Serreの消滅定理(Serre vanishing theorem)とは、Noether 環 $A$ 上の射影的なスキーム $X$ と、射影空間への閉埋め込みから引き戻したひねり層 $\mathcal{O}_X(1)$ について、任意の連接層 $\mathcal{F}$ に整数 $n_0$ が存在し、$n\ge n_0$ ならすべての $i\ge1$ で $H^i(X,\mathcal{F}(n))=0$ となるという定理である。射影空間のひねり層のコホモロジーの計算と、連接層をひねり層の直和の商として表す分解から、次数についての降下帰納法で示される。$A$ 上固有なスキームの豊富な可逆層についても成り立ち、この消滅の性質は豊富性を特徴づける。
前提知識: 連接層, Serreのひねり層, 層コホモロジー, Lerayの定理(非輪状被覆)
Noether 環 $A$ 上の射影スキーム $X$ と、射影空間から引き戻したひねり層 $\mathcal{O}_X(1)$ を考える。Serreの消滅定理(Serre vanishing theorem)は、$X$ 上の任意の連接層 $\mathcal{F}$ について、十分大きな $n$ でひねった $\mathcal{F}(n)=\mathcal{F}\otimes\mathcal{O}_X(1)^{\otimes n}$ の正の次数の層コホモロジーがすべて消える、という定理である。どこまでひねればよいかは $\mathcal{F}$ によるが、次数 $i\ge1$ には一様にとれる。$A$ 上固有なスキームの上の豊富な可逆層についても同じことが成り立ち、逆にこの性質が豊富性を特徴づける。
消滅定理と呼ばれるものはほかにもある。Grothendieckの消滅定理は、層を固定して、空間の次元より大きい次数のコホモロジーが消えることを述べる。小平の消滅定理は、標数 $0$ の滑らかな射影多様体の上で、標準束と豊富な直線束の積という特定の層について、ひねりを足さずに消滅を述べる。Serre の消滅定理は、任意の連接層について「十分ひねれば消える」ことを述べる点でこれらと異なる。この記事では、射影空間のひねり層のコホモロジーを Čech 複体で計算し、そこから次数についての降下帰納法で定理を証明する。
以下 $A$ を Noether 環とし、$\mathbb{P}^r_A=\operatorname{Proj}A[x_0,\dots,x_r]$ とする。$A$ 上のスキーム $X$ が $A$ 上射影的であるとは、ある $r$ と $A$ 上の閉埋め込み $\iota\colon X\to\mathbb{P}^r_A$ があることをいう。このとき $\mathcal{O}_X(1):=\iota^*\mathcal{O}_{\mathbb{P}^r_A}(1)$ とおき(Serreのひねり層)、$\mathcal{O}_X$ 加群層 $\mathcal{F}$ と整数 $n$ について $\mathcal{F}(n):=\mathcal{F}\otimes_{\mathcal{O}_X}\mathcal{O}_X(1)^{\otimes n}$ と書く($n<0$ では双対の冪をとる)。
$A$ を Noether 環、$X$ を $A$ 上射影的なスキーム、$\iota\colon X\to\mathbb{P}^r_A$ を閉埋め込み、$\mathcal{O}_X(1)=\iota^*\mathcal{O}(1)$ とする。$X$ 上の任意の連接層 $\mathcal{F}$ に対して整数 $n_0$ が存在し、すべての $i\ge1$ と $n\ge n_0$ について
$$
H^i(X,\mathcal{F}(n))=0
$$
が成り立つ。
$n_0$ は $\mathcal{F}$ に依存し、すべての連接層に共通にはとれない(ex-serre-vanishing-p1)。$i\ge1$ についての一様性は、$i>r$ では $H^i$ がもともと消える(lem-serre-vanishing-projective-space の 2)ことによる。証明は prf-serre-vanishing で与える。この定理は Serre による(Har77 III.5.2 (b)、p. 228 は Serre の論文に帰している)。同じ箇所の (a) は、各 $H^i(X,\mathcal{F})$ が有限生成 $A$ 加群であることを述べ、thm-serre-vanishing-finiteness で証明する。
