局所系

同義語:local system局所定数層局所係数系locally constant sheaf

概要

局所系(local system)とは、位相空間の上の層で、各点の近傍で定数層と同型になるもの(局所定数層)のうち茎が有限生成加群であるもののことである。茎の元を道に沿って運ぶ平行移動は道のホモトピー類だけで決まり、ループを一周したときのずれがモノドロミーである。弧状連結・局所弧状連結・半局所単連結な空間では、局所系は基本群 $\pi_1(X,x)$ の茎への表現と同じもの(圏同値)であり、大域切断はモノドロミー不変部分に一致する。$\mathbb{C}^\times$ 上の $z^a$ の分枝のなす層(モノドロミー $e^{2\pi ia}$)、被覆空間の押し出し、固有な沈め込みのファイバーのコホモロジー $R^qf_*\mathbb{Z}$ が代表例で、可積分接続の水平切断の層としても現れる(Riemann–Hilbert 対応)。摩天楼層や零延長は茎が跳ぶので局所系でない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 層, 茎, 被覆空間, 基本群, 加群, 群の表現

定義

局所系とは、位相空間の上の層のうち、各点の近傍で定数層と同型になるものである。以下 $A$ は可換環(典型的には体 $\mathbb{C}$、$\mathbb{Q}$ や整数環 $\mathbb{Z}$、$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$、$\ell$ 進整数環 $\mathbb{Z}_\ell$)とする。

定数層と局所定数層

$X$ を位相空間、$M$ を集合とする。開集合 $U\subset X$ に対し、$U$ から $M$ への局所定数関数(局所定数関数:各点の近傍で定数となる関数)の全体を $M_X(U)$ とおき、制限写像を関数の制限とすると、$M_X$ は $X$ 上の集合の層になる。これを $M$ に値をもつ定数層(constant sheaf、定数層)といい、$\underline{M}$ とも書く。$M$ が $A$ 加群なら $M_X$ は $A$ 加群の層であり、各点 $x$ における $M_X$ の茎は $M$ に等しい(局所定数関数の芽は $x$ での値で決まる)。
$X$ 上の集合(または $A$ 加群)の層 $\mathcal{F}$ が局所定数(locally constant)であるとは、$X$ の各点 $x$ が、ある集合($A$ 加群)$M$ と層の同型 $\mathcal{F}|_U\cong M_U$ が存在するような開近傍(近傍)$U$ をもつことをいう。このとき $U$ の各点での茎は $M$ と同型である。

局所系と階数

$X$ 上の $A$ 加群の層 $\mathcal{L}$ が $A$ 上の局所系(local system、局所係数系)であるとは、$\mathcal{L}$ が局所定数であって、各茎 $\mathcal{L}_x$ が有限生成加群であることをいう。とくに各点の近傍で $\mathcal{L}|_U\cong (A^r)_U$ となるとき $\mathcal{L}$ は $x$ の近傍で階数 $r$ であるといい、$X$ が連結空間で階数が一定値 $r$ をとるとき(連結なら階数は一定である。prop-local-system-rank)$\mathcal{L}$ を階数 $r$ の局所系という。
$A$ 上の局所系の間の射とは $A$ 加群の層としての射のことであり、$X$ 上の $A$ 上の局所系と射のなす圏を $\mathsf{LocSys}(X,A)$ と書く。これは $A$ 加群の層のアーベル圏の充満部分圏(充満部分圏)であり、$A$ が体のときは局所系の射の核・余核(余核)も局所系である(prop-local-system-operations)。

モノドロミーを定義するために、層のエタール空間(エタール空間、espace étalé)を使う。$X$ 上の集合の層 $\mathcal{F}$ に対し、茎の非交和 $E:=\coprod_{x\in X}\mathcal{F}_x$ に、開集合 $U$ と切断(切断)$s\in\mathcal{F}(U)$ から定まる部分集合 $\{s_y\mid y\in U\}$($s_y$ は $s$ の $y$ での芽)の全体を開基とする位相を入れ、$\pi\colon E\to X$ を $\mathcal{F}_x$ の点を $x$ に送る写像とする。$\pi$ は局所同相写像(局所同相)であり、$U$ 上の $\pi$ の連続な切断 $\sigma\colon U\to E$ の全体は $\mathcal{F}(U)$ と自然に一致する。さらに $\mathcal{F}\mapsto E$ は $X$ 上の集合の層の圏から $X$ への局所同相写像の圏への圏同値であり、$\mathcal{F}|_U$ のエタール空間は $\pi^{-1}(U)$ である(God58 II §1.2、Bre97 I §1–§2)。$\mathcal{F}$ が $A$ 加群の層なら、加法とスカラー倍は層の射であり、エタール空間の上で連続写像 $E\times_XE\to E$、$E\to E$ を定める。

局所定数層と被覆空間

$X$ を位相空間、$\mathcal{F}$ を $X$ 上の集合の層、$\pi\colon E\to X$ をそのエタール空間とする。

  1. 集合 $M$ に離散位相(離散位相)を入れると、定数層 $M_X$ のエタール空間は射影 $X\times M\to X$ である。
  2. $\mathcal{F}$ が局所定数であることと、$X$ の各点が、$\pi^{-1}(U)$ が互いに交わらない開集合の族 $\{V_\alpha\}$ の和で各 $V_\alpha\to U$ が同相写像となるような開近傍 $U$ をもつこととは同値である。とくにすべての茎が空でない局所定数層のエタール空間は $X$ の被覆空間であり、逆に被覆写像 $p\colon E'\to X$ の連続な切断の層はすべての茎が空でない局所定数層である。
  1. $x\in X$ における $M_X$ の茎は $M$ であり、芽 $s_x$ は値 $s(x)\in M$ に対応する。したがって集合として $\coprod_x(M_X)_x=X\times M$ である。位相を比べる。$s\in M_X(U)$ に対する基本開集合 $\{s_y\mid y\in U\}$ は、$M$ の各元 $m$ について $s^{-1}(m)$ が $U$ の開集合であるから、$\bigcup_{m\in M}s^{-1}(m)\times\{m\}$ であり、$X\times M$ の積位相(積位相)で開である。逆に積位相の基本開集合 $U\times\{m\}$ は、定数関数 $m\in M_X(U)$ に対する基本開集合である。よって二つの位相は一致する。
  2. $\mathcal{F}|_U\cong M_U$ なら、同型な層のエタール空間は $U$ 上同相なので、1 により $\pi^{-1}(U)\cong U\times M$($U$ 上の同相)であり、$U\times M=\bigcup_{m}U\times\{m\}$ は互いに交わらない開集合の和で各 $U\times\{m\}\to U$ は同相である。逆に $\pi^{-1}(U)=\bigcup_\alpha V_\alpha$ が主張の形なら、$V_\alpha\to U$ の逆写像 $\sigma_\alpha$ により $(y,\alpha)\mapsto\sigma_\alpha(y)$ は $U$ 上の同相 $U\times\{\alpha\}\to\pi^{-1}(U)$ を与え、$\pi^{-1}(U)$ は $\mathcal{F}|_U$ のエタール空間なので、層とエタール空間の圏同値により $\mathcal{F}|_U\cong M_U$($M$ は添字集合)である。被覆写像は全射としているので(被覆空間の定義)、茎がすべて空でなければ前半の主張は被覆写像の定義そのものである。後半は、$p$ が局所同相なので $p$ の切断の層 $\mathcal{S}$ の $x$ での茎は $p^{-1}(x)$ と同一視され、そのエタール空間が $E'$ 自身であることから、前半により従う。$\square$
平行移動とモノドロミー作用

