p進複素数体(p-adic complex numbers)とは、p進数体 $\mathbb Q_p$ の代数閉包を p 進絶対値の延長について完備化した体 $\mathbb C_p$ であり、完備かつ代数閉な非アルキメデス的な体である。代数閉包そのものは完備でないことを、Krasner の補題(ある元に、その共役のどれよりも近い元は、元の元を含む体を生成する)によって証明できる。同じ補題から、$\mathbb Q_p$ の有限次拡大は代数体の完備化であり、代数的数全体は $\mathbb C_p$ で稠密であることが従う。$\mathbb C_p$ の値群は $p^{\mathbb Q}$、剰余体は $\mathbb F_p$ の代数閉包であり、局所コンパクトでなく球完備でもない。
p 進複素数体 $\mathbb C_p$ は、p進数体 $\mathbb Q_p$ の代数閉包 $\overline{\mathbb Q_p}$ を、$p$ 進絶対値の延長について完備化した体である。実数体 $\mathbb R$ は 2 次拡大 $\mathbb C$ で代数閉かつ完備になるが、$\mathbb Q_p$ では代数閉包が無限次で、しかも完備でない。そこでもう一度完備化して得られる $\mathbb C_p$ が、完備かつ代数閉な体になる(代数閉であることは p進数体 の定理「$\mathbb C_p$ は代数閉体である」)。$\mathbb C_p$ は $p$ 進解析・$p$ 進 $L$ 関数・p進Hodge理論・Berkovich空間 の舞台になる。この記事では、$\overline{\mathbb Q_p}$ が完備でないこと、Krasner の補題とその帰結($\mathbb Q_p$ の有限次拡大は代数体の完備化であり、代数的数全体は $\mathbb C_p$ で稠密である)、$\mathbb C_p$ の値群と剰余体、そして $\mathbb C_p$ が局所コンパクトでなく球完備でもないことを証明する。
$\overline{\mathbb Q_p}$ には $p$ 進絶対値 $|\cdot|_p$ を延長する絶対値 $|\cdot|$ がただ 1 つある。$\mathbb Q_p$ の有限次拡大 $L$ には、$L^\times\to\mathbb Z$ の全射で $\mathbb Q_p^\times$ 上では $e\,v_p$ になる離散付値 $w_L$ がただ 1 つあり(局所体 の定理「標数0の局所体と有限次拡大」の 1)、$|x|:=p^{-w_L(x)/e}$ とおけばよい。一意性から、有限次拡大ごとの値は互いに整合する(p進数体 の節「代数閉包と $\mathbb C_p$ への案内」)。以下 $v(x):=-\log_p|x|$($x\ne0$)と書く。
$\overline{\mathbb Q_p}$ を絶対値 $|\cdot|$ について完備化した体を p 進複素数体 といい、$\mathbb C_p$ と書く。$|\cdot|$ は $\mathbb C_p$ の非アルキメデス的な絶対値に一意に延びる。
$$
\mathcal O_{\mathbb C_p}:=\{x\in\mathbb C_p\mid |x|\le1\},\qquad \mathfrak m_{\mathbb C_p}:=\{x\in\mathbb C_p\mid |x|<1\}
$$
をそれぞれ 整数環・極大イデアル という。
完備化の構成(Cauchy 列の同値類)と、絶対値・体構造が延びることは、p進数 の記事の命題「絶対値と体構造の延長」の証明が、$\mathbb Q$ を非アルキメデス的な絶対値をもつ体に替えてもそのまま通ることによる。$a\in\mathbb C_p$、$r>0$ について
$$
D(a,r):=\{x\in\mathbb C_p\mid |x-a|\le r\}
$$
を 閉球 という。強三角不等式により、$b\in D(a,r)$ なら $D(b,r)=D(a,r)$ であり、2 つの閉球は交わらないか、一方が他方を含む。
記号の約束。 $\overline{\mathbb Q}$ は、$\overline{\mathbb Q_p}$ の中で $\mathbb Q$ 上代数的な元全体(代数的数の体)を表す。$\overline{\mathbb Q}$ は可算集合である(係数が有理数の多項式は可算個で、それぞれの根は有限個)。
