Grönwallの不等式(Grönwall's inequality)とは、区間上の連続関数 $\psi$ が $0$ 以上の連続関数 $\beta$ について $\psi(t)\le\alpha(t)+\int_{t_0}^{t}\beta(s)\psi(s)\,ds$ を満たすとき、$\psi$ を等号の積分方程式の解で上から押さえる評価であり、$\alpha$ が単調非減少なら $\psi(t)\le\alpha(t)\exp\bigl(\int_{t_0}^{t}\beta(s)\,ds\bigr)$ となる。導関数についての微分形 $u'\le\beta u$ では $\beta$ の符号を問わず、数列についての離散形もある。常微分方程式の解の一意性、初期値や右辺のずれへの依存性、Euler 法の誤差の評価に使われ、積分形の $\beta\ge0$ や線形性の仮定は外せない。
前提知識: 微分積分学の基本定理, 平均値の定理, 常微分方程式
微分方程式の解を調べるとき、未知の関数 $\psi$ について「時刻 $t$ での値は、初めの量と、それまでの $\psi$ の積分とで上から押さえられる」という形の不等式がよく現れる。Grönwall の不等式 は、このような積分不等式から $\psi$ そのものの上界を指数関数の形で取り出す定理である。積分の中に未知の $\psi$ が残っているのに評価が閉じることが要点で、不等号を等号に替えた積分方程式の解が、ちょうどその上界になる。
この記事では、係数が時刻とともに変わる一般の積分形と、そこから従う単調な場合の形、導関数についての微分形、数列についての離散形を述べて証明する。応用として、右辺の異なる 2 つの常微分方程式の解の差の評価と、Euler 法の誤差の評価を導く。最後に、係数の符号・単調性・線形性などの仮定を外すと結論が崩れることを反例で確かめる。
この記事を通して $t_0< t_1$ とし、区間 $[t_0,t_1]$ の上の関数を考える。連続関数 $\beta$ に対して
$$
B(t):=\int_{t_0}^{t}\beta(s)\,ds\qquad(t_0\le t\le t_1)
$$
とおく。$B(t)-B(s)=\int_s^t\beta(r)\,dr$ である。$\mathbb{R}^n$ のベクトルの大きさ $\lvert\cdot\rvert$ は Euclid ノルムとする。閉区間 $[t_0,t_1]$ 上の方程式 $x'=f(t,x)$ の解とは、微分可能な写像 $x\colon[t_0,t_1]\to\mathbb{R}^n$(端点では片側の微分係数をとる)で、すべての $t$ で $(t,x(t))$ が $f$ の定義域に入り $x'(t)=f(t,x(t))$ となるものをいう。$f$ が連続なら $x'(t)=f(t,x(t))$ は連続関数の合成で連続なので、微分積分学の基本定理 により $x(t)=x(t_0)+\int_{t_0}^tf(s,x(s))\,ds$ が成り立つ(常微分方程式 の補題「積分方程式への書き換え」と同じ議論)。
$\psi,\alpha\colon[t_0,t_1]\to\mathbb{R}$ を連続関数とし、$\beta\colon[t_0,t_1]\to[0,\infty)$ を $0$ 以上の値をとる連続関数とする。すべての $t\in[t_0,t_1]$ について
$$
\psi(t)\le\alpha(t)+\int_{t_0}^{t}\beta(s)\psi(s)\,ds
$$
が成り立つなら、すべての $t\in[t_0,t_1]$ について
$$
\psi(t)\le\alpha(t)+\int_{t_0}^{t}\alpha(s)\beta(s)\exp\Bigl(\int_s^t\beta(r)\,dr\Bigr)ds
$$
である。
$\Phi(t):=\int_{t_0}^{t}\beta(s)\psi(s)\,ds$ とおく。被積分関数 $\beta\psi$ は連続なので、微分積分学の基本定理 により $\Phi$ は微分可能で $\Phi'=\beta\psi$ は連続であり、$\Phi(t_0)=0$ である。仮定は $\psi\le\alpha+\Phi$ と書ける。$\beta\ge0$ なので、この両辺に $\beta(t)$ を掛けても向きは変わらず、
$$
\Phi'(t)=\beta(t)\psi(t)\le\beta(t)\alpha(t)+\beta(t)\Phi(t)