$X$ を位相空間、$\mathcal{L}$ を $X$ 上の局所定数層で茎がすべて空でないもの、$\pi\colon E\to X$ をそのエタール空間とする(lem-local-system-etale-covering により被覆写像)。点 $x$ から $y$ への道 $\gamma\colon[0,1]\to X$ と $v\in\mathcal{L}_x=\pi^{-1}(x)$ に対し、$v$ を始点とする $\gamma$ の持ち上げ $\tilde\gamma_v\colon[0,1]\to E$ がただ一つ存在する(被覆空間の記事の定理「道の持ち上げ」)。
$$ T_\gamma\colon\mathcal{L}_x\longrightarrow\mathcal{L}_y,\qquad T_\gamma(v):=\tilde\gamma_v(1) $$
を $\gamma$ に沿う平行移動(transport)という。$T_\gamma$ は $\gamma$ の端点を固定するホモトピー類だけで決まり(被覆空間の記事の系「道のホモトピー類と持ち上げの終点」)、道の積 $\gamma\cdot\delta$(先に $\gamma$、次に $\delta$)について $T_{\gamma\cdot\delta}=T_\delta\circ T_\gamma$、定値道について $T=\mathrm{id}$ を満たす。とくに $T_\gamma$ は全単射で、逆写像は逆向きの道 $\bar\gamma$ による $T_{\bar\gamma}$ である。
したがって $x$ を基点とするループ(ループ)の類 $[\gamma]\in\pi_1(X,x)$ に対し
$$ v\cdot[\gamma]:=T_\gamma(v) $$
は $\pi_1(X,x)$ の $\mathcal{L}_x$ への右からの群の作用を定める。これを $\mathcal{L}$ の $x$ におけるモノドロミー作用(モノドロミー)という。$\mathcal{L}$ が $A$ 加群の層なら各 $T_\gamma$ は $A$ 線型(線型写像)であり(prop-local-system-transport-linear)、対応 $[\gamma]\mapsto T_\gamma$ は反準同型 $\pi_1(X,x)\to\operatorname{Aut}_A(\mathcal{L}_x)$、すなわち群 $\pi_1(X,x)^{\mathrm{op}}$ の表現である。これを $\mathcal{L}$ のモノドロミー表現、その像をモノドロミー群という。左からの表現が必要なときは $\rho([\gamma]):=T_{\bar\gamma}=T_\gamma^{-1}$ とおくか、基本群の積を「先に $\delta$、次に $\gamma$」で定める流儀(Del70 など)をとれば $[\gamma]\mapsto T_\gamma$ がそのまま準同型になる。本記事では一貫して平行移動 $T_\gamma$ そのものを $[\gamma]$ の作用とする。$\operatorname{Aut}_A(\mathcal{L}_x)$ が可換な場合(階数 $1$)は $[\gamma]\mapsto T_\gamma$ 自身が準同型だが、$\rho$ の流儀では固有値が逆数になることに注意する。

平行移動の線型性

$\mathcal{L}$ を $X$ 上の局所定数な $A$ 加群の層、$\gamma$ を $x$ から $y$ への道とすると、$T_\gamma\colon\mathcal{L}_x\to\mathcal{L}_y$ は $A$ 加群の同型である。

$E$ をエタール空間とする。$v,w\in\mathcal{L}_x$ に対し、$t\mapsto\tilde\gamma_v(t)+\tilde\gamma_w(t)$ は、加法 $E\times_XE\to E$ が連続なので $[0,1]$ から $E$ への連続写像であり、$\pi$ と合成すると $\gamma$、$t=0$ で $v+w$ である。持ち上げの一意性により、これは $\tilde\gamma_{v+w}$ に等しく、$t=1$ で $T_\gamma(v)+T_\gamma(w)=T_\gamma(v+w)$ を得る。スカラー倍 $E\to E$ も連続なので、同様に $T_\gamma(av)=aT_\gamma(v)$ である。全単射性は定義の直後に述べた。$\square$

