擬同型(quasi-isomorphism)とは、複体の射であって、すべての次数のホモロジーまたはコホモロジーに同型を誘導するものをいう。項ごとの同型や鎖ホモトピー同値より弱く、射影・入射分解による計算と導来圏での複体の比較を支える。写像錐が非輪状であることと同値であり、非輪状でも可縮でない複体を使って鎖ホモトピー同値との違いを示せる。
擬同型(quasi-isomorphism)は、複体の各次数に置かれた対象をそのまま保存するとは限らないが、すべての次数のホモロジーまたはコホモロジーを同型に保つ複体の射である。複体を使う計算では、項を取り替えて計算しやすくしても、目的とするコホモロジーは変えたくない。その取替えを正当化する基本的な条件が擬同型である。例えば加群の射影分解から加群への自然な射、層の入射分解への自然な射は、項ごとの同型ではないが擬同型である。
「同じコホモロジーを持つ」だけでなく、その射が誘導する写像が同型であることが重要である。複体を同じ次数の群に分解して並べただけでは、別の複体と比較するための写像は決まらない。擬同型は、比較の向きと各コホモロジー群の対応を同時に指定する。導来圏では擬同型を形式的に逆にできるようにし、多くの分解や解消を同じ数学的対象の別の表示として扱う。本記事は、定義から出発し、例、証明、判定法、誤りやすい境界を具体的に説明する。
まず $R$ を単位元を持つ環とし、$R$ 加群からなるコチェイン複体を考える。これは各整数 $n$ に加群 $C^n$ と準同型 $d_C^n\colon C^n\to C^{n+1}$ を置き、$d_C^{n+1}d_C^n=0$ としたものである。式を短く書くと
$$
\cdots\longrightarrow C^{n-1}\xrightarrow{d_C^{n-1}}C^n
\xrightarrow{d_C^n}C^{n+1}\longrightarrow\cdots
$$
となる。微分の合成が零だから $\operatorname{im}d_C^{n-1}\subseteq\ker d_C^n$ であり、$n$ 次コホモロジーは
$$
H^n(C^\bullet)=\ker d_C^n/\operatorname{im}d_C^{n-1}
$$
と定義される。$\ker d_C^n$ の元をコサイクル、$\operatorname{im}d_C^{n-1}$ の元をコバウンダリーという。
複体の射 $f\colon C^\bullet\to D^\bullet$ は各次数の準同型 $f^n\colon C^n\to D^n$ の族で、$d_D^nf^n=f^{n+1}d_C^n$ を満たす。従って $f^n$ はコサイクルをコサイクルへ、コバウンダリーをコバウンダリーへ送る。そこで剰余類の写像
$$
H^n(f)\colon H^n(C^\bullet)\longrightarrow H^n(D^\bullet),\qquad [x]\longmapsto[f^n(x)]
$$
が定まる。この写像は代表元の取り方に依存しない。実際、$x$ を $x+d_C^{n-1}u$ に替えると像の差は $d_D^{n-1}f^{n-1}u$ であり、同じ剰余類になる。
複体の射 $f\colon C^\bullet\to D^\bullet$ が擬同型であるとは、すべての整数 $n$ について誘導写像 $H^n(f)$ が同型であることをいう。複体 $C^\bullet$ が非輪状であるとは、すべての $n$ について $H^n(C^\bullet)=0$ であることをいう。従って、零複体から $C^\bullet$ への唯一の射 $0\to C^\bullet$ が擬同型であることと、$C^\bullet$ が非輪状であることは同値である。
この定義は StacksDefQis Definition 12.13.10 と一致する。一般のアーベル圏でも、加群の核・像・商をその圏における核・像・余核に読み替えて同じように定義する。添字を下に付けて微分が $C_n\to C_{n-1}$ と進む鎖複体では、$H_n$ を用いて「全次数の $H_n(f)$ が同型」と言う。上下の添字の約束は違っても、保存すべき量が全次数のホモロジーである点は同じである。
擬同型の「擬」は曖昧な同一性を意味しない。$f$ が指定された複体の射であり、その誘導する各写像が厳密に同型であることを意味する。一方で、$C^n\to D^n$ 自体が同型である必要はない。逆向きの複体の射が存在する必要もない。後で見るように、擬同型は鎖ホモトピー同値より弱い。
