Pila–Wilkieの定理

同義語:Pila-Wilkieの定理ピラ–ウィルキーの定理Pila–Wilkieの数え上げ定理Pila–Wilkie theoremPila–Wilkie counting theorem

概要

Pila–Wilkieの定理(Pila–Wilkie theorem)とは、実数体の o-極小な拡大で定義可能な集合 $X\subset\mathbb R^n$ から、連結で無限な半代数的部分集合をすべて除いた超越的な部分 $X^{\mathrm{tr}}$ について、高さ $T$ 以下の有理点の個数が、任意の $\varepsilon>0$ に対し $cT^{\varepsilon}$ 以下になる、という数え上げの定理である。線分 $[0,1]\times\{0\}$ には高さ $T$ 以下の有理点が $T$ 個以上あるので代数的な部分は除く必要があり、整数の集合の例から o-極小性も外せない。証明の中心は、有理点で作った行列式は $0$ でなければ下から抑えられ、近い点では小さくなるので $0$ になり、点が少数の超曲面に乗るという行列式による方法である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: o-極小構造, 半代数的集合, 有理数, 行列式

Pila–Wilkie の定理(Pila–Wilkie theorem、数え上げ定理)は、実数体の o-極小な拡大で定義できる集合 $X\subset\mathbb R^n$ の上にある有理点の個数を、高さで測って評価する定理である。$X$ から、線分や放物線の弧のような「代数的な部分」を取り除いた残りの部分には、高さ $T$ 以下の有理点が、どんな $\varepsilon>0$ についても $cT^\varepsilon$ 個以下しかない。線分 $[0,1]\times\{0\}$ の上には高さ $T$ 以下の有理点が $T$ 個以上あるので、代数的な部分を除くことは欠かせない。
o-極小性(o-極小構造)は、指数関数や制限された解析関数で書ける集合の幾何を、半代数的集合と同じように扱えるようにする条件である。Pila–Wilkie の定理はその有限性を数論の数え上げに結びつけ、数論幾何学の問題に応用されてきた。この記事では、定理を正確に述べ、仮定が外せないことを例で確かめ、証明の中心にある「行列式による方法」の補題を証明する。定理の全体の証明はこの記事では与えない。

定義

既約分数 $a/b$($a,b\in\mathbb Z$、$b\ne0$、$a,b$ は互いに素)の 高さ を $H(a/b):=\max(\lvert a\rvert,\lvert b\rvert)$ と定める。$H(0)=H(\pm1)=1$ であり、$H(q)=H(-q)$、$q\ne0$ なら $H(q^{-1})=H(q)$ である。点 $a=(a_1,\dots,a_n)\in\mathbb Q^n$ の高さは $H(a):=\max_iH(a_i)$ とする。$\log H(a/b)$ は有理数 $a/b$ の Weil高さ にあたる。
$X\subset\mathbb R^n$ と実数 $T\ge1$ について
$$ X(\mathbb Q,T):=\{a\in X\cap\mathbb Q^n\mid H(a)\le T\},\qquad N(X,T):=\#X(\mathbb Q,T) $$
とおく。分母も分子の絶対値も $T$ 以下なので、$X(\mathbb Q,T)$ は有限集合である。

代数的な部分と超越的な部分

$X\subset\mathbb R^n$ の 代数的な部分 $X^{\mathrm{alg}}$ とは、$X$ に含まれる連結で無限な 半代数的集合 すべての和集合である。$X^{\mathrm{tr}}:=X\setminus X^{\mathrm{alg}}$ を $X$ の 超越的な部分 という。

連結性は $\mathbb R^n$ の通常の位相による。$X$ の内点は小さな開球に含まれ、開球は連結で無限な半代数的集合なので、$X^{\mathrm{alg}}$ は $X$ の内部を含む。この定義は BvdD22 p. 2 による。

区間の有理点の数

$T\ge1$ について、$[0,1]$ の有理数で高さが $T$ 以下のものの個数は、$\lfloor T\rfloor+1$ 以上 $(\lfloor T\rfloor+1)^2$ 以下である。

$q\in[0,1]\cap\mathbb Q$ を既約分数 $a/b$($b\ge1$)で書くと $0\le a\le b$ なので $H(q)=b$ である。$H(q)\le T$ なら $0\le a\le b\le\lfloor T\rfloor$ であり、このような組 $(a,b)$ は $(\lfloor T\rfloor+1)^2$ 個以下なので上の評価が出る。一方 $0$ と $1/b$($b=1,\dots,\lfloor T\rfloor$)は相異なり、高さはそれぞれ $1$ と $b\le T$ なので、下の評価が出る。$\square$

