Weylテンソル

同義語:Weyl tensorWeyl テンソルワイルテンソルWeyl曲率テンソル共形曲率テンソル

概要

Weylテンソル(Weyl tensor)とは、次元 $n\ge3$ のリーマン多様体・擬リーマン多様体の曲率テンソルから、リッチテンソルとスカラー曲率で作られる Schouten テンソルの Kulkarni–Nomizu 積を引いた残りであり、どの添字の組で縮約しても $0$ になる。曲率テンソルはこの形にただ 1 通りに分解され(Ricci 分解)、3 次元では Weyl テンソルは恒等的に $0$ である。計量の共形変換 $g\mapsto e^{2\rho}g$ に対して $(1,3)$ 型テンソルとして不変なので、局所共形平坦な多様体では Weyl テンソルが消え、4 次元以上ではその逆も成り立つ。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Riemann曲率テンソル, リッチテンソル, スカラー曲率, 共形変換

Weylテンソル(Weyl tensor)は、次元 $n\ge3$ のリーマン多様体・擬リーマン多様体の曲率テンソルから、リッチテンソルとスカラー曲率で決まる部分を取り除いた残りである。曲率テンソルは「Weyl テンソル」と「リッチテンソルから作られる部分」の和にただ 1 通りに分解され(Ricci 分解)、Weyl テンソルはどの添字の組で縮約しても $0$ になる。
Weyl テンソルが重要なのは、計量を各点で正の関数倍する共形変換 $g\mapsto e^{2\rho}g$ に対して、$(1,3)$ 型テンソルとして変わらないからである。曲率テンソルそのものは共形変換で大きく変わる(平坦な Euclid 空間と曲がった球面は局所的に共形同値である)ので、Weyl テンソルは曲率のうち共形構造だけで決まる部分を取り出したものといえる。この記事では、Ricci 分解、3 次元で Weyl テンソルが恒等的に $0$ になること、共形変換による曲率の変化の公式と Weyl テンソルの共形不変性を証明し、局所共形平坦な多様体の Weyl テンソルが $0$ であることを導く。

代数的曲率テンソル

以下、曲率の記法は Riemann曲率テンソル に従う。すなわち $R(X,Y)Z=\nabla_X\nabla_YZ-\nabla_Y\nabla_XZ-\nabla_{[X,Y]}Z$、$\mathrm{Rm}(X,Y,Z,U):=g(R(Z,U)Y,X)$ とする。この流儀では断面曲率は $\mathrm{Rm}(X,Y,X,Y)/(g(X,X)g(Y,Y)-g(X,Y)^2)$ である。
点ごとの線形代数として扱うため、$V$ を $n$ 次元の実ベクトル空間、$g$ を $V$ の非退化な対称双線形形式とし、正規直交基底 $e_1,\dots,e_n$($g(e_i,e_j)=\varepsilon_i\delta_{ij}$、$\varepsilon_i=\pm1$)を 1 つとる。対称双線形形式 $h$ の $g$ に関する跡を $\operatorname{tr}_gh:=\sum_i\varepsilon_ih(e_i,e_i)$ と書く。

代数的曲率テンソルと縮約

$V$ 上の 4 重線形形式 $T$ が代数的曲率テンソルであるとは、次の 4 条件を満たすことをいう(Riemann曲率テンソル の命題「曲率テンソルの対称性」の 4 条件)。

  1. $T(x,y,z,w)=-T(x,y,w,z)$、2. $T(x,y,z,w)=-T(y,x,z,w)$、
  2. $T(x,y,z,w)+T(x,z,w,y)+T(x,w,y,z)=0$、4. $T(x,y,z,w)=T(z,w,x,y)$。
    代数的曲率テンソル $T$ の縮約を
    $$ c(T)(y,z):=\sum_{i=1}^n\varepsilon_i\,T(e_i,y,e_i,z) $$
    で定める。

