Craigの補間定理

同義語:クレイグの補間定理Craig interpolation theoremCraig's interpolation theorem

概要

Craigの補間定理(Craig interpolation theorem)とは、一階述語論理の文 $\varphi,\psi$ について $\varphi\models\psi$ ならば、両方に共通する非論理記号だけで書ける文 $\theta$ で $\varphi\models\theta$ かつ $\theta\models\psi$ となるもの(補間式)がある、という定理である。命題論理では共通でない変数に真偽の定数を代入して補間式を作れる。一階の場合は、補間式がないと仮定し、両者のモデルを初等鎖で往復して 1 つの構造にまとめて矛盾を導く。帰結として、それぞれ矛盾しない 2 つの理論の共通部分が完全なら和も矛盾しないという Robinson の結合無矛盾性定理と、陰に定義された記号は明示的に定義できるという Beth の定義可能性定理が従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 命題論理, 一階述語論理, コンパクト性定理(一階論理), 初等部分モデル

Craig の補間定理(Craig interpolation theorem)は、論理的な帰結 $\varphi\models\psi$ の「間に」、$\varphi$ と $\psi$ の両方に現れる記号だけで書ける文 $\theta$ を挟めることを述べる定理である。$\varphi\models\theta$ と $\theta\models\psi$ が成り立つこの $\theta$ を 補間式(interpolant)という。補間式は、$\varphi$ から $\psi$ が出るときに、$\varphi$ のうち $\psi$ に関係する情報だけを、共通の語彙で書き出したものと読める。
恒真式 の記事の定理「共通の変数をもたない選言」は、共通の命題変数がない極端な場合で、そのとき補間式は「真」か「偽」の定数になる。一般の場合が補間定理である。この記事では、命題論理の補間定理を代入で証明し、一階述語論理の補間定理を コンパクト性定理(一階論理) と初等鎖による構成で証明する。帰結として、2 つの理論を合わせても矛盾しない条件(Robinson の結合無矛盾性定理)と、陰に定義された記号は明示的に定義できること(Beth の定義可能性定理)を導く。

命題論理の補間定理

命題変数と定数 $\top$(つねに真)、$\bot$(つねに偽)から $\lnot,\land,\lor,\to$ で作った論理式を考える。付値 $v$ による真理値 $\mathrm{T},\mathrm{F}$ と恒真式は 恒真式 の記事の定義による($v(\top)=\mathrm{T}$、$v(\bot)=\mathrm{F}$ とする)。論理式 $\varphi$ に現れる命題変数の集合を $\operatorname{var}(\varphi)$ と書く。

補間式(命題論理)

$\varphi\to\psi$ が恒真式であるとする。論理式 $\theta$ が $\varphi\to\psi$ の 補間式 であるとは、$\operatorname{var}(\theta)\subset\operatorname{var}(\varphi)\cap\operatorname{var}(\psi)$ であり、$\varphi\to\theta$ と $\theta\to\psi$ がともに恒真式であることをいう。

