Hölder空間の基本事項(Fundamentals of Hölder spaces)とは、領域 $\Omega$ 上で $k$ 階までの微分が閉包まで連続に延び、$k$ 階の微分の差が $|x-y|^\alpha$($0<\alpha\le1$)の定数倍で抑えられる関数の空間 $C^{k,\alpha}(\overline\Omega)$ の基礎理論である。Hölder 半ノルムを加えたノルムで $C^{k,\alpha}$ は Banach 空間になり、積や合成について評価が成り立ち、有界領域では指数の大きい空間が小さい空間に含まれ、指数を下げる埋め込みはコンパクトになる。これらは Schauder 評価で楕円型方程式の解の正則性を測る土台であり、非有界領域では指数の間の包含が成り立たないことがある。
前提知識: 多変数微分積分学, ノルム空間, 完備距離空間, Arzelà–Ascoliの定理
連続関数であるという条件は、近い二点で関数値が近いことを保証するが、その近づき方の速さまでは指定しない。Hölder条件は、距離が $r$ の二点での関数値の差を $r^\alpha$ で抑える。指数 $0<\alpha\leq1$ が大きいほど強い条件であり、$\alpha=1$ はLipschitz条件である。
Hölder空間 $C^{k,\alpha}$ は、$k$ 階までの微分を一様ノルムで制御し、さらにちょうど $k$ 階の微分の振動をHölder半ノルムで制御するBanach空間である。楕円型偏微分方程式のSchauder評価では、方程式の係数や右辺のHölder正則性から解の古典微分の正則性を測るために現れる。
$\mathbb K$ を $\mathbb R$ または $\mathbb C$ とし、$\Omega\subset\mathbb R^n$ を空でない有界開集合とする。以下では、関数とその各微分が $\overline\Omega$ まで連続に延長されているとき、その延長も同じ記号で表す。多重指数 $\gamma$ に対して $|\gamma|=\gamma_1+\cdots+\gamma_n$ と書く。
$0<\alpha\leq1$ とし、$u:\overline\Omega\to\mathbb K$ を有界関数とする。
$$
[u]_{0,\alpha;\Omega}
:=\sup_{\substack{x,y\in\overline\Omega\\x\neq y}}
\frac{|u(x)-u(y)|}{|x-y|^\alpha}
$$
を $u$ の指数 $\alpha$ のHölder半ノルムという。これが有限である関数を指数 $\alpha$ のHölder連続関数という。$[u]_{0,\alpha;\Omega}=0$ であることと、$u$ が定数関数であることは同値なので、これはノルムではなく半ノルムである。
$k\in\mathbb Z_{\geq0}$、$0<\alpha\leq1$ とする。$C^{k,\alpha}(\overline\Omega)$ を、$u\in C^k(\Omega)$ であって、すべての $|\gamma|\leq k$ に対する $D^\gamma u$ が $\overline\Omega$ 上の連続関数に延長され、かつ $|\gamma|=k$ ならば $[D^\gamma u]_{0,\alpha;\Omega}<\infty$ となるもの全体とする。
$$
[u]_{k,\alpha;\Omega}
:=\sum_{|\gamma|=k}[D^\gamma u]_{0,\alpha;\Omega},
$$
$$
\|u\|_{k,\alpha;\Omega}
:=\sum_{|\gamma|\leq k}\|D^\gamma u\|_{L^\infty(\Omega)}
+[u]_{k,\alpha;\Omega}
$$
をそれぞれHölder半ノルム、Hölderノルムという。$k=0$ のときは
$$
\|u\|_{0,\alpha;\Omega}=\|u\|_{L^\infty(\Omega)}+[u]_{0,\alpha;\Omega}
$$
である。
標準的な $C^{k,\alpha}$ ノルムでHölder半ノルムを課すのは、すべての階の微分ではなく $k$ 階微分である。低階微分のHölder性が必要な場合、それは領域の幾何や別の評価から導く。すべての低階微分にも同じ半ノルムを加えた同値ノルムを使う文献もあるが、同値性には領域に関する条件を確認する必要がある。