主定理

実数体 $(\mathbb R,+,\cdot,<)$ に関数や関係を加えた構造で o-極小なものを、実数体の o-極小な拡大 という(o-極小構造 の定義「o-極小構造」)。例として、実数体そのもの(定義可能集合は半代数的集合)、制限された解析関数を加えた $\mathbb R_{\mathrm{an}}$、指数関数を加えた $\mathbb R_{\exp}$ がある(o-極小構造 の例「制限された解析関数と指数関数」)。

Pila–Wilkie の定理

$n\ge1$ とし、$X\subset\mathbb R^n$ が実数体のある o-極小な拡大で(パラメータ付きで)定義可能であるとする。このとき任意の $\varepsilon>0$ について、定数 $c=c(X,\varepsilon)$ があって、すべての $T\ge1$ で
$$ N(X^{\mathrm{tr}},T)\le cT^{\varepsilon} $$
が成り立つ。

出典

この記事では証明しない。BvdD22 Theorem 1.1(p. 2)がこの形で述べ、Pila と Wilkie の原論文に沿った完全な証明を与えている。同論文には、定義可能な族 $(X(s))_{s\in E}$ のすべての $X(s)$ について同じ定数 $c$ がとれるという族の形(Theorem 2.4、p. 5)と、$X^{\mathrm{alg}}$ 全体ではなくその定義可能な部分集合 $V$ を除けば足りるという強い形(Theorem 2.5、p. 6)もある。

右辺の $T^\varepsilon$ は、$T$ のどんな正の冪よりもゆっくり増えることを表す。比較のため、prop-pw-interval により $[0,1]$ には高さ $T$ 以下の有理点が $T$ 程度から $T^2$ 程度まであり、$[0,1]^n$ 全体では $T^{2n}$ 程度以下である。定理は、$X$ が o-極小な構造で定義できて代数的な部分を除けば、この個数がほとんど増えないことを主張している。

例

線分:代数的な部分

$X:=[0,1]\times\{0\}\subset\mathbb R^2$ は連結で無限な半代数的集合なので $X^{\mathrm{alg}}=X$、$X^{\mathrm{tr}}=\emptyset$ である。一方 prop-pw-interval により $N(X,T)\ge\lfloor T\rfloor+1\ge T$ であり、$\varepsilon<1$ では $N(X,T)\le cT^\varepsilon$ はどんな $c$ でも成り立たない。thm-pw-main で $X$ を $X^{\mathrm{tr}}$ に替えることは欠かせない。

指数関数のグラフ

$X:=\{(x,2^x)\mid x\ge0\}\subset\mathbb R^2$ について、次が成り立つ。

  1. $X$ は $\mathbb R_{\exp}$ で定義可能である。
  2. $X^{\mathrm{alg}}=\emptyset$、すなわち $X^{\mathrm{tr}}=X$ である。
  3. $X\cap\mathbb Q^2=\{(m,2^m)\mid m=0,1,2,\dots\}$ であり、$N(X,T)=\lfloor\log_2T\rfloor+1$ である。

