Cartesianファイブレーション(Cartesian fibration)とは、単体的集合の内部ファイブレーション $p\colon X\to S$ であって、$S$ の辺をいつも終点を指定して $p$-Cartesian な辺に持ち上げられるもののことである。辺 $f$ が $p$-Cartesian であることはスライスの間の写像が自明 Kan ファイブレーションであることで定め、これは最後の辺が $f$ の外側のホーン $\Lambda^n_n$ がいつも埋まることと同値である。通常の圏の脈体では Grothendieck のファイバー付き圏にあたり、すべての辺が Cartesian なものが右ファイブレーションである。直線化により $S^{\mathrm{op}}$ から∞圏の∞圏への関手を表す。
関手 $F\colon\mathcal A\to\mathcal B$ の射 $e\colon x\to y$ が Cartesian であるとは、$y$ への射のうち $F$ による像が $F(e)$ を通るものが、$e$ をただ 1 通りに通ることをいう。$\mathcal B$ の射をいつも終点の側から Cartesian に持ち上げられる関手が Grothendieck の ファイバー付き圏(Grothendieck ファイブレーション)であり、各対象 $b$ の上のファイバー $\mathcal A_b$ が $\mathcal B$ の射に沿って反変に動く。つまりファイバー付き圏は $\mathcal B^{\mathrm{op}}$ から圏の圏への関手を表す。
Cartesian ファイブレーション はその ∞圏版で、内部ファイブレーション $p\colon X\to S$ の辺 $f$ が $p$-Cartesian であることを、スライスの間の写像が自明 Kan ファイブレーションであることで定め、$S$ の辺がいつも $p$-Cartesian に持ち上がるものをいう(HTT09 Definition 2.4.2.1、p. 121)。すべての辺が $p$-Cartesian である場合が 左ファイブレーションと右ファイブレーション の右ファイブレーションであり、Cartesian ファイブレーションは $S^{\mathrm{op}}$ から∞圏の∞圏への関手を表す。向きを逆にしたものが coCartesian ファイブレーション である。
この記事では、まず通常の圏で Cartesian な射とファイバー付き圏を定義し、Grothendieck 構成と随伴の例を確かめる。次に ∞圏の Cartesian な辺を定義し、それが「最後の辺を固定した外側のホーン $\Lambda^n_n$ を埋められること」と同値であることを証明して、脈体の場合・引き戻しと合成・右ファイブレーションとの関係・標識付き単体的集合 との関係を導く。
関手 $F\colon\mathcal A\to\mathcal B$ の射 $e\colon x\to y$ が $F$-Cartesian であるとは、すべての対象 $z$ と $\mathcal B$ の射 $\beta\colon F(z)\to F(x)$ について、写像
$$
e_*\colon\{g\colon z\to x\mid F(g)=\beta\}\to\{a\colon z\to y\mid F(a)=F(e)\circ\beta\},\qquad g\mapsto e\circ g
$$
が全単射であることをいう。すべての対象 $y$ と $\mathcal B$ の射 $\alpha\colon b\to F(y)$ について $F(e)=\alpha$ となる $F$-Cartesian な射 $e\colon x\to y$ があるとき、$F$ を ファイバー付き圏(fibered category)または Grothendieck ファイブレーション という。$F^{\mathrm{op}}$ について Cartesian な射を $F$-coCartesian といい、$F^{\mathrm{op}}$ がファイバー付き圏であるとき $F$ を 余ファイバー付き圏 という。
対象 $b$ の上の ファイバー $\mathcal A_b$ は、$F(x)=b$ となる対象 $x$ と、$F(g)=\mathrm{id}_b$ となる射 $g$ からなる部分圏である。左ファイブレーションと右ファイブレーション の定義「亜群でファイバー付けられた圏」の (F2) は「すべての射が $F$-Cartesian」ということにほかならず、(F1) は持ち上げの存在なので、亜群でファイバー付けられた圏とは、すべての射が Cartesian なファイバー付き圏のことである。
$F\colon\mathcal A\to\mathcal B$ を関手とする。
要点:$e_*$ の合成への分解と、恒等射の上での一意性。
