層別ホモトピー仮説(stratified homotopy hypothesis)とは、半順序集合 $P$ による層別空間のホモトピー論が、$P$ への保守的な関手をもつ∞圏のホモトピー論と、出口道の∞圏をとる関手によって同値になるという主張である。層別が自明なら Grothendieck のホモトピー仮説になる。関手が保守的であることは各層のファイバーが∞亜群であることと同値で、こうした∞圏は層とリンクのデータで決まる。Ayala–Francis–Rozenblyum は円錐的に滑らかな層別空間で出口道の∞圏をとる関手の充満忠実性を示し、Haine は層とリンクでの弱同値を逆にしたホモトピー論について同値を証明した。
層別ホモトピー仮説(stratified homotopy hypothesis)は、半順序集合 $P$ による層別空間のホモトピー論が、$P$ への保守的な関手をもつ∞圏のホモトピー論と同値であるという主張である。同値は、層別空間にその出口道の∞圏を対応させる関手で与えられる。層別が自明なとき($P$ が 1 点のとき)は、位相空間のホモトピー論と∞亜群(Kan複体)のホモトピー論が同値であるという Grothendieck のホモトピー仮説になる。これは、幾何学的実現と特異単体的集合の随伴が位相空間と単体的集合のモデル構造の Quillen 同値を与えるという Quillen の定理として定式化されることが多い(Waa25 p. 1 の Theorem HH)。層別ホモトピー仮説はその層別版である。
Ayala–Francis–Rozenblyum は、円錐的に滑らかな層別空間について出口道の∞圏をとる関手が充満忠実であることを証明し、本質的な像を予想した。Haine は、層とリンクでの弱ホモトピー同値を逆にした $P$-層別空間のホモトピー論が、$P$ への保守的な関手をもつ∞圏のなす∞圏 $\operatorname{Str}_P$ と同値であることを証明し、この予想を肯定的に解いた(Hai23 の要旨、p. 1)。
この記事では、$\operatorname{Str}_P$ を定義し、保守的であることが「各層のファイバーが∞亜群であること」と同値であることを証明する。次に Haine の定理と、$\operatorname{Str}_P$ を層とリンクのデータで表すデコラージュの定理を所在付きで述べる。主定理として、$P=[1]$ で 1-圏の水準に切り詰めた場合を完全に証明する。すなわち、$[1]$ への保守的な関手をもつ圏は、2 つの亜群とその間の「リンク」の組と同じものである。最後に、層ごとには同値でもリンクが違うために同値にならない層別写像の例を示す。
半順序集合 $P$ をその脈体 $N(P)$ と同一視する。$N(P)$ の単体は $P$ の鎖 $p_0\le\dots\le p_n$ であり、単体は頂点で決まる。$N(P)$ の同値な射は恒等射だけである。
∞圏 $C$ と関手 $\pi\colon C\to N(P)$ の組で、$\pi$ が保守的($C$ の射 $f$ が同値であることと $\pi(f)$ が同値であることが同値)であるものを、抽象的な $P$-層別ホモトピー型という。これらと $P$ の上の関手のなす∞圏を $\operatorname{Str}_P$ と書く。$p\in P$ について、ファイバー $C_p:=C\times_{N(P)}\{p\}$ を $C$ の層という。
これは Hai23 Definition 1.1.1(p. 7)であり、$\operatorname{Str}_P$ は $P$ の上の∞圏の∞圏 $\operatorname{Cat}_{\infty,/P}$ の充満部分∞圏である。層別空間 $X$ が円錐的なら、出口道の単体的集合 $\operatorname{Sing}^P(X)$ は∞圏で、その同値な射はちょうど 1 つの層に含まれる道である(出口道の∞圏の定理「Lurie の定理」)。$N(P)$ への射影は層の中の道を恒等射に写すので、$\operatorname{Sing}^P(X)$ は $\operatorname{Str}_P$ の対象である。その層 $\operatorname{Sing}^P(X)_p$ は、層 $X_p$ の特異単体的集合 $\operatorname{Sing}(X_p)$ に同型である(Hai23 1.2.7、p. 10)。
$C$ を∞圏、$\pi\colon C\to N(P)$ を単体的集合の写像とする。
