Sobolev空間の連鎖律

同義語:chain rule in Sobolev spacesSobolev関数の連鎖律chain rule for Sobolev functions

概要

Sobolev空間の連鎖律(chain rule in Sobolev spaces)とは、導関数が有界な $C^1$ 級関数 $G$ と開集合上の Sobolev 関数 $u$ について、合成 $G\circ u$ が弱勾配 $G'(u)\nabla u$ をもつという定理であり、$G(0)=0$ なら $G\circ u$ は $u$ と同じ $W^{1,p}$ に属する。1 次元では導関数の有界性は要らないが、3 次元以上では要る。正部分 $u^+$ の弱勾配は $\mathbf 1_{\{u>0\}}\nabla u$ であり、ここから等位集合の上でほとんど至る所 $\nabla u=0$ が従う。さらに、折れ点が有限個の Lipschitz 関数との合成と、$1\le p<\infty$ での合成写像の連続性が得られる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 弱微分, Sobolev空間の基本事項, 軟化子

滑らかな関数 $u$ と $C^1$ 級の関数 $G$ の合成では、偏導関数は $\partial_i(G\circ u)=G'(u)\,\partial_iu$ である(連鎖律)。Sobolev 空間の関数は各点で微分できるとは限らないが、同じ公式が弱微分について成り立つ。これを Sobolev空間の連鎖律(chain rule in Sobolev spaces)という。公式は、正部分 $u^+=\max(u,0)$ や絶対値 $|u|$ のように折れ点のある関数との合成にも広がる。そのとき鍵になるのが「$u$ が一定値をとる集合の上では、ほとんど至る所 $\nabla u=0$」という事実である。正部分や切り落としは、楕円型方程式の最大値原理などで試験関数を作るときの基本の道具である。
この記事で示すことは次のとおりである。

  1. $G'$ が有界な $C^1$ 級関数 $G$ について、$G\circ u$ の弱勾配は $G'(u)\nabla u$ である(thm-scr-c1)。
  2. 1 次元では $G'$ の有界性は要らない(prop-scr-1d)。3 次元以上では要る(ex-scr-square)。
  3. $u^+$・$u^-$・$|u|$ の弱勾配の公式と、等位集合の上で勾配が $0$ になること(thm-scr-positive-part、cor-scr-level-set)。
  4. 有限個の折れ点をもつ Lipschitz 関数との合成(thm-scr-piecewise)と、$1\le p<\infty$ での合成写像 $u\mapsto F\circ u$ の連続性(thm-scr-continuity)。

記号

$\Omega\subset\mathbb R^n$ を開集合とし、関数はすべて実数値とする。$1\le p\le\infty$ について、Sobolev 空間 $W^{1,p}(\Omega)$ は Sobolev空間の基本事項 の定義「Sobolev空間」に従う。弱微分は 弱微分 の定義「弱微分」に従い、$\nabla u=(\partial_1u,\dots,\partial_nu)$ を弱勾配とする。
局所的な議論のために、$u\in L^1_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ で弱微分 $\partial_1u,\dots,\partial_nu$ が存在してすべて $L^1_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ に属するものの全体を $W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ と書く。$\Omega$ のコンパクト部分集合の上で Hölderの不等式 を使えば、すべての $1\le p\le\infty$ について $W^{1,p}(\Omega)\subset W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ である。集合 $A$ の指示関数を $\mathbf 1_A$ と書き、$\{u>0\}:=\{x\in\Omega\mid u(x)>0\}$ などと略記する。これらの集合は $u$ の代表の取り方によって測度 $0$ の差しか変わらない。

$C^1$ 級の関数との合成

Sobolev空間の連鎖律

$G\in C^1(\mathbb R)$ が $M:=\sup_{s\in\mathbb R}|G'(s)|<\infty$ をみたすとする。

  1. $u\in W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ なら $G\circ u\in W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ であり、$i=1,\dots,n$ についてほとんど至る所
    $$ \partial_i(G\circ u)=G'(u)\,\partial_iu $$
    が成り立つ。
  2. さらに $G(0)=0$ とし、$1\le p\le\infty$、$u\in W^{1,p}(\Omega)$ とする。このとき $G\circ u\in W^{1,p}(\Omega)$ であり、$\|G\circ u\|_{L^p}\le M\|u\|_{L^p}$、$\|\partial_i(G\circ u)\|_{L^p}\le M\|\partial_iu\|_{L^p}$ である。

