特異コホモロジーと層コホモロジーの比較(comparison of singular and sheaf cohomology)とは、パラコンパクト Hausdorff で局所可縮な空間 $X$ とアーベル群 $A$ について、定数層 $A_X$ の層コホモロジー $H^q(X,A_X)$ と $A$ 係数の特異コホモロジーが同型になるという定理である。特異余鎖の前層を層化した層の列は局所可縮性によって $A_X$ の分解になり、各層はすべての関数の層の上の加群なので非輪状であり、大域切断の複体は重心細分によって特異余鎖の複体とコホモロジーが一致する。多様体と CW 複体に当てはまり、$C^\infty$ 級特異余鎖との比較を通じて de Rham の定理を特異コホモロジーの言葉で述べる基礎になる。局所可縮性を外すと、0 次でも一致しないことがある。
特異コホモロジーと層コホモロジーの比較(comparison of singular and sheaf cohomology)とは、パラコンパクト Hausdorff で局所可縮な位相空間 $X$ とアーベル群 $A$ について、定数層 $A_X$ の層コホモロジー $H^q(X,A_X)$ と $A$ 係数の特異コホモロジー $H^q_{\mathrm{sing}}(X;A)$ が同型になる、という定理である。
特異コホモロジーは連続写像 $\Delta^q\to X$ に値を割り当てる余鎖から作られ、層コホモロジーは大域切断関手の導来関手として定義される。作り方はまったく違うが、多様体や CW 複体のような空間では同じ群を与える。この一致によって、層の言葉で示した結果(細分解による de Rham の定理など)を特異コホモロジーの言葉で読むことができる。
証明の要は 3 つある。第一に、特異余鎖の前層を層化した $\mathcal S^q$ の列は、局所可縮性のもとで $A_X$ の分解になる。第二に、$\mathcal S^q$ は「すべての関数の層」の上の加群なので非輪状である。第三に、大域切断 $\Gamma(X,\mathcal S^q)$ は特異余鎖を局所的に $0$ な余鎖で割ったものであり、局所的に $0$ な余鎖の複体は重心細分によってコホモロジーをもたない。この記事ではこの 3 つを証明して主定理を導き、$C^\infty$ 級特異余鎖と de Rham の定理への応用を述べ、局所可縮性を外すと一致が崩れる例を挙げる。
記号は 層コホモロジー と 特異コホモロジー にそろえる。$X$ を位相空間、$A$ をアーベル群とする。開集合 $U\subset X$ の特異 $q$ 単体 $\sigma\colon\Delta^q\to U$ の全体が生成する自由アーベル群を $C_q(U)$、$C^q(U;A):=\operatorname{Hom}(C_q(U),A)$ を特異 $q$ 余鎖の群、$\delta$ を余境界作用素とし、そのコホモロジーを $H^q_{\mathrm{sing}}(U;A)$ と書く(特異コホモロジー の定義「特異コホモロジー」)。余鎖 $\varphi$ は特異単体ごとに $A$ の元を割り当てる写像であり、開集合 $V\subset U$ への制限 $\varphi|_V$ は $V$ に入る特異単体だけで値を見たものである。定数層 $A_X$ は、開集合 $U$ に局所定数関数 $U\to A$ の全体を対応させる層である(定数層 の定義「定数層」)。
$q\ge0$ とする。前層 $U\mapsto C^q(U;A)$ の層化(層化)を $\mathcal S^q$ と書き、$\delta$ が誘導する層の射も $\delta\colon\mathcal S^q\to\mathcal S^{q+1}$ と書く。局所定数関数 $f\colon U\to A$ を、各点(特異 $0$ 単体)$y$ に $f(y)$ を割り当てる $0$ 余鎖に送る写像が誘導する射を $\varepsilon\colon A_X\to\mathcal S^0$ とする。層化の写像が大域切断に与える余鎖写像を
$$
\pi\colon C^\bullet(X;A)\to\Gamma(X,\mathcal S^\bullet)
$$
と書く。