$$
となる。$B'=\beta$ だから
$$
\frac{d}{dt}\Bigl(e^{-B(t)}\Phi(t)\Bigr)=e^{-B(t)}\bigl(\Phi'(t)-\beta(t)\Phi(t)\bigr)\le e^{-B(t)}\alpha(t)\beta(t)
$$
である。左辺の導関数は連続なので、$t_0$ から $t$ まで積分すると、$\Phi(t_0)=0$、$B(t_0)=0$ から
$$
e^{-B(t)}\Phi(t)\le\int_{t_0}^{t}e^{-B(s)}\alpha(s)\beta(s)\,ds
$$
を得る。両辺に $e^{B(t)}>0$ を掛けると
$$
\Phi(t)\le\int_{t_0}^{t}\alpha(s)\beta(s)e^{B(t)-B(s)}\,ds
$$
であり、これを $\psi(t)\le\alpha(t)+\Phi(t)$ に代入すれば結論になる。$\square$
$\beta\ge0$ を使ったのは、仮定の不等式に $\beta(t)$ を掛ける 1 か所だけである。この仮定は外せない(「反例」の節の表の 1 行目)。
評価はこれ以上よくならない。実際、不等号を等号に替えた積分方程式 $u(t)=\alpha(t)+\int_{t_0}^t\beta(s)u(s)\,ds$ の連続解 $u$ については、上の証明の不等号がすべて等号になり、$u$ は結論の右辺に一致する。言い換えると、仮定の不等式を満たす関数は、等式を満たす関数より下にある。
$\alpha$ が単調なときは、結論の積分を計算して簡単な形にできる。応用で使うのはたいていこの形である。
thm-gw-integral の仮定に加えて $\alpha$ が単調非減少なら、すべての $t\in[t_0,t_1]$ について
$$
\psi(t)\le\alpha(t)\exp\Bigl(\int_{t_0}^{t}\beta(s)\,ds\Bigr)
$$
である。とくに $\alpha$ と $\beta$ が定数なら $\psi(t)\le\alpha e^{\beta(t-t_0)}$ である。
$t_0\le s\le t$ なら $\alpha(s)\le\alpha(t)$ であり、$\beta(s)e^{B(t)-B(s)}\ge0$ なので
$$
\int_{t_0}^{t}\alpha(s)\beta(s)e^{B(t)-B(s)}\,ds\le\alpha(t)\int_{t_0}^{t}\beta(s)e^{B(t)-B(s)}\,ds=\alpha(t)\Bigl[-e^{B(t)-B(s)}\Bigr]_{s=t_0}^{s=t}=\alpha(t)\bigl(e^{B(t)}-1\bigr)
$$
である。$\alpha(t)$ が負のときもこの計算はそのまま成り立つ。thm-gw-integral の結論に代入すると $\psi(t)\le\alpha(t)+\alpha(t)(e^{B(t)}-1)=\alpha(t)e^{B(t)}$ となる。$\square$
$\alpha$ と $\beta$ が定数の場合が、常微分方程式 の補題「定数係数の Grönwall 評価」の形である。$\alpha=0$ とおくと、解の一意性の証明に使う次の形になる。
$\psi\colon[t_0,t_1]\to[0,\infty)$ を $0$ 以上の値をとる連続関数とし、$\beta$ を thm-gw-integral と同じとする。すべての $t$ で $\psi(t)\le\int_{t_0}^{t}\beta(s)\psi(s)\,ds$ なら、$\psi$ は恒等的に $0$ である。
$\alpha=0$ は単調非減少なので、cor-gw-monotone により $\psi(t)\le0\cdot e^{B(t)}=0$ である。$\psi\ge0$ と合わせて $\psi=0$ となる。$\square$
次の形は、方程式の右辺に別の小さなずれが加わるときに使う。
$\psi\colon[t_0,t_1]\to\mathbb{R}$ を連続関数とし、$\alpha\in\mathbb{R}$、$\beta>0$、$\gamma\in\mathbb{R}$ を定数とする。すべての $t\in[t_0,t_1]$ について
$$