命題論理の補間定理

$\varphi\to\psi$ が恒真式ならば、$\varphi\to\psi$ の補間式がある。

共通でない変数に定数を代入する

$\operatorname{var}(\varphi)$ のうち $\operatorname{var}(\psi)$ に属さない命題変数を $q_1,\dots,q_k$ とする($k=0$ なら $\theta:=\varphi$ でよい)。$e=(e_1,\dots,e_k)\in\{\top,\bot\}^k$ ごとに、$\varphi$ の $q_i$ に $e_i$ を代入した論理式を $\varphi[e/\bar q]$ とし、
$$ \theta:=\bigvee_{e\in\{\top,\bot\}^k}\varphi[e/\bar q] $$
とおく。$\varphi[e/\bar q]$ には $q_1,\dots,q_k$ が現れないので、$\operatorname{var}(\theta)\subset\operatorname{var}(\varphi)\cap\operatorname{var}(\psi)$ である。以下、付値 $v$ と $e$ について、$v_e$ を「$q_i$ では $e_i$ の真理値をとり、ほかの命題変数では $v$ と同じ値をとる付値」とする。恒真式 の記事の補題「代入と付値」により $v(\varphi[e/\bar q])=v_e(\varphi)$ である(同補題は、定数 $\top,\bot$ を含む論理式でも、論理式の組み立てについての同じ帰納法で成り立つ)。
$\varphi\to\theta$ が恒真式であること. $v(\varphi)=\mathrm{T}$ とし、$e_i$ を $v(q_i)$ が $\mathrm{T}$ なら $\top$、$\mathrm{F}$ なら $\bot$ とおく。このとき $v_e=v$ なので $v(\varphi[e/\bar q])=v(\varphi)=\mathrm{T}$ となり、$v(\theta)=\mathrm{T}$ である。
$\theta\to\psi$ が恒真式であること. $v(\theta)=\mathrm{T}$ とすると、ある $e$ で $v_e(\varphi)=v(\varphi[e/\bar q])=\mathrm{T}$ である。$\varphi\to\psi$ は恒真式なので $v_e(\psi)=\mathrm{T}$ である。$v_e$ と $v$ は $q_1,\dots,q_k$ でしか違わず、それらは $\psi$ に現れないので、$v(\psi)=v_e(\psi)=\mathrm{T}$ である。$\square$

証明は補間式を具体的に作っている。$\theta$ は「$\varphi$ を真にする $q_1,\dots,q_k$ の値の選び方がある」ことを表し、$\psi$ に関係のない変数を $\varphi$ から消去した論理式である。共通の変数がないときは $\theta$ は $\top,\bot$ だけからなり、$\top$ と同値なら $\psi$ が恒真式、$\bot$ と同値なら $\varphi$ が充足不能になる。これが 恒真式 の記事の定理「共通の変数をもたない選言」の場合である。

命題論理の補間式

$\varphi:=p\land q$、$\psi:=q\lor r$ とする。$\varphi\to\psi$ は恒真式で、共通の変数は $q$ だけである。$\varphi$ だけの変数は $p$ なので、証明の $\theta$ は $(\top\land q)\lor(\bot\land q)$ で、これは $q$ と同値である。実際 $p\land q\to q$ と $q\to q\lor r$ は恒真式である。

一階述語論理の補間定理

設定と主張

以下、一階言語はすべて等号を含むとし、構造と充足関係は 一階述語論理 の記事の定義による。言語 $L_1,L_2$ の非論理記号(定数記号・関数記号・関係記号)の共通部分を $L_0:=L_1\cap L_2$ とする。文の集合 $\Sigma$ と文 $\sigma$ について、$\Sigma\models\sigma$ は「両者の記号を含む言語の構造で $\Sigma$ のすべての文を満たすものは $\sigma$ も満たす」ことを表す。構造の真偽は、文に現れない記号の解釈によらないので、この意味は言語の選び方によらない。$L$ 構造 $\mathcal M$ の $L_0$ への簡約を $\mathcal M|_{L_0}$ と書く。

Craig の補間定理

$\varphi$ を $L_1$ の文、$\psi$ を $L_2$ の文とし、$\varphi\models\psi$ とする。このとき $L_0$ の文 $\theta$ で、$\varphi\models\theta$ かつ $\theta\models\psi$ となるものがある。

$\theta$ の非論理記号は $\varphi$ と $\psi$ の両方に現れるものだけである。等号は論理記号として $\theta$ に使ってよい。$L_0$ が空でも、$\forall x\,(x=x)$ や $\lnot\forall x\,(x=x)$ が $L_0$ の文として「真」と「偽」の役をする。この主張は OLT26 Theorem 27.4(p. 407)と同じである。Gal15 Theorem 6.5.2(p. 281)は関係記号と定数記号について同じ形の主張を述べている(後の注意「出典と証明の方法」)。

一階の補間式

$\varphi:=P(a)\land\forall x\,Q(x)$、$\psi:=\exists y\,S(y)\lor Q(b)$ とすると $\varphi\models\psi$ である。$\varphi$ の記号は $P,a,Q$、$\psi$ の記号は $S,Q,b$ で、共通の記号は $Q$ だけである。$\theta:=\forall x\,Q(x)$ は $\varphi\models\theta$ と $\theta\models Q(b)$、したがって $\theta\models\psi$ を満たす補間式である(Gal15 Example 6.5.1、p. 280)。