$\mathcal S^q$ の点 $x$ での茎は、前層の茎 $\varinjlim_{U\ni x}C^q(U;A)$ に等しい。余鎖 $\varphi\in C^q(X;A)$ が局所的に $0$ であるとは、各点 $x$ に開近傍 $U$ があって $\varphi|_U=0$ となることをいう。$\pi(\varphi)=0$ は、すべての点で $\varphi$ の芽が $0$ であること、すなわち $\varphi$ が局所的に $0$ であることと同値である。局所的に $0$ な余鎖の全体を $C^\bullet_0(X;A)$ と書く。面の像はもとの単体の像に含まれるので、$C^\bullet_0(X;A)$ は部分複体である。
空間 $X$ が局所可縮であるとは、各点 $x$ と $x$ の各開近傍 $U$ に対し、$x$ の開近傍 $V\subset U$ で、包含写像 $V\hookrightarrow U$ が定値写像とホモトピックになるものがあることをいう(局所可縮空間 の定義「局所可縮空間」の前半。$V$ 自身が可縮である必要はない)。
証明は節「証明」の prf-ssc-main で与える。3 の同型は、層コホモロジーを非輪状分解 $\mathcal S^\bullet$ で計算する同型(層コホモロジー の命題「非輪状分解による計算」)と $\pi$ の合成である。第 2 可算な位相多様体と CW 複体はパラコンパクト Hausdorff で局所可縮なので、3 が当てはまる(局所可縮空間 の定理「凸集合と多様体」と注意「CW 複体」、パラコンパクト空間 の命題「連結な局所 Euclid 空間」と定理「CW 複体のパラコンパクト性」)。分解 $0\to A_X\to\mathcal S^\bullet$ は Wel08 Ch. II Example 2.11(pp. 47–48)にあり、多様体の場合に「すべての関数の層の上の加群」を使う筋は同書 Theorem 3.15 の証明(pp. 60–61)にある。
$X$ が局所可縮なら、thm-ssc-main の 1 の列は完全である。
点 $x$ での茎の列が完全であることを示す。$\mathcal S^q_x=\varinjlim_{U\ni x}C^q(U;A)$ であり($U$ は $x$ の開近傍を包含の逆順に動く)、有向系の帰納極限は完全列を保つので
$$
H^q(\mathcal S^\bullet_x)=\varinjlim_{U\ni x}H^q_{\mathrm{sing}}(U;A)
$$
である。開近傍 $U$ に対し、定義のとおり $V\subset U$ をとり、包含 $j\colon V\hookrightarrow U$ が値 $u_0$ の定値写像 $c\colon V\to U$ とホモトピックであるとする。特異コホモロジー の定理「ホモトピー不変性」により $j^*=c^*$ であり、$c$ は 1 点 $\{u_0\}$ を経由するので、$c^*$ は $H^q_{\mathrm{sing}}(\{u_0\};A)$ を経由する。
$q\ge1$ のとき、1 点の $q$ 次コホモロジーは $0$ なので(特異コホモロジー の例「一点と離散空間」)$j^*=0$ である。帰納極限の元はある $U$ の類で代表され、その類は $V$ への制限で $0$ になるから、$H^q(\mathcal S^\bullet_x)=0$ である。
$q=0$ のとき、$H^0_{\mathrm{sing}}(U;A)=\ker(\delta\colon C^0(U;A)\to C^1(U;A))$ は $U$ の各弧状連結成分の上で定数な $0$ 余鎖の全体である(特異コホモロジー の命題「0 次コホモロジーと弧状連結成分」)。その元 $\varphi$ について $j^*\varphi=c^*\varphi$ は $V$ の上で定数 $\varphi(u_0)$ をとる。よって $\ker(\delta\colon\mathcal S^0_x\to\mathcal S^1_x)$ の元は定数の $0$ 余鎖の芽であり、$\varepsilon_x$ の像に入る。逆に、局所定数関数 $f$ と道 $\tau$ について $f\circ\tau$ は連結な $[0,1]$ の上の局所定数関数なので定数であり、$\delta(\varepsilon f)(\tau)=f(\tau(1))-f(\tau(0))=0$ となるから、$\delta\circ\varepsilon=0$ である。最後に $\varepsilon_x$ は単射である。$A_X$ の茎は $A$ であり(定数層 の定理「定数層の茎」)、定数 $a$ の芽が $\mathcal S^0_x$ で $0$ なら、ある近傍の上で $a$ が $0$ 余鎖として $0$ になり、点 $x$ での値 $a$ が $0$ である。$\square$
