順位相関係数(rank correlation coefficient)とは、$n\ge2$ 組のデータで、2 つの変量の値がそれぞれすべて異なるとき、各変量を小さい順の順位 $r_i,\ s_i$(どちらも $1,\dots,n$ の並べ替え)に直して計算した相関係数 $\rho$ である。順位の平均 $\frac{n+1}2$ と分散 $\frac{n^2-1}{12}$ が $n$ だけで決まることから、$d_i=r_i-s_i$ とおくと $\rho=1-\frac{6\sum d_i^2}{n(n^2-1)}$ が成り立つ。$-1\le\rho\le1$ で、$\rho=1$ は順位が完全に一致するとき、$\rho=-1$ は完全に逆のときに限る。単調な関係は $\rho=\pm1$ になり、外れ値の影響を受けにくいが、同じ値があると上の式は使えない。
前提知識: 相関係数(高校数学), 数列の和と差分
5 人の演技を 2 人の審査員が見て、それぞれ 1 位から 5 位まで順位をつけた。点数ではなく順位しかないとき、2 人の評価がどのくらい似ているかを、1 つの数で表したい。
高校では、2 つの変量 $x,y$ の関係の強さを 相関係数 で表すことを学ぶ。$n$ 組のデータ $(x_1,y_1),\dots,(x_n,y_n)$ の平均を $\bar x,\bar y$、標準偏差を $s_x,s_y$ とし、共分散を $s_{xy}=\dfrac1n\sum_{i=1}^n(x_i-\bar x)(y_i-\bar y)$ とすると、相関係数は $r=\dfrac{s_{xy}}{s_xs_y}$ である($s_x>0$、$s_y>0$ のとき。相関係数(高校数学))。分散と標準偏差は、偏差の 2 乗の平均(個数 $n$ で割る)で定める。
順位も数なので、順位をそのまま変量とみて相関係数を計算できる。
演技 1〜5 に、審査員 1 は順位 $r=(1,2,3,4,5)$、審査員 2 は順位 $s=(2,1,4,3,5)$ をつけた。
(1) 平均はどちらも $\dfrac{1+2+3+4+5}5=3$ である。偏差は、審査員 1 が $-2,-1,0,1,2$、審査員 2 が $-1,-2,1,0,2$ である。
(2) 分散はどちらも $\dfrac{4+1+0+1+4}5=2$ である(審査員 2 の偏差の 2 乗も $1,4,1,0,4$ で、和は $10$)。
(3) 偏差の積は $2,2,0,0,4$ で、共分散は $\dfrac{2+2+0+0+4}5=\dfrac85$ である。
(4) 相関係数は $\dfrac{8/5}{\sqrt2\cdot\sqrt2}=\dfrac{8/5}2=\dfrac45=0.8$ である。
同じ値を、もっと簡単に求める方法がある。各演技の順位の差 $d=r-s$ は $-1,1,-1,1,0$ で、その 2 乗の和は $\sum d^2=4$ である。これを
$$
1-\frac{6\sum d^2}{n(n^2-1)}=1-\frac{6\cdot4}{5\cdot24}=1-\frac{24}{120}=0.8
$$
に入れると、同じ $0.8$ が出る。
順位の差の 2 乗の和だけで相関係数が求まるのは偶然ではない。順位はどれも $1,2,\dots,n$ の並べ替えなので、平均と分散が $n$ だけで決まるからである。もう 1 つ、もとの値で計算した相関係数と、順位に直して計算した相関係数が大きく違う例を見ておく。
$x=1,2,3,4,5$ と $y=e^x$ の 5 組を考える。$y$ の値は $2.72,\ 7.39,\ 20.09,\ 54.60,\ 148.41$(小数第 3 位を四捨五入)である。
(1) もとの値の相関係数を計算すると $r=0.886\ldots$ である(計算機で計算した)。$y$ は $x$ が増えると必ず増えるのに、$r$ は $1$ にならない。相関係数は直線的な関係の強さを測るので、曲がった関係では $1$ より小さくなる。
(2) 順位に直すと、$x$ の順位も $y$ の順位も $1,2,3,4,5$ で、完全に一致する。順位の相関係数は、ex-rnk-judges と同じ計算で $\sum d^2=0$ から $1-0=1$ である。
