一意分解整域(unique factorization domain, UFD)とは、$0$ でも単元でもない元がすべて有限個の既約元の積に書け、その表示が順序と単元倍を除いて一意である整域のことである。$\mathbb{Z}$ の素因数分解の一意性を公理にしたもので、既約元への分解が存在するもとで既約元がすべて素元であることや、単項イデアルの昇鎖条件と既約元の素元性の組と同値であり、任意の 2 元に最大公約元がある。単項イデアル整域は一意分解整域であり、Gauss の補題により一意分解整域上の多項式環も一意分解整域なので、$\mathbb{Z}[x]$ や $K[x,y]$ は単項イデアル整域でない一意分解整域の例になる。$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ では $6=2\cdot3=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})$ となり一意性が破れる。
前提知識: 整域, 単元, イデアル, 素イデアル, 単項イデアル整域
本記事で環とは単位元をもつ可換環を指し、$A$ はつねに整域とする。$a,b\in A$ について、$b=ac$ となる $c\in A$ があるとき $a$ は $b$ を割り切るといい $a\mid b$ と書く。$a=ub$ となる単元 $u\in A^\times$ があるとき、$a$ と $b$ は同伴(同伴、associate)であるという。整域では、$a$ と $b$ が同伴であることと、$a\mid b$ かつ $b\mid a$ であること、単項イデアルについて $(a)=(b)$ であることは同値である($a=bc$、$b=ad$ で $a\neq0$ なら $a=adc$ から $dc=1$ を約分で得る。$a=0$ なら $b=0$)。
既約元の同伴は既約元であり、素元の同伴は素元である。$0$ と単元は既約元にも素元にも数えない。これは素数の定義で $1$ を除くのと同じ理由による(素数 の記事の注意「1 を素数に含めない理由」)。
整域 $A$ が一意分解整域(unique factorization domain, UFD)であるとは、次の 2 条件が成り立つことをいう。
条件 1 は条件 2 を導かない。条件 1 だけが成り立つ整域(ex-ufd-sqrt-minus-5)も、条件 1 が成り立たない整域(ex-ufd-no-factorization)もある。「素元分解整域」という呼び名は、一意分解整域が「$0$ でも単元でもない元がすべて素元の積に書ける整域」と一致すること(thm-ufd-characterization)による。定義で $a$ が単元の場合を除いているのは、単元は既約元の空な積($r=0$)とみなせるからで、そう約束すると条件 1・2 は $0$ でないすべての元について「単元倍を除いて」の形で述べ直せる。体は、$0$ でも単元でもない元をもたないので、2 条件を自明に満たす一意分解整域である。
整数 $\mathbb{Z}$ では、$2$ 以上の整数は素数の積に並べ方を除いて一意に分解する(素数 の記事の定理「算術の基本定理」)。一意分解整域は、この性質を公理にした整域である。$\mathbb{Z}$ の単元 $\pm1$ の分だけ符号がずれることを「同伴」で吸収し、素数を既約元に置き換えている。一意分解整域では約数や倍数の計算が整数と同じように進み、2 つの元には最大公約元がある(prop-ufd-gcd)。一方、整数で成り立つ「最大公約数は 2 数の線形結合で書ける」という Bézoutの等式 は、一意分解整域では一般に成り立たない(ex-ufd-z-x)。これを要求すると単項イデアル整域に近づく。
分解の一意性が成り立たない最も有名な例は $\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ における $6=2\cdot3=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})$ である(ex-ufd-sqrt-minus-5)。この破綻をイデアルの分解で回復させようとしたのが Dedekind整域 の理論の出発点である。
整数係数の多項式環 $\mathbb{Z}[x]$ と、体 $K$ 上の 2 変数多項式環 $K[x,y]$ は一意分解整域である(thm-ufd-polynomial。満たす性質)が、単項イデアル整域でない(満たさない性質)。$\mathbb{Z}[x]$ のイデアル $(2,x)$ が単項でないことは イデアル の記事の命題「整数係数多項式環の単項でないイデアル」で、$K[x,y]$ のイデアル $(x,y)$ が単項でないことは 多項式環 の記事の例「反例:単項イデアル整域でない多項式環」で示されている。