1 の証明. 平均値の定理から $|G(s)|\le|G(0)|+M|s|$ なので $G\circ u\in L^1_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ であり、$|G'(u)\partial_iu|\le M|\partial_iu|$ なので $G'(u)\partial_iu\in L^1_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ である。残るのは、すべての $\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ について
$$ \int_\Omega G(u)\,\partial_i\varphi\,dx=-\int_\Omega G'(u)\,\partial_iu\,\varphi\,dx $$
を示すことである。
$K:=\operatorname{supp}\varphi$ とし、$K\subset\Omega'$ かつ $\overline{\Omega'}$ が $\Omega$ のコンパクト部分集合となる開集合 $\Omega'$ をとる。$u$ を $\Omega'$ に制限したものは $W^{1,1}(\Omega')$ に属する。軟化子 の記号で、$u$ を $\Omega'$ の上で軟化した関数を $u_\varepsilon$ と書く。$\varepsilon$ が小さければ $K\subset\Omega'_\varepsilon$ であり、$u_\varepsilon$ は $\Omega'_\varepsilon$ の上で $C^\infty$ 級、$\partial_iu_\varepsilon=(\partial_iu)_\varepsilon$ である(軟化子 の命題「軟化と弱微分の交換」)。$G\circ u_\varepsilon$ は $C^1$ 級で古典的な連鎖律が使えるので、弱微分 の命題「弱微分の基本性質」の 2 から
$$ \int_\Omega G(u_\varepsilon)\,\partial_i\varphi\,dx=-\int_\Omega G'(u_\varepsilon)\,\partial_iu_\varepsilon\,\varphi\,dx $$
である。
$\varepsilon\to0$ の極限をとる。軟化子 の定理「Sobolev 関数の軟化による近似」の 2($k=1$、$p=1$)により、$u_\varepsilon\to u$、$\partial_iu_\varepsilon\to\partial_iu$ が $L^1(K)$ で成り立つ。$L^1$ で収束する列はほとんど至る所収束する部分列をもつので(Bre11 Theorem 4.9、p. 94)、列 $\varepsilon_m\to0$ を $K$ の上でほとんど至る所 $u_{\varepsilon_m}\to u$ となるようにとれる。

  • 左辺:$|G(u_\varepsilon)-G(u)|\le M|u_\varepsilon-u|$ なので、$\int_\Omega G(u_\varepsilon)\partial_i\varphi\to\int_\Omega G(u)\partial_i\varphi$ である。
  • 右辺:被積分関数の差を
    $$ G'(u_\varepsilon)\partial_iu_\varepsilon-G'(u)\partial_iu=G'(u_\varepsilon)(\partial_iu_\varepsilon-\partial_iu)+\bigl(G'(u_\varepsilon)-G'(u)\bigr)\partial_iu $$
    と分ける。第 1 項の $L^1(K)$ ノルムは $M\|\partial_iu_\varepsilon-\partial_iu\|_{L^1(K)}\to0$ である。第 2 項は、$\varepsilon=\varepsilon_m$ に沿って $G'$ の連続性からほとんど至る所 $0$ に収束し、$2M|\partial_iu|\in L^1(K)$ で押さえられる。よって 優収束定理 により第 2 項の積分も $0$ に収束する。
    $\varepsilon=\varepsilon_m$ として両辺の極限をとれば、示すべき等式を得る。

2 の証明. $G(0)=0$ と平均値の定理から $|G(s)|\le M|s|$ なので、$|G\circ u|\le M|u|$ である。1 により $\partial_i(G\circ u)=G'(u)\partial_iu$ で、$|G'(u)\partial_iu|\le M|\partial_iu|$ である。両者を $L^p$ ノルムで比べればよい。$\square$

2 の仮定 $G(0)=0$ は、$G\circ u$ が $L^p$ に入るためだけに使った。$\Omega$ の測度が有限なら、$|G(s)|\le|G(0)|+M|s|$ から $G(0)=0$ なしで $G\circ u\in W^{1,p}(\Omega)$ である。$\Omega$ の測度が無限で $p<\infty$ なら、定数関数 $G\equiv1$ が示すように外せない。
$\Omega$ が任意の開集合、$p$ が $1\le p\le\infty$ のどれでもよいことに注意する。証明は弱微分の等式を $\varphi$ の台の近くだけで確かめるので、境界の形にも $p$ にもよらない。