1:$2^x=\exp(x\log2)$ なので、$X$ はパラメータ $\log2$ を使う論理式 $x\ge0\land y=\exp(x\cdot\log2)$ で定義される。
3:$x=a/b$($a\ge0$、$b\ge1$ は互いに素)で $2^{a/b}=r/s$($r,s\ge1$ は互いに素)とすると $2^as^b=r^b$ である。素数 $p$ が $s$ を割れば $p\mid r^b$ から $p\mid r$ となり $r,s$ が互いに素なことに反するので $s=1$、$r^b=2^a$ である。よって $r=2^j$ と書け、$jb=a$ となり、$a,b$ が互いに素なので $b=1$ である。ゆえに有理点は $(m,2^m)$($m\ge0$ は整数)に限り、その高さは $\max(m,2^m)=2^m$ である。$2^m\le T$ となる $m\ge0$ は $\lfloor\log_2T\rfloor+1$ 個ある。
2:$C\subset X$ が連結で無限な半代数的集合だとする。第 1 座標への射影 $\pi$ は $X$ の上で単射なので、$\pi(C)$ は無限で、連結集合の連続像として連結であり、Tarski–Seidenbergの定理 により半代数的である。$\mathbb R$ の連結集合は区間なので、$\pi(C)$ は開区間 $I$ を含む。$C\cap(I\times\mathbb R)$ は関数 $x\mapsto2^x$($x\in I$)のグラフで、半代数的である。半代数的集合 の系「半代数的関数は代数的な関係を満たす」により、零でない多項式 $F(x,y)=\sum_{k=0}^da_k(x)y^k$ で、$x\in I$ について $F(x,2^x)=0$ となるものがある。整関数 $G(z):=\sum_ka_k(z)e^{kz\log2}$ は $I$ の上で $0$ なので、一致の定理 の定理「平面の領域上の一致の定理」により複素平面全体で $0$ であり、とくにすべての実数 $x$ で $F(x,2^x)=0$ となる。$a_k\ne0$ となる最大の $k$ を $k_0$ とし、両辺を $2^{k_0x}$ で割ると $a_{k_0}(x)=-\sum_{k< k_0}a_k(x)2^{-(k_0-k)x}$ であり、$x\to+\infty$ で右辺は $0$ に収束するが、左辺は零でない多項式なので $0$ に収束しない。これは矛盾である。$\square$

この $X$ では $N(X^{\mathrm{tr}},T)=\lfloor\log_2T\rfloor+1$ は $T$ とともに限りなく大きくなるが、どの $\varepsilon>0$ についても $T^\varepsilon$ よりゆっくり増え、thm-pw-main と矛盾しない。同時に、$\varepsilon=0$($T$ によらない定数での評価)には強められないことも分かる。

整数の集合:o-極小でない場合

$\mathbb Z\subset\mathbb R$ の連結な部分集合は 1 点か空なので、$\mathbb Z^{\mathrm{alg}}=\emptyset$、$\mathbb Z^{\mathrm{tr}}=\mathbb Z$ である。整数 $m$ の高さは $\max(\lvert m\rvert,1)$ なので $N(\mathbb Z,T)=2\lfloor T\rfloor+1\ge T$ であり、$\varepsilon<1$ で thm-pw-main の評価は成り立たない。$\mathbb Z$ はどの o-極小な構造でも定義できない(o-極小構造 の例「反例:整数を加えた構造」)ので、定理と矛盾はしない。実数体に $\mathbb R$ 全体の正弦関数を加えた構造では、$\sin(\pi x)=0$ で $\mathbb Z$ が定義できるので、o-極小性の仮定は外せない。

代数的な部分が複雑になる例もある。$X:=\{(a,b,a^b)\mid1< a,b< 2\}$ は $\mathbb R_{\exp}$ で定義可能で、$X^{\mathrm{alg}}$ は有理数 $q\in(1,2)$ ごとの曲線 $\{(a,q,a^q)\}$ の和集合になる(BvdD22 p. 2 の例、証明は p. 36)。この $X$ では $X^{\mathrm{tr}}$ に有理点がなく、定理は自明に成り立つ。応用では、$X^{\mathrm{alg}}$ を役に立つ形で記述することが要点になる(同 p. 2)。

証明の仕組み

BvdD22 の証明は 2 つの道具を組み合わせ、次元 $n$ についての帰納法で進む(§2、pp. 3–6)。1 つは、なめらかに媒介変数表示された集合の有理点が少数の超曲面に乗るという評価(Theorem 1.2、p. 3。同論文 p. 2 によれば本質的に Pila と Bombieri による)、もう 1 つは、定義可能な集合を導関数の小さい有限個の写像の像に分ける o-極小な媒介変数表示定理(Theorem 1.3、p. 3。Yomdin と Gromov の半代数的な場合の考えを o-極小に広げたもの)である。超曲面との共通部分は次元が下がるので、帰納法の仮定に回せる。ここでは前者の中心にある 行列式による方法 を説明する。
$e\ge0$ について、次数 $e$ 以下の $n$ 変数単項式 $x^\alpha=x_1^{\alpha_1}\cdots x_n^{\alpha_n}$($\lvert\alpha\rvert:=\alpha_1+\cdots+\alpha_n\le e$)の個数を $D=D(n,e)=\binom{e+n}n$ とする。体 $k$ の上で、$k^n$ の 次数 $e$ 以下の超曲面 とは、次数 $e$ 以下の零でない多項式の零点集合をいう。点 $a_1,\dots,a_D\in k^n$ について、$(i,\alpha)$ 成分が $a_i^\alpha$ の $D$ 次正方行列の行列式を $\Delta(a_1,\dots,a_D)$ と書く(列の並べ方は 1 つ固定する)。

