van der Waerdenの定理

同義語:ファン・デル・ヴェルデンの定理van der Waerden's theorem

概要

van der Waerdenの定理(van der Waerden's theorem)とは、色の数 $r$ と長さ $k$ を任意に固定すると、ある正の整数 $N$ があって、$1,2,\dots,N$ をどのように $r$ 色で塗り分けても、同じ色の $k$ 項の等差数列が必ず現れる、という組合せ論の定理である。そのような最小の $N$ を van der Waerden 数 $W(r,k)$ という。たとえば $1$ から $8$ までは赤 $\{1,2,5,6\}$、青 $\{3,4,7,8\}$ と塗れば同じ色の 3 項の等差数列はないが、$1$ から $9$ まではどう 2 色で塗っても現れ、$W(2,3)=9$ である。Ramsey 理論の代表的な定理で、単色の無限等差数列の存在までは保証しない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 等差数列, 鳩の巣原理, 数学的帰納法
$1$ から $8$ までの整数を赤と青の 2 色で塗り、同じ色の 3 つの数が等差数列をなさない($x,x+d,x+2d$ が同じ色にならない)ようにしたい。
$$ \text{赤}:\{1,2,5,6\},\qquad\text{青}:\{3,4,7,8\} $$
と塗るとうまくいく。赤の数から 3 つ選ぶと $1,2,5$、$1,2,6$、$1,5,6$、$2,5,6$ のどれも等差数列でなく、青も各数に $2$ を足しただけなので同じである。ところが $1$ から $9$ までの整数は、どう 2 色で塗っても同じ色の 3 項の等差数列が現れる(prop-van-der-waerden-theorem-w23)。
色の数 $r$ と長さ $k$ をどう決めても、$1,2,\dots,N$ を $r$ 色で塗るとき $N$ が十分大きければ、同じ色の $k$ 項の等差数列が必ず現れる。これが B. L. van der Waerden が 1927 年に発表した van der Waerden の定理 である(vdW27)。この主張は P. J. H. Baudet の予想として知られていたものである。十分大きな構造には必ず規則的な部分構造が現れるという型の定理(Ramsey理論)の代表的な結果であり、同じ色の $x,y,x+y$ を見つける Schurの定理(和のない集合) と並ぶ、整数の塗り分けに関する古典的な定理である。

定義

以下、正の整数全体を $\mathbb{Z}_{>0}$ と書き、$[N]:=\{1,2,\dots,N\}$ とおく。

等差数列と塗り分け

$k\ge1$ とする。整数 $a$ と正の整数 $d$ によって $\{a,a+d,a+2d,\dots,a+(k-1)d\}$ と表される集合を $k$ 項の等差数列 といい、$d$ をその 公差 という。公差は $1$ 以上とする。
$r\ge1$ とする。集合 $X$ の $r$ 色の塗り分け とは写像 $\chi\colon X\to\{1,\dots,r\}$ のことである。$X$ の部分集合 $Y$ 上で $\chi$ が一定であるとき、$Y$ は($\chi$ について)単色 であるという。

van der Waerden数

$r,k\ge1$ とする。$[N]$ のどの $r$ 色の塗り分けにも単色の $k$ 項の等差数列があるような最小の正の整数 $N$ を van der Waerden 数 といい、$W(r,k)$ と書く。

$[N]$ の塗り分けは $[N+1]$ の塗り分けの制限なので、$[N]$ で単色の $k$ 項の等差数列が必ず現れるなら $[N+1]$ でも現れる。したがって、$W(r,k)$ が存在すれば「$N\ge W(r,k)$ なら必ず現れ、$N< W(r,k)$ なら現れないように塗れる」。$W(r,k)$ が存在すること(有限であること)が van der Waerden の定理の内容である。

定理

van der Waerdenの定理

$r\ge1$、$k\ge1$ とする。ある正の整数 $N$ があって、$[N]$ をどのように $r$ 色で塗り分けても、単色の $k$ 項の等差数列がある。すなわち $W(r,k)$ は存在する。

証明の方針

証明は thm-van-der-waerden-theorem-general で、長さ $k$ に関する帰納法によって与える。その前に、小さい場合を直接に確かめる。$k=1$、$k=2$ の場合は鳩の巣原理から従い(prop-van-der-waerden-theorem-small)、$r=2$、$k=3$ の場合は場合分けで $W(2,3)=9$ を示す(prop-van-der-waerden-theorem-w23)。

