Eulerの四辺形定理

同義語:オイラーの四辺形定理Euler's quadrilateral theorem

概要

Eulerの四辺形定理(Euler's quadrilateral theorem)とは、四角形 $ABCD$ の 4 辺の長さを $a,b,c,d$、対角線の長さを $p,q$、2 本の対角線の中点どうしの距離を $m$ とするとき、$a^2+b^2+c^2+d^2=p^2+q^2+4m^2$ が成り立つという定理である。4 点は異なればよく、凹四角形・辺が交差した四角形・同じ平面の上にない 4 点でも成り立つ。系として $a^2+b^2+c^2+d^2\ge p^2+q^2$ が成り立ち、どの 3 点も一直線上にないとき、等号は平行四辺形のときに限る(平行四辺形の法則とその逆)。$\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{DC}$ が同じ向きの台形では、$m$ は底辺の長さの差の半分で、$p^2+q^2=b^2+d^2+2ac$ となる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Varignonの定理, 中線定理(高校数学), ベクトルの内積(高校数学)

高校での出発点:辺の 2 乗の和と対角線の 2 乗の和

平行四辺形では、4 つの辺の長さの 2 乗の和は、2 本の対角線の長さの 2 乗の和に等しい。これは 中線定理(高校数学) で証明した平行四辺形の法則である。では、平行四辺形でない四角形では、2 つの和はどれだけずれるのだろうか。座標で計算してみる。

凸四角形で 2 つの和を比べる

$A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(10,6)$、$D(2,8)$ の四角形 $ABCD$ を考える(Varignonの定理 の最初の例と同じ四角形)。
(1) 4 辺の長さの 2 乗は、2 点間の距離の公式で
$$ AB^2=8^2+0^2=64,\quad BC^2=2^2+6^2=40,\quad CD^2=(-8)^2+2^2=68,\quad DA^2=(-2)^2+(-8)^2=68 $$
で、和は $64+40+68+68=240$ である。
(2) 対角線の長さの 2 乗は $AC^2=10^2+6^2=136$、$BD^2=(-6)^2+8^2=100$ で、和は $236$ である。
(3) 差は $240-236=4$ である。対角線 $AC$ の中点は $M(5,3)$、対角線 $BD$ の中点は $N(5,4)$ で、その距離は $MN=1$ である。差の $4$ は、ちょうど $4\cdot MN^2=4\cdot1^2$ に等しい。

平行四辺形では差が 0

$A(0,0)$、$B(5,0)$、$C(7,3)$、$D(2,3)$ は、$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}=(5,0)$ なので平行四辺形である。
(1) 4 辺の 2 乗は $AB^2=25$、$BC^2=2^2+3^2=13$、$CD^2=25$、$DA^2=13$ で、和は $76$ である。
(2) 対角線の 2 乗は $AC^2=7^2+3^2=58$、$BD^2=(-3)^2+3^2=18$ で、和は $76$ である。
(3) 差は $0$ である。平行四辺形の対角線は互いの中点で交わるので、2 本の対角線の中点はどちらも $\left(\dfrac72,\dfrac32\right)$ で一致し、その距離は $0$ である。

四角形 ABCD の 2 本の対角線(破線)の中点 M、N を結ぶ赤い線分の長さ m が、辺の 2 乗の和と対角線の 2 乗の和の差を決める 四角形 ABCD の 2 本の対角線(破線)の中点 M、N を結ぶ赤い線分の長さ m が、辺の 2 乗の和と対角線の 2 乗の和の差を決める
2 つの例では、差が「対角線の中点どうしの距離の 2 乗の 4 倍」になった。この記事で答える問いは次の 4 つである。

  1. 差はいつも「対角線の中点どうしの距離の 2 乗の 4 倍」か。→ thm-euq-main
  2. 差が $0$ になるのはどんな四角形か。→ cor-euq-parallelogram
  3. 中点どうしの距離は、辺で表せるか。台形ではどうなるか。→ prop-euq-mn、cor-euq-trapezoid
  4. 4 点が同じ平面の上にないとき、また「長さ」の測り方を変えたときはどうか。→ ex-euq-space、ex-euq-cx-taxicab
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    平行四辺形の法則$m=0$ の場合(cor-euq-parallelogram)内積から来る長さの特徴
    中線定理を 3 回使う主定理の証明 1(prf-euq-median)2 乗の和の分解
    位置ベクトルの内積の展開主定理の証明 2(prf-euq-vector)交差項が打ち消し合う恒等式
    台形の対角線の長さ$p^2+q^2=b^2+d^2+2ac$(cor-euq-trapezoid)ベクトルの差の長さ