$c(T)$ は正規直交基底のとり方によらず($g^{ac}T_{abcd}$ と書ける)、条件 4 から対称である。各点 $p$ で $\mathrm{Rm}_p$ は $T_pM$ 上の代数的曲率テンソルであり、リッチテンソル の定義から $\mathrm{Ric}=c(\mathrm{Rm})$、$S=\operatorname{tr}_g\mathrm{Ric}$ である。他の添字の組での縮約は、条件 1・2 から $0$ か $\pm c(T)$ になる。たとえば第 1・第 4 引数の縮約は $\sum_i\varepsilon_iT(e_i,y,z,e_i)=-c(T)(y,z)$ である。

Kulkarni–Nomizu 積

$V$ 上の対称双線形形式 $h,k$ の Kulkarni–Nomizu 積 $h\odot k$ を
$$ (h\odot k)(x,y,z,w):=h(x,z)k(y,w)+h(y,w)k(x,z)-h(x,w)k(y,z)-h(y,z)k(x,w) $$
で定める。

Kulkarni–Nomizu 積の性質

$h,k$ を対称双線形形式とする。

  1. $h\odot k=k\odot h$ であり、$h\odot k$ は代数的曲率テンソルである。
  2. $c(h\odot g)=(n-2)\,h+(\operatorname{tr}_gh)\,g$、とくに $c(g\odot g)=2(n-1)\,g$ である。
  3. $n\ge3$ で $h\odot g=0$ なら $h=0$ である。

1.定義の 4 項で $h$ と $k$ を入れ替えると、第 1 項と第 2 項、第 3 項と第 4 項が入れ替わるので $h\odot k=k\odot h$ である。条件 1・2・4 は定義から直接わかる(4 は $h,k$ の対称性を使う)。条件 3 は、$(y,z,w)$ を巡回させた 3 つの値の和の 12 項が、$h,k$ の対称性によって 2 項ずつ打ち消し合うことからわかる。

条件 3 の計算

$(h\odot k)(x,y,z,w)+(h\odot k)(x,z,w,y)+(h\odot k)(x,w,y,z)$ の 12 項は、$h(x,z)k(y,w)$ と $-h(x,z)k(w,y)$、$h(y,w)k(x,z)$ と $-h(w,y)k(x,z)$、$-h(x,w)k(y,z)$ と $h(x,w)k(z,y)$、$-h(y,z)k(x,w)$ と $h(z,y)k(x,w)$、$-h(x,y)k(z,w)$ と $h(x,y)k(w,z)$、$-h(z,w)k(x,y)$ と $h(w,z)k(x,y)$ の 6 組に分かれ、各組は $h,k$ の対称性から和が $0$ である。


2.$y=\sum_i\varepsilon_ig(y,e_i)e_i$ なので $\sum_i\varepsilon_ih(e_i,z)g(y,e_i)=h(y,z)$ である。よって
$$ c(h\odot g)(y,z)=\sum_i\varepsilon_i\bigl(h(e_i,e_i)g(y,z)+h(y,z)g(e_i,e_i)-h(e_i,z)g(y,e_i)-h(y,e_i)g(e_i,z)\bigr)=(\operatorname{tr}_gh)\,g(y,z)+n\,h(y,z)-2h(y,z) $$
である($\varepsilon_ig(e_i,e_i)=1$)。$h=g$ とおくと $\operatorname{tr}_gg=n$ から後半を得る。
3.2 から $0=(n-2)h+(\operatorname{tr}_gh)g$ で、跡をとると $0=(n-2)\operatorname{tr}_gh+n\operatorname{tr}_gh=2(n-1)\operatorname{tr}_gh$ なので $\operatorname{tr}_gh=0$、したがって $(n-2)h=0$、$n\ge3$ から $h=0$ である。$\square$

