半局所単連結空間

同義語:半局所単連結

概要

半局所単連結空間(semilocally simply connected space)とは、任意の点 $x$ がある近傍 $U$ を持ち、包含写像の誘導する準同型 $\pi_1(U,x)\to\pi_1(X,x)$ の像が自明になる位相空間のことである。$U$ の中では縮まないループでも空間全体の中では一点に縮む、すなわち「局所的な穴が大域的には穴でなくなる」という条件で、単連結空間や局所単連結空間より真に弱い。Hawaiianイヤリングの錐は半局所単連結だが局所単連結でなく、Hawaiianイヤリングそのものは半局所単連結でない。半局所単連結性は直和・直積で保たれるが部分空間には遺伝しない。弧状連結かつ局所弧状連結な空間が普遍被覆を持つための必要十分条件として被覆空間論で仮定される。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 基本群, ホモトピー, 単連結空間, 弧状連結空間

定義

位相空間 $X$ と点 $x\in X$ に対し、$x$ を基点とする基本群を $\pi_1(X,x)$ と書く。部分集合 $U\subset X$$x\in U$ に対し、包含写像 $i\colon U\to X$ は群準同型 $i_*\colon\pi_1(U,x)\to\pi_1(X,x)$$[\gamma]\mapsto[i\circ\gamma]$ を誘導する。

半局所単連結空間

位相空間 $X$半局所単連結(semilocally simply connected)であるとは、任意の点 $x\in X$ に対して $x$ のある近傍 $U$ が存在し、包含写像の誘導する準同型 $i_*\colon\pi_1(U,x)\to\pi_1(X,x)$ の像が自明群となることをいう。このとき $X$半局所単連結空間という。

$i_*$ の像が自明であるとは、$x$ を基点とする $U$ 内の任意のループ $\gamma\colon[0,1]\to U$ が、$X$ の中で$U$ の中でとは限らない)基点を固定したホモトピーにより定値ループにつながる、ということである。$U$ 内で縮まらないループでも $X$ 全体に持ち込めば縮む、という条件だと言い換えられる。
比較のために、関連する二つの性質を述べておく。位相空間 $X$単連結であるとは、$X$ が弧状連結で、ある(したがって任意の)点 $x$ について $\pi_1(X,x)$ が自明群であることをいう。$X$局所単連結(locally simply connected)であるとは、任意の点 $x$$x$ の任意の近傍 $V$ に対し、単連結な開近傍 $U$$x\in U\subset V$ となるものが存在することをいう。

直感

半局所単連結性は「局所的な穴が、大域的に見れば穴でなくなる」という条件である。局所単連結性が「近傍そのものの中で穴が塞がる」ことを要求するのに対し、半局所単連結性は「近傍の中では塞がらなくても、空間全体に持ち込めば塞がる」ことしか要求しない、真に弱い条件である。この弱さゆえに被覆空間論の技術的仮定として使いやすく、弧状連結かつ局所弧状連結な空間が普遍被覆を持つための条件として現れる(thm-semilocally-simply-connected-space-universal-cover)。

例と反例

以下、Hawaiianイヤリング(ハワイの耳飾り)を次の部分空間として固定する。$n\ge1$ に対し $C_n$ を中心 $(1/n,0)$、半径 $1/n$ の円周とし、
$$ \mathbb{H}:=\bigcup_{n\ge1}C_n\subset\mathbb{R}^2 $$
とする。すべての $C_n$ は原点 $0$ を通り、相異なる $C_m,C_n$$0$ でのみ交わる。$\gamma_n\colon[0,1]\to C_n$$\gamma_n(s)=\bigl(\tfrac1n(1-\cos2\pi s),\,-\tfrac1n\sin2\pi s\bigr)$$0$ を基点として $C_n$ を一周するループである。
また、$\mathbb{R}^m$ の空でない部分集合 $S$ が点 $c\in S$ に関して星状であるとは、任意の $q\in S$ に対して線分 $\{(1-t)q+tc\mid t\in[0,1]\}$$S$ に含まれることをいう。空でない星状集合は単連結である(prop-semilocally-simply-connected-space-star)。

単連結な空間

$\mathbb{R}^n$ やその空でない凸部分集合のように単連結な空間は半局所単連結である(prop-semilocally-simply-connected-space-from-simply-connected)。空でない凸集合 $K\subset\mathbb{R}^n$ は任意の点に関して星状であるから単連結である(prop-semilocally-simply-connected-space-star)。