$R=\mathbb Z$ とし、$M=\mathbb Z/2\mathbb Z$ を次数 $0$ にのみ置いた複体 $M[0]$ を考える。もう一つ、次数 $-1$ と $0$ に $\mathbb Z$ を置き、微分を $2$ 倍写像とする複体を
$$
P^{-1}=\mathbb Z,\qquad P^0=\mathbb Z,\qquad
d_P^{-1}(m)=2m
$$
で定め、他の次数は零とする。$2$ 倍写像は単射なので $H^{-1}(P^\bullet)=0$、その余核は $\mathbb Z/2\mathbb Z$ なので $H^0(P^\bullet)\cong M$ である。
次数 $0$ の剰余写像 $\varepsilon^0\colon\mathbb Z\to M$ と、他の次数の零写像を合わせると、複体の射 $\varepsilon\colon P^\bullet\to M[0]$ になる。複体の射である条件は $\varepsilon^0d_P^{-1}=0$ であり、偶数を法 $2$ で零にすることから成立する。$H^0(\varepsilon)$ は標準同型 $\mathbb Z/2\mathbb Z\to M$ で、他の次数も零群間の同型である。従って $\varepsilon$ は擬同型である。しかし $\varepsilon^{-1}\colon\mathbb Z\to0$ は同型ではない。項ごとに同型かどうかを見る検査では、この重要な比較を取り逃がす。
この $P^\bullet$ は $M$ の二項の射影分解をコチェイン次数で書き直したものである。一般に完全列
$$
\cdots\longrightarrow P^{-2}\longrightarrow P^{-1}
\longrightarrow P^0\xrightarrow{\varepsilon}M\longrightarrow0
$$
からできる複体 $P^\bullet\to M[0]$ は擬同型である。理由は完全性が負次数のコホモロジーを零にし、次数 $0$ のコホモロジーを $M$ と同一視するからである。ただし「分解」という名前だけで擬同型になるわけではない。例えば途中で完全性が破れれば、残ったコホモロジーが障害になる。
逆向きに現れる例は入射分解である。加群や層 $M$ を $I^0\to I^1\to\cdots$ の先頭に単射で入れた完全列 $0\to M\to I^0\to I^1\to\cdots$ は、$M[0]\to I^\bullet$ という擬同型を与える。射影分解は $P^\bullet\to M[0]$、入射分解は $M[0]\to I^\bullet$ と向きが異なるが、定義ではどちらも全次数のコホモロジーを比較する。
複体の射 $C^\bullet\xrightarrow fD^\bullet\xrightarrow gE^\bullet$ について、$f,g,gf$ のうち二つが擬同型なら残る一つも擬同型である。特に恒等射は擬同型で、擬同型の合成も擬同型である。
各次数 $n$ で $H^n(gf)=H^n(g)H^n(f)$ が成り立つ。二つの誘導写像が同型なら合成も同型である。また $H^n(f)$ と $H^n(gf)$ が同型なら $H^n(g)=H^n(gf)H^n(f)^{-1}$ であり、$H^n(g)$ と $H^n(gf)$ が同型なら $H^n(f)=H^n(g)^{-1}H^n(gf)$ である。これは全次数で成り立つから、三つの射について同じ結論が従う。恒等射の場合は各 $H^n$ に誘導する写像も恒等写像である。
この性質は分解を何段階も取り替えるときに役立つ。例えば $C^\bullet\to D^\bullet\to E^\bullet$ と計算して最初と最後の比較が擬同型と分かれば、真ん中の比較の判定も簡単になる。ただし、単に $H^n(C^\bullet)$ と $H^n(E^\bullet)$ が抽象群として同型だというだけでは、$H^n(gf)$ が同型だとは言えない。実際に指定された射の誘導写像を見る必要がある。
二つの複体の射 $f,g\colon C^\bullet\to D^\bullet$ の間の鎖ホモトピーは、準同型 $s^n\colon C^n\to D^{n-1}$ の族で