$S=A[x_0,\dots,x_r]$、$U_i=D_+(x_i)$($0\le i\le r$)とする。$\mathbb{P}^r_A$ は分離的であり(射影射 の定理「射影射は固有である」)、$U_i$ はアフィンである。
$A$ を環、$r\ge0$ とする。
被覆 $\mathfrak{U}=(U_i)_{0\le i\le r}$ はアフィン開被覆なので、Lerayの定理(非輪状被覆) の例「分離的スキームのアフィン開被覆」により、準連接層のコホモロジーは $\mathfrak{U}$ の Čech 複体(全成分の版でも交代的な版でもよい)で計算できる。2 は、交代 Čech 複体が $r+1$ 個の開集合について $p>r$ で $0$ になることから従う。
1 を示す。$s=(i_0,\dots,i_p)\in\{0,\dots,r\}^{p+1}$ について $x_s:=x_{i_0}\cdots x_{i_p}$ とおく。Serreのひねり層 の命題「付随する層の茎と座標近傍」の 2 により、$\Gamma(U_s,\mathcal{O}(n))$ は局所化 $S_{x_s}$ の次数 $n$ の部分であり、Laurent 単項式 $x^m=x_0^{m_0}\cdots x_r^{m_r}$($m\in\mathbb{Z}^{r+1}$、$|m|:=\sum_im_i=n$)のうち、負の指数をもつ添字の集合
$$
N(m):=\{i\mid m_i<0\}
$$
が $s$ の成分の集合 $\{s\}:=\{i_0,\dots,i_p\}$ に含まれるものを $A$ 上の基底にもつ。制限写像はこれらの基底の包含である。$s$ は有限個なので、全成分の Čech 複体は
$$
\check{C}^\bullet(\mathfrak{U},\mathcal{O}(n))=\bigoplus_{|m|=n}K_m^\bullet\otimes x^m,\qquad K_m^p:=\prod_{s\in\{0,\dots,r\}^{p+1},\ N(m)\subset\{s\}}A
$$
と分かれる。$K_m^\bullet$ の微分は Čech の微分の式で、$N(m)\not\subset\{s\}$ となる成分を $0$ とみなしたものである。
$|m|=n\ge-r$ なら、すべての $m_i$ が負になることはない(そうなら $|m|\le-(r+1)$)ので、$N(m)$ に属さない添字 $v$ がある。$p\ge1$ について $h\colon K_m^p\to K_m^{p-1}$ を $(hc)_t:=c_{v\,t}$ で定める。$v\notin N(m)$ なので、$N(m)\subset\{t\}$ と $N(m)\subset\{v,t\}$ は同値であり、$h$ は well-defined である。Lerayの定理(非輪状被覆) の補題「層化した Čech 複体は分解である」の証明と同じ計算で、$p\ge1$ と $c\in K_m^p$ について
$$
(hdc)_s=(dc)_{v\,s}=c_s+\sum_{k=0}^{p}(-1)^{k+1}c_{v\,i_0\cdots\widehat{i_k}\cdots i_p}=c_s-(dhc)_s
$$
が成り立つ。ここで和の各項は、$N(m)\subset\{i_0,\dots,\widehat{i_k},\dots,i_p\}$ のときに限って現れ、それは $(dhc)_s$ の対応する項が現れる条件と同じである。よって $hd+dh=\mathrm{id}$ が $p\ge1$ の次数で成り立ち、$K_m^\bullet$ は正の次数で完全である。直和をとって $\check{H}^p(\mathfrak{U},\mathcal{O}(n))=0$($p\ge1$)を得る。$\square$
$n\le-r-1$ では、すべての指数が負の単項式 $x^m$ が $H^r$ に寄与し、$H^r(\mathbb{P}^r_A,\mathcal{O}(n))$ は $\{x^m\mid m_i\le-1,\ |m|=n\}$ を基底とする自由 $A$ 加群になる($r\ge1$ のときの証明は 射影空間上の直線束のコホモロジー の定理「射影空間上の直線束のコホモロジー」の 3、Har77 III.5.1 とその証明、pp. 225–227)。$r=1$ の場合の計算は Lerayの定理(非輪状被覆) の例「射影直線のひねり層」にある。
