コホモロジー

同義語:cohomology

概要

コホモロジー(cohomology)とは、余鎖複体の各次数で微分の核を直前の微分の像で割った対象 $H^n=\ker d^n/\operatorname{im}d^{n-1}$ である。核の元をコサイクル、像の元をコ境界と呼び、複体の射はコホモロジーの射を誘導し、ホモトピックな射は同じ射を誘導する。短完全列からは連結準同型によってコホモロジーの長完全列が得られる。de Rham・層・導来関手のコホモロジーは、いずれも適切な余鎖複体にこの操作を施したものである。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: アーベル群, 複体, ホモロジー

コホモロジーとは

コホモロジー(cohomology)は、余鎖複体で「次の段へ送ると零になるもの」を「前の段から来たもの」で割って得る対象である。微分を一度施すと零になる余鎖をコサイクル、直前の余鎖の微分として得られるものをコ境界とよぶ。コホモロジーは、閉じている余鎖がすべて境界として説明できるかを次数ごとに測る。
この形は、位相空間の特異コホモロジー、滑らかな多様体の de Rham コホモロジー、層コホモロジー、群コホモロジーなどに共通する。ただし、同じ記号 $H^n$ を使っても、どの余鎖複体から作るかは理論ごとに異なる。まず代数的な共通部分を定義し、円周の計算と長完全列を通じて使い方を確かめる(Wei94 Chapter 1; Hat02 §3.1)。

余鎖複体と定義

アーベル群の列 $C^n$ と準同型 $d^n:C^n\to C^{n+1}$ があり、すべての $n$ で $d^{n+1}d^n=0$ を満たすとき、これを余鎖複体という。$d^n$ は次数を一つ上げる。鎖複体の微分が次数を下げるのに対し、こちらは上げるという違いがある。係数を環上の加群やアーベル圏の対象へ替えても同じ定義を使える。

余鎖複体のコホモロジー

余鎖複体 $(C^\bullet,d)$ の次数 $n$ のコホモロジーを
$$ H^n(C^\bullet) =\frac{\ker(d^n:C^n\to C^{n+1})} {\operatorname{im}(d^{n-1}:C^{n-1}\to C^n)} $$
と定める。$\ker d^n$ の元を次数 $n$ のコサイクル、$\operatorname{im}d^{n-1}$ の元を次数 $n$ のコ境界という。

商が定義できるのは $d^n d^{n-1}=0$ により $\operatorname{im}d^{n-1}\subseteq\ker d^n$ だからである。コサイクル $z$ の類を $[z]$ と書く。二つのコサイクル $z,z'$ が同じ類を表す条件は、ある $b\in C^{n-1}$ について $z-z'=d^{n-1}b$ となることである。これは単に $z=z'$ という条件より弱い。

コ境界はコサイクルである

任意の余鎖複体で、すべてのコ境界はコサイクルである。したがって $H^n(C^\bullet)=0$ であることと、次数 $n$ のすべてのコサイクルがコ境界であることは同値である。

二回の微分が零になることを使う

コ境界 $z=d^{n-1}b$ に $d^n$ を施すと $d^nz=d^nd^{n-1}b=0$ である。ゆえに $\operatorname{im}d^{n-1}\subseteq\ker d^n$。商群が零であることは、分子と分母が等しいこと、つまりすべてのコサイクルがコ境界であることと同値である。$\square$

複体が次数 $n$ で完全であるとは $\operatorname{im}d^{n-1}=\ker d^n$ である。従ってコホモロジーはその次数での完全性の失敗を表す。すべての次数で零なら、複体を非輪状という。ただし「非輪状」は個々の群 $C^n$ が零であることを意味しない。非零の群と非零の微分を持ちながら、全次数のコホモロジーが消える複体もある。

短い計算

最も簡単な例として、$C^0=\mathbb Z$、$C^1=\mathbb Z$、$d^0$ を整数 $m$ 倍、ほかの項を零とする。$m\ne0$ なら $d^0$ は単射であり、
$$ H^0(C^\bullet)=0,\qquad H^1(C^\bullet)=\mathbb Z/m\mathbb Z $$
となる。$m=0$ なら両次数で $\mathbb Z$ が残る。群が同じでも微分を変えればコホモロジーが変わることが分かる。