$$
f^n-g^n=d_D^{n-1}s^n+s^{n+1}d_C^n
$$
を満たすものである。$f$ に逆向きの複体の射 $u\colon D^\bullet\to C^\bullet$ があり、$uf$ と $fu$ がそれぞれ恒等射に鎖ホモトピックなら、$f$ は鎖ホモトピー同値である。これは擬同型より強い条件である。
鎖ホモトピックな二つの射は、各次数のコホモロジーに同じ写像を誘導する。従って鎖ホモトピー同値は擬同型である。
$x\in C^n$ がコサイクル、すなわち $d_C^n x=0$ とする。上の等式を $x$ に適用すると $f^n(x)-g^n(x)=d_D^{n-1}s^n(x)$ となる。右辺は $D^\bullet$ のコバウンダリーなので、$[f^n(x)]=[g^n(x)]$ である。よって $H^n(f)=H^n(g)$ が全次数で成り立つ。$u$ が $f$ の鎖ホモトピー逆であれば、$H^n(u)H^n(f)=H^n(uf)=\operatorname{id}$ および $H^n(f)H^n(u)=H^n(fu)=\operatorname{id}$ となり、$H^n(f)$ は同型である。
逆は一般には成り立たない。その差を、加群の短い完全列で見られる。$A^\bullet$ の零でない項を
$$
A^{-2}=\mathbb Z,\qquad A^{-1}=\mathbb Z,\qquad
A^0=\mathbb Z/2\mathbb Z
$$
とし、$d_A^{-2}$ を $2$ 倍写像、$d_A^{-1}$ を法 $2$ の剰余写像にする。二つの微分の合成は零である。$2$ 倍写像の核は零、その像は偶数全体で次の微分の核、最後の微分は全射だから、$H^n(A^\bullet)=0$ が全次数で成り立つ。従って $A^\bullet\to0$ も $0\to A^\bullet$ も擬同型である。
しかし $A^\bullet$ と零複体は鎖ホモトピー同値ではない。もし同値なら $\operatorname{id}_{A^\bullet}$ は零写像に鎖ホモトピック、すなわち $A^\bullet$ は可縮である。次数 $0$ のホモトピー等式は
$$
\operatorname{id}_{\mathbb Z/2\mathbb Z}
=d_A^{-1}s^0,\qquad s^0\colon\mathbb Z/2\mathbb Z\to\mathbb Z
$$
となる。ところが $\mathbb Z$ には $2$ で消える非零元がないので、このような群準同型 $s^0$ は零写像しかない。右辺は零で、恒等写像にはなれない。これは短い完全列 $0\to\mathbb Z\xrightarrow{2}\mathbb Z\to\mathbb Z/2\mathbb Z\to0$ が分裂しないことを反映する。非輪状と可縮は同義ではない。
この反例は、任意の擬同型について複体の射としての逆を探す方針が失敗することも示す。擬同型の逆を形式的に加えるのが導来圏の構成であり、元の複体の圏やホモトピー圏ですでに逆があったという主張ではない。
射 $f\colon C^\bullet\to D^\bullet$ の写像錐を使うと、二つの複体の比較を一つの複体の非輪状性に帰着できる。符号を固定して、$\operatorname{Cone}(f)^n=D^n\oplus C^{n+1}$ と置き、微分を
$$
d_{\operatorname{Cone}(f)}^n(y,x)
=\bigl(d_D^ny+f^{n+1}(x),-d_C^{n+1}x\bigr)
$$
とする。第二成分の負号は任意の装飾ではない。次の微分をさらに施した第一成分は
$$
d_D^{n+1}d_D^ny+d_D^{n+1}f^{n+1}(x)
-f^{n+2}d_C^{n+1}x=0
$$
となる。最後の二項が打ち消し合うのは $f$ が複体の射だからである。第二成分も微分の合成が零なので零となり、確かに複体ができる。符号は StacksCone Definition 13.9.1 と同じ約束である。
複体の射 $f\colon C^\bullet\to D^\bullet$ が擬同型であることと、$\operatorname{Cone}(f)$ が非輪状であることは同値である。