1 次元では導関数の有界性は要らない

$u$ が有界なら、$G$ を $u$ の値域の外で取り替えて $G'$ を有界にできる。1 次元では Sobolev 関数は有界なので、$G$ は任意の $C^1$ 級関数でよい。

1次元での連鎖律

$I\subset\mathbb R$ を開区間、$1\le p\le\infty$、$u\in W^{1,p}(I)$、$G\in C^1(\mathbb R)$ とする。$I$ が有界でなく $p<\infty$ のときは、さらに $G(0)=0$ を仮定する。このとき $G\circ u\in W^{1,p}(I)$ であり、$(G\circ u)'=G'(u)\,u'$ である(Bre11 Corollary 8.11、pp. 215–216)。

1次元Sobolev空間 の定理「一様ノルムの評価」により、ある $R>0$ について $|u|\le R$ がほとんど至る所成り立つ。$G$ を $[-R,R]$ の外で 1 次関数に取り替えた
$$ \tilde G(s):=\begin{cases}G(R)+G'(R)(s-R)&(s>R),\\ G(s)&(|s|\le R),\\ G(-R)+G'(-R)(s+R)&(s<-R)\end{cases} $$
は $C^1$ 級で、$\tilde G'$ は有界である。ほとんど至る所 $\tilde G(u)=G(u)$、$\tilde G'(u)=G'(u)$ なので、thm-scr-c1 の 1 から $G\circ u\in W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(I)$、$(G\circ u)'=G'(u)u'$ である。$L:=\max_{[-R,R]}|G'|$ とおくと $|G'(u)u'|\le L|u'|$ である。また $I$ が有界なら $G\circ u$ は有界で $L^p(I)$ に入り、$p=\infty$ なら有界であることから $L^\infty(I)$ に入る。$I$ が有界でなく $p<\infty$ なら、$G(0)=0$ から $|G(s)|\le L|s|$($|s|\le R$)なので $|G\circ u|\le L|u|$ である。$\square$

同じ議論により、$n\ge2$ でも $u\in W^{1,p}(\Omega)\cap L^\infty(\Omega)$ なら、$G'$ が全体で有界でなくても($\Omega$ の測度が無限で $p<\infty$ のときは $G(0)=0$ を仮定して)$G\circ u\in W^{1,p}(\Omega)$ である。有界でない Sobolev 関数では、次のように結論が崩れる。

3 次元以上では導関数の有界性が要る

$n\ge3$、$B:=\{x\in\mathbb R^n\mid|x|<1\}$、$p=2$、$G(s):=s^2$、$a:=3(2-n)/8$ とし、$u(x):=|x|^{a}$ とおく($n=3$ では $u=|x|^{-3/8}$)。このとき $u\in W^{1,2}(B)$ だが、$G\circ u=|x|^{2a}$ は $W^{1,2}(B)$ に属さない。

弱微分 の例「冪関数 $|x|^a$」を $p=2$ で使う。$b\ne0$、$b>-n$ のとき、$|x|^b$ が $B$ 上で弱勾配をもつための必要十分条件は $b>1-n$ で、そのとき $|\nabla|x|^b|\in L^2(B)$ であるための必要十分条件は $b>1-n/2$ である。また $|x|^b\in L^2(B)$ は $2b>-n$ と同値である。$n\ge3$ なので $1-n/2=4(2-n)/8< a$ であり、$2a>-n$ もみたすから $u\in W^{1,2}(B)$ である。$b=2a=3(2-n)/4$ は $b>1-n$ をみたすので $|x|^{2a}$ は弱勾配をもつが、$b\le2(2-n)/4=1-n/2$ なので、その弱勾配は $L^2(B)$ に入らない。$\square$

この例は thm-scr-c1 の 2 から「$G'$ の有界性」だけを外したものである($G\in C^1$、$G(0)=0$ は保たれている)。

正部分・絶対値と等位集合

$s^+:=\max(s,0)$、$s^-:=\max(-s,0)$ とし、$\operatorname{sgn}(s)$ は $s>0$ で $1$、$s<0$ で $-1$、$s=0$ で $0$ とする。$s\mapsto s^+$ は原点で微分できないので thm-scr-c1 はそのままでは使えない。$C^1$ 級の関数で近づけて極限をとる。