非有界開集合でも同じ式により、有界な微分と有限なHölder半ノルムをもつ空間 $C_b^{k,\alpha}(\Omega)$ を定義できる。ただし、有界領域で自動的に使える指数間の包含は、非有界領域では一般に成り立たない。
$0<\alpha\leq1$ とする。$u(x)=|x|^\alpha$ は $[-1,1]$ 上で指数 $\alpha$ のHölder連続関数である。実際、$a,b\geq0$ に対して
$$
|a^\alpha-b^\alpha|\leq|a-b|^\alpha
$$
であり、さらに $\bigl||x|-|y|\bigr|\leq|x-y|$ だからである。一方、$\beta>\alpha$ なら
$$
\frac{|u(t)-u(0)|}{|t-0|^\beta}=t^{\alpha-\beta}\longrightarrow\infty
\qquad(t\downarrow0)
$$
なので、$u$ は指数 $\beta$ のHölder連続関数ではない。
$u(x)=|x|$ は $[-1,1]$ 上で $[u]_{0,1;(-1,1)}=1$ を満たすので $C^{0,1}$ に属するが、原点で微分可能でないため $C^1$ には属さない。したがって、指数 $1$ のHölder条件を一階微分可能性と同一視してはいけない。
$0<\beta<\alpha<1$ とし、$u(x)=|x|^\alpha$ を $\mathbb R$ 上で考える。上の評価から $u$ は指数 $\alpha$ のHölder連続関数である。しかし
$$
\frac{|u(R)-u(0)|}{|R|^\beta}=R^{\alpha-\beta}\longrightarrow\infty
\qquad(R\to\infty)
$$
なので指数 $\beta$ のHölder半ノルムは有限でない。これは、有界性の仮定を外した包含 $C^{0,\alpha}\subset C^{0,\beta}$ が偽であることを示す。
$0<\beta\leq\alpha\leq1$ とする。このとき
$$
C^{k,\alpha}(\overline\Omega)\subset C^{k,\beta}(\overline\Omega)
$$
であり、$d=\operatorname{diam}(\Omega)$ とおけば
$$
[u]_{k,\beta;\Omega}\leq d^{\alpha-\beta}[u]_{k,\alpha;\Omega}.
$$
特に、この包含写像は連続である。
$x,y\in\overline\Omega$、$x\neq y$ と $|\gamma|=k$ に対して
$$
\frac{|D^\gamma u(x)-D^\gamma u(y)|}{|x-y|^\beta}
=|x-y|^{\alpha-\beta}
\frac{|D^\gamma u(x)-D^\gamma u(y)|}{|x-y|^\alpha}
\leq d^{\alpha-\beta}[D^\gamma u]_{0,\alpha;\Omega}.
$$
上限を取り、$|\gamma|=k$ について足せば半ノルムの評価を得る。一様ノルムの項は両方のノルムで同じなので、
$$
\|u\|_{k,\beta;\Omega}
\leq\max\{1,d^{\alpha-\beta}\}\|u\|_{k,\alpha;\Omega}
$$
も従う。
$f,g\in C^{0,\alpha}(\overline\Omega)$ ならば $fg\in C^{0,\alpha}(\overline\Omega)$ であり、
$$
[fg]_{0,\alpha;\Omega}
\leq\|f\|_{L^\infty(\Omega)}[g]_{0,\alpha;\Omega}
+\|g\|_{L^\infty(\Omega)}[f]_{0,\alpha;\Omega}.
$$
したがって
$$
\|fg\|_{0,\alpha;\Omega}
\leq\|f\|_{0,\alpha;\Omega}\|g\|_{0,\alpha;\Omega}.
$$
任意の $x,y\in\overline\Omega$ に対して
$$
f(x)g(x)-f(y)g(y)
=f(x)(g(x)-g(y))+g(y)(f(x)-f(y))
$$
である。よって $x\neq y$ なら
$$
\frac{|f(x)g(x)-f(y)g(y)|}{|x-y|^\alpha}
\leq\|f\|_\infty[g]_{0,\alpha;\Omega}
+\|g\|_\infty[f]_{0,\alpha;\Omega}.
