直方体を異なる立方体に分ける

同義語:立方体の立方体分割cubing the cube

概要

直方体を異なる立方体に分ける(cubing the cube)とは、直方体(立方体を含む)を、大きさがすべて違う 2 個以上の有限個の立方体に、面を平行にして重ならず隙間なく分けることであり、そのような分け方は存在しない。分けられたとすると、底面は大きさがすべて違う正方形に分かれ、そのいちばん小さい正方形は底面の周に触れないので、その上の立方体 $K_1$ は自分より高い立方体に 4 方を囲まれる。$K_1$ の上の面はさらに小さい正方形に分かれ、そのいちばん小さい正方形の上の立方体 $K_2$ も同じように囲まれる。これが限りなく続き、立方体が有限個であることに反する。同じ大きさを許せば、一辺 $2$ の立方体を一辺 $1$ の立方体 $8$ 個に分けるように分けられる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 長方形を正方形に分ける, 正方形を異なる正方形に分ける, 数学的帰納法と整列性

高校での出発点:立方体を立方体で埋める

正方形を異なる正方形に分ける では、一辺 $112$ の正方形が、大きさがすべて違う $21$ 個の正方形に分けられることを確かめた。同じことを空間で考える。直方体や立方体を、大きさがすべて違う立方体で、隙間なく重ならずに埋めることはできるだろうか。
大きさが同じものを許せば、立方体を立方体に分けるのはやさしい。立体を高さで輪切りにして、1 段ずつ上から見た図で表す。

同じ大きさを許して立方体を分ける
  1. 一辺 $2$ の立方体は、一辺 $1$ の立方体 $2^3=8$ 個に分けられる。
  2. 一辺 $3$ の立方体は、一辺 $2$ の立方体 $1$ 個と一辺 $1$ の立方体 $19$ 個、合わせて $20$ 個に分けられる(図 1)。一辺 $2$ の立方体を隅に置くと、高さ $0$ から $2$ までの 2 段では、それぞれ一辺 $1$ の立方体が $9-4=5$ 個ずつ残りを埋め、高さ $2$ から $3$ の段は一辺 $1$ の立方体 $9$ 個で埋まる。個数は $1+5+5+9=20$ で、体積の和は
    $$ 2^3+19\times1^3=8+19=27=3^3 $$
    である。
  3. 一辺 $4$ の立方体は、一辺 $2$ の立方体 $8$ 個に分けられる。そのうち 1 個を一辺 $1$ の立方体 $8$ 個に分け直すと、一辺 $2$ が $7$ 個と一辺 $1$ が $8$ 個、合わせて $15$ 個になる(図 2)。体積の和は $7\times2^3+8\times1^3=56+8=64=4^3$ である。
  4. 分割の中の立方体を 1 つ選んで、縦・横・高さを 2 等分して $8$ 個に分けると、個数は $7$ 増える。(1) の $8$ 個から $15,22,29,\dots$ 個、(2) の $20$ 個から $27,34,\dots$ 個の分割が作れる。

一辺 3 の立方体を、一辺 2 の立方体 1 個と一辺 1 の立方体 19 個に分けた図。高さ 1 ずつの 3 つの段を上から見ている 一辺 3 の立方体を、一辺 2 の立方体 1 個と一辺 1 の立方体 19 個に分けた図。高さ 1 ずつの 3 つの段を上から見ている
一辺 4 の立方体を、一辺 2 の立方体 7 個と一辺 1 の立方体 8 個に分けた図。上半分の右奥の区画だけを一辺 1 の立方体に分け直している 一辺 4 の立方体を、一辺 2 の立方体 7 個と一辺 1 の立方体 8 個に分けた図。上半分の右奥の区画だけを一辺 1 の立方体に分け直している
Wei26 によると、立方体を立方体(大きさは同じでもよい)に分けられる個数は
$$ 1,\ 8,\ 15,\ 20,\ 22,\ 27,\ 29,\ 34,\ 36,\ 38,\ 39,\ 41,\ 43,\ 45,\ 46 $$
と、$48$ 以上のすべての整数である(この記事では証明しない)。
では、大きさがすべて違う立方体ではどうか。平面では、正方形を大きさがすべて違う正方形に分けられた。空間では答えが逆になる。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 直方体を、大きさがすべて違う有限個の立方体に分けられるか。→ thm-cub-main
  2. 分けられないことを、平面の結果からどう導くか。→ lem-cub-face、lem-cub-well
  3. 平面では分けられるのに、なぜ空間では分けられないのか。→ rem-cub-plane
    高校の計算・考え方この記事の言葉大学の言葉
    立体を輪切りにして、1 段ずつ見る底面は正方形に分けられる次元を 1 つ下げる
    いちばん小さいものに注目するいちばん小さい立方体 $K_1$ と井戸極端なものを調べる議論
    小さいものがいくらでも続く$K_1,K_2,K_3,\dots$無限降下法

