等式の証明と比例式

同義語:比例式加比の理中間の分数proving identities and proportions

概要

等式の証明と比例式(proving identities and proportions)とは、条件つきの等式を、文字の消去・等しい比の値を $k$ とおく・条件を因数に含む恒等式の利用で証明する方法と、比の式の性質をまとめた話題である。$a+b+c=0$ なら $a^3+b^3+c^3=3abc$ である。加比の理:$\frac ab=\frac cd=\frac ef=k$($b,d,f\ne0$)で $pb+qd+rf\ne0$ なら $\frac{pa+qc+re}{pb+qd+rf}=k$ である。中間の分数:$b,d>0$ で $\frac ab<\frac cd$ なら $\frac ab<\frac{a+c}{b+d}<\frac cd$ で、$\frac{a+c}{b+d}$ は重み $\frac b{b+d},\frac d{b+d}$ の加重平均である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 恒等式と未定係数法, 展開と因数分解の公式

高校での出発点:条件がついた等式

「$x^2-1=(x+1)(x-1)$」はどんな $x$ でも成り立つ等式である。これに対して、「ある条件を満たすときだけ成り立つ等式」がある。条件をどう使えば証明できるかを、2 つの計算で見る。

比例式から式の値を求める

$\dfrac x2=\dfrac y3=\dfrac z4$ で、$x,y,z$ のどれかは $0$ でないとする。このとき $\dfrac{x+y+z}{2x-y+z}$ の値を求める。
3 つの分数の共通の値を $k$ とおくと、$x=2k$、$y=3k$、$z=4k$ である。$x,y,z$ のどれかが $0$ でないので $k\ne0$ である。代入すると
$$ x+y+z=2k+3k+4k=9k,\qquad 2x-y+z=4k-3k+4k=5k $$
なので
$$ \frac{x+y+z}{2x-y+z}=\frac{9k}{5k}=\frac95 $$
である。たとえば $(x,y,z)=(2,3,4)$ なら $\dfrac{9}{5}$、$(x,y,z)=(-4,-6,-8)$ なら $\dfrac{-18}{-10}=\dfrac95$ で、どちらも同じ値になる。

和が 0 という条件から等式を導く

$a+b+c=0$ のとき、次の 2 つが成り立つ。
(1) $a^3+b^3+c^3=3abc$
(2) $abc\ne0$ なら $\dfrac{a^2}{bc}+\dfrac{b^2}{ca}+\dfrac{c^2}{ab}=3$
(1) は、条件から $c=-(a+b)$ として $c$ を消す。
$$ c^3=-(a+b)^3=-a^3-3a^2b-3ab^2-b^3 $$
なので
$$ a^3+b^3+c^3=a^3+b^3-a^3-3a^2b-3ab^2-b^3=-3ab(a+b) $$
である。一方 $3abc=3ab\cdot\bigl(-(a+b)\bigr)=-3ab(a+b)$ なので、両辺は等しい。
(2) は、分母を $abc$ にそろえる。
$$ \frac{a^2}{bc}+\frac{b^2}{ca}+\frac{c^2}{ab}=\frac{a^3}{abc}+\frac{b^3}{abc}+\frac{c^3}{abc}=\frac{a^3+b^3+c^3}{abc} $$
で、(1) により分子は $3abc$ なので、値は $\dfrac{3abc}{abc}=3$ である。
数で確かめる。$(a,b,c)=(1,2,-3)$ では $a^3+b^3+c^3=1+8-27=-18$、$3abc=3\cdot1\cdot2\cdot(-3)=-18$ である。また $\dfrac{1}{-6}+\dfrac{4}{-3}+\dfrac{9}{2}=\dfrac{-1-8+27}{6}=3$ である。

2 つの例では、条件の使い方が違った。ex-pip-start-ratio は「共通の値を $k$ とおいて、文字を $k$ で表す」、ex-pip-start-sum-zero は「条件から 1 つの文字を消す」である。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 条件つきの等式を証明するとき、条件をどう使えばよいか。→ def-pip-conditional、prop-pip-sum-zero
  2. 等しい比がいくつか並んでいるとき、分子どうし・分母どうしを足した分数は何になるか。→ thm-pip-kahi
  3. 比が等しくないとき、分子どうし・分母どうしを足した分数はどこにあるか。→ thm-pip-mediant
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $\dfrac x2=\dfrac y3=\dfrac z4=k$ とおく比例式の共通の値原点を通る直線の上の点 $(x,y,z)=k(2,3,4)$
    分子どうし・分母どうしを足す加比の理、中間の分数ベクトルの和、加重平均
    $\dfrac13$ と $\dfrac25$ の間に $\dfrac38$中間の分数Farey 数列、Stern–Brocot 木