1:$e$ が同型射なら $e_*$ の逆は $a\mapsto e^{-1}\circ a$ である($F(e^{-1}a)=F(e)^{-1}F(a)=\beta$)。$h\colon x\to x'$、$v\colon x'\to y$ について、$(z,\beta)$ に対する $(vh)_*$ は、$(z,\beta)$ に対する $h_*$ と $(z,F(h)\beta)$ に対する $v_*$ の合成なので、両方が全単射なら全単射である。2:同じ分解から $h_*=v_*^{-1}\circ(vh)_*$ である。3:$e\colon x\to y$ に $(z,\beta)=(y,\mathrm{id})$ を使うと $e\circ g=\mathrm{id}_y$、$F(g)=\mathrm{id}$ となる $g$ がある。$e\circ(g\circ e)=e=e\circ\mathrm{id}_x$ と $F(ge)=F(\mathrm{id}_x)$ から、$(x,\mathrm{id})$ に対する $e_*$ の単射性で $g\circ e=\mathrm{id}_x$ である。4:すべての射が Cartesian なら、ファイバーの射は 3 により同型射である。逆にファイバーが亜群とし、$e\colon x\to y$ をとる。$F(e)$ の Cartesian な持ち上げ $v\colon x'\to y$ を選ぶと、$(x,\mathrm{id}_{F(x)})$ に対する $v_*$ の全射性から $v\circ h=e$、$F(h)=\mathrm{id}$ となる $h$ がある。$h$ はファイバーの射なので同型射で、1 により $e=v\circ h$ は Cartesian である。$\square$
関手 $\Phi\colon\mathcal B^{\mathrm{op}}\to\mathbf{Cat}$ について、圏 $\int\Phi$ を、対象を組 $(b,x)$($x$ は $\Phi(b)$ の対象)、$(b',x')$ から $(b,x)$ への射を組 $(\beta,f)$($\beta\colon b'\to b$、$f\colon x'\to\Phi(\beta)(x)$ は $\Phi(b')$ の射)とし、合成を $(\beta,f)\circ(\beta',f'):=(\beta\beta',\ \Phi(\beta')(f)\circ f')$ で定める。射影 $\pi\colon\int\Phi\to\mathcal B$ はファイバー付き圏で、$\beta\colon b'\to b$ の $(b,x)$ への Cartesian な持ち上げとして $(\beta,\mathrm{id})\colon(b',\Phi(\beta)(x))\to(b,x)$ がとれる。$b$ の上のファイバーは $\Phi(b)$ である。
要点:持ち上げ $(\beta,\mathrm{id})$ との合成は第 2 成分を変えない。
合成の第 2 成分は $\Phi(\beta\beta')=\Phi(\beta')\Phi(\beta)$ により $\Phi(\beta\beta')(x)$ への射であり、結合律と単位律は $\Phi$ の関手性から従う。$e=(\beta,\mathrm{id})$ とし、$z=(b'',x'')$、$\gamma\colon b''\to b'$ をとる。$\pi(g)=\gamma$ となる $g\colon z\to(b',\Phi(\beta)(x))$ は $(\gamma,f')$($f'\colon x''\to\Phi(\gamma)\Phi(\beta)(x)$)であり、$e\circ g=(\beta\gamma,\Phi(\gamma)(\mathrm{id})\circ f')=(\beta\gamma,f')$ である。$\pi(a)=\beta\gamma$ となる $a\colon z\to(b,x)$ は $(\beta\gamma,f)$($f\colon x''\to\Phi(\beta\gamma)(x)=\Phi(\gamma)\Phi(\beta)(x)$)なので、$e_*$ は $f'\mapsto f'$ で全単射である。$\square$
通常の圏の随伴も Cartesian な持ち上げで書ける。関手 $L\colon\mathcal C\to\mathcal D$ について、圏 $\mathcal M_L$ を、対象を $\mathcal C$ と $\mathcal D$ の対象の非交和とし、$\mathcal C$ どうし・$\mathcal D$ どうしの射はそれぞれ $\mathcal C$・$\mathcal D$ の射、$c$ から $d$ への射を $\mathrm{Hom}_{\mathcal D}(Lc,d)$ の元、$d$ から $c$ への射はなしとして定める(合成は $L$ を通して $\mathcal D$ で行う)。$\mathcal C$ を $0$、$\mathcal D$ を $1$ に送る関手 $q\colon\mathcal M_L\to[1]$ がある。
要点:Cartesian 性の判定に現れるのは $\mathcal C$ の対象だけで、条件は普遍射の条件になる。