記号の準備

四角形の辺・対角線と中点の距離

平面または空間の異なる 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ について、四角形 $ABCD$ の 4 辺と 2 本の対角線の長さを
$$ a=AB,\quad b=BC,\quad c=CD,\quad d=DA,\qquad p=AC,\quad q=BD $$
とおく。対角線 $AC$ の中点を $M$、対角線 $BD$ の中点を $N$ とし、その距離を $m=MN$ とする。

四角形は凸でも凹でもよく、辺が交差していてもよい。4 点が同じ平面の上になくてもよい(そのときは 空間の四角形の中点と四面体 で扱う「ねじれた四角形」である)。以下の主定理とその証明は、どの場合にもそのまま成り立つ。

中点の距離を求める
  1. ex-euq-start の四角形では $M(5,3)$、$N(5,4)$ で、$m=1$ である。
  2. 凹四角形 $A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(4,2)$、$D(2,8)$ では、$M=\left(\dfrac{0+4}2,\dfrac{0+2}2\right)=(2,1)$、$N=\left(\dfrac{8+2}2,\dfrac{0+8}2\right)=(5,4)$ で、$m^2=3^2+3^2=18$ である。4 辺の 2 乗の和は $64+20+40+68=192$、対角線の 2 乗の和は $20+100=120$ で、差は $72=4\cdot18=4m^2$ である。

主定理:Euler の四辺形定理

Euler の四辺形定理

平面または空間の異なる 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ について、def-euq-notation の記号で
$$ a^2+b^2+c^2+d^2=p^2+q^2+4m^2 $$
が成り立つ。つまり、4 辺の長さの 2 乗の和は、2 本の対角線の長さの 2 乗の和と、対角線の中点どうしの距離の 2 乗の 4 倍の和に等しい。

2 通りに証明する。1 つ目は中線定理だけを使う。2 つ目は位置ベクトルの内積を使い、なぜ「4 倍」になるのかが式の形から見える。
中線定理(中線定理(高校数学))は、3 点 $X$、$Y$、$Z$($Y\ne Z$)と線分 $YZ$ の中点 $K$ について
$$ XY^2+XZ^2=2\left(XK^2+KY^2\right) $$
が成り立つという定理である。$X$ が直線 $YZ$ の上にある場合(三角形がつぶれる場合)も含めて成り立つ。

中線定理を 3 回使う

方針:対角線 $BD$ の中点 $N$ と頂点を結ぶ線分 $AN$、$CN$ を補助にする。三角形 $ABD$、$CBD$ で中線定理を使って $AN^2$、$CN^2$ を出し、最後に三角形 $NAC$ で中線定理を使う(図 2)。
段 1(三角形 $ABD$)。$N$ は線分 $BD$ の中点で、$BN=\dfrac q2$ である。中線定理($X=A$、$Y=B$、$Z=D$、$K=N$)より
$$ a^2+d^2=AB^2+AD^2=2\left(AN^2+\left(\frac q2\right)^2\right)=2AN^2+\frac{q^2}2 $$
である。
段 2(三角形 $CBD$)。同じく中線定理($X=C$、$Y=B$、$Z=D$、$K=N$)より
$$ b^2+c^2=CB^2+CD^2=2CN^2+\frac{q^2}2 $$
である。
段 3(足す)。段 1 と段 2 を足すと
$$ a^2+b^2+c^2+d^2=2\left(AN^2+CN^2\right)+q^2 $$
である。
段 4(三角形 $NAC$)。$M$ は線分 $AC$ の中点で、$AM=\dfrac p2$、$NM=m$ である。中線定理($X=N$、$Y=A$、$Z=C$、$K=M$)より
$$ AN^2+CN^2=NA^2+NC^2=2\left(m^2+\left(\frac p2\right)^2\right)=2m^2+\frac{p^2}2 $$
である。
段 5(代入する)。段 4 を段 3 に代入すると
$$ a^2+b^2+c^2+d^2=2\left(2m^2+\frac{p^2}2\right)+q^2=p^2+q^2+4m^2 $$
となる。$\square$

