Tate予想(Tate conjecture)とは、素体上有限生成な体 $k$ 上の滑らかな射影多様体 $X$ について、$\ell$ 進コホモロジー $H^{2i}(X_{\bar k},\mathbb{Q}_\ell(i))$ の類のうち Galois 群で固定されるものは、$k$ 上定義された余次元 $i$ の代数的サイクルの類の $\mathbb{Q}_\ell$ 線形結合に限るという予想である。有限体上では Frobenius の固有値やゼータ関数の極の位数と結びつき、曲面の因子の場合は Brauer 群の有限性と同値になる。Grothendieck は余次元フィルトレーションを使う一般化を述べた。2026年9月時点で一般には未解決である。
前提知識: ℓ進コホモロジー, Tate捻り, 代数的サイクル, サイクル類写像, Weil予想
Tate予想は、有限体や数体のような「算術的な」体の上の滑らかな射影多様体について、代数的サイクルのコホモロジー類を、Galois 群の作用だけで特徴づけようとする予想である。J. Tate が1963年の講演(Tat65)で定式化した。
複素多様体に対する Hodge予想 が「$(p,p)$ 型の有理類は代数的か」を問うのに対し、Tate予想は「Galois 群で(有限指数の部分群について)固定される $\ell$ 進類は代数的か」を問う。どちらも、幾何的に定義された部分空間(代数的サイクルの類の張る空間)が、コホモロジーの線形代数的な構造だけで決まるという主張である。
本記事では予想を予想として述べ、証明済みの結果には出典を示す。未解決の部分の状況は末尾の「現況」の節にまとめる。
以下、$k$ を体、$k^{\mathrm{sep}}$ をその分離閉包、$\bar k$ を代数閉包、$G_k=\operatorname{Gal}(k^{\mathrm{sep}}/k)$ とする。$\ell$ は $k$ の標数と異なる素数、$X$ は $k$ 上の滑らかな射影多様体、$d=\dim X$ とする。$X_{\bar k}=X\otimes_k\bar k$ と書く。
エタールコホモロジー $H^j(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(n))$ には、$X_{\bar k}$ への構造の輸送によって $G_k$ が連続に作用する。ここで $\mathbb Q_\ell(n)$ は Tate捻り である。
$k=\mathbb F_q$ のとき、$G_k$ は $x\mapsto x^q$ で与えられる算術的 Frobenius $\varphi$ を位相的生成元とする。本記事では、その逆元 $F:=\varphi^{-1}$(幾何的 Frobenius)がコホモロジーに及ぼす作用を単に Frobenius と呼ぶ。
この規約では、$F$ は $\mathbb Q_\ell(1)$ に $q^{-1}$ 倍で作用し、したがって
$$
H^j(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(n))\cong H^j(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell)\otimes_{\mathbb Q_\ell}\mathbb Q_\ell(n)
$$
の上の $F$ の固有値は、$H^j(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell)$ 上の固有値の $q^{-n}$ 倍になる。算術的 Frobenius を使う流儀では捻りによる倍率が逆数になるので、文献を読むときは向きを確かめる必要がある。また、Galois 群の元 $F$ の作用が $X$ の Frobenius 自己準同型の誘導する作用と一致することはよく知られた事実であり(Mil80 を参照)、本記事ではこれを前提として使う。
$X$ 上の余次元 $i$ の代数的サイクル($k$ 上定義された余次元 $i$ の既約閉部分多様体の $\mathbb Z$ 係数の形式和)の群を $\mathcal Z^i(X)$ と書く。サイクル類写像
$$
\mathrm{cl}:\mathcal Z^i(X)\longrightarrow H^{2i}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(i))
$$
の像が $\mathbb Q_\ell$ 上張る部分空間を $A^i_\ell(X)$ と書き、その元を代数的類と呼ぶ。
$k$ を素体上有限生成な体、$X$ を $k$ 上の滑らかな射影多様体、$0\le i\le d$ とする。このとき
$$
A^i_\ell(X)=H^{2i}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(i))^{G_k}
$$
が成り立つ。すなわち、$G_k$ で固定される $\ell$ 進類は、$k$ 上定義された余次元 $i$ のサイクルの類の $\mathbb Q_\ell$ 線形結合である。
この言明を $T^i(X)$ と書く($\ell$ を明示するときは $T^i_\ell(X)$)。左辺が右辺に含まれることは予想ではなく、次の節で述べる事実である。予想の中身は逆の包含にある。
「有限生成」という仮定は本質的である。$k$ が代数閉体なら $G_k$ は自明で、右辺は $H^{2i}$ 全体になるが、たとえば複素数体上の曲面では $H^2$ の次元は一般に代数的類の空間の次元より大きい。有限生成体では Galois 群の作用が十分に大きく、固定部分が小さく切り出されることが期待される。
$k=\mathbb F_q$ のとき、$G_k$ の開部分群は $F^r$ の生成する閉部分群($r\ge1$)である。$X_{\mathbb F_{q^r}}$ に $T^i$ を適用した主張をすべての $r$ について集めると、次の形になる。
$$
\sum_{r\ge1}A^i_\ell(X_{\mathbb F_{q^r}})=\bigcup_{r\ge1}H^{2i}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(i))^{F^r=1}.