整数倍写像の二項複体

$C^0=C^1=\mathbb Z$、$d^0(k)=mk$、ほかの項が零の余鎖複体を考える。$m\ne0$ なら $H^0=0$、$H^1\cong\mathbb Z/m\mathbb Z$ であり、$m=0$ なら $H^0\cong H^1\cong\mathbb Z$ である。

二項複体の核と余核

負次数の群が零なので $H^0=\ker d^0$。$d^0$ が非零整数倍なら核は零、零写像なら核は $\mathbb Z$ である。次数 $1$ の次の微分は零だから、$H^1=\mathbb Z/\operatorname{im}d^0$。像は $m\mathbb Z$ なので、表示した二通りの結論を得る。ほかの次数では群そのものが零である。$\square$

コホモロジーの値だけから元の複体の各項や微分を一意に復元することは一般にはできない。たとえば恒等写像 $\mathbb Z\xrightarrow{\mathrm{id}}\mathbb Z$ の二項複体は両項が非零だが非輪状であり、全項が零の複体と同じ零コホモロジーを持つ。コホモロジーは複体の重要な情報を抜き出すが、複体の全情報ではない。

射とホモトピーに対する振る舞い

余鎖複体の射 $f:C^\bullet\to D^\bullet$ は各次数の準同型 $f^n:C^n\to D^n$ で $d_D^nf^n=f^{n+1}d_C^n$ を満たすものをいう。この条件によりコサイクルはコサイクルへ、コ境界はコ境界へ移る。

複体の射はコホモロジーの射を誘導する

余鎖複体の射 $f:C^\bullet\to D^\bullet$ は、各次数に $H^n(f):H^n(C^\bullet)\to H^n(D^\bullet)$、$[z]\mapsto[f^n(z)]$ を定める。恒等射と合成も保たれる。

代表の取り方に依存しないこと

$d_C^nz=0$ なら $d_D^nf^n(z)=f^{n+1}d_C^n(z)=0$ で、$f^n(z)$ はコサイクルである。$z'=z+d_C^{n-1}b$ なら $f^n(z')-f^n(z)=d_D^{n-1}f^{n-1}(b)$ はコ境界だから、二つの代表は同じ類へ移る。恒等射と合成については $[z]$ に作用させて確かめればよい。$\square$

すべての $H^n(f)$ が同型である複体の射を擬同型という。擬同型は各次数の $f^n$ が同型であることより弱い。前節の恒等写像からなる非輪状二項複体から零複体への射は擬同型だが、非零の項では同型でない。この違いが導来圏で擬同型を可逆にする動機になる。
二つの複体の射 $f,g:C^\bullet\to D^\bullet$ が鎖ホモトピーで結ばれるとき、誘導するコホモロジーの射は等しい。鎖ホモトピーとは次数を一つ下げる写像 $s^n:C^n\to D^{n-1}$ があり、$f^n-g^n=d_D^{n-1}s^n+s^{n+1}d_C^n$ と書けることである。

ホモトピーな複体の射は同じ射を誘導する

$f$ と $g$ が上の意味で鎖ホモトピーなら、任意の $n$ で $H^n(f)=H^n(g)$ である。

コサイクル上では差がコ境界になる

$z\in\ker d_C^n$ に対して $(f^n-g^n)(z)=d_D^{n-1}s^n(z)+s^{n+1}d_C^n(z)=d_D^{n-1}s^n(z)$。右辺はコ境界なので $[f^n(z)]=[g^n(z)]$ である。すべての類はコサイクルの類だから誘導射は一致する。$\square$

位相空間でのコホモロジー

位相空間 $X$ の特異鎖群 $C_n(X;\mathbb Z)$ は、$n$ 次元単体から $X$ への連続写像を生成元とする自由アーベル群である。境界写像 $\partial_n:C_n\to C_{n-1}$ を用い、係数アーベル群 $A$ に対し
$$ C^n(X;A)=\operatorname{Hom}_{\mathbb Z}(C_n(X;\mathbb Z),A), \qquad (\delta\varphi)(c)=\varphi(\partial c) $$
と置く。$\partial^2=0$ から $\delta^2=0$ が従う。この余鎖複体のコホモロジーを $H^n(X;A)$ と書く。これが特異コホモロジーである(Hat02 §3.1)。ここでは鎖を係数群へ写す関数を余鎖としているため、微分の向きが鎖複体と逆になる。