\psi(t)\le\alpha+\int_{t_0}^{t}\bigl(\beta\psi(s)+\gamma\bigr)\,ds
$$
なら、すべての $t\in[t_0,t_1]$ について
$$
\psi(t)\le\alpha e^{\beta(t-t_0)}+\frac{\gamma}{\beta}\bigl(e^{\beta(t-t_0)}-1\bigr)
$$
である。
$\tilde\psi:=\psi+\gamma/\beta$ とおくと $\beta\tilde\psi=\beta\psi+\gamma$ なので、仮定は
$$
\tilde\psi(t)\le\Bigl(\alpha+\frac{\gamma}{\beta}\Bigr)+\int_{t_0}^{t}\beta\tilde\psi(s)\,ds
$$
と書ける。定数 $\alpha+\gamma/\beta$ は単調非減少なので、cor-gw-monotone により $\tilde\psi(t)\le(\alpha+\gamma/\beta)e^{\beta(t-t_0)}$ であり、両辺から $\gamma/\beta$ を引けば結論になる。$\square$
$A\colon[t_0,t_1]\to M_n(\mathbb{R})$ を連続な行列値関数とし、$\| A(t)\|:=\max_{\lvert v\rvert=1}\lvert A(t)v\rvert$ とおく($t$ について連続である)。$x\colon[t_0,t_1]\to\mathbb{R}^n$ が $x'=A(t)x$ を満たすなら
$$
\lvert x(t)\rvert\le\lvert x(t_0)\rvert\exp\Bigl(\int_{t_0}^{t}\| A(s)\|\,ds\Bigr)
$$
である。実際、$x(t)=x(t_0)+\int_{t_0}^tA(s)x(s)\,ds$(常微分方程式 の補題「積分方程式への書き換え」)から
$$
\lvert x(t)\rvert\le\lvert x(t_0)\rvert+\int_{t_0}^{t}\| A(s)\|\,\lvert x(s)\rvert\,ds
$$
であり、$\psi=\lvert x\rvert$、定数 $\alpha=\lvert x(t_0)\rvert$、$\beta=\| A\|$ として cor-gw-monotone を使えばよい。$n=1$、$A(t)=a(t)\ge0$、$x(t_0)>0$ のとき、解 $x(t)=x(t_0)\exp\bigl(\int_{t_0}^ta(s)\,ds\bigr)$ は等号を与える。
$\| A(t)\|$ が $t$ について連続であることは、$\bigl\lvert\| A(t)\|-\| A(s)\|\bigr\rvert\le\| A(t)-A(s)\|$ と、$\| A(t)-A(s)\|$ が成分の差の 2 乗和の平方根以下であることによる。
導関数についての不等式なら、係数 $\beta$ の符号を問わずに同じ形の評価が成り立つ。
$u\colon[t_0,t_1]\to\mathbb{R}$ を連続で、開区間 $(t_0,t_1)$ で微分可能な関数とし、$\beta,\gamma\colon[t_0,t_1]\to\mathbb{R}$ を連続関数とする(符号は問わない)。すべての $t\in(t_0,t_1)$ で
$$
u'(t)\le\beta(t)u(t)+\gamma(t)
$$
なら、すべての $t\in[t_0,t_1]$ について
$$
u(t)\le u(t_0)e^{B(t)}+\int_{t_0}^{t}\gamma(s)e^{B(t)-B(s)}\,ds
$$
である。とくに $\gamma=0$ なら $u(t)\le u(t_0)\exp\bigl(\int_{t_0}^t\beta(s)\,ds\bigr)$ である。
$$
v(t):=e^{-B(t)}u(t)-\int_{t_0}^{t}e^{-B(s)}\gamma(s)\,ds
$$
とおく。$v$ は $[t_0,t_1]$ で連続、$(t_0,t_1)$ で微分可能で、
$$
v'(t)=e^{-B(t)}\bigl(u'(t)-\beta(t)u(t)-\gamma(t)\bigr)\le0
$$