$$
左辺は $X_{\bar k}$ 上のサイクル(どれも有限次拡大の上で定義される)の類が張る空間である。右辺の合併は、$r\mid r'$ なら $F^r$ の固定部分が $F^{r'}$ の固定部分に含まれるので有向であり、有限次元空間の中で一つの $r$ で達成される。
$k$ 上定義されたサイクル $z\in\mathcal Z^i(X)$ の類 $\mathrm{cl}(z)$ は $G_k$ で固定される。したがって $A^i_\ell(X)\subset H^{2i}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(i))^{G_k}$ である。
$\sigma\in G_k$ は $X_{\bar k}$ に $X$ 上の自己同型 $\sigma_X$ を定め、$z$ を $X_{\bar k}$ へ引き戻したサイクル $z_{\bar k}$ は $X$ 上で定義されているので $\sigma_X$ で保たれる。サイクル類写像は構造の輸送と両立する(サイクル類は台つきコホモロジーの中のコホモロジー的純性の同型で定まる標準的な類であり、自己同型はこの構成全体を写す)ので、$\sigma(\mathrm{cl}(z_{\bar k}))=\mathrm{cl}(\sigma_X(z_{\bar k}))=\mathrm{cl}(z_{\bar k})$ となる。サイクル類写像の構成とこの両立性は Mil80 を参照。
有限体上では、Galois 不変部分の代わりに Frobenius の固有値で部分空間を切り出す言い方もよく使われる。二つの言い方は一般には一致せず、その差は Frobenius の半単純性に帰着する。
$V$ を $\mathbb Q_\ell$ 上の有限次元ベクトル空間、$F$ をその自己同型とする。$V$ を $\bar{\mathbb Q}_\ell$ へ係数拡大し、固有値が 1 の冪根であるような一般固有空間の和を $W_{\bar{\mathbb Q}_\ell}$ とする。これは $\mathbb Q_\ell$ 上定義された $F$ 安定部分空間 $W$ から来る。このとき次が成り立つ。
$W$ に現れる 1 の冪根の固有値は有限個なので、それらの位数の最小公倍数を $M$ とする。$W$ は $\operatorname{Ker}\big((F^M-1)^{n}\big)$($n=\dim V$)に等しい。実際、$F^M-1$ は固有値 $\zeta$ の一般固有空間の上で、$\zeta^M=1$ なら冪零に、そうでなければ可逆に作用する($F$ の固有値 $\lambda$ に対し $F^M-1$ の固有値は $\lambda^M-1$ で、これが 0 になるのは $\lambda$ が位数が $M$ を割る 1 の冪根のときに限る)。右辺は $\mathbb Q_\ell$ 上定義されている。
$V=\mathbb Q_\ell^2$、$F=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}$ とする。固有値は 1 だけなので $W=V$ だが、$F^r=\begin{pmatrix}1&r\\0&1\end{pmatrix}$ の固定部分は第1座標軸だけであり、$U$ は1次元である。$F$ は半単純でない。
実際の滑らかな射影多様体のコホモロジーで Frobenius がこのように振る舞う例は知られておらず、Frobenius は常に半単純に作用すると予想されている(半単純性予想)。アーベル多様体については、Frobenius 自己準同型が自己準同型環 $\operatorname{End}(A)\otimes\mathbb Q$(半単純代数)の中心に属することから、$H^1$、したがって $H^j=\bigwedge^jH^1$ の上で半単純であることが Weil により知られている(Tat66 を参照)。
したがって、「代数的類の張る空間は、Frobenius の固有値が 1 の冪根である一般固有空間に等しい」という言い方は、Tate予想($F^r$ の固定部分の形)と、その部分での半単純性を合わせた、より強い主張である。
Grothendieck による一般化(後述)では、「固有値 $\alpha$ について $\alpha/q^i$ が代数的整数である」という条件が使われる。$H^{2i}$ の上では、これは次の意味で「1 の冪根」の条件と同じになる。
$X$ を $\mathbb F_q$ 上の滑らかな射影多様体とし、$\alpha$ を $F$ の $H^{2i}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell)$ 上の固有値とする。このとき、$\alpha/q^i$ が代数的整数であることと、$\alpha/q^i$ が 1 の冪根であることは同値である。$\alpha/q^i$ は、$F$ の $H^{2i}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(i))$ 上の対応する固有値である。
