Weilの相互法則(Weil reciprocity)とは、代数閉体 $k$ 上の非特異な射影曲線の有理関数 $f,g$ の因子 $\operatorname{div}f$ と $\operatorname{div}g$ の台が交わらないとき、$f(\operatorname{div}g)=g(\operatorname{div}f)$ が成り立つという定理である。ここで因子 $D=\sum n_PP$ での値を $f(D)=\prod_Pf(P)^{n_P}$ と定める。射影直線では多項式の根の積の計算になり、一般の曲線では $g$ を射影直線への有限射とみて、$f$ のノルムを通して射影直線の場合に帰着させて証明できる。台が交わる場合も、各点の局所記号の積が $1$ になるという形に拡張される。
Weilの相互法則(Weil reciprocity)は、代数閉体上の非特異な射影曲線 $C$ の 2 つの有理関数 $f,g$ について、零点と極が重ならないなら
$$
f(\operatorname{div}g)=g(\operatorname{div}f)
$$
が成り立つことを主張する定理である。左辺は「$g$ の零点での $f$ の値の積を、$g$ の極での $f$ の値の積で割ったもの」(位数の重複を込める)、右辺はその役割を入れ替えたものである。
射影直線の上では両辺とも多項式の根の積として直接計算でき、等式は根と係数の関係のような初等的な事実になる(lem-wr-p1)。一般の曲線では、$g$ を射影直線への写像 $g\colon C\to\mathbb{P}^1$ とみて、$f$ の体のノルムを通して射影直線の場合に帰着させる。この記事ではこの帰着を、射の 1 つのファイバーの上の環の計算として完全に証明する。
相互法則は、零点と極が重なる場合にも、各点の「局所記号」の積が $1$ になるという形に拡張される(thm-wr-tame)。どちらの形も、曲線上の関数の値と因子を組にして扱う議論の基本的な道具であり、次数 $0$ の因子の組から対を作る構成(prop-wr-pairing)などに使われる。
この記事では $k$ を代数閉体とし、曲線とは $k$ 上の非特異な射影曲線(代数曲線で、非特異かつ射影的なもの)をいう。$C$ を曲線、$K:=k(C)$ をその関数体とする。$C$ の閉点 $P$ の局所環 $\mathcal{O}_P$ は離散付値環であり、その付値を $\operatorname{ord}_P\colon K^\times\to\mathbb{Z}$、極大イデアルを $\mathfrak{m}_P$ と書く。$k$ は代数閉なので剰余体 $\mathcal{O}_P/\mathfrak{m}_P$ は $k$ である。
$f\in K^\times$ の因子を $\operatorname{div}f:=\sum_P\operatorname{ord}_P(f)\,P$(有限和)とし、係数が $0$ でない点の集合を台 $\operatorname{supp}$ と書く。$\operatorname{ord}_P f\ge0$ のとき、$f$ の $\mathcal{O}_P/\mathfrak{m}_P=k$ での像を $f(P)$ と書く。$\operatorname{ord}_Pf=0$ なら $f(P)\in k^\times$ である。主因子の次数は $0$ である(Har77 II, Corollary 6.10, p. 138)。
$f\in K^\times$ と因子 $D=\sum_Pn_PP$ の台が $\operatorname{div}f$ の台と交わらないとき、
$$
f(D):=\prod_Pf(P)^{n_P}\in k^\times
$$
と定める。
定義から、台の条件のもとで $f(D+D')=f(D)f(D')$、$(ff')(D)=f(D)f'(D)$ であり、定数 $c\in k^\times$ については $c(D)=c^{\deg D}$ である。とくに次数 $0$ の因子での値は、関数を定数倍しても変わらない。
$C$ を代数閉体 $k$ 上の非特異な射影曲線、$f,g\in k(C)^\times$ を $\operatorname{div}f$ と $\operatorname{div}g$ の台が交わらない関数とする。このとき
$$
f(\operatorname{div}g)=g(\operatorname{div}f)
$$
が成り立つ。
証明は「主定理の証明」の節の prf-thm-wr-main で与える。使う道具は lem-wr-p1・lem-wr-fibre・lem-wr-norm である。