2 つの補題

証明は対偶による。補間式がなければ、$\varphi$ のモデルと $\lnot\psi$ のモデルで $L_0$ の部分が同じ文を満たすものがとれ(lem-craig-separate)、それらを 1 つの構造に合わせられる(lem-craig-extend の繰り返し)ことを示す。

分離の補題

$\varphi,\psi$ を thm-craig-main のとおりとし、補間式がないとする。このとき $L_1$ 構造 $\mathcal M\models\varphi$ と $L_2$ 構造 $\mathcal N\models\lnot\psi$ で、$\mathcal M|_{L_0}$ と $\mathcal N|_{L_0}$ が同じ $L_0$ の文を満たすものがある。

$\varphi\models\theta$ となる $L_0$ の文 $\theta$ の全体を $\Gamma$ とする。
段 1($\Gamma\cup\{\lnot\psi\}$ はモデルをもつ). もたないとすると $\Gamma\models\psi$ であり、コンパクト性定理(一階論理) の系「帰結の有限性」により有限個の $\theta_1,\dots,\theta_k\in\Gamma$ で $\{\theta_1,\dots,\theta_k\}\models\psi$ となるものがある。$\theta:=\theta_1\land\cdots\land\theta_k$($k=0$ なら $\forall x\,(x=x)$)は $L_0$ の文で、$\varphi\models\theta$、$\theta\models\psi$ を満たす補間式になり、仮定に反する。そこで $\Gamma\cup\{\lnot\psi\}$ の $L_2$ 構造のモデル $\mathcal N$ をとる。
段 2($\varphi$ と $\mathcal N$ の $L_0$ の理論は両立する). $\mathcal N|_{L_0}$ で真な $L_0$ の文の全体を $T_0$ とする。$T_0\cup\{\varphi\}$ がモデルをもたないとすると、段 1 と同じく有限個の $\chi_1,\dots,\chi_m\in T_0$ で、$\chi:=\chi_1\land\cdots\land\chi_m$($m=0$ なら $\forall x\,(x=x)$)が $\varphi\models\lnot\chi$ を満たすものがある。$\lnot\chi$ は $L_0$ の文なので $\lnot\chi\in\Gamma$ であり、$\mathcal N\models\lnot\chi$ となるが、$\chi\in T_0$ なので $\mathcal N\models\chi$ であり矛盾する。よって $T_0\cup\{\varphi\}$ の $L_1$ 構造のモデル $\mathcal M$ がある。$\mathcal M|_{L_0}$ は $T_0$ のすべての文を満たし、$T_0$ はどの $L_0$ の文についてもそれ自身か否定を含むので、$\mathcal M|_{L_0}$ と $\mathcal N|_{L_0}$ は同じ $L_0$ の文を満たす。$\square$

次の補題の言葉を用意する。$L,L'$ を $L_0$ を含む言語、$\mathcal A$ を $L$ 構造、$\mathcal B$ を $L'$ 構造、$C$ を $\mathcal A$ の台集合の部分集合とする。写像 $h\colon C\to\mathcal B$ が $L_0$ で初等的 であるとは、$L_0$ の論理式 $\chi(x_1,\dots,x_k)$ と $c_1,\dots,c_k\in C$ について常に
$$ \mathcal A\models\chi[c_1,\dots,c_k]\iff\mathcal B\models\chi[h(c_1),\dots,h(c_k)] $$
となることをいう。論理式 $x_1=x_2$ により、このような $h$ は単射である。$C=\emptyset$ のとき、空写像が $L_0$ で初等的であることは、$\mathcal A|_{L_0}$ と $\mathcal B|_{L_0}$ が同じ $L_0$ の文を満たすことにほかならない。

延長の補題

上の設定で $h\colon C\to\mathcal B$ が $L_0$ で初等的ならば、$\mathcal B\preccurlyeq\mathcal B'$($L'$ 構造としての初等拡大)と、$h$ を延長する写像 $h'\colon\mathcal A\to\mathcal B'$ で $L_0$ で初等的なものがある。

