強パラコンパクト空間

同義語:strongly paracompact space

概要

強パラコンパクト空間(strongly paracompact space)とは、任意の開被覆が星状有限な開細分をもつ位相空間である。星状有限とは細分の各成員が有限個の成員としか交わらないことで、局所有限性や点有限性より強い。コンパクト空間は強パラコンパクトで、強パラコンパクト空間はパラコンパクトかつメタコンパクトだが、一般の距離空間が強パラコンパクトとは限らない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 開被覆, 細分, コンパクト空間, パラコンパクト空間

定義

星状有限な族

位相空間 $X$ の部分集合族 $\mathcal{V}$ が 星状有限(star-finite)であるとは、各 $V\in\mathcal{V}$ に対して
$$ \{W\in\mathcal{V}\mid V\cap W\neq\emptyset\} $$
が有限集合であることをいう。

$X$ の被覆 $\mathcal{V}$ が被覆 $\mathcal{U}$ の 細分であるとは、各 $V\in\mathcal{V}$ に対して $V\subset U$ となる $U\in\mathcal{U}$ が存在することをいう。$\mathcal{V}$ の全成員が開集合なら、これを 開細分という。

強パラコンパクト空間

位相空間 $X$ が 強パラコンパクト(strongly paracompact)であるとは、$X$ の任意の開被覆が星状有限な開細分をもつことをいう。

本記事では、強パラコンパクト性・パラコンパクト性・メタコンパクト性のいずれにもHausdorff性などの分離公理を含めない。分離公理を定義に含める流儀でも、比較するすべての空間に同じ分離公理を課せば、以下の含意の証明は変わらない(Engelking89 §5.3)。

直感――細分の一つ一つが有限個の隣だけをもつ

局所有限性は「各点の近くで、細分の成員が有限個しか見えない」という条件である。星状有限性はさらに強く、細分の各成員そのものが、ほかの成員のうち有限個としか交わらないことを要求する。したがって、星状有限な細分の交わり方をグラフで表すと、各頂点の次数が有限になる。この全域的な制御が、強パラコンパクト性の「強」の意味である。

被覆の有限性条件の違い

星状有限なら局所有限

開被覆 $\mathcal{V}$ が星状有限なら局所有限であり、局所有限なら点有限である。

$x\in X$ とする。$\mathcal{V}$ は被覆なので、$x\in V$ となる $V\in\mathcal{V}$ を選べる。$V$ は $x$ の開近傍であり、星状有限性により $V$ と交わる $\mathcal{V}$ の成員は有限個しかない。よって $\mathcal{V}$ は局所有限である。
次に $\mathcal{V}$ が局所有限とする。$x$ のある近傍 $N$ は $\mathcal{V}$ の有限個の成員としか交わらない。$x$ を含む成員はすべて $N$ と $x$ で交わるので、その個数も有限である。したがって $\mathcal{V}$ は点有限である。

この命題で比較している三条件は、数える対象が違う。

条件有限個であることを要求するもの
点有限各点を含む成員
局所有限各点のある近傍と交わる成員
星状有限各成員と交わる成員

基本的な含意

コンパクトなら強パラコンパクト

任意のコンパクト空間は強パラコンパクトである。

$X$ をコンパクト空間、$\mathcal{U}$ をその開被覆とする。コンパクト性により、$\mathcal{U}$ は有限部分被覆 $\mathcal{V}$ をもつ。$\mathcal{V}$ は $\mathcal{U}$ の開細分である。また $\mathcal{V}$ 自身が有限族なので、各 $V\in\mathcal{V}$ と交わる成員も有限個しかない。よって $\mathcal{V}$ は星状有限であり、$X$ は強パラコンパクトである。

強パラコンパクトならパラコンパクト

任意の強パラコンパクト空間はパラコンパクトであり、したがってメタコンパクトである。

$X$ を強パラコンパクト空間、$\mathcal{U}$ をその開被覆とする。強パラコンパクト性により、$\mathcal{U}$ は星状有限な開細分 $\mathcal{V}$ をもつ。prop-strongly-paracompact-star-locally-point により $\mathcal{V}$ は局所有限だから、$X$ はパラコンパクトである。同じ命題により $\mathcal{V}$ は点有限でもあるので、$X$ はメタコンパクトでもある。

したがって
$$ \text{コンパクト}\Longrightarrow\text{強パラコンパクト} \Longrightarrow\text{パラコンパクト}\Longrightarrow\text{メタコンパクト} $$
が成り立つ。ただし逆向きは一般には成り立たない。

