Schubert胞体(Schubert cell)とは、Grassmann 多様体 $\operatorname{Gr}(k,K^n)$ の点 $W$ を、座標部分空間の列 $K^1\subset\cdots\subset K^n$ との交わりの次元が増える $k$ 個の番号で分類したときの各類である。各類は行階段形の自由な成分によって $K^m$ と一対一に座標づけられ、$m$ は $k\times(n-k)$ の長方形に収まる Young 図形の箱の数である。$K=\mathbb{R},\mathbb{C}$ では各類は $K^m$ と同相な胞体で、全体は CW 複体の構造を与え、胞体の個数は Gauss の 2 項係数で数えられる。複素 Grassmann 多様体のホモロジーの計算や、Stiefel–Whitney 類・Chern 類を表す胞体余鎖の記述に使われる。
前提知識: Grassmann多様体, CW複体, 胞体ホモロジー, