w'_2)-u_2(sw_1+s'w'_1)=s(u_1w_2-u_2w_1)+s'(u_1w'_2-u_2w'_1)$ である。
段 3(3)。$\det(\vec u,\vec u)=u_1u_2-u_2u_1=0$、$\det(\vec w,\vec u)=w_1u_2-w_2u_1=-(u_1w_2-u_2w_1)$ である。$\square$

この 2 つの性質から、高校の基本形が符号込みで出てくる。

底辺の比の符号付きの形

$B\ne C$ とし、直線 $BC$ の上の点を $D=(1-t)B+tC$($t$ は実数。位置ベクトルで書いた。位置ベクトルと内分点)とする。点 $A$ に対して
$$ [ABD]=t\,[ABC],\qquad [ADC]=(1-t)\,[ABC] $$
である。特に、$D$ が直線 $BC$ のどこにあっても $[ABD]+[ADC]=[ABC]$ が成り立つ。

$A$ から見たベクトルで展開する

方針:$\overrightarrow{AD}$ を $\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{AC}$ で表し、prop-tar-bilinear で展開する。
段 1。$D=(1-t)B+tC$ から $A$ を引くと、$(1-t)+t=1$ なので $\overrightarrow{AD}=(1-t)\overrightarrow{AB}+t\,\overrightarrow{AC}$ である。
段 2。prop-tar-bilinear の 2 と 3 により
$$ \det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AD})=(1-t)\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AB})+t\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AC})=t\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AC}) $$
である。両辺を $2$ で割ると $[ABD]=t\,[ABC]$ である。
段 3。同じく prop-tar-bilinear の 1 と 3 により
$$ \det(\overrightarrow{AD},\overrightarrow{AC})=(1-t)\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AC})+t\det(\overrightarrow{AC},\overrightarrow{AC})=(1-t)\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AC}) $$
なので $[ADC]=(1-t)[ABC]$ である。
段 4。段 2 と段 3 を足すと $[ABD]+[ADC]=\{t+(1-t)\}[ABC]=[ABC]$ である。$\square$

$0< t<1$($D$ が辺 $BC$ の内部にある)なら $BD=t\cdot BC$、$DC=(1-t)BC$ で、$[ABD]$ と $[ADC]$ は $[ABC]$ と同じ符号なので、絶対値をとると prop-tar-base の $\dfrac{\triangle ABD}{\triangle ADC}=\dfrac{t}{1-t}=\dfrac{BD}{DC}$ に戻る。$D$ が線分の外にあると $t$ か $1-t$ が負になり、面積の和の関係が「引き算」に変わる(ex-tar-cx-outside)。符号付きの形では、場合分けなしに 1 つの式で済む。
同じ計算で、thm-tar-angle と cor-tar-supplement も 1 つにまとまる。

角を共有する三角形の符号付きの形

$P=A+p\,\overrightarrow{AB}$、$Q=A+q\,\overrightarrow{AC}$($p$、$q$ は実数)とすると $[APQ]=pq\,[ABC]$ である。

2 本のベクトルからそれぞれ実数を出す

方針:prop-tar-bilinear の 1 と 2 を 1 回ずつ使う。
$\overrightarrow{AP}=p\,\overrightarrow{AB}$、$\overrightarrow{AQ}=q\,\overrightarrow{AC}$ なので、prop-tar-bilinear の 1 で $p$ を、2 で $q$ を外に出すと $\det(\overrightarrow{AP},\overrightarrow{AQ})=p\,q\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AC})$ である。両辺を $2$ で割ると $[APQ]=pq\,[ABC]$ である。$\square$

$p,q>0$ なら $P$、$Q$ は半直線 $AB$、$AC$ の上にあり、$|p|=\dfrac{AP}{AB}$、$|q|=\dfrac{AQ}{AC}$ なので、絶対値をとると thm-tar-angle になる。$p<0< q$ なら $\angle PAQ$ は $\angle BAC$ の補角で、cor-tar-supplement の形になる。ex-tar-supplement では $p=-\dfrac12$、$q=2$ で $pq=-1$ であり、$[APQ]=-[ABC]$ となる(面積は等しく、向きが逆)。

アフィン変換と面積の比

平面のアフィン変換

実数 $a$、$b$、$c$、$d$ と点 $V(v_1,v_2)$ を決めて、点 $X(x,y)$ を
$$ f(X)=(ax+by+v_1,\ cx+dy+v_2) $$
に移す写像を考える。$ad-bc\ne0$ のとき、$f$ を平面の アフィン変換 という。$M=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$ とすると、$f$ は 1 次変換 $X\mapsto MX$(1次変換と行列式:面積の拡大率)のあとに平行移動をしたものであり、$ad-bc=\det M$ である。

アフィン変換と符号付き面積

def-tar-affine のアフィン変換 $f$ について、次が成り立つ。

  1. どの 3 点 $X$、$Y$、$Z$ についても $[f(X)f(Y)f(Z)]=(ad-bc)[XYZ]$ である。
  2. 直線 $BC$ の上の点 $D=(1-t)B+tC$ は、$f(D)=(1-t)f(B)+tf(C)$ に移る。つまり、線分を分ける比は変わらない。
    特に、2 つの三角形の面積の比は $f$ で移しても変わらない。
差のベクトルは $M$ で移る

方針:$f(Y)-f(X)$ が $\overrightarrow{XY}$ を $M$ で移したものであることを確かめ、$\det(M\vec u,M\vec w)$ を展開する。
段 1(差のベクトル)。$f(X)=MX+V$ と書く(点とその位置ベクトルを同じ文字で表す)。$f(Y)-f(X)=(MY+V)-(MX+V)=M(Y-X)$ なので、$\overrightarrow{f(X)f(Y)}=M\,\overrightarrow{XY}$ である。
段 2(行列式の展開)。$\vec u=(u_1,u_2)$、$\vec w=(w_1,w_2)$ とすると $M\vec u=(au_1+bu_2,\ cu_1+du_2)$、$M\vec w=(aw_1+bw_2,\ cw_1+dw_2)$ である。
$$ \begin{aligned} \det(M\vec u,M\vec w)&=(au_1+bu_2)(cw_1+dw_2)-(cu_1+du_2)(aw_1+bw_2)\\ &=acu_1w_1+adu_1w_2+bcu_2w_1+bdu_2w_2-acu_1w_1-bcu_1w_2-adu_2w_1-bdu_2w_2\\ &=(ad-bc)(u_1w_2-u_2w_1) \end{aligned} $$
である。$acu_1w_1$ と $bdu_2w_2$ の項が打ち消し合い、残りを $ad-bc$ でくくった。
段 3(1 の結論)。段 1 と段 2 から
$$ [f(X)f(Y)f(Z)]=\frac12\det\bigl(M\overrightarrow{XY},M\overrightarrow{XZ}\bigr)=(ad-bc)\cdot\frac12\det\bigl(\overrightarrow{XY},\overrightarrow{XZ}\bigr)=(ad-bc)[XYZ] $$
である。
段 4(2)。$f(D)=M\bigl((1-t)B+tC\bigr)+V=(1-t)MB+tMC+\{(1-t)+t\}V=(1-t)(MB+V)+t(MC+V)=(1-t)f(B)+tf(C)$ である。
段 5(面積の比)。三角形 $XYZ$、$X'Y'Z'$ について、段 3 と prop-tar-signed-meaning から $\triangle f(X)f(Y)f(Z)=|ad-bc|\cdot\triangle XYZ$、$\triangle f(X')f(Y')f(Z')=|ad-bc|\cdot\triangle X'Y'Z'$ である。$ad-bc\ne0$ なので比をとると $|ad-bc|$ が約分され、比は変わらない。$\square$

どんな三角形も、ある 1 つの三角形のアフィン変換による像になる。

標準の三角形への帰着

$O(0,0)$、$E_1(1,0)$、$E_2(0,1)$ とする。一直線上にない 3 点 $A$、$B$、$C$ に対して
$$ f(x,y)=A+x\,\overrightarrow{AB}+y\,\overrightarrow{AC} $$
はアフィン変換で、$f(O)=A$、$f(E_1)=B$、$f(E_2)=C$ を満たす。

行列の列を $\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{AC}$ にする

方針:$f$ を def-tar-affine の形に書き、$ad-bc\ne0$ を確かめる。
段 1。$\overrightarrow{AB}=(a,c)$、$\overrightarrow{AC}=(b,d)$ とおくと、$f(x,y)=(ax+by+A_1,\ cx+dy+A_2)$($A=(A_1,A_2)$)である。これは $V=A$ とした def-tar-affine の形である。
段 2。$ad-bc=\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AC})=2[ABC]$ で、$A$、$B$、$C$ は一直線上にないので prop-tar-signed-meaning により $0$ でない。よって $f$ はアフィン変換である。
段 3。$f(0,0)=A$、$f(1,0)=A+\overrightarrow{AB}=B$、$f(0,1)=A+\overrightarrow{AC}=C$ である。$\square$

thm-tar-affine により、「辺を決まった比に分ける点」でできる図形の面積の比は、$f$ で移しても変わらない。したがって、そのような問題は標準の三角形 $OE_1E_2$(面積 $\dfrac12$)で計算してよい。

標準の三角形で計算し直す

ex-tar-inner を標準の三角形 $OE_1E_2$ で計算する。辺 $E_1E_2$、$E_2O$、$OE_1$ を $1:2$ に分ける点は
$$ D_0=\tfrac23E_1+\tfrac13E_2=\left(\tfrac23,\tfrac13\right),\quad E_0=\tfrac23E_2+\tfrac13O=\left(0,\tfrac23\right),\quad F_0=\tfrac23O+\tfrac13E_1=\left(\tfrac13,0\right) $$
である。$\overrightarrow{D_0E_0}=\left(-\dfrac23,\dfrac13\right)$、$\overrightarrow{D_0F_0}=\left(-\dfrac13,-\dfrac13\right)$ なので
$$ [D_0E_0F_0]=\frac12\left\{\left(-\frac23\right)\left(-\frac13\right)-\frac13\cdot\left(-\frac13\right)\right\}=\frac12\left(\frac29+\frac19\right)=\frac16 $$
で、$\dfrac{1/6}{1/2}=\dfrac13$ となり、ex-tar-inner と同じ比が出る。
ex-tar-start の三角形では $f(x,y)=(1,4)+x(-1,-4)+y(5,-4)$、$ad-bc=(-1)(-4)-5\cdot(-4)=24$ である。$f(D_0)=(2,0)$、$f(E_0)=\left(\dfrac{13}3,\dfrac43\right)$、$f(F_0)=\left(\dfrac23,\dfrac83\right)$ は ex-tar-inner の $D$、$E$、$F$ で、面積は $24\cdot\dfrac12=12$、$24\cdot\dfrac16=4$ と $24$ 倍になる(図 5)。

標準の三角形(面積 1/2)と内側の三角形(面積 1/6)が、アフィン変換 f で三角形 ABC(面積 12)と三角形 DEF(面積 4)に移る。面積はどちらも 24 倍になり、比 1/3 は変わらないことを見る図 標準の三角形(面積 1/2)と内側の三角形(面積 1/6)が、アフィン変換 f で三角形 ABC(面積 12)と三角形 DEF(面積 4)に移る。面積はどちらも 24 倍になり、比 1/3 は変わらないことを見る図

アフィン変換で変わるもの

thm-tar-affine が保証するのは、面積の比と、1 本の直線の上(または平行な直線の上)の長さの比である。向きの違う線分の長さの比や、角の大きさは変わりうる。たとえば $g(x,y)=(2x,y)$($ad-bc=2$)は $x$ 軸の向きの長さを $2$ 倍にし、$y$ 軸の向きの長さを変えない。したがって、$AB:AC$ のような向きの違う 2 辺の比や、角の二等分線を含む問題は、標準の三角形に帰着できない(ex-tar-stretch)。角の二等分線が対辺を分ける比は 角の二等分線の定理 で、辺の長さそのものを使って求める。

例と反例

どの仮定を外すと何が崩れるかを一覧にする。

外した仮定崩れる主張ボックス
高さが等しい面積の比=底辺の比ex-tar-cx-height
角が等しい(または補角)面積の比=挟む 2 辺の積の比ex-tar-cx-angle
$D$ が辺 $BC$ の内部にある$\triangle ABD+\triangle ADC=\triangle ABC$ex-tar-cx-outside
比べる線分が同じ直線(または平行な直線)の上にあるアフィン変換で長さの比が保たれる(したがって角の二等分線も保たれる)ex-tar-stretch

注意(よくある取り違え):相似な三角形の面積の比は、相似比そのものではなく相似比の 2 乗である(cor-tar-similar、ex-tar-cx-square)。