開集合 $U$ に、$U$ から $\mathbb Z$ への写像(連続性を要求しない)の全体 $\mathcal D(U)$ を対応させ、制限を写像の制限とすると、点ごとの演算で環の層 $\mathcal D$ が得られる。アーベル群の層 $\mathcal M$ で、各 $\mathcal M(U)$ が $\mathcal D(U)$ 加群であり、制限がこの作用と両立するものを $\mathcal D$ 加群とよぶ。
$\rho\in\mathcal D(U)$、$\varphi\in C^q(U;A)$ に対し
$$
(\rho\varphi)(\sigma):=\rho(\sigma(e_0))\,\varphi(\sigma)\qquad(e_0\text{ は }\Delta^q\text{ の最初の頂点})
$$
と定めると、前層 $C^q(-;A)$ は $\mathcal D(U)$ 加群の前層になり、その層化 $\mathcal S^q$ は $\mathcal D$ 加群である。
要点:加群の公理は単体ごとの等式から従い、作用は制限と両立するので層化に移る。
加群の公理は単体ごとの等式 $(\rho+\rho')(y)a=\rho(y)a+\rho'(y)a$、$(\rho\rho')(y)a=\rho(y)(\rho'(y)a)$ などから従い、$(\rho\varphi)|_V=(\rho|_V)(\varphi|_V)$ は定義から明らかである。よって茎 $\mathcal S^q_x=\varinjlim C^q(U;A)$ には芽 $\rho_x\in\mathcal D_x$ が代表元ごとに作用し(近傍を縮めても積の芽は変わらない)、層化の切断(両立する芽の族)に芽ごとに作用させれば $\mathcal S^q(U)$ は $\mathcal D(U)$ 加群になる。$\square$
$\rho\varphi$ は $0$ 余鎖 $\rho$ と $\varphi$ のカップ積である。余境界 $\delta$ は $\mathcal D$ 線形ではないが、以下では $\mathcal S^q$ を 1 つずつ扱うので差し支えない。次の補題が、$\mathcal D$ 加群の切断を「不連続な 1 の分割」で貼り合わせる議論である。
$X$ をパラコンパクト Hausdorff 空間とし、$0\to\mathcal M\xrightarrow{u}\mathcal G\xrightarrow{v}\mathcal H\to0$ をアーベル群の層の短完全列で、$\mathcal M$ が $\mathcal D$ 加群であるものとする。このとき $v\colon\mathcal G(X)\to\mathcal H(X)$ は全射である。
被覆と分割.$t\in\mathcal H(X)$ をとる。茎での全射性から、$X$ の開被覆と、各成員 $U$ の上の $s\in\mathcal G(U)$ で $v(s)=t|_U$ となるものがある。パラコンパクト Hausdorff 空間は正則なので(パラコンパクト空間 の命題「正則性と正規性」)、同記事の補題「閉包を制御する細分」により、局所有限な開被覆 $(O_i)_{i\in I}$ と上の被覆の成員 $U_i\supset\overline{O_i}$ がとれる。$U_i$ の上の切断を $s_i$ とし、$K_i:=\overline{O_i}$ とおくと、$(K_i)$ は $X$ を覆う局所有限な閉集合の族で $K_i\subset U_i$ である(点の開近傍が $\overline{O_i}$ と交われば $O_i$ とも交わるので、閉包の族も局所有限である)。$I$ を整列させ(整列順序。選択公理を使う)、$W_i:=K_i\setminus\bigcup_{k< i}K_k$ とおく。$W_i$ は互いに交わらず $X$ を覆う。$W_i$ の特性関数を $e_i\in\mathcal D(X)$ とすると、$e_i$ は開集合 $X\setminus K_i$ の上で $0$ であり、各点の近傍では有限個を除いて $e_i=0$ なので、$\sum_ie_i=1$ が局所的な有限和として成り立つ。