等式の証明の方針

恒等式と条件つきの等式

文字を含む等式が、文字にどんな値を入れても(分母が $0$ にならない範囲で)成り立つとき、恒等式 という。文字の値が決められた条件を満たすときに成り立つ等式を、条件つきの等式 という。
等式 $A=B$ を証明するには、次のどれかを示せばよい。
(R1) $A$ を変形して $B$ にする。
(R1) $B$ を変形して $A$ にする。
(R1) $A-B$ を変形して $0$ にする(または $A$ と $B$ をそれぞれ変形して同じ式 $C$ にする)。

恒等式の性質(係数を比べてよいこと、いくつかの値を代入して係数を決めてよいこと)は 恒等式と未定係数法 で扱った。この記事では条件つきの等式を主に扱う。条件つきの等式では、変形の途中で条件を使う。使い方には次の 3 つの型がある。

方針何をするか向いている条件この記事の例
消去条件から 1 つの文字を他の文字で表し、代入して文字を減らす1 次の等式($a+b+c=0$ など)ex-pip-start-sum-zero
$k$ とおく等しい比の共通の値を $k$ とおき、すべての文字を $k$ で表す比例式($\dfrac ab=\dfrac cd$ など)ex-pip-start-ratio、ex-pip-k
対称性と因数分解条件の式を因数に含む恒等式を使う対称な条件($a+b+c=0$、$abc=1$ など)prop-pip-sum-zero

3 つ目の方針を、ex-pip-start-sum-zero (1) に当ててみる。展開と因数分解の公式 の定理「3 乗の和から 3abc を引いた式の因数分解」により
$$ a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) $$
が恒等式として成り立つ。右辺に因数 $a+b+c$ があるので、$a+b+c=0$ なら右辺は $0$ で、$a^3+b^3+c^3=3abc$ である。消去の方法と違い、展開を 1 回もせずに済む。

和が 0 の 3 数の等式

$a+b+c=0$ のとき、次が成り立つ。
(R1) $a^3+b^3+c^3=3abc$
(R1) $(a+b)(b+c)(c+a)=-abc$
(R1) $a^2+b^2+c^2=-2(ab+bc+ca)$

条件を「2 つの和は残りの 1 つの符号を変えたもの」と読みかえる

(i):上で述べたとおり、恒等式 $a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)$ の右辺の因数 $a+b+c$ が $0$ だからである。
(ii):$a+b+c=0$ から $a+b=-c$、$b+c=-a$、$c+a=-b$ である。よって
$$ (a+b)(b+c)(c+a)=(-c)(-a)(-b)=-abc $$
である。
(iii):展開の公式 $(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2(ab+bc+ca)$ で左辺が $0^2=0$ なので、$a^2+b^2+c^2+2(ab+bc+ca)=0$ である。移項すると (iii) になる。$\square$

命題を数で確かめる

$(a,b,c)=(4,-1,-3)$ は $a+b+c=0$ を満たす。
(i) $a^3+b^3+c^3=64-1-27=36$、$3abc=3\cdot4\cdot(-1)\cdot(-3)=36$ である。

(ii)、(iii) の検算を開く

(ii) $(a+b)(b+c)(c+a)=3\cdot(-4)\cdot1=-12$、$-abc=-(4\cdot(-1)\cdot(-3))=-12$ である。

(iii) $a^2+b^2+c^2=16+1+9=26$、$ab+bc+ca=-4+3-12=-13$ で、$-2\cdot(-13)=26$ である。

prop-pip-sum-zero の (iii) から、$a,b,c$ が実数で $a+b+c=0$ なら $ab+bc+ca\le0$ であることも分かる(左辺 $a^2+b^2+c^2$ は $0$ 以上だから)。

比例式と「$k$ とおく」方法

比と比例式

$b\ne0$ のとき、2 つの数 $a,b$ の 比 $a:b$ に対し、$\dfrac ab$ を 比の値 という。2 つの比の値が等しいことを表す式
$$ a:b=c:d\quad\text{つまり}\quad\frac ab=\frac cd\qquad(b\ne0,\ d\ne0) $$
を 比例式 という。3 つ以上の分数についても、$\dfrac ab=\dfrac cd=\dfrac ef$($b,d,f\ne0$)のように等しいことを表す式を比例式とよぶ。このとき $a:c:e=b:d:f$ とも書く。$a:c:e$ のように 3 つ以上の数を並べた比を 連比 という。