$\mathbb{Z}[x]$ で $2$ と $x$ の共通の約数を考える。$d\mid2$ なら次数を比べて $d$ は整数 $\pm1,\pm2$ であり、$\pm2$ は $x$ を割り切らないので、$2$ と $x$ の最大公約元は $1$ である(def-ufd-gcd の意味で)。ところが $2g+xh$($g,h\in\mathbb{Z}[x]$)の定数項は偶数なので $2g+xh=1$ とはならない。この例は含意「一意分解整域 $\Rightarrow$ 単項イデアル整域」と「一意分解整域では最大公約元が 2 元の線形結合で書ける」(Bézoutの等式 の一般化)を破る。
$A=\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]=\{a+b\sqrt{-5}\mid a,b\in\mathbb{Z}\}$ とし、ノルム(ノルム)を $N(a+b\sqrt{-5}):=a^2+5b^2$ で定める。$N(\alpha)=\alpha\bar\alpha$($\bar\alpha$ は複素共役)なので $N(\alpha\beta)=N(\alpha)N(\beta)$ であり、$N(\alpha)$ は $0$ 以上の整数で、$N(\alpha)=0$ となるのは $\alpha=0$ のときに限る。
有理数係数の多項式のうち定数項が整数であるもの全体
$$
A=\mathbb{Z}+x\mathbb{Q}[x]=\{a_0+a_1x+\cdots+a_nx^n\mid a_0\in\mathbb{Z},\ a_1,\dots,a_n\in\mathbb{Q}\}
$$
は $\mathbb{Q}[x]$ の部分環なので整域である。$f\in A$ が $A$ の単元なら、$fg=1$ となる $g\in A$ があり、$\mathbb{Q}[x]$ での次数を比べて $f,g$ は定数、したがって整数で、$f=\pm1$ である。よって $A^\times=\{\pm1\}$ である。
$0$ でない有理数 $c$ について $cx\in A$ は既約元でない。$cx=2\cdot(c/2)x$ であり、$2$ も $(c/2)x$ も単元でないからである。ここで $x$ が既約元の積 $x=p_1\cdots p_r$ に書けたとする。$\mathbb{Q}[x]$ での次数を比べると、ちょうど 1 つ、たとえば $p_1$ が 1 次で、残りは定数、すなわち $0$ でない整数である。$p_1=ax+b$($a\in\mathbb{Q}$、$b\in\mathbb{Z}$)と書き、残りの積を $m\in\mathbb{Z}$ とすると $m(ax+b)=x$ より $b=0$ であり、$p_1=ax$ は上で見たとおり既約元でない。これは矛盾である。よって $x$ は既約元の積に書けず、$A$ では条件 1 が成り立たない。
$x=2\cdot(x/2)=2\cdot2\cdot(x/4)=\cdots$ と分解がどこまでも続くことは、単項イデアルの真の昇鎖
$$
(x)\subsetneq(x/2)\subsetneq(x/4)\subsetneq\cdots
$$
に対応する($x/2^{k}=2\cdot x/2^{k+1}$ で、$2$ は単元でない)。この例は「整域」を満たすが「単項イデアルの昇鎖条件」を満たさず、含意「整域の $0$ でも単元でもない元は既約元の積に書ける」を破る。昇鎖条件と分解の存在の関係は thm-ufd-characterization の 4 で述べる。
整域の素元は既約元である。
$p$ を素元とし、$p=ab$ とする。$p\mid ab$ なので $p\mid a$ または $p\mid b$ である。$p\mid a$ とし $a=pc$ と書くと $p=pcb$ であり、$p\neq0$ なので約分して $cb=1$、すなわち $b$ は単元である。$p\mid b$ なら同様に $a$ が単元である。$\square$
逆は一般の整域では成り立たない(ex-ufd-sqrt-minus-5 の $2$)。一意分解整域はちょうど逆が成り立つ整域である。単項イデアルの昇鎖条件とは、$A$ の単項イデアルの昇鎖 $(a_1)\subset(a_2)\subset(a_3)\subset\cdots$ がすべて有限で止まる、すなわちある $n$ から先で $(a_n)=(a_{n+1})=\cdots$ となることをいう。Noether環(イデアルの昇鎖条件を満たす環)はこの条件を満たす。
整域 $A$ について、次は同値である。