恒等射の上の持ち上げは恒等射でよい(同型射は Cartesian)。1:$c$ からの $0\to1$ の持ち上げとして $\mathrm{id}_{Lc}$ が定める $u_c\colon c\to Lc$ をとる。coCartesian 性の判定で $q(z)=1$ となる $z=d$ について、$\{h\colon Lc\to d\}\to\{a\colon c\to d\}=\mathrm{Hom}_{\mathcal D}(Lc,d)$、$h\mapsto h\circ u_c$ は恒等写像である。2:$d$ への持ち上げ $e\colon c\to d$($\varphi\in\mathrm{Hom}_{\mathcal D}(Lc,d)$)が Cartesian であることは、判定に現れる $z$ が $q(z)=0$ のものだけなので、すべての $z\in\mathcal C$ について $\mathrm{Hom}_{\mathcal C}(z,c)\to\mathrm{Hom}_{\mathcal D}(Lz,d)$、$g\mapsto\varphi\circ L(g)$ が全単射であること、すなわち $(c,\varphi)$ が $L$ から $d$ への普遍射であることと同じである。すべての $d$ が普遍射をもつことは $L$ が右随伴をもつことと同値で、そのとき普遍射は余単位で与えられる(Mac98 Theorem IV.1.1 (ii)、p. 82、Theorem IV.1.2 (iv)、p. 83)。$\square$
∞圏の随伴は、この性質を定義に採って、$\Delta^1$ 上の Cartesian かつ coCartesian なファイブレーションとして定義される(HTT09 Definition 5.2.2.1、p. 340。随伴関手(∞圏))。
記号は 左ファイブレーションと右ファイブレーション の節「スライスの射影」に従う。単体的集合 $X$ と写像 $r\colon K\to X$ について、スライス $X_{/r}$ は、$K$ 上で $r$ に一致する写像 $\Delta^m\star K\to X$ を $m$ 単体とする単体的集合であり、単体的集合 $A$ から $X_{/r}$ への写像は、$K$ 上で $r$ に一致する写像 $A\star K\to X$ と $A$ について自然に $1$ 対 $1$ に対応する(HTT09 Proposition 1.2.9.2、p. 42。$X$ が準圏でなくても同じ式で定まる)。辺 $f\colon x\to y$ を $f\colon\Delta^1\to X$ とみて $X_{/f}$ を、頂点 $y$ を $y\colon\Delta^0\to X$ とみて $X_{/y}$ を考える。$\{1\}\subset\Delta^1$ への制限が写像 $X_{/f}\to X_{/y}$ を定める。
$p\colon X\to S$ を内部ファイブレーションとする。$X$ の辺 $f\colon x\to y$ が $p$-Cartesian であるとは、制限と $p$ との合成が定める写像
$$
\theta_f\colon X_{/f}\to X_{/y}\times_{S_{/p(y)}}S_{/p(f)}
$$
が自明 Kan ファイブレーション(すべての $\partial\Delta^m\subset\Delta^m$ に対して右持ち上げ性質をもつ写像)であることをいう(HTT09 Definition 2.4.1.1、p. 115)。$p^{\mathrm{op}}\colon X^{\mathrm{op}}\to S^{\mathrm{op}}$ について $f^{\mathrm{op}}$ が Cartesian であるとき、$f$ を $p$-coCartesian という。
単体的集合の写像 $p\colon X\to S$ が Cartesian ファイブレーション(Cartesian fibration)であるとは、$p$ が内部ファイブレーションであり、$S$ のすべての辺 $\alpha\colon s\to p(y)$($y$ は $X$ の頂点)について、$p(f)=\alpha$ となる $p$-Cartesian な辺 $f\colon x\to y$ があることをいう。$p^{\mathrm{op}}$ が Cartesian ファイブレーションであるとき、$p$ を coCartesian ファイブレーション という(HTT09 Definition 2.4.2.1、p. 121)。
定義はスライスを使うが、実際に使うのは次の持ち上げの言い換えである。
$p\colon X\to S$ を内部ファイブレーション、$f$ を $X$ の辺とする。$f$ が $p$-Cartesian であることと、すべての $n\ge2$ について、最後の辺 $\{n-1,n\}$ を $f$ に送る写像 $u\colon\Lambda^n_n\to X$ と $p\circ u=v|_{\Lambda^n_n}$ となる $v\colon\Delta^n\to S$ に対して、$w|_{\Lambda^n_n}=u$、$p\circ w=v$ となる $w\colon\Delta^n\to X$ があることは同値である(HTT09 Remark 2.4.1.4、p. 116)。
$m\ge0$ とし、$\theta_f$ の $\partial\Delta^m\subset\Delta^m$ に対する持ち上げの問題を書き直す。スライスの対応により、