要点:$N(P)$ の単体は頂点で決まるので、頂点がすべて $p$ の上にある単体は自動的にファイバーに入る。あとは「ホモトピー圏が亜群である∞圏は Kan 複体」という Joyal の定理を使う。
1:$C$ の単体 $\sigma$ の頂点がすべて $p$ に写るなら、$\pi(\sigma)$ は頂点がすべて $p$ の $N(P)$ の単体で、それは $p$ の退化単体しかない。よって $\sigma\in C_p$ であり、$C_p$ は充満な単体的部分集合である。内部ホーン $\Lambda^n_i\to C_p$($0< i< n$)を $C$ の中で $\Delta^n$ に延ばすと、延長の頂点はホーンの頂点と同じなので、延長は $C_p$ に入る。よって $C_p$ は∞圏であり、そのホモトピー圏 $hC_p$ は $hC$ の充満部分圏である。
2:$\pi$ が保守的とする。$C_p$ の射 $f$ は $\pi(f)=\mathrm{id}_p$ を満たすので $C$ の同値であり、$hC$ で逆射 $g$ をもつ。$g$ の始点と終点は $p$ の上にあるので、$hC_p$ が充満部分圏であることから $g$ は $hC_p$ の射で、$f$ の逆である。よって $hC_p$ は亜群であり、HTT09 Proposition 1.2.5.1(p. 35)により $C_p$ は Kan 複体である。逆に各 $C_p$ が Kan 複体とする。$C$ の射 $f\colon x\to y$ で $\pi(f)$ が同値、すなわち恒等射 $\mathrm{id}_p$ であるものをとる。1 により $f$ は $C_p$ の射であり、同じ命題により $hC_p$ は亜群なので $f$ は $hC_p\subset hC$ で可逆、すなわち $C$ の同値である。$\pi(f)$ が同値でなければ $f$ も同値でない(関手は同値を同値に写す)ので、$\pi$ は保守的である。$\square$
したがって、抽象的な $P$-層別ホモトピー型とは、「各層が∞亜群(空間)で、層の間に低い層から高い層への射だけがある∞圏」である。層が空間であることは、層別空間の各層が位相空間であることに対応する。
$P$ の空でない有限な鎖の全体を包含で順序づけた半順序集合を $\operatorname{sd}(P)$ と書く。鎖 $\Sigma$ は包含 $\Sigma\to P$ によって $\operatorname{Str}_P$ の対象になる。
関手 $F\colon\operatorname{sd}(P)^{\mathrm{op}}\to\mathcal S$($\mathcal S$ は空間の∞圏)がデコラージュ(décollage)であるとは、すべての鎖 $p_0< \dots< p_m$ について、自然な写像
$$
F\{p_0< \dots< p_m\}\longrightarrow F\{p_0< p_1\}\times_{F\{p_1\}}F\{p_1< p_2\}\times_{F\{p_2\}}\dots\times_{F\{p_{m-1}\}}F\{p_{m-1}< p_m\}
$$
が同値であることをいう。
これは Hai23 Definition 1.1.4(p. 8)である。$C\in\operatorname{Str}_P$ に $\Sigma\mapsto\operatorname{Map}_{\operatorname{Str}_P}(\Sigma,C)$ を対応させる関手 $N_P$ はデコラージュを与え(同 Construction 1.1.5 と 1.1.6、p. 8)、次の定理が成り立つ。
$N_P$ は、$\operatorname{Str}_P$ からデコラージュのなす∞圏への∞圏の同値である。とくに、$\operatorname{Str}_P$ の射が同値であることは、各層 $F\{p\}$ と、各 $p< q$ についてのリンク $F\{p< q\}=\operatorname{Map}_{\operatorname{Str}_P}(\{p< q\},C)$ での同値で判定できる。
定理により、層別空間の射が同値であるかどうかは、層とリンクだけで判定できる。$P=[1]$ では、デコラージュは空間のスパン $F\{0\}\leftarrow F\{0< 1\} o F\{1\}$ と同じものである。