射影空間への帰着。$P:=\mathbb{P}^r_A$ とし、$\mathcal{G}:=\iota_*\mathcal{F}$ とおく。閉埋め込みによる連接層の順像は連接であり(閉埋め込みは有限射であり、Noether スキームの有限射は連接層を連接層に送る。Har77 II 演習 5.5 (b)(c)、p. 124)、閉部分集合の上の層とその順像のコホモロジーは一致する(Har77 III.2.10、p. 209)。また $\mathcal{F}(n)=\mathcal{F}\otimes\iota^*\mathcal{O}_P(n)$ であり、$\mathcal{O}_P(n)$ は可逆層なので、射影公式(加群層) の定理「射影公式」により $\iota_*(\mathcal{F}(n))\cong\mathcal{G}(n)$ である。よって $H^i(X,\mathcal{F}(n))\cong H^i(P,\mathcal{G}(n))$ であり、$X=P$ の場合を示せばよい。
降下帰納法。$i\ge1$ について、次の主張 $(\mathrm{P}_i)$ を $i$ の大きい方から示す。
$(\mathrm{P}_i)$:$P$ 上の任意の連接層 $\mathcal{G}$ に対して整数 $n_i(\mathcal{G})$ があり、$n\ge n_i(\mathcal{G})$ ならば $H^i(P,\mathcal{G}(n))=0$ である。
$i>r$ では lem-serre-vanishing-projective-space の 2 により、任意の $n$ で $H^i(P,\mathcal{G}(n))=0$ なので $(\mathrm{P}_i)$ が成り立つ。$1\le i\le r$ とし、$(\mathrm{P}_{i+1})$ を仮定する。連接層 $\mathcal{G}$ をとる。Serreのひねり層 の系「ひねり層の直和の商」により、整数 $q$ と $N$ および全射 $\mathcal{E}:=\mathcal{O}_P(-q)^{\oplus N}\to\mathcal{G}$ がある。その核 $\mathcal{R}$ は連接層の間の射の核なので連接である(連接層 の系「連接層の射の核・像・余核」)。可逆層 $\mathcal{O}_P(n)$ とのテンソル積は完全なので、
$$
0\to\mathcal{R}(n)\to\mathcal{E}(n)\to\mathcal{G}(n)\to0
$$
は完全であり、層コホモロジーの長完全列(層コホモロジー の定理「層コホモロジーの長完全列」)から完全列
$$
H^i(P,\mathcal{E}(n))\to H^i(P,\mathcal{G}(n))\to H^{i+1}(P,\mathcal{R}(n))
$$
を得る。$\mathcal{E}(n)\cong\mathcal{O}_P(n-q)^{\oplus N}$ である(Serreのひねり層 の定理「ひねり層の可逆性と積」)。コホモロジーは有限直和と可換なので、$n\ge q-r$ なら lem-serre-vanishing-projective-space の 1 により左端は $0$ である。$(\mathrm{P}_{i+1})$ により $n\ge n_{i+1}(\mathcal{R})$ なら右端は $0$ である。よって
$$
n_i(\mathcal{G}):=\max\bigl(q-r,\ n_{i+1}(\mathcal{R})\bigr)
$$
とおけば $(\mathrm{P}_i)$ が成り立つ。
まとめ。連接層 $\mathcal{G}$ について $n_0:=\max_{1\le i\le r}n_i(\mathcal{G})$ とおけば($r=0$ なら $n_0$ は任意)、すべての $i\ge1$ と $n\ge n_0$ で $H^i(P,\mathcal{G}(n))=0$ である。$\square$
$\mathcal{F}$ の分解を繰り返すので、帰納法は各段で別の層 $\mathcal{R}$ に移る。主張 $(\mathrm{P}_i)$ を「任意の連接層について」の形にしておくのはこのためである。