$$
左辺の上限を取れば最初の評価を得る。また $\|fg\|_\infty\leq\|f\|_\infty\|g\|_\infty$ を加えると
$$
\|fg\|_{0,\alpha;\Omega}
\leq\|f\|_\infty\|g\|_\infty
+\|f\|_\infty[g]_{0,\alpha;\Omega}
+\|g\|_\infty[f]_{0,\alpha;\Omega}
\leq\|f\|_{0,\alpha;\Omega}\|g\|_{0,\alpha;\Omega}
$$
となる。
$\Omega$ が凸で、$f,g\in C^{k,\alpha}(\overline\Omega)$ ならば $fg\in C^{k,\alpha}(\overline\Omega)$ であり、$n,k,\alpha,\operatorname{diam}(\Omega)$ のみに依存する定数 $C>0$ が存在して
$$
\|fg\|_{k,\alpha;\Omega}
\leq C\|f\|_{k,\alpha;\Omega}\|g\|_{k,\alpha;\Omega}
$$
が成り立つ。
Leibniz則により、$|\gamma|\leq k$ なら
$$
D^\gamma(fg)=\sum_{\delta\leq\gamma}
{\gamma\choose\delta}D^\delta fD^{\gamma-\delta}g.
$$
各項の一様ノルムは対応する二つの一様ノルムの積で抑えられる。$|\eta|< k$ なら、凸性により二点を結ぶ線分が $\Omega$ に含まれ、線分上で微積分学の基本定理を用いることにより
$$
[D^\eta f]_{0,1;\Omega}
\leq\sum_{i=1}^n\|D^{\eta+e_i}f\|_\infty
$$
を得る。したがって $d=\operatorname{diam}(\Omega)$ とおけば
$$
[D^\eta f]_{0,\alpha;\Omega}
\leq d^{1-\alpha}\sum_{i=1}^n\|D^{\eta+e_i}f\|_\infty,
$$
$g$ についても同様である。$|\gamma|=k$ のLeibniz展開の各積に命題「Hölder連続関数の積」を適用すると、最高階の因子には定義上のHölder評価を、低階の因子には今の評価を使える。有限個の多重指数について和を取れば、$n,k,\alpha,d$ のみに依存する定数 $C$ を得る。
$X,Y$ を距離空間、$V\subset Y$ とし、$g:X\to V$ が指数 $\beta$ のHölder連続写像、$f:V\to\mathbb R^m$ が指数 $\alpha$ のHölder連続写像であるとする。ここで $0<\alpha,\beta\leq1$ である。このとき $f\circ g$ は指数 $\alpha\beta$ のHölder連続写像であり、
$$
[f\circ g]_{0,\alpha\beta;X}
\leq[f]_{0,\alpha;V}[g]_{0,\beta;X}^{\alpha}
$$
が成り立つ。特に、外側の写像がLipschitz連続なら指数 $\beta$ は保たれ、内側の写像がLipschitz連続なら指数 $\alpha$ は保たれる。
$x,y\in X$ に対し、まず $f$ のHölder評価を、次に $g$ のHölder評価を用いると
$$
|f(g(x))-f(g(y))|
\leq[f]_{0,\alpha;V}d_Y(g(x),g(y))^\alpha
\leq[f]_{0,\alpha;V}[g]_{0,\beta;X}^\alpha d_X(x,y)^{\alpha\beta}.
$$
$x\neq y$ について商の上限を取れば結論を得る。
$C^{k,\alpha}$ 級の写像の合成については、値域が外側の写像の定義域に含まれることに加え、連鎖律に現れる外側の導関数がその値域上で有界であることを確認しなければならない。単に「二つの $C^{k,\alpha}$ 写像の合成」とだけ述べると、非有界な値域や異なる定義域を見落とす。コンパクト集合上、または必要な導関数の一様評価を仮定した状況では、連鎖律と上の積評価から通常の合成評価が従う。
$C^{k,\alpha}(\overline\Omega)$ はHölderノルム $\|\cdot\|_{k,\alpha;\Omega}$ に関してBanach空間である。
$(u_j)$ を $C^{k,\alpha}(\overline\Omega)$ のCauchy列とする。各 $|\gamma|\leq k$ について
$$
\|D^\gamma u_j-D^\gamma u_\ell\|_\infty
\leq\|u_j-u_\ell\|_{k,\alpha;\Omega}
$$
なので、$D^\gamma u_j$ は $C(\overline\Omega)$ の一様ノルムでCauchy列である。よってある連続関数 $v_\gamma$ に一様収束する。
これらの極限が互いに微分として両立することを確かめる。$|\gamma|< k$、$x\in\Omega$ とし、$x$ を中心とする閉球が $\Omega$ に含まれるよう半径を取る。十分小さい $t$ と座標方向 $e_i$ に対し、微積分学の基本定理から
$$
D^\gamma u_j(x+te_i)-D^\gamma u_j(x)
=\int_0^t D^{\gamma+e_i}u_j(x+se_i)\,ds
$$
である。一様収束により $j\to\infty$ とでき、
$$
v_\gamma(x+te_i)-v_\gamma(x)
=\int_0^t v_{\gamma+e_i}(x+se_i)\,ds
$$
を得る。したがって $\partial_i v_\gamma=v_{\gamma+e_i}$ である。これを帰納的に用いれば、$u:=v_0$ は $C^k(\Omega)$ に属し、$D^\gamma u=v_\gamma$ である。
残るのはHölder半ノルムでの収束である。$\varepsilon>0$ を取り、$j,\ell\geq N$ なら $\|u_j-u_\ell\|_{k,\alpha;\Omega}<\varepsilon$ となるようにする。$|\gamma|=k$ と $x\neq y$ に対して $\ell\to\infty$ とすれば
$$
\frac{|(D^\gamma u_j-D^\gamma u)(x)-(D^\gamma u_j-D^\gamma u)(y)|}{|x-y|^\alpha}
\leq\varepsilon.