この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 相関係数 $r=\frac{s_{xy}}{s_xs_y}$ | 順位に直して計算した相関係数 $\rho$ | Spearman の順位相関係数 |
| $\sum k=\frac{n(n+1)}2$、$\sum k^2=\frac{n(n+1)(2n+1)}6$ | 順位の平均 $\frac{n+1}2$、分散 $\frac{n^2-1}{12}$ | 並べ替えの不変量 |
| 増加関数で値を変換する | 順位は変わらない | 単調変換で不変な統計量 |
| 外れ値に引っぱられる平均 | 外れ値の影響が小さい | 頑健な指標 |
$n$ 個の値 $x_1,\dots,x_n$ がすべて異なるとする。小さい順に並べたとき $x_i$ が $k$ 番目にくるならば、$x_i$ の 順位 を $k$ と定める。このとき $x_1,\dots,x_n$ の順位は、$1,2,\dots,n$ を 1 回ずつ並べ替えたものになる。
値がすべて異なるという仮定は、順位がちょうど $1,\dots,n$ の並べ替えになるために置いている。同じ値があるときの扱いは、例と反例の節で述べる(ex-rnk-cx-ties)。審査員の順位のように「大きい方(よい方)から 1 位」と数える場合もある。2 つの変量で数える向きをそろえれば、以下の結果は変わらない(rem-rnk-direction)。
$n\ge2$ とし、$n$ 組のデータ $(x_1,y_1),\dots,(x_n,y_n)$ で、$x_1,\dots,x_n$ がすべて異なり、$y_1,\dots,y_n$ もすべて異なるとする。$x_i$ の順位を $r_i$、$y_i$ の順位を $s_i$ とする。$n$ 組の順位 $(r_1,s_1),\dots,(r_n,s_n)$ の相関係数を、データの 順位相関係数 といい、$\rho$ で表す。
$\rho$ はギリシャ文字のロー($r$ にあたる文字)である。$n\ge2$ なら順位は少なくとも 2 種類の値をとるので、順位の標準偏差は正で、相関係数が定義できる。
5 人の数学と英語の得点が次のとおりだった。
| 生徒 | A | B | C | D | E |
|---|---|---|---|---|---|
| 数学 $x$ | $72$ | $58$ | $90$ | $65$ | $81$ |
| 英語 $y$ | $68$ | $70$ | $95$ | $60$ | $77$ |
| 数学の順位 $r$ | $3$ | $1$ | $5$ | $2$ | $4$ |
| 英語の順位 $s$ | $2$ | $3$ | $5$ | $1$ | $4$ |
| $d=r-s$ | $1$ | $-2$ | $0$ | $1$ | $0$ |
数学の得点を小さい順に並べると $58,65,72,81,90$ なので、B が 1、D が 2、A が 3、E が 4、C が 5 である。英語も同じように順位をつけた。$\sum d^2=1+4+0+1+0=6$ である。次の節の thm-rnk-formula を使うと $\rho=1-\dfrac{6\cdot6}{5\cdot24}=1-\dfrac{36}{120}=0.7$ になる。もとの得点の相関係数は $r=0.834\ldots$ である(計算機で計算した)。
順位相関係数の式を導く鍵は、順位の平均と分散が $n$ だけで決まることである。そのために、高校の数学 B で学ぶ和の公式を使う。
$$
\sum_{k=1}^nk=\frac{n(n+1)}2,\qquad\sum_{k=1}^nk^2=\frac{n(n+1)(2n+1)}6
$$
2 つ目の公式の導き方は次のとおりである。
恒等式 $(k+1)^3-k^3=3k^2+3k+1$ を $k=1,\dots,n$ について足す。左辺は隣どうしが打ち消し合って $(n+1)^3-1$ になる。右辺は $3\sum k^2+3\cdot\dfrac{n(n+1)}2+n$ である。よって $3\sum k^2=(n+1)^3-1-\dfrac{3n(n+1)}2-n=\dfrac{(n+1)\bigl(2(n+1)^2-3n-2\bigr)}{2}=\dfrac{(n+1)(2n^2+n)}{2}$ で、$\sum k^2=\dfrac{n(n+1)(2n+1)}6$ である。