定曲率空間の曲率テンソル

リーマン多様体 $(M,g)$ の断面曲率が定数 $K$ なら $R(X,Y)Z=K\bigl(g(Y,Z)X-g(X,Z)Y\bigr)$ である(断面曲率 の系「定曲率の特徴づけ」)。したがって
$$ \mathrm{Rm}(X,Y,Z,U)=g(R(Z,U)Y,X)=K\bigl(g(X,Z)g(Y,U)-g(X,U)g(Y,Z)\bigr)=\frac K2\,(g\odot g)(X,Y,Z,U) $$
である。単位球面では $\mathrm{Rm}=\frac12g\odot g$、Euclid 空間では $\mathrm{Rm}=0$ である。

定義と Ricci 分解

Schouten テンソルと Weyl テンソル

$n\ge3$ 次元の擬リーマン多様体 $(M,g)$ の Schouten テンソル $P$ と Weylテンソル $W$ を
$$ P:=\frac1{n-2}\Bigl(\mathrm{Ric}-\frac S{2(n-1)}\,g\Bigr),\qquad W:=\mathrm{Rm}-P\odot g $$
で定める。$W$ は $(0,4)$ 型テンソル場である。添字を 1 つ上げた $(1,3)$ 型テンソル場($g(W^\sharp(Z,U)Y,X)=W(X,Y,Z,U)$ で定まるもの)も Weyl テンソルといい、同じ文字で書く。

書き直すと $W=\mathrm{Rm}-\frac1{n-2}\mathrm{Ric}\odot g+\frac S{2(n-1)(n-2)}\,g\odot g$ である。

Ricci 分解

$n\ge3$ とする。

  1. $W$ は各点で代数的曲率テンソルであり、$c(W)=0$ である。したがって $W$ はどの添字の組で縮約しても $0$ である。
  2. $\mathrm{Rm}=W+P\odot g$ であり、この形の分解はただ 1 つである。すなわち、$c(W')=0$ となる代数的曲率テンソル $W'$ と対称な $(0,2)$ 型テンソル $h$ で $\mathrm{Rm}=W'+h\odot g$ となるなら、$W'=W$、$h=P$ である。
  3. 跡が $0$ のリッチテンソル $\mathrm{Ric}_0:=\mathrm{Ric}-\frac Sn\,g$ を使うと
    $$ \mathrm{Rm}=W+\frac1{n-2}\,\mathrm{Ric}_0\odot g+\frac S{2n(n-1)}\,g\odot g $$
    である。

1.$\mathrm{Rm}$ と $P\odot g$(lem-weyl-kn の 1)はどちらも代数的曲率テンソルなので、差 $W$ もそうである。$\operatorname{tr}_gP=\frac1{n-2}\bigl(S-\frac{nS}{2(n-1)}\bigr)=\frac S{2(n-1)}$ なので、lem-weyl-kn の 2 から
$$ c(P\odot g)=(n-2)P+\frac S{2(n-1)}\,g=\mathrm{Ric} $$
であり、$c(W)=c(\mathrm{Rm})-c(P\odot g)=\mathrm{Ric}-\mathrm{Ric}=0$ である。他の縮約は $0$ か $\pm c(W)$ なので $0$ である。
2.前半は定義である。$\mathrm{Rm}=W'+h\odot g$ とすると、縮約して $\mathrm{Ric}=(n-2)h+(\operatorname{tr}_gh)g$、さらに跡をとって $S=2(n-1)\operatorname{tr}_gh$ である。よって $\operatorname{tr}_gh=\frac S{2(n-1)}$、$h=\frac1{n-2}\bigl(\mathrm{Ric}-\frac S{2(n-1)}g\bigr)=P$ で、$W'=\mathrm{Rm}-P\odot g=W$ である。
3.$P=\frac1{n-2}\mathrm{Ric}_0+\frac S{n-2}\bigl(\frac1n-\frac1{2(n-1)}\bigr)g=\frac1{n-2}\mathrm{Ric}_0+\frac S{2n(n-1)}g$ を 2 に代入すればよい。$\square$