中線定理を三角形 ABD と CBD で使って AN、CN を出し、最後に三角形 NAC で中線 NM に使う 中線定理を三角形 ABD と CBD で使って AN、CN を出し、最後に三角形 NAC で中線 NM に使う

証明 1 の各段を数値で追う

ex-euq-start の四角形で、$N(5,4)$ から $AN^2=5^2+4^2=41$、$CN^2=5^2+2^2=29$ である。
段 1:$a^2+d^2=64+68=132$、$2AN^2+\dfrac{q^2}2=82+50=132$。段 2:$b^2+c^2=40+68=108$、$2CN^2+\dfrac{q^2}2=58+50=108$。段 4:$AN^2+CN^2=70$、$2m^2+\dfrac{p^2}2=2+68=70$。どれも等しい。

対角線の中点を原点にした位置ベクトル

方針:$M$ を原点にとり、4 つの頂点を 3 本のベクトル $\vec u$、$\vec v$、$\vec w$ で書く。4 辺のベクトルの長さの 2 乗を内積で展開すると、2 本のベクトルの内積の項(交差項)がすべて打ち消し合う。
段 1(頂点を書く)。$\vec u=\overrightarrow{MC}$、$\vec w=\overrightarrow{MN}$、$\vec v=\overrightarrow{ND}$ とおく。$M$ は $AC$ の中点、$N$ は $BD$ の中点なので、$M$ を始点とする位置ベクトルは
$$ \overrightarrow{MA}=-\vec u,\qquad \overrightarrow{MC}=\vec u,\qquad \overrightarrow{MB}=\vec w-\vec v,\qquad \overrightarrow{MD}=\vec w+\vec v $$
である。長さは $\lvert\vec u\rvert=\dfrac p2$、$\lvert\vec v\rvert=\dfrac q2$、$\lvert\vec w\rvert=m$ である。
段 2(4 辺のベクトル)。終点から始点を引いて
$$ \overrightarrow{AB}=\vec u-\vec v+\vec w,\quad \overrightarrow{BC}=\vec u+\vec v-\vec w,\quad \overrightarrow{CD}=-\vec u+\vec v+\vec w,\quad \overrightarrow{DA}=-(\vec u+\vec v+\vec w) $$
である。
段 3(1 辺の展開)。符号 $s_1,s_2,s_3$(どれも $+1$ か $-1$)について、内積の分配法則と $s_i^2=1$ から
$$ \lvert s_1\vec u+s_2\vec v+s_3\vec w\rvert^2=\lvert\vec u\rvert^2+\lvert\vec v\rvert^2+\lvert\vec w\rvert^2+2s_1s_2\,\vec u\cdot\vec v+2s_2s_3\,\vec v\cdot\vec w+2s_3s_1\,\vec w\cdot\vec u $$
である。$\overrightarrow{DA}$ は $-(\vec u+\vec v+\vec w)$ で、全体に $-1$ を掛けても長さは変わらないので、$s_1=s_2=s_3=1$ として扱える。
段 4(交差項の係数)。段 2 の符号を段 3 の式に入れると、交差項の係数は次の表のとおりである。

辺ベクトル$\vec u\cdot\vec v$$\vec v\cdot\vec w$$\vec w\cdot\vec u$
$AB$$\vec u-\vec v+\vec w$$-2$$-2$$+2$
$BC$$\vec u+\vec v-\vec w$$+2$$-2$$-2$
$CD$$-\vec u+\vec v+\vec w$$-2$$+2$$-2$
$DA$$\vec u+\vec v+\vec w$(符号を除いて)$+2$$+2$$+2$
和$0$$0$$0$

どの列も和が $0$ なので、4 辺を足すと交差項はすべて消える。
段 5(足す)。残るのは 4 辺それぞれの $\lvert\vec u\rvert^2+\lvert\vec v\rvert^2+\lvert\vec w\rvert^2$ なので
$$ a^2+b^2+c^2+d^2=4\left(\lvert\vec u\rvert^2+\lvert\vec v\rvert^2+\lvert\vec w\rvert^2\right)=\underbrace{4\cdot\frac{p^2}4}_{p^2}+\underbrace{4\cdot\frac{q^2}4}_{q^2}+4m^2 $$
となる。$\square$