証明の方針は次のとおりである。$g$ が定数でなければ $g$ は有限射 $g\colon C\to\mathbb{P}^1$ を定め、$K$ は $k(t)$($t\mapsto g$)の有限次拡大になる。$N:=N_{K/k(t)}(f)$ とおくと、左辺は $N(0)/N(\infty)$、右辺は $\mathbb{P}^1$ の上の座標関数 $t$ についての $t(\operatorname{div}N)$ に等しい(lem-wr-norm)。こうして射影直線の場合に帰着する。
$\mathbb{P}^1=\mathbb{P}^1_k$ の関数体を $k(t)$ とし、点 $a\in k$ と $\infty$ を区別する。$\operatorname{ord}_a$ は $t-a$ の重複度、$\operatorname{ord}_\infty$ は $u:=1/t$ についての位数で、多項式 $p$ について $\operatorname{ord}_\infty p=-\deg p$ である。
$\varphi\in k(t)^\times$ が $\operatorname{ord}_0\varphi=\operatorname{ord}_\infty\varphi=0$ をみたすとする。このとき
$$
\frac{\varphi(0)}{\varphi(\infty)}=\prod_{a\in k^\times}a^{\operatorname{ord}_a\varphi}
$$
である。左辺は $\varphi(\operatorname{div}t)$、右辺は $t(\operatorname{div}\varphi)$ にあたる。
$\varphi$ を既約分解して $\varphi=c\prod_{a}(t-a)^{m_a}$($c\in k^\times$、$m_a\in\mathbb{Z}$、有限個を除いて $m_a=0$)と書く。$\operatorname{ord}_0\varphi=0$ なので $m_0=0$ であり、積は $a\in k^\times$ を動く。$\operatorname{ord}_\infty\varphi=-\sum_am_a=0$ である。$u=1/t$ で書くと $\varphi=c\prod_a(1-au)^{m_a}\,u^{-\sum_am_a}=c\prod_a(1-au)^{m_a}$ なので $\varphi(\infty)=c$ であり、$\varphi(0)=c\prod_a(-a)^{m_a}=c\,(-1)^{\sum_am_a}\prod_aa^{m_a}=c\prod_aa^{m_a}$ である。$m_a=\operatorname{ord}_a\varphi$ なので主張が従う。$\square$
$\sum_am_a=0$ が符号 $(-1)^{\sum m_a}$ を消している。この符号は、零点と極が重なる場合の補正(thm-wr-tame の符号)の原型である。
以下、$g\in K\setminus k$ とする。$g$ は射 $g\colon C\to\mathbb{P}^1$ を定め、これは全射な有限射で、$K$ は $t\mapsto g$ による $k(t)$ の有限次拡大になる(Har77 II, Proposition 6.8, p. 137 と Corollary 6.10 の証明, p. 138)。$n:=[K:k(t)]$ とおく。$\mathbb{P}^1$ の閉点 $Q$ の局所環を $\mathcal{O}_Q\subset k(t)$、その一意化元を $u_Q$($Q=q\in k$ なら $t-q$、$Q=\infty$ なら $1/t$)とし、$g(P)=Q$ となる $P$ について $e_P:=\operatorname{ord}_P(u_Q)$ とおく(ここで $u_Q$ は $K$ の元とみる)。
$Q$ を $\mathbb{P}^1$ の閉点とし、$B:=\bigcap_{g(P)=Q}\mathcal{O}_P\subset K$ とおく。
要点:$Q$ を含むアフィン開集合の逆像の座標環を $Q$ で局所化したものが $B$ である。
$Q$ を含むアフィン開集合 $V_Q=\operatorname{Spec}R$($R=k[t]$ または $k[1/t]$)をとる。$g$ は有限射なので $g^{-1}(V_Q)=\operatorname{Spec}A$ はアフィンで、$A$ は $R$ の $K$ における整閉包であり、有限 $R$ 加群である(Har77 II, Proposition 6.8 の証明、p. 137)。$S:=R\setminus\mathfrak{m}_Q$ とおき $B':=S^{-1}A$ とすると、$B'$ は有限 $\mathcal{O}_Q=S^{-1}R$ 加群で、整域だから捩れがない。$\mathcal{O}_Q$ は単項イデアル整域なので $B'$ は自由であり(単項イデアル整域上の有限生成加群の構造定理)、$R\setminus\{0\}$ で局所化すると $K$ になるので階数は $[K:k(t)]=n$ である。