要点:「$\mathcal B$ の初等図式」と「$\mathcal A$ で成り立つ $L_0$ の論理式すべて」を合わせた文の集合の有限部分は、$\mathcal A$ で存在を述べる $L_0$ の文に移して $\mathcal B$ の中で満たせる。

詳しい証明を開く

$\mathcal B$ の各元 $b$ に定数記号 $d_b$ を、$\mathcal A$ の各元 $a\in A\setminus C$ に新しい定数記号 $e_a$ を用意し、$c\in C$ については $e_c:=d_{h(c)}$ とおく。Löwenheim–Skolemの定理 の記事の定義「初等図式」の $\operatorname{Eldiag}(\mathcal B)$($d_b$ を使う)と、$\mathcal A\models\chi[a_1,\dots,a_k]$ となる $L_0$ の論理式 $\chi$ と $a_i\in A$ についての文 $\chi(e_{a_1},\dots,e_{a_k})$ の全体 $\Delta$ を合わせて $\Sigma:=\operatorname{Eldiag}(\mathcal B)\cup\Delta$ とする。

$\Sigma$ の有限部分集合をとる。$\Delta$ に属する有限個の文の連言も $\Delta$ に属するので、それは $\operatorname{Eldiag}(\mathcal B)$ の有限個の文と 1 つの $\chi(e_{c_1},\dots,e_{c_k},e_{a_1},\dots,e_{a_l})$($c_i\in C$、$a_j\in A\setminus C$ は相異なる)からなるとしてよい。$\mathcal A\models\exists y_1\cdots\exists y_l\,\chi[c_1,\dots,c_k]$ であり、これは $L_0$ の論理式なので、$h$ が $L_0$ で初等的であることから $\mathcal B\models\exists\bar y\,\chi[h(c_1),\dots,h(c_k)]$ である。その証人 $b_1,\dots,b_l\in\mathcal B$ をとり、$d_b$ を $b$、$e_{a_j}$ を $b_j$、残りの $e_a$ を任意の元と解釈すれば、この有限部分集合は満たされる。コンパクト性定理(一階論理) により $\Sigma$ はモデル $\mathcal K$ をもつ。

Löwenheim–Skolemの定理 の記事の補題「初等図式の補題」により $j(b):=d_b^{\mathcal K}$ は $\mathcal B$ から $\mathcal K|_{L'}$ への初等埋め込みであり、同記事の補題「初等埋め込みを包含に取り替える」により、$\mathcal B\preccurlyeq\mathcal B'$ と同型写像 $g\colon\mathcal K|_{L'}\to\mathcal B'$ で $g\circ j=\mathrm{id}$ となるものがある。$h'(a):=g(e_a^{\mathcal K})$ とおくと、$c\in C$ では $h'(c)=g(j(h(c)))=h(c)$ である。$\mathcal A\models\chi[\bar a]$ なら $\chi(e_{\bar a})\in\Sigma$ なので $\mathcal B'\models\chi[h'(\bar a)]$ であり、$\mathcal A\not\models\chi[\bar a]$ なら $\lnot\chi$ について同じ議論をすればよい(同型写像は真偽を保つ)。よって $h'$ は $L_0$ で初等的である。$\square$