thm-cf-horn により、$f$ が Cartesian であることは、最後の辺が $f$ の $\Lambda^n_n\to\mathcal C$($n\ge2$)がいつも埋まることである。頂点の順序の反転で、これは $\mathcal C^{\mathrm{op}}$ の中で最初の辺が $f^{\mathrm{op}}$ の $\Lambda^n_0$ がいつも埋まることと同じであり、Joyalの定理(準圏がKan複体である条件) の定理「Joyalの持ち上げ定理」により、$f^{\mathrm{op}}$ が $\mathcal C^{\mathrm{op}}$ の同値であることと同値である。$\mathcal C^{\mathrm{op}}$ は準圏であり(準圏 の命題「反対準圏」)、ホモトピー圏は辺を生成元、$2$ 単体ごとの関係で表示できるので(∞圏のホモトピー圏 の命題「生成元と関係による基本圏との一致」)$h(\mathcal C^{\mathrm{op}})\cong(h\mathcal C)^{\mathrm{op}}$ である。よってこれは $f$ が同値であることと同値である。$\Delta^0$ の辺は退化した辺だけで、その持ち上げには退化した辺(同値)がとれる。$\square$
小さな圏の間の関手 $F\colon\mathcal A\to\mathcal B$ について、$N(\mathcal A)$ の辺 $e$ が $N(F)$-Cartesian であることと、$e$ が def-cf-ordinary の意味で $F$-Cartesian であることは同値である。とくに $N(F)$ が Cartesian ファイブレーションであることと、$F$ がファイバー付き圏であることは同値である(後半は HTT09 Remark 2.4.2.2、p. 121。前半の $\mathcal B=[1]$ で $F(e)$ が $0\to1$ の場合は同 Remark 2.4.1.2、p. 115)。
要点:$n=2$ が $e_*$ の全射性、$n=3$ が単射性にあたり、$n\ge4$ ではいつも延びる。
$N(F)$ は内部ファイブレーションである(ホーンと充填条件 の例「圏の脈体と関手」)。脈体 の補題「脈体への写像は辺と三角形で決まる」により、$\Lambda^n_n\to N(\mathcal A)$ は、頂点ごとの対象 $c_a$ と、ホーンに含まれる辺ごとの射 $e_{ab}$ で、ホーンに含まれる三角形ごとに $e_{bc}e_{ab}=e_{ac}$ を満たすものであり、延長は足りない関係を満たすことである。延長の像は辺の射で決まるので、底との両立はホーンに含まれない辺についてだけ確かめればよい($n\ge3$ では $\Lambda^n_n$ はすべての辺を含む)。最後の辺を $e_{n-1,n}=e\colon x\to y$ とし、thm-cf-horn の条件を $n$ ごとに読む。
$n=2$:$\Lambda^2_2$ は辺 $\{0,2\}$、$\{1,2\}$ だけからなり、データは $a=e_{02}\colon z\to y$ と $e$、底は $F(e)\circ\beta=F(a)$ となる $\beta\colon F(z)\to F(x)$ である。延長は $F(g)=\beta$、$e\circ g=a$ となる $g=e_{01}$ なので、条件は $e_*$ の全射性である。
$n=3$:$\Lambda^3_3$ はすべての辺と、三角形 $\{1,2,3\},\{0,2,3\},\{0,1,3\}$ を含み、延長には $e_{12}e_{01}=e_{02}$ が要る。$e_*$ が単射なら、$e(e_{12}e_{01})=e_{13}e_{01}=e_{03}=e\,e_{02}$ と、底から $F(e_{12}e_{01})=F(e_{02})$ が成り立つので、$e_{12}e_{01}=e_{02}$ である。逆に $g,h\colon z\to x$ が $F(g)=F(h)$、$eg=eh$ を満たすとき、頂点を $z,z,x,y$、$e_{01}=\mathrm{id}_z$、$e_{12}=g$、$e_{02}=h$、$e_{23}=e$、$e_{13}=eg$、$e_{03}=eh$ とするホーンと、底 $F(z)\xrightarrow{\mathrm{id}}F(z)\xrightarrow{F(g)}F(x)\xrightarrow{F(e)}F(y)$ を延ばせば $g=h$ を得る。よって $n=3$ の条件は $e_*$ の単射性である。
$n\ge4$:三角形 $\{a,b,c\}$ は $j\notin\{a,b,c\}$ の面 $d_j$ に含まれ、そのような $j$ は $2$ つ以上あるので $n$ 以外のものがとれる。よって $\Lambda^n_n$ はすべての辺と三角形を含み、いつも延長がある。
以上から $e$ が $N(F)$-Cartesian であることは $e_*$ がすべての $(z,\beta)$ で全単射であることと同値である。$N(\mathcal B)$ の辺は $\mathcal B$ の射なので、後半は定義を比べればよい。$\square$