修正.$v(s_k-s_i)=0$ なので、$U_i\cap U_k$ の上で $s_k-s_i=u(m_{ki})$ となる $m_{ki}\in\mathcal M(U_i\cap U_k)$ がただ 1 つある(層コホモロジー の命題「大域切断関手の左完全性」)。$e_km_{ki}$ は $(U_i\cap U_k)\setminus K_k$ の上で $0$ なので、$U_i\setminus K_k$ の上の $0$ と貼り合わさって $n_{ki}\in\mathcal M(U_i)$ を与える($K_k\subset U_k$ なので、この 2 つの開集合は $U_i$ を覆う)。$n_{ki}$ は $K_k$ の外で $0$ なので $\sum_kn_{ki}$ は局所的な有限和であり、
$$
s_i':=s_i+u\Bigl(\sum_kn_{ki}\Bigr)\in\mathcal G(U_i)
$$
が定まる。$U_i\cap U_j\cap U_k$ の上では $u(m_{ki}-m_{kj})=s_j-s_i=u(m_{ji})$ だから $n_{ki}-n_{kj}=e_km_{ji}$ であり、$(U_i\cap U_j)\setminus K_k$ の上では両辺とも $0$ である。よって $U_i\cap U_j$ の上で $\sum_k(n_{ki}-n_{kj})=\bigl(\sum_ke_k\bigr)m_{ji}=m_{ji}$ となり、
$$
s_i'-s_j'=s_i-s_j+u(m_{ji})=0
$$
である。層の公理により $s_i'$ は $s\in\mathcal G(X)$ に貼り合わさり、$v\circ u=0$ から $v(s)|_{U_i}=v(s_i)=t|_{U_i}$ となる。$\square$
$X$ をパラコンパクト Hausdorff 空間とすると、任意の $\mathcal D$ 加群 $\mathcal M$ について $H^i(X,\mathcal M)=0$($i\ge1$)である。とくに各 $\mathcal S^q$ は非輪状である。
$\mathcal C^0(\mathcal M)$ を不連続切断の層 $U\mapsto\prod_{x\in U}\mathcal M_x$ とする(Godementの標準分解 の定義「不連続切断の層」)。これは脆弱層であり(同記事の定理「Godement の標準分解の基本性質」の 2)、$\rho\in\mathcal D(U)$ を各成分に芽 $\rho_x$ で作用させると $\mathcal D$ 加群になる。芽をとる単射 $\mathcal M\to\mathcal C^0(\mathcal M)$ は $\mathcal D$ 線形なので、商 $\mathcal Q:=\mathcal C^0(\mathcal M)/\mathcal M$ も $\mathcal D$ 加群である。$0\to\mathcal M\to\mathcal C^0(\mathcal M)\to\mathcal Q\to0$ の長完全列(層コホモロジー の定理「層コホモロジーの長完全列」)と脆弱層の非輪状性(同記事の定理「脆弱層の非輪状性」)から、
$$
\mathcal C^0(\mathcal M)(X)\to\mathcal Q(X)\to H^1(X,\mathcal M)\to0,\qquad H^i(X,\mathcal M)\cong H^{i-1}(X,\mathcal Q)\quad(i\ge2)
$$