言葉の準備:立方体分割と面の分割

直方体を座標空間に置き、$0\le x\le a$、$0\le y\le b$、$0\le z\le c$ の部分とする。$z$ 座標を高さと呼び、$z=0$ の面を 底面 とする。立方体の「内部」は、立方体から 6 つの面を除いた部分である。

立方体分割

直方体 $B$ と、有限個の立方体 $K_1,\dots,K_n$ が次の 3 つの条件を満たすとき、$K_1,\dots,K_n$ を $B$ の 立方体分割 という。
(R1) どの $K_i$ も $B$ に含まれ、$K_i$ の面は $B$ の面に平行である。
(R2) 異なる 2 つの立方体は内部に共通の点をもたない。
(R3) $K_1,\dots,K_n$ を合わせると $B$ 全体になる。
立方体の一辺の長さがどの 2 つも違うとき、その立方体分割は 大きさがすべて違う という。

条件は 長方形を正方形に分ける の正方形分割の定義を、そのまま 1 次元上げたものである。ex-cub-easy の分割は、どれも立方体分割だが、大きさがすべて違うものではない。
立方体分割を平面の問題に戻す道具が、次の補題である。立方体の 6 つの面のうち、下の面を 底の面 と呼ぶ。

底面は正方形に分けられる

直方体 $B$ の立方体分割で、底面と共通の点をもつ立方体を「底面に立つ立方体」と呼ぶ。底面に立つ立方体は、底の面が $B$ の底面の上にあり、それらの底の面の全体は、底面(長方形)の正方形分割になる。立方体分割の大きさがすべて違えば、この正方形分割も大きさがすべて違う。ほかの 5 つの面についても同じである。

立方体 $K$ が底面の点 $(x,y,0)$ を含むとする。$K$ は $B$ に含まれるので、$K$ の点の高さはどれも $0$ 以上である。$K$ の面は座標平面に平行なので、$K$ の中で高さがいちばん低い点の集まりが底の面である。$K$ は高さ $0$ の点を含むので、底の面の高さは $0$、つまり底の面は $B$ の底面の上にある。
次に、底の面の全体が正方形分割の条件 (i)〜(iii)(長方形を正方形に分ける の定義)を満たすことを確かめる。

  • 条件 (i):底の面は正方形で、底面に含まれ、辺は底面の辺に平行である。
  • 条件 (ii):2 つの底の面が内部に共通の点をもつと、その点のすぐ上の小さな部分が 2 つの立方体の内部に入り、立方体分割の条件 (ii) に反する。
  • 条件 (iii):底面の点は、立方体分割の条件 (iii) からどれかの立方体に含まれ、上で見たとおり、その立方体の底の面に含まれる。
    底の面の一辺は立方体の一辺なので、立方体の大きさがすべて違えば底の面の大きさもすべて違う。ほかの面は、直方体の向きを変えて底面にすればよい。
補題を一辺 3 の分割で確かめる

ex-cub-easy (2) の一辺 $3$ の立方体の分割では、底面に立つのは一辺 $2$ の立方体 $1$ 個と一辺 $1$ の立方体 $5$ 個である。その底の面は、図 1 の左の図(高さ $0$ から $1$ の段を上から見た図)のとおり、一辺 $3$ の正方形を、一辺 $2$ の正方形 $1$ 個と一辺 $1$ の正方形 $5$ 個に分ける。面積の和は $4+5=9=3^2$ である。

大きさがすべて違う立方体分割の底面は、大きさがすべて違う正方形分割になる。そこで 長方形を正方形に分ける の定理「いちばん小さい正方形の位置」が使える。ただしその定理は正方形が 2 個以上のときの定理なので、底面が 1 個の正方形しかない場合を先に除いておく。