Deligne の定理(Weil予想 の Riemann 予想の部分。Del74)により、$\alpha$ は代数的整数で、どの複素埋め込み $\iota$ についても $|\iota(\alpha)|=q^{i}$ である。したがって $\beta:=\alpha/q^i$ は代数的数で、そのすべての共役の絶対値は 1 である。
1 の冪根は代数的整数なので、一方の向きは明らかである。逆に $\beta$ が代数的整数なら、次の Kronecker の定理 により 1 の冪根である:すべての共役の絶対値が 1 である代数的整数は 1 の冪根である。
Kronecker の定理の証明:$\beta$ の次数を $m$ とする。各 $n\ge1$ について $\beta^n$ も、すべての共役の絶対値が 1 の代数的整数であり、その最小多項式の次数は $m$ 以下で、係数は共役の基本対称式なので絶対値が $\binom{m}{j}$ 以下の整数である。そのような多項式は有限個しかないので、$\{\beta^n\}_{n\ge1}$ は有限集合であり、$\beta^a=\beta^b$($a< b$)となる。$\beta\ne0$ なので $\beta^{b-a}=1$ である。
最後の主張は、Tate捻り $(i)$ によって固有値が $q^{-i}$ 倍になることによる。
Tate は同じ講演で、有限体上ではサイクルの個数をゼータ関数の極の位数で数えられるという予想も述べた。$X$ を $\mathbb F_q$ 上の滑らかな射影多様体とし、$\zeta(X,s)=Z(X,q^{-s})$ を合同ゼータ関数とする。$N^i(X)$ を、$\mathbb F_q$ 上定義された余次元 $i$ のサイクルを数値的同値で割った群とする。
$A=A^i_\ell(X)$、$V=H^{2i}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(i))$ とおく。このとき
$$
\operatorname{rank}N^i(X)\ \le\ \dim A\ \le\ \dim V^{F=1}\ \le\ -\operatorname{ord}_{s=i}\zeta(X,s)
$$
が成り立つ。とくに $N^i(X)$ は有限階数である。さらに、両端が等しいことは、次の三つが同時に成り立つことと同値である。
次の事実を前提として使う:(a) Grothendieck の Lefschetz跡公式 による表示 $Z(X,t)=\prod_{j=0}^{2d}\det\big(1-Ft\mid H^j(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell)\big)^{(-1)^{j+1}}$(Mil80、FK88)、(b) Deligne の定理:$H^j$ 上の $F$ の固有値はすべての複素埋め込みで絶対値 $q^{j/2}$(Del74)、(c) 余次元 $i$ と $d-i$ のサイクル $z,w$ について、$\mathrm{cl}(z)\cup\mathrm{cl}(w)$ の跡写像による値が交点数 $\deg(z\cdot w)$ に等しいこと(Mil80)。
第1の不等式と全射。$\mathcal Z^i(X)\otimes\mathbb Q_\ell\to A$ の核に入る元は、(c) によりすべての $w$ との交点数が 0 なので、$\mathcal Z^i(X)\otimes\mathbb Q_\ell\to N^i(X)\otimes\mathbb Q_\ell$ の核に入る。よって後者は $A$ を経由し、全射 $A\to N^i(X)\otimes\mathbb Q_\ell$ を得る。ここで有限階数であることを確かめる:$z_1,\dots,z_r$ の数値的同値類が $\mathbb Q$ 上一次独立なら、交点ペアリングの非退化性(数値的同値の定義)により、$\det\big(\deg(z_j\cdot w_m)\big)_{j,m}\ne0$ となる $w_1,\dots,w_r$ が選べる。$\sum_jc_j\,\mathrm{cl}(z_j)=0$($c_j\in\mathbb Q_\ell$)なら、$\mathrm{cl}(w_m)$ との杯積の跡をとって $\sum_jc_j\deg(z_j\cdot w_m)=0$ がすべての $m$ で成り立ち、$c=0$ となる。よって $r\le\dim A\le\dim V$ であり、$\operatorname{rank}N^i(X)\le\dim A$ を得る。等号は全射 $A\to N^i(X)\otimes\mathbb Q_\ell$ が同型であることと同値である。
第2の不等式。prop-tate-conjecture-easy-inclusion による。等号は $T^i(X)$ と同値である。