局所系と基本群の表現の対応

$X$ を弧状連結(弧状連結空間)、局所弧状連結(局所弧状連結空間)かつ半局所単連結(半局所単連結空間)な位相空間とし、$x\in X$ とする。

  1. 茎をとる関手 $\mathcal{L}\mapsto\mathcal{L}_x$ は、茎が空でない局所定数な集合の層の圏から、$\pi_1(X,x)$ が右から作用する集合の圏への圏同値である。
  2. 同じ関手は、$\mathsf{LocSys}(X,A)$ から、$\pi_1(X,x)$ が $A$ 線型に右から作用する有限生成 $A$ 加群(射は $A$ 線型な同変写像)の圏への圏同値である。$\mathcal{L}$ が階数 $r$ であることと $\mathcal{L}_x\cong A^r$ は同値である。
  3. とくに $X$ が単連結空間(かつ局所弧状連結)なら、$X$ 上の局所定数層はすべて定数層である。
  1. lem-local-system-etale-covering により、エタール空間をとる関手は、茎が空でない局所定数層の圏から $X$ の被覆空間の圏 $\mathsf{Cov}(X)$ への圏同値である(層の射は $X$ 上の連続写像に対応し、これは被覆の射である)。$x$ 上のファイバーは $\mathcal{L}_x$ であり、def-local-system-monodromy のモノドロミー作用は、被覆空間の記事で定義された $\pi_1(X,x)$ のファイバーへの右作用($e\cdot[\gamma]$ を $e$ を始点とする持ち上げの終点とする)と一致する。仮定のもとでファイバー関手 $\mathsf{Cov}(X)\to\mathsf{Set}^{\pi_1(X,x)}$ は圏同値である(被覆空間の記事の定理「被覆の圏と基本群が作用する集合」、Hat02 §1.3)。二つの圏同値の合成が主張の関手である。
  2. まず、二つの局所定数層 $\mathcal{L},\mathcal{L}'$ の積 $\mathcal{L}\times\mathcal{L}'$ は局所定数である。実際 $\mathcal{L}|_U\cong M_U$、$\mathcal{L}'|_U\cong N_U$ なら、エタール空間は $U\times M$ と $U\times N$ の $U$ 上のファイバー積 $U\times(M\times N)$ であり、lem-local-system-etale-covering の 1 により $(\mathcal{L}\times\mathcal{L}')|_U\cong(M\times N)_U$ である。1 の圏同値は有限の極限(圏論)を保つので、$\mathcal{L}\times\mathcal{L}'$(茎 $\mathcal{L}_x\times\mathcal{L}'_x$)は対角作用をもつ積に、一点集合の定数層(終対象)は自明な作用をもつ一点集合に対応する。
    局所定数な $A$ 加群の層とは、局所定数な集合の層 $\mathcal{L}$ に、層の射 $+\colon\mathcal{L}\times\mathcal{L}\to\mathcal{L}$、$0\colon\{\ast\}_X\to\mathcal{L}$、$a\cdot\colon\mathcal{L}\to\mathcal{L}$($a\in A$)で加群の公理(可換図式で表される等式)を満たすものを与えたものであり、射はこれらと可換な集合の層の射である。ただし、$A$ 加群の層が集合の層として局所定数なら $A$ 加群の層としても局所定数であることに注意する。集合の層の同型 $\mathcal{L}|_U\cong M_U$ で $U$ が連結なもの($X$ は局所弧状連結)をとると、加法はエタール空間の上で $U$ 上の連続写像 $U\times(M\times M)\to U\times M$、$(y,m,m')\mapsto(y,\phi_y(m,m'))$ を与えるが、$U\times\{(m,m')\}$ は連結で $M$ は離散なので $\phi_y(m,m')$ は $y$ に依らない。スカラー倍も同様なので、$M$ に $\mathcal{L}_x$ の加群構造を入れれば上の同型は $A$ 加群の層の同型である。
    よって 1 により、$\mathcal{L}$ の加群構造は、$\pi_1(X,x)$ 集合 $\mathcal{L}_x$ 上の同変写像 $\mathcal{L}_x\times\mathcal{L}_x\to\mathcal{L}_x$、$\{\ast\}\to\mathcal{L}_x$、$\mathcal{L}_x\to\mathcal{L}_x$ で加群の公理を満たすもの、すなわち作用が $(v+w)\cdot g=v\cdot g+w\cdot g$、$(av)\cdot g=a(v\cdot g)$ を満たす $A$ 加群構造($A$ 線型な右作用)に一対一に対応し、射も対応する。$\mathcal{L}|_U\cong M_U$ なら $U$ 上の茎は $M\cong\mathcal{L}_x$ なので、$\mathcal{L}_x$ が有限生成($\cong A^r$)であることは $\mathcal{L}$ が局所系(階数 $r$)であることと同値である。
  3. $X$ が単連結なら $\pi_1(X,x)$ は自明群なので、すべてのループは定値ループにホモトピックであり $X$ は半局所単連結である。1 により、茎が空でない局所定数層 $\mathcal{L}$ は、自明な作用をもつ集合 $\mathcal{L}_x$ に対応する定数層 $(\mathcal{L}_x)_X$ と同型である(定数層 $M_X$ のモノドロミー作用は、エタール空間 $X\times M$ の持ち上げが $t\mapsto(\gamma(t),m)$ なので自明である)。茎が空の点があれば、lem-local-system-etale-covering により茎が空である点の集合は開かつ閉で、$X$ が連結なので $\mathcal{L}$ は空集合の定数層である。$\square$

この定理により、局所系の理論は基本群の表現論(表現論)と同じものになる。定理の仮定は連結な多様体、CW複体、複素解析空間(複素解析空間)など、通常扱う空間では満たされる。

大域切断とモノドロミー不変部分

$X$ を弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間、$\mathcal{L}$ を $X$ 上の局所定数な $A$ 加群の層、$x\in X$ とする。茎への写像 $\Gamma(X,\mathcal{L})\to\mathcal{L}_x$、$s\mapsto s_x$ は単射で、その像はモノドロミー作用の不変部分
$$ \mathcal{L}_x^{\pi_1(X,x)}:=\{v\in\mathcal{L}_x\mid v\cdot[\gamma]=v\ \text{for all}\ [\gamma]\in\pi_1(X,x)\} $$
である。すなわち $H^0(X,\mathcal{L})=\Gamma(X,\mathcal{L})\cong\mathcal{L}_x^{\pi_1(X,x)}$ である。

$\pi\colon E\to X$ をエタール空間とし、大域切断 $s$ を連続写像 $s\colon X\to E$($\pi\circ s=\mathrm{id}$)と同一視する。
単射性。$s,s'\in\Gamma(X,\mathcal{L})$ が $s_x=s'_x$ を満たすとし、$Z:=\{y\in X\mid s(y)=s'(y)\}$ とおく。$Z$ は開である(芽が一致すれば近傍で一致する)。$Z$ は閉でもある。実際 $y\notin Z$ なら、$y$ の開近傍 $U$ で $\pi^{-1}(U)$ がシートに分かれるものをとると、$s(y)\ne s'(y)$ は異なるシート $V_\alpha$、$V_\beta$ に属し、$s$、$s'$ の連続性により $y$ の近傍で $s$ は $V_\alpha$ に、$s'$ は $V_\beta$ に値をとるから、その近傍は $Z$ と交わらない。$X$ は連結で $x\in Z$ なので $Z=X$、すなわち $s=s'$ である。
像が不変部分に含まれること。$s$ を大域切断、$\gamma$ を $x$ を基点とするループとすると、$t\mapsto s(\gamma(t))$ は $\gamma$ の持ち上げで始点が $s_x$ なので、一意性により $\tilde\gamma_{s_x}$ に等しく、$s_x\cdot[\gamma]=s(\gamma(1))=s_x$ である。
不変な元が大域切断から来ること。$v\in\mathcal{L}_x$ を不変な元とする。$y\in X$ に対し $x$ から $y$ への道 $\gamma$ をとり(弧状連結性)、$s(y):=T_\gamma(v)$ とおく。$\gamma'$ を別の道とすると $\gamma\cdot\bar{\gamma'}$ は $x$ を基点とするループで、$v=v\cdot[\gamma\cdot\bar{\gamma'}]=T_{\bar{\gamma'}}(T_\gamma(v))$、したがって $T_{\gamma'}(v)=T_\gamma(v)$ であり、$s(y)$ は道の取り方に依らない。$s$ の連続性を示す。$y\in X$ の弧状連結な開近傍 $U$ で $\pi^{-1}(U)$ がシートに分かれるものをとり(局所弧状連結性)、$s(y)$ を含むシートを $V$、$\sigma\colon U\to V$ を $\pi|_V$ の逆写像とする。$z\in U$ に対し $U$ 内の $y$ から $z$ への道 $\delta$ をとると、$t\mapsto\sigma(\delta(t))$ は $\delta$ の持ち上げで始点が $s(y)$ なので $T_\delta(s(y))=\sigma(z)$ であり、$s(z)=T_{\gamma\cdot\delta}(v)=T_\delta(T_\gamma(v))=T_\delta(s(y))=\sigma(z)$ である。よって $s|_U=\sigma$ は連続であり、$s$ は大域切断で $s_x=T_{c_x}(v)=v$ である。$\square$