2 個以上の正方形に分かれる面がある

直方体を 2 個以上の立方体に分けた立方体分割では、6 つの面のうち少なくとも 1 つは、lem-cub-face の正方形分割が 2 個以上の正方形からなる。

底面の正方形分割が 1 個の正方形だけからなるとする。その正方形の一辺を $e$ とすると、底面は一辺 $e$ の正方形なので $a=b=e$ である。直方体の高さ $c$ について、$c=e$ なら直方体は一辺 $e$ の立方体で、底面に立つただ 1 つの立方体(一辺 $e$)が直方体全体と一致する。すると立方体分割の条件 (ii) から、ほかの立方体は内部をもてず、立方体が 2 個以上あることに反する。よって $c\ne e$ である。
このとき、$x=0$ の側面は横 $b=e$、縦 $c$ の長方形で、正方形ではない。lem-cub-face から、この側面は正方形分割され、正方形 1 個だけでは正方形でない長方形を埋められないので、2 個以上の正方形からなる。

いちばん小さい立方体の上にできる井戸

証明の中心は、次の補題である。長方形を正方形に分ける の定理「いちばん小さい正方形の位置」の証明では、周に触れた正方形の上に「井戸」ができることを使った。空間では、いちばん小さい立方体のまわりに必ず壁が立ち、その上に井戸ができる。

井戸の補題

直方体 $B$ を、大きさがすべて違う有限個の立方体に分けたとする。高さ $h$ の水平な平面の上にある長方形 $F$ について、底の面が $F$ に含まれる立方体($F$ の上に立つ立方体)の底の面の全体が、$F$ の 2 個以上の正方形からなる正方形分割になっているとする。その正方形分割のいちばん小さい正方形を $S$(一辺 $s$)、$S$ を底の面とする立方体を $K$、$K$ の上の面(高さ $h+s$ の一辺 $s$ の正方形)を $G$ とする。このとき次が成り立つ。
(R1) 底の面が $G$ に含まれる立方体($G$ の上に立つ立方体)があり、その底の面の全体は $G$ の正方形分割になる。
(R2) この正方形分割は 2 個以上の正方形からなり、大きさはすべて違い、どの正方形の一辺も $s$ より小さい。

要点:$S$ は $F$ の周に触れない(長方形を正方形に分ける の定理「いちばん小さい正方形の位置」)。そのため $S$ のすぐ外の $F$ の点は、どれも $S$ より大きい正方形の上にあり、そこに立つ立方体は $K$ より高い。これが $K$ のまわりの壁になるので、$K$ の真上にある立方体は、$K$ の真上からはみ出せず、$K$ の上の面 $G$ に乗る。それらは $G$ の中に収まるので一辺は $s$ 以下で、$K$ とは大きさが違うので $s$ より小さい。

詳しい証明を開く

段 1(準備).$S$ を $x_0\le x\le x_0+s$、$y_0\le y\le y_0+s$(高さ $h$)とすると、$K$ は高さ $h$ から $h+s$ までの部分である。$F$ の正方形分割で $S$ 以外の正方形の一辺は、大きさがすべて違い $S$ がいちばん小さいので、どれも $s$ より大きい。正の数 $\varepsilon$ を、分割に現れるどの立方体の一辺よりも小さく、$F$ の正方形分割の $S$ 以外のどの正方形 $Q$ についても $q-s$($q$ は $Q$ の一辺)より小さくとる。$K$ の真上の薄い部分

$$\Omega:\quad x_0< x< x_0+s,\quad y_0< y< y_0+s,\quad h+s< z< h+s+\varepsilon$$

を考える。

段 2($\Omega$ は $B$ の中にある).$S$ は $F$ の周に触れないので、$S$ のすぐ左の $F$ の点は $S$ 以外の正方形 $Q$ に含まれ、$Q$ の上に立つ立方体は高さ $h$ から $h+q$ までを占める。この立方体は $B$ に含まれるので、$B$ の上の面の高さは $h+q$ 以上で、$h+q>h+s+\varepsilon$ である。よって $\Omega$ は $B$ に含まれる。