自然数全体の塗り分け

$\mathbb{Z}_{>0}$ を有限個の色で塗り分けると、ある 1 つの色の数の集合は、任意の長さの等差数列を含む。

$r$ 色で塗り分けたとする。各 $k\ge1$ について、塗り分けを $[W(r,k)]$ に制限すると単色の $k$ 項の等差数列があるので、その色を $c_k$ とする。$c_1,c_2,\dots$ は $r$ 個の値しかとらないので、ある色 $c$ が無限に多くの $k$ で $c_k=c$ となる。任意の $\ell\ge1$ について、$c_k=c$ となる $k\ge\ell$ をとると、色 $c$ の $k$ 項の等差数列の最初の $\ell$ 項は色 $c$ の $\ell$ 項の等差数列である。$\square$

ただし、単色の無限等差数列があるとは限らない(ex-van-der-waerden-theorem-infinite-ap)。

小さい場合

長さが1と2の場合

$r\ge1$ について $W(r,1)=1$、$W(r,2)=r+1$ である。

1 項の等差数列は 1 つの数 $\{a\}$ であり、いつも単色なので $W(r,1)=1$ である。
2 項の等差数列は相異なる 2 数 $\{a,a+d\}$($d\ge1$)であり、どの相異なる 2 数も公差をその差として 2 項の等差数列をなす。$[r+1]$ を $r$ 色で塗ると、鳩の巣原理により同じ色の相異なる 2 数があり、それが単色の 2 項の等差数列である。一方 $[r]$ の各数に相異なる色を塗れば単色の 2 項の等差数列はない。したがって $W(r,2)=r+1$ である。$\square$

2色と3項の場合

$W(2,3)=9$ である。すなわち、$[8]$ には単色の 3 項の等差数列のない 2 色の塗り分けがあり、$[9]$ のどの 2 色の塗り分けにも単色の 3 項の等差数列がある。

冒頭の塗り分け(赤 $\{1,2,5,6\}$、青 $\{3,4,7,8\}$)は $[8]$ の塗り分けで、単色の 3 項の等差数列をもたない。したがって $W(2,3)\ge9$ である。
$[9]$ を赤と青の 2 色で、単色の 3 項の等差数列がないように塗れたとして矛盾を導く。以下、「$(x,y,z)$ により」は、等差数列 $x,y,z$ が単色でないことから残りの 1 数の色が決まることを表す。
(i) $4$ と $6$ が同じ色の場合。色の名前を入れ替えて、どちらも赤としてよい。$(4,5,6)$ により $5$ は青、$(2,4,6)$ により $2$ は青、$(4,6,8)$ により $8$ は青である。すると $2,5,8$(公差 $3$)がすべて青になり、矛盾する。
(ii) $4$ と $6$ が異なる色の場合。色の名前を入れ替えて、$4$ を赤、$6$ を青としてよい。

  • $5$ が赤なら:$(3,4,5)$ により $3$ は青、$(3,6,9)$ により $9$ は赤、$(1,5,9)$ により $1$ は青、$(1,2,3)$ により $2$ は赤、$(2,5,8)$ により $8$ は青、$(6,7,8)$ により $7$ は赤である。すると $5,7,9$ がすべて赤になり、矛盾する。
  • $5$ が青なら:$(5,6,7)$ により $7$ は赤、$(1,4,7)$ により $1$ は青、$(1,5,9)$ により $9$ は赤、$(7,8,9)$ により $8$ は青、$(2,5,8)$ により $2$ は赤、$(2,3,4)$ により $3$ は青である。すると $1,3,5$ がすべて青になり、矛盾する。
    どの場合も矛盾するので、$W(2,3)\le9$ である。$\square$

$[8]$ の 2 色の塗り分けで単色の 3 項の等差数列をもたないものは、冒頭の塗り分け(赤赤青青赤赤青青)と、その色を入れ替えたもの、および赤青赤青青赤青赤、赤青青赤赤青青赤とそれぞれの色を入れ替えたもの、の 6 通りだけである($2^8=256$ 通りをすべて調べて確かめられる。以下の議論ではこの事実は使わない)。

一般の場合の証明

一般の場合は、長さ $k$ に関する帰納法で示す。$k$ 項の場合から $k+1$ 項の場合に進むために、次の言葉を使う。$k$ 項の等差数列 $A=\{a,a+d,\dots,a+(k-1)d\}$ に対し、$A$ に続く次の項 $a+kd$ を $A$ の 焦点 という。$A$ が単色で、焦点も $A$ と同じ色なら、$A$ に焦点を加えた $k+1$ 項の等差数列が単色になる。そこで、焦点が共通で色がすべて異なる単色の $k$ 項の等差数列をたくさん作り、色の数 $r$ 個まで増やせば、共通の焦点の色はどれかと一致せざるをえない、というのが証明の考え方である(「色の集中」とよばれる)。