特異コホモロジー

位相空間 $X$ と係数アーベル群 $A$ の特異コホモロジーは、特異余鎖複体 $\operatorname{Hom}_{\mathbb Z}(C_\bullet(X;\mathbb Z),A)$ のコホモロジー $H^n(X;A)$ である。

連続写像 $u:X\to Y$ は特異鎖の射 $u_\#:C_\bullet(X)\to C_\bullet(Y)$ を与える。余鎖では前合成 $\varphi\mapsto\varphi\circ u_\#$ を使うため、$u^*:H^n(Y;A)\to H^n(X;A)$ となり向きが逆になる。これを反変性という。空間の同相やホモトピー同値はコホモロジーの同型を与えるが、任意の連続写像が同型を与えるわけではない。
円周 $S^1$ の整数係数コホモロジーは
$$ H^0(S^1;\mathbb Z)\cong\mathbb Z,\qquad H^1(S^1;\mathbb Z)\cong\mathbb Z,\qquad H^n(S^1;\mathbb Z)=0\quad(n\ge2) $$
である。たとえば円周の CW 分解には一つの零次胞体と一つの一次胞体があり、胞体余鎖複体は $\mathbb Z\xrightarrow{0}\mathbb Z$ となる。特異コホモロジーと胞体コホモロジーの比較定理を用いると上の値が得られる(Hat02 §3.1)。円周の $H^1$ の非零性は、一周する一次元の穴を代数的に検出している。

円周と閉区間

閉区間 $[0,1]$ は一点に縮められるので、整数係数では $H^0([0,1];\mathbb Z)\cong\mathbb Z$、$n>0$ で $H^n([0,1];\mathbb Z)=0$ である。一方、円周では $H^1(S^1;\mathbb Z)\cong\mathbb Z$ が残る。どちらも連結だが、一次コホモロジーが区別する。

最も低い次数では、特異コホモロジーを定義から直接計算できる。

0次の特異コホモロジー

位相空間 $X$ とアーベル群 $A$ について、$H^0(X;A)$ は、$X$ の各弧状連結成分の上で一定な関数 $X\to A$ 全体のなす群に等しい。特に $X$ が空でなく弧状連結なら $H^0(X;A)\cong A$ である。

特異 $0$ 単体は $X$ の点と同じものなので、$0$ 余鎖 $\varphi\in C^0(X;A)=\operatorname{Hom}(C_0(X;\mathbb Z),A)$ は任意の関数 $X\to A$ と同じである(連続性は課さない)。$C^{-1}=0$ なので $H^0(X;A)=\ker\delta^0$ である。特異 $1$ 単体 $\sigma$ は始点 $\sigma(0)$ から終点 $\sigma(1)$ への道であり、$\partial\sigma=\sigma(1)-\sigma(0)$ だから
$$ (\delta\varphi)(\sigma)=\varphi(\sigma(1))-\varphi(\sigma(0)) $$
である。したがって $\delta\varphi=0$ は、道で結ばれる二点で $\varphi$ の値が等しいこと、すなわち $\varphi$ が各弧状連結成分の上で一定であることと同値である。$X$ が空でなく弧状連結なら、そのような関数は値 $\varphi(x_0)\in A$ で決まり、$\varphi\mapsto\varphi(x_0)$ が同型 $H^0(X;A)\cong A$ を与える。$\square$