段 3(壁:$\Omega$ に入る立方体は $K$ の真上からはみ出さない).立方体 $V$ の内部が $\Omega$ の点 $P(p_x,p_y,p_z)$ を含むとし、$V$ を $\ell\le x\le\ell+v$、$m\le y\le m+v$、$k\le z\le k+v$ とする。$\ell< x_0$ と仮定する。小さい正の数 $\eta$ と $p_y$ に近い $y'$ を、点 $(x_0-\eta,y')$ が $F$ の中にあり、$F$ の正方形分割のどの正方形の辺の上にもなく、$\ell< x_0-\eta$ で、$m< y'< m+v$ となるようにとる($S$ が $F$ の周に触れないので、$S$ の近くの点は $F$ の中にある)。点 $(x_0-\eta,y')$ は $S$ 以外の正方形 $Q$ の内部にあり、$Q$ の上に立つ立方体は高さ $h$ から $h+q$ までを占める。$h< h+s< p_z< h+s+\varepsilon< h+q$ なので、点 $(x_0-\eta,\ y',\ p_z)$ はこの立方体の内部にある。一方、$\ell< x_0-\eta< x_0< p_x<\ell+v$、$m< y'< m+v$、$k< p_z< k+v$ なので、同じ点は $V$ の内部にもある。これは立方体分割の条件 (ii) に反する。よって $\ell\ge x_0$ である。右・手前・奥についても同じで、$\ell+v\le x_0+s$、$m\ge y_0$、$m+v\le y_0+s$ である。つまり $V$ を真上から見ると $S$ に含まれる。

段 4($V$ は $K$ の上の面に乗る).$k< h+s$ とすると、$V$ を真上から見た正方形の内部の点の上で、高さが $k$ と $h$ の大きい方より大きく $h+s$ より小さい点は、$V$ の内部にも $K$ の内部にもある($k+v>p_z>h+s$ だから)。これは条件 (ii) に反するので、$k\ge h+s$ である。次に $k>h+s$ とする。$V$ の内部は $P$ を含むので $k< p_z< h+s+\varepsilon$ である。$V$ の底の面の中心の真下で、高さが $h+s$ と $k$ の間の点 $U$ をとる(どの立方体の面の上にもないように、少しずらしてとる)。$U$ は $\Omega$ の点で、ある立方体 $V'$ の内部にある。$V'$ にも段 3 と前半の議論が当てはまるので、$V'$ の底の面の高さは $h+s$ 以上である。$V'$ の上の面の高さが $k$ より大きいと、$U$ の真上の近くで $V'$ と $V$ の内部が重なるので、上の面の高さは $k$ 以下である。すると $V'$ の一辺は $k-(h+s)$ 以下で、$k-(h+s)<\varepsilon$ なので $\varepsilon$ より小さくなり、$\varepsilon$ の選び方に反する。よって $k=h+s$、つまり $V$ の底の面は $G$ に含まれる。

段 5((i) と (ii)).$G$ の上に立つ立方体は、底の面のすぐ上の点が $\Omega$ に入るので、段 3・4 の $V$ である。$G$ の内部の点 $(x,y)$ について、点 $\left(x,y,h+s+\frac\varepsilon2\right)$ は $\Omega$ の点で、ある立方体に含まれる。その立方体の内部は $\Omega$ の点を含むので、段 3・4 からその立方体は $G$ の上に立ち、$(x,y)$ はその底の面に入る。底の面は辺を含む閉じた正方形なので、$G$ の周の点も含めて $G$ 全体が底の面で覆われる。2 つの底の面が内部に共通の点をもつと、そのすぐ上で 2 つの立方体の内部が重なるので、底の面どうしは内部に共通の点をもたない。よって (i) が成り立つ。底の面は $G$ に含まれるので一辺は $s$ 以下で、その立方体は $K$ と違う($K$ より上にある)ので大きさが違い、一辺は $s$ より小さい。一辺 $s$ の $G$ は $s$ より小さい正方形 1 個では埋まらないので、2 個以上ある。立方体の大きさがすべて違うので、底の面の大きさもすべて違う。よって (ii) が成り立つ。

いちばん小さい立方体 K₁(赤)のまわりを、それより大きい 4 つの立方体が壁のように囲む。黄色は K₁ の真上の井戸 いちばん小さい立方体 K₁(赤)のまわりを、それより大きい 4 つの立方体が壁のように囲む。黄色は K₁ の真上の井戸
図 3 は、いちばん小さい立方体 $K_1$ のまわりを 4 つの大きい立方体が囲む様子である。$K_1$ の上の黄色の部分が井戸で、そこに入る立方体は $K_1$ の上の面からはみ出せない。