3 の分解の 3 つの項は、曲率のうち「縮約で見えない部分」「リッチテンソルの跡のない部分」「スカラー曲率」に当たる。定曲率空間では $\mathrm{Ric}_0=0$、$W=0$ である(ex-weyl-space-form)。

3 次元の曲率テンソル

$n=3$ なら $W=0$ であり、曲率テンソルはリッチテンソルで決まる:
$$ \mathrm{Rm}=P\odot g=\mathrm{Ric}\odot g-\frac S4\,g\odot g. $$

3 次元の代数的曲率テンソル $T$ で $c(T)=0$ となるものは $0$ であることを示せばよい(thm-weyl-decomposition の 1 を $T=W$ に使う)。$T_{ijkl}:=T(e_i,e_j,e_k,e_l)$ と書く。条件 1・2 から、$i=j$ または $k=l$ なら $T_{ijkl}=0$ である。
$\{i,j\}=\{k,l\}$ の成分. $a_{ij}:=T_{ijij}$($i\ne j$)は条件 1・2 から $i,j$ について対称で、$\{i,j\}=\{k,l\}$ の成分は $\pm a_{ij}$ である。$b_{ij}:=\varepsilon_i\varepsilon_ja_{ij}$ とおくと、$\varepsilon_jc(T)(e_j,e_j)=\varepsilon_j\sum_{i\ne j}\varepsilon_ia_{ij}=\sum_{i\ne j}b_{ij}$ なので、$c(T)=0$ から
$$ b_{12}+b_{13}=0,\qquad b_{12}+b_{23}=0,\qquad b_{13}+b_{23}=0 $$
である。3 式を足して $b_{12}+b_{13}+b_{23}=0$ となり、各式と比べてすべての $b_{ij}$、したがって $a_{ij}$ が $0$ である。
$\{i,j\}\ne\{k,l\}$ の成分. 添字は 3 つしかないので、2 元集合 $\{i,j\}$ と $\{k,l\}$ はちょうど 1 つの元 $m$ を共有し、$\{i,j\}=\{m,a\}$、$\{k,l\}=\{m,b\}$($a\ne b$)と書ける。条件 1・2 からこの成分は $\pm T(e_m,e_a,e_m,e_b)$ である。一方 $c(T)(e_a,e_b)=\sum_i\varepsilon_iT(e_i,e_a,e_i,e_b)$ で、$i=a$ の項は条件 2、$i=b$ の項は条件 1 で消えるので、$c(T)(e_a,e_b)=\varepsilon_mT(e_m,e_a,e_m,e_b)$ である。よってこの成分も $0$ である。
したがって $T=0$ である。最後の式は $n=3$ で $P=\mathrm{Ric}-\frac S4g$ であることによる。$\square$

2 次元では Schouten テンソルと Weyl テンソルは定義されない。曲率テンソルは 1 つの関数で決まり(Riemann曲率テンソル の系「2次元の曲率テンソル」)、$g\odot g\ne0$ なので $\mathrm{Rm}=f\,g\odot g$ と書け、縮約をとって $S=4f$、すなわち $\mathrm{Rm}=\frac S4\,g\odot g$ である。ただし thm-weyl-decomposition の 2 の一意性は 2 次元では成り立たない(ex-weyl-counterexamples の 1 行目)。

共形変換による変化

$\rho$ を $M$ 上の滑らかな関数とし、$\tilde g:=e^{2\rho}g$ とする。$g$ に関する $\rho$ の勾配を $G:=\operatorname{grad}\rho$、Hessian を $(\nabla^2\rho)(X,Y):=X(Y\rho)-(\nabla_XY)\rho=g(\nabla_XG,Y)$、$|d\rho|^2:=g(G,G)$ と書き(擬リーマン計量では $|d\rho|^2$ は負にもなりうる)、
$$ A:=\nabla^2\rho-d\rho\otimes d\rho+\frac12|d\rho|^2\,g $$
とおく。$A$ は対称な $(0,2)$ 型テンソル場である。$\tilde g$ の量にはチルダを付ける。