これは Hai23 Theorem 1.1.7(p. 8。Barwick–Glasman–Haine の Theorem 2.7.4)と 1.1.9(p. 9)である。この記事では証明しない。$F\{p\}$ は層 $C_p$ そのもので、$F\{p< q\}$ は「$p$ の層の対象から $q$ の層の対象への射」のなす∞亜群である。$P=[1]$ では Segal 条件は長さ 1 の鎖にしか関わらないので、デコラージュは空間のスパン $F\{0\}\leftarrow F\{0< 1\}\to F\{1\}$ と同じものである。層別空間では、リンクは Quinn のホモトピーリンク(層別空間の定義「ホモトピーリンクと tame な部分集合」)の役割を果たし、$[1]$-層別空間はおおよそ「層 $X_0$、$X_1$ をリンクで貼り合わせたもの」として復元される(Hai23 §0.1、p. 3)。
$P$ に上に閉じた部分集合を開集合とする位相を入れ、$P$-層別空間を連続写像 $X\to P$ とする(層別空間の定義「層別空間」)。$\operatorname{Sing}^P(X)$ が∞圏になる $P$-層別空間のなす圏を $\operatorname{Top}^{\mathrm{ex}}_{/P}$ と書く。円錐的な層別空間はこれに含まれる。
$\operatorname{Top}^{\mathrm{ex}}_{/P}$ の射 $f\colon X\to Y$($P$ の上の連続写像)が層とリンクでの弱同値であるとは、各 $p$ で層の写像 $X_p\to Y_p$ が弱ホモトピー同値であり、各 $p< q$ で、位相的リンク($\{p< q\}$ の実現 $|\Delta^1|$ から $P$ の上への写像の空間)の間の写像
$$
\operatorname{Map}_{/P}(|\Delta^1|,X)\longrightarrow\operatorname{Map}_{/P}(|\Delta^1|,Y)
$$
が弱ホモトピー同値であることをいう。ここで $|\Delta^1|=[0,1]$ は $0\mapsto p$、$(0,1]\mapsto q$ で層別する。この空間は、$p$ の層から出発し、出た瞬間から $q$ の層に留まる道の空間である。
任意の半順序集合 $P$ について、出口道の∞圏をとる関手は、∞圏の同値
$$
\operatorname{Top}^{\mathrm{ex}}_{/P}\bigl[(\text{層とリンクでの弱同値})^{-1}\bigr]\xrightarrow{\ \sim\ }\operatorname{Str}_P
$$
を与える。とくに、$P$ への保守的な関手をもつ∞圏は、すべてある層別空間の出口道の∞圏として現れる。
定理は、層別空間を層とリンクでの弱同値を除いて見たものが、出口道の∞圏 $\operatorname{Str}_P$ と同値であることを述べる。逆向きの読み方として、$P$ への保守的な関手をもつ∞圏は、どれも層別空間から得られる。
これは Hai23 Theorem 0.1.1(p. 3)、すなわち Theorem 3.2.4(p. 27)と、$P$ を動かした形の Corollary 3.3.3(p. 29)である。この記事では証明しない。$\operatorname{Top}^{\mathrm{ex}}_{/P}$ の射が $\operatorname{Str}_P$ で同値になることが層とリンクでの弱同値と同値であることは、Miller の結果の変形として Hai23 Corollary 3.1.6(p. 26)で示されている。証明は、層別空間を $\operatorname{sd}(P)$ 上の単体的前層で表す Douteau–Henriques のモデル構造と、thm-shh-decollage を組み合わせて行う(同 §0.2、pp. 4–5)。Waas は、層別空間の上の半モデル構造を構成し、出口道の構成がすべての自己射が同値な∞圏(layered な∞圏)のモデル構造との Quillen 同値を与えることを示した(Waa25 Theorem B、p. 7)。
これより前に、Ayala–Francis–Rozenblyum は、円錐的に滑らかな層別空間(層が滑らかな多様体で、錐の近傍が滑らかに貼り合わされたもの)と円錐的に滑らかな写像のなす∞圏 $\operatorname{Strat}$ について、出口道の∞圏をとる関手
$$