この記述は Hat02 §3.1(p. 198)にある。$H^0$ が「弧状連結成分から $A$ への関数」であることから、$H^0$ は成分の個数を数えている。高い次数では、コホモロジーはホモロジーから普遍係数定理で決まる。自由アーベル群の鎖複体 $C_\bullet$ に対して分裂する短完全列
$$ 0\to\operatorname{Ext}(H_{n-1}(C),A)\to H^n(\operatorname{Hom}(C_\bullet,A))\to\operatorname{Hom}(H_n(C),A)\to0 $$
がある(Hat02 §3.1, Theorem 3.2, p. 195)。この記事ではこの定理を証明しない。後の反例の表で、$\operatorname{Ext}$ の項があるために $H^n$ が $\operatorname{Hom}(H_n,A)$ と一致しない例を見る。
コホモロジーは群の族だけでなく、積も持つ。特異コホモロジーのカップ積は $H^p(X;R)\times H^q(X;R)\to H^{p+q}(X;R)$ を与え、可換環 $R$ に対する $H^*(X;R)$ を次数付き環にする。したがって各次数の群が同じでも、積構造が空間を区別する場合がある。カップ積の構成と符号規則は別の論点であり、この定義を単なる商群の演算と取り違えない(Hat02 §3.2)。

短完全列と連結準同型

余鎖複体の短完全列
$$ 0\longrightarrow A^\bullet \xrightarrow{i}B^\bullet \xrightarrow{p}C^\bullet \longrightarrow0 $$
が各次数で完全なら、コホモロジーには長完全列
$$ \cdots\to H^n(A)\to H^n(B)\to H^n(C) \xrightarrow{\partial}H^{n+1}(A)\to\cdots $$
が生じる。$H^n(C)$ から一つ高い次数へ進む $\partial$ を連結準同型という(Wei94 §1.3)。この次数のずれは、余鎖複体で微分が次数を上げることと対応する。
連結準同型を作る手順を確認する。$C^n$ のコサイクル $c$ を $B^n$ の元 $b$ に持ち上げる。$p(db)=d(p b)=dc=0$ なので $db$ は $i(A^{n+1})$ に入り、ある $a\in A^{n+1}$ について $i(a)=db$ となる。さらに $i(da)=d^2b=0$ と $i$ の単射性から $da=0$ であり、$a$ はコサイクルである。$[c]\mapsto[a]$ が $\partial$ である。持ち上げの変更や $c$ の代表の変更は $a$ をコ境界だけ変えるため、類は定まる。

長完全列の接続

余鎖複体の各次数で短完全な列から、上の連結準同型を含むコホモロジーの長完全列が得られる。

連結準同型と各位置の完全性

前段の構成に加え、$b$ を別の持ち上げ $b+i(a_0)$ に替えると対応する $a$ は $a+da_0$ に替わる。$c$ を $c+dc_0$ に替えた場合は、$c_0$ の持ち上げ $b_0$ を取って $b$ を $b+db_0$ に替えれば $db$ は変わらない。従って $\partial$ は代表と持ち上げに依存しない。
$H^n(A)$ の位置を調べる。$a\in A^n$ がコサイクルで、$i(a)=db$ が $B^n$ で成り立つなら、$c=p(b)\in C^{n-1}$ は $dc=p(db)=0$ を満たす。連結準同型の構成から $\partial[c]=[a]$ である。逆に $\partial[c]=[a]$ として $c$ を $b$ に持ち上げたなら $i(a)=db$ をコ境界の差を除いて満たすので、$[i(a)]=0$ となる。これで直前の連結準同型の像と $H^n(i)$ の核が一致する。
$H^n(B)$ の位置では、コサイクル $b\in B^n$ の像 $p(b)$ が $C^n$ でコ境界なら、$p(b)=dc$ と書ける。$c\in C^{n-1}$ を $b_0\in B^{n-1}$ に持ち上げると、$p(b-db_0)=0$。従って一意の $a\in A^n$ が存在して $i(a)=b-db_0$ となる。$i(da)=d(b-db_0)=0$ と $i$ の単射性から $da=0$ である。ゆえに $[b]=H^n(i)[a]$。逆向きの包含は $pi=0$ から従う。
$H^n(C)$ の位置では、$\partial[c]=0$ なら、構成した $a$ が $da_0$ と書ける。$b-i(a_0)$ はコサイクルで、その $p$ による像は $c$ である。従って $[c]$ は $H^n(B)$ から来る。逆に $c$ が $B^n$ のコサイクルから来れば、その持ち上げの微分は零なので $\partial[c]=0$ である。各 $n$ で同じ三つの議論を繰り返せば、長い列のすべての位置で核と像が一致する。$\square$