$r_1,\dots,r_n$ が $1,2,\dots,n$ の並べ替えならば、その平均は $\dfrac{n+1}2$、分散は $\dfrac{n^2-1}{12}$ である。
段 1(並べ替えても和は変わらない)。$r_1,\dots,r_n$ は $1,\dots,n$ を 1 回ずつ並べたものなので、$\sum_ir_i=\sum_{k=1}^nk$、$\sum_ir_i^2=\sum_{k=1}^nk^2$ である。
段 2(平均)。平均は $\dfrac1n\cdot\dfrac{n(n+1)}2=\dfrac{n+1}2$ である。
段 3(分散)。分散の公式「2 乗の平均 − 平均の 2 乗」(平均値と二乗誤差 の系「分散の公式」)を使う。2 乗の平均は $\dfrac1n\cdot\dfrac{n(n+1)(2n+1)}6=\dfrac{(n+1)(2n+1)}6$ なので、分散は
$$
\frac{(n+1)(2n+1)}6-\frac{(n+1)^2}4=\frac{(n+1)\bigl(2(2n+1)-3(n+1)\bigr)}{12}=\frac{(n+1)(n-1)}{12}=\frac{n^2-1}{12}
$$
である。$\square$
def-rnk-rho の記号で、$d_i=r_i-s_i$ とおくと
$$
\rho=1-\frac{6\sum_{i=1}^nd_i^2}{n(n^2-1)}
$$
が成り立つ。
方針:相関係数 $\rho=\dfrac{s_{rs}}{s_rs_s}$ の分母は lem-rnk-mean-var で $n$ だけの式になる。分子の共分散 $s_{rs}$ を、$\sum d_i^2$ を展開した式から求める。
段 1(分母)。$r_1,\dots,r_n$ も $s_1,\dots,s_n$ も $1,\dots,n$ の並べ替えなので、lem-rnk-mean-var より平均はどちらも $m=\dfrac{n+1}2$、分散はどちらも $v=\dfrac{n^2-1}{12}$ である。$n\ge2$ なので $v>0$ で、$s_rs_s=\sqrt v\cdot\sqrt v=v$ である。
段 2(共分散を積の和で書く)。偏差の積を展開すると $(r_i-m)(s_i-m)=r_is_i-m(r_i+s_i)+m^2$ である。$i$ について足して $n$ で割ると、$\sum r_i=\sum s_i=nm$ なので
$$
s_{rs}=\frac1n\sum_{i=1}^nr_is_i-m\cdot\frac{nm+nm}{n}+m^2=\frac1n\sum_{i=1}^nr_is_i-m^2
$$
である。
段 3(積の和を $\sum d_i^2$ で書く)。$d_i^2=(r_i-s_i)^2=r_i^2+s_i^2-2r_is_i$ を $i$ について足す。$\sum r_i^2=\sum s_i^2=\sum_{k=1}^nk^2$(段 1 と同じく並べ替えだから)なので
$$
\sum_{i=1}^nd_i^2=2\sum_{k=1}^nk^2-2\sum_{i=1}^nr_is_i,\qquad\text{すなわち}\qquad\sum_{i=1}^nr_is_i=\sum_{k=1}^nk^2-\frac12\sum_{i=1}^nd_i^2
$$
である。
段 4(共分散を求める)。段 3 を段 2 に代入すると
$$
s_{rs}=\Bigl(\frac1n\sum_{k=1}^nk^2-m^2\Bigr)-\frac1{2n}\sum_{i=1}^nd_i^2
$$
である。かっこの中は「順位の 2 乗の平均 − 順位の平均の 2 乗」で、分散の公式によりこれは順位の分散 $v$ に等しい。よって $s_{rs}=v-\dfrac1{2n}\sum d_i^2$ である。
段 5(まとめる)。段 1 と段 4 から
$$
\rho=\frac{s_{rs}}{v}=1-\frac{\sum d_i^2}{2nv}=1-\frac{\sum d_i^2}{2n\cdot\frac{n^2-1}{12}}=1-\frac{6\sum d_i^2}{n(n^2-1)}
$$
である。$\square$