$\mathbb R$ から $\mathbb C$ へは 1 回の代数拡大で済む。$\mathbb Q_p$ では、代数閉包をとると次数 $n$ の拡大がすべての $n$ について現れ($X^n-p$ は既約。p進数体 の命題「代数閉包は無限次で、絶対値の値は離散でない」)、その合併 $\overline{\mathbb Q_p}$ は「細かい桁」をいくらでも持つのに、それらを無限に足し合わせた極限を含まない(thm-cp-not-complete)。そこで完備化する。完備化で代数閉性が失われないことが p進数体 の定理であり、これを支えるのが「十分近い元は同じ体を生成する」という Krasner の補題(thm-cp-krasner)である。
ただし $\mathbb C_p$ は $\mathbb C$ ほど扱いやすくない。$\mathbb C_p$ は局所コンパクトでなく(prop-cp-not-locally-compact)、入れ子の閉球の列が空な共通部分をもちうる(thm-cp-not-spherically-complete)。後者は、Berkovich 直線に「型 4」の点が現れる理由である(Berkovich空間)。
$K$ を $\overline{\mathbb Q_p}$ に含まれる $\mathbb Q_p$ の有限次拡大とし、$\alpha,\beta\in\overline{\mathbb Q_p}$ とする。$\alpha$ の $K$ 上の共役 $\alpha'\ne\alpha$ のすべてについて
$$
|\beta-\alpha|<|\alpha'-\alpha|
$$
が成り立つならば、$K(\alpha)\subset K(\beta)$ である。
$F:=K(\beta)$ とし、$L$ を $F(\alpha)$ を含む $F$ の有限次 Galois 拡大とする(標数 $0$ なので分離的)。$F$ と $L$ は $\mathbb Q_p$ の有限次拡大である。
まず、$\sigma\in\operatorname{Gal}(L/F)$ と $x\in L$ について $|\sigma(x)|=|x|$ を示す。$w_L$ を $L$ の正規化された離散付値とすると、$w_L\circ\sigma$ も $L^\times\to\mathbb Z$ の全射な離散付値で、$\sigma$ は $F$ を動かさないので $F^\times$ 上では $w_L$ と一致する。局所体 の定理「標数0の局所体と有限次拡大」の 1 の一意性($F$ を基礎の局所体として使う)により $w_L\circ\sigma=w_L$ であり、$|\sigma(x)|=|x|$ を得る。
$\sigma\in\operatorname{Gal}(L/F)$ とする。$\sigma(\beta)=\beta$ なので
$$
|\beta-\sigma(\alpha)|=|\sigma(\beta-\alpha)|=|\beta-\alpha|
$$
である。強三角不等式により
$$
|\sigma(\alpha)-\alpha|\le\max\{|\sigma(\alpha)-\beta|,\ |\beta-\alpha|\}=|\beta-\alpha|
$$
となる。$\sigma(\alpha)$ は $\alpha$ の $F$ 上の共役であり、とくに $K$ 上の共役である。$\sigma(\alpha)\ne\alpha$ なら仮定により $|\beta-\alpha|<|\sigma(\alpha)-\alpha|$ となって上の不等式に反するので、$\sigma(\alpha)=\alpha$ である。よって $\alpha$ は $\operatorname{Gal}(L/F)$ の固定体 $F$ に属し、$K(\alpha)\subset F=K(\beta)$ である。$\square$
不等式の右辺に現れる量 $\min_{\alpha'\ne\alpha}|\alpha'-\alpha|$ は、$\alpha$ の共役どうしの最短距離である。補題は「$\alpha$ に、どの共役よりも近い元 $\beta$ は、$\alpha$ を生成するのに十分な情報をもつ」と述べている。
$\alpha\in\overline{\mathbb Q_p}$ とし、$n:=[\mathbb Q_p(\alpha):\mathbb Q_p]$ とする。任意の $\varepsilon>0$ について、$|\beta-\alpha|< \varepsilon$ を満たす $\beta\in\overline{\mathbb Q}$ で、$\mathbb Q$ 上の次数が $n$ 以下の多項式の根であり、
$$