主定理の証明

初等鎖による往復

補間式がないとして矛盾を導く。lem-craig-separate の $\mathcal M\models\varphi$、$\mathcal N\models\lnot\psi$ をとる。
段 1(往復して初等鎖を作る). $L_1$ 構造の列 $\mathcal M=\mathcal M_0\preccurlyeq\mathcal M_1\preccurlyeq\cdots$、$L_2$ 構造の列 $\mathcal N\preccurlyeq\mathcal N_0\preccurlyeq\mathcal N_1\preccurlyeq\cdots$ と、$L_0$ で初等的な写像 $f_n\colon\mathcal M_n\to\mathcal N_n$、$g_n\colon\mathcal N_n\to\mathcal M_{n+1}$ で
$$ g_n(f_n(a))=a\quad(a\in\mathcal M_n),\qquad f_{n+1}(g_n(b))=b\quad(b\in\mathcal N_n) $$
を満たすものを作る。まず空写像は $L_0$ で初等的なので(lem-craig-separate)、lem-craig-extend を $\mathcal A=\mathcal M$、$C=\emptyset$、$\mathcal B=\mathcal N$ に使って $\mathcal N_0$ と $f_0$ を得る。$f_n$ ができたら、逆写像 $f_n^{-1}\colon f_n(\mathcal M_n)\to\mathcal M_n$ は $\mathcal N_n$ の部分集合から $\mathcal M_n$ への $L_0$ で初等的な写像なので、lem-craig-extend を $\mathcal A=\mathcal N_n$、$\mathcal B=\mathcal M_n$ に使えば $\mathcal M_{n+1}$ と $f_n^{-1}$ を延長する $g_n$ が得られる。同様に $g_n^{-1}$ を延長して $f_{n+1}\colon\mathcal M_{n+1}\to\mathcal N_{n+1}$ を得る。$a\in\mathcal M_n$ なら $f_{n+1}(a)=f_{n+1}(g_n(f_n(a)))=f_n(a)$ なので、$f_{n+1}$ は $f_n$ の延長である。
段 2(和をとる). $\mathcal M_\omega:=\bigcup_n\mathcal M_n$、$\mathcal N_\omega:=\bigcup_n\mathcal N_n$、$f:=\bigcup_nf_n$ とおく。初等部分モデル の記事の定理「初等鎖の和」により $\mathcal M_n\preccurlyeq\mathcal M_\omega$、$\mathcal N_n\preccurlyeq\mathcal N_\omega$ である。$\bar a\in\mathcal M_n$ と $L_0$ の論理式 $\chi$ について
$$ \mathcal M_\omega\models\chi[\bar a]\iff\mathcal M_n\models\chi[\bar a]\iff\mathcal N_n\models\chi[f_n(\bar a)]\iff\mathcal N_\omega\models\chi[f(\bar a)] $$
なので $f$ は $L_0$ で初等的で、とくに単射である。$b\in\mathcal N_n$ なら $b=f_{n+1}(g_n(b))$ なので全射でもある。原子論理式 $R(\bar x)$、$F(\bar x)=y$、$c=y$($R,F,c\in L_0$)の真偽を保つ全単射なので、$f$ は $\mathcal M_\omega|_{L_0}$ から $\mathcal N_\omega|_{L_0}$ への同型写像である。
段 3(1 つの構造にまとめる). $\mathcal M_\omega$ の台集合の上に $L_1\cup L_2$ 構造 $\mathcal K$ を、$L_1$ の記号は $\mathcal M_\omega$ のとおりに、$L_2\setminus L_1$ の記号は $f$ で $\mathcal N_\omega$ から写して($R^{\mathcal K}:=f^{-1}(R^{\mathcal N_\omega})$ など)解釈する。$\mathcal K|_{L_1}=\mathcal M_\omega$ であり、$L_0$ の記号でも段 2 により $f$ が解釈を保つので、$f$ は $\mathcal K|_{L_2}$ から $\mathcal N_\omega$ への同型写像である。$\mathcal M\preccurlyeq\mathcal M_\omega$ から $\mathcal K\models\varphi$、$\mathcal N\preccurlyeq\mathcal N_\omega$ と同型写像が真偽を保つことから $\mathcal K\models\lnot\psi$ となり、$\varphi\models\psi$ に反する。$\square$

段 1 は、2 つの構造の間を $L_0$ の部分だけを保って往復しながら広げていく議論で、カテゴリー性 の記事の Cantor の定理の証明の往復の議論と同じ形をしている。ただし、元を 1 つずつ足すのでなく、各段で初等拡大をとって相手の構造全体を写し込む。$L_1,L_2$ の大きさに制限はない。