を得る。lem-ssc-surjective により左端の写像は全射なので $H^1(X,\mathcal M)=0$ である。これはすべての $\mathcal D$ 加群について成り立つから、$i$ についての帰納法で、$\mathcal D$ 加群 $\mathcal Q$ について $H^{i-1}(X,\mathcal Q)=0$ であることから $H^i(X,\mathcal M)=0$ を得る。最後の主張は lem-ssc-module による。$\square$
特性関数 $e_i$ は「不連続な 1 の分割」である。上の命題は、細層の非輪状性(層コホモロジー の注意「軟弱層・細層の非輪状性とde Rham複体」)と同じ型の主張を、$\mathcal D$ 加群について直接示したものである。
1.開被覆 $\mathcal U$ について、$\mathcal U$ に小さい単体(像が $\mathcal U$ のある成員に入る単体)の鎖の包含を $\iota\colon C^{\mathcal U}_\bullet(X)\hookrightarrow C_\bullet(X)$ とする。切除定理(特異ホモロジー) の定理「小さい単体の鎖への変形」により $\iota$ は鎖ホモトピー同値なので、$\operatorname{Hom}(-,A)$ をとった制限 $\iota^\sharp\colon C^\bullet(X;A)\to\operatorname{Hom}(C^{\mathcal U}_\bullet(X),A)$ も余鎖ホモトピー同値であり、コホモロジーの同型を誘導する。$C_q(X)$ は小さい単体が生成する部分と残りの単体が生成する部分の直和なので、$\iota^\sharp$ は全射である(残りの単体で $0$ として延ばす)。その核 $K^\bullet_{\mathcal U}$ は $\mathcal U$ に小さいすべての単体で $0$ になる余鎖の全体であり、短完全列 $0\to K^\bullet_{\mathcal U}\to C^\bullet(X;A)\to\operatorname{Hom}(C^{\mathcal U}_\bullet(X),A)\to0$ の長完全列から、すべての次数で $H^q(K^\bullet_{\mathcal U})=0$ である。
$\varphi\in C^q_0(X;A)$ が $\delta\varphi=0$ を満たすとする。各点 $x$ の開近傍 $U_x$ で $\varphi|_{U_x}=0$ となるものをとり、$\mathcal U:=\{U_x\}_{x\in X}$ とおくと $\varphi\in K^q_{\mathcal U}$ である。よって $\varphi=\delta\psi$ となる $\psi\in K^{q-1}_{\mathcal U}$ がある($q=0$ なら $\varphi=0$)。$\psi$ は各 $U_x$ に入る単体で $0$ なので、$\psi\in C^{q-1}_0(X;A)$ である。
2.$s\in\Gamma(X,\mathcal S^q)$ をとる。層化の切断の定め方から、$X$ の開被覆と、各成員 $U$ の上の余鎖 $\varphi_U\in C^q(U;A)$ で、$U$ の各点での芽が $s$ の芽に等しいものがある。prf-ssc-surjective と同じく、成員 $U_i$、その上の余鎖 $\varphi_i$、$X$ を覆う局所有限な閉集合の族 $K_i\subset U_i$、互いに交わらない $W_i:=K_i\setminus\bigcup_{k< i}K_k$ をとる。特異 $q$ 単体 $\sigma$ について、$\sigma(e_0)\in W_i$ となる $i$ はただ 1 つなので、
$$
\varphi(\sigma):=\begin{cases}\varphi_i(\sigma)&(\sigma(e_0)\in W_i\text{ かつ }\sigma(\Delta^q)\subset U_i)\\0&(\text{それ以外})\end{cases}
$$