局所単連結な空間

円周 $S^1$ は単連結ではないが局所単連結である。実際、各点は開弧からなる近傍の基本系を持ち、開弧は開区間(空でない凸集合)と同相なので単連結である。したがって $S^1$ は半局所単連結である(prop-semilocally-simply-connected-space-from-locally-simply-connected)。より一般に、各点が単連結な開近傍の基本系を持つ空間はすべて半局所単連結である。

Hawaiianイヤリングの錐:半局所単連結だが局所単連結でない

$\mathbb{H}$$\mathbb{R}^2\times\{0\}\subset\mathbb{R}^3$ に含めて考え、頂点 $c=(0,0,1)$ との線分をすべて集めた
$$ A:=\{(1-t)p+tc\mid p\in\mathbb{H},\ t\in[0,1]\}\subset\mathbb{R}^3 $$
を Hawaiianイヤリングの錐と呼ぶ。$A$$c$ に関して星状である(prop-semilocally-simply-connected-space-cone の証明で確認する)から単連結であり(prop-semilocally-simply-connected-space-star)、したがって半局所単連結である。一方、$A$ は原点 $0=(0,0,0)$ において局所単連結ではない(prop-semilocally-simply-connected-space-cone)。半局所単連結であって局所単連結でない空間が存在する。

反例:Hawaiianイヤリング

$\mathbb{H}$ は原点 $0$ において半局所単連結性の条件を満たさない。したがって「任意の位相空間は半局所単連結である」は成り立たず、また局所単連結 ⇒ 半局所単連結の対偶により $\mathbb{H}$ は局所単連結でもない。
証明の要点は次のとおりである(prop-semilocally-simply-connected-space-earring)。$0$ の任意の近傍 $U$ は、十分大きい $n$ に対して $C_n$ を丸ごと含む。ループ $\gamma_n$$U$ 内にあるが、$\mathbb{H}$ の中で定値ループにつながらない。実際、$C_n$ 以外の円周をすべて $0$ へ潰す写像 $r_n\colon\mathbb{H}\to C_n$ は連続で $r_n\circ\gamma_n=\gamma_n$ を満たすから、$[\gamma_n]$$\pi_1(\mathbb{H},0)$ で自明なら $[\gamma_n]$$\pi_1(C_n,0)\cong\mathbb{Z}$ でも自明になり、$\gamma_n$ が生成元であることに反する。ゆえに $i_*\colon\pi_1(U,0)\to\pi_1(\mathbb{H},0)$ の像は非自明である。

反例:半局所単連結性が保たれない位相構成

次の六つの構成では半局所単連結性は一般に保たれない。いずれも $\mathbb{H}$ が半局所単連結でないこと(prop-semilocally-simply-connected-space-earring)と、$\mathbb{H}$ を含む単連結な空間が作れることから従う(証明は prop-semilocally-simply-connected-space-heredity)。

  1. 部分空間に遺伝しない:$\mathbb{R}^2$ は単連結だが、部分空間 $\mathbb{H}$ は半局所単連結でない。
  2. 部分空間の半局所単連結性は全空間の半局所単連結性を誘導しない:一点 $\{0\}\subset\mathbb{H}$ は半局所単連結だが $\mathbb{H}$ はそうでない。
  3. 二つの半局所単連結な部分空間の和集合は半局所単連結とは限らない:$\mathbb{H}$ の上半分 $\mathbb{H}_+=\{(x,y)\in\mathbb{H}\mid y\ge0\}$ と下半分 $\mathbb{H}_-=\{(x,y)\in\mathbb{H}\mid y\le0\}$ はいずれも単連結だが、和集合は $\mathbb{H}$ である。
  4. 二つの半局所単連結な部分空間の共通部分は半局所単連結とは限らない:$\mathbb{R}^3$ 内で頂点 $(0,0,1)$ の錐 $A$ と頂点 $(0,0,-1)$ の錐 $A'$ はいずれも星状ゆえ単連結だが、共通部分は $\mathbb{H}\times\{0\}$ である。
  5. 連続写像による像は半局所単連結とは限らない:$\mathbb{H}$ の台集合に離散位相を入れた空間 $D$ は局所単連結で、恒等写像 $D\to\mathbb{H}$ は連続な全射である。
  6. 連続写像による逆像は半局所単連結とは限らない:定値写像 $\mathbb{H}\to\{\ast\}$ において、半局所単連結な一点空間の逆像は $\mathbb{H}$ である。