1 ⇒ 2:既約元 $p$ が $ab=pc$($c\in A$)を満たすとする。$a=0$ なら $p\mid a$ である。$a$ が単元なら $b=pca^{-1}$ で $p\mid b$ である。$b$ が $0$ または単元の場合も同様なので、$a,b$ は $0$ でも単元でもないとしてよい。このとき $ab\neq0$ なので $c\neq0$ である。$a=a_1\cdots a_m$、$b=b_1\cdots b_n$ を既約元への分解とする。$c$ が単元なら等式 $ab=pc$ の右辺は 1 個の既約元 $pc$ からなる表示であり、$c$ が単元でなければ $c=c_1\cdots c_k$ と分解して $ab=pc_1\cdots c_k$ が既約元による表示である。いずれの場合も、$a_1\cdots a_mb_1\cdots b_n$ と比べて条件 2(一意性)を用いると、$p$ はある $a_i$ またはある $b_j$ と同伴である(前者の場合は $pc$ と同伴なので $p$ とも同伴)。$p$ が $a_i$ と同伴なら $p\mid a$、$b_j$ と同伴なら $p\mid b$ である。よって $p$ は素元である。
2 ⇒ 3:既約元の積に書け、既約元は素元だからである。
3 ⇒ 1:まず既約元 $q$ が素元であることを示す。$q=p_1\cdots p_k$ と素元の積に書く。$k\ge2$ なら $q=p_1\cdot(p_2\cdots p_k)$ で、$p_1$ も $p_2\cdots p_k$ も単元でない(素元の積は、素元で割り切れるので単元でない)から $q$ の既約性に反する。よって $k=1$ で $q=p_1$ は素元である。prop-ufd-prime-irreducible により素元は既約元なので、条件 1(存在)が成り立つ。条件 2(一意性)を $r$ に関する帰納法で示す。$p_1\cdots p_r=q_1\cdots q_s$ を既約元($=$ 素元)による表示とする。$p_1$ は素元で右辺を割り切るので、ある $q_j$ を割り切る。番号を付け替えて $j=1$ とし、$q_1=p_1u$ と書くと、$q_1$ が既約で $p_1$ が単元でないので $u$ は単元である。$A$ は整域なので $p_1$ を約分して $p_2\cdots p_r=(uq_2)q_3\cdots q_s$ を得る($s=1$ なら右辺は $u$ と読む)。$r=1$ なら左辺は $1$ で、右辺は $s\ge2$ なら単元でない $q_2$ を因子にもつので $s=1$ である。$r\ge2$ なら右辺は単元でないので $s\ge2$ であり、$uq_2$ は既約元なので、帰納法の仮定により $r-1=s-1$ で、番号を付け替えて $p_i$ と $q_i$($i\ge2$)は同伴である。
1 ⇒ 4:既約元が素元であることは 1 ⇒ 2 で示した。$0$ でない $a\in A$ に対し、$a$ を単元と既約元 $r$ 個の積に書いたときの $r$ を $\ell(a)$ とおく(単元なら $\ell(a)=0$)。条件 2 により $\ell(a)$ は表示によらない。$a=bc$($b,c\neq0$)なら $b,c$ の分解を並べると $a$ の分解になるので $\ell(a)=\ell(b)+\ell(c)$ である。単項イデアルの昇鎖 $(a_1)\subset(a_2)\subset\cdots$ を考える。すべての $a_n$ が $0$ なら鎖は止まっているので、ある $a_m\neq0$ があるとし、$n\ge m$ だけを考える。$(a_n)\subsetneq(a_{n+1})$ なら $a_n=a_{n+1}c_n$ と書け、$c_n$ は単元でない(単元なら $(a_n)=(a_{n+1})$)ので $\ell(c_n)\ge1$、したがって $\ell(a_{n+1})<\ell(a_n)$ である。$\ell$ は $0$ 以上の整数なので、真の包含は有限回しか起こらず、鎖は止まる。
4 ⇒ 2:分解の存在を示せばよい。$0$ でも単元でもない元で既約元の積に書けないもの $a_0$ があるとする。$a_0$ は既約元でないので、単元でない $b,c$ により $a_0=bc$ と書ける。$b,c$ はともに $0$ でなく、両方が既約元の積なら $a_0$ もそうなるので、どちらか一方は既約元の積に書けない。それを $a_1$ とすると $(a_0)\subsetneq(a_1)$ である($a_0=a_1d$ で $d$ は単元でないので、$(a_0)=(a_1)$ なら $a_0$ と $a_1$ が同伴になり、$a_1=a_0e=a_1de$ から $de=1$ となって矛盾する)。同じ操作を $a_1$ に施して $a_2$ を得る、と繰り返すと、単項イデアルの真の昇鎖 $(a_0)\subsetneq(a_1)\subsetneq(a_2)\subsetneq\cdots$ ができ、昇鎖条件に反する。$\square$