長完全列は、一つのコホモロジー群だけを孤立して計算する代わりに、三つの複体の情報を結び付ける。たとえば $H^n(A)$ と $H^n(B)$ が既知でも $H^n(C)$ を直接読み取れるとは限らず、次の $H^{n+1}(A)$ への連結準同型も調べる必要がある。短完全列の各次数での完全性は、コホモロジーに取った後の各次数の短完全性を意味しない。失われる部分が一つ高い次数へ渡ることを、連結準同型が表している。

他のコホモロジーとの関係

滑らかな多様体では微分形式 $\Omega^n(M)$ と外微分 $d:\Omega^n(M)\to\Omega^{n+1}(M)$ が余鎖複体を作る。そのコホモロジーが de Rham コホモロジーであり、閉形式を完全形式で割る。de Rham の定理は、滑らかな多様体の実係数特異コホモロジーとの同型を与える。ただしこの同型は、単に両方に $H^n$ と書くことから出るのではなく、積分写像とその比較定理を要する(BT82 Chapter I)。
層コホモロジーでは、層の入射分解に大域切断関手を施して得た余鎖複体のコホモロジーを取る(Sta01DZ §20.2)。群コホモロジーや Ext 群も導来関手のコホモロジーとして現れる。共通する商の形は同じでも、入れる複体と比較定理は異なる。特異コホモロジーの $H^1$ と層コホモロジーの $H^1$ を、追加の仮定や同型なしに同一視することはできない。
計算では、まず対象に対応する余鎖複体と係数を明示し、微分が二回で零になることを確かめる。次に各次数の核と像を計算し、必要なら短完全列から長完全列を使う。位相空間を比べる場合は写像の向きにも注意する。連続写像 $X\to Y$ によるコホモロジーの射は $H^n(Y)\to H^n(X)$ である。こうした手順によって、コホモロジーは多くの分野で共通の言葉として働く。

反例:条件を外すと崩れること

コホモロジーについて成り立ちそうに見えるが、条件を外すと成り立たない主張を並べる。各行の反例は右の列の主張を破る。確かめ方は表の下に書く。

外す条件反例成り立たなくなること
射がホモトピー同値であること$\mathbb Z\xrightarrow{2}\mathbb Z$ から $\mathbb Z/2$ への擬同型擬同型にはホモトピー逆がある
長完全列の連結準同型$0\to A\to B\to C\to0$(下の三つの複体)各次数で $0\to H^n(A)\to H^n(B)\to H^n(C)\to0$ が完全
写像がホモトピー同値であること連続全単射 $[0,1)\to S^1$同相に見える写像はコホモロジーの同型を与える
係数と $\operatorname{Ext}$ の項$\mathbb Z\xrightarrow{2}\mathbb Z$ の双対、$\mathbb{RP}^2$$H^n(\operatorname{Hom}(C_\bullet,\mathbb Z))\cong\operatorname{Hom}(H_n(C),\mathbb Z)$
擬同型だがホモトピー同値でない射

$C^\bullet$ を $C^0=\mathbb Z\xrightarrow{2}C^1=\mathbb Z$(ほかは $0$)、$D^\bullet$ を次数 $1$ に $\mathbb Z/2\mathbb Z$ を置いただけの複体とする。$f^1:C^1=\mathbb Z\to\mathbb Z/2\mathbb Z$ を剰余写像、$f^0=0$ とすると、$f^1d^0=f^1\circ2=0$ なので $f$ は複体の射である。ex-cohomology-two-term より $H^0(C)=0$、$H^1(C)=\mathbb Z/2\mathbb Z$ で、$H^1(f)$ は $\mathbb Z/2\mathbb Z\to\mathbb Z/2\mathbb Z$ の恒等写像だから、$f$ は擬同型である。しかし逆向きの複体の射 $g:D^\bullet\to C^\bullet$ は、$g^1:\mathbb Z/2\mathbb Z\to\mathbb Z$ が零写像しかない($\mathbb Z$ には位数 $2$ の元がない)ので $g=0$ に限る。すると $H^1(f\circ g)=0$ だが $H^1(\mathrm{id}_D)=\mathrm{id}\ne0$ であり、prop-cohomology-homotopy-invariance により $f\circ g$ は恒等射とホモトピーにならない。したがって $f$ はホモトピー同値でない。擬同型を可逆にするには、導来圏のように新しく逆を付け加える必要がある。