共形変換による曲率テンソルの変化

$\widetilde{\mathrm{Rm}}=e^{2\rho}\bigl(\mathrm{Rm}-A\odot g\bigr)$ である。

段 1. 共形変換 の命題「共形変換によるリーマン接続の変化」により、$\tilde\nabla_XY=\nabla_XY+D(X,Y)$、$D(X,Y):=(X\rho)Y+(Y\rho)X-g(X,Y)G$ である。$D$ は対称な $C^\infty(M)$ 双線形写像である。このとき
$$ \tilde R(X,Y)Z=R(X,Y)Z+(\nabla_XD)(Y,Z)-(\nabla_YD)(X,Z)+D(X,D(Y,Z))-D(Y,D(X,Z)) $$
が成り立つ。

計算

$\tilde\nabla_X\tilde\nabla_YZ=\nabla_X\nabla_YZ+D(X,\nabla_YZ)+(\nabla_XD)(Y,Z)+D(\nabla_XY,Z)+D(Y,\nabla_XZ)+D(X,D(Y,Z))$ であり、$\tilde\nabla_{[X,Y]}Z=\nabla_{[X,Y]}Z+D([X,Y],Z)$ である。$X$ と $Y$ を入れ替えたものを引くと、$D(X,\nabla_YZ)+D(Y,\nabla_XZ)$ は対称なので消え、$D(\nabla_XY-\nabla_YX-[X,Y],Z)$ は捩れがないので消えて、主張の式が残る。


段 2. $\nabla g=0$ から $(\nabla_XD)(Y,Z)=(\nabla^2\rho)(X,Y)Z+(\nabla^2\rho)(X,Z)Y-g(Y,Z)\nabla_XG$ である。これと $D$ の定義を代入して整理すると
$$ \begin{aligned} (\nabla_XD)(Y,Z)-(\nabla_YD)(X,Z)&=(\nabla^2\rho)(X,Z)Y-(\nabla^2\rho)(Y,Z)X+g(X,Z)\nabla_YG-g(Y,Z)\nabla_XG,\\ D(X,D(Y,Z))-D(Y,D(X,Z))&=(Y\rho)(Z\rho)X-(X\rho)(Z\rho)Y+|d\rho|^2\bigl(g(X,Z)Y-g(Y,Z)X\bigr)\\ &\qquad+\bigl((X\rho)g(Y,Z)-(Y\rho)g(X,Z)\bigr)G \end{aligned} $$
である。
計算

第 1 式は $\nabla^2\rho$ の対称性で $(\nabla^2\rho)(X,Y)Z$ の項が消えることによる。第 2 式:$D(Y,Z)\rho=2(Y\rho)(Z\rho)-g(Y,Z)|d\rho|^2$、$g(X,D(Y,Z))=(Y\rho)g(X,Z)+(Z\rho)g(X,Y)-(X\rho)g(Y,Z)$ なので

$$D(X,D(Y,Z))=(X\rho)(Y\rho)Z+(X\rho)(Z\rho)Y+\bigl(2(Y\rho)(Z\rho)-g(Y,Z)|d\rho|^2\bigr)X-\bigl((Y\rho)g(X,Z)+(Z\rho)g(X,Y)\bigr)G$$

である($(X\rho)g(Y,Z)G$ の 2 項が打ち消す)。$X$ と $Y$ を入れ替えて引くと、$(X\rho)(Y\rho)Z$ と $(Z\rho)g(X,Y)G$ の項は消え、$(X\rho)(Z\rho)Y-(Y\rho)(Z\rho)X+2(Y\rho)(Z\rho)X-2(X\rho)(Z\rho)Y=(Y\rho)(Z\rho)X-(X\rho)(Z\rho)Y$ などから第 2 式を得る。