性質

単連結ならば半局所単連結

単連結な位相空間は半局所単連結である。

$X$ を単連結とし、$x\in X$ を任意にとる。$U:=X$$x$ の近傍であり、包含写像 $i\colon X\to X$ は恒等写像なので $i_*$ も恒等写像である。$\pi_1(X,x)$ が自明群なので $i_*$ の像は自明群である。$\square$

局所単連結ならば半局所単連結

局所単連結な位相空間は半局所単連結である。

$X$ を局所単連結とし、$x\in X$ を任意にとる。$V:=X$ に対して単連結な開近傍 $U\ni x$ が存在する。$\pi_1(U,x)$ が自明群なので、群準同型 $i_*\colon\pi_1(U,x)\to\pi_1(X,x)$ の像は自明群である。$\square$

空でない星状集合は単連結

$\mathbb{R}^m$ の空でない部分集合 $S$ が点 $c\in S$ に関して星状ならば、$S$ は単連結である。

弧状連結性:$q,q'\in S$ は線分で $c$ と結ばれるから、$q$ から $c$ へ、次いで $c$ から $q'$ へ進む道が $S$ 内にある。基点 $c$ のループ $\gamma$ に対し $H(s,t):=(1-t)\gamma(s)+tc$ とおくと、星状性から $H$$S$ に値をとり、$H(s,0)=\gamma(s)$$H(s,1)=c$$\gamma(0)=\gamma(1)=c$ から $H(0,t)=H(1,t)=c$ である。よって $\gamma$ は基点を固定したまま定値ループにつながり、$\pi_1(S,c)$ は自明群である。弧状連結で一点で基本群が自明だから、$S$ は単連結である。$\square$

Hawaiianイヤリングは半局所単連結でない

$\mathbb{H}$ は原点 $0$ において半局所単連結性の条件を満たさない。特に $\mathbb{H}$ は半局所単連結でも局所単連結でもない。

$C_n$ への押し潰し。 $n\ge1$ を固定し、$r_n\colon\mathbb{H}\to C_n$ を、$p\in C_n$ なら $r_n(p)=p$$p\notin C_n$ なら $r_n(p)=0$ と定める。$r_n$ は連続である。実際、$p\in C_n\setminus\{0\}$ に対しては、$m\neq n$ なる各 $C_m$$p$ から正の距離にあり、$m\to\infty$$C_m\subset\{|q|\le 2/m\}$$0$ に収束するから、$p$ のある近傍は $C_n$ 以外の円周と交わらず、その上で $r_n$ は恒等写像である。$p\in\mathbb{H}\setminus C_n$ に対しても同様に $p$ のある近傍は $C_n$ と交わらず、その上で $r_n$ は定値写像である。$p=0$ では $|r_n(q)|\le|q|$ が任意の $q$ について成り立つので $q\to0$ のとき $r_n(q)\to0=r_n(0)$ である。
$\gamma_n$$\mathbb{H}$ で非自明。 $C_n$ は円周と同相であり、$\pi_1(C_n,0)\cong\mathbb{Z}$ で、$C_n$ を一周するループ $\gamma_n$ の類が生成元である(HatAT Theorem 1.7)。$\gamma_n$$C_n$ 内のループなので $r_n\circ\gamma_n=\gamma_n$ である。もし $[\gamma_n]$$\pi_1(\mathbb{H},0)$ で自明なら、$(r_n)_*[\gamma_n]=[r_n\circ\gamma_n]=[\gamma_n]$$\pi_1(C_n,0)$ で自明となり、生成元であることに反する。よって $[\gamma_n]\neq1$ in $\pi_1(\mathbb{H},0)$
結論。 $0$ の任意の近傍 $U$ は、ある $\varepsilon>0$ について $\{q\in\mathbb{H}\mid|q|<\varepsilon\}$ を含む。$2/n<\varepsilon$ なる $n$ をとれば $C_n\subset U$ であり、$\gamma_n$$U$ 内のループで、その像 $i_*[\gamma_n]=[\gamma_n]$$\pi_1(\mathbb{H},0)$ で非自明である。よって $i_*$ の像は自明群でない。局所単連結でないことは prop-semilocally-simply-connected-space-from-locally-simply-connected の対偶から従う。$\square$