比例式 $\dfrac ab=\dfrac cd$ の両辺に $bd$ を掛けると $ad=bc$ になる。逆に $b,d\ne0$ で $ad=bc$ なら、両辺を $bd$ で割って $\dfrac ab=\dfrac cd$ である。「内側の項の積と外側の項の積が等しい」と覚えている形である。

比例式の小さな例
  1. $\dfrac 23=\dfrac 69$ は比例式である。$2\cdot9=18=3\cdot6$ で、内側の項の積と外側の項の積が等しい。
  2. $\dfrac{1}{2}=\dfrac{3}{6}=\dfrac{-5}{-10}$ は 3 つの分数の比例式で、共通の値は $\dfrac12$ である。連比で書くと $1:3:(-5)=2:6:(-10)$ である。

比例式を使う計算の基本は、ex-pip-start-ratio で見たように、共通の値を $k$ とおくことである。$\dfrac ab=\dfrac cd=k$ とおくと $a=kb$、$c=kd$ となり、分子の文字が分母の文字と $k$ で表せる。

$k$ とおいて比例式の性質を示す

$\dfrac ab=\dfrac cd$($b,d\ne0$)のとき、次を示す。
(1) $\dfrac{a+b}{b}=\dfrac{c+d}{d}$
(2) $a\ne-b$、$c\ne-d$ のとき $\dfrac{a-b}{a+b}=\dfrac{c-d}{c+d}$
共通の値を $k$ とおくと、$a=kb$、$c=kd$ である。
(1) 左辺は $\dfrac{kb+b}{b}=\dfrac{(k+1)b}{b}=k+1$、右辺は $\dfrac{kd+d}{d}=\dfrac{(k+1)d}{d}=k+1$ で、等しい。
(2) $a+b=(k+1)b\ne0$ なので $k\ne-1$ である。左辺は $\dfrac{kb-b}{kb+b}=\dfrac{(k-1)b}{(k+1)b}=\dfrac{k-1}{k+1}$、右辺も同じく $\dfrac{(k-1)d}{(k+1)d}=\dfrac{k-1}{k+1}$ で、等しい。
数で確かめる。$\dfrac 23=\dfrac 69$ では、(1) は $\dfrac53$ と $\dfrac{15}9=\dfrac53$、(2) は $\dfrac{-1}{5}$ と $\dfrac{-3}{15}=-\dfrac15$ である。

$k$ とおく方法の要点は、「比例式の条件」を「すべての文字が $k$ と分母の文字で表せる」という形に直すことである。こうすると、条件つきの等式が、$k$ と分母の文字についての恒等式の計算になる。

主定理 1:加比の理

等しい比が並んでいるとき、分子どうし・分母どうしを足しても、同じ比の値になる。

加比の理

$b,d,f\ne0$ で
$$ \frac ab=\frac cd=\frac ef=k $$
とする。数 $p,q,r$ が $pb+qd+rf\ne0$ を満たすなら
$$ \frac{pa+qc+re}{pb+qd+rf}=k $$
である。特に $p=q=r=1$ として、$b+d+f\ne0$ なら $\dfrac{a+c+e}{b+d+f}=k$ である。

分子を $k$ でくくる

比例式から $a=kb$、$c=kd$、$e=kf$ である(それぞれ両辺に分母を掛けた)。これを分子に代入すると
$$ pa+qc+re=p\cdot kb+q\cdot kd+r\cdot kf=k(pb+qd+rf) $$
である(分配法則で $k$ をくくり出した)。仮定から $pb+qd+rf\ne0$ なので、両辺をこの数で割ってよく
$$ \frac{pa+qc+re}{pb+qd+rf}=\frac{k(pb+qd+rf)}{pb+qd+rf}=k $$
である。$\square$

分数が 2 つのとき($r=0$ とする)も 4 つ以上のときも、同じ証明で成り立つ。

加比の理を数で確かめる
  1. $\dfrac12=\dfrac36=\dfrac{-5}{-10}$ で $p=q=r=1$ とすると、$\dfrac{1+3-5}{2+6-10}=\dfrac{-1}{-2}=\dfrac12$ である。
    (2) 重みを変えた検算を開く

    (2) 同じ比例式で $p=2$、$q=-1$、$r=3$ とすると、分母は $2\cdot2-6+3\cdot(-10)=-32\ne0$、分子は $2\cdot1-3+3\cdot(-5)=-16$ で、$\dfrac{-16}{-32}=\dfrac12$ である。