主定理:大きさがすべて違う立方体には分けられない

次の定理は BTB11 の問題 13 の答え(1.6.1)にあり、Wei26 にも述べられている。ここでは上の 3 つの補題を使って証明する。

直方体は大きさがすべて違う立方体に分けられない

直方体(立方体を含む)を、大きさがすべて違う 2 個以上の有限個の立方体に分けることはできない。

方針を先に述べる。分けられたとすると、底面にいちばん小さい立方体 $K_1$ があり、その上にさらに小さい立方体 $K_2$ が、その上にさらに小さい $K_3$ が、…と限りなく続く(図 4)。立方体は有限個しかないので矛盾する。

直方体 $B$ が、大きさがすべて違う $n$ 個($n\ge2$)の立方体に分けられたと仮定して矛盾を導く。
段 1(底面を選ぶ).lem-cub-twoplus から、$B$ の面のうち 1 つは 2 個以上の正方形に分けられる。$B$ の向きを変えて、その面を底面にする。lem-cub-face から、底面に立つ立方体の底の面は、底面の、大きさがすべて違う 2 個以上の正方形からなる正方形分割である。
段 2($K_1$).$F_1$ を底面(高さ $0$)とすると、段 1 から lem-cub-well の仮定が成り立つ。$F_1$ の正方形分割でいちばん小さい正方形の上に立つ立方体を $K_1$、その一辺を $s_1$ とする。lem-cub-well から、$K_1$ の上の面 $G_1$ は、その上に立つ立方体の底の面で、大きさがすべて違う 2 個以上の、一辺が $s_1$ より小さい正方形に分けられる。
段 3($K_2$).$F_2=G_1$ とすると、段 2 の結論は、$F_2$ が lem-cub-well の仮定を満たすことを言っている。そこで $F_2$ の正方形分割でいちばん小さい正方形の上に立つ立方体を $K_2$、その一辺を $s_2$ とすると、$s_2< s_1$ であり、再び lem-cub-well から、$K_2$ の上の面 $G_2$ は、一辺が $s_2$ より小さい 2 個以上の正方形に分けられる。
段 4(限りなく続く).段 3 と同じことを $F_3=G_2$、$F_4=G_3$、…にくり返すと、立方体 $K_1,K_2,K_3,\dots$ で、一辺が
$$ s_1>s_2>s_3>\cdots $$
となるものが限りなく得られる。一辺がすべて違うので、$K_1,K_2,\dots,K_{n+1}$ は $n+1$ 個の違う立方体である。ところが分割の立方体は $n$ 個しかない。これは矛盾である。よって、そのような分割はない。

縦の断面で見た模式図。底面のいちばん小さい立方体 K₁ の上に、壁に囲まれてさらに小さい K₂、K₃ が限りなく続く 縦の断面で見た模式図。底面のいちばん小さい立方体 K₁ の上に、壁に囲まれてさらに小さい K₂、K₃ が限りなく続く
図 4 は、直方体を縦に切った断面で見た模式図である。$K_1$ の両側には $K_1$ より高い立方体が立ち、$K_1$ の上の面には $K_2$ とそれより大きい立方体が乗り、$K_2$ の上にも同じことが起こる。

底面が横 33、縦 32 の分割だったら

thm-cub-main の証明の最初の一歩を、具体的な形で見てみる。仮に、横 $33$、縦 $32$、高さ $50$ の直方体の底面が、長方形を正方形に分ける の 9 個の正方形(一辺 $18,15,14,10,9,8,7,4,1$)で分けられていたとする。底面に立つ立方体は、一辺 $18,15,14,10,9,8,7,4,1$ の 9 個である。
いちばん小さい一辺 $1$ の正方形は周に触れず、一辺 $7,8,9,10$ の正方形に囲まれている。その上の立方体 $K_1$ は一辺 $1$ で、まわりには高さ $7,8,9,10$ の立方体が立つ。$K_1$ の上の面は高さ $1$ にある一辺 $1$ の正方形 $G_1$ で、そのすぐ上の高さ $1$ から $7$ までの部分は、4 方を壁に囲まれた井戸になる。lem-cub-well から、$G_1$ は一辺が $1$ より小さい、大きさがすべて違う 2 個以上の正方形に分けられなければならない。たとえば 正方形を異なる正方形に分ける の 21 個の分割を $\dfrac1{112}$ 倍した形なら、いちばん小さい正方形は一辺 $\dfrac2{112}=\dfrac1{56}$ で、その上の立方体 $K_2$ の上にまた井戸ができる。どんな分け方を選んでも、この問題は終わらない。