\operatorname{Exit}\colon\operatorname{Strat}\longrightarrow\operatorname{Cat}_\infty
$$
が充満忠実であることを証明した(AFR17 Theorem 4.2.8、p. 46)。その帰結として、層別写像がホモトピー同値であることは層とリンクでのホモトピー同値で判定できる(同 p. 10)。彼らは、本質的な像が「有限な∞圏で、すべての自己射が同値であるもの」であることを予想した(同 Conjecture 0.0.8、p. 7)。Haine の枠組みは Ayala–Francis–Rozenblyum の∞圏を充満部分∞圏として含む(Hai23 Comparison 3.4.2、p. 30)。
$\operatorname{Str}_{[1]}$ の対象の、1-圏の水準の像を完全に記述する。1-圏 $\mathcal C$ と関手 $\pi\colon\mathcal C\to[1]$ について、$\pi$ が保守的であるとは、$\pi(f)$ が恒等射なら $f$ が同型であることをいう($[1]$ の同型は恒等射だけである)。$\mathcal C_i:=\pi^{-1}(i)$ を、$i$ に写る対象と $\mathrm{id}_i$ に写る射のなす部分圏とする。
$[1]$-層別データ $(G_0,G_1,M)$ とは、2 つの亜群 $G_0,G_1$ と関手 $M\colon G_0^{\mathrm{op}}\times G_1\to\mathbf{Set}$ の組である。$(G_0,G_1,M)$ から $(G'_0,G'_1,M')$ への射は、関手 $F_i\colon G_i\to G'_i$ と自然変換 $\theta\colon M\Rightarrow M'\circ(F_0^{\mathrm{op}}\times F_1)$ の組である。
$M(x,y)$ は「$x$ から $y$ への出口道のホモトピー類」の抽象化で、$G_0$ と $G_1$ がそれに両側から作用する。
小さい圏 $\mathcal C$ と保守的な関手 $\pi\colon\mathcal C\to[1]$ の組に、$(\mathcal C_0,\mathcal C_1,M_{\mathcal C})$、$M_{\mathcal C}(x,y):=\operatorname{Hom}_{\mathcal C}(x,y)$($x\in\mathcal C_0$、$y\in\mathcal C_1$)を対応させる関手は、$[1]$ への保守的な関手をもつ小さい圏と $[1]$ の上の関手のなす圏から、$[1]$-層別データの圏への圏同型である。
データが定まること。 $\mathcal C_i$ の射 $f$ は $\pi(f)=\mathrm{id}_i$ を満たすので、保守性により $\mathcal C$ で同型であり、その逆射も $\mathrm{id}_i$ に写るので $\mathcal C_i$ の射である。よって $\mathcal C_i$ は亜群である。$g\in\mathcal C_0(x',x)$、$h\in\mathcal C_1(y,y')$ について、$M_{\mathcal C}(g,h)(m):=h\circ m\circ g$ と定めると、合成の結合律と単位律から $M_{\mathcal C}$ は関手 $\mathcal C_0^{\mathrm{op}}\times\mathcal C_1\to\mathbf{Set}$ である。$[1]$ の上の関手 $\Phi\colon\mathcal C\to\mathcal C'$ は $\mathcal C_i$ を $\mathcal C'_i$ に写し、$\Phi$ の Hom 集合への作用が自然変換 $M_{\mathcal C}\Rightarrow M_{\mathcal C'}\circ(\Phi_0^{\mathrm{op}}\times\Phi_1)$ を与える(自然性は $\Phi(hmg)=\Phi(h)\Phi(m)\Phi(g)$ である)。これで関手 $\Delta$ が定まる。