次の例では、加比の理を使うときに分母が $0$ になる場合を分けることが要になる。

3 つの比が等しいときの共通の値

$b+c$、$c+a$、$a+b$ がどれも $0$ でなく
$$ \frac a{b+c}=\frac b{c+a}=\frac c{a+b}=k $$
のとき、$k$ の値を求める。
加比の理を $p=q=r=1$ で使う。分母の和は $(b+c)+(c+a)+(a+b)=2(a+b+c)$、分子の和は $a+b+c$ である。
場合 1:$a+b+c\ne0$ のとき。分母の和 $2(a+b+c)$ は $0$ でないので、加比の理により
$$ k=\frac{a+b+c}{2(a+b+c)}=\frac12 $$
である。
場合 2:$a+b+c=0$ のとき。分母の和が $0$ なので加比の理は使えない。代わりに $b+c=-a$ を使う。仮定 $b+c\ne0$ から $a\ne0$ で
$$ k=\frac a{b+c}=\frac a{-a}=-1 $$
である。
よって $k=\dfrac12$ または $k=-1$ で、どちらも実際に起こる。$(a,b,c)=(1,1,1)$ では 3 つの分数はどれも $\dfrac12$、$(a,b,c)=(1,2,-3)$ では $\dfrac1{-1}$、$\dfrac2{-2}$、$\dfrac{-3}{3}$ で、どれも $-1$ である。

場合 2 を忘れて「$k=\dfrac12$」だけを答えるのが、加比の理のよくある落とし穴である。定理の仮定 $pb+qd+rf\ne0$ は飾りではない(ex-pip-cx-kahi)。

主定理 2:中間の分数

加比の理は、比が等しいときに分子どうし・分母どうしを足した分数が同じ値になることを言っていた。では、比が等しくないときはどうなるか。数で試す。

分子どうし・分母どうしを足してみる
  1. $\dfrac13$ と $\dfrac25$ から $\dfrac{1+2}{3+5}=\dfrac38$ を作る。小数で $\dfrac13=0.333\ldots$、$\dfrac38=0.375$、$\dfrac25=0.4$ なので、$\dfrac13<\dfrac38<\dfrac25$ である。
  2. $\dfrac12$ と $\dfrac34$ から $\dfrac{1+3}{2+4}=\dfrac46=\dfrac23$ を作る。$\dfrac12=0.5$、$\dfrac23=0.666\ldots$、$\dfrac34=0.75$ なので、$\dfrac12<\dfrac23<\dfrac34$ である。
    どちらも、作った分数はもとの 2 つの分数の間にある。ただし、$\dfrac13+\dfrac25=\dfrac{11}{15}$ とは違う。分数の足し算ではない。
中間の分数

$b>0$、$d>0$ のとき、2 つの分数 $\dfrac ab$、$\dfrac cd$ に対して、分子どうし・分母どうしを足した分数
$$ \frac{a+c}{b+d} $$
を、$\dfrac ab$ と $\dfrac cd$ の 中間の分数(mediant)という。

中間の分数は、分数の「書き方」から作るので、同じ数でも書き方を変えると変わる。たとえば $\dfrac12$ と $\dfrac25$ の中間の分数は $\dfrac37$ だが、$\dfrac12$ を $\dfrac24$ と書くと $\dfrac{4}{9}$ になる。どちらも $\dfrac25=0.4$ と $\dfrac12=0.5$ の間にある($\dfrac37=0.428\ldots$、$\dfrac49=0.444\ldots$)。次の定理は、分母が正でありさえすれば、どう書いても間にくることを保証する。

中間の分数は 2 つの分数の間にある

$b>0$、$d>0$ で $\dfrac ab<\dfrac cd$ ならば
$$ \frac ab<\frac{a+c}{b+d}<\frac cd $$
である。

差を通分して符号を見る

段 1(仮定を分母のない形にする)。$\dfrac ab<\dfrac cd$ の両辺に正の数 $bd$ を掛けると、不等号の向きは変わらず $ad< bc$ である。つまり $bc-ad>0$ である。
段 2(左の不等式)。中間の分数から $\dfrac ab$ を引いて通分すると
$$ \frac{a+c}{b+d}-\frac ab=\frac{b(a+c)-a(b+d)}{b(b+d)}=\frac{ab+bc-ab-ad}{b(b+d)}=\frac{bc-ad}{b(b+d)} $$
である。分子 $bc-ad$ は段 1 により正、分母 $b(b+d)$ は $b>0$、$b+d>0$ により正である。よって差は正で、$\dfrac ab<\dfrac{a+c}{b+d}$ である。
段 3(右の不等式)。$\dfrac cd$ から中間の分数を引いて通分すると
$$ \frac cd-\frac{a+c}{b+d}=\frac{c(b+d)-d(a+c)}{d(b+d)}=\frac{bc+cd-ad-cd}{d(b+d)}=\frac{bc-ad}{d(b+d)} $$
である。分子は正、分母 $d(b+d)$ も正なので、差は正で、$\dfrac{a+c}{b+d}<\dfrac cd$ である。$\square$