証明 2 では、4 点が同じ平面の上にあることも、四角形が凸であることも使っていない。使ったのは、ベクトルの足し算と内積の性質(分配法則・対称性)だけである。だから thm-euq-main は、凹四角形でも、辺が交差した四角形でも、空間のねじれた四角形でも成り立つ。係数の $4$ は「4 辺それぞれに $\lvert\vec w\rvert^2=m^2$ が 1 回ずつ現れる」ことから来ている。

系:平行四辺形の法則とその逆

$4m^2\ge0$ なので、thm-euq-main からすぐに不等式が出る。等号が成り立つのは $m=0$ のときである。

辺の 2 乗の和と対角線の 2 乗の和

平面または空間の異なる 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ について
$$ a^2+b^2+c^2+d^2\ge p^2+q^2 $$
が成り立つ。等号が成り立つのは、2 本の対角線の中点が一致するとき、つまり $\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ のときに限る。とくに、4 点のどの 3 点も一直線上にないなら、等号が成り立つのは $ABCD$ が平行四辺形のときに限る。

thm-euq-main より $a^2+b^2+c^2+d^2-(p^2+q^2)=4m^2\ge0$ で、等号は $m=0$、つまり $M=N$ のときに限る。位置ベクトルで書くと $M=N$ は
$$ \frac{\vec a+\vec c}2=\frac{\vec b+\vec d}2\iff\vec b-\vec a=\vec c-\vec d\iff\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC} $$
と同値である。どの 3 点も一直線上にないとき、$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ は、向かい合う辺 $AB$、$DC$ が平行で長さが等しいこと、つまり $ABCD$ が平行四辺形であることと同値である。$\square$

等号の場合 $a^2+b^2+c^2+d^2=p^2+q^2$ が平行四辺形の法則で、中線定理(高校数学) の命題(平行四辺形の法則)で内積を使って証明されている。cor-euq-parallelogram は、その 逆 も成り立つことを言っている。4 辺の 2 乗の和と 2 本の対角線の 2 乗の和が等しい四角形は、平行四辺形しかない。

平行四辺形の法則Euler の四辺形定理
仮定$ABCD$ が平行四辺形異なる 4 点(空間でもよい)
式$a^2+b^2+c^2+d^2=p^2+q^2$$a^2+b^2+c^2+d^2=p^2+q^2+4m^2$
等号・特別な場合—$m=0$ のときが左の式
逆等式が成り立てば平行四辺形(cor-euq-parallelogram)—
ベクトルの形$\lvert\vec x+\vec y\rvert^2+\lvert\vec x-\vec y\rvert^2=2\lvert\vec x\rvert^2+2\lvert\vec y\rvert^2$3 本のベクトル $\vec u,\vec v,\vec w$ の恒等式(prf-euq-vector)
長方形と Pythagoras の定理

$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(4,3)$、$D(0,3)$ の長方形では、$a=c=4$、$b=d=3$、$p=q=5$ で、$m=0$ である。thm-euq-main は
$$ 4^2+3^2+4^2+3^2=5^2+5^2\qquad(50=50) $$
となる。長方形では両辺が $2$ で割れて $4^2+3^2=5^2$ になり、直角三角形 $ABC$ の Pythagoras の定理そのものである。

中点の距離を辺で書く:台形の場合

$m$ は対角線の中点どうしの距離だった。これを辺のベクトルで書くと、台形で使いやすい形になる。

中点を結ぶベクトル

def-euq-notation の記号で
$$ \overrightarrow{NM}=\frac12\left(\overrightarrow{DC}-\overrightarrow{AB}\right) $$
が成り立つ。したがって $4m^2=\left\lvert\overrightarrow{DC}-\overrightarrow{AB}\right\rvert^2$ で、thm-euq-main は
$$ a^2+b^2+c^2+d^2=p^2+q^2+\left\lvert\overrightarrow{DC}-\overrightarrow{AB}\right\rvert^2 $$
とも書ける。