段 3. $B:=\nabla^2\rho-d\rho\otimes d\rho$ とおく。段 1・2 の式と $U$ との内積をとると、$g(\nabla_YG,U)=(\nabla^2\rho)(Y,U)$ などから
$$ g(\tilde R(X,Y)Z,U)-g(R(X,Y)Z,U)=B(X,Z)g(Y,U)+B(Y,U)g(X,Z)-B(Y,Z)g(X,U)-B(X,U)g(Y,Z)+|d\rho|^2\bigl(g(X,Z)g(Y,U)-g(X,U)g(Y,Z)\bigr) $$
である。右辺は Kulkarni–Nomizu 積の定義と見比べると $-(A\odot g)(U,Z,X,Y)$ に等しい($B$ の 4 項が $-(B\odot g)(U,Z,X,Y)$、最後の項が $-\frac12|d\rho|^2(g\odot g)(U,Z,X,Y)$)。$\mathrm{Rm}(U,Z,X,Y)=g(R(X,Y)Z,U)$ と $\tilde g=e^{2\rho}g$ から
$$ \widetilde{\mathrm{Rm}}(U,Z,X,Y)=e^{2\rho}g(\tilde R(X,Y)Z,U)=e^{2\rho}\bigl(\mathrm{Rm}-A\odot g\bigr)(U,Z,X,Y) $$
を得る。$\square$

Weyl テンソルの共形不変性

$n\ge3$ とする。$\tilde P=P-A$、$\tilde W=e^{2\rho}W$ である。とくに $(1,3)$ 型テンソルとしての Weyl テンソルは共形変換で変わらない:$\tilde W^\sharp=W^\sharp$。

prop-weyl-conformal-curvature と $\mathrm{Rm}=W+P\odot g$ から、$e^{2\rho}(h\odot g)=h\odot\tilde g$ を使って
$$ \widetilde{\mathrm{Rm}}=e^{2\rho}W+e^{2\rho}(P-A)\odot g=e^{2\rho}W+(P-A)\odot\tilde g $$
である。$e^{2\rho}W$ は代数的曲率テンソルである。$\tilde g$ の正規直交基底として $\tilde e_i:=e^{-\rho}e_i$ をとると、$\tilde g$ に関する縮約は $\tilde c(T)=e^{-2\rho}c(T)$ なので、$\tilde c(e^{2\rho}W)=c(W)=0$ である。$\tilde g$ についての thm-weyl-decomposition の 2(分解の一意性)から $\tilde W=e^{2\rho}W$、$\tilde P=P-A$ である。最後に $\tilde g(\tilde W^\sharp(Z,U)Y,X)=\tilde W(X,Y,Z,U)=e^{2\rho}g(W^\sharp(Z,U)Y,X)=\tilde g(W^\sharp(Z,U)Y,X)$ なので $\tilde W^\sharp=W^\sharp$ である。$\square$

共形変換 の定義「共形平坦」のとおり、各点の近傍で $e^{2\rho}g$ が平坦になる関数 $\rho$ がとれるとき $(M,g)$ を局所共形平坦という。

局所共形平坦なら Weyl テンソルは消える

$n\ge3$ の擬リーマン多様体 $(M,g)$ が局所共形平坦なら、$W\equiv0$ である。

$p\in M$ の近傍 $U$ と $U$ 上の $\rho$ で $\tilde g=e^{2\rho}g$ が平坦なものをとる。$\widetilde{\mathrm{Rm}}=0=0+0\odot\tilde g$ なので、分解の一意性から $\tilde W=0$ であり、thm-weyl-conformal から $U$ の上で $W=e^{-2\rho}\tilde W=0$ である。$\square$

逆向きの主張(Weyl–Schouten の定理)

逆に、$n\ge4$ で $W\equiv0$ なら $(M,g)$ は局所共形平坦である。$n=3$ では $W$ はいつも $0$ で(thm-weyl-dim3)、局所共形平坦であることは Cotton テンソル $C_{ijk}:=\nabla_kP_{ij}-\nabla_jP_{ik}$ が恒等的に $0$ であることと同値である(Lee18 Theorem 7.37、p. 220。$P$ を $0$ にする関数 $\rho$ を偏微分方程式系の解として求める証明で、この記事では証明しない)。共形変換 の定理「Weylテンソルと共形平坦性」はこれらをまとめて述べている。