Hawaiianイヤリングの錐は局所単連結でない

ex-semilocally-simply-connected-space-cone の錐 $A$ は原点 $0$ において局所単連結性の条件を満たさない。

まず $A$$c$ に関して星状であることを確かめる。$q=(1-t)p+tc\in A$$s\in[0,1]$ に対し $(1-s)q+sc=(1-t')p+t'c$$t':=t+s-ts\in[0,1]$ なので $(1-s)q+sc\in A$ である。
$V:=\{q\in A\mid|q|<1/2\}$$0$ の近傍で、頂点 $c$ を含まない。$U$$0\in U\subset V$ なる任意の開近傍とする。$U$ はある $\delta>0$ について $\{q\in A\mid|q|<\delta\}$ を含むので、$2/n<\delta$ なる $n$ をとれば $C_n\times\{0\}\subset U$ であり、ループ $\gamma_n$(第3成分を $0$ として $A$ 内のループとみなす)は $U$ 内にある。
$A\setminus\{c\}$ の点は $(1-t)p+tc=((1-t)p_1,(1-t)p_2,t)$$p=(p_1,p_2)\in\mathbb{H}$$0\le t<1$)と一意に書け、$\rho\colon A\setminus\{c\}\to\mathbb{H}$$\rho(x_1,x_2,x_3):=\bigl(\tfrac{x_1}{1-x_3},\tfrac{x_2}{1-x_3}\bigr)$ は連続である。$U\subset A\setminus\{c\}$ なので $\rho|_U\colon U\to\mathbb{H}$ が定まり、$\rho\circ\gamma_n=\gamma_n$ である。もし $[\gamma_n]$$\pi_1(U,0)$ で自明なら $(\rho|_U)_*[\gamma_n]=[\gamma_n]$$\pi_1(\mathbb{H},0)$ で自明となり、prop-semilocally-simply-connected-space-earring に反する。よって $U$ は単連結でなく、$0$$V$ に含まれる単連結な開近傍を持たない。$\square$

半局所単連結性が保たれない構成

rem-semilocally-simply-connected-space-heredity の 1〜6 の主張が成り立つ。

以下、$\mathbb{H}$ が半局所単連結でないこと(prop-semilocally-simply-connected-space-earring)と、空でない星状集合が単連結であること(prop-semilocally-simply-connected-space-star)を繰り返し使う。

  1. $\mathbb{R}^2$ は空でない凸集合なので単連結、よって半局所単連結。部分空間 $\mathbb{H}$ はそうでない。
  2. 一点空間はループが定値ループしかないので単連結、よって半局所単連結。$\mathbb{H}$ はそうでない。
  3. $\mathbb{H}_+$ は各 $C_n$ の上半円弧 $\{(\tfrac1n(1+\cos\varphi),\tfrac1n\sin\varphi)\mid0\le\varphi\le\pi\}$ の和で、相異なる弧は $0$$\varphi=\pi$)でのみ交わる。$H(q,t)$ を、$q$ が第 $n$ の弧上で角 $\varphi$ の点なら同じ弧上で角 $\pi-(1-t)(\pi-\varphi)$ の点と定める。$0$ では $H(0,t)=0$ である。$q\neq0$ の近傍では一本の弧しか通らず $H$ は連続、$0$ では原点からの距離 $\tfrac2n\cos(\varphi/2)$$\varphi$ について単調減少なので $|H(q,t)|\le|q|$ となり連続である。$H$ は各時刻で $0$ を固定するので、基点 $0$ のループ $\gamma$ に対し $(s,t)\mapsto H(\gamma(s),t)$ は基点を固定して $\gamma$ を定値ループにつなぐ。よって $\pi_1(\mathbb{H}_+,0)$ は自明群であり、各点が自分の弧に沿って $0$ と結ばれるので $\mathbb{H}_+$ は弧状連結、したがって単連結、ゆえに半局所単連結である。$\mathbb{H}_-$$y\mapsto-y$$\mathbb{H}_+$ と同相だから同様。和集合は $\mathbb{H}$ である。
  4. $A$$c=(0,0,1)$ に関して星状(prop-semilocally-simply-connected-space-cone の証明)、$A'$$c'=(0,0,-1)$ に関して同様に星状なので、いずれも単連結で半局所単連結である。$A$ の点の第3成分は $t\ge0$$A'$ の点の第3成分は $-t\le0$ なので、共通部分は第3成分が $0$ の点、すなわち $\mathbb{H}\times\{0\}$ であり、これは $\mathbb{H}$ と同相である。
  5. 離散空間 $D$ では各一点集合が開かつ単連結なので $D$ は局所単連結、よって半局所単連結である。離散空間からの任意の写像は連続なので恒等写像 $D\to\mathbb{H}$ は連続な全射である。
  6. 一点空間 $\{\ast\}$ は半局所単連結で、定値写像 $\mathbb{H}\to\{\ast\}$ による $\{\ast\}$ の逆像は $\mathbb{H}$ である。$\square$
直和と直積による保存