直感

局所系は「各点の近傍では定数だが、大域的には捩れていてよい係数」である。定数層 $M_X$ の大域切断は $X$ が連結なら $M$ の元そのものだが、局所系では、ある点の茎の元を道に沿って運んでいくと、ループを一周したときに元の値に戻らないことがある。この「一周したときのずれ」がモノドロミーであり、thm-local-system-representation は、局所系がモノドロミー(基本群の表現)によって完全に決まることを述べている。逆に言えば、局所系とは基本群の表現を空間の上に「広げた」幾何学的対象である。
局所系の典型はパラメータ付きの族から生じる。多様体の族 $f\colon Y\to X$ のファイバーのコホモロジー $H^q(Y_x,\mathbb{Z})$ は $x$ とともに連続的に動き、$x$ を一周させると自己同型(モノドロミー)が生じる(ex-local-system-ehresmann)。また線型常微分方程式の解空間は各点の近傍では有限次元ベクトル空間だが、特異点のまわりを一周すると解が別の解に移る(prop-local-system-z-power)。この二つを層の言葉で統一するのが局所系であり、微分方程式の側から見たものが可積分接続(接続)、幾何の側から見たものがGauss–Manin接続である。

例と反例

定数層の例

$X$ を位相空間、$M$ を有限生成 $A$ 加群とすると、定数層 $M_X$ は局所系であり、$X$ が連結なら $\Gamma(X,M_X)=M$ である(局所定数関数は連結空間上では定数)。モノドロミー作用は自明であり(prf-local-system-representation の 3)、逆に thm-local-system-representation の仮定のもとでモノドロミー作用が自明な局所系は定数層と同型である。$X$ が連結でないときの大域切断は連結成分(連結成分)ごとに $M$ の元を選んだもので、たとえば $\Gamma(\mathbb{R}\setminus\{0\},\mathbb{Z})=\mathbb{Z}^2$ である。

乗法群上の冪関数の局所系

$X=\mathbb{C}^\times=\mathbb{C}\setminus\{0\}$、$a\in\mathbb{C}$ とする。開集合 $U\subset X$ に対し、$U$ 上の正則関数 $f$ で、$U$ の各点の近傍で $f=c\exp(a\,\ell)$($c\in\mathbb{C}$、$\ell$ はその近傍での対数関数 $\log z$ の分枝)と書けるものの全体を $\mathcal{L}_a(U)$ とおく。

  1. $\mathcal{L}_a$ は $\mathcal{O}_X$ の $\mathbb{C}$ 部分層であり、$\mathbb{C}$ 上の階数 $1$ の局所系である。
  2. 反時計回りの単位円 $\gamma(\theta)=e^{i\theta}$($0\le\theta\le2\pi$)の類は $\pi_1(X,1)\cong\mathbb{Z}$ の生成元であり、$\mathcal{L}_a$ のモノドロミー作用で $(\mathcal{L}_a)_1$ に $e^{2\pi ia}$ 倍として作用する。
  3. $\mathcal{L}_a\cong\mathcal{L}_b$ であることと $a-b\in\mathbb{Z}$ とは同値である。とくに $\mathcal{L}_a$ が定数層 $\mathbb{C}_X$ と同型であることと $a\in\mathbb{Z}$ は同値であり、$a\notin\mathbb{Z}$ なら $\Gamma(X,\mathcal{L}_a)=0$ である。
  1. 条件は局所的なので $\mathcal{L}_a$ は $\mathcal{O}_X$ の部分層であり、$\mathbb{C}$ 線型結合で閉じているから $\mathbb{C}$ ベクトル空間の層である。$U\subset X$ を単連結な開集合(たとえば $X$ に含まれる開円板(開円板)、または $X$ から原点を端点とする半直線を除いた領域)とし、$U$ 上の $\log z$ の分枝 $\ell$ を固定する(解析接続により存在し、$U$ 上の分枝はすべて $\ell+2\pi ik$、$k\in\mathbb{Z}$ である)。開集合 $V\subset U$ 上の局所定数関数 $c$ に $c\exp(a\ell)|_V\in\mathcal{L}_a(V)$ を対応させる射 $\mathbb{C}_U\to\mathcal{L}_a|_U$ が同型であることを示す。$f\in\mathcal{L}_a(V)$ とすると、$V$ の各点の近傍で $f=c\exp(a\ell')$、$\ell'=\ell+2\pi ik$ なので、$g:=f\exp(-a\ell)$ はその近傍で定数 $c\,e^{2\pi iak}$、すなわち $V$ 上の局所定数関数であり、$f=g\exp(a\ell)$ である。$\exp(a\ell)$ は零点をもたないので $g$ は $f$ から一意に決まる。よって $\mathcal{L}_a|_U\cong\mathbb{C}_U$ であり、単連結な開集合は $X$ の開基をなすので、$\mathcal{L}_a$ は階数 $1$ の局所系である。
  2. $\pi_1(\mathbb{C}^\times,1)\cong\mathbb{Z}$ が $[\gamma]$ で生成されることは基本群の記事の円周の基本群の定理と、$\mathbb{C}^\times$ が単位円周(単位円周)を変位レトラクト(変位レトラクト)にもつことによる。$\mathcal{L}_a$ のエタール空間は $\mathcal{O}_X$ のエタール空間(正則関数の芽の空間)の部分空間であり、道 $\gamma$ の持ち上げとは各 $\gamma(\theta)$ における芽の連続な族、すなわち芽の $\gamma$ に沿う解析接続である。$(\mathcal{L}_a)_1=\mathbb{C}\,\exp(a\ell_0)$($\ell_0$ は $\ell_0(1)=0$ なる分枝の芽)の元 $\exp(a\ell_0)$ を $\gamma$ に沿って解析接続すると、$\ell_0$ の解析接続は $\gamma(\theta)$ で値 $i\theta$ をとる分枝の芽であり、$\theta=2\pi$ で点 $1$ に戻ったときの芽は $\ell_0+2\pi i$ である。したがって $\exp(a\ell_0)$ は $e^{2\pi ia}\exp(a\ell_0)$ に移り、$T_\gamma$ は $e^{2\pi ia}$ 倍である。
  3. thm-local-system-representation により、$\mathbb{C}^\times$ 上の階数 $1$ の局所系の同型類は $\pi_1\cong\mathbb{Z}$ の $1$ 次元表現、すなわち生成元の像 $\lambda\in\mathbb{C}^\times$ で決まる。$\mathcal{L}_a$ については $\lambda=e^{2\pi ia}$ なので、$\mathcal{L}_a\cong\mathcal{L}_b$ と $a-b\in\mathbb{Z}$ とは同値である。$\mathcal{L}_0=\mathbb{C}_X$ なので定数層との同型の判定が従い、$a\notin\mathbb{Z}$ なら不変部分は $0$ で、prop-local-system-global-sections により $\Gamma(X,\mathcal{L}_a)=0$ である($z^a$ は $\mathbb{C}^\times$ 上で一価でない)。$\square$
接続との関係