同じ降下帰納法で、ひねりを足さないコホモロジーが有限生成であることも分かる。
$A$ を Noether 環、$X$ を $A$ 上射影的なスキームとする。$X$ 上の任意の連接層 $\mathcal{F}$ とすべての $i\ge0$ について、$H^i(X,\mathcal{F})$ は有限生成 $A$ 加群である。
prf-serre-vanishing の「射影空間への帰着」と同じく、閉埋め込み $\iota\colon X\to P:=\mathbb{P}^r_A$ による順像をとって $H^i(X,\mathcal{F})\cong H^i(P,\iota_*\mathcal{F})$ とし、$X=P$ の場合を示せばよい。
ひねり層の場合。すべての $p\ge0$ と $d\in\mathbb{Z}$ について $H^p(P,\mathcal{O}(d))$ は有限生成 $A$ 加群である。$p>r$ なら lem-serre-vanishing-projective-space の 2 により $0$ である。$r\ge1$ で $p\le r$ なら、射影空間上の直線束のコホモロジー の定理「射影空間上の直線束のコホモロジー」の 1〜3 により、$H^p(P,\mathcal{O}(d))$ は $0$ か、指数がすべて $0$ 以上($p=0$)またはすべて $-1$ 以下($p=r$)の次数 $d$ の(Laurent)単項式を基底とする自由 $A$ 加群である。そのような単項式は有限個なので、有限生成である。$r=0$ なら $P=D_+(x_0)\cong\operatorname{Spec}A$ で、$\mathcal{O}(d)$ は $x_0^d$ を基底とする自由層なので $H^0(P,\mathcal{O}(d))\cong A$ である。
降下帰納法。$i\ge0$ について、次の主張 $(\mathrm{Q}_i)$ を $i$ の大きい方から示す。
$(\mathrm{Q}_i)$:$P$ 上の任意の連接層 $\mathcal{G}$ について、$H^i(P,\mathcal{G})$ は有限生成 $A$ 加群である。
$i>r$ では lem-serre-vanishing-projective-space の 2 により $H^i(P,\mathcal{G})=0$ である。$0\le i\le r$ とし、$(\mathrm{Q}_{i+1})$ を仮定する。prf-serre-vanishing と同じく、全射 $\mathcal{E}:=\mathcal{O}_P(-q)^{\oplus N}\to\mathcal{G}$ とその連接な核 $\mathcal{R}$ をとると、長完全列から完全列
$$
H^i(P,\mathcal{E})\xrightarrow{\ \alpha\ }H^i(P,\mathcal{G})\xrightarrow{\ \beta\ }H^{i+1}(P,\mathcal{R})
$$
を得る。$H^i(P,\mathcal{E})\cong H^i(P,\mathcal{O}(-q))^{\oplus N}$ は上で見たとおり有限生成であり、$H^{i+1}(P,\mathcal{R})$ は $(\mathrm{Q}_{i+1})$ により有限生成である。$A$ は Noether 環なので有限生成 $A$ 加群の部分加群は有限生成であり、$\operatorname{im}\beta\subset H^{i+1}(P,\mathcal{R})$ は有限生成である。$\ker\beta=\operatorname{im}\alpha$ は有限生成加群の像なので有限生成である。短完全列 $0\to\ker\beta\to H^i(P,\mathcal{G})\to\operatorname{im}\beta\to0$ の両端が有限生成なので、$H^i(P,\mathcal{G})$ も有限生成である(両端の生成元の持ち上げを合わせたものが生成する)。よって $(\mathrm{Q}_i)$ が成り立つ。$\square$
この定理と thm-serre-vanishing は、それぞれ Har77 III Theorem 5.2 の (a) と (b)(p. 228)である。$A=k$ が体なら、射影的な $k$ スキーム上の連接層のコホモロジーはすべて有限次元であり、この記事の補足で使う Euler 標数 $\chi(\mathcal{F}(n))$ が定義できる。