である。平均値の定理 により、$t_0\le s< t\le t_1$ なら $v(t)-v(s)=v'(\xi)(t-s)\le0$ となる $\xi\in(s,t)$ があるので、$v$ は単調非増加である。よって $v(t)\le v(t_0)=u(t_0)$ であり、両辺に $e^{B(t)}$ を掛ければ結論になる。$\square$
積分形と比べると、微分形では $\beta$ が負でもよい。たとえば $u'\le-u$ なら $u(t)\le u(t_0)e^{-(t-t_0)}$ で、$u$ は指数関数的に小さくなる。積分形でこの結論を得ようとして $\beta\equiv-1$ とすると、結論は一般に成り立たない(表の 1 行目)。prf-gw-integral では仮定の不等式に $\beta(t)$ を掛けたが、$\beta(t)<0$ だとそこで不等号の向きが逆になり、$\Phi$ についての微分の不等式が得られないからである。
数列についても同じ形の評価が成り立つ。数値計算の誤差の評価で使われる。
$\alpha\in\mathbb{R}$ とし、実数列 $(y_k)_{k\ge0}$ と $0$ 以上の実数列 $(\beta_k)_{k\ge0}$ が、すべての $n\ge0$ について
$$
y_n\le\alpha+\sum_{k=0}^{n-1}\beta_ky_k
$$
を満たすとする($n=0$ では右辺の和は $0$)。このとき、すべての $n\ge0$ について
$$
y_n\le\alpha\prod_{k=0}^{n-1}(1+\beta_k)
$$
である。さらに $\alpha\ge0$ なら $y_n\le\alpha\exp\bigl(\sum_{k=0}^{n-1}\beta_k\bigr)$ である。
$z_n:=\alpha+\sum_{k=0}^{n-1}\beta_ky_k$ とおくと、仮定は $y_n\le z_n$ である。$\beta_n\ge0$ なので
$$
z_{n+1}=z_n+\beta_ny_n\le z_n+\beta_nz_n=(1+\beta_n)z_n
$$
となる。$z_0=\alpha$ から始めて、$1+\beta_n>0$ を掛けても向きが変わらないことを使って帰納法を回すと $z_n\le\alpha\prod_{k=0}^{n-1}(1+\beta_k)$ を得る。$y_n\le z_n$ から 1 つ目の主張が従う。$\alpha\ge0$ なら、$1+x\le e^x$ から $\prod_{k< n}(1+\beta_k)\le\exp(\sum_{k< n}\beta_k)$ である。$\square$
方程式の右辺 $f$ を、それに近い $g$ に取り替えると、解はどれだけずれるか。prop-gw-affine によって、初期値のずれと右辺のずれの両方を一度に評価できる。
$U\subset\mathbb{R}\times\mathbb{R}^n$ とし、$f,g\colon U\to\mathbb{R}^n$ を連続写像とする。$x,y\colon[t_0,t_1]\to\mathbb{R}^n$ を、それぞれ $x'=f(t,x)$、$y'=g(t,y)$ の解で、グラフが $U$ に含まれるものとする。定数 $L>0$、$M\ge0$ があって、すべての $t\in[t_0,t_1]$ で
$$
\bigl\lvert f(t,x(t))-f(t,y(t))\bigr\rvert\le L\,\lvert x(t)-y(t)\rvert,\qquad\bigl\lvert f(t,y(t))-g(t,y(t))\bigr\rvert\le M
$$
が成り立つなら、すべての $t\in[t_0,t_1]$ について
$$
\lvert x(t)-y(t)\rvert\le\lvert x(t_0)-y(t_0)\rvert\,e^{L(t-t_0)}+\frac{M}{L}\bigl(e^{L(t-t_0)}-1\bigr)
$$
である。
常微分方程式 の補題「積分方程式への書き換え」により
$$
x(t)-y(t)=x(t_0)-y(t_0)+\int_{t_0}^{t}\Bigl(\bigl(f(s,x(s))-f(s,y(s))\bigr)+\bigl(f(s,y(s))-g(s,y(s))\bigr)\Bigr)ds
$$
である。三角不等式と仮定から、連続関数 $\psi(t):=\lvert x(t)-y(t)\rvert$ は
$$