位置ベクトルで $\overrightarrow{NM}=\dfrac{\vec a+\vec c}2-\dfrac{\vec b+\vec d}2=\dfrac12\bigl\{(\vec c-\vec d)-(\vec b-\vec a)\bigr\}=\dfrac12\left(\overrightarrow{DC}-\overrightarrow{AB}\right)$ である。両辺の長さの 2 乗をとると $m^2=\dfrac14\left\lvert\overrightarrow{DC}-\overrightarrow{AB}\right\rvert^2$ で、$4$ 倍すれば $4m^2$ の式になる。$\square$

ex-euq-start の四角形では $\overrightarrow{DC}=(8,-2)$、$\overrightarrow{AB}=(8,0)$ で、$\dfrac12\{(8,-2)-(8,0)\}=(0,-1)$ である。これは $\overrightarrow{NM}=(5,3)-(5,4)=(0,-1)$ と一致する。
台形では、$\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{DC}$ が同じ向きに平行なので、その差の長さは長さの差になる。

台形の対角線

$AB\parallel DC$ の台形 $ABCD$($\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{DC}$ が同じ向き)では、$m=\dfrac{\lvert a-c\rvert}2$ であり
$$ p^2+q^2=b^2+d^2+2ac $$
が成り立つ。

$\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{DC}$ は同じ向きで長さが $a$、$c$ なので、$\overrightarrow{DC}=\dfrac ca\overrightarrow{AB}$ である。よって $\overrightarrow{DC}-\overrightarrow{AB}=\left(\dfrac ca-1\right)\overrightarrow{AB}$ の長さは $\left\lvert\dfrac ca-1\right\rvert a=\lvert c-a\rvert$ で、prop-euq-mn より $m=\dfrac{\lvert a-c\rvert}2$ である。prop-euq-mn の式に入れると
$$ a^2+b^2+c^2+d^2=p^2+q^2+(a-c)^2=p^2+q^2+a^2-2ac+c^2 $$
で、両辺から $a^2+c^2$ を引いて移項すると $p^2+q^2=b^2+d^2+2ac$ となる。$\square$

台形で確かめる
  1. 台形 $A(0,0)$、$B(9,0)$、$C(7,4)$、$D(1,4)$ では、$a=9$、$c=CD=6$、$b^2=(-2)^2+4^2=20$、$d^2=1^2+4^2=17$ である。対角線は $p^2=AC^2=7^2+4^2=65$、$q^2=BD^2=(-8)^2+4^2=80$ で、$p^2+q^2=145$ である。一方 $b^2+d^2+2ac=20+17+108=145$ で、一致する。中点は $M\left(\dfrac72,2\right)$、$N(5,2)$ で、$m=\dfrac32=\dfrac{9-6}2$ である。
  2. 等脚台形 $A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(6,4)$、$D(2,4)$ では、$a=8$、$c=4$、$b^2=d^2=20$、$p^2=q^2=52$ で、$p^2+q^2=104=20+20+2\cdot8\cdot4$ である。中点は $M(3,2)$、$N(5,2)$ で、$m=2=\dfrac{8-4}2$ である。

台形では、対角線の中点 M、N が底辺に平行な直線の上に並び、その距離は 2 つの底辺の長さの差の半分になる 台形では、対角線の中点 M、N が底辺に平行な直線の上に並び、その距離は 2 つの底辺の長さの差の半分になる
等脚台形では $p=q$、$b=d$ なので、cor-euq-trapezoid は $p^2=b^2+ac$ となる。これは、円に内接する四角形についての Ptolemyの定理 $pq=ac+bd$ を等脚台形(円に内接する)に当てはめた式と同じである。

空間の四角形と正四面体

prf-euq-vector は空間でもそのまま使えるので、4 点が同じ平面の上になくても thm-euq-main は成り立つ。

ねじれた四角形

$A(0,0,0)$、$B(4,0,0)$、$C(4,2,0)$、$D(0,0,6)$(空間の四角形の中点と四面体 の最初の例と同じ 4 点)では
$$ a^2=16,\quad b^2=4,\quad c^2=(-4)^2+(-2)^2+6^2=56,\quad d^2=36,\qquad p^2=20,\quad q^2=(-4)^2+6^2=52 $$
である。中点は $M(2,1,0)$、$N(2,0,3)$ で、$m^2=0^2+1^2+3^2=10$ である。左辺は $16+4+56+36=112$、右辺は $20+52+4\cdot10=112$ で、一致する。