要点:持ち上げの問題を、像の側で先に解いてから元の側で解く。
すべて thm-cf-horn の持ち上げで確かめる。内部ファイブレーションは同型を含み、引き戻しと合成で閉じている(ホーンと充填条件 の定理「右持ち上げ性質の閉包性」)。1:$w=p^{-1}\circ v$ が解であり、辺の持ち上げも $p^{-1}$ でとれる。2:最後の辺が $f'$ の問題 $(u',v')$ に対し、$(q\circ u',g\circ v')$ は最後の辺が $q(f')$ の $p$ の問題なので解 $w$ があり、$(w,v')\colon\Delta^n\to X'$ が解である。$S'$ の辺 $\alpha'$ と $X'$ の頂点 $y'=(y,t)$($p(y)=g(t)$)について、$g(\alpha')$ の $p$-Cartesian な持ち上げ $f$ をとれば $(f,\alpha')$ が $p'$-Cartesian な持ち上げである。3:最後の辺が $f$ の $q\circ p$ の問題 $(u,v)$ に対し、まず最後の辺が $p(f)$ の $q$ の問題 $(p\circ u,v)$ を解いて $w_1\colon\Delta^n\to Y$ を得て、次に最後の辺が $f$ の $p$ の問題 $(u,w_1)$ を解けばよい。辺の持ち上げは、$Z$ の辺をまず $q$-Cartesian に、次にそれを $p$-Cartesian に持ち上げればよい。$\square$
単体的集合の写像 $p\colon X\to S$ について、$p$ が右ファイブレーションであることと、$p$ が Cartesian ファイブレーションで $X$ のすべての辺が $p$-Cartesian であることは同値である。同様に、左ファイブレーションであることと、coCartesian ファイブレーションですべての辺が $p$-coCartesian であることは同値である。とくに Kan ファイブレーションは Cartesian かつ coCartesian なファイブレーションである(HTT09 Proposition 2.4.2.4、p. 122)。
右ファイブレーションは内部ファイブレーションである(左ファイブレーションと右ファイブレーション の命題「基本性質」の 2)。$p$ が右ファイブレーションなら、$n\ge2$ の $\Lambda^n_n$ に対する持ち上げがいつもあるので、thm-cf-horn によりすべての辺が $p$-Cartesian であり、$\Lambda^1_1$ に対する持ち上げが終点を指定した辺の持ち上げを与えるので、$p$ は Cartesian ファイブレーションである。逆に後者の条件を仮定する。$0< k< n$ のホーンは $p$ が内部ファイブレーションなので埋まる。$n\ge2$ の $\Lambda^n_n$ はその最後の辺を含み、それは $p$-Cartesian なので thm-cf-horn により埋まる。$\Lambda^1_1$ に対する持ち上げは Cartesian ファイブレーションの定義の辺の持ち上げである。左の場合は反対単体的集合に移せばよい(同命題の 1)。Kan ファイブレーションは右かつ左ファイブレーションである(同命題の 2)。$\square$
Cartesian ファイブレーションは右ファイブレーションと違い、ファイバー $X_s$ が Kan 複体とは限らない一般の準圏でよい(ex-cf-equivalence の $\mathcal C\to\Delta^0$ のファイバーは $\mathcal C$ 自身)。辺 $s'\to s$ の上の Cartesian な持ち上げは、ファイバーの間の「引き戻しの関手」$X_s\to X_{s'}$ の役をする(正確な形は下の直線化定理である)。
$p\colon(X,E)\to(S,F)$ を 標識付き単体的集合 の写像とする。$p$ が同記事の定義「標識付きアノダイン射」の 1 と 2 の写像すべてに対して右持ち上げ性質をもつことと、次の 3 条件は同値である(HTT09 Proposition 3.1.1.6 の証明の前半、pp. 149–150)。
(a) 下の写像 $X\to S$ は内部ファイブレーションである。
(b) $E$ のすべての辺は $p$-Cartesian である。
(c) $X$ の頂点 $y$ と $F$ の辺 $\bar e\colon s\to p(y)$ について、$p(e)=\bar e$ となる $e\in E$(終点 $y$)がある。
とくに Cartesian ファイブレーション $p$ について、$X^\natural$ は標識付き単体的集合であり(退化した辺は $p$-Cartesian である。prop-cf-degenerate-cartesian)、$X^\natural\to S^\sharp$ は定義の 1・2 に対して右持ち上げ性質をもつ。
要点:$\Lambda^n_n$ の最後の辺がただ 1 つの印なので、印の条件は最後の辺が $E$ に入ることだけになる。