Einstein 多様体の Weyl テンソル

$n\ge3$ のリーマン多様体で $\mathrm{Ric}=\lambda g$(リッチテンソル の定義「Einstein 条件」)なら
$$ \mathrm{Rm}=W+\frac{\lambda}{2(n-1)}\,g\odot g $$
である。したがって Einstein 多様体について、$W\equiv0$ であることと断面曲率が定数 $\frac\lambda{n-1}$ であることは同値である。

$S=n\lambda$ なので $P=\frac1{n-2}\bigl(\lambda-\frac{n\lambda}{2(n-1)}\bigr)g=\frac\lambda{2(n-1)}g$ で、$\mathrm{Rm}=W+P\odot g$ から最初の式を得る。$W=0$ なら $\mathrm{Rm}=\frac K2g\odot g$($K=\frac\lambda{n-1}$)で、$\mathrm{Rm}(X,Y,X,Y)=K\bigl(g(X,X)g(Y,Y)-g(X,Y)^2\bigr)$ から断面曲率は $K$ である。逆に断面曲率が定数 $K$ なら ex-weyl-constant-curvature から $\mathrm{Rm}=\frac K2g\odot g=0+\frac K2g\odot g$ で、分解の一意性から $W=0$ である。$\square$

例

定曲率空間

$n\ge3$ で断面曲率が定数 $K$ なら $\mathrm{Ric}=(n-1)Kg$ で、cor-weyl-einstein から $W=0$、$P=\frac K2g$ である。球面については、ステレオ射影が共形変換であること(共形変換 の例「ステレオ射影」)から局所共形平坦であることが直接わかり、cor-weyl-lcf と合っている。

円柱 $\mathbb R\times S^{n-1}$

$n\ge3$ とし、$M=\mathbb R\times S^{n-1}$ に積計量 $g=dt^2+g_S$($g_S$ は単位球面の計量)を入れる。$g_1:=dt^2$、$g_2:=g_S$ を $M$ に引き戻したものと見ると、積多様体の曲率(Riemann曲率テンソル の命題「積多様体の曲率」)と ex-weyl-constant-curvature から $\mathrm{Rm}=\frac12g_2\odot g_2$ である。$e_1=\partial_t$ と $S^{n-1}$ の正規直交基底で縮約すると $c(g_2\odot g_2)=2(n-2)g_2$ なので $\mathrm{Ric}=(n-2)g_2$、$S=(n-1)(n-2)$、$P=g_2-\frac12g=\frac12(g_2-g_1)$ である。$g_1\odot g_1=0$($g_1$ は階数 $1$)と $g_1\odot g_2=g_2\odot g_1$ から
$$ P\odot g=\frac12(g_2-g_1)\odot(g_1+g_2)=\frac12g_2\odot g_2=\mathrm{Rm} $$
となり、$W=0$ である。実際この計量は局所共形平坦であり、大域的に共形平坦でもある:$\mathbb R^n\setminus\{0\}$ の Euclid 計量は極座標で $dr^2+r^2g_S$ と書け、$r=e^t$ とおくと $e^{2t}(dt^2+g_S)$ となるからである。