例と反例

閉区間

通常の位相をもつ閉区間 $[0,1]$ はコンパクトなので強パラコンパクトである。任意の開被覆から選んだ有限部分被覆が、そのまま星状有限な開細分になる。

無限離散空間

任意の離散空間 $X$ は強パラコンパクトである。実際、開被覆 $\mathcal{U}$ に対し、各 $x\in X$ を含む $U_x\in\mathcal{U}$ を選べば、$\{\{x\}\mid x\in X\}$ は $\mathcal{U}$ の開細分であり、異なる成員どうしは交わらないので星状有限である。
$X$ が無限なら、一点集合すべてからなる開被覆は有限部分被覆をもたないので $X$ はコンパクトでない。これは「強パラコンパクトならコンパクト」という逆向きの含意を破る。

実数直線

通常の実数直線 $\mathbb{R}$ は正則なLindelöf空間なので強パラコンパクトである(Nagata85 Proposition V.4.B)。一方、$\{(-n,n)\mid n\in\mathbb{N},\ n\geq1\}$ は有限部分被覆をもたない開被覆だから、$\mathbb{R}$ はコンパクトでない。この例も、強パラコンパクト性がコンパクト性より真に弱いことを示す。

反例:非可算な星空間

非可算集合 $A$ に対する星空間 $S(A)$ を、点 $o$ と枝 $\{(t,a)\mid 0< t\leq1\}$($a\in A$)からなる距離空間とする。距離は
$$ d(o,(t,a))=t,\qquad d((s,a),(t,b))= \begin{cases} |s-t|&a=b,\\ s+t&a\neq b \end{cases} $$
で定める。これは距離空間なのでパラコンパクトだが、強パラコンパクトではない(Nagata85 Example V.6)。したがって
$$ \text{パラコンパクト}\Longrightarrow\text{強パラコンパクト} $$
は成り立たない。距離化可能性だけでも星状有限な開細分の存在は保証されない。

この反例での障害は枝の非可算性にある。$S(A)$ の各点 $(t,a)$ は、$s=0$ では $o$、$0< s\leq1$ では $(st,a)$ と定めた道 $[0,1]\to S(A)$ によって中心 $o$ と結ばれるので、$S(A)$ は道連結、したがって連結である。実際、星状有限な被覆の交わりグラフでは各頂点の次数が有限なので、一つの成員から有限本の交わりを順にたどって到達できる成員は高々可算個である。連結な空間の開被覆の交わりグラフは連結だから、星状有限な開被覆は高々可算となる。
一方、中心の球 $B(o,2/3)$ と、各 $a\in A$ に対する枝の先端近傍
$$ U_a=\{(t,a)\mid 1/3< t\leq1\} $$
は $S(A)$ の開被覆をなす。この被覆の細分で端点 $(1,a)$ を覆う成員は $B(o,2/3)$ に含まれず、ある $U_b$ に含まれなければならない。すると $b=a$ である。したがって異なる枝の端点には異なる成員が必要であり、どの細分も非可算である。ゆえにこの開被覆は星状有限な開細分をもたない。

可算強パラコンパクト性

可算強パラコンパクト空間

位相空間 $X$ が 可算強パラコンパクト(countably strongly paracompact)であるとは、$X$ の任意の高々可算な開被覆が星状有限な開細分をもつことをいう。

強パラコンパクト空間は可算強パラコンパクトである。後者は調べる開被覆を高々可算なものだけに制限した条件であり、「細分が可算である」という意味ではない。また、可算パラコンパクト性は高々可算な開被覆に 局所有限 な開細分を要求する別概念である。星状有限・局所有限・点有限を取り違えないことが重要である。

学習の道筋

まず 開被覆 で点有限・局所有限・星状有限の差を確認し、次に パラコンパクト空間 と比較するとよい。パラコンパクト性では局所有限性が1の分割の構成に結びつく一方、強パラコンパクト性は細分の成員どうしの交わりを有限次数のグラフとして制御する。最後に メタコンパクト空間 と可算版を比べると、「任意の被覆か可算被覆か」と「どの有限性条件を課すか」という二つの軸が見える。

関連項目

参考文献

[1]
Ryszard Engelking, General Topology, Sigma Series in Pure Mathematics 6, Revised and completed edition, Heldermann Verlag, 1989, §5.3(強パラコンパクト空間とメタコンパクト空間)

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