反例:高さが違えば底辺の比にならない

$B(0,0)$、$C(2,0)$、$D(4,0)$ と $A(1,4)$、$A'(3,1)$ をとる。三角形 $ABC$ と $A'CD$ は底辺の長さが $BC=CD=2$ で等しい。しかし高さが $4$ と $1$ で違うので、面積は $\dfrac12\cdot2\cdot4=4$ と $\dfrac12\cdot2\cdot1=1$ で、比は $4:1$ であり、底辺の比 $1:1$ にならない。prop-tar-base の「頂点と底辺の直線の距離が等しい」という仮定が外れている。

反例:挟む角が違えば積の比にならない

$AB=4$、$AC=3$ で $\angle A=90^\circ$ の三角形と、$A'B'=4$、$A'C'=3$ で $\angle A'=60^\circ$ の三角形を比べる。挟む 2 辺の積はどちらも $12$ だが、面積は $\dfrac12\cdot4\cdot3\cdot\sin90^\circ=6$ と $\dfrac12\cdot4\cdot3\cdot\sin60^\circ=3\sqrt3$ で等しくない。座標では $A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(0,3)$ と、$A'(0,0)$、$B'(4,0)$、$C'\left(\dfrac32,\dfrac{3\sqrt3}2\right)$ である。$90^\circ$ と $60^\circ$ は等しくも補角でもないので、thm-tar-angle も cor-tar-supplement も使えない。

反例:面積の比を相似比と取り違える

$A(0,0)$、$B(1,0)$、$C(0,1)$ の三角形(面積 $\dfrac12$)と、各辺を $2$ 倍にした $A(0,0)$、$B'(2,0)$、$C'(0,2)$ の三角形(面積 $2$)では、相似比は $2$ だが面積の比は $\dfrac{2}{1/2}=4=2^2$ である。「相似比が $2$ だから面積も $2$ 倍」は誤りで、cor-tar-similar のとおり $2$ 乗になる。

反例:辺の外の点では面積が足し算にならない

ex-tar-start の $A(1,4)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ で、辺 $BC$ の延長の上の点 $D(9,0)$ をとる。$D=(1-t)B+tC$ で $t=\dfrac32$ である。
面積は $\triangle ABD=\dfrac12\cdot9\cdot4=18$、$\triangle ADC=\dfrac12\cdot3\cdot4=6$ で、$18+6=24\ne12=\triangle ABC$ である。面積の和の関係は崩れ、代わりに $18-6=12$ となる。一方、比 $\dfrac{\triangle ABD}{\triangle ADC}=\dfrac{18}6=3=\dfrac{BD}{DC}$ は成り立つ(prop-tar-base は $D$ が直線 $BC$ の上ならよい)。
符号付き面積では、prop-tar-signed-base により $[ABD]=\dfrac32\cdot12=18$、$[ADC]=\left(1-\dfrac32\right)\cdot12=-6$ で、$[ABD]+[ADC]=12=[ABC]$ が成り立つ。$A\to D\to C$ が時計回りなので $[ADC]$ が負になり、足し算が正しく引き算の役をする。

反例:アフィン変換で角の二等分線は移らない

$A(0,0)$、$B(1,0)$、$C(0,1)$ の直角二等辺三角形では $AB=AC$ なので、$\angle A$ の二等分線(直線 $y=x$)は辺 $BC$ を中点 $M\left(\dfrac12,\dfrac12\right)$ で 2 等分する。
$g(x,y)=(2x,y)$ で移すと $A'(0,0)$、$B'(2,0)$、$C'(0,1)$、$M'=g(M)=\left(1,\dfrac12\right)$ で、thm-tar-affine の 2 のとおり $M'$ は辺 $B'C'$ の中点のままである。ところが $A'B'=2$、$A'C'=1$ なので、$\angle A'$ の二等分線は $A'$ から $B'$、$C'$ へ向かう単位ベクトルの和 $(1,0)+(0,1)=(1,1)$ の向き、つまり直線 $y=x$ である(三角形の内心と傍心)。これが辺 $B'C'$($\dfrac x2+y=1$)と交わる点は $\left(\dfrac23,\dfrac23\right)$ で、$B'C'$ を $2:1$ に分ける。直線 $A'M'$($y=\dfrac x2$)は二等分線ではない。
面積の比と同じ向きの長さの比は保たれるが、$A'B':A'C'$ のような向きの違う長さの比($1:1$ が $2:1$ に変わった)と角は保たれない。

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関連項目

参考文献

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