関連する内容(一意分解整域では既約元が素元であること、単項イデアル整域が一意分解整域であること)は DF04 §8.3、Lan02 Chapter II §5 にある。4 ⇒ 2 の証明は各段で元を 1 つずつ選んでいる(従属選択公理を使う)。ex-ufd-no-factorization は昇鎖条件が破れて分解の存在が崩れる例、ex-ufd-sqrt-minus-5 は昇鎖条件は成り立つが既約元が素元でないために一意性が崩れる例であり、4 の 2 つの条件がどちらも落とせないことを示している。特に一意分解整域では、既約元 $p$ が生成するイデアル $(p)$ は素イデアルである。
単項イデアル整域は一意分解整域である。
単項イデアル整域は Noether 環であり(単項イデアル整域 の記事の命題「単項イデアル整域はNoether環」)、したがって単項イデアルの昇鎖条件を満たす。またその既約元は素元である(同記事の補題「既約元は素元」)。よって thm-ufd-characterization の 4 が成り立つ。$\square$
同じ主張は 単項イデアル整域 の記事の定理「単項イデアル整域は一意分解整域」でも、分解を直接構成する形で証明されている。逆は成り立たない(ex-ufd-z-x)。
整域 $A$ の元 $a,b$ について、$d\mid a$ かつ $d\mid b$ となる $d$ を $a,b$ の公約元という。公約元 $d$ であって、$a,b$ の任意の公約元 $e$ が $e\mid d$ を満たすものを $a,b$ の最大公約元(greatest common divisor)という。最大公約元は、存在すれば同伴を除いて一意である。同様に、$a\mid m$ かつ $b\mid m$ で、$a,b$ の任意の公倍元 $m'$ が $m\mid m'$ を満たす $m$ を最小公倍元という。有限個の元 $a_1,\dots,a_n\in A$($n\ge1$)についても、公約元・最大公約元・公倍元・最小公倍元を、$2$ 元の場合の「$a,b$」を「すべての $a_i$」に読み替えて同様に定める。
一意性は、$d,d'$ がともに最大公約元なら $d\mid d'$ かつ $d'\mid d$ となることによる。一般の整域では最大公約元は存在するとは限らない。ex-ufd-sqrt-minus-5 の $\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ で、$a=6$ と $b=2(1+\sqrt{-5})$ を考える。$2$ と $1+\sqrt{-5}$ はともに $a,b$ の公約元である($6=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})$)。最大公約元 $d$ があるとすると、$2\mid d$ かつ $(1+\sqrt{-5})\mid d$ なので、ノルムの乗法性から $N(d)$ は $4$ と $6$ で割り切れ、$12\mid N(d)$ である。一方 $d\mid a$、$d\mid b$ から $N(d)$ は $N(a)=36$ と $N(b)=24$ を割り切り、$N(d)\mid12$ である。よって $N(d)=12$ であるが、$a^2+5b^2=12$ は整数解をもたない($b=0$ なら $a^2=12$、$|b|=1$ なら $a^2=7$、$|b|\ge2$ なら左辺は $20$ 以上)。したがって $6$ と $2(1+\sqrt{-5})$ は最大公約元をもたない。
$A$ を一意分解整域とし、互いに同伴でない既約元の代表系 $P$ を 1 つ固定する(各既約元はちょうど 1 つの $p\in P$ と同伴である)。
1。$a$ が単元なら $v_p(a)=0$ とする。そうでなければ $a=q_1\cdots q_r$ と既約元に分解し、各 $q_i$ を同伴な $p\in P$ に置き換えて単元をまとめると表示を得る。一意性は定義の条件 2 から従う(2 つの表示の既約因子を並べて比べると、$p$ が現れる回数が一致する)。
2。$v_p(d)\le v_p(a)$(すべての $p$)なら $c=\prod_pp^{v_p(a)-v_p(d)}$ について $a=(u_au_d^{-1})\,dc$ なので $d\mid a$ である($u_a,u_d$ は 1 の表示の単元)。逆に $a=dc$ なら $c\neq0$ で、$d$ と $c$ の表示を掛けると $a$ の表示が得られるので、1 の一意性により $v_p(a)=v_p(d)+v_p(c)\ge v_p(d)$ である。