\mathbb Q_p(\alpha)=\mathbb Q_p(\beta)
$$
となるものがある。とくに次が成り立つ。
$n=1$ なら $\alpha\in\mathbb Q_p$ で、$\mathbb Q$ は $\mathbb Q_p$ で稠密なので $\beta\in\mathbb Q$ をとればよい。$n\ge2$ とし、$f(X)=X^n+a_{n-1}X^{n-1}+\dots+a_0\in\mathbb Q_p[X]$ を $\alpha$ の最小多項式、$\delta:=\min\{|\alpha'-\alpha|\mid \alpha'\ne\alpha\text{ は }\alpha\text{ の共役}\}>0$、$M:=\max\{1,|\alpha|\}$ とする。
$0< \eta<1$ をとり、$\mathbb Q$ の $\mathbb Q_p$ での稠密性から、各 $i$ について $|c_i-a_i|< \eta$ となる $c_i\in\mathbb Q$ を選んで $g(X):=X^n+\sum_{i< n}c_iX^i\in\mathbb Q[X]$ とおく。$f(\alpha)=0$ なので
$$
|g(\alpha)|=|g(\alpha)-f(\alpha)|=\Bigl|\sum_{i< n}(c_i-a_i)\alpha^i\Bigr|< \eta M^{n}.
$$
$g=\prod_{j=1}^n(X-\beta_j)$($\beta_j\in\overline{\mathbb Q_p}$)と分解すると $|g(\alpha)|=\prod_j|\alpha-\beta_j|$ なので、ある $j$ で $|\alpha-\beta_j|<(\eta M^n)^{1/n}=\eta^{1/n}M$ となる。$\eta$ を $\eta^{1/n}M< \min\{\delta,\varepsilon\}$ となるように小さくとり、$\beta:=\beta_j$ とする。$\beta$ は有理数係数の $n$ 次多項式 $g$ の根なので $\beta\in\overline{\mathbb Q}$ である。$|\beta-\alpha|< \delta$ なので、thm-cp-krasner($K=\mathbb Q_p$)により $\mathbb Q_p(\alpha)\subset\mathbb Q_p(\beta)$ である。$[\mathbb Q_p(\beta):\mathbb Q_p]\le\deg g=n$ なので両辺の次数が等しく、$\mathbb Q_p(\alpha)=\mathbb Q_p(\beta)$ である。
1:$\varepsilon$ は任意なので $\overline{\mathbb Q}$ は $\overline{\mathbb Q_p}$ で稠密であり、$\overline{\mathbb Q_p}$ は $\mathbb C_p$ で稠密なので $\overline{\mathbb Q}$ も $\mathbb C_p$ で稠密である。
2:$L$ は $\mathbb Q_p$ 上有限次で標数 $0$ なので、原始元 $\alpha$ により $L=\mathbb Q_p(\alpha)$ と書ける。上により $L=\mathbb Q_p(\beta)$、$\beta\in\overline{\mathbb Q}$ である。$F:=\mathbb Q(\beta)$ は代数体で $F\subset L$ である。$F$ の閉包 $\overline F$ は(加減乗除が連続なので)$L$ の部分体で、$\mathbb Q$ の閉包 $\mathbb Q_p$ と $\beta$ を含むので $\mathbb Q_p(\beta)=L$ を含む。よって $\overline F=L$ である。$L$ は完備なので(局所体)、$L$ は $F$ の完備化である。$\square$
p進数体 ではこの事実を引用にとどめた。ここで Krasner の補題を使って証明する。
$m\ge1$ を $p$ と素な整数とし、$\zeta,\zeta'\in\overline{\mathbb Q_p}$ を $\zeta^m=\zeta'^m=1$、$\zeta\ne\zeta'$ とする。このとき $|\zeta-\zeta'|=1$ である。