正部分と絶対値の弱勾配

$u\in W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ とする。このとき $u^+$、$u^-$、$|u|$ は $W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ に属し、ほとんど至る所
$$ \nabla u^+=\mathbf 1_{\{u>0\}}\nabla u,\qquad \nabla u^-=-\mathbf 1_{\{u<0\}}\nabla u,\qquad \nabla|u|=\operatorname{sgn}(u)\,\nabla u $$
が成り立つ。とくに $1\le p\le\infty$、$u\in W^{1,p}(\Omega)$ なら、これら 3 つはすべて $W^{1,p}(\Omega)$ に属する。

$\varepsilon>0$ について
$$ G_\varepsilon(s):=\begin{cases}\sqrt{s^2+\varepsilon^2}-\varepsilon&(s>0),\\ 0&(s\le0)\end{cases} $$
とおく。$s>0$ で $G_\varepsilon'(s)=s/\sqrt{s^2+\varepsilon^2}$ であり、これは $s\to+0$ で $0$ に近づくので、$G_\varepsilon\in C^1(\mathbb R)$ で $0\le G_\varepsilon'\le1$ である。thm-scr-c1 の 1 により、すべての $\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ について
$$ \int_\Omega G_\varepsilon(u)\,\partial_i\varphi\,dx=-\int_\Omega G_\varepsilon'(u)\,\partial_iu\,\varphi\,dx $$
である。$\varepsilon\to0$ のとき、すべての $s$ について $G_\varepsilon(s)\to s^+$、$G_\varepsilon'(s)\to\mathbf 1_{(0,\infty)}(s)$ である($s\le0$ では両方とも $0$)。また $0\le G_\varepsilon(s)\le s^+\le|s|$、$|G_\varepsilon'(s)|\le1$ である。$\varphi$ の台はコンパクトで $u,\partial_iu$ はその上で可積分なので、優収束定理 により両辺の極限をとって
$$ \int_\Omega u^+\,\partial_i\varphi\,dx=-\int_\Omega\mathbf 1_{\{u>0\}}\,\partial_iu\,\varphi\,dx $$
を得る。よって $\partial_iu^+=\mathbf 1_{\{u>0\}}\partial_iu$ である。
$u^-=(-u)^+$ なので、いま示したことを $-u$ に当てて $\partial_iu^-=\mathbf 1_{\{-u>0\}}\partial_i(-u)=-\mathbf 1_{\{u<0\}}\partial_iu$ を得る。$|u|=u^++u^-$ なので $\partial_i|u|=(\mathbf 1_{\{u>0\}}-\mathbf 1_{\{u<0\}})\partial_iu=\operatorname{sgn}(u)\partial_iu$ である。最後の主張は $|u^\pm|\le|u|$、$|\nabla u^\pm|\le|\nabla u|$ から従う。$\square$

等位集合の上で勾配は 0

$u\in W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$、$c\in\mathbb R$ とする。このとき集合 $\{u=c\}$ の上でほとんど至る所 $\nabla u=0$ である。

定数関数の弱勾配は $0$ なので、$v:=u-c$ は $W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ に属し $\nabla v=\nabla u$ である。$v=v^+-v^-$ に thm-scr-positive-part を当てると、ほとんど至る所
$$ \nabla v=\mathbf 1_{\{v>0\}}\nabla v+\mathbf 1_{\{v<0\}}\nabla v $$
であり、$\mathbf 1_{\{v=0\}}\nabla v=0$ を得る。$\{v=0\}=\{u=c\}$ である。$\square$

古典的な $C^1$ 級関数でも、等位集合の内点では勾配は $0$ である。この系の要点は、等位集合が内点をもたなくても、測度が正なら同じことが「ほとんど至る所」の意味で成り立つことにある。たとえば $C\subset[0,1]$ を測度が正で内点をもたない閉集合とする(Cantor 集合と同じ作り方で、取り除く区間を短くすれば得られる)。$u(x):=\operatorname{dist}(x,C)$ は $(0,1)$ 上の Lipschitz 関数なので $W^{1,\infty}(0,1)$ に属し(1次元Sobolev空間 の系「Lipschitz 連続な関数」)、系により $\{u=0\}=C$ の上でほとんど至る所 $u'=0$ である。