定義の 1 は平坦な単体的集合の間の包含なので、それに対する持ち上げは下の写像の内部ホーンに対する持ち上げと同じで、(a) と同値である。定義の 2 の $n=1$ は $\{1\}\subset(\Delta^1)^\sharp$ で、その持ち上げの問題は頂点 $y$ と $F$ の辺 $\bar e$(終点 $p(y)$)の組、解は $\bar e$ の上の終点 $y$ の標識付きの辺なので、(c) と同値である。$n\ge2$ では $\Lambda^n_n$ は最後の辺を含むので、始域から $X$ への標識付きの写像は、最後の辺を $E$ の辺 $e$ に送る写像 $\Lambda^n_n\to X$ と同じであり、終域から $S$ への写像の印の条件は $p(e)\in F$ から自動的に満たされる。解の印の条件も、最後の辺の像が $e$ なので自動的に満たされる。よって $n\ge2$ の持ち上げ性質は、「$e\in E$ を最後の辺とする $\Lambda^n_n$ の問題がいつも解ける」ことであり、(a) のもとで thm-cf-horn により (b) と同値である。最後の主張は (c) が Cartesian な持ち上げの存在そのものであることによる。$\square$
逆向きに、$p$ がすべての標識付きアノダイン射に対して持ち上がるには、(b) の逆($p(e)\in F$ で $p$-Cartesian な $e$ は $E$ に入る)も要り、そのために定義の 3・4 が使われる(HTT09 Proposition 3.1.1.6、pp. 149–150。この記事では証明しない)。
∞圏のあいだの内部ファイブレーション $p\colon\mathcal C\to\mathcal D$ について、$\mathcal C$ の辺 $f$ が同値であることと、$f$ が $p$-Cartesian で $p(f)$ が同値であることは同値であり、とくに退化した辺は $p$-Cartesian である(HTT09 Proposition 2.4.1.5・Corollary 2.4.1.6、pp. 116–117)。$2$ 単体 $\sigma$ の辺 $d_0\sigma$ が $p$-Cartesian なら、$d_2\sigma$ が $p$-Cartesian であることと $d_1\sigma$ が $p$-Cartesian であることは同値である(同 Proposition 2.4.1.7、p. 117)。また一般の内部ファイブレーション $p\colon X\to S$ について、終点が $y$ で $p(f)=\alpha$ となる $p$-Cartesian な辺 $f$ は $X_{/y}\times_{S_{/p(y)}}\{\alpha\}$ の終対象とみなせ、同値を除いて一意である(同 Remark 2.4.1.9、p. 119)。いずれもこの記事では証明しない。底が∞圏でない内部ファイブレーションでは、退化した辺が Cartesian とは限らない(ex-cf-degenerate)。一方、Cartesian ファイブレーションでは退化した辺はいつも Cartesian である(prop-cf-degenerate-cartesian)。
$S:=\Delta^2\amalg_{\Delta^{\{1,2\}}}\Delta^0$($\Delta^2$ の辺 $\{1,2\}$ を 1 点 $\ast$ につぶしたもの)とし、$X\subset S$ を辺 $\{0,2\}$ の像($X\cong\Delta^1$)、$p\colon X\subset S$ を包含とする。$p$ は内部ファイブレーションだが、$X$ の頂点 $\ast$ の退化した辺は $p$-Cartesian でない。
要点:$S$ の単体は頂点 $0$ から出る辺で決まり、$X$ には辺 $\{0,1\}$ の上の辺がない。
$S$ の単体。$S$ の $k$ 単体は、順序を保つ写像 $\varphi\colon[k]\to[2]$ のうち像が $0$ を含むものと、頂点がすべて $\ast$ の 1 つの $k$ 単体である(像が $\{1,2\}$ に入る $\varphi$ はすべてつぶれる)。像が $0$ を含む $\varphi$ では $\varphi(0)=0$ で、各 $\varphi(l)$ は辺 $\varphi|_{\{0,l\}}$($\{0\}$ の退化した辺・辺「$01$」・辺「$02$」のどれか)で決まる。$X$ の単体は値が $\{0,2\}$ に入る $\varphi$ と頂点がすべて $\ast$ の単体で、辺「$01$」の上にある $X$ の辺はない。