$|\zeta|^m=1$ から $|\zeta|=1$ なので、$\xi:=\zeta'/\zeta\ne1$ について $|1-\xi|=1$ を示せばよい。$X^m-1=\prod_{\eta^m=1}(X-\eta)$ を $X-1$ で割って $X=1$ を代入すると $\prod_{\eta^m=1,\ \eta\ne1}(1-\eta)=m$ を得る。各因子は $|1-\eta|\le\max\{1,|\eta|\}=1$ を満たし、積の絶対値は $|m|=1$ である($p\nmid m$)。よってすべての因子で $|1-\eta|=1$ であり、とくに $|1-\xi|=1$ である。$\square$
$\overline{\mathbb Q_p}$ は $|\cdot|$ について完備でない。したがって $\overline{\mathbb Q_p}\subsetneq\mathbb C_p$ である。
$p$ と素な各 $m\ge1$ について、1 の原始 $m$ 乗根 $\zeta_m\in\overline{\mathbb Q_p}$ を 1 つずつ固定する($\zeta_1=1$)。$n\ge1$ について、$n$ が $p$ と素なら $n':=n$、そうでなければ $n':=1$ とおき、
$$
s_N:=\sum_{n=1}^{N}\zeta_{n'}\,p^n\in\overline{\mathbb Q_p}
$$
とする。$|\zeta_{n'}p^n|=p^{-n}$ なので $N< N'$ のとき $|s_{N'}-s_N|\le p^{-N-1}$ であり、$(s_N)$ は Cauchy 列である。
$\overline{\mathbb Q_p}$ が完備だと仮定し、極限を $\alpha\in\overline{\mathbb Q_p}$ とする。$\alpha$ はある有限次拡大 $L:=\mathbb Q_p(\alpha)$ に属し、$L$ は完備なので閉集合である。$p$ と素なすべての $m$ について $\zeta_m\in L$ であることを、$m$ についての帰納法で示す。$m=1$ は明らかである。$m>1$ を $p$ と素とし、$n< m$ のすべての $n$ について $\zeta_{n'}\in L$ と仮定する。
$$
\beta:=p^{-m}\Bigl(\alpha-\sum_{n< m}\zeta_{n'}p^n\Bigr)\in L
$$
とおくと、$\beta=\zeta_m+\lim_{N\to\infty}\sum_{n=m+1}^{N}\zeta_{n'}p^{n-m}$ なので $|\beta-\zeta_m|\le p^{-1}$ である。$\zeta_m$ の $\mathbb Q_p$ 上の共役 $\zeta'\ne\zeta_m$ はまた 1 の $m$ 乗根なので、lem-cp-roots-of-unity により $|\zeta'-\zeta_m|=1>|\beta-\zeta_m|$ である。thm-cp-krasner($K=\mathbb Q_p$)により $\zeta_m\in\mathbb Q_p(\beta)\subset L$ である。
こうして $L$ は、$p$ と素なすべての $m$ について $\zeta_m$ を含む。これらは無限個あり、lem-cp-roots-of-unity により互いの距離は $1$ なので、$L$ の剰余体での像は互いに異なる。ところが $L$ は局所体で剰余体は有限体である(局所体 の定理「標数0の局所体と有限次拡大」の 1)。矛盾である。$\square$
この証明は Was82 §5.1, Proposition 5.1(p. 48)の証明と同じ級数を使う。同書は帰納法の段で Hensel の補題を使うが、ここでは Krasner の補題に置き換えた。
要点:$x$ に十分近い代数的な元 $y$ は、$x$ と同じ絶対値と同じ剰余類をもつので、値群と剰余体は $\overline{\mathbb Q_p}$ のものと同じである。
3:$\overline{\mathbb Q_p}$ は $\mathbb C_p$ で稠密なので、$|x-y|<|x|$ となる $y$ がとれる。強三角不等式の等号の場合($|a|\ne|b|$ なら $|a+b|=\max\{|a|,|b|\}$)を $y=x+(y-x)$ に使うと $|y|=|x|$ である。