証明で大事だったのは、順位がどちらも $1,\dots,n$ の並べ替えなので、2 つの変量の平均・分散・2 乗の和がすべて等しいことである。もとの値の相関係数には、このような簡単な式はない。
審査員 1 の順位を横軸、審査員 2 の順位を縦軸にとった 5 個の点。破線は 2 人の順位が一致する直線で、赤い線分の長さが順位の差の大きさ。差の 2 乗の和は 4
図 1 は ex-rnk-judges の順位の散布図である。点が破線($s=r$)に近いほど $\sum d^2$ は小さく、$\rho$ は $1$ に近い。
2 つの変量の両方で、大きい方から 1 位と数えると、順位は $r_i$、$s_i$ の代わりに $n+1-r_i$、$n+1-s_i$ になる。差は $(n+1-r_i)-(n+1-s_i)=-(r_i-s_i)=-d_i$ で、2 乗すると $d_i^2$ のままなので、thm-rnk-formula より $\rho$ は変わらない。一方の変量だけで数える向きを変えると、$\rho$ の符号が変わる(lem-rnk-reverse)。
def-rnk-rho の記号で、$s_i'=n+1-s_i$ とおく。順位 $(r_i,s_i')$ の相関係数は $-\rho$ である。
$s_1',\dots,s_n'$ も $1,\dots,n$ の並べ替えなので、平均は $m=\dfrac{n+1}2$、分散は $v$ で、$s_i$ と同じである。偏差は $s_i'-m=(n+1-s_i)-\dfrac{n+1}2=\dfrac{n+1}2-s_i=-(s_i-m)$ なので、偏差の積 $(r_i-m)(s_i'-m)$ は $(r_i-m)(s_i-m)$ の $-1$ 倍になる。共分散は $-1$ 倍、標準偏差は変わらないので、相関係数は $-\rho$ である。$\square$
def-rnk-rho の記号で、$-1\le\rho\le1$ である。さらに
(R1) $\rho=1$ となるのは、すべての $i$ で $r_i=s_i$(順位が完全に一致する)ときに限る。
(R2) $\rho=-1$ となるのは、すべての $i$ で $s_i=n+1-r_i$(順位が完全に逆になる)ときに限る。
方針:上からの評価と $\rho=1$ の条件は thm-rnk-formula から直接分かる。下からの評価と $\rho=-1$ の条件は、lem-rnk-reverse で一方の順位を逆にして、上からの評価に帰着させる。
段 1($\rho\le1$ と条件 (i))。thm-rnk-formula で $\sum d_i^2\ge0$、$n(n^2-1)>0$ なので $\rho\le1$ である。$\rho=1$ は $\sum d_i^2=0$ と同じで、$0$ 以上の数の和が $0$ になるのは各 $d_i$ が $0$ のとき、つまりすべての $i$ で $r_i=s_i$ のときに限る。
段 2($\rho\ge-1$)。$s_i'=n+1-s_i$ とおく。順位 $(r_i,s_i')$ の相関係数を $\rho'$ とすると、lem-rnk-reverse より $\rho'=-\rho$ である。$(r_i,s_i')$ も 2 つの並べ替えの組なので、段 1 を当てはめて $\rho'\le1$、すなわち $\rho\ge-1$ である。
段 3(条件 (ii))。$\rho=-1$ は $\rho'=1$ と同じで、段 1 より、これはすべての $i$ で $r_i=s_i'=n+1-s_i$ となること、すなわち $s_i=n+1-r_i$ となることと同じである。$\square$
$-1\le\rho\le1$ は、$\rho$ が順位の相関係数であることから、相関係数(高校数学) の系「相関係数の範囲」からも分かる。ここでは順位に特有の thm-rnk-formula を使って、Cauchy–Schwarz の不等式を使わずに示した。系「相関係数の範囲」の「1 次式の関係」の条件は、順位どうしでは「完全に一致」か「完全に逆」に当たる。
$0\le\sum_{i=1}^nd_i^2\le\dfrac{n(n^2-1)}3$ である。最小値 $0$ は順位が完全に一致するとき、最大値は順位が完全に逆のときにとる。