$A$ は $1$ 次元なので、$S$ と交わらない $A$ の素イデアルは $0$ と、$\mathfrak{m}_Q$ の上にある極大イデアルである。後者は $g(P)=Q$ となる閉点 $P\in g^{-1}(V_Q)$ に対応し、そこでの局所化は $\mathcal{O}_P$ である。したがって $B'$ の極大イデアルは $\mathfrak{m}_P\cap B'$ で尽くされ、2 が $B'$ について成り立つ。整域はその極大イデアルでの局所化すべての共通部分に等しいので $B'=\bigcap_{g(P)=Q}\mathcal{O}_P=B$ であり、1・2 が従う。
3:$B$ は $1$ 次元の Noether 整域なので、$h\ne0$ について $B/hB$ は $0$ 次元の Noether 環、すなわち Artin環 である(Artin環 の定理「Noether性と次元による特徴づけ」)。Artin 環は極大イデアルでの局所化の直積に同型であり(同記事の定理「Artin環の構造定理」)、$\mathfrak{m}_P\cap B$ での $B/hB$ の局所化は $\mathcal{O}_P/h\mathcal{O}_P$ である($h$ が $\mathcal{O}_P$ の単元なら $0$)。$\square$
$f\in K^\times$ とし、$N:=N_{K/k(t)}(f)\in k(t)^\times$ とおく。$\mathbb{P}^1$ の閉点 $Q$ について次が成り立つ。
要点:ノルムは $B$ の上の $f$ 倍写像の行列式であり、その位数は余核の長さ、その値は $B/u_QB$ の上の行列式である。
$B$ を lem-wr-fibre の環とする。$B$ の $\mathcal{O}_Q$ 基底は $K$ の $k(t)$ 基底でもあるので、$f\in B$ なら $N$ は $f$ 倍写像 $\mu_f\colon B\to B$ のその基底での行列 $M\in\mathrm{M}_n(\mathcal{O}_Q)$ の行列式である(体のノルム の定義)。
1:まず $f\in B$ とする。$\mathcal{O}_Q$ は単項イデアル整域なので、Smith標準形 の定理「Smith標準形の存在」により、$M$ に左右から $\mathrm{GL}_n(\mathcal{O}_Q)$ の元を掛けて $\operatorname{diag}(u_Q^{c_1},\dots,u_Q^{c_n})$ にできる($\mathcal{O}_Q$ の $0$ でない元は単元と $u_Q$ の冪の積なので、対角成分の単元は基底の取り替えで消せる)。これは $\det M$ を単元倍しか変えない。$\det M\ne0$ なので $c_i\ge0$ は有限で、$\operatorname{ord}_QN=\sum_ic_i$ は $B/fB\cong\bigoplus_i\mathcal{O}_Q/u_Q^{c_i}$ の $\mathcal{O}_Q$ 加群としての長さに等しい。一方 lem-wr-fibre の 3 により $B/fB\cong\prod_P\mathcal{O}_P/f\mathcal{O}_P$ であり、$\mathcal{O}_P/f\mathcal{O}_P=\mathcal{O}_P/\mathfrak{m}_P^{\operatorname{ord}_Pf}$ は剰余体 $k$ を組成因子として $\operatorname{ord}_Pf$ 個もつ。$k$ は $\mathcal{O}_Q$ 加群としても単純なので、長さは $\sum_P\operatorname{ord}_Pf$ である。一般の $f$ は $f=b/s$($b\in B$、$0\ne s\in\mathcal{O}_Q$)と書け、両辺とも乗法的だから、$f=b$ と $f=s$ の場合に帰着する。
2:仮定は $f\in B$ を意味する。$M$ を $\mathfrak{m}_Q$ を法として還元した行列は、$\mu_f$ が $k$ ベクトル空間 $B/u_QB$ に引き起こす写像の行列なので、$N(Q)=\det_k(\mu_f\mid B/u_QB)$ である。lem-wr-fibre の 3 により $B/u_QB\cong\prod_P\mathcal{O}_P/\mathfrak{m}_P^{e_P}$ である。$\mathcal{O}_P/\mathfrak{m}_P^{e}$ の部分空間の列 $\mathfrak{m}_P^j/\mathfrak{m}_P^{e}$($0\le j\le e$)の各商 $\mathfrak{m}_P^j/\mathfrak{m}_P^{j+1}$ は $1$ 次元で、$f-f(P)\in\mathfrak{m}_P$ だから $f$ 倍はそこに $f(P)$ 倍として働く。よって行列は三角化され、行列式は $f(P)^{e}$ である。積をとって主張を得る。$\square$