1:3 により $|\mathbb C_p^\times|=|\overline{\mathbb Q_p}^\times|$ である。$y\in\overline{\mathbb Q_p}^\times$ は有限次拡大 $L$ に属し、$|y|=p^{-w_L(y)/e}\in p^{\mathbb Q}$ である。逆に $r=a/b$($b\ge1$)について、$\gamma^b=p$ となる $\gamma$ をとれば $|\gamma^{a}|=p^{-r}$ であり、$-r$ も任意の有理数なので $p^{\mathbb Q}\subset|\overline{\mathbb Q_p}^\times|$ である。
2:強三角不等式により $\mathcal O_{\mathbb C_p}$ は部分環、$\mathfrak m_{\mathbb C_p}$ はイデアルであり、$x\ne0$ なら $x$ と $x^{-1}$ の少なくとも一方は $\mathcal O_{\mathbb C_p}$ に属するので付値環である(付値環)。$\mathcal O_{\mathbb C_p}\smallsetminus\mathfrak m_{\mathbb C_p}$ の元は $|x|=1$ なので単元であり、$\mathfrak m_{\mathbb C_p}$ が唯一の極大イデアルである。剰余体を $k$ と書く。$x\in\mathcal O_{\mathbb C_p}$ について $|x-y|<1$ となる $y\in\overline{\mathbb Q_p}$ をとれば $y\in\mathcal O_{\mathbb C_p}$ で $x,y$ の剰余類は等しい。$y$ は有限次拡大 $L$ の整数環に属し、$L$ の剰余体は有限体なので、$\bar y$ は $\mathbb F_p$ 上代数的である。よって $k$ は $\mathbb F_p$ の代数拡大である。代数閉であることを示す。モニックな $\bar h\in k[X]$ の係数を、上のように $\overline{\mathbb Q_p}$ の整な元に持ち上げてモニック多項式 $h$ を作る。$h$ は $\overline{\mathbb Q_p}$ に根 $\gamma$ をもち、p進数体 の定理「$\mathbb C_p$ は代数閉体である」の証明の段 2 により $|\gamma|\le1$ である。$h(\gamma)=0$ を還元すると $\bar h(\bar\gamma)=0$ である。よって $k$ は代数閉で、$\mathbb F_p$ 上代数的なので $\mathbb F_p$ の代数閉包である。$\square$
値群 $p^{\mathbb Q}$ は $\mathbb R_{>0}$ で稠密だが $\mathbb R_{>0}$ 全体ではない。たとえば $p^{-\sqrt2}$ は $\mathbb C_p$ の元の絶対値として現れない。この違いが、Berkovich空間 の点の「型 2」と「型 3」を分ける。
$\mathbb C_p$ の点はどれもコンパクトな近傍をもたない。とくに閉球 $D(a,r)$($r>0$)はコンパクトでない。
平行移動 $x\mapsto x+a$ は等長写像なので、$a=0$ で示せば十分である。$0$ の近傍は、ある $k\ge0$ について $D(0,p^{-k})$ を含む。$p$ と素な $m$ について $x_m:=p^k\zeta_m\in D(0,p^{-k})$ とすると、lem-cp-roots-of-unity により $m\ne m'$ なら $|x_m-x_{m'}|=p^{-k}|\zeta_m-\zeta_{m'}|=p^{-k}$ である($\zeta_m\ne\zeta_{m'}$ は位数が異なるため)。よって列 $(x_m)$ は収束する部分列をもたず、$D(0,p^{-k})$ はコンパクトでない。$0$ のコンパクトな近傍があればその閉部分集合 $D(0,p^{-k})$ もコンパクトになるので、矛盾である。$\square$
定義(球完備)。 非アルキメデス的な絶対値をもつ体 $F$ が 球完備 であるとは、閉球の減少列 $D(a_1,r_1)\supset D(a_2,r_2)\supset\cdots$($r_n>0$)の共通部分がつねに空でないことをいう。
$\mathbb Q_p$ は球完備である。閉球はコンパクトであり(局所体 の命題「整数環のコンパクト性」)、空でないコンパクト集合の減少列の共通部分は空でないからである。球完備な体は完備である(Cauchy 列 $(x_n)$ について $r_N:=\sup_{n,m\ge N}|x_n-x_m|$ とおくと $r_N\to0$ である。すべての $N$ で $r_N>0$ なら $D(x_N,r_N)$ は減少列で、その共通部分の点 $x$ は $|x-x_N|\le r_N\to0$ を満たすので極限になる。ある $N$ で $r_N=0$ なら、列は $N$ 番目から先で一定である)。逆は成り立たない。