$\mathcal{L}_a$ は、自明な直線束 $\mathcal{O}_X$ 上の可積分接続 $\nabla=d-a\,dz/z$ の水平切断の層 $\ker\nabla$ にほかならない($f'=af/z$ の局所解が $c\exp(a\ell)$ である)。接続の記事では、接続 $\nabla_a=d+a\,dt/t$ の水平切断の層とそのモノドロミー $e^{-2\pi ia}$ が常微分方程式の側から扱われている。本記事の $\mathcal{L}_a$ はその記事の $\nabla_{-a}$ の水平切断の層であり、どちらも平行移動(解析接続)そのものを生成元の作用としているので、モノドロミーの値は符号を込めて一致する。一般に可積分接続の水平切断の層が局所系であること、および逆の構成は thm-local-system-riemann-hilbert で述べる。

被覆空間の押し出し

$p\colon E\to X$ を $n$ 重被覆(ファイバーの濃度がすべて $n$ の被覆写像)とし、$A$ を可換環とする。順像(順像)$p_*A_E$ は $X$ 上の階数 $n$ の局所系であり、$X$ が弧状連結かつ局所弧状連結なら、$x\in X$ におけるその茎は自由加群 $A^{p^{-1}(x)}=\bigoplus_{e\in p^{-1}(x)}A\,e$ であって、モノドロミー作用は $\pi_1(X,x)$ のファイバー $p^{-1}(x)$ への作用(被覆空間の記事の定理「基本群との関係」の 3)から誘導される置換表現(置換表現)である。

$U\subset X$ を被覆近傍とし、$p^{-1}(U)=\bigcup_{i=1}^nV_i$(互いに交わらない開集合、$p|_{V_i}\colon V_i\to U$ は同相)とする。開集合 $W\subset U$ に対し $p^{-1}(W)=\bigcup_i(V_i\cap p^{-1}(W))$ は互いに交わらない開集合の和なので、
$$ (p_*A_E)(W)=A_E(p^{-1}(W))=\prod_{i=1}^nA_E(V_i\cap p^{-1}(W))\cong\prod_{i=1}^nA_U(W)=(A^n)_U(W) $$
であり($V_i\cap p^{-1}(W)\to W$ は同相なので、その上の局所定数関数は $W$ 上の局所定数関数と同一視される)、この同型は制限写像と両立する。よって $(p_*A_E)|_U\cong(A^n)_U$ であり、$p_*A_E$ は階数 $n$ の局所系である。同じ計算により $x\in U$ での茎は $\prod_i(A_E)_{\sigma_i(x)}=\bigoplus_{e\in p^{-1}(x)}A\,e$ である。ここで $\sigma_i$ は $p|_{V_i}$ の逆写像で、$e=\sigma_i(x)$ に対応する基底元は、$V_i$ 上 $1$、他の $V_j$ 上 $0$ となる切断 $\chi_i\in(p_*A_E)(U)$ の芽である。
モノドロミーを計算する。$x$ を基点とするループ $\gamma$ に対し、$0=t_0< t_1<\dots< t_m=1$ を各 $\gamma([t_{k-1},t_k])$ が被覆近傍 $U_k$ に含まれるようにとる(Lebesgue 数)。$U_k$ 上では $p_*A_E\cong(A^n)_{U_k}$ で平行移動は上の同一視のもとで恒等写像だから、$\gamma|_{[t_{k-1},t_k]}$ に沿う平行移動は、基底元 $e\in p^{-1}(\gamma(t_{k-1}))$ を、$e$ を含む $U_k$ 上のシートと $\gamma(t_k)$ の交点、すなわち $e$ を始点とする $\gamma|_{[t_{k-1},t_k]}$ の持ち上げの終点に対応する基底元に送る。$k=1,\dots,m$ について合成すると、$T_\gamma(e)$ は $e$ を始点とする $\gamma$ の持ち上げの終点 $e\cdot[\gamma]$ に対応する基底元であり、$T_\gamma$ はファイバーへの作用から誘導される置換で基底を並べ替える写像である。$\square$

族のコホモロジーの局所系

$f\colon Y\to X$ を $C^\infty$ 多様体の間の固有(固有写像)な沈め込み(沈め込み)とする。Ehresmann の定理(Voi02 Theorem 9.3)により $f$ は局所自明な $C^\infty$ ファイバー束(ファイバー束)であり、したがって各 $q$ について高次順像(高次順像)$R^qf_*\mathbb{Z}_Y$ は、$x\in X$ での茎がファイバーのコホモロジー $H^q(Y_x,\mathbb{Z})$(特異コホモロジー)である $\mathbb{Z}$ 上の局所系である(Voi02 §9.2)。実際、$f^{-1}(U)\cong U\times F$ なら $(R^qf_*\mathbb{Z})|_U$ は定数層 $H^q(F,\mathbb{Z})_U$ である。モノドロミー作用は、ループに沿ってファイバーを $C^\infty$ 同相で運ぶことから生じる $H^q(Y_x,\mathbb{Z})$ の自己同型である。
代表例は Legendre 族である。$X=\mathbb{P}^1(\mathbb{C})\setminus\{0,1,\infty\}$ 上の楕円曲線の族 $E_\lambda\colon y^2=x(x-1)(x-\lambda)$ に対し、$R^1f_*\mathbb{Z}$ は階数 $2$ の局所系で、茎は $H^1(E_\lambda,\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}^2$ である。$\lambda=0$ および $\lambda=1$ のまわりの小さなループに対する局所モノドロミーは、適当な基底で $\begin{pmatrix}1&2\\0&1\end{pmatrix}$ と表される冪単(冪単)な変換であり、モノドロミー群は $\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})$ の法 $2$ の主合同部分群 $\Gamma(2)$(の $\pm1$ による商)である(Voi02 §9.2・§10.1。Picard–Lefschetz 公式の適用)。この局所系に $\mathcal{O}_X$ をテンソルしたものが相対 de Rham コホモロジーで、その接続が Gauss–Manin 接続である。Picard–Fuchs 方程式と接続行列の計算は Gauss–Manin接続 の記事の例「Legendre 族と Picard–Fuchs 方程式」に譲る。

反例:摩天楼層

$X=\mathbb{R}$、$M\ne0$ を $A$ 加群とし、点 $0$ に台をもつ摩天楼層(摩天楼層)$\mathcal{F}=i_*M$($i\colon\{0\}\to\mathbb{R}$)を考える。$\mathcal{F}(U)$ は $0\in U$ なら $M$、そうでなければ $0$ である。茎は $\mathcal{F}_0=M$、$\mathcal{F}_y=0$($y\ne0$)である。$\mathcal{F}$ は局所定数でない。実際、点 $0$ の任意の開近傍 $U$ は $0$ 以外の点 $y$ を含み、$\mathcal{F}|_U\cong N_U$ なら $U$ 上の茎はすべて $N$ と同型でなければならないが、$\mathcal{F}_0\ne0=\mathcal{F}_y$ である。この層は「茎が跳ぶ」ことで局所定数性を破り、$\mathbb{R}$ が単連結であるにもかかわらず定数層でない(thm-local-system-representation の 3 の仮定「局所定数」は外せない)。