\psi(t)\le\psi(t_0)+\int_{t_0}^{t}\bigl(L\psi(s)+M\bigr)\,ds
$$
を満たす。prop-gw-affine を $\alpha=\psi(t_0)$、$\beta=L$、$\gamma=M$ で使えば結論になる。$\square$
$f$ が $x$ について、両方の解のグラフを含む集合の上で一様に Lipschitz 定数 $L$ をもち、その集合の上で $\lvert f-g\rvert\le M$ なら、仮定は満たされる。両方の解のグラフを含む集合の上の上限で $L$ と $M$ を定めた形の定理は、Tes12 Theorem 2.8(p. 43)にある。$M=0$(同じ方程式)の場合が、常微分方程式 の定理「初期値への連続依存性」の $t\ge t_0$ の側である。時刻 $t< t_0$ の側は、時間を反転した方程式に当てれば同じ評価が得られる。有界な時間区間の上では、右辺を $M$ だけずらしても解は $M$ に比例する量しかずれない。
初期値問題 $x'=f(t,x)$、$x(t_0)=x_0$ の近似解を、刻み幅 $h>0$ で $t_k:=t_0+kh$ とおき
$$
x_{k+1}:=x_k+h\,f(t_k,x_k)\qquad(k\ge0)
$$
で順に定める方法を Euler 法 という(Tes12 §2.7、式 (2.69)、p. 54)。微分を差分で置き換えたものである。
$f\colon[t_0,t_1]\times\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}^n$ を連続写像とし、定数 $L>0$ があって、すべての $t$ と $u,v\in\mathbb{R}^n$ で $\lvert f(t,u)-f(t,v)\rvert\le L\lvert u-v\rvert$ とする。$x\colon[t_0,t_1]\to\mathbb{R}^n$ を $x'=f(t,x)$、$x(t_0)=x_0$ の解で、2 回連続微分可能かつ $\lvert x''(t)\rvert\le M$ となるものとする。正の整数 $N$ について $h:=(t_1-t_0)/N$ とし、$x_k$ を上の Euler 法で定めると、$0\le k\le N$ について
$$
\lvert x(t_k)-x_k\rvert\le\frac{Mh}{2L}\bigl(e^{L(t_k-t_0)}-1\bigr)
$$
である。とくに誤差は $[t_0,t_1]$ 全体で刻み幅 $h$ に比例する量で押さえられる。
1 歩の誤差。 $x'(t_k)=f(t_k,x(t_k))$ なので
$$
x(t_{k+1})=x(t_k)+h\,f(t_k,x(t_k))+R_k,\qquad R_k:=\int_{t_k}^{t_{k+1}}\bigl(x'(s)-x'(t_k)\bigr)\,ds
$$
である。$\lvert x'(s)-x'(t_k)\rvert=\bigl\lvert\int_{t_k}^sx''(r)\,dr\bigr\rvert\le M(s-t_k)$ だから $\lvert R_k\rvert\le\int_{t_k}^{t_{k+1}}M(s-t_k)\,ds=Mh^2/2$ である。
誤差の漸化式。 $e_k:=\lvert x(t_k)-x_k\rvert$ とおくと、$x(t_{k+1})-x_{k+1}=x(t_k)-x_k+h\bigl(f(t_k,x(t_k))-f(t_k,x_k)\bigr)+R_k$ と Lipschitz 条件から
$$
e_{k+1}\le(1+hL)e_k+c,\qquad c:=\frac{Mh^2}{2}
$$
であり、$e_0=0$ である。
帰納法。 $k$ についての帰納法で $e_k\le c\sum_{j=0}^{k-1}(1+hL)^j$ が分かる($e_{k+1}\le(1+hL)c\sum_{j< k}(1+hL)^j+c=c\sum_{j\le k}(1+hL)^j$)。等比数列の和と $1+hL\le e^{hL}$ から
$$
e_k\le c\,\frac{(1+hL)^k-1}{hL}\le\frac{c}{hL}\bigl(e^{khL}-1\bigr)=\frac{Mh}{2L}\bigl(e^{L(t_k-t_0)}-1\bigr)
$$
である。$\square$