$D^\bullet$ を第一成分に入れ、$\operatorname{Cone}(f)$ を第二成分 $C^{n+1}$ へ射影すると、各次数で分裂する複体の短完全列
$$
0\longrightarrow D^\bullet\longrightarrow\operatorname{Cone}(f)
\longrightarrow C^\bullet[1]\longrightarrow0
$$
を得る。ここで $C[1]^n=C^{n+1}$、微分は $-d_C^{n+1}$ である。この短完全列のコホモロジー長完全列は
$$
\cdots\to H^n(C)\xrightarrow{H^n(f)}H^n(D)
\to H^n(\operatorname{Cone}(f))
\to H^{n+1}(C)\xrightarrow{H^{n+1}(f)}H^{n+1}(D)\to\cdots
$$
という形になる。連結写像が $H^{n+1}(f)$ になることは、$C[1]$ のコサイクル $x$ を錐の $(0,x)$ に持ち上げて微分を取ると $(f(x),0)$ になることから分かる。もし全 $H^n(f)$ が同型なら、長完全列の完全性により錐の各コホモロジーは零である。逆に錐の各コホモロジーが零なら、同じ列の前後の零項を挟んだ $H^n(f)$ は全次数で単射かつ全射である。従って擬同型である。
写像錐を使うと「比較写像の失敗」を局所化して見ることもできる。錐に零でないコホモロジーがあれば、その次数または隣接次数で $f$ の誘導写像の単射性・全射性のどちらかが破れている。錐の各項は $C,D$ の項の直和なので、具体的な複体なら実際に微分行列を書いて調べられる。なお錐の非輪状性で十分であり、錐が可縮であることまで要求すると条件を強くし過ぎる。
項ごとの同型との関係。 各 $f^n\colon C^n\to D^n$ が同型なら、その逆写像を次数ごとに組み立てて逆の複体の射ができる。従ってもちろん擬同型である。逆が成り立たないことは $P^\bullet\to M[0]$ の例で分かる。さらに各次数の加群が同型であっても、指定した $f^n$ が零写像なら、コホモロジーが非零の場合は擬同型とは限らない。比較対象の見た目ではなく、射が実際に誘導する写像を見る。
コホモロジー群の抽象的な一致との関係。 $C^\bullet$ と $D^\bullet$ のコホモロジー群が各次数で同型であっても、与えた射 $f$ が零写像なら、その同型を誘導しないことがある。例えば $C=D=M[0]$ で $M\ne0$ とし、$f=0$ とすると、両複体のコホモロジーは当然一致するが、$H^0(f)=0$ は同型ではない。逆に、二つの複体の間に一つの直接の擬同型射がなくても、第三の複体を通じた擬同型の列で結ばれる場合がある。この違いは導来圏で複体を比較するときに大切である。
非輪状性との関係。 非輪状複体を他の複体に直和で加えても、元の複体を入れる自然な射は擬同型になる。実際、加群の複体では $H^n(C^\bullet\oplus A^\bullet)\cong H^n(C^\bullet)\oplus H^n(A^\bullet)$ であり、$A$ が非輪状なら第二項は零である。だが非輪状複体の項は必ず零というわけではない。先の $\mathbb Z$ の三項複体がその例である。擬同型が「不要な項を無視する」道具になる理由は、こうした非輪状な部分をコホモロジーが検出しないことにある。
短完全列との関係。 $0\to A^\bullet\to B^\bullet\to C^\bullet\to0$ が各次数で完全なら、コホモロジーの長完全列がある。$A^\bullet$ が非輪状なら $B^\bullet\to C^\bullet$ は擬同型であり、$C^\bullet$ が非輪状なら $A^\bullet\to B^\bullet$ は擬同型である。これは長完全列で非輪状な部分に当たる群がすべて零になるためである。使う側の注意は、複体の各次数で正確に完全な短完全列が必要だということである。単なる項の列から長完全列を作ることはできない。
準同型との名前の違い。 加群の準同型は加法とスカラー倍を保つ写像であり、複体の射の各成分も準同型である。しかし「擬同型」はそれに加えて全次数のコホモロジー上で同型を要求する、複体の射についての特別な性質である。個々の加群の準同型に対して、コホモロジーを指定せずに擬同型という語を使うことは通常しない。