内部ファイブレーション。$0< i< n$、$u\colon\Lambda^n_i\to X$、$b\colon\Delta^n\to S$、$p\circ u=b|_{\Lambda^n_i}$ とする。$X\cong\Delta^1$ は脈体なので $u$ は $w\colon\Delta^n\to X$ に延び(準圏 の定理「脈体の内部ホーンは一意に充填される」)、$p\circ w=b$ を示せばよい。$b$ の頂点 $0$ が $\ast$ なら $b$ もホーンの像もすべての頂点が $\ast$ で、$p\circ w$ と $b$ はどちらも頂点がすべて $\ast$ のただ 1 つの単体である。そうでなければ $b=\varphi$ は辺 $\varphi|_{\{0,l\}}$ で決まる。$n\ge3$ では辺 $\{0,l\}$ はすべて $\Lambda^n_i$ に入る($\{0,l\}$ を含む面 $d_j$ は $j\notin\{0,l\}$ で $n-1\ge2$ 個あり、$i$ 以外がとれる)。$n=2$、$i=1$ では辺 $\{0,1\}$ と $\{1,2\}$ が入り、辺 $\{0,1\}$ の像は $X$ の辺なので $\varphi(1)\in\{0,2\}$ である。$\varphi(1)=0$ なら $\varphi(2)$ は辺 $\{1,2\}$ で決まり、$\varphi(1)=2$ なら $\varphi(2)=2$ である。どの場合も $b$ はホーンへの制限で決まり、同じ制限をもつ $p\circ w$ と等しい。
退化した辺。$u\colon\Lambda^2_2\to X$ を、辺 $\{0,2\}$ を $X$ の非退化な辺 $a$ に、辺 $\{1,2\}$ を頂点 $\ast$ の退化した辺に送るものとし、$\mathrm{id}_{[2]}$ の像 $\tau\colon\Delta^2\to S$ をとる。$\tau$ の辺 $\{0,2\}$ は「$02$」$=p(a)$、辺 $\{1,2\}$ は $\ast$ につぶれるので $p\circ u=\tau|_{\Lambda^2_2}$ である。延長 $w$ の辺 $\{0,1\}$ は「$01$」の上の $X$ の辺でなければならないが、そのような辺はない。thm-cf-horn により退化した辺は $p$-Cartesian でない。なお $S$ は準圏でない。面 $d_3$・$d_2$・$d_0$ をそれぞれ $(0,1,2)$・$(0,1,1)$・頂点がすべて $\ast$ の単体に送る $\Lambda^3_1\to S$ は面の上で両立するが、延長は頂点 $0$ を $0$ に送るので $(0,1,2,1)$ でなければならず、これは順序を保たないので延びない。$\square$
$p\colon X\to S$ が Cartesian ファイブレーションなら、$X$ の退化した辺はすべて $p$-Cartesian である。
要点:底を $\Delta^n$ に取り替えて∞圏のあいだの話にし、Cartesian な持ち上げ $g$ と退化した辺を $2$ 単体で結んで比べる。
$y$ を $X$ の頂点、$s=p(y)$、$e=s_0y$ とし、thm-cf-horn の問題 $(u,b)$($n\ge2$、$u\colon\Lambda^n_n\to X$ の最後の辺が $e$、$b\colon\Delta^n\to S$、$p\circ u=b|_{\Lambda^n_n}$)をとる。
1。$b$ に沿った引き戻し $p'\colon X':=X\times_S\Delta^n\to\Delta^n$ は prop-cf-basic の 2 により Cartesian ファイブレーションで、$\Delta^n$ が準圏なので $X'$ も準圏である(内部ファイブレーションの合成)。$u'=(u,\text{包含})\colon\Lambda^n_n\to X'$ の最後の辺は $e'=(e,\iota)$($\iota=\{n-1,n\}$)であり、$e'$ が $p'$-Cartesian なら問題 $(u',\mathrm{id}_{\Delta^n})$ の解の第 1 成分が $(u,b)$ の解になる。以下 $e'$ が $p'$-Cartesian であることを示す。
2。$b|_{\Delta^\iota}=p(e)=s_0s$ は $\Delta^1\to\Delta^0\xrightarrow{s}S$ と分解するので、$X'':=X'\times_{\Delta^n}\Delta^\iota\cong X_s\times\Delta^1$ であり、$p''\colon X''\to\Delta^1$ は $X_s\to\Delta^0$ の引き戻しである。$X_s$ は準圏で、$e'$ の $X_s$ 成分は退化した辺 $e$(同値)なので ex-cf-equivalence により $X_s\to\Delta^0$ について Cartesian であり、prop-cf-basic の 2 により $e'$ は $p''$-Cartesian である。
3。$\iota$ の $p'$-Cartesian な持ち上げ $g\colon x'\to(y,n)$ をとる。$g$ は $X''$ の辺で、prop-cf-basic の 2 により $p''$-Cartesian でもある。辺 $\{1,2\}$ を $g$、辺 $\{0,2\}$ を $e'$ に送る $\Lambda^2_2\to X'$ と、頂点を $n-1,n-1,n$ に送る $\Delta^2\to\Delta^n$ は両立するので、$g$ が $p'$-Cartesian であることから $d_0\sigma=g$、$d_1\sigma=e'$ となる $2$ 単体 $\sigma$ があり、$h:=d_2\sigma\colon(y,n-1)\to x'$ は頂点 $n-1$ の退化した辺の上にある。$\sigma$ の像は $\Delta^\iota$ に入るので、$\sigma$ は $X''$ の単体である。