短完全列からコホモロジーの短完全列は出ない

$B^\bullet$ を $B^0=\mathbb Z\xrightarrow{\mathrm{id}}B^1=\mathbb Z$、$A^\bullet$ を次数 $1$ に $\mathbb Z$ を置いた部分複体($A^1=B^1$、$A^0=0$)、$C^\bullet=B^\bullet/A^\bullet$ を次数 $0$ に $\mathbb Z$ を置いた複体とする。各次数で $0\to A^n\to B^n\to C^n\to0$ は完全である。$B^\bullet$ は非輪状なので $H^*(B)=0$、また $H^1(A)=\mathbb Z$、$H^0(C)=\mathbb Z$ である。次数 $0$ で並べた $0\to H^0(A)=0\to H^0(B)=0\to H^0(C)=\mathbb Z\to0$ は、$0\to\mathbb Z$ が全射でないので完全でない。失われた $H^0(C)=\mathbb Z$ は、連結準同型 $\partial:H^0(C)\to H^1(A)$ で同型に写る。実際、$1\in C^0$ を $1\in B^0$ に持ち上げると $d(1)=1\in B^1=A^1$ であり、$\partial[1]=[1]$ となる。

連続全単射はコホモロジーの同型を与えない

$u:[0,1)\to S^1$、$u(t)=(\cos2\pi t,\sin2\pi t)$ は連続な全単射である。しかし $[0,1)$ は一点に縮められるので $H^1([0,1);\mathbb Z)=0$、一方 $H^1(S^1;\mathbb Z)\cong\mathbb Z$ であり、$u^*:H^1(S^1;\mathbb Z)\to H^1([0,1);\mathbb Z)$ は同型でない。コホモロジーの同型を保証するのはホモトピー同値であって、全単射であることではない。$u$ の逆写像は $(1,0)$ で連続でなく、$u$ は同相でもない。

双対を取るとねじれが一つ上の次数へずれる

鎖複体 $C_1=\mathbb Z\xrightarrow{2}C_0=\mathbb Z$(ほかは $0$)は自由アーベル群からなり、$H_0(C)=\mathbb Z/2\mathbb Z$、$H_1(C)=0$ である。$\operatorname{Hom}(-,\mathbb Z)$ を施した余鎖複体は $\operatorname{Hom}(C_0,\mathbb Z)=\mathbb Z\xrightarrow{2}\operatorname{Hom}(C_1,\mathbb Z)=\mathbb Z$ であり($2$ 倍の双対はまた $2$ 倍)、ex-cohomology-two-term より $H^0=0$、$H^1=\mathbb Z/2\mathbb Z$ である。したがって $H^1\cong\mathbb Z/2\mathbb Z$ だが $\operatorname{Hom}(H_1(C),\mathbb Z)=0$ で、両者は一致しない。普遍係数定理の $\operatorname{Ext}(H_0(C),\mathbb Z)=\operatorname{Ext}(\mathbb Z/2\mathbb Z,\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2\mathbb Z$ の項がこの差である。実射影平面 $\mathbb{RP}^2$ の胞体鎖複体は $\mathbb Z\xrightarrow{2}\mathbb Z\xrightarrow{0}\mathbb Z$(次数 $2,1,0$)なので(Hat02 §2.2, Example 2.42)、胞体余鎖複体で同じ計算をすると $H_1(\mathbb{RP}^2;\mathbb Z)=\mathbb Z/2\mathbb Z$ に対して $H^1(\mathbb{RP}^2;\mathbb Z)=0$、$H^2(\mathbb{RP}^2;\mathbb Z)\cong\mathbb Z/2\mathbb Z$ となる。

関連項目

参考文献

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