これは prop-gw-discrete と同じ考え方(漸化式の右辺を、等号で解いた数列で押さえる)を、定数項 $c$ を伴う形で使ったものである。
$[0,1]$ で $x'=x$、$x(0)=1$ とする。$L=1$ で、解 $x(t)=e^t$ は $\lvert x''\rvert\le e=:M$ を満たす。Euler 法は $x_{k+1}=(1+h)x_k$ なので $x_N=(1+h)^N$ である。thm-gw-euler の評価は $t=1$ で $\frac{eh}{2}(e-1)\approx2.34h$ である。$h=0.1$ では $x_{10}=1.1^{10}\approx2.5937$ で、実際の誤差 $e-1.1^{10}\approx0.1245$ は評価 $0.2335$ 以下である。$h=0.01$ では実際の誤差は約 $0.0135$、評価は約 $0.0234$ で、どちらも $h$ にほぼ比例して小さくなる。
各行は 1 つの仮定だけを外したもので、残りの仮定は満たされている。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\beta\ge0$(積分形) | $[0,1]$ 上で $\beta\equiv-1$、$\alpha\equiv1$、$\psi\equiv\frac12$ | thm-gw-integral の結論 $\psi(t)\le e^{-t}$ |
| $\alpha$ が単調非減少 | $[0,1]$ 上で $\alpha(t)=1-t$、$\beta\equiv1$、$\psi\equiv1$ | cor-gw-monotone の結論 $\psi(t)\le(1-t)e^{t}$ |
| 積分の中が $\psi$ について 1 次 | $[0,1]$ 上で $\psi(t)=t^2$、不等式 $\psi(t)\le\int_0^t2\sqrt{\psi(s)}\,ds$ | cor-gw-zero の結論 $\psi\equiv0$ |
| $u$ が $t_0$ で連続 | $[0,1]$ 上で $u(0)=0$、$t>0$ で $u(t)=1$、$\beta=\gamma\equiv0$ | thm-gw-differential の結論 $u(t)\le u(0)$ |
1 行目:仮定は $\frac12\le1-\frac t2$($0\le t\le1$)で成り立つ。結論の右辺は $1+\int_0^t(-1)e^{-(t-s)}\,ds=1-(1-e^{-t})=e^{-t}$ だが、$t=1$ で $\psi(1)=\frac12>e^{-1}\approx0.368$ である。
2 行目:仮定は $1\le(1-t)+\int_0^t1\,ds=1$ で、等号で成り立つ。cor-gw-monotone の右辺は $t=1$ で $0$ になり、$\psi(1)=1$ はこれを超える。一方 thm-gw-integral の右辺は $(1-t)+\int_0^t(1-s)e^{t-s}\,ds=1$ であり、こちらは正しく成り立つ。単調性は系の形に簡単にする所だけで使われている。
3 行目:$\int_0^t2\sqrt{s^2}\,ds=t^2$ なので、仮定は等号で成り立つ。$s>0$ で $2\sqrt{\psi(s)}=\frac2s\psi(s)$ なので、$2\sqrt{\psi(s)}\le\beta(s)\psi(s)$ となるには $\beta(s)\ge\frac2s$ が要り、そのような連続関数 $\beta\colon[0,1]\to[0,\infty)$ はない。したがってこの不等式は積分形の仮定の形にならない。$\psi(t)=t^2$ は $0$ でない。この不等式は、方程式 $x'=2\sqrt{\lvert x\rvert}$、$x(0)=0$ の 2 つの解 $0$ と $t^2$ の差が満たすもので、一意性が崩れる例(常微分方程式 の例「反例:一意性が崩れる」と同じ現象)になっている。
4 行目:$(0,1)$ で $u'=0=\beta u+\gamma$ なので微分の不等式は成り立つが、$u(t)=1>0=u(0)$ である。prf-gw-differential は、$v$ が閉区間 $[t_0,t_1]$ で連続であることを平均値の定理に使っている。
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