反例:零延長

$X=\mathbb{R}$、$U=\mathbb{R}\setminus\{0\}$、$j\colon U\to X$ を包含とし、零延長 $\mathcal{F}=j_!A_U$ を考える。$j_!A_U$ は開集合 $V\subset X$ に、$A_U(V\cap U)$ の元で台が $V$ の中で閉なものを対応させる層で、$U$ 上では $A_U$ と一致し、$0$ での茎は $0$ である。したがって $\mathcal{F}|_U$ は局所定数だが、前の例と同じ理由($\mathcal{F}_0=0\ne A=\mathcal{F}_y$、$y\ne0$)で $\mathcal{F}$ は点 $0$ で局所定数でない。局所定数性は開集合上で成り立っても閉じた点で破れうる。また $\mathcal{F}$ は定数層 $A_X$ の部分層で、短完全列 $0\to j_!A_U\to A_X\to i_*A\to0$($i\colon\{0\}\to X$)の核であるから、局所系の部分層や、局所系から局所定数でない層への射の核は局所定数とは限らない(prop-local-system-operations の 4 と比較せよ)。なお $\Gamma(X,\mathcal{F})=0$ である。$U$ 上の $0$ でない局所定数関数の台は $U$ の成分を含み、$X$ の中で閉でないからである。

反例:単連結な空間の上の局所定数でない層

単連結な空間の上の層は、局所定数でない限り定数層とは限らない。$X=\mathbb{C}$ 上の正則関数の層 $\mathcal{O}$ が局所定数なら、原点の連結な開近傍 $U$ と同型 $\mathcal{O}|_U\cong M_U$ があり、$\Gamma(U,M_U)=M\to(M_U)_0=M$ が全単射なので、制限 $\mathcal{O}(U)\to\mathcal{O}_0$ は全射でなければならない。しかし $U$ に含まれる原点中心の開円板の半径を $r$ とすると、収束半径が $r$ より小さい冪級数(冪級数)の芽は $U$ 上の正則関数に延びない。よって $\mathcal{O}$ は局所定数でない。同様に $\mathbb{R}$ 上の連続関数の層 $\mathcal{C}^0$ も局所定数でない。原点の近傍で $0$ となり他で $0$ でない連続関数が $\mathcal{C}^0(U)\to\mathcal{C}^0_0$ の単射性を破るからである(局所定数層では連結な $U$ 上でこの写像は単射である。prf-local-system-global-sections)。局所定数層の切断は「芽で決まり、芽から近傍全体に一意に延びる」という剛性をもつ。

性質

階数の局所定数性

$\mathcal{L}$ を $X$ 上の局所定数層とする。$X$ の点 $x,y$ が同じ連結成分に属せば $\mathcal{L}_x\cong\mathcal{L}_y$ である。とくに $X$ が連結なら、すべての茎は互いに同型であり、$\mathcal{L}$ が局所系なら階数は一定である。

$x\in X$ を固定し、$Z:=\{y\in X\mid\mathcal{L}_y\cong\mathcal{L}_x\}$ とおく。$y\in Z$ なら、$y$ の開近傍 $U$ で $\mathcal{L}|_U\cong M_U$ となるものをとると $U$ 上の茎はすべて $M\cong\mathcal{L}_y\cong\mathcal{L}_x$ なので $U\subset Z$ であり、$Z$ は開である。$y\notin Z$ についても同じ $U$ をとれば $U\cap Z=\emptyset$ なので $Z$ は閉である。よって $Z$ は $x$ を含む開かつ閉集合であり、$x$ の連結成分を含む。$\square$

局所系の演算

$\mathcal{L},\mathcal{L}'$ を $X$ 上の $A$ 上の局所系、$f\colon Y\to X$ を連続写像とする。

  1. 逆像(逆像)$f^{-1}\mathcal{L}$ は $Y$ 上の局所系である。$X,Y$ が thm-local-system-representation の仮定を満たし $y\in Y$、$x=f(y)$ なら、$(f^{-1}\mathcal{L})_y=\mathcal{L}_x$ であり、そのモノドロミー作用は誘導準同型 $f_*\colon\pi_1(Y,y)\to\pi_1(X,x)$ を通した作用である。
  2. テンソル積(テンソル積)$\mathcal{L}\otimes_{A_X}\mathcal{L}'$ は局所系で、茎は $\mathcal{L}_x\otimes_A\mathcal{L}'_x$、モノドロミー作用は $(v\otimes w)\cdot g=(v\cdot g)\otimes(w\cdot g)$ である。
  3. $A$ がNoether環なら、層 $\mathcal{H}om_{A_X}(\mathcal{L},\mathcal{L}')$ は局所系で、茎は $\operatorname{Hom}_A(\mathcal{L}_x,\mathcal{L}'_x)$、モノドロミー作用は $(\varphi\cdot g)(v)=\varphi(v\cdot g^{-1})\cdot g$ である。とくに双対 $\mathcal{L}^\vee:=\mathcal{H}om(\mathcal{L},A_X)$ は局所系である。
  4. $A$ が体なら、局所系の射 $\varphi\colon\mathcal{L}\to\mathcal{L}'$ の核・像・余核は局所系であり、$\mathsf{LocSys}(X,A)$ はアーベル圏である。

いずれも局所的な主張なので、$X$ の開集合 $U$ 上で $\mathcal{L}|_U\cong M_U$、$\mathcal{L}'|_U\cong N_U$($M,N$ は有限生成 $A$ 加群)としてよい。

  1. 逆像はエタール空間の底変換で与えられ(God58 II §1.12。$f^{-1}\mathcal{F}$ のエタール空間は $Y\times_XE$)、$U\times M$ の $f^{-1}(U)$ への底変換は $f^{-1}(U)\times M$ なので、lem-local-system-etale-covering の 1 により $(f^{-1}\mathcal{L})|_{f^{-1}(U)}\cong M_{f^{-1}(U)}$ であり、茎は $(f^{-1}\mathcal{L})_y=\mathcal{L}_{f(y)}$ である。$Y$ の道 $\delta$ の $Y\times_XE$ への持ち上げは $t\mapsto(\delta(t),\tilde{(f\circ\delta)}(t))$ なので、$\delta$ に沿う平行移動は $f\circ\delta$ に沿う平行移動であり、モノドロミー作用の主張が従う。
  2. $M_U\otimes_{A_U}N_U$ は前層 $V\mapsto M_U(V)\otimes_AN_U(V)$ の層化で、$x$ での茎は $M\otimes_AN$ である。自然な射 $(M\otimes_AN)_U\to M_U\otimes_{A_U}N_U$ は各茎で同型なので層の同型であり、有限生成加群のテンソル積は有限生成なので、テンソル積は局所系である。$U$ 上の同一視のもとで平行移動は $M\otimes N$ の恒等写像なので、prf-local-system-pushforward-covering と同じく道を分割して $T_\gamma(v\otimes w)=T_\gamma(v)\otimes T_\gamma(w)$ が従う。
  3. $\mathcal{H}om_{A_U}(M_U,N_U)(V)=\operatorname{Hom}_{A_V}(M_V,N_V)$ であり、$V$ が連結なら射 $M_V\to N_V$ は定数切断 $m\in M$ の像で決まる $A$ 線型写像 $M\to N$ に一対一に対応する(両立性は制限で保たれる)ので、$\mathcal{H}om(M_U,N_U)|_V\cong\operatorname{Hom}_A(M,N)_V$ である。$U$ の連結な開集合は開基をなすから $\mathcal{H}om(\mathcal{L},\mathcal{L}')$ は局所定数であり、$A$ が Noether なら $\operatorname{Hom}_A(M,N)$ は有限生成である($M$ の生成元 $m_1,\dots,m_k$ による単射 $\operatorname{Hom}_A(M,N)\to N^k$ と $N^k$ の Noether 性)。モノドロミーの式は、$U$ 上の同一視で平行移動が恒等写像であることを分割した道に沿って合成すると、$\varphi$ が $v\mapsto T_\gamma(\varphi(T_\gamma^{-1}v))$ に運ばれることによる。
  4. $A$ が体なら $M,N$ は有限次元ベクトル空間で、3 により $\varphi|_U$ は連結な $U$ 上で線型写像 $\phi\colon M\to N$ で与えられ、$\ker(\varphi|_U)=(\ker\phi)_U$、$\operatorname{im}(\varphi|_U)=(\operatorname{im}\phi)_U$、$\operatorname{coker}(\varphi|_U)=(\operatorname{coker}\phi)_U$ である(定数層からの自然な射が各茎で同型になる)。$\ker\phi$ などは有限次元なので核・像・余核は局所系であり、$\mathsf{LocSys}(X,A)$ は $A_X$ 加群の層のアーベル圏の充満部分圏で核・余核・有限直和で閉じているのでアーベル圏である。$\square$
円周上の局所系のコホモロジー