証明の段 1 で出てきた $bc-ad$ は、2 つの分数の「ずれ」を分母なしで表す数である。ex-pip-mediant-try (1) では $bc-ad=3\cdot2-1\cdot5=1$ で、段 2 の差は $\dfrac{1}{3\cdot8}=\dfrac1{24}$(実際 $\dfrac38-\dfrac13=\dfrac{9-8}{24}$)、段 3 の差は $\dfrac1{5\cdot8}=\dfrac1{40}$(実際 $\dfrac25-\dfrac38=\dfrac{16-15}{40}$)である。
$\dfrac ab=\dfrac cd$ のとき($bc-ad=0$ のとき)は、段 2・段 3 の差がどちらも $0$ になり、中間の分数は同じ値になる。これは thm-pip-kahi の $p=q=1$ の場合である。つまり、加比の理と中間の分数の定理は、「分母が正なら、中間の分数は 2 つの分数を端とする範囲(等しいときはその 1 点)にある」という 1 つの事実の 2 つの場合である。

加重平均として見る

中間の分数が間にくる理由は、次の形に書くとはっきりする。

中間の分数は加重平均

$b>0$、$d>0$ のとき
$$ \frac{a+c}{b+d}=\underbrace{\frac{b}{b+d}}_{\text{重み}}\cdot\frac ab+\underbrace{\frac{d}{b+d}}_{\text{重み}}\cdot\frac cd $$
であり、2 つの重みは正で和が $1$ である。

右辺を約分する

右辺の第 1 項は $\dfrac{b}{b+d}\cdot\dfrac ab=\dfrac{a}{b+d}$、第 2 項は $\dfrac{d}{b+d}\cdot\dfrac cd=\dfrac{c}{b+d}$ である(それぞれ $b$、$d$ を約分した。$b,d\ne0$ なので約分してよい)。足すと $\dfrac{a+c}{b+d}$ である。重みは $b,d,b+d>0$ から正で、和は $\dfrac{b+d}{b+d}=1$ である。$\square$

正の重みで和が $1$ の平均(加重平均)は、2 つの値の間にある。重い方の値に近づく。中間の分数では、分母の大きい方の分数が重い。

重みを計算する

$\dfrac13$ と $\dfrac25$ では、重みは $\dfrac3{8}$ と $\dfrac58$ で、
$$ \frac38\cdot\frac13+\frac58\cdot\frac25=\frac18+\frac14=\frac38 $$
である。分母が大きい $\dfrac25$ の方が重いので、$\dfrac38$ は 2 つの真ん中 $\dfrac{11}{30}=0.366\ldots$ より $\dfrac25$ 寄りにある($\dfrac38=0.375$)。

図で見る:ベクトルの和の傾き

分数 $\dfrac ab$($b>0$)を、座標平面の点 $(b,a)$、つまり原点からのベクトル $(b,a)$ で表す。分数の値は、このベクトルの傾き $\dfrac ab$ である。分子どうし・分母どうしを足すことは、ベクトルの和
$$ (b,a)+(d,c)=(b+d,\ a+c) $$
をとることである。
ベクトル (3,1) と (5,2) の和 (8,3) は、2 つのベクトルがはる平行四辺形の対角線で、その傾き 3/8 は傾き 1/3 と 2/5 の間にある ベクトル (3,1) と (5,2) の和 (8,3) は、2 つのベクトルがはる平行四辺形の対角線で、その傾き 3/8 は傾き 1/3 と 2/5 の間にある
図 1 で、ベクトルの和は 2 つのベクトルがはる平行四辺形の対角線である。$b,d>0$ なら 2 つのベクトルはどちらも右向き($x$ 成分が正)で、対角線は 2 本の間の角の内側を通る。傾きは右向きのベクトルでは向きと 1 対 1 に対応するので、対角線の傾きは 2 つの傾きの間にある。これが thm-pip-mediant の図の上の意味である。分母に負の数を許すと、ベクトルが左を向き、この見方が崩れる(ex-pip-cx-negative)。

率を合わせると起こること

割合(率)は分数で、2 つの集団を合わせた全体の率は、ちょうど中間の分数になる。

2 つのクラスの合格率を合わせる

ある検定で、クラス A は $10$ 人中 $8$ 人、クラス B は $50$ 人中 $10$ 人が合格した。2 クラスを合わせた合格率は
$$ \frac{8+10}{10+50}=\frac{18}{60}=0.3 $$
で、中間の分数である。thm-pip-mediant により、全体の率 $0.3$ は $\dfrac8{10}=0.8$ と $\dfrac{10}{50}=0.2$ の間にある。重みは $\dfrac{10}{60}$ と $\dfrac{50}{60}$ なので、人数の多いクラス B の率 $0.2$ に近い(cor-pip-weighted)。