4。$X''\cong X_s\times\Delta^1$ と $\Delta^1$ は準圏である。$X''\to\Delta^1$ と $\sigma$ に HTT09 Proposition 2.4.1.7 を使うと、$d_0\sigma=g$ と $d_1\sigma=e'$ が $p''$-Cartesian なので $h$ も $p''$-Cartesian であり、$p''(h)$ は退化した辺(同値)なので同 Proposition 2.4.1.5 により $h$ は $X''$ の同値、したがって $X'$ の同値である。
5。$X'\to\Delta^n$ に戻ると、Proposition 2.4.1.5 により $h$ は $p'$-Cartesian であり、Proposition 2.4.1.7 により($d_0\sigma=g$ と $d_2\sigma=h$ が $p'$-Cartesian)$d_1\sigma=e'$ も $p'$-Cartesian である。$\square$
ex-cf-degenerate でこの議論が通らないのは、$p$ が Cartesian ファイブレーションでなく、段 3 の $g$ がとれないためである。$b=\tau$ のとき、$X'$ の辺で $\iota=\{1,2\}$ の上にあり終点が $(\ast,2)$ のものは $(s_0\ast,\iota)$ だけであり、これが $p'$-Cartesian であるには「$01$」の上の $X$ の辺が要るが、そのような辺はない。
Cartesian ファイブレーションの理論の中心は Lurie の 直線化定理 である:$(\mathbf{sSet}^+)_{/S}$ の Cartesian モデル構造(ファイブラントな対象は Cartesian ファイブレーション $X\to S$ に Cartesian な辺の印を付けた $X^\natural$)は、直線化と非直線化の随伴によって $\mathfrak C[S]^{\mathrm{op}}$ 上の標識付き単体的集合に値をとる関手の射影モデル構造と Quillen 同値である(HTT09 Proposition 3.1.4.1、p. 160、Theorem 3.2.0.1、p. 169。この記事では証明しない。標識付き単体的集合)。こうして Cartesian ファイブレーション $X\to S$ は関手 $S^{\mathrm{op}}\to\mathcal{C}at_\infty$ と同じものになり、左ファイブレーションと右ファイブレーション の節「直線化」の右ファイブレーションと空間値の前層の対応を、∞圏値の関手へ広げる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| thm-cf-right の「すべての辺が Cartesian」 | $\Delta^1=N([1])\to\Delta^0$ | 右ファイブレーションであること(Cartesian ファイブレーションではある) |
| def-cf-main の「終点を指定した持ち上げ」 | $N(\{1\})\subset N([1])$ | Cartesian ファイブレーションであること(coCartesian ファイブレーションではある) |
| prop-cf-adjunction の「$L$ が右随伴をもつ」 | 2 対象の離散圏 $\{a,b\}$ から 1 点の圏への関手 $L$ | $\mathcal M_L\to[1]$ がファイバー付き圏であること |
| 退化した辺が Cartesian になる「底が∞圏」 | ex-cf-degenerate | 退化した辺が Cartesian であること |
1 行目:$\Delta^1\to\Delta^0$ は ex-cf-equivalence により Cartesian ファイブレーションで、Cartesian な辺は同値な辺、つまり退化した辺だけである($h(\Delta^1)=[1]$)。非退化な辺 $0\to1$ は Cartesian でないので、thm-cf-right により右ファイブレーションでない。2 行目:包含 $\{1\}\subset[1]$ では、$0\to1$ を対象 $1$ への射として持ち上げられない。射が $1$ の恒等射だけなので coCartesian な持ち上げの条件(始点を指定し、$1$ から出る $[1]$ の射は恒等射だけ)は恒等射で満たされ、thm-cf-nerve の coCartesian 版(反対圏に移したもの)により coCartesian ファイブレーションである。3 行目:$\mathcal D$ の唯一の対象 $*$ について、右随伴 $R$ があれば $\mathrm{Hom}(a,R*)\cong\mathrm{Hom}(L a,*)$ は 1 点なので $a=R*$、同様に $b=R*$ となり矛盾する。prop-cf-adjunction の 2 による。
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