帰結

Robinson の結合無矛盾性定理

$T_1$ を $L_1$ の文の集合、$T_2$ を $L_2$ の文の集合とし、どちらもモデルをもつとする。$T_1\cap T_2$ に属する $L_0$ の文の集合 $T_0$ が完全(どの $L_0$ の文 $\sigma$ についても $T_0\models\sigma$ か $T_0\models\lnot\sigma$)ならば、$T_1\cup T_2$ はモデルをもつ。

もたないとすると、コンパクト性定理(一階論理) により、$T_1$ の有限個の文の連言 $\varphi$ と $T_2$ の有限個の文の連言 $\psi'$ で $\varphi\models\lnot\psi'$ となるものがある(空の連言は $\forall x\,(x=x)$ とする)。thm-craig-main の補間式 $\theta$ をとると、$\varphi\models\theta$、$\theta\models\lnot\psi'$ である。$T_0\models\theta$ なら $T_2\models\theta$ なので $T_2\models\lnot\psi'$ となるが、$T_2\models\psi'$ なので $T_2$ はモデルをもたず矛盾する。$T_0\models\lnot\theta$ なら $T_1\models\lnot\theta$ だが $T_1\models\varphi\models\theta$ なので、$T_1$ がモデルをもたず矛盾する。$\square$

これは Gal15 Theorem 6.7.1(p. 288)と同じ主張である。
次に、定義による拡大 の記事の定義「陰の定義」を使う。言語 $L$ に新しい $n$ 項関係記号 $R$ を足した言語の文の集合 $U$ について、$U$ の 2 つのモデルが同じ台集合をもち $L$ の記号の解釈が一致すれば $R$ の解釈も一致するとき、$R$ は $U$ で $L$ から陰に定義されるという。

Beth の定義可能性定理

$R$ が $U$ で $L$ から陰に定義されるならば、$L$ の論理式 $\delta(x_1,\dots,x_n)$ で $U\models\forall\bar x\,(R(\bar x)\leftrightarrow\delta(\bar x))$ となるもの(明示的な定義)がある。

$R$ の写しとして新しい関係記号 $R'$ を用意し、$U$ の文の $R$ を $R'$ に置き換えたものの全体を $U'$ とする。新しい定数記号 $c_1,\dots,c_n$ をとる。
段 1. $U\cup U'\models R(\bar c)\to R'(\bar c)$ である。実際、$U\cup U'$ のモデル $\mathcal K$ から、$R$ を $R^{\mathcal K}$ と解釈した構造と、$R$ を $R'^{\mathcal K}$ と解釈した構造を作ると、どちらも $U$ のモデルで、台集合と $L$ の部分が同じなので、陰の定義により $R^{\mathcal K}=R'^{\mathcal K}$ となる。
段 2. コンパクト性定理(一階論理) の系「帰結の有限性」により、$U$ の有限個の文の連言 $\alpha(R)$ と、その写し $\alpha(R')$ で $\alpha(R)\land\alpha(R')\models R(\bar c)\to R'(\bar c)$ となるものがある($U$ と $U'$ から取り出した有限個の文を合わせ、両方の写しをとればよい)。これを
$$ \alpha(R)\land R(\bar c)\models\alpha(R')\to R'(\bar c) $$
と書き直す。左辺の記号は $L\cup\{R,\bar c\}$、右辺の記号は $L\cup\{R',\bar c\}$ の中にあるので、thm-craig-main により $L\cup\{\bar c\}$ の文 $\theta(\bar c)$ で $\alpha(R)\land R(\bar c)\models\theta(\bar c)$ かつ $\theta(\bar c)\models\alpha(R')\to R'(\bar c)$ となるものがある。後者の $R'$ を $R$ に書き戻すと $\theta(\bar c)\models\alpha(R)\to R(\bar c)$ である。
段 3. 2 つを合わせると $\alpha(R)\models R(\bar c)\leftrightarrow\theta(\bar c)$ であり、$\bar c$ は $\alpha$ に現れない新しい定数記号なので、$\theta(\bar c)$ の $c_i$ を $\alpha$ に現れない変数 $x_i$ に置き換えた $\delta(\bar x)$ について $U\models\forall\bar x\,(R(\bar x)\leftrightarrow\delta(\bar x))$ が成り立つ。$\square$