重みが人数で決まるので、次のようなことが起こる。

各グループでは高いのに、合わせると低い

グループ 1 とグループ 2 で、X と Y の成功の数を数えた。

グループ 1グループ 2合わせる
X$\dfrac8{10}=0.8$$\dfrac{10}{50}=0.2$$\dfrac{18}{60}=0.3$
Y$\dfrac{45}{60}=0.75$$\dfrac1{10}=0.1$$\dfrac{46}{70}=0.657\ldots$

X はどちらのグループでも Y より率が高い($0.8>0.75$、$0.2>0.1$)。ところが合わせると X の方が低い($0.3<0.657\ldots$)。
理由は重みにある。X の全体の率は、重み $\dfrac{10}{60}$、$\dfrac{50}{60}$ で、率の低いグループ 2 に強く引かれる。Y の全体の率は、重み $\dfrac{60}{70}$、$\dfrac{10}{70}$ で、率の高いグループ 1 に強く引かれる。cor-pip-weighted で計算すると
$$ \frac{10}{60}\cdot0.8+\frac{50}{60}\cdot0.2=\frac{8+10}{60}=0.3,\qquad \frac{60}{70}\cdot0.75+\frac{10}{70}\cdot0.1=\frac{45+1}{70}=0.657\ldots $$
である。thm-pip-mediant が言うのは「全体の率は 2 つのグループの率の間にある」ことだけで、X と Y の比べ方までは保証しない。

X の 2 本のベクトル (10,8)、(50,10) と Y の 2 本 (60,45)、(10,1) の和をそれぞれとると、どちらのグループでも傾きの大きい X の方が、和では傾きが小さくなる X の 2 本のベクトル (10,8)、(50,10) と Y の 2 本 (60,45)、(10,1) の和をそれぞれとると、どちらのグループでも傾きの大きい X の方が、和では傾きが小さくなる
図 2 は ex-pip-reversal のグループごとの率をベクトルの傾きで表したものである。X の 2 本はどちらも、同じグループの Y より傾きが大きい。しかし和のベクトルの傾きは Y の方が大きい。和の向きは長いベクトルに引かれ、X では傾きの小さいベクトルが長く、Y では傾きの大きいベクトルが長いからである。この現象は統計で Simpson のパラドックス とよばれ、Simpsonのパラドックス で詳しく扱う。

例と反例

thm-pip-kahi、thm-pip-mediant と、条件つきの等式の計算で、仮定を外すと何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
加比の理の $pb+qd+rf\ne0$$\dfrac12=\dfrac{-1}{-2}$ で $p=q=1$足した分数が同じ比の値になる
中間の分数の分母が正$\dfrac{2}{-1}$ と $\dfrac12$中間の分数が 2 つの間にある
$k$ とおいたときの $k\ne0$$x=y=z=0$ex-pip-start-ratio の値 $\dfrac95$ が定まる
$a+b+c=0$(逆向きの推論)$(a,b,c)=(1,1,1)$$a^3+b^3+c^3=3abc$ から $a+b+c=0$ が出る
反例:加比の理で分母の和が 0

$\dfrac12=\dfrac{-1}{-2}$ は比例式で、共通の値は $\dfrac12$ である。$p=q=1$ として分子どうし・分母どうしを足すと $\dfrac{1+(-1)}{2+(-2)}=\dfrac00$ で、分数として定まらない。仮定 $pb+qd\ne0$ が成り立たないので、thm-pip-kahi は何も言わない。
ex-pip-kahi-cases の場合 2 も同じ形である。$(a,b,c)=(1,2,-3)$ では 3 つの分数の分子の和は $0$、分母の和も $(-1)+(-2)+3=0$ で、足した分数は $\dfrac00$ になる。それでも 3 つの分数の共通の値 $-1$ は、分母の和を使わずに求まった。

反例:分母が負だと間にこない
  1. $\dfrac2{-1}=-2$ と $\dfrac12$ では $-2<\dfrac12$ である。分子どうし・分母どうしを足すと $\dfrac{2+1}{-1+2}=\dfrac31=3$ で、$3$ は $-2$ と $\dfrac12$ の間にない。prf-pip-mediant の段 1 で両辺に $bd$ を掛けたが、$bd=(-1)\cdot2<0$ なので不等号の向きが変わり、証明が通らない。
  2. $\dfrac1{-1}=-1$ と $\dfrac11=1$ では、足すと $\dfrac{1+1}{-1+1}=\dfrac20$ となり、分数として定まらない。
    同じ数 $-2$ を $\dfrac{-2}{1}$ と書き直して分母を正にすれば、$\dfrac{-2+1}{1+2}=-\dfrac13$ で、$-2<-\dfrac13<\dfrac12$ となる。
反例:共通の値が 0