$$
上限を取り、有限個の最高階多重指数について、初めから各項の和を用いて同じ極限を取れば
$$
[u_j-u]_{k,\alpha;\Omega}\leq\varepsilon
$$
を得る。一様ノルムの各項も $0$ に収束するので、$\|u_j-u\|_{k,\alpha;\Omega}\to0$ である。ゆえに空間は完備である。
$\Omega$ を有界な凸開集合とし、$0<\beta<\alpha\leq1$ とする。このとき包含写像
$$
C^{k,\alpha}(\overline\Omega)\longrightarrow C^{k,\beta}(\overline\Omega)
$$
はコンパクトである。
$C^{k,\alpha}$ の有界列 $(u_j)$ を取る。すべての $|\gamma|\leq k$ について $D^\gamma u_j$ は一様有界である。$|\gamma|=k$ の族は一様に指数 $\alpha$ のHölder連続である。$|\gamma|< k$ の族は、凸性と線分上の微積分学の基本定理により、その一階上の導関数の一様ノルムをLipschitz定数としてもつ。したがって、すべての導関数族は一様同程度連続である。コンパクトな $\overline\Omega$ 上でArzelà–Ascoliの定理を適用し、有限回の部分列抽出を行うと、すべての $|\gamma|\leq k$ について $D^\gamma u_j$ が一様収束する部分列を得る。
指数の改善には、任意の有界関数 $h$ に対する補間評価
$$
[h]_{0,\beta;\Omega}
\leq 2^{1-\beta/\alpha}
\|h\|_\infty^{1-\beta/\alpha}
[h]_{0,\alpha;\Omega}^{\beta/\alpha}
$$
を使う。この評価は、$|h(x)-h(y)|$ を $2\|h\|_\infty$ と $[h]_{0,\alpha}|x-y|^\alpha$ の小さい方で抑え、二つが釣り合う尺度で場合分けすれば得られる。最高階導関数の差に適用すると、一様収束と一様な $\alpha$-Hölder評価から $\beta$-Hölder半ノルムでの収束が従う。よって選んだ部分列は $C^{k,\beta}$ で収束する。
$\Omega\subset\mathbb R^n$ を有界な $C^{2,\alpha}$ 領域とし、
$$
Lu=a^{ij}(x)D_{ij}u+b^i(x)D_i u+c(x)u
$$
を一様楕円型作用素とする。係数が適切な $C^{0,\alpha}$ 級で、$c\leq0$ など標準的な仮定を満たすとき、斉次Dirichlet境界条件 $u=0$ on $\partial\Omega$ を満たす解に対して
$$
\|u\|_{2,\alpha;\Omega}
\leq C\bigl(\|Lu\|_{0,\alpha;\Omega}+\|u\|_{0;\Omega}\bigr)
$$
という型の大域Schauder評価が成り立つ。定数 $C$ は楕円性定数、係数のHölderノルム、領域、$n$、$\alpha$ に依存する。(GT01 Chapter 6)
この定理はHölder空間そのものの初等的性質ではなく、楕円型方程式の大定理である。内点評価なら境界の滑らかさは不要だが、大域評価では境界の正則性と境界値の仮定が必要になる。また、係数の正則性、一様楕円性、境界条件を落とした同じ形の主張は一般には成り立たない。正確な版と証明は引用文献を参照する。
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