折れ点のある関数との合成

$u^+$ や切り落とし $\max(-k,\min(u,k))$ は、有限個の点を除いて $C^1$ 級の Lipschitz 関数との合成である。cor-scr-level-set を使うと、こうした合成が一度に扱える。

折れ点が有限個の Lipschitz 関数との合成

$S\subset\mathbb R$ を有限集合、$F\in C(\mathbb R)\cap C^1(\mathbb R\setminus S)$ とし、$M:=\sup_{s\notin S}|F'(s)|<\infty$ とする。$s\in S$ での $F'(s)$ の値は任意に定めておく。

  1. $u\in W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ なら $F\circ u\in W^{1,1}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ であり、ほとんど至る所 $\nabla(F\circ u)=F'(u)\nabla u$ が成り立つ。右辺は $F'$ の $S$ の上の値の取り方によらない。
  2. さらに $F(0)=0$ とし、$1\le p\le\infty$、$u\in W^{1,p}(\Omega)$ なら、$F\circ u\in W^{1,p}(\Omega)$ である。

$F$ は $M$-Lipschitz である。 区間 $[a,b]$ の内部が $S$ と交わらなければ、$F$ は $[a,b]$ で連続、$(a,b)$ で微分可能なので、平均値の定理から $|F(b)-F(a)|\le M(b-a)$ である。一般の $s< t$ では、$[s,t]$ を $S$ の点で有限個の小区間に分けて足せばよい。同じ分割で部分積分すると、境界の項は $F$ の連続性により打ち消し合うので、$F'$($S$ の上の値は任意)は $F$ の $\mathbb R$ 上の弱微分である。
$C^\infty$ 級の関数で近づける。 1 変数の軟化子 $\rho$ を使い $F_m:=\rho_{1/m}*F$ とおく。$F_m\in C^\infty(\mathbb R)$ であり、軟化子 の命題「軟化と弱微分の交換」により $F_m'=\rho_{1/m}*F'$ なので $|F_m'|\le M$ である。また $|F_m(s)-F(s)|\le\int\rho_{1/m}(t)|F(s-t)-F(s)|\,dt\le M/m$ である。$s\notin S$ なら $F'$ は $s$ の近傍で連続なので、$F_m'(s)\to F'(s)$ である。
極限をとる. thm-scr-c1 の 1 を $F_m$ に当てると、すべての $\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ について
$$ \int_\Omega F_m(u)\,\partial_i\varphi\,dx=-\int_\Omega F_m'(u)\,\partial_iu\,\varphi\,dx $$
である($F_m(0)=0$ は要らない)。左辺は $F_m(u)\to F(u)$ が一様なので $\int_\Omega F(u)\partial_i\varphi$ に収束する。右辺の被積分関数は、$\{u\notin S\}$ の上では $F'(u)\partial_iu\varphi$ に各点で収束する。$\{u\in S\}$ は有限個の等位集合の和なので、cor-scr-level-set によりその上でほとんど至る所 $\partial_iu=0$ であり、被積分関数も $F'(u)\partial_iu\varphi$ も $0$ である。$M|\partial_iu||\varphi|$ で押さえて 優収束定理 を使えば、1 を得る。
2 は $|F(s)|\le M|s|$ と $|F'(u)\partial_iu|\le M|\partial_iu|$ から従う。$\square$

切り落とし

$k>0$ について $T_k(s):=\max(-k,\min(s,k))$ とおく。$T_k$ は $S=\{-k,k\}$ の外で $C^1$ 級、$|T_k'|\le1$、$T_k(0)=0$ なので、$u\in W^{1,p}(\Omega)$ なら $T_k\circ u\in W^{1,p}(\Omega)\cap L^\infty(\Omega)$ で、$\nabla(T_k\circ u)=\mathbf 1_{\{|u|< k\}}\nabla u$ である。有界な関数に帰着させてから $k\to\infty$ とする議論で使われる。$u\mapsto(u-K)^+$($K$ は定数)も同じ形である。最大値原理(楕円型偏微分方程式) の定理「弱解の最大値原理」の証明は、$u\le K$ で $0$ になる $C^1$ 級の関数 $G$ による $G(u-K)$ を試験関数に使う。

合成写像の連続性

合成は $W^{1,p}$ のノルムについて連続である。$\nabla(F\circ u)=F'(u)\nabla u$ の $F'(u)$ は $u$ について連続とは限らないので、自明ではない。