複体の射を鎖ホモトピーで同一視してできるホモトピー圏では、鎖ホモトピー同値が可逆になる。しかし、非輪状だが可縮でない複体は零対象と同型にならない。導来圏はさらに擬同型を可逆化する。したがって非輪状複体は導来圏で零対象と同型になり、$P^\bullet\to M[0]$ のような分解は導来圏で同型になる(StacksDerived Section 13.11)。
この可逆化は、擬同型 $f$ に対して元の複体の圏の中で逆の成分写像を発見する操作ではない。導来圏に新しい射を許し、$f$ をそこで同型として扱う構成である。したがって「導来圏で同型」と「元の複体間に直接の擬同型射がある」は言葉の使い方に注意が要る。複体を擬同型のジグザグで比較することを、文脈によって「擬同型な複体」と呼ぶ場合があるが、定義に戻れば個々の矢印について何が同型を誘導するかを確かめられる。
射影分解や入射分解を選ぶのは、擬同型でコホモロジーを保存しながら、別の関手を適用しやすい複体に置き換えるためである。ただし任意の関手が擬同型を擬同型へ送るとは限らない。例えば $P^\bullet\to M[0]$ の例を $\mathbb Z/2\mathbb Z$ とテンソルすると、$P^\bullet\otimes_{\mathbb Z}\mathbb Z/2\mathbb Z$ の微分 $2$ 倍写像は零になり、次数 $-1$ に新しいコホモロジーが現れる。一方 $M[0]\otimes_{\mathbb Z}\mathbb Z/2\mathbb Z$ は次数 $0$ にだけある。従ってこのテンソル後の射は擬同型ではない。導来テンソル積では適切な平坦または射影的な置換を選ぶ理由がここにある。
同じ注意は層の大域切断にも現れる。環付き空間上の層の複体 $\mathcal F^\bullet$ から K 入射的な層の複体 $\mathcal I^\bullet$ への擬同型を取り、大域切断を施すと、$H^n(\Gamma(X,\mathcal I^\bullet))$ が $\mathcal F^\bullet$ の $n$ 次超コホモロジーを与える(StacksUnbounded Section 20.28)。下に有界な場合には適切な入射分解も使える。「非輪状な複体」は本記事では全コホモロジーが零の複体を指し、解消先の条件ではない。元の層の複体にそのまま大域切断を施しても同じ答えになるとは限らない。擬同型は「何を保存したいか」を指定するが、その後に使う関手が保存性を持つかどうかは別途検討が必要である。
具体的な射が擬同型かを判定するときは、まずそれが複体の射かを確かめる。微分との可換性がなければ、そもそもコホモロジーへの写像 $H^n(f)$ は定まらない。次に各複体のコサイクルとコバウンダリーを計算して $H^n$ を求め、誘導写像が単射かつ全射かを調べる。次数が有限個しかない複体では、この直接計算が最も確実である。
計算が複雑なら、写像錐を作ってその非輪状性を見る。短完全列に組み込めるなら、長完全列を使って既知の非輪状な複体に帰着する。鎖ホモトピー逆を実際に構成できれば擬同型だが、逆が見つからないだけで擬同型を否定してはいけない。非可縮な非輪状複体という反例が示すように、必要条件と十分条件を取り違えないことが肝心である。
最後に、比較したい複体の次数規約を揃える。鎖複体では微分が次数を下げ、コチェイン複体では上げる。射影分解を負のコチェイン次数に置くのか、非負の鎖次数に置くのかで式の添字は変わるが、「全次数のホモロジーを同型にする」という本質は変わらない。写像錐の負号や次数移動も規約に依存するため、他の文献の式を使うときには定義から確認する。
擬同型と非輪状複体の定義は StacksDefQis Definition 12.13.10 に従った。写像錐の次数と符号は StacksCone Definition 13.9.1、錐と長完全列の関係、擬同型の可逆化による導来圏の構成は StacksDerived Section 13.11 による。射影・入射分解と導来関手への接続は、同節の記述と StacksModules Section 15.57 を参照した。層の複体の K 入射的解消による導来大域切断の計算は StacksUnbounded Section 20.28 による。
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