で $\varphi\in C^q(X;A)$ が定まる。点 $x$ の開近傍 $N$ で、$N$ と交わる $K_i$ が有限個であるものをとる。$x\notin K_i$ となるそれらの $K_i$ を除くように $N$ を縮めると、残る $i$(有限個)はすべて $x\in K_i\subset U_i$ を満たす。それらの $\varphi_i$ の $x$ での芽はどれも $s_x$ に等しいので、$N$ をさらに縮めて、$N\subset U_i$ かつ $\varphi_i|_N$ がすべて等しいとしてよい。$N$ に入る単体 $\sigma$ について、$\sigma(e_0)\in W_i\subset K_i$ となる $i$ は残った $i$ のどれかで、$\sigma(\Delta^q)\subset N\subset U_i$ だから $\varphi(\sigma)=\varphi_i(\sigma)$ である。よって $\varphi|_N$ は共通の $\varphi_i|_N$ に等しく、$\varphi$ の $x$ での芽は $s_x$ に等しい。すなわち $\pi(\varphi)=s$ である。
最後の主張.$\ker\pi=C^\bullet_0(X;A)$ なので、余鎖複体の短完全列 $0\to C^\bullet_0(X;A)\to C^\bullet(X;A)\xrightarrow{\pi}\Gamma(X,\mathcal S^\bullet)\to0$ がある。その長完全列と 1 による。$\square$
1 は lem-ssc-local である。2 の前半は prop-ssc-acyclic、後半は lem-ssc-global である。3:1 と 2 により $0\to A_X\to\mathcal S^\bullet$ は非輪状分解なので、層コホモロジー の命題「非輪状分解による計算」により $H^q(X,A_X)\cong H^q(\Gamma(X,\mathcal S^\bullet))$ であり、2 により右辺は $\pi$ を通じて $H^q_{\mathrm{sing}}(X;A)$ と同型である。$\square$
1 だけが局所可縮性を使い、2 だけがパラコンパクト性を使う。
$M$ を $C^\infty$ 級多様体(Hausdorff で第 2 可算)とし、開集合 $U\subset M$ の $C^\infty$ 級特異 $q$ 単体(滑らかな特異ホモロジー の定義「滑らかな特異単体と滑らかな特異鎖」)の上の $A$ 値の余鎖の群を $C^q_\infty(U;A)$、そのコホモロジーを $H^q_\infty(U;A)$ と書く。$C^\infty$ 級特異単体は特異単体の一種なので、制限写像 $r\colon C^\bullet(U;A)\to C^\bullet_\infty(U;A)$ がある。
制限写像 $r$ は、すべての $q$ について同型 $r^*\colon H^q_{\mathrm{sing}}(M;A)\to H^q_\infty(M;A)$ を誘導する。
要点:主定理の 1・2 の証明は $C^\infty$ 級特異単体でもそのまま通り、制限 $r$ は 2 つの非輪状分解の間の射を与える。
前層 $U\mapsto C^q_\infty(U;A)$ の層化を $\mathcal S^q_\infty$ とし、主定理の 1・2 が $\mathcal S^\bullet_\infty$ でも成り立つことを確かめる。
1:$M$ の各点は、$\mathbb R^n$ の凸開集合と微分同相な開近傍(座標球)を任意に小さくもつ。座標球 $B$ の上の直線ホモトピーは $C^\infty$ 級であり、特異コホモロジー の定理「ホモトピー不変性」の証明の角柱作用素は、単体に $F\circ(\sigma\times\mathrm{id})$ とアフィン写像を合成して作るので、$C^\infty$ 級ホモトピー $F$ に対しては $C^\infty$ 級単体を $C^\infty$ 級単体に写す。よって $H^q_\infty(B;A)$ は 1 点のもの(1 点の $C^\infty$ 級単体は定値写像だけ)に等しく、prf-ssc-local の議論で $V=U=B$ ととれば完全性が出る。
2:lem-ssc-module と lem-ssc-global の 2 は、単体の最初の頂点と像しか使わないのでそのまま通る。lem-ssc-global の 1 で使う変形 $\rho$ と鎖ホモトピー $D$ は、特異単体 $\sigma$ に $\Delta^q$ の中の線型単体 $\lambda$ を合成した $\sigma\circ\lambda$ の一次結合を作るもので(切除定理(特異ホモロジー) の補題「特異鎖の細分作用素」の 3)、$C^\infty$ 級特異鎖の部分複体を保つ。よって同じ議論が通る。