正四面体の向かい合う辺の中点

すべての辺の長さが $s$ の正四面体 $ABCD$ を、四角形 $ABCD$ として見る。4 辺も 2 本の対角線(正四面体の向かい合う辺 $AC$、$BD$)もすべて長さ $s$ なので、thm-euq-main は $4s^2=2s^2+4m^2$ となり
$$ m^2=\frac{s^2}2,\qquad m=\frac s{\sqrt2} $$
である。$m$ は、正四面体の向かい合う 2 辺 $AC$、$BD$ の中点どうしの距離である。
座標で確かめる。$A(0,0,0)$、$B(2,2,0)$、$C(2,0,2)$、$D(0,2,2)$ は、辺の長さ $s=2\sqrt2$ の正四面体である。$M=(1,0,1)$、$N=(1,2,1)$ で $m=2$ であり、$\dfrac s{\sqrt2}=\dfrac{2\sqrt2}{\sqrt2}=2$ と一致する。

正四面体の向かい合う 2 辺 AC、BD の中点 M、N の距離は、辺の長さの 1/√2 倍になる 正四面体の向かい合う 2 辺 AC、BD の中点 M、N の距離は、辺の長さの 1/√2 倍になる

大学数学で見る:2 乗の和の分解と内積

prf-euq-median で 3 回使った中線定理は、次の「2 乗の和の分解」の、点が 2 個の場合である。$n$ 個の点 $P_1,\dots,P_n$ の位置ベクトルの平均を $G$(重心)とすると、どの点 $X$ についても
$$ \sum_{i=1}^nXP_i^2=\sum_{i=1}^nGP_i^2+n\,XG^2 $$
が成り立つ。$n=2$ で $P_1=Y$、$P_2=Z$ とすると $G$ は線分 $YZ$ の中点 $K$ で、$XY^2+XZ^2=2KY^2+2XK^2$、つまり中線定理になる。数直線の上の点で考えると、これは 平均値と二乗誤差 の「平均のまわりの 2 乗の和」の分解と同じ式で、力学では慣性モーメントの平行軸の定理とよばれる。Euler の四辺形定理は、この分解を 3 回組み合わせたものである。

2 乗の和の分解の証明と、6 本の距離の 2 乗の和を開く

位置ベクトルを $\vec p_i$、$\vec g=\dfrac1n\sum\vec p_i$、$\vec x$ とする。$\vec p_i-\vec x=(\vec p_i-\vec g)+(\vec g-\vec x)$ を内積で展開すると

$$\sum_{i=1}^n\lvert\vec p_i-\vec x\rvert^2=\sum_{i=1}^n\lvert\vec p_i-\vec g\rvert^2+2(\vec g-\vec x)\cdot\sum_{i=1}^n(\vec p_i-\vec g)+n\lvert\vec g-\vec x\rvert^2$$

で、$\sum(\vec p_i-\vec g)=\sum\vec p_i-n\vec g=\vec 0$ なので真ん中の項は消える。

4 点の場合には、6 本の距離(4 辺と 2 本の対角線)の 2 乗の和が $4\sum GP_i^2$ に等しいことも、同じ展開から出る。ex-euq-start の四角形では $G\left(5,\dfrac72\right)$ で、$240+236=476$、$4\sum GP_i^2=476$ である。thm-euq-main は、この 476 を「辺の側」と「対角線の側」に分けたときの差が $4m^2$ であることを言っている。


prf-euq-vector で使ったのは、内積の分配法則と対称性だけだった。したがって thm-euq-main は、内積が決まっている空間(内積空間)のどの 4 点についても成り立つ。逆に、長さの測り方が内積から来ていなければ、$m=0$ の場合である平行四辺形の法則がすでに崩れることがある。長さが平行四辺形の法則を満たすことが、その長さが内積から来るための条件であること(Jordan–von Neumann の定理)は、中線定理(高校数学) で証明されている。