$X=S^1$、$\mathcal{L}$ を $S^1$ 上の局所系、$x\in S^1$、$T:=T_\gamma\colon\mathcal{L}_x\to\mathcal{L}_x$ を生成元 $[\gamma]\in\pi_1(S^1,x)\cong\mathbb{Z}$ による平行移動とする。層コホモロジー(層コホモロジー)について
$$ H^0(S^1,\mathcal{L})\cong\ker(T-1),\qquad H^1(S^1,\mathcal{L})\cong\operatorname{coker}(T-1)=\mathcal{L}_x/(T-1)\mathcal{L}_x,\qquad H^i(S^1,\mathcal{L})=0\ (i\ge2) $$
である。とくに $a\notin\mathbb{Z}$ なら $\mathbb{C}^\times$ 上の $\mathcal{L}_a$(prop-local-system-z-power)について $H^i(\mathbb{C}^\times,\mathcal{L}_a)=0$(すべての $i$)であり、$a\in\mathbb{Z}$ なら $H^0\cong H^1\cong\mathbb{C}$ である。

$S^1$ を二つの開弧 $U_1,U_2$ で覆い、$U_1\cap U_2$ が二つの開弧 $W_1,W_2$ の非交和になるようにする。$U_1,U_2,W_1,W_2$ は可縮(可縮空間)で局所可縮なので、局所系はそれらの上で定数層と同型であり(thm-local-system-representation の 3)、可縮な多様体上の定数層の高次コホモロジーは消える(Bre97 III §1、God58 II §5.12:パラコンパクトで局所可縮な空間の定数層のコホモロジーは特異コホモロジーと一致する)。したがって $\{U_1,U_2\}$ は $\mathcal{L}$ の Leray 被覆で、Čechコホモロジー(Čechコホモロジー)が層コホモロジーを計算する(God58 II §5.4)。Čech 複体は
$$ \mathcal{L}(U_1)\oplus\mathcal{L}(U_2)\xrightarrow{\ d\ }\mathcal{L}(W_1)\oplus\mathcal{L}(W_2),\qquad d(s_1,s_2)=(s_1|_{W_1}-s_2|_{W_1},\ s_1|_{W_2}-s_2|_{W_2}) $$
で、三重の交わりが無いので $2$ 次以上は $0$ である。$x\in W_1$、$x'\in W_2$ とし、$V:=\mathcal{L}_x$、$\alpha$ を $U_1$ 内の、$\beta$ を $U_2$ 内の $x$ から $x'$ への道とする。$U_1$、$U_2$、$W_1$、$W_2$ は連結なので、prop-local-system-global-sections により各切断はその上の一点の芽で決まり、$s\in\mathcal{L}(U_i)$、$\mathcal{L}(W_1)$ には $x$ での芽 $s_x\in V$ を、$s\in\mathcal{L}(W_2)$ には $T_{\bar\alpha}(s_{x'})\in V$ を対応させて、四つの切断の加群をすべて $V$ と同一視する。切断の芽は道に沿う平行移動で移り合う(prf-local-system-global-sections)ので、$s_1\in\mathcal{L}(U_1)$ の $W_2$ への制限は $T_{\bar\alpha}T_\alpha(s_1)=s_1$ に、$s_2\in\mathcal{L}(U_2)$ の $W_2$ への制限は $T_{\bar\alpha}T_\beta(s_2)=T_{\beta\cdot\bar\alpha}(s_2)$ に対応する。$\beta\cdot\bar\alpha$ は $S^1$ を一周するループなので、生成元 $[\gamma]$ の向きをこれに合わせれば $T_{\beta\cdot\bar\alpha}=T$ であり、$d(s_1,s_2)=(s_1-s_2,\ s_1-Ts_2)$ となる(逆向きなら $T$ を $T^{-1}$ に取り替えるだけで、$\ker(T-1)$ と $\operatorname{coker}(T-1)$ は変わらない)。核は $s_1=s_2$、$Ts_2=s_2$ なので $\ker(T-1)$ である。余核を求める。$(u,w)\in V\oplus V$ に対し $s_2:=s_1-u$ とおくと $d(s_1,s_2)=(u,\ s_1-Ts_1+Tu)$ であり、$s_1$ を動かすと第 2 成分は $Tu+(1-T)V$ の全体を動く。よって余核は $V/(T-1)V$ に同型で、同型は $(u,w)\mapsto w-Tu$ で与えられる。$\mathbb{C}^\times$ は $S^1$ を変位レトラクトにもち、$\mathcal{L}_a$ は $S^1$ への制限のレトラクションによる逆像と同型なので(thm-local-system-representation によりモノドロミーが等しい局所系は同型)、ホモトピー不変性(Bre97 II §11)により $H^i(\mathbb{C}^\times,\mathcal{L}_a)\cong H^i(S^1,\mathcal{L}_a|_{S^1})$ であり、$T=e^{2\pi ia}$ なので主張が従う。$\square$