$x=y=z=0$ は $\dfrac x2=\dfrac y3=\dfrac z4$(どれも $0$)を満たす。このとき $2x-y+z=0$ なので、$\dfrac{x+y+z}{2x-y+z}=\dfrac00$ は定まらない。ex-pip-start-ratio で「$x,y,z$ のどれかは $0$ でない」と仮定したのは、$k\ne0$ にして $5k$ で割るためである。

反例:逆は成り立たない

$(a,b,c)=(1,1,1)$ では $a^3+b^3+c^3=3=3abc$ だが、$a+b+c=3\ne0$ である。恒等式 $a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)$ の左辺が $0$ になるのは、第 1 の因数が $0$ のときだけでなく、第 2 の因数が $0$ のときもある。$(1,1,1)$ では第 2 の因数が $3-3=0$ である。実数の範囲では、第 2 の因数が $0$ になるのは $a=b=c$ のときに限る(展開と因数分解の公式 の系「3 乗の和が 3abc に等しくなる条件」)。

大学数学で見る:Farey 数列と Stern–Brocot 木

中間の分数をくり返し作ると、分数がきれいに並ぶ。ex-pip-mediant-try (1) の $\dfrac13$ と $\dfrac25$ は、$bc-ad=3\cdot2-1\cdot5=1$ を満たしていた。この「ずれが $1$」という関係は、中間の分数をとっても受け継がれる。

となり合う分数と中間の分数

$a,b,c,d$ は整数で、$b,d>0$、$bc-ad=1$ とする。このとき次が成り立つ。
(R1) 中間の分数 $\dfrac{a+c}{b+d}$ は、左の $\dfrac ab$ とも右の $\dfrac cd$ とも、同じ関係を満たす:$b(a+c)-a(b+d)=1$、$(b+d)c-(a+c)d=1$。
(R1) $\dfrac ab<\dfrac hk<\dfrac cd$ を満たす分数 $\dfrac hk$($h,k$ は整数、$k>0$)の分母は $k\ge b+d$ である。したがって、2 つの間にある分数のうち分母が最小のものは中間の分数である。

分母を $bc-ad=1$ で書き直す

要点:(i) は展開するだけである。(ii) は、$\dfrac hk$ が間にあることから整数 $bh-ak$ と $ck-dh$ がどちらも $1$ 以上になり、恒等式 $k=k(bc-ad)=b(ck-dh)+d(bh-ak)$ から $k\ge b+d$ が出る。

詳しい証明を開く

(i):展開すると $b(a+c)-a(b+d)=ab+bc-ab-ad=bc-ad=1$、$(b+d)c-(a+c)d=bc+cd-ad-cd=bc-ad=1$ である。

(ii):$\dfrac ab<\dfrac hk$ の両辺に正の数 $bk$ を掛けると $ak< bh$ で、$bh-ak$ は正の整数なので $bh-ak\ge1$ である。同じく $\dfrac hk<\dfrac cd$ の両辺に正の数 $dk$ を掛けると $dh< ck$ で、$ck-dh\ge1$ である。$bc-ad=1$ を使うと

$$k=k(bc-ad)=b(ck-dh)+d(bh-ak)$$

である(右辺を展開すると $bck-bdh+bdh-adk=k(bc-ad)$)。$b,d>0$ と $ck-dh\ge1$、$bh-ak\ge1$ から $k\ge b\cdot1+d\cdot1=b+d$ である。中間の分数は thm-pip-mediant により間にあり、分母がちょうど $b+d$ なので、分母の最小値は $b+d$ である。さらに $k=b+d$ のときは、$k=b(ck-dh)+d(bh-ak)$ で $ck-dh\ge1$、$bh-ak\ge1$ だから、両方とも $1$ でなければならない。$bh-ak=1$ に $k=b+d$ を入れると $bh=1+ab+ad=ab+bc$($bc-ad=1$ を使った)で、$h=a+c$ である。よって分母が $b+d$ の分数で間にあるものは中間の分数だけである。$\square$