例と反例

thm-euq-main の読み違いや、仮定を外したときに崩れることを並べる。

外す条件・取り違え反例成り立たなくなること
$m$ は対角線の中点どうしの距離$m$ を対角線の交点と中点の距離にする(ex-euq-cx-intersection)等式 $a^2+b^2+c^2+d^2=p^2+q^2+4m^2$
係数は $4$$4m^2$ を $2m^2$ にする(ex-euq-cx-intersection)同じ等式
長さは内積から来る(ふつうの距離)座標の差の絶対値の和で測る(ex-euq-cx-taxicab)$m=0$ の場合の平行四辺形の法則
反例:交点までの距離や係数 2 では合わない

ex-euq-start の四角形で、対角線 $AC$ と $BD$ の交点を $X$ とする。$AC$ 上の点 $t(10,6)$ と $BD$ 上の点 $(8,0)+s(-6,8)$ が一致する条件 $10t=8-6s$、$6t=8s$ から $s=\dfrac{12}{29}$、$t=\dfrac{16}{29}$ で、$X\left(\dfrac{160}{29},\dfrac{96}{29}\right)$ である。
(1) $X$ と $M(5,3)$ の距離の 2 乗は $\left(\dfrac{15}{29}\right)^2+\left(\dfrac9{29}\right)^2=\dfrac{306}{841}$ で、これを $m^2$ の代わりに使うと右辺は $236+\dfrac{1224}{841}$ になり、左辺の $240$ と一致しない($\dfrac{1224}{841}$ は $4$ より小さい)。中点 $M$、$N$ と交点 $X$ は一般に別の点である。
(2) 正しい $m=1$ を使っても、係数を $2$ にすると右辺は $236+2=238$ で、$240$ と一致しない。

反例:長さを座標の差の絶対値の和で測る

平面の 2 点 $(x_1,y_1)$、$(x_2,y_2)$ の「長さ」を $\lvert x_1-x_2\rvert+\lvert y_1-y_2\rvert$ で測る(格子状の道を進む道のりで、タクシー距離とよばれる)。正方形 $A(0,0)$、$B(1,0)$、$C(1,1)$、$D(0,1)$ では、4 辺の長さはどれも $1$ で、2 乗の和は $4$ である。対角線の長さは $AC=1+1=2$、$BD=1+1=2$ で、2 乗の和は $8$ である。正方形なので $m=0$ であるが、$4\ne8$ で、thm-euq-main は成り立たない。この長さは内積から来ていない(中線定理(高校数学) の反例と同じ現象)。

鈍角をもつ四角形で確かめる

$A(0,0)$、$B(7,0)$、$C(8,2)$、$D(-3,5)$ の四角形(頂点 $A$ の角は鈍角)について、$a^2+b^2+c^2+d^2$、$p^2+q^2$、$m^2$ を求め、thm-euq-main が成り立つことを確かめよ。また、$\dfrac12\left\lvert\overrightarrow{DC}-\overrightarrow{AB}\right\rvert$ が $m$ に等しいことを確かめよ。

解答を開く

$a^2=49$、$b^2=1^2+2^2=5$、$c^2=11^2+(-3)^2=130$、$d^2=3^2+5^2=34$ で、和は $218$ である。$p^2=AC^2=8^2+2^2=68$、$q^2=BD^2=(-10)^2+5^2=125$ で、和は $193$ である。中点は $M(4,1)$、$N\left(2,\dfrac52\right)$ で、$m^2=2^2+\left(\dfrac32\right)^2=\dfrac{25}4$、$4m^2=25$ である。$193+25=218$ で、thm-euq-main が成り立つ。また $\overrightarrow{DC}=(11,-3)$、$\overrightarrow{AB}=(7,0)$ から $\dfrac12(4,-3)=\left(2,-\dfrac32\right)$ で、その長さ $\dfrac52$ は $m=\sqrt{\dfrac{25}4}=\dfrac52$ に等しい(prop-euq-mn)。

さらに先へ

  • 対角線の中点 $M$、$N$ と、Varignonの定理 の平行四辺形の中心(線分 $MN$ の中点)は一直線上にある。4 本の直線がつくる完全四辺形では、3 本の対角線の中点が一直線上に並ぶ。これが次の記事 Newton–Gauss線 である。
  • 四角形の辺と対角線の間の関係には、ほかに円に内接する四角形の Ptolemyの定理 $pq=ac+bd$ や、面積を 4 辺で表す Brahmaguptaの公式 がある。Euler の四辺形定理は、円に内接するかどうかによらず成り立つ点が違う。
  • 三角形の辺の 2 乗と点の間の距離の関係は、Stewartの定理 でも扱う。

関連項目

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する