3。$d=\prod_pp^{\min_i v_p(a_i)}$ は 2 により、すべての $i$ について $v_p(d)\le v_p(a_i)$ を満たすので $a_1,\dots,a_n$ の公約元である。$e$ を公約元とすると $e\neq0$ で、2 によりすべての $i$ で $v_p(e)\le v_p(a_i)$、すなわち $v_p(e)\le\min_iv_p(a_i)=v_p(d)$ なので $e\mid d$ である。最小公倍元も同様である。$a$ と $0$ については、公約元は $a$ の約元にほかならないからである。$\square$
$\mathbb{Z}$ ではこれは素因数分解による最大公約数・最小公倍数の計算そのものである。一意分解整域の最大公約元は ex-ufd-z-x のように 2 元の線形結合で書けるとは限らず、それが書けることは $(a,b)=(d)$ を意味する。すべての有限生成イデアルが単項である整域を Bezout環(Bézout 整域)という。一意分解整域であって Bézout 整域であるものは単項イデアル整域である。実際、単項でないイデアル $I$ があれば、$a_1\in I$ から始めて $(a_1,\dots,a_n)\subsetneq I$ の外の元 $a_{n+1}\in I$ を順に選ぶと、Bézout 性により各 $(a_1,\dots,a_n)$ は単項イデアルであり、単項イデアルの真の昇鎖ができて thm-ufd-characterization の 4 の昇鎖条件に反する。
一意分解整域の性質のうち最も重要なものは、多項式環に遺伝することである。$A$ を一意分解整域、$K$ をその商体とする。$0$ でない $f\in A[x]$ の $0$ でない係数の最大公約元(prop-ufd-gcd の 3 により存在する)を $f$ の内容といい、内容が単元である $f$ を原始多項式(原始多項式)という。
$A$ を一意分解整域、$K$ をその商体とする。
1 は 多項式環 の記事の定理「Gauss の補題(内容の乗法性)」、2 は同記事の命題「既約性の商体への遺伝」、3 は同記事の定理「Gauss の定理(一意分解整域上の多項式環)」で証明されている(DF04 §9.3、Lan02 Chapter IV §2 も参照)。4 は $A[x_1,\dots,x_n]=A[x_1,\dots,x_{n-1}][x_n]$ として 3 を $n$ 回用いれば得られる。既約多項式 の記事の定理「Gauss の補題」も同じ内容を扱い、そこから Eisensteinの既約判定法 が導かれている。
この定理により、一意分解整域は単項イデアル整域より真に広い(ex-ufd-z-x)。単項イデアル整域 $A$ 上の $A[x]$ は、$A$ が体でなければ単項イデアル整域でない(多項式環 の記事の例「反例:単項イデアル整域でない多項式環」)が、一意分解性は保たれる。
整域のクラスの間には次の包含がある。
$$
\text{Euclid 整域}\ \subsetneq\ \text{単項イデアル整域}\ \subsetneq\ \text{一意分解整域}\ \subsetneq\ \text{整域}.
$$
最初の包含が真であることは Euclid整域 の記事の命題「Euclid整域でない単項イデアル整域」、2 番目は ex-ufd-z-x、3 番目は ex-ufd-sqrt-minus-5 と ex-ufd-no-factorization による。一意分解整域と Dedekind 整域はどちらも単項イデアル整域を含むが、互いに他を含まない。$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ は Dedekind 整域だが一意分解整域でない。$K[x,y]$ は一意分解整域だが Dedekind 整域でない。Dedekind 整域では $0$ でない素イデアルは極大イデアルであるが(Dedekind整域 の記事の命題「Dedekind整域の基本性質」)、$K[x,y]$ の $(x)$ は $K[x,y]/(x)\cong K[y]$ が整域なので $0$ でない素イデアルであり、真に大きい真のイデアル $(x,y)$ に含まれるので極大でないからである。Dedekind 整域については、一意分解整域であることと単項イデアル整域であることは同値である(Dedekind整域 の記事の命題「イデアル類群が自明な条件」)。
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