色の集中

$k\ge2$ とし、すべての $r'\ge1$ について $W(r',k)$ が存在すると仮定する。$r\ge1$ を固定する。このとき $s=1,\dots,r$ のそれぞれについて、次の性質をもつ正の整数 $N_s$ がある。
$[N_s]$ の任意の $r$ 色の塗り分け $\chi$ について、次の (α)、(β) の少なくとも一方が成り立つ。

  • (α) $[N_s]$ に単色の $k+1$ 項の等差数列がある。
  • (β) $[N_s]$ に含まれる $s$ 個の $k$ 項の等差数列 $A_1,\dots,A_s$ で、各 $A_i$ は単色、$A_1,\dots,A_s$ の色は互いに異なり、焦点がすべて等しく、その共通の焦点 $f$ が $f\le2N_s$ を満たすものがある。

$s$ に関する帰納法で示す。
$s=1$ の場合。 $N_1:=W(r,k)$ とおく。$[N_1]$ の $r$ 色の塗り分けには単色の $k$ 項の等差数列 $A_1=\{a,a+d,\dots,a+(k-1)d\}\subset[N_1]$ がある。$k\ge2$ なので $d\le a+(k-1)d\le N_1$ であり、焦点は $a+kd\le N_1+d\le2N_1$ を満たす。よって (β) が成り立つ。
$s$ から $s+1$ へ($s< r$)。 $N:=N_s$ とし、$M:=W(r^{2N},k)$(仮定により存在する)、$N_{s+1}:=2NM$ とおく。$\chi$ を $[2NM]$ の $r$ 色の塗り分けとする。$j=1,\dots,M$ について、連続する $2N$ 個の数からなる 区画
$$ B_j:=\{(j-1)\cdot2N+t\mid t=1,\dots,2N\} $$
を考える。区画 $B_j$ の 模様 を、写像 $\pi_j\colon[2N]\to\{1,\dots,r\}$、$\pi_j(t):=\chi\bigl((j-1)\cdot2N+t\bigr)$ で定める。模様は $r^{2N}$ 通りしかないので、区画の番号 $j$ に模様 $\pi_j$ を割り当てることは $[M]$ の $r^{2N}$ 色の塗り分けとみなせる。$M=W(r^{2N},k)$ なので、区画の番号の $k$ 項の等差数列 $j_0,j_0+D,\dots,j_0+(k-1)D$($D\ge1$、$j_0+(k-1)D\le M$)で、これらの区画の模様がすべて等しいものがある。$k\ge2$ なので $D\le M-1$ である。
$o:=(j_0-1)\cdot2N$ とおく。区画 $B_{j_0}$ の最初の $N$ 個の数に帰納法の仮定を使う。すなわち $[N]$ の塗り分け $t\mapsto\pi_{j_0}(t)$ を考える。

  • (α) の場合:$[N]$ に $\pi_{j_0}$ について単色の $k+1$ 項の等差数列 $E$ があれば、$E$ の各数に $o$ を足した集合は $\chi$ について単色の $k+1$ 項の等差数列で、$[2NM]$ に含まれる。
  • (β) の場合:$[N]$ の中の $k$ 項の等差数列 $A_i=\{a_i+md_i\mid 0\le m\le k-1\}$($i=1,\dots,s$)で、$\pi_{j_0}$ について単色で色 $c_1,\dots,c_s$ が互いに異なり、共通の焦点 $f=a_i+kd_i\le2N$ をもつものがある。$f\le2N$ なので $o+f\in B_{j_0}$ であり、その色 $c:=\chi(o+f)=\pi_{j_0}(f)$ が定まる。
    (β) の場合で、$c=c_i$ となる $i$ があれば、$\{o+a_i+md_i\mid0\le m\le k\}$ は $\chi$ について単色の $k+1$ 項の等差数列で、$[2NM]$ に含まれる(最後の項は $o+f$)。
    残るのは、$c$ が $c_1,\dots,c_s$ のどれとも異なる場合である。$\Delta:=2ND$ とおき、
    $$ A_i':=\{o+a_i+m(d_i+\Delta)\mid0\le m\le k-1\}\quad(i=1,\dots,s),\qquad A_{s+1}':=\{o+f+m\Delta\mid0\le m\le k-1\} $$
    とおく。これらは公差 $d_i+\Delta\ge1$、$\Delta\ge1$ の $k$ 項の等差数列である。$A_i'$ の第 $m$ 項 $o+m\Delta+(a_i+md_i)$ は、区画 $B_{j_0+mD}$ の $a_i+md_i$ 番目の数であり、$B_{j_0+mD}$ の模様は $\pi_{j_0}$ に等しいので、その色は $\pi_{j_0}(a_i+md_i)=c_i$ である。同様に $A_{s+1}'$ の第 $m$ 項は区画 $B_{j_0+mD}$ の $f$ 番目の数なので、色は $\pi_{j_0}(f)=c$ である。よって $A_1',\dots,A_{s+1}'$ はそれぞれ単色で、色 $c_1,\dots,c_s,c$ は互いに異なる。これらはすべて区画 $B_{j_0},\dots,B_{j_0+(k-1)D}$ に含まれるので $[2NM]$ に含まれる。焦点は
    $$ o+a_i+k(d_i+\Delta)=o+(a_i+kd_i)+k\Delta=o+f+k\Delta $$
    と $o+f+k\Delta$ で、すべて等しい。共通の焦点 $F:=o+f+k\Delta$ は、$f\le2N$ と $j_0+kD=(j_0+(k-1)D)+D\le M+(M-1)$ から
    $$ F\le2N(j_0-1)+2N+2NkD=2N(j_0+kD)\le2N\cdot2M=2N_{s+1} $$
    を満たす。よって $N_{s+1}$ について (β) が成り立つ。$\square$
帰納法による存在証明