定義による拡大 の記事は有限個の文からなる $U$ についてこの定理を述べている。ここでは段 2 のコンパクト性により $U$ は無限でもよい。関数記号を陰に定義する場合も、その関数のグラフを表す関係記号に置き換えれば同じ議論が使える(Gal15 Theorem 6.6.2 の (b)、pp. 286–287)。

出典と証明の方法

一階の補間定理と Beth の定理は OLT26 Theorem 27.4(pp. 407–409)・Theorem 27.7(pp. 410–411)にある。同書は、可算な言語で「分離できない文の集合の組」を極大に広げ、定数記号の解釈からなるモデルを作って証明している。Gal15 §6.5(pp. 275–281)は、カットのない シークエント計算 の導出から補間式を組み立てる構文的な証明を与えている。等号のない言語では Theorem 6.5.1(p. 279)、等号がある言語では Theorem 6.5.2(p. 281)で、後者の主張は関係記号と定数記号についてのもので、関数記号も両方に現れるものに限れることは、関数記号を関係記号に置き換える別の方法によると注意されている(同 p. 281)。この記事の証明は、どの大きさの言語でもそのまま使える、初等鎖による意味論的な証明である。構文的な証明は補間式を導出から計算できる点に利点がある。

反例:条件を外すと成り立たない

外す条件反例成り立たなくなること
thm-craig-prop の「$\varphi\to\psi$ が恒真式」$\varphi:=p$、$\psi:=q$補間式があること
thm-craig-prop で、論理式に定数 $\top,\bot$ を許すこと$\varphi:=p\land\lnot p$、$\psi:=q$補間式があること
cor-craig-robinson の「$T_0$ が完全」$L_0=\{P\}$、$T_1=\{\forall x\,P(x)\}$、$T_2=\{\exists x\,\lnot P(x)\}$$T_1\cup T_2$ がモデルをもつこと
thm-craig-beth の「陰に定義される」$L$ を記号のない言語、$U$ を言語 $\{<\}$ の稠密な線形順序の理論、$R$ を $<$明示的な定義があること
反例の確かめ

1 行目:共通の変数がないので、補間式は $\top,\bot$ だけからなり、真理値は付値によらず一定である。それが $\mathrm{T}$ なら $\theta\to q$ は $q$ が偽の付値で偽、$\mathrm{F}$ なら $p\to\theta$ は $p$ が真の付値で偽になる。$p\to q$ はそもそも恒真式でない。
2 行目:$\varphi\to\psi$ は $\varphi$ が充足不能なので恒真式である。共通の変数はなく、$\top,\bot$ を使わなければ命題変数を 1 つも含まない論理式は作れないので、補間式はない。$\top,\bot$ を許せば $\theta:=\bot$ が補間式である。一階の場合に等号を論理記号として使ってよいのは、同じ役を $\forall x\,(x=x)$ にさせるためである。
3 行目:$T_1,T_2$ はそれぞれモデルをもち、$L_0$ の文で $T_1\cap T_2$ に属するものはない($T_1$ と $T_2$ は共通の文をもたない)ので $T_0=\emptyset$ で、$\forall x\,P(x)$ も否定も導かないから完全でない。$T_1\cup T_2$ は矛盾する。
4 行目:定義による拡大 の記事の例「Padoa の方法:順序は等号だけからは定義できない」による。$(\mathbb Q,<)$ と $(\mathbb Q,>)$ は台集合が同じ $U$ のモデルで $<$ の解釈が違うので、陰の定義の仮定が成り立たず、明示的な定義もない。

関連項目

参考文献

[2]
Jean H. Gallier, Logic for Computer Science: Foundations of Automatic Theorem Proving, Dover Publications, 2015, §6.5(Craig の補間定理)pp. 275–281:Theorem 6.5.1(等号なし)p. 279、Theorem 6.5.2(等号あり)と注意 p. 281、Theorem 6.6.2(Beth の定義可能性定理)pp. 286–287、Theorem 6.7.1(Robinson の結合無矛盾性定理)p. 288

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