超曲面に乗るための行列式の条件

$S\subset k^n$ が次数 $e$ 以下のある超曲面に含まれることと、すべての $a_1,\dots,a_D\in S$ について $\Delta(a_1,\dots,a_D)=0$ となることは同値である。

$a\in k^n$ に $v(a):=(a^\alpha)_{\lvert\alpha\rvert\le e}\in k^D$ を対応させる。次数 $e$ 以下の多項式 $P=\sum_\alpha c_\alpha x^\alpha$ について、$P(a)=0$ は $v(a)$ と $c=(c_\alpha)$ の成分ごとの積の和が $0$ になることである。
$S$ が零でない $P$ の零点集合に含まれるなら、$a_1,\dots,a_D\in S$ について $v(a_1),\dots,v(a_D)$ はどれも $0$ でない $c$ との積和が $0$ になるので、$\{y\in k^D\mid\sum c_\alpha y_\alpha=0\}$ という $D-1$ 次元の部分空間に含まれ、1 次従属である。よって $\Delta=0$ である。
逆に、すべての $\Delta$ が $0$ だとする。$v(S)$ が張る部分空間 $W$ が $k^D$ 全体なら、$v(S)$ から基底をなす $D$ 個 $v(a_1),\dots,v(a_D)$ を選べ、$\Delta(a_1,\dots,a_D)\ne0$ となって矛盾する。よって $\dim W< D$ であり、$W$ の上で $0$ になる零でない線形形式 $y\mapsto\sum_\alpha c_\alpha y_\alpha$ がある。$P:=\sum_\alpha c_\alpha x^\alpha$ は次数 $e$ 以下の零でない多項式で、$S$ の上で $0$ である。$\square$

有理点の行列式の分母

$t\ge1$ とし、$b_1,\dots,b_D\in\mathbb Q^n$ の高さがすべて $t$ 以下ならば、$s\Delta(b_1,\dots,b_D)\in\mathbb Z$ となる整数 $1\le s\le t^{neD}$ がある。とくに $\Delta(b_1,\dots,b_D)\ne0$ なら $\lvert\Delta(b_1,\dots,b_D)\rvert\ge t^{-neD}$ である。

$b_i=(b_{i1},\dots,b_{in})$ の各成分を既約分数 $c_{ij}/s_{ij}$($1\le s_{ij}$)で書くと、高さの定義から $s_{ij}\le t$ である。$s_i:=\prod_js_{ij}^{\,e}$ とおくと、$\lvert\alpha\rvert\le e$ では各 $\alpha_j\le e$ なので $s_ib_i^\alpha=\prod_jc_{ij}^{\alpha_j}s_{ij}^{\,e-\alpha_j}\in\mathbb Z$ である。行列の第 $i$ 行を $s_i$ 倍すると整数の行列になるので、$s:=s_1\cdots s_D$ について $s\Delta\in\mathbb Z$ であり、$s\le(t^{ne})^D$ である。$\Delta\ne0$ なら $\lvert s\Delta\rvert\ge1$ から後半が従う。$\square$

lem-pw-integral は、有理点だけで作った行列式が $0$ でなければ、ある大きさ以上になることを述べる。一方、近い点を並べた行列式はなめらかさから小さくなる。この 2 つが両立しないので行列式は $0$ になり、lem-pw-det により点が超曲面に乗る。これを正確に述べるため、BvdD22 にならい、$m< n$ と $k\ge1$ について、$C^k$ 級の写像 $f\colon(0,1)^m\to\mathbb R^n$ で像が $X$ に等しく、$\lvert\beta\rvert\le k$ のすべての偏導関数が $\lvert f^{(\beta)}(a)\rvert\le1$($\lvert\cdot\rvert$ は成分の絶対値の最大)を満たすものを、$X$ の 強い $k$-媒介変数表示 という(同 p. 2)。