$A$ を Noether 環、$X$ を $A$ 上固有なスキーム、$\mathcal{L}$ を $X$ 上の豊富な可逆層とする。$X$ 上の任意の連接層 $\mathcal{F}$ に対して整数 $n_0$ があり、すべての $i\ge1$ と $n\ge n_0$ で $H^i(X,\mathcal{F}\otimes\mathcal{L}^{\otimes n})=0$ である。
豊富な可逆層 の定理「豊富な可逆層の冪は非常に豊富である」により、ある $m\ge1$ で $\mathcal{L}^{\otimes m}$ は $A$ 上非常に豊富である。$X$ は固有なので、射影射 の命題「固有射と非常に豊富な可逆層」により、閉埋め込み $\iota\colon X\to\mathbb{P}^N_A$ で $\iota^*\mathcal{O}(1)\cong\mathcal{L}^{\otimes m}$ となるものがある。$0\le j< m$ について連接層 $\mathcal{F}_j:=\mathcal{F}\otimes\mathcal{L}^{\otimes j}$ に thm-serre-vanishing を当て、$n\ge c_j$ で $H^i(X,\mathcal{F}_j(n))=0$($i\ge1$)となる $c_j$ をとる。$c:=\max(0,c_0,\dots,c_{m-1})$、$n_0:=mc$ とおく。$n\ge n_0$ を $n=mk+j$($0\le j< m$)と書くと $k\ge c\ge c_j$ であり、
$$
\mathcal{F}\otimes\mathcal{L}^{\otimes n}\cong\mathcal{F}_j\otimes(\mathcal{L}^{\otimes m})^{\otimes k}=\mathcal{F}_j(k)
$$
なので $H^i(X,\mathcal{F}\otimes\mathcal{L}^{\otimes n})=0$ である。$\square$
逆に、$A$ 上固有な $X$ の可逆層 $\mathcal{L}$ がこの消滅の性質をすべての連接層についてもつなら $\mathcal{L}$ は豊富である(豊富な可逆層 の定理「Serreのコホモロジー判定」。Har77 III.5.3、p. 229)。すなわち、固有なスキームの上では、Serre の消滅定理の結論が豊富性の特徴づけになる。
$k$ を体、$X=\mathbb{P}^1_k$ とする。Lerayの定理(非輪状被覆) の例「射影直線のひねり層」により $\dim_kH^1(X,\mathcal{O}(n))=\max(0,-n-1)$ である。$d\ge0$ と $\mathcal{F}=\mathcal{O}(-d)$ について $H^1(X,\mathcal{F}(n))=H^1(X,\mathcal{O}(n-d))$ は、$n\ge d-1$ でちょうど $0$ になる。したがって thm-serre-vanishing の $n_0$ は $\mathcal{F}$ ごとにとるしかなく、すべての連接層に共通な $n_0$ はない。
$k$ を体、$f\in k[x_0,x_1,x_2]$ を次数 $d\ge1$ の斉次多項式、$C=V_+(f)\subset P=\mathbb{P}^2_k$ を平面曲線とする。$f$ を掛ける写像は単射なので完全列 $0\to\mathcal{O}_P(-d)\xrightarrow{f}\mathcal{O}_P\to\mathcal{O}_C\to0$ がある。$n$ でひねり、lem-serre-vanishing-projective-space から $H^1(P,\mathcal{O}_P(n))=0$($n\ge-2$)、$H^2(P,\mathcal{O}_P(n))=0$($n\ge-2$)を使うと、長完全列から $n\ge-2$ について
$$
H^1(C,\mathcal{O}_C(n))\cong H^2(P,\mathcal{O}_P(n-d))
$$