$e_P$ を係数にもつ因子 $\sum_{g(P)=Q}e_PP$ は点 $Q$ の引き戻し $g^*Q$ である(Har77 II, p. 137)。$g(P)=0$ なら $\operatorname{ord}_Pg=e_P$、$g(P)=\infty$ なら $\operatorname{ord}_Pg=-e_P$、それ以外では $g(P)\in k^\times$ なので $\operatorname{ord}_Pg=0$ である。したがって
$$
\operatorname{div}g=g^*[0]-g^*[\infty]
$$
であり、lem-wr-norm の 1 は「$\operatorname{div}N$ は $\operatorname{div}f$ の点を $g$ で送った像」であることを述べている。
$g$ が定数 $c$ なら $\operatorname{div}g=0$ で左辺は $1$、右辺は $c^{\deg\operatorname{div}f}=c^0=1$ である。以下 $g$ は定数でないとし、$N:=N_{K/k(t)}(f)$ とおく。
台が交わらないので、$\operatorname{div}g$ の台の点、すなわち $g(P)\in\{0,\infty\}$ となる点 $P$ では $\operatorname{ord}_Pf=0$ である。lem-wr-norm の 1 から $\operatorname{ord}_0N=\operatorname{ord}_\infty N=0$、2 と $\operatorname{div}g=g^*[0]-g^*[\infty]$ から
$$
f(\operatorname{div}g)=\frac{\prod_{g(P)=0}f(P)^{e_P}}{\prod_{g(P)=\infty}f(P)^{e_P}}=\frac{N(0)}{N(\infty)}
$$
である。他方、$\operatorname{div}f$ の台の点 $P$ では $g(P)=a\in k^\times$ であり、関数 $g$ の $P$ での値はこの $a$ である。点を $g$ の像で分けて lem-wr-norm の 1 を使うと
$$
g(\operatorname{div}f)=\prod_{a\in k^\times}a^{\sum_{g(P)=a}\operatorname{ord}_Pf}=\prod_{a\in k^\times}a^{\operatorname{ord}_aN}
$$
となる。lem-wr-p1 を $\varphi=N$ に使えば両辺は等しい。$\square$
$k(t)\subset K$ が非分離拡大でも、ノルムを行列式で定めているので議論は変わらない。
$\operatorname{div}f$ と $\operatorname{div}g$ の台が交わると $f(\operatorname{div}g)$ は定義されない。そのときは各点の寄与を次のように補正する。閉点 $P$ について、$v_P:=\operatorname{ord}_P$ とおくと関数 $f^{v_P(g)}g^{-v_P(f)}$ の $P$ での位数は $0$ なので、
$$
(f,g)_P:=(-1)^{v_P(f)v_P(g)}\bigl(f^{v_P(g)}g^{-v_P(f)}\bigr)(P)\in k^\times
$$
が定まる。これを $P$ での局所記号(tame symbol)という。$P$ が $\operatorname{div}f\cup\operatorname{div}g$ の台の外なら $(f,g)_P=1$ である。
$C$ を代数閉体 $k$ 上の非特異な射影曲線とする。任意の $f,g\in k(C)^\times$ について
$$
\prod_{P}(f,g)_P=1
$$
が成り立つ(積は有限個の点を除いて $1$)。
GS06 Proposition 7.4.4(p. 205)は、任意の体の上の滑らかな射影曲線について、Milnor の $K$ 群の言葉でこの形の相互法則を述べ証明している。$K_2$ の場合の局所記号の具体形は Example 7.1.5(p. 187)、台が交わらない場合に thm-wr-main に帰着することは Remark 7.4.5(p. 206)にある。代数閉でない体の上では、各点の寄与に剰余体から $k$ へのノルムを付ける。この記事では thm-wr-tame を証明しない。