逆の構成(コラージュ)。 $[1]$-層別データ $(G_0,G_1,M)$ に対し、圏 $\mathcal K=\mathcal K(G_0,G_1,M)$ を次のように定める。対象は $G_0$ と $G_1$ の対象の非交和である。射の集合は、$x,x'\in G_0$ なら $G_0(x,x')$、$y,y'\in G_1$ なら $G_1(y,y')$、$x\in G_0$、$y\in G_1$ なら $M(x,y)$、$y\in G_1$ から $x\in G_0$ へは空集合とする。合成は、$G_0$、$G_1$ の中では亜群の合成とし、$m\in M(x,y)$ と $g\colon x'\to x$、$h\colon y\to y'$ について $m\circ g:=M(g,\mathrm{id})(m)$、$h\circ m:=M(\mathrm{id},h)(m)$ とする。$G_1$ から $G_0$ への射はないので、合成が定義される 3 つ組の型は、すべて $G_0$ の中、すべて $G_1$ の中、$G_0$ の射・$M$ の元・$G_1$ の射を含むもの、のいずれかである。結合律は、$M$ が 2 変数の関手であること($M(g,\mathrm{id})$ と $M(\mathrm{id},h)$ が可換で、それぞれ合成を保つこと)から従い、単位律は $M(\mathrm{id},\mathrm{id})=\mathrm{id}$ から従う。$G_i$ の対象を $i$ に、$M(x,y)$ の元を $0\to1$ に写すと関手 $\pi\colon\mathcal K\to[1]$ が得られ、$\pi(f)$ が恒等射となる射 $f$ は亜群 $G_i$ の射なので同型である。よって $\pi$ は保守的である。データの射 $(F_0,F_1,\theta)$ は、$G_i$ の上では $F_i$、$M(x,y)$ の上では $\theta_{x,y}$ として $[1]$ の上の関手 $\mathcal K\to\mathcal K'$ を与える(関手性は $\theta$ の自然性である)。これで関手 $K$ が定まる。
互いに逆であること。 構成から $\Delta(K(G_0,G_1,M))=(G_0,G_1,M)$ であり、射についても同じである。逆に $(\mathcal C,\pi)$ について、$\pi$ は $[1]$ の上の関手なので $\mathcal C_1$ の対象から $\mathcal C_0$ の対象への射は存在しない($[1]$ に $1\to0$ の射はない)。$\mathcal C_0$ の対象どうしの射は $\mathrm{id}_0$ に写るので $\mathcal C_0$ の射であり、$\mathcal C_1$ についても同じである。よって $\mathcal C$ の対象と射の集合は $K(\Delta(\mathcal C))$ のものと一致し、合成も一致する。したがって $K\circ\Delta$ は恒等関手であり、$\Delta$ は圏同型である。$\square$
$M$ の元の圏(対象は $(x,y,m)$、$m\in M(x,y)$、射は $m$ を $m'$ に移す $G_0\times G_1$ の射)は亜群 $L$ で、射影により亜群のスパン $G_0\leftarrow L\to G_1$ が得られる。$L$ は「$0$ の層から $1$ の層への射と、その両端の同型による可換な四角形」の亜群であり、thm-shh-decollage のリンク $F\{0< 1\}$ の 1-圏の水準の像にあたる。こうして、主定理は $P=[1]$ のデコラージュの定理を 1-圏の水準で確かめたものである。
2 の $M$ の元の亜群 $L$ は 1 点と自己同型群 $\mathbb Z$ からなり、リンク $S^1$ の基本亜群と一致する。層 $G_0$ と $G_1$ だけを見ても、このリンクの情報は得られない。次の命題はそのことを示す。
$X:=\mathbb R^2$ を $X_0=\{0\}$、$X_1=\mathbb R^2\setminus\{0\}$ に分けた $[1]$-層別空間とし、$X'$ を同じ集合に、$\{0\}$ と $\mathbb R^2\setminus\{0\}$ の非交和の位相を入れた $[1]$-層別空間とする。恒等写像 $\iota\colon X'\to X$ は連続な層別写像で、各層の上では同相写像だが、$\operatorname{Sing}^{[1]}(\iota)$ は $\operatorname{Str}_{[1]}$ の同値でない。
要点:$X'$ では原点から出る出口道がないので、リンクが空になる。
$X'$ の位相は $X$ の位相より細かいので $\iota$ は連続であり、層を保つ。層の上では $\iota$ は恒等写像なので同相である。$X'$ で $X'_1$ は開集合なので、$X'\to[1]$ は連続であり、$X'$ は $[1]$-層別空間である。