局所系係数のコホモロジー

局所系 $\mathcal{L}$ を係数とするコホモロジー $H^i(X,\mathcal{L})$ は層コホモロジーとして定義される。$X$ がパラコンパクト(パラコンパクト空間)で局所可縮なら、これは表現 $\mathcal{L}_x$ を局所係数とする特異コホモロジー $H^i(X;\mathcal{L}_x)$(Hat02 §3.H)と一致する(Bre97 III §1)。$X$ が有限 CW 複体で $A$ が体なら、局所係数の胞体鎖複体の $k$ 次の項は $k$ 胞体ごとの茎の直和なので、Euler 標数(Euler標数)は $\chi(X,\mathcal{L})=\operatorname{rank}(\mathcal{L})\cdot\chi(X)$ である。$X$ が Eilenberg–MacLane 空間 $K(\pi,1)$(Eilenberg–MacLane空間。$S^1$、種数 $\ge1$ の閉曲面、$\mathbb{C}^\times$ など)なら $H^i(X,\mathcal{L})$ は群コホモロジー(群コホモロジー)$H^i(\pi,\mathcal{L}_x)$ と一致し、prop-local-system-circle-cohomology は $\pi=\mathbb{Z}$ の場合である。族 $f\colon Y\to X$ については Leray スペクトル系列(Lerayスペクトル系列)$E_2^{p,q}=H^p(X,R^qf_*A)\Rightarrow H^{p+q}(Y,A)$ があり、$f$ が固有な沈め込みなら $E_2$ 項は ex-local-system-ehresmann の局所系を係数とするコホモロジーである。

局所系と可積分接続(Riemann–Hilbert対応)

$X$ を連結な $C^\infty$ 多様体($\mathbb{K}=\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$)または連結な複素多様体($\mathbb{K}=\mathbb{C}$)とする。

  1. 可積分接続をもつ($C^\infty$ または正則)ベクトル束 $(\mathcal{E},\nabla)$ に対し、水平切断の層 $\mathcal{E}^\nabla=\ker\nabla$ は $\mathbb{K}$ 上の有限階数の局所系であり、$\mathcal{O}\otimes_{\mathbb{K}}\mathcal{E}^\nabla\to\mathcal{E}$ は同型である。逆に $\mathbb{K}$ 上の局所系 $\mathcal{L}$ に対し $(\mathcal{O}\otimes_{\mathbb{K}}\mathcal{L},\ d\otimes\mathrm{id})$ は可積分接続をもつベクトル束である。この二つの対応は互いに準逆で、可積分接続をもつベクトル束の圏と $\mathbb{K}$ 上の有限階数の局所系の圏の圏同値を与える。
  2. 対応する局所系 $\mathcal{L}=\mathcal{E}^\nabla$ について、$\mathcal{L}$ を係数とするコホモロジーは接続付き de Rham 複体の超コホモロジー(超コホモロジー)に同型である:$H^i(X,\mathcal{L})\cong\mathbb{H}^i(X,\Omega^\bullet_X\otimes\mathcal{E})$。
Riemann–Hilbert対応の出典

1 の証明は接続の記事(定理「可積分接続の局所水平枠」と「可積分接続と局所系の対応」)に譲る。要点は、可積分性のもとで各点の近傍に水平な枠が存在すること(線型常微分方程式の解の存在と一意性、Del70 I §2)であり、これにより $\mathcal{E}^\nabla$ は局所的に $\mathbb{K}^r$ の定数層になる。2 は、$\Omega^\bullet\otimes\mathcal{E}$ が $\mathcal{L}$ の分解であり(Poincaré の補題の接続付きの形、Del70 I §2、Voi02 §9.2)、$\Omega^p\otimes\mathcal{E}$ が $C^\infty$ の場合は細層、正則の場合は Stein 開集合上で非輪状であることから従う。prop-local-system-z-power の $\mathcal{L}_a$ はこの対応で接続 $d-a\,dz/z$ に対応する(rem-local-system-z-power-connection)。複素代数多様体の上では、代数的な可積分接続と局所系の対応は無限遠での正則特異点(正則特異点)の条件のもとで成り立ち(Del70 II)、これを D 加群(D加群)に拡張したものが Kashiwara と Mebkhout のRiemann–Hilbert対応である。また ex-local-system-ehresmann の $R^qf_*\mathbb{Z}$ は各茎に Hodge 構造(Hodge構造)をもつ局所系(Hodge 構造の変動)であり、Hodge 理論(Hodge理論)における局所系の源である。

エタール局所系

$X$ を連結なスキーム、$\bar{x}$ をその幾何学的点(幾何学的点)、$\pi_1(X,\bar{x})$ をエタール基本群(エタール基本群)とする。

  1. エタール位相(エタール位相)における局所定数で茎が有限な層(局所定数構成可能層)の圏は、$\pi_1(X,\bar{x})$ が連続に作用する有限集合($A$ 加群の層なら有限 $A$ 加群)の圏と、$\mathcal{F}\mapsto\mathcal{F}_{\bar{x}}$ により圏同値である。
  2. 素数 $\ell$ に対し、$X$ 上の lisse な $\mathbb{Z}_\ell$ 層(各 $n$ について局所定数な $\mathbb{Z}/\ell^n\mathbb{Z}$ 加群の層 $\mathcal{F}_n$ の射影系で $\mathcal{F}_{n+1}\otimes\mathbb{Z}/\ell^n\cong\mathcal{F}_n$ を満たすもの)の圏は、有限生成 $\mathbb{Z}_\ell$ 加群への $\pi_1(X,\bar{x})$ の連続表現の圏と圏同値である。
エタール局所系の出典

1 は thm-local-system-representation のエタール位相版であり、局所定数な層が有限エタール被覆の表現する層であること、有限エタール被覆の圏が $\pi_1(X,\bar{x})$ 集合の圏と同値であること(Grothendieck の Galois 理論、Galois圏)から従う。証明は Mil80 V §1 に譲る。2 は 1 を射影系に適用したもので、ℓ進コホモロジーの係数として用いられる。$X$ が $\mathbb{C}$ 上有限型なら、有限な茎をもつエタール局所系は解析空間 $X^{\mathrm{an}}$ 上の有限な茎をもつ局所系と同じものである(比較定理、Mil80 III §3、エタールコホモロジー)。

関連項目

参考文献

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Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, §1.3(被覆空間の分類、被覆の圏と基本群が作用する集合)、§3.H(局所係数のコホモロジー)
[2]
Pierre Deligne, Équations différentielles à points singuliers réguliers, Springer, 1970, I §1(局所系と基本群の表現)、I §2(可積分接続と局所系、接続付き de Rham 複体)、II(正則特異点と代数的 Riemann–Hilbert 対応)
[3]
Glen E. Bredon, Sheaf Theory, Springer, 1997, I §1–§2(層とエタール空間)、II §11(ホモトピー不変性)、III §1(層コホモロジーと特異コホモロジーの比較)
[4]
Roger Godement, Topologie algébrique et théorie des faisceaux, Hermann, 1958, II §1.2(層とエタール空間の圏同値)、II §1.12(逆像)、II §5.4(Leray 被覆と Čech コホモロジー)、II §5.12(定数層のコホモロジーと特異コホモロジー)
[5]
Claire Voisin, Hodge Theory and Complex Algebraic Geometry I, Cambridge University Press, 2002, Theorem 9.3(Ehresmann の定理)、§9.2(族のコホモロジーの局所系、Gauss–Manin 接続、係数付き de Rham 複体)、§10.1(Legendre 族のモノドロミー)
[6]
James S. Milne, Étale Cohomology, Princeton University Press, 1980, III §3(比較定理)、V §1(局所定数層と基本群の有限集合)

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