すべての $r,k\ge1$ について $W(r,k)$ は存在する。さらに、$k\ge2$ のとき、lem-van-der-waerden-theorem-focusing の $N_r$ について $W(r,k+1)\le2N_r$ である。

$k$ に関する帰納法で示す。$k=1,2$ では prop-van-der-waerden-theorem-small により存在する。$k\ge2$ とし、すべての $r'$ について $W(r',k)$ が存在するとする。$r\ge1$ を固定し、lem-van-der-waerden-theorem-focusing の $N_r$ をとる。$[2N_r]$ の $r$ 色の塗り分け $\chi$ を考え、その $[N_r]$ への制限に lem-van-der-waerden-theorem-focusing を使う。(α) なら単色の $k+1$ 項の等差数列がある。(β) なら、色の異なる $r$ 個の単色の $k$ 項の等差数列 $A_1,\dots,A_r$ が共通の焦点 $f\le2N_r$ をもつ。色は $r$ 個しかないので、$A_1,\dots,A_r$ の色は $r$ 色すべてを使い尽くしており、$\chi(f)$ はある $A_i$ の色に等しい。すると $A_i\cup\{f\}$ が単色の $k+1$ 項の等差数列である。いずれの場合も $[2N_r]$ に単色の $k+1$ 項の等差数列があるので、$W(r,k+1)\le2N_r$ である。これで thm-van-der-waerden-theorem-main も示された。$\square$

この証明で得られる $N_s$ は、$M=W(r^{2N},k)$ のように、1 つ前の段階の数を指数の肩にのせた色の数で $W(\cdot,k)$ を使うので、極めて急速に大きくなる。$k=2$ から $k=3$ に進む $r=2$ の場合でさえ、$N_1=W(2,2)=3$、$N_2=2\cdot3\cdot W(2^6,2)=6\cdot65=390$ となり、得られる上界 $W(2,3)\le780$ は実際の値 $9$ よりはるかに大きい。

例と反例

反例:単色の無限等差数列はなくてもよい

$\mathbb{Z}_{>0}$ を、長さ $1,2,3,\dots$ の連続した区間
$$ \{1\},\ \{2,3\},\ \{4,5,6\},\ \{7,8,9,10\},\ \dots $$
に区切り(第 $j$ 区間は $j(j-1)/2+1$ から $j(j+1)/2$ までの $j$ 個の数)、第 $j$ 区間を $j$ が奇数なら赤、偶数なら青で塗る。公差 $d$ の無限等差数列 $a,a+d,a+2d,\dots$ を考える。連続する $d$ 個以上の整数からなる区間で、最小の数が $a$ 以上のものは、この数列の項を必ず含む。$j\ge d$ で最小の数が $a$ 以上の第 $j$ 区間はすべてこの条件を満たし、そのような区間は色が交互に並ぶので、数列は赤の項と青の項を両方含む。したがって単色の無限等差数列はない。この例は「有限個の色で塗ると、ある色が無限等差数列を含む」という含意を破る。cor-van-der-waerden-theorem-infinite が保証するのは、任意の有限の長さの等差数列である。