第3の不等式。(a) で $t=q^{-i}$ が $\det(1-Ft\mid H^j)$ の零点になるのは $q^i$ が $H^j$ 上の固有値のときであり、(b) によりそれは $j=2i$ に限る。指数は $(-1)^{2i+1}=-1$ なので、$Z(X,t)$ は $t=q^{-i}$ で、$q^i$ の $H^{2i}(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell)$ 上の重複度(代数的重複度)に等しい位数の極をもつ。捻り $(i)$ で固有値は $q^{-i}$ 倍になるので、この位数は $V$ 上の固有値 1 の代数的重複度に等しい。固定部分の次元は幾何的重複度なので代数的重複度以下であり、等号は固有値 1 の一般固有空間の上で $F$ が半単純であることと同値である。$s\mapsto q^{-s}$ は $s=i$ の近くで局所的な双正則写像なので、$\zeta(X,s)$ の $s=i$ での極の位数も同じである。
この命題により、「$\zeta(X,s)$ の $s=i$ での極の位数が $\operatorname{rank}N^i(X)$ に等しい」という主張(Tate の第2の予想と呼ばれることがある)は、Tate予想そのものより強く、半単純性と、$\ell$ 進コホモロジーによる同値と数値的同値の($\mathbb Q_\ell$ 係数での)一致を含む。これらの関係は Tate 自身による解説 Tat94 でも論じられている。
$i=1$ の場合、すなわち因子についての $T^1(X)$ は、Tate予想のなかで最もよく調べられている場合である。$\mathcal Z^1(X)$ の類は Picard 群を経由し、$T^1(X)$ は
$$
\operatorname{Pic}(X)\otimes\mathbb Q_\ell\longrightarrow H^2(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(1))^{G_k}
$$
の像が右辺全体であることと言い換えられる。サイクル類写像は Kummer完全列 $0\to\mu_{\ell^n}\to\mathbb G_m\xrightarrow{\ell^n}\mathbb G_m\to0$ の連結準同型から得られる。
複素射影多様体では、$(1,1)$ 型の整数類はすべて因子の類である(Lefschetz の $(1,1)$ 定理)。Hodge予想 は $i=1$ では定理であるのに対し、Tate予想は $i=1$ でも一般には未解決である。この違いは、複素数体上では指数完全列と Hodge 理論が使えるのに対し、有限体上ではそれに当たる道具が無いことによる。
$X$ を有限体 $\mathbb F_q$ 上の滑らかな射影曲面で幾何的に連結なものとし、$\ell$ を $q$ と素な素数とする。このとき $T^1_\ell(X)$ は、コホモロジー的Brauer群 $\operatorname{Br}(X)=H^2(X_{\mathrm{et}},\mathbb G_m)$ の $\ell$ 準素部分が有限であることと同値である。
この同値は Artin と Tate によるもので、Tate の Bourbaki 講演 Tat66b に述べられ、Grothendieck も「Le groupe de Brauer III」Gro68 の中で引いている。証明は Kummer 完全列から得られる $\operatorname{Pic}$、$H^2$、$\operatorname{Br}$ の $\ell$ 進の完全列と、Hochschild–Serre スペクトル系列による $X$ と $X_{\bar k}$ の比較による(本記事では証明しない)。標数の素数についての部分を含む Brauer 群全体の有限性と $T^1$ の関係は Milne Mil75 が扱った。Brauer 群の位数を含む精密な公式は Artin–Tate予想 と呼ばれる。
$A,B$ を有限体 $k$ 上のアーベル多様体とすると、自然な写像
$$
\operatorname{Hom}_k(A,B)\otimes\mathbb Z_\ell\longrightarrow\operatorname{Hom}_{G_k}(T_\ell A,T_\ell B)
$$
は同型である。ここで $T_\ell$ は Tate加群 である。この結果から、有限体上のアーベル多様体について $T^1$ が従う。
これは Tate Tat66 による。数体上のアーベル多様体についての同じ形の主張は Faltings Fal83 が証明し、そこからやはり数体上のアーベル多様体の $T^1$ が従う。
$E_1,E_2$ を有限体 $k$ 上の楕円曲線、$X=E_1\times E_2$ とする。Künneth 公式により
$$