有理点を覆う超曲面の個数

$e,m,n\ge1$、$m< n$ とする。正の整数 $k,B$ と定数 $K\ge1$(いずれも $m,n,e$ だけで決まる)で、次を満たすものがあるとする:$f$ が強い $k$-媒介変数表示、$0< r\le1$、$a_0,a_1,\dots,a_D\in(0,1)^m$ が $\lvert a_i-a_0\rvert\le r$($i\ge1$)を満たせば、$\lvert\Delta(f(a_1),\dots,f(a_D))\rvert< Kr^B$。このとき、強い $k$-媒介変数表示をもつ $X\subset\mathbb R^n$ と $T\ge1$ について、$X(\mathbb Q,T)$ は次数 $e$ 以下の超曲面 $2^mK^{m/B}T^{\varepsilon}$ 個以下で覆える。ここで $\varepsilon:=mneD/B$ である。

$r:=(K^{-1}T^{-neD})^{1/B}$ とおくと $0< r\le1$ で、$Kr^B=T^{-neD}$ である。$N_r:=\lceil1/r\rceil$ とおくと $N_r\le1/r+1\le2/r$ である。$(0,1)^m$ は、$j_1,\dots,j_m\in\{0,\dots,N_r-1\}$ についての $N_r^{\,m}\le2^mr^{-m}$ 個の立方体 $\prod_i[j_ir,(j_i+1)r]$ で覆える。$(0,1)^m$ と交わる立方体 $U$ ごとに点 $a_0\in U\cap(0,1)^m$ を 1 つとると、$U$ の点 $a$ は $\lvert a-a_0\rvert\le r$ を満たす。
そのような $U$ ごとに $S_U:=f(U\cap(0,1)^m)\cap X(\mathbb Q,T)$ とおく。$S_U$ の点 $b_1,\dots,b_D$ をとり、$b_i=f(a_i)$、$a_i\in U\cap(0,1)^m$ とすると、仮定から $\lvert\Delta(b_1,\dots,b_D)\rvert< T^{-neD}$ である。一方 lem-pw-integral により、$\Delta\ne0$ なら $\lvert\Delta\rvert\ge T^{-neD}$ である。よって $\Delta=0$ であり、lem-pw-det により $S_U$ は次数 $e$ 以下の超曲面 1 つに含まれる。$X(\mathbb Q,T)$ は $S_U$ の和なので、$2^mr^{-m}=2^mK^{m/B}T^{mneD/B}$ 個以下の超曲面で覆える。$\square$

仮定の評価は BvdD22 Proposition 3.4(p. 9)で、$f$ の Taylor 展開(Taylorの定理)と、多項式から作った行列の階数の評価により証明されている(この記事では証明しない)。そこでは $k$ と $B$ が具体的に与えられ、$m< n$ のとき $e\to\infty$ で $\varepsilon\to0$ となる(同 Lemma 3.2 の (3)、p. 8)。この結論は同論文の Theorem 3.6(p. 11)と同じ形である(定数の $2^m$ は、ここでの覆い方による)。$e$ を大きくとれば超曲面の個数が $T$ の小さな冪で済むことが、thm-pw-main の $T^\varepsilon$ の出どころである。

反例:条件を外すと成り立たない

外す条件反例成り立たなくなること
thm-pw-main の「$X^{\mathrm{tr}}$ だけを数える」($X$ 全体を数える)$X=[0,1]\times\{0\}$$N(X,T)\le cT^\varepsilon$($\varepsilon<1$)
thm-pw-main の「o-極小な拡大で定義可能」$\mathbb Z\subset\mathbb R$($\mathbb R$ 全体の正弦関数を加えた構造で定義可能)$N(X^{\mathrm{tr}},T)\le cT^\varepsilon$($\varepsilon<1$)
thm-pw-main の「$\varepsilon>0$」($\varepsilon=0$ にする)$\{(x,2^x)\mid x\ge0\}$$N(X^{\mathrm{tr}},T)$ が $T$ によらない定数で抑えられること

各行の確かめは、1 行目が ex-pw-segment、2 行目が ex-pw-integers、3 行目が prop-pw-exp である。

関連項目

参考文献

[1]
Neer Bhardwaj, Lou van den Dries, On the Pila-Wilkie theorem, Expositiones Mathematicae, 2022, arXiv:2010.14046v3(2022-02-25)の頁:高さ・X^alg の定義と例 X={(a,b,a^b)}、強い k-媒介変数表示の定義、Theorem 1.1 p. 2、Theorem 1.2・1.3 p. 3、§2(Theorem 2.4 p. 5、Theorem 2.5 p. 6)、Lemma 3.1 p. 7、Lemma 3.2 p. 8、Proposition 3.4 p. 9、Lemma 3.5・Theorem 3.6 p. 11、付録 A の X^alg の決定 p. 36

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する