$X'$ の出口単体 $\sigma\colon|\Delta^n|\to X'$ の像は連結なので、$X'$ の連結成分 $\{0\}$ か $\mathbb R^2\setminus\{0\}$ のどちらかに含まれる。よって $\operatorname{Sing}^{[1]}(X')$ は $\operatorname{Sing}(\{0\})\sqcup\operatorname{Sing}(\mathbb R^2\setminus\{0\})$(前者を $0$、後者を $1$ の上に置いたもの)であり、Kan 複体の非交和なので∞圏である。$0$ から $1$ の層への射はないので、リンク $\operatorname{Map}_{/[1]}(|\Delta^1|,X')$ は空である。一方 $X$ では $\tau\mapsto(\tau,0)$ が原点から $(1,0)$ への出口道なので、$X$ のリンクは空でない。
$\operatorname{Sing}^{[1]}(\iota)$ が $\operatorname{Str}_{[1]}$ の同値なら、thm-shh-decollage によりリンク $F\{0< 1\}=\operatorname{Map}_{\operatorname{Str}_{[1]}}(\Delta^1,-)$ の同値を引き起こすが、空の空間と空でない空間は同値でない。より直接には、同値な∞圏の間で写像空間 $\operatorname{Map}(0,(1,0))$ は同値でなければならないが、$X'$ 側は空、$X$ 側は空でない。$\square$
この例は、thm-shh-haine で逆にする射として、層での弱同値だけでは足りず、リンクでの弱同値が必要であることを示す(Hai23 Corollary 3.1.6 の条件 (3.1.6.2)、p. 26)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 関手が保守的であること | $\Delta^1\to\Delta^0$($P$ が 1 点) | 層別空間の出口道の∞圏として現れること(自明な層別の出口道の∞圏は Kan 複体) |
| リンクでの弱同値を課すこと | $X'\to X$(prop-shh-link-counterexample) | 層ごとの同相写像が $\operatorname{Str}_P$ の同値を与えること |
| $\operatorname{Sing}^P(X)$ が∞圏であること | $\mathbb R=(-\infty,0]\sqcup(0,\infty)$ | 出口道の単体的集合が $\operatorname{Str}_P$ の対象になること |
| 層がすべて可縮であること | 原点で分けた $\mathbb R^2$(ex-shh-cone の 2) | 抽象的な層別ホモトピー型が半順序集合で決まること |
1 行目:$P$ が 1 点のとき $\pi$ が保守的であることは、すべての射が同値であることなので、$\Delta^1$(射 $0\to1$ が同値でない)は $\operatorname{Str}_{\mathrm{pt}}$ に入らない。自明に層別された空間 $X$ の出口道の∞圏は $\operatorname{Sing}X$ で、Kan 複体である(出口道の∞圏の命題「層ごとのファイバーと自明な層別」)。3 行目は 出口道の∞圏の例「反例:出口道の単体的集合が∞圏にならない層別」による。このような空間は $\operatorname{Top}^{\mathrm{ex}}_{/P}$ から外れる。単体的集合の実現でも円錐的でないものがあり、角 $\Lambda^2_0$ を $0,1\mapsto0$、$2\mapsto1$ で層別した実現の出口道の単体的集合は∞圏でない(Hai23 Example 3.1.3、p. 26)。4 行目:層が可縮で出口道の空間も可縮なら、出口道の∞圏は半順序集合の脈体と同値になる(出口道の∞圏の命題「単体複体の出口道の∞圏」)が、$\mathbb R^2\setminus\{0\}$ の層の基本亜群は $\mathbb Z$ をもち、そうならない。
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