thm-rnk-formula を $\sum d_i^2=\dfrac{n(n^2-1)}6(1-\rho)$ と書き直す。thm-rnk-range より $0\le1-\rho\le2$ なので、$0\le\sum d_i^2\le\dfrac{n(n^2-1)}3$ である。等号の場合は thm-rnk-range の条件 (i)・(ii) による。$\square$
$n=5$ では最大値は $\dfrac{5\cdot24}3=40$ で、ex-rnk-formula (3) の完全に逆の順位の $\sum d^2=40$ と一致する。$n=4$ では最大値は $\dfrac{4\cdot15}3=20$ で、$r=(1,2,3,4)$、$s=(4,3,2,1)$ のとき $d=(-3,-1,1,3)$、$\sum d^2=9+1+1+9=20$ である。
順位はもとの値の大小の順だけで決まる。このことから、順位相関係数の大事な性質が出る。
def-rnk-rho のデータについて、次が成り立つ。
(R1) ある関数 $f$ が単調増加($a< b$ なら $f(a)< f(b)$)で、すべての $i$ で $y_i=f(x_i)$ ならば、$\rho=1$ である。
(R2) $f$ が単調減少($a< b$ なら $f(a)> f(b)$)で、すべての $i$ で $y_i=f(x_i)$ ならば、$\rho=-1$ である。
(R3) 単調増加な関数 $g$ で $x_i$ を $g(x_i)$ に置き換えても、$\rho$ は変わらない。
段 1(条件 (i))。$f$ が単調増加なら、$x_i< x_j$ と $y_i< y_j$ が同値である($x_i< x_j$ なら $f(x_i)< f(x_j)$。逆に $x_i> x_j$ なら $y_i> y_j$ で、値はすべて異なるので $x_i=x_j$ は起こらない)。$x_i$ の順位 $r_i$ は「$x_j< x_i$ となる $j$ の個数 $+1$」で、$s_i$ も同じく「$y_j< y_i$ となる $j$ の個数 $+1$」である。2 つの個数は等しいので $r_i=s_i$ がすべての $i$ で成り立ち、thm-rnk-range より $\rho=1$ である。
段 2(条件 (ii))。$f$ が単調減少なら、$x_j< x_i$ と $y_j> y_i$ が同値である。$y_i$ より大きい $y_j$ の個数は $n-s_i$ なので、$r_i-1=n-s_i$、すなわち $s_i=n+1-r_i$ で、thm-rnk-range より $\rho=-1$ である。
段 3(条件 (iii))。段 1 と同じ理由で、$g(x_1),\dots,g(x_n)$ の順位は $x_1,\dots,x_n$ の順位 $r_1,\dots,r_n$ と等しい。$\rho$ は順位だけで決まるので変わらない。$\square$
ex-rnk-exp-first は条件 (i) の例である($f(x)=e^x$)。もとの値の相関係数は直線的な関係しか $1$ と判定しないが、順位相関係数は「一方が増えれば他方も必ず増える」という関係を $1$ と判定する(図 2)。条件 (iii) から、たとえば $x$ の代わりに $x^3$ や $\log x$($x>0$ のとき)を使っても $\rho$ は変わらない。もとの値の相関係数が変わらないと保証されるのは、1 次式 $\alpha+\beta x$($\beta>0$)で変換したときである(相関係数(高校数学) の例「変量の変換と標準化」)。
左は x = 1, …, 5 と y = eˣ の散布図で、点は曲線の上に並び、相関係数は 0.886。右は同じデータを順位に直した散布図で、点は一直線に並び、順位相関係数は 1
順位相関係数は、外れ値の影響も受けにくい。
$x=1,2,3,4,5,6$、$y=2,3,5,4,6,60$ の 6 組を考える。最後の $y=60$ だけが極端に大きい。
(1) もとの値の相関係数は $r=0.695\ldots$ である(計算機で計算した)。最後の 1 組を除いた 5 組では $r=0.9$ なので、1 つの外れ値で相関係数が大きく変わっている。
(2) 順位に直すと、$x$ の順位は $1,2,3,4,5,6$、$y$ の順位は $1,2,4,3,5,6$ である($60$ は最大なので順位 6)。$d=(0,0,-1,1,0,0)$、$\sum d^2=2$ で