合成写像の連続性

$1\le p<\infty$ とし、$F$ は thm-scr-piecewise の仮定と $F(0)=0$ をみたすとする。$W^{1,p}(\Omega)$ で $u_k\to u$ なら、$W^{1,p}(\Omega)$ で $F\circ u_k\to F\circ u$ である。

$\|F(u_k)-F(u)\|_{L^p}\le M\|u_k-u\|_{L^p}\to0$ である。勾配については、任意の部分列がさらに収束する部分列をもつことを示せば十分である。Bre11 Theorem 4.9(p. 94)により、部分列をとって $u_k\to u$ がほとんど至る所成り立つとしてよい。$i$ を固定し、$S$ の上の $F'$ の値を $|F'|\le M$ となるように(たとえば $0$ に)とって(thm-scr-piecewise の 1 により公式は値の取り方によらない)、thm-scr-piecewise の公式から
$$ \partial_i(F\circ u_k)-\partial_i(F\circ u)=F'(u_k)(\partial_iu_k-\partial_iu)+\bigl(F'(u_k)-F'(u)\bigr)\partial_iu $$
と分ける。第 1 項の $L^p$ ノルムは $M\|\partial_iu_k-\partial_iu\|_{L^p}\to0$ である。第 2 項は、$\{u\in S\}$ の上では cor-scr-level-set によりほとんど至る所 $\partial_iu=0$ なので $0$ である。$\{u\notin S\}$ の点 $x$ では、$u_k(x)\to u(x)\notin S$ で $F'$ は $u(x)$ の近傍で連続なので、$F'(u_k(x))\to F'(u(x))$ である。第 2 項の $p$ 乗は $(2M|\partial_iu|)^p\in L^1$ で押さえられるので、優収束定理 によりその $L^p$ ノルムは $0$ に収束する。$\square$

$F$ に折れ点があると、$p=\infty$ では一般に成り立たない(下の反例の表の 4 行目)。$F'(u_k)$ は $\{u\in S\}$ の近くで $F'(u)$ に一様には近づかないからである。

仮定を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
$G'$ の有界性(thm-scr-c1 の 2、$n\ge3$)ex-scr-square:$n\ge3$、$G(s)=s^2$、$u=\lvert x\rvert^{3(2-n)/8}$$G\circ u\in W^{1,2}(B)$
$G(0)=0$(thm-scr-c1 の 2、$\Omega=\mathbb R^n$、$p<\infty$)$G\equiv1$、$u=0$$G\circ u\in L^p(\mathbb R^n)$
$F$ の連続性(thm-scr-piecewise)$F=\mathbf 1_{(0,\infty)}$、$\Omega=(-1,1)$、$u(x)=x$$F\circ u\in W^{1,p}(-1,1)$
$p<\infty$(thm-scr-continuity)$F(s)=\lvert s\rvert$、$\Omega=(-1,1)$、$u_k(x)=x+1/k$、$p=\infty$$W^{1,\infty}$ での $F\circ u_k\to F\circ u$
表の反例の確かめ
詳細

1 行目は prf-ex-scr-square のとおりである。

2 行目:$G\equiv1$ は $C^1$ 級で $G'=0$ は有界だが、$G\circ u=1$ は $\mathbb R^n$ 上で $p$ 乗可積分でない。

3 行目:$F=\mathbf 1_{(0,\infty)}$ は $S=\{0\}$ の外で $C^1$ 級、$F'=0$、$F(0)=0$ だが、$0$ で連続でない。$F\circ u=\mathbf 1_{(0,1)}$ は跳躍関数で、$W^{1,p}(-1,1)$ に属さない(Sobolev空間の基本事項 の例「反例:跳躍関数」)。とくに「弱微分 $=F'(u)u'=0$」という公式も崩れる。

4 行目:$u_k-u=1/k$ なので $\|u_k-u\|_{W^{1,\infty}}=1/k\to0$ である。一方 thm-scr-positive-part により $(F\circ u_k)'=\operatorname{sgn}(x+1/k)$、$(F\circ u)'=\operatorname{sgn}(x)$ であり、両者は区間 $(-1/k,0)$ の上で $2$ だけ違う。よって $\|(F\circ u_k)'-(F\circ u)'\|_{L^\infty}=2$ で、収束しない。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, Theorem 4.9(p. 94、ほとんど至る所収束する部分列)、Corollary 8.11(pp. 215–216、1 次元の合成)

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