台が交わらない場合は、$v_P(g)\ne0$ の点で $(f,g)_P=f(P)^{v_P(g)}$、$v_P(f)\ne0$ の点で $(f,g)_P=g(P)^{-v_P(f)}$ なので、積は $f(\operatorname{div}g)/g(\operatorname{div}f)$ であり、thm-wr-main と一致する。
$k$ の標数を $2,3$ 以外とし、$\mathbb{P}^1$ の上で $f=(t-2)/(t-3)$、$g=(t+1)/(t-1)$ とする。$\operatorname{div}f=[2]-[3]$、$\operatorname{div}g=[-1]-[1]$($\infty$ ではどちらも位数 $0$)で、4 点は相異なる。
$$
f(\operatorname{div}g)=\frac{f(-1)}{f(1)}=\frac{3/4}{1/2}=\frac32,\qquad g(\operatorname{div}f)=\frac{g(2)}{g(3)}=\frac{3}{2}
$$
であり、両辺は一致する。
$k$ の標数を $2,3$ 以外とし、$E\colon y^2=x^3-x$ を射影閉包で考える(無限遠点は $O$ の 1 点)。$f=y$、$g=(x-2)/(x-3)$ とする。
$x\colon E\to\mathbb{P}^1$ は次数 $2$、$y\colon E\to\mathbb{P}^1$ は次数 $3$ で、どちらも極は $O$ だけである。$y=0$ となる 3 点 $T_e=(e,0)$($e=0,1,-1$)は相異なるので、$\operatorname{div}y=T_0+T_1+T_{-1}-3O$ である。$x=2$ となる点は $(2,\pm b)$($b^2=6$)の相異なる 2 点なので $\operatorname{div}(x-2)=(2,b)+(2,-b)-2O$ であり、同様に $\operatorname{div}(x-3)=(3,d)+(3,-d)-2O$($d^2=24$)である。よって $\operatorname{div}g=(2,b)+(2,-b)-(3,d)-(3,-d)$ で、$\operatorname{div}f$ と台が交わらない。
$g=1+1/(x-3)$ で $1/(x-3)$ は $O$ で消えるので $g(O)=1$ である。
$$
f(\operatorname{div}g)=\frac{b\cdot(-b)}{d\cdot(-d)}=\frac{6}{24}=\frac14,\qquad g(\operatorname{div}f)=\frac{g(T_0)g(T_1)g(T_{-1})}{g(O)^3}=\frac{(-2)(-1)(-3)}{(-3)(-2)(-4)}=\frac14
$$
であり、両辺は一致する。
各点の位数は、次数 $m$ の射の 1 点の引き戻しの次数が $m$ であること(Har77 II, Proposition 6.9, p. 138)と、零点の個数から決めた。
$k$ の標数を $2$ 以外とし、$\mathbb{P}^1$ の上で $f=t$、$g=t-1$ とする。$\operatorname{div}f=[0]-[\infty]$、$\operatorname{div}g=[1]-[\infty]$ は $\infty$ を共有する。局所記号は
$$
(f,g)_0=g(0)^{-1}=-1,\qquad (f,g)_1=f(1)=1,\qquad (f,g)_\infty=(-1)^{(-1)(-1)}\Bigl(\frac{t-1}{t}\Bigr)(\infty)=-1
$$
で、積は $1$ である(thm-wr-tame)。共通の点 $\infty$ の符号 $(-1)^{v(f)v(g)}$ がなければ積は $-1$ になる。
$k=\mathbb{R}$、$C=\mathbb{P}^1_{\mathbb{R}}$ とし、$f=(t^2+1)/(t-2)^2$、$g=t/(t-1)$ とする。$\operatorname{div}f=Q-2[2]$($Q$ は $t^2+1$ の定める剰余体 $\mathbb{C}$ の閉点)、$\operatorname{div}g=[0]-[1]$ で、台は交わらない。$f(\operatorname{div}g)=f(0)/f(1)=(1/4)/2=1/8$ である。$g$ の $Q$ での値は $\mathbb{C}$ の元 $i/(i-1)=(1-i)/2$ で、そのノルム $|(1-i)/2|^2=1/2$ を使うと $N(g(Q))\,g(2)^{-2}=(1/2)(1/4)=1/8$ となり、rem-wr-tame のノルムを付けた形が成り立つ。ノルムを付けずに $g(Q)=(1-i)/2$ をそのまま掛けると $(1-i)/8$ となり、$1/8$ に一致しない。