$\mathbb C_p$ の閉球の減少列 $D(a_1,r_1)\supset D(a_2,r_2)\supset\cdots$ で、半径 $r_n$ が狭義減少して $p^{-1}$ に収束し、共通部分が空であるものが存在する。
$r_n:=p^{-1+2^{-n}}$($n\ge0$)とおく。$r_0=1$ で、$r_n$ は狭義減少して $p^{-1}$ に収束し、各 $r_n$ は $p^{\mathbb Q}$ に属する。prop-cp-value-group の 1 により、$|c_n|=r_n$ となる $c_n\in\mathbb C_p$ がある。
長さ $n$ の $0,1$ の列 $s$ ごとに中心 $a_s$ を帰納的に定める。空列には $a_\emptyset:=0$、長さ $n$ の $s$ について $a_{s0}:=a_s$、$a_{s1}:=a_s+c_n$ とし、$D_s:=D(a_s,r_n)$ とおく。
この定理は、$\mathbb C_p$ が完備であるにもかかわらず、閉球の入れ子の「行き着く先」が $\mathbb C_p$ の中にない場合があることを示す。Berkovich空間 では、そのような入れ子の列が新しい点(型 4 の点)を定める。
$\sigma\in\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb Q_p}/\mathbb Q_p)$ は $|\sigma(x)|=|x|$ を満たす(prf-cp-krasner の前半を $F=\mathbb Q_p$ に使う)。よって $\sigma$ は $\overline{\mathbb Q_p}$ の等長写像であり、Cauchy 列を Cauchy 列に移すので、$\mathbb C_p$ の連続な体自己同型に一意に延びる。こうして絶対 Galois 群 $\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb Q_p}/\mathbb Q_p)$ は $\mathbb C_p$ に等長的に作用する。$p$ 進 Hodge 理論はこの作用をもつ $\mathbb C_p$ 上の表現を調べる。
$\mathbb C_p$ と $\mathbb C$ は、体としては(絶対値を忘れれば)同型である。どちらも標数 $0$ の代数閉体で、$\mathbb Q$ 上の超越次数がともに非可算で互いに等しいからである(Was82 §5.1, p. 49。同型の構成は選択公理を使い、この記事では証明しない)。この同型はどちら向きにも連続にはなりえない。体の同型は $\mathbb Q$ の上で恒等写像である。$\mathbb C_p$ から $\mathbb C$ への同型が連続なら、$\mathbb C_p$ で $0$ に収束する列 $p^n$ の像 $p^n$ も $\mathbb C$ で $0$ に収束するはずだが、そうならない。逆向きでも、$\mathbb C$ で $0$ に収束する列 $p^{-n}$ は $\mathbb C_p$ では $|p^{-n}|=p^n\to\infty$ となる。
次の表は、この記事の定理の仮定を 1 つずつ外したときに何が崩れるかを示す。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| thm-cp-krasner の不等式が狭義であること | $p$ は奇素数、$K=\mathbb Q_p$、$\alpha=\sqrt p$、$\beta=0$ | $K(\alpha)\subset K(\beta)$ |
| thm-cp-krasner の $K$ が完備であること | $K=\mathbb Q$ と $5$ 進絶対値、$\alpha=i$、$\beta=2$ | $K(\alpha)\subset K(\beta)$ |
| 代数閉包を完備化すること | $\overline{\mathbb Q_p}$ | 完備性(thm-cp-not-complete) |
| 局所コンパクト性 | $\mathbb C_p$ | 球完備性($\mathbb Q_p$ は球完備、thm-cp-not-spherically-complete) |
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