$X,Y$ が半局所単連結ならば、直和 $X\sqcup Y$ と直積 $X\times Y$ も半局所単連結である。

直和。 $z\in X\sqcup Y$ とし、$z\in X$ とする。$X$$X\sqcup Y$ の開集合なので、$X$ における $z$ の近傍 $U$(半局所単連結性の条件を満たすもの)は $X\sqcup Y$ における $z$ の近傍でもある。$U$ 内の $z$ を基点とするループは $X$ の中で定値ループにつながり、そのホモトピーは $X\sqcup Y$ の中のホモトピーでもある。$z\in Y$ の場合も同様である。
直積。 $(x,y)\in X\times Y$ とし、$x$ の近傍 $U\subset X$$y$ の近傍 $V\subset Y$ をそれぞれ半局所単連結性の条件を満たすようにとる。$U\times V$$(x,y)$ の近傍である。$U\times V$ 内の $(x,y)$ を基点とするループ $\gamma=(\alpha,\beta)$ について、$\alpha$$U$ 内の $x$ を基点とするループなので $X$ の中で基点を固定したホモトピー $F$ により定値ループへつながり、同様に $\beta$$Y$ の中でホモトピー $G$ により定値ループへつながる。すると $(F,G)$$X\times Y$ の中で $\gamma$ を基点 $(x,y)$ を固定したまま定値ループへつなぐホモトピーである。$\square$

強さの連鎖

次の含意が成り立つ。

  1. 可縮 $\Longrightarrow$ 単連結 $\Longrightarrow$ 半局所単連結
  2. 局所可縮 $\Longrightarrow$ 局所単連結 $\Longrightarrow$ 半局所単連結
    各連鎖の後半は prop-semilocally-simply-connected-space-from-simply-connectedprop-semilocally-simply-connected-space-from-locally-simply-connected で示した。前半の「可縮ならば単連結」は、ホモトピー同値な空間の基本群が同型であること(HatAT Proposition 1.18)から従い、本記事では引用にとどめる。ここで位相空間が局所可縮であるとは、各点が可縮な開近傍からなる近傍の基本系を持つことをいい、「局所可縮ならば局所単連結」も同じ引用から従う。本記事の例で用いる単連結性はすべて prop-semilocally-simply-connected-space-star により記事内で証明しており、この引用に依存しない。各連鎖の後半の含意の逆は成り立たない:$S^1$ex-semilocally-simply-connected-space-locally-simply-connected)は単連結でないが局所単連結であり、ex-semilocally-simply-connected-space-cone の錐は半局所単連結だが局所単連結でない。前半の含意の逆(単連結だが可縮でない空間、局所単連結だが局所可縮でない空間の存在)は本記事では扱わない。
普遍被覆の存在(引用)

弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間 $X$ について、$X$ が単連結な被覆空間(普遍被覆)を持つことと、$X$ が半局所単連結であることは同値である。

定理の扱い

この定理は HatAT §1.3 による。本記事では証明を与えず引用にとどめる(構成と証明は 被覆空間 の担当)。半局所単連結性が被覆空間論で仮定される理由はこの定理にある。

補足:三つの性質の対比

空間単連結局所単連結半局所単連結
$\mathbb{R}^n$、空でない凸集合成り立つ成り立つ成り立つ
円周 $S^1$成り立たない成り立つ成り立つ
Hawaiianイヤリングの錐 $A$成り立つ成り立たない(prop-semilocally-simply-connected-space-cone成り立つ
Hawaiianイヤリング $\mathbb{H}$成り立たない成り立たない成り立たない(prop-semilocally-simply-connected-space-earring

三つの性質はいずれも「ループが縮むか」を問うが、単連結は空間全体で、局所単連結は小さい近傍の中で、半局所単連結は小さい近傍のループを空間全体の中で縮めることを要求する。局所単連結と半局所単連結の差は、錐 $A$ のように「小さい穴が、遠くの点(頂点)を経由すると塞がる」空間で現れる。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, §1.3(半局所単連結性と普遍被覆の存在)、Theorem 1.7(円周の基本群)、Proposition 1.18(ホモトピー同値と基本群)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について寄付する