$$
\rho=1-\frac{6\cdot2}{6\cdot35}=1-\frac{2}{35}=\frac{33}{35}=0.942\ldots
$$
である。$60$ がどれほど大きくても、順位は 6 のままなので、$\rho$ は変わらない(図 3)。
左は外れ値 (6, 60) を含む 6 組の散布図で、相関係数は 0.695。右は順位に直した散布図で、順位相関係数は 33/35 = 0.943
外れ値に強いまとめ方としては、平均の代わりに中央値や四分位数を使う方法もある(中央値と絶対誤差、四分位数と箱ひげ図)。順位相関係数は、相関係数について同じ考え方をとったものとみることができる。
thm-rnk-formula の前提や、順位相関係数の読み方を変えると何が崩れるかを表にする。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 値がすべて異なる(同じ値があり、平均の順位を使う。順位が $1,\dots,n$ の並べ替えという前提も一緒に破れる) | ex-rnk-cx-ties | $\rho=1-\frac{6\sum d^2}{n(n^2-1)}$ |
| 関係が単調である | ex-rnk-cx-nonmonotone | $y$ が $x$ で決まるなら $\lvert\rho\rvert$ は $1$ に近い |
| 相関係数 $r$(もとの値)で測る | ex-rnk-cx-linear | 値が $1$ なら $y$ は $x$ の 1 次式 |
$x$ の順位が $1,2,3,4$ で、$y$ の値のうち 2 つが等しく、最も小さいとする。この 2 つは 1 位と 2 位を分け合うので、平均をとって順位 $1.5$ を両方に与えるのがふつうである。$y$ の順位は $1.5,\ 1.5,\ 3,\ 4$ となる。
(1) 順位の相関係数を定義どおり計算する。$x$ の順位の平均は $2.5$、偏差は $-1.5,-0.5,0.5,1.5$、分散は $\dfrac54$ である。$y$ の順位の平均も $\dfrac{1.5+1.5+3+4}4=2.5$ で、偏差は $-1,-1,0.5,1.5$、分散は $\dfrac{1+1+0.25+2.25}4=\dfrac{4.5}4=1.125$ である。偏差の積の和は $1.5+0.5+0.25+2.25=4.5$ で、共分散は $\dfrac{4.5}4=1.125$ である。相関係数は
$$
\frac{1.125}{\sqrt{1.25}\cdot\sqrt{1.125}}=\sqrt{\frac{1.125}{1.25}}=\sqrt{0.9}=0.948\ldots
$$
である。
(2) thm-rnk-formula の式を当てはめると、$d=(-0.5,0.5,0,0)$、$\sum d^2=0.5$ で、$1-\dfrac{6\cdot0.5}{4\cdot15}=1-\dfrac3{60}=0.95$ になり、(1) と一致しない。$y$ の順位 $1.5,1.5,3,4$ は $1,\dots,4$ の並べ替えではなく、分散が $\dfrac54$ でなく $1.125$ に減っている。thm-rnk-formula の証明の段 1 と段 3 で使った「2 つの変量の分散・2 乗の和が等しい」が成り立たないためである。同じ値があるときは、平均の順位を使って相関係数の定義どおりに計算する。
$x=1,2,3,4,5$、$y=4.1,\ 1,\ 0,\ 1.1,\ 4$ とする。$y$ はおよそ $(x-3)^2$ で、$x=3$ を境に減ってから増える。値がすべて異なるようにわずかにずらしてある。$y$ は $x$ が決まれば決まるが、単調ではない。
$y$ を小さい順に並べると $0,1,1.1,4,4.1$ なので、$y$ の順位は $5,2,1,3,4$ である。$x$ の順位は $1,2,3,4,5$ で、$d=(-4,0,2,1,1)$、$\sum d^2=16+0+4+1+1=22$ だから
$$
\rho=1-\frac{6\cdot22}{5\cdot24}=1-\frac{132}{120}=-0.1
$$