分母が 5 以下の分数を並べる

$0$ 以上 $1$ 以下で、分母が $5$ 以下の既約分数を小さい順に並べると
$$ \frac01,\ \frac15,\ \frac14,\ \frac13,\ \frac25,\ \frac12,\ \frac35,\ \frac23,\ \frac34,\ \frac45,\ \frac11 $$
である。となり合う 2 つ $\dfrac ab<\dfrac cd$ では、どれも $bc-ad=1$ である(たとえば $\dfrac14$ と $\dfrac13$ で $4\cdot1-1\cdot3=1$、$\dfrac25$ と $\dfrac12$ で $5\cdot1-2\cdot2=1$)。また $\dfrac13$ と $\dfrac12$ の間にある $\dfrac25$ は、2 つの中間の分数 $\dfrac{1+1}{3+2}$ である。
prop-pip-neighbors の (ii) から、$\dfrac13$ と $\dfrac25$ の間にある分数の分母は $8$ 以上で、分母 $8$ のものは中間の分数 $\dfrac38$ である。実際、分母が $6$、$7$ の分数で $\dfrac13=0.333\ldots$ と $\dfrac25=0.4$ の間にあるものはない($\dfrac26=0.333\ldots$、$\dfrac{3}{7}=0.428\ldots$ で、どちらも間の外)。

ex-pip-farey のように、分母が $n$ 以下で $0$ 以上 $1$ 以下の既約分数を小さい順に並べたものを Farey 数列 という。分母が $n$ 以下の Farey 数列から分母が $n+1$ 以下の Farey 数列を作るには、となり合う 2 つの中間の分数のうち分母が $n+1$ になるものを挟めばよい。これらのことは Wei26 にまとめられている。
同じ操作を、$\dfrac01$ と $\dfrac10$(「無限大」を表す記号とみる)から始めて、となり合う 2 つの間に中間の分数を挟むことをくり返すと、Stern–Brocot 木 とよばれる分数の並びができる(図 3)。$\dfrac01$ と $\dfrac10$ も $1\cdot1-0\cdot0=1$ を満たすので、prop-pip-neighbors の (i) の計算(展開するだけで、$b,d>0$ は使わない)により、途中に現れるとなり合う 2 つはいつも」。あわせて、前「となり合う 2 つの間に中間の分数を挟むことをくり返すと」→ 後「となり合う 2 つの間に、分子どうし・分母どうしを足した分数を挟むことをくり返すと(ここでは分母 $0$ の $\frac10$ にも同じ操作をする) $bc-ad=1$ を満たし、現れる分数はすべて既約である($bc-ad=1$ なら $a$ と $b$ の公約数は $1$ を割り切る)。さらに、すべての正の有理数がちょうど 1 回ずつ現れることが知られている(この記事では証明しない)。
0/1 と 1/0 から中間の分数を挟んでいくと、1/1、1/2 と 2/1、1/3・2/3・3/2・3/1 と段ごとに分数が増え、3/8 には 1/2、1/3、2/5 を経てたどり着く 0/1 と 1/0 から中間の分数を挟んでいくと、1/1、1/2 と 2/1、1/3・2/3・3/2・3/1 と段ごとに分数が増え、3/8 には 1/2、1/3、2/5 を経てたどり着く
図 3 で $\dfrac11$ から $\dfrac38$ にたどり着く道は、$\dfrac11$ から左へ $\dfrac12$、左へ $\dfrac13$、右へ $\dfrac25$、左へ $\dfrac38$ と進む(左は小さい側、右は大きい側)。左右の曲がり方の並びは、$\dfrac38$ の連分数と結びついている(この記事では証明しない)。連分数と近似分数は 連分数(高校数学) で扱う。

さらに先へ

  • 比例式 $\dfrac x2=\dfrac y3=\dfrac z4$ を満たす点 $(x,y,z)$ は、原点を通り方向 $(2,3,4)$ の直線 $(x,y,z)=k(2,3,4)$ の上の点である。「$k$ とおく」ことは、この直線をパラメータ $k$ で表すことにあたる。比 $a:b$ を「原点を通る直線」とみる見方は、大学で射影直線として整理される。
  • 中間の分数が加重平均であること(cor-pip-weighted)は、2 つの点を結ぶ線分の上の点が $(1-t)P+tQ$($0< t<1$)と書けることの特別な場合である。重心や内分点と同じ形で、平均の大小関係 で扱う平均とも比べられる。
  • 分母が正の数の和で書けるときの中間の分数は、3 つ以上でも同じで、$\dfrac{a_1+\cdots+a_n}{b_1+\cdots+b_n}$($b_i>0$)は $\dfrac{a_i}{b_i}$ の最小値と最大値の間にある。証明は cor-pip-weighted と同じで、重みを $\dfrac{b_i}{b_1+\cdots+b_n}$ とすればよい。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する