H^2(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell(1))=H^2(E_{1,\bar k},\mathbb Q_\ell(1))\oplus H^2(E_{2,\bar k},\mathbb Q_\ell(1))\oplus\big(H^1(E_{1,\bar k},\mathbb Q_\ell)\otimes H^1(E_{2,\bar k},\mathbb Q_\ell)\big)(1)
$$
であり、最初の二つの成分(各1次元で $G_k$ が自明に作用する)は $E_1\times\{0\}$ と $\{0\}\times E_2$ の類で張られる。第3成分は Weil ペアリングを通じて $\operatorname{Hom}(V_\ell E_1,V_\ell E_2)$($V_\ell=T_\ell\otimes\mathbb Q_\ell$)と $G_k$ 同変に同一視され、準同型 $E_1\to E_2$ のグラフの類から前二者の成分を引いたものがこの同一視で準同型そのものに対応する。したがって Tate の定理により、第3成分の $G_k$ 不変部分は $\operatorname{Hom}_k(E_1,E_2)\otimes\mathbb Q_\ell$ に等しく、グラフの類で張られる。これで $T^1(X)$ が成り立つ。とくに $E_1$ と $E_2$ が $k$ 上同種でなければ、$X$ の Galois 不変な $H^2$ の類は2次元である。
上の例の同一視の細部(符号や捻りの取り方)は Tat66 と Mil80 を参照。
Grothendieck は「Le groupe de Brauer III」Gro68 の §10 で、Tate の予想に触発され、次数 $2i$ に限らない一般化を述べた。1966年頃の原稿であり、そこでは Weil の予想(固有値の絶対値と整数性)はまだ仮定として扱われている。
$X$ を代数閉体上の滑らかな射影多様体とする。$H^j(X,\mathbb Q_\ell)$ の類で、余次元 $\ge p$ のある閉集合の外で 0 に制限されるもの全体を $N^pH^j(X,\mathbb Q_\ell)$ と書く(余次元フィルトレーション。$\mathrm{Filt}^p$ とも書く)。正確には、$U$ を $X-U$ の余次元が $p$ 以上の開集合全体に動かして
$$
N^pH^j=\bigcup_U\operatorname{Ker}\big(H^j(X)\to H^j(U)\big)
$$
とおく(整数係数では各段 $\mathbb Z/\ell^\nu$ の射影極限をとる)。
$X$ を代数閉体 $\bar k$(標数 $\ne\ell$)上の滑らかな固有多様体とする。このとき $N^pH^{2p}(X,\mathbb Z_\ell(p))$ は、余次元 $p$ の既約閉集合のサイクル類が張る $\mathbb Z_\ell$ 部分加群に等しい。
コホモロジー的純性(滑らかな組に対するコホモロジー的純性)を前提とする。
$X$ を $\mathbb F_q$ 上の滑らかな射影多様体とする。$H^j(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell)$ 上の $F$ の固有値 $\alpha$ のうち、$\alpha/q^p$ が代数的整数であるものに対応する一般固有空間の和を $V_p^j$ と書く($F$ の $H^j$ 上の特性多項式は有理数係数であり(Del74)、条件は $\operatorname{Gal}(\bar{\mathbb Q}/\mathbb Q)$ の作用で保たれるので、$V_p^j$ は $\mathbb Q_\ell$ 上定義される)。
$\mathbb F_q$ 上の滑らかな射影多様体 $X$ とすべての $j,p$ について
$$
N^pH^j(X_{\bar k},\mathbb Q_\ell)=V_p^j
$$
が成り立つ。
Grothendieck はまず包含 $N^pH^j\subset V_p^j$ を予想として述べ、次にそれが等号であると予想した。$j=2p$ の場合を見ると次のようになる。
$j$ 次の類を余次元 $c$ の部分多様体から Gysin 写像で押し出すと、捻り $(-c)$ が付くので、def-tate-conjecture-geometric-frobenius の規約で固有値は $q^{c}$ 倍になる。Grothendieck の一般化が「$\alpha/q^p$ が代数的整数」という条件を使うのは、余次元 $p$ 以上の部分多様体から来る類の固有値が、この形の因子 $q^p$ をもつことが期待されるからである。この点は Weil予想 の記事でも扱う。
この節は2026年9月時点の状況であり、今後の研究で更新されうる。
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