平面では同じ議論が止まる

正方形を異なる正方形に分ける の 21 個の分割があるのだから、同じ議論を平面でしても矛盾は出ないはずである。平面の議論では、いちばん小さい正方形の上の辺が、その上に乗る正方形の底の辺で、長さの違う区間に分けられる。この区間の分割では、いちばん短い区間が端にあってもよい。端にあると、その外側の隣は 1 つ前の段の壁で、その高さが足りるとは限らない。そのため、次の段で壁ができないことがあり、議論はそこで止まる。
たとえば横 $33$、縦 $32$ の分割では、底辺に触れるのは一辺 $14,10,9$ の正方形で、いちばん小さい $9$ は右の端にあるが、左の $10$ と右の長方形の辺が壁になり、$9$ の上には $9$ より小さい一辺 $1$ と $8$ が乗る。$9$ の上の辺を区切る $1,8$ のうち、いちばん小さい $1$ は左の端にあり、その左隣の $10$ は、上の辺の高さが $10$ で、$1$ の上の辺の高さ $9+1=10$ と同じである。$1$ の上には井戸ができず、一辺 $7$ の正方形が左にはみ出して乗っている。空間では、底面の分割(平面の問題)でいちばん小さい正方形が必ず内部にある(長方形を正方形に分ける の定理)ので、4 方に壁ができ、議論が止まらない。

平面と空間を並べると次のようになる。

平面(正方形で分ける)空間(立方体で分ける)
大きさがすべて違うもので分けられるか長方形は 9 個から、正方形は 21 個で分けられる直方体(立方体を含む)は分けられない
同じ大きさを許したとき、分けられる個数の例$4$、$6$ 以上のどの個数も$1,8,15,20,22,27,\dots$ と $48$ 以上(Wei26)
いちばん小さいものの位置周に触れない底面に立つ中でいちばん小さい立方体のまわりに壁ができる
1 つ下の次元の分割辺(線分)を区間に分ける:いちばん短い区間は端にあってよい面を正方形に分ける:いちばん小さい正方形は内部にある

例と反例

thm-cub-main の条件を 1 つずつ外すと、分けられるようになる。

外す条件反例成り立たなくなること
大きさがすべて違う一辺 $2$ の立方体を一辺 $1$ の立方体 $8$ 個に分ける分けられない
空間で考える一辺 $112$ の正方形を 21 個の正方形に分ける(平面)分けられない
分けたものが立方体縦 $1$、横 $1$、高さ $3$ の直方体を、高さ $1$ と高さ $2$ の直方体に分ける分けられない
反例:同じ大きさを許す

ex-cub-easy (1) のとおり、一辺 $2$ の立方体は一辺 $1$ の立方体 $8$ 個に分けられる。底面は一辺 $1$ の正方形 $4$ 個に分かれ、いちばん小さい正方形(どれも一辺 $1$)はどれも周に触れる。lem-cub-well の仮定(大きさがすべて違う正方形分割)が成り立たず、井戸ができない。

反例:平面では分けられる

正方形を異なる正方形に分ける の定理のとおり、一辺 $112$ の正方形は大きさがすべて違う 21 個の正方形に分けられる。平面で thm-cub-main の証明をまねると、rem-cub-plane のとおり、1 つ下の次元(線分の区間の分割)でいちばん短い区間が端にあってよいので、議論が止まる。

反例:分けたものが立方体でない

縦 $1$、横 $1$、高さ $3$ の直方体は、高さ $0$ から $1$ の立方体(一辺 $1$)と、高さ $1$ から $3$ の直方体(縦 $1$、横 $1$、高さ $2$)の 2 つに分けられる。2 つは形も大きさも違う。立方体でない直方体を許すと、lem-cub-face で面が「正方形」に分かれるとは言えず(側面は $1\times1$ の正方形と $1\times2$ の長方形に分かれる)、長方形を正方形に分ける の定理が使えない。