こうして $0\to A_M\to\mathcal S^\bullet$ と $0\to A_M\to\mathcal S^\bullet_\infty$ はどちらも非輪状分解である。$r$ は層の射 $\bar r\colon\mathcal S^\bullet\to\mathcal S^\bullet_\infty$ を誘導し、$\bar r\circ\varepsilon=\varepsilon_\infty$、$\bar r\circ\pi=\pi_\infty\circ r$ を満たす。下の rem-ssc-resolution-map により $\bar r$ は $\Gamma(M,-)$ のコホモロジーの同型を誘導し、$\pi$、$\pi_\infty$ も同型を誘導するので、$r^*$ は同型である。$\square$
$0\to\mathcal F\to\mathcal A^\bullet$ と $0\to\mathcal F\to\mathcal B^\bullet$ を非輪状分解、$f\colon\mathcal A^\bullet\to\mathcal B^\bullet$ を $\mathcal F$ の上で恒等写像と両立する複体の射とすると、$f$ は同型 $H^q(\Gamma(X,\mathcal A^\bullet))\to H^q(\Gamma(X,\mathcal B^\bullet))$ を誘導する。層コホモロジー の命題「非輪状分解による計算」の証明の $\mathcal Z^i$ と短完全列 $0\to\mathcal Z^i\to\mathcal A^i\to\mathcal Z^{i+1}\to0$ を、$f$ は $\mathcal B^\bullet$ の同じ列へ写す。長完全列の連結準同型は短完全列の射と可換なので(同記事の定理「層コホモロジーの長完全列」)、両辺を $H^q(X,\mathcal F)$ と同一視する同型は $f$ と可換になる(Wel08 Ch. II Corollary 3.14、p. 60)。
$C^\infty$ 級多様体 $M$ について、閉形式を $C^\infty$ 級特異単体の上で積分する写像は、同型
$$
H^q_{\mathrm{dR}}(M)\xrightarrow{\ \sim\ }H^q_\infty(M;\mathbb R)\xleftarrow{\ \sim\ }H^q_{\mathrm{sing}}(M;\mathbb R)
$$
を与える。
左の同型は de Rhamの定理 の定理「de Rham の定理」(Mayer–Vietoris 完全列による証明が同記事にある)、右の同型は cor-ssc-smooth を $A=\mathbb R$ として得られる。$\square$
層の言葉では、微分形式の層の細分解 $0\to\mathbb R_M\to\mathcal A^\bullet_M$ により $H^q(M,\mathbb R_M)\cong H^q_{\mathrm{dR}}(M)$ であり(層コホモロジー の注意「軟弱層・細層の非輪状性とde Rham複体」)、主定理の 3 と合わせても同じ結論が得られる。
$X=S^1$ を 2 つの開弧 $U_1,U_2$ で覆うと、$U_1\cap U_2$ は 2 つの開弧の非交和である。開弧は可縮なので、主定理の 3 と 特異コホモロジー の定理「ホモトピー不変性」から $H^q(U_i,A_X)$ は $q=0$ で $A$、$q\ge1$ で $0$ である。$U_1\cap U_2$ では、特異単体の像が 2 つの開弧のどちらか一方に入るので特異余鎖の複体が 2 つの開弧のものの直積になり、同様に $H^q(U_1\cap U_2,A_X)$ は $q=0$ で $A\oplus A$、$q\ge1$ で $0$ である。層コホモロジーの Mayer–Vietoris 完全列(層コホモロジー の命題「Mayer–Vietoris完全列」)
$$