である(左辺は $C$ 上のコホモロジーを $P$ 上の順像で計算したもの)。右辺は $n-d\ge-2$、すなわち $n\ge d-2$ で $0$ である。一方 $n-d\le-3$ では右辺は $x_0^{a}x_1^{b}x_2^{c}$($a,b,c\le-1$、$a+b+c=n-d$)を基底とする $0$ でない空間である(Har77 III.5.1)。よって $n\ge-2$ の範囲で、$H^1(C,\mathcal{O}_C(n))=0$ となるのはちょうど $n\ge d-2$ のときである。たとえば $d=3$ の平面 3 次曲線では $H^1(C,\mathcal{O}_C)\cong k$ だが、$n\ge1$ で $H^1(C,\mathcal{O}_C(n))=0$ である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\mathcal{F}$ の連接性 | $\mathbb{P}^1_k$ 上の $\mathcal{F}=\bigoplus_{m\ge0}\mathcal{O}(-m)$ | どの $n$ でも $H^1(\mathbb{P}^1_k,\mathcal{F}(n))\neq0$ |
| $X$ の固有性 | $X=\mathbb{A}^2_k\setminus\{0\}\subset\mathbb{P}^2_k$、$\mathcal{L}$ は $\mathcal{O}(1)$ の $X$ への制限、$\mathcal{F}=\mathcal{O}_X$ | どの $n$ でも $H^1(X,\mathcal{L}^{\otimes n})\neq0$ |
| $\mathcal{L}$ の豊富性 | $\mathbb{P}^1_k$、$\mathcal{L}=\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1_k}$、$\mathcal{F}=\mathcal{O}(-2)$ | どの $n$ でも $H^1(\mathbb{P}^1_k,\mathcal{F}\otimes\mathcal{L}^{\otimes n})\cong k$ |
$k$ を体とする。
1 行目:$\mathcal{F}$ は準連接層だが、茎が無限個の階数 $1$ の自由加群の直和なので有限型でなく、連接でない。Noether 空間の上ではコホモロジーは任意の直和と可換である(Har77 III.2.9.1、p. 209)。よって $H^1(\mathcal{F}(n))=\bigoplus_{m\ge0}H^1(\mathcal{O}(n-m))$ であり、$m\ge n+2$ の項は $0$ でない(ex-serre-vanishing-p1 の計算)。
2 行目:$X$ は $\mathbb{P}^2_k$ の開部分スキームなので $k$ 上有限型で Noether だが、固有でない。$\mathcal{L}$ ははめ込み $X\to\mathbb{P}^2_k$ による $\mathcal{O}(1)$ の引き戻しなので非常に豊富、したがって豊富である(豊富な可逆層 の定理「豊富な可逆層の冪は非常に豊富である」)。$X$ は座標近傍 $D_+(x_0)\cong\mathbb{A}^2_k$ に含まれ、$\mathcal{O}(1)$ はその上で $x_0$ を基底とする自由層なので $\mathcal{L}^{\otimes n}\cong\mathcal{O}_X$ である。$H^1(X,\mathcal{O}_X)\neq0$ は Lerayの定理(非輪状被覆) の「反例の確かめ」の 2 行目で計算した。
3 行目:$\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1_k}$ は豊富でない。実際 $\mathcal{O}(-1)\otimes\mathcal{O}^{\otimes n}=\mathcal{O}(-1)$ は大域切断をもたない(Serreのひねり層 の定理「大域切断は斉次多項式」)ので大域切断で生成されない。$\mathcal{F}\otimes\mathcal{L}^{\otimes n}=\mathcal{O}(-2)$ であり、$H^1(\mathbb{P}^1_k,\mathcal{O}(-2))\cong k$ である。
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