有限個であることの使い方

thm-cub-main の証明で矛盾が出たのは、最後の段 4 で「立方体は $n$ 個しかない」ことを使ったときだけである。一辺がどんどん小さくなる列 $s_1>s_2>s_3>\cdots$ そのものは、$1,\dfrac12,\dfrac14,\dots$ のように、いくらでも作れる。限りなく多くの立方体を許した場合に分けられるかどうかは、この記事では扱わない。

大学数学で見る:無限降下法と正三角形の分割

thm-cub-main の証明は、「条件を満たすものがあれば、もっと小さいものがある」ことを示して矛盾を導く、無限降下法 の形をしている(数学的帰納法と整列性 の系「無限降下の不可能性」)。自然数の言葉に直すこともできる。$K_i$ の一辺 $s_i$ 以下の一辺をもつ立方体の個数を $N_i$ とすると、$K_{i+1}$ の一辺は $s_i$ より小さいので、$N_1>N_2>N_3>\cdots$ は限りなく続く正の整数の減少列になり、無限降下の不可能性に反する。

正三角形の分割と、4 次元以上の場合を開く

平面でも、正方形の代わりに正三角形を使うと、答えは「分けられない」になる。正三角形を、大きさがすべて違う有限個の正三角形に分けることはできない(Tutte、1948 年)。BTB11 §1.4 はこの定理(1.4.1)を紹介し、問題 14 の答えで、底辺に触れるいちばん小さい正三角形の上に、さらに小さい正三角形が限りなく続くという略証を図とともに示している。ただし正三角形の場合は、小さい三角形の上の辺の両側に「壁」が残るとは限らず、立方体の場合のように下降の各段が同じ形になることは自明でない(Tutte の証明は電気回路の方法による)。1981 年の Buchman の論文は、Tutte の方法で、大きさがすべて違う有限個の正三角形に分けられる凸図形はないことを示した(BTB11 §1.4)。この記事ではこれらを証明しない。

4 次元の直方体を 4 次元の立方体に分ける問題も考えられる。4 次元の直方体の「底の面」は 3 次元の直方体で、そこに触れる 4 次元の立方体の底の面は、3 次元の直方体を大きさがすべて違う立方体に分けることになる。これは thm-cub-main に反するので、4 次元でも分けられない。次元を上げても同じである。この段落の議論は、lem-cub-face と lem-cub-twoplus を 4 次元に広げたものを認めたうえでの見通しである。

演習

証明のどこで「大きさがすべて違う」を使ったか

thm-cub-main の証明(lem-cub-well を含む)で、「大きさがすべて違う」という仮定を使った箇所を 3 つ挙げよ。

解答を開く

(1) 底面の正方形分割の大きさがすべて違うので、長方形を正方形に分ける の定理「いちばん小さい正方形の位置」が使え、いちばん小さい正方形 $S$ が底面の周に触れない。

(2) $S$ 以外の正方形はどれも $S$ より大きいので、そこに立つ立方体は $K$ より高く、$K$ のまわりの壁になる(lem-cub-well の証明の段 2・3)。

(3) $G$ の上に立つ立方体は一辺が $s$ 以下で、$K$ と大きさが違うので $s$ より小さい。これで、$G$ の分割がまた大きさのすべて違う 2 個以上の正方形からなり、議論をくり返せる(lem-cub-well の (ii))。

同じ大きさを許した分割の個数

立方体を、同じ大きさを許して (1) $36$ 個、(2) $41$ 個の立方体に分けよ。

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(1) 1 個の立方体から始めて、どれか 1 つを 8 等分することを 5 回くり返すと、$1+7\times5=36$ 個になる。たとえば一辺 $1$ の立方体を一辺 $\frac12$ の $8$ 個に分け、そのうち 1 つを一辺 $\frac14$ の $8$ 個に分け、…と 5 回続ける。

(2) ex-cub-easy (2) の $20$ 個の分割(一辺 $3$ の立方体を、一辺 $2$ の 1 個と一辺 $1$ の 19 個に)から始めて、一辺 $1$ の立方体を 1 つずつ 8 等分することを 3 回くり返すと、$20+7\times3=41$ 個になる。

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関連項目

参考文献

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