thm-wr-main の仮定を 1 つずつ外すと結論が崩れる。各行は外す条件を 1 つに限っている(標数は $2$ 以外とする)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 射影的 → アフィン直線 $\mathbb{A}^1$ | $f=t$、$g=t-1$($\operatorname{div}f=[0]$、$\operatorname{div}g=[1]$) | $f(\operatorname{div}g)=1$、$g(\operatorname{div}f)=-1$ |
| 台が交わらない → $\infty$ を共有 | $\mathbb{P}^1$ の $f=t$、$g=t-1$ | $f(\operatorname{div}g)$ が定義されず、共通点を除いた積は $1$ と $-1$ |
| 代数閉体 → $\mathbb{R}$(剰余体 $\mathbb{C}$ の値にノルムを付けない) | ex-wr-real の $f,g$ | $(1-i)/8\ne1/8$ |
1 行目:$\mathbb{A}^1$ は非特異だが射影的でない。$f=t$ の零点は $0$ だけ、$g=t-1$ の零点は $1$ だけで、$\mathbb{A}^1$ の中に極はない。$f(1)=1$、$g(0)=-1$ である。$\mathbb{P}^1$ では $\infty$ が両方の極として加わり、2 行目の状況になる。2 行目:$f$ は $\infty$ に極をもち $\infty\in\operatorname{supp}\operatorname{div}g$ なので $f(\infty)$ は定義されない。$\infty$ を除くと $f(1)=1$ と $g(0)=-1$ が残る。補正の仕方は ex-wr-tame にある。3 行目は ex-wr-real の計算である。
$m\ge1$ とし、$D,E$ を台が交わらない次数 $0$ の因子で、$mD=\operatorname{div}f_D$、$mE=\operatorname{div}f_E$ となる $f_D,f_E\in K^\times$ があるとする。このとき
$$
\langle D,E\rangle:=\frac{f_D(E)}{f_E(D)}
$$
は $f_D,f_E$ の取り方によらない。さらに $h\in K^\times$ について $E':=E+\operatorname{div}h$ の台も $D$ の台と交わらないなら、$\langle D,E'\rangle=\langle D,E\rangle$ である。
$f_D$ を $cf_D$($c\in k^\times$)に替えても、$\deg E=0$ なので $(cf_D)(E)=f_D(E)$ である。$f_E$ も同じである。$E'$ については $f_{E'}:=f_Eh^m$ がとれる。$D$ の台の点 $P$ では $E$ の係数が $0$ なので $E'$ の係数は $\operatorname{ord}_Ph$ であり、$E'$ の台は $D$ の台と交わらないから $\operatorname{ord}_Ph=0$ である。よって $\operatorname{div}h$ の台も $D$ の台と交わらず、
$$
\langle D,E'\rangle=\frac{f_D(E)\,f_D(\operatorname{div}h)}{f_E(D)\,h(D)^m}
$$
となる。$\operatorname{div}f_D=mD$ と $\operatorname{div}h$ の台は交わらないので、thm-wr-main により $f_D(\operatorname{div}h)=h(\operatorname{div}f_D)=h(D)^m$ であり、$\langle D,E'\rangle=\langle D,E\rangle$ を得る。$\square$
$\langle D,E\rangle^m=f_D(mE)/f_E(mD)=f_D(\operatorname{div}f_E)/f_E(\operatorname{div}f_D)=1$ も thm-wr-main から従うので、値は $1$ の $m$ 乗根である。こうして、$m$ 倍が主因子になる次数 $0$ の因子の組に、関数の取り方や $E$ の線形同値な取り替えによらない $1$ の $m$ 乗根が対応する。楕円曲線の $m$ 等分点に $1$ の $m$ 乗根の値をもつ対を与える Weil対 と比べられる構成である。
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