である。$\rho$ は $0$ に近く、$y$ が $x$ で決まっているという強い関係を表さない。もとの値の相関係数も $-0.008\ldots$ でほぼ $0$ である(計算機で計算した)。順位相関係数が捉えるのは単調な関係であって、どんな関係でも捉えるわけではない(相関係数(高校数学) の例「反例:無相関でも無関係とは限らない」と同じ現象)。
相関係数(高校数学) の系「相関係数の範囲」により、もとの値の相関係数 $r$ が $1$ なら、$y$ は $x$ の 1 次式(傾きが正)である。順位相関係数ではこれが成り立たない。ex-rnk-exp-first の $y=e^x$ では $\rho=1$ だが、$y$ は $x$ の 1 次式ではない($x=1,2,3$ での値 $e,e^2,e^3$ の差 $e^2-e$ と $e^3-e^2=e(e^2-e)$ は等しくない)。$\rho=1$ から言えるのは、順位が完全に一致すること、つまり $x$ が大きいほど $y$ も大きいことだけである。
def-rnk-rho の $\rho$ は、大学の統計学では Spearman の順位相関係数 と呼ばれる。Wei26 は、この係数が 1904 年に Spearman によって提案された、分布の形を仮定しない(ノンパラメトリックな)順位の統計量であることを述べ、順位の相関係数としての定義と、同じ値がないときの式(thm-rnk-formula の式)を挙げている。
Wei26 は、同じ値があるときは順位の相関係数を定義として使い続け、簡単な式は補正した形に替える必要があると述べている。この記事の ex-rnk-cx-ties はその必要を示す例である。補正した式そのものは、この記事では扱わない。
2 つの変量に関係がないとき、$\rho$ がどのくらいの大きさになりやすいかを調べると、観測した $\rho$ が偶然で説明できるかを判断できる(検定)。たとえば $n=4$ では、順位の並べ替え $24$ 通りのうち $\rho=1$ となるのは 1 通りだけで、関係がないなら確率 $\dfrac1{24}$ でしか起こらない。検定の考え方は 仮説検定の考え方 で扱う。順位相関係数の検定そのものは、この記事では扱わない。
6 人の 2 つの競技の順位が $r=(1,2,3,4,5,6)$、$s=(3,1,2,6,4,5)$ のとき、順位相関係数を求めよ。
$d=(-2,1,1,-2,1,1)$、$\sum d^2=4+1+1+4+1+1=12$。thm-rnk-formula より $\rho=1-\dfrac{6\cdot12}{6\cdot35}=1-\dfrac{12}{35}=\dfrac{23}{35}=0.657\ldots$。定義どおり計算すると、平均は $3.5$、分散は $\dfrac{35}{12}$、$\sum r_is_i=3+2+6+24+20+30=85$ から共分散は $\dfrac{85}6-\dfrac{49}4=\dfrac{170-147}{12}=\dfrac{23}{12}$ で、$\rho=\dfrac{23/12}{35/12}=\dfrac{23}{35}$ と一致する。
def-rnk-rho の記号で、$\sum_{i=1}^nd_i^2$ はつねに偶数であることを示せ。また、$n=5$ のとき $\rho$ がとりうる値は $1-\dfrac{m}{10}$($m$ は $0$ から $20$ までの整数)の形の数に限られることを示せ。
整数 $d$ について $d^2-d=d(d-1)$ は連続する 2 整数の積なので偶数であり、$d_i^2$ と $d_i$ の偶奇は一致する。よって $\sum d_i^2$ と $\sum d_i$ の偶奇は一致する。$\sum d_i=\sum r_i-\sum s_i=\dfrac{n(n+1)}2-\dfrac{n(n+1)}2=0$ は偶数なので、$\sum d_i^2$ も偶数である。$n=5$ では $\sum d_i^2=2m$($m$ は整数)とおけて、cor-rnk-sum-range より $0\le2m\le40$、すなわち $0\le m\le20$ である。thm-rnk-formula より $\rho=1-\dfrac{6\cdot2m}{120}=1-\dfrac{m}{10}$ である。
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