反例:色の数が有限でない場合

$\mathbb{Z}_{>0}$ の各数に相異なる色を塗れば、2 項以上の単色の等差数列は 1 つもない。また $[N]$ を $N$ 色で塗り分ければ、どれだけ $N$ が大きくても単色の 2 項の等差数列はない。したがって、色の数 $r$ を $N$ と無関係に固定しなければ thm-van-der-waerden-theorem-main の結論は成り立たない。

知られている値と評価

van der Waerden数の値

自明でない van der Waerden 数で正確な値が知られているのは、次の 7 つである(Kou12 表 1。$W(2,6)$ は KP08、$W(3,4)$ は Kou12 が計算機による網羅的な探索で決定した)。
$$ W(2,3)=9,\quad W(2,4)=35,\quad W(2,5)=178,\quad W(2,6)=1132,\quad W(3,3)=27,\quad W(3,4)=293,\quad W(4,3)=76. $$
2026 年 9 月の時点で、これ以外の値(たとえば $W(2,7)$)が決定されたという報告は確認できなかった。

thm-van-der-waerden-theorem-general の証明が与える上界は非常に大きい。上界の改良について次のことが知られている(証明は本記事では扱わない)。van der Waerden の元の証明による上界は原始再帰的でない増え方をするが、Shelah は原始再帰的な上界を与えた(She88)。さらに Gowers は、Szemerédi の定理(下記)の新しい証明から
$$ W(r,k)\le2^{2^{r^{2^{2^{k+9}}}}} $$
を得た(Gow01)。

正の上密度をもつ集合の等差数列

$A\subset\mathbb{Z}_{>0}$ が正の上密度をもつ、すなわち
$$ \limsup_{N\to\infty}\frac{|A\cap[N]|}{N}>0 $$
ならば、$A$ は任意の長さの等差数列を含む。

出典と van der Waerden の定理との関係

thm-van-der-waerden-theorem-szemeredi は E. Szemerédi が 1975 年に証明したもので、Szemerédiの定理とよばれる(Sze75)。$\mathbb{Z}_{>0}$ を $r$ 色で塗り分けると、各 $N$ で $[N]$ の中に $N/r$ 個以上の数をもつ色があり、そのような色のどれかは無限に多くの $N$ でそうなるので、その色の集合は上密度が $1/r$ 以上である。したがって Szemerédi の定理から cor-van-der-waerden-theorem-infinite が従う。素数全体は上密度が $0$ なので Szemerédi の定理は使えないが、Green と Tao は素数全体が任意の長さの等差数列を含むことを証明した(GT08)。

補足

歴史

van der Waerden の論文 vdW27 の題は「Baudet の予想の証明」である。Moser は、この問題が 1920 年代の初めに平方剰余の分布の研究に関連して生じ、多くの数学者の努力にもかかわらず数年間未解決だったことを述べ、解決の年を 1928 年としている(Mos11 第 7 章、pp. 60–61)。KP08 と Kou12 は証明の年を 1926 年とし、論文 vdW27 を引いている。Moser は同じ箇所で、van der Waerden の証明が非常に大きな上界しか与えないことに触れ、より簡単な証明とよりよい評価を探すことを問題として挙げている。教科書では、KT17 §16.6 定理 16.13(PDF p. 349)が同じ主張を述べている(証明はない)。

関連項目

参考文献

[1]
B. L. van der Waerden, Beweis einer Baudetschen Vermutung, Nieuw Archief voor Wiskunde 15, pp. 212–216, 1927, van der Waerden の定理の最初の証明
[2]
Michal Kouril and Jerome L. Paul, The van der Waerden number W(2,6) is 1132, Experimental Mathematics 17(1), pp. 53–61, 2008, W(2,6)=1132 の決定(計算機による探索)
[3]
Michal Kouril, Computing the van der Waerden number W(3,4)=293, Integers 12, Article A46, 2012, W(3,4)=293 の決定、表 1(既知の van der Waerden 数)
[4]
Saharon Shelah, Primitive recursive bounds for van der Waerden numbers, Journal of the American Mathematical Society 1, pp. 683–697, 1988, 原始再帰的な上界
[5]
W. T. Gowers, A new proof of Szemerédi's theorem, Geometric and Functional Analysis 11, pp. 465–588, 2001, van der Waerden 数の上界
[6]
Endre Szemerédi, On sets of integers containing no k elements in arithmetic progression, Acta Arithmetica 27, pp. 199–245, 1975, Szemerédi の定理
[7]
Ben Green and Terence Tao, The primes contain arbitrarily long arithmetic progressions, Annals of Mathematics 167, pp. 481–547, 2008, 素数の中の任意の長さの等差数列

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する