球面の積

$S^2\times S^2$(各因子は単位球面)では、ex-weyl-cylinder と同じく $\mathrm{Rm}=\frac12g_1\odot g_1+\frac12g_2\odot g_2$、$c(g_i\odot g_i)=2g_i$ から $\mathrm{Ric}=g$(リッチテンソル の例「積多様体と Einstein 条件」)で、$P=\frac16g$ である。$e_1$ を第 1 因子、$e_3$ を第 2 因子の単位接ベクトルとすると
$$ W(e_1,e_3,e_1,e_3)=0-\frac16(g\odot g)(e_1,e_3,e_1,e_3)=-\frac13\ne0 $$
なので、cor-weyl-lcf により $S^2\times S^2$ は局所共形平坦でない。一方、$S^2\times H^2$($H^2$ は断面曲率 $-1$ の双曲空間)では $\mathrm{Rm}=\frac12g_1\odot g_1-\frac12g_2\odot g_2$、$\mathrm{Ric}=g_1-g_2$、$S=0$、$P=\frac12(g_1-g_2)$ で、$P\odot g=\frac12(g_1\odot g_1-g_2\odot g_2)=\mathrm{Rm}$ から $W=0$ である。4 次元なので rem-weyl-schouten により局所共形平坦である。

4 次元の Lorentz 多様体で真空の Einstein方程式(宇宙定数 $0$)が成り立つと $\mathrm{Ric}=0$(同記事の系「真空の方程式と Einstein 条件」)、したがって $P=0$ で $\mathrm{Rm}=W$ である。物質のない時空の曲率は Weyl テンソルだけからなる。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
$n\ge3$2 次元の単位球面$\mathrm{Rm}=W'+h\odot g$($c(W')=0$)の分解の一意性
曲率テンソルから $P\odot g$ を除く単位球面と Euclid 空間(ステレオ射影)共形変換 $\tilde g=e^{2\rho}g$ で $e^{2\rho}$ 倍になること
局所的な主張球面 $S^n$($n\ge2$)$W\equiv0$(または局所共形平坦)なら大域的に共形平坦
表の反例の確かめ

1 行目:2 次元では $\mathrm{Rm}=\frac S4g\odot g$ で、単位球面では $S=2$ である。$\operatorname{tr}_gh=0$ の対称な $h$ について、正規直交基底で $(h\odot g)(e_1,e_2,e_1,e_2)=h_{11}+h_{22}=0$ で、2 次元の代数的曲率テンソルはこの成分で決まるので $h\odot g=0$ である。よって $h=0$ でない跡のない $h$ について $\mathrm{Rm}=0+(\frac12g+h)\odot g$ も同じ形の分解になる($W'=0$ は $c(W')=0$ を満たす)。
2 行目:共形変換 の例「ステレオ射影」により $\psi^*g_{S^n}=e^{2\rho}g_{\mathbb R^n}$($e^{2\rho}=4/(1+|y|^2)^2$)である。Euclid 計量の曲率テンソルは $0$ だが、単位球面の曲率テンソルは $\frac12\tilde g\odot\tilde g\ne0$ なので、曲率テンソルは $e^{2\rho}$ 倍にならない。
3 行目:$S^n$ の標準計量 $g$ は局所共形平坦($n\ge3$ では $W=0$)である。$e^{2\rho}g$ が $S^n$ 全体で平坦になる $\rho$ があるとすると、$S^n$ はコンパクトなのでこの計量は完備であり(測地線 の定理「Hopf–Rinow 定理の主要な同値条件」)、$S^n$ は単連結なので、完備で単連結な平坦リーマン多様体として $\mathbb R^n$ に等長になる(Lee18 Theorem 12.4(Killing–Hopf)、p. 348)。これはコンパクト性に反する。

関連項目

参考文献

[1]
John M. Lee, Introduction to Riemannian Manifolds, Graduate Texts in Mathematics 176, Springer, 2018, Kulkarni–Nomizu 積(p. 213)、Schouten テンソルと Weyl テンソル・Proposition 7.24・Corollary 7.26(p. 215)、Proposition 7.28(Ricci 分解、p. 216)、Theorem 7.30(共形変換による曲率の変化、p. 217)、Corollary 7.31(p. 218)、Cotton テンソル(p. 219)、Theorem 7.37(Weyl–Schouten の定理、p. 220)、Theorem 12.4(Killing–Hopf の定理、p. 348)

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