0\to H^0(S^1,A_X)\to A\oplus A\xrightarrow{\ (a,b)\mapsto(b-a,\,b-a)\ }A\oplus A\to H^1(S^1,A_X)\to0
$$
から $H^0(S^1,A_X)\cong A$、$H^1(S^1,A_X)\cong A$、$H^q(S^1,A_X)=0$($q\ge2$)である。これは特異コホモロジー $H^\bullet_{\mathrm{sing}}(S^1;A)$ と一致する。
局所可縮性を外すと、0 次ですでに一致が崩れる。下の 2 つの空間は $\mathbb R$ または $\mathbb R^2$ のコンパクト部分集合なので、距離化可能でパラコンパクト Hausdorff である(パラコンパクト空間 の定理「Stone の定理」)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 局所可縮性(局所連結でない) | $X=\{0\}\cup\{1/n\mid n\ge1\}\subset\mathbb R$ | $H^0(X,\mathbb Z_X)\cong H^0_{\mathrm{sing}}(X;\mathbb Z)$ |
| 局所可縮性(連結だが弧状連結でない) | 位相幾何学者の正弦曲線 $T$ | $H^0(T,\mathbb Z_T)\cong H^0_{\mathrm{sing}}(T;\mathbb Z)$ |
| 局所可縮性(弧状連結で局所連結でない) | ワルシャワ円 $W$ | $H^1(W,\mathbb Z_W)\cong H^1_{\mathrm{sing}}(W;\mathbb Z)$ |
どの行でも $H^0(Y,\mathbb Z_Y)=\Gamma(Y,\mathbb Z_Y)$ は局所定数関数 $Y\to\mathbb Z$ の全体であり(定数層 の定義「定数層」)、$H^0_{\mathrm{sing}}(Y;\mathbb Z)$ は弧状連結成分ごとに整数を与える関数の全体である(特異コホモロジー の命題「0 次コホモロジーと弧状連結成分」)。
1 行目:$X$ の連結な部分集合は 1 点だけなので(2 点 $a< b$ を含めば、その間の $X$ に属さない実数で分けられる)、道の像も 1 点であり、弧状連結成分は各点である。よって $H^0_{\mathrm{sing}}(X;\mathbb Z)=\mathbb Z^X$ は非可算集合である。一方、局所定数関数は $0$ のある近傍で定数なので、有限個の $1/n$ を除いて $f(1/n)=f(0)$ であり、そのような関数は可算個しかない。よって両者は同型でない。主定理の 2 は成り立つので、主定理の 1 が成り立たず、$X$ は局所可縮でない(実際、$0$ のどの近傍 $V$ も点 $1/n$ を含み、$0$ と $1/n$ は $X$ の中で道で結べないので、$V\hookrightarrow X$ は定値写像とホモトピックでない)。
2 行目:$T$ は連結で(位相幾何学者の正弦曲線 の命題「連結である」)、弧状連結成分はちょうど 2 つある(同記事の系「二つの弧状連結成分」)。連結空間の上の局所定数関数は定数なので(各値の逆像が開かつ閉)、$H^0(T,\mathbb Z_T)\cong\mathbb Z$、一方 $H^0_{\mathrm{sing}}(T;\mathbb Z)\cong\mathbb Z^2$ である。$T$ はコンパクトなので(同記事の命題「コンパクトである」)、1 行目と同じく $T$ は局所可縮でない。
3 行目:ワルシャワ円(Warsaw circle)について、特異コホモロジー の例「反例:Warsaw 円」により、$H^1_{\mathrm{sing}}(W;\mathbb Z)=0$ だが Čech コホモロジーは $\check H^1(W;\mathbb Z)\cong\mathbb Z$ である。1 次の Čech コホモロジーは層コホモロジーと一致するので(層コホモロジー の命題「比較写像」)、$H^1(W,\mathbb Z_W)\cong\mathbb Z$ である(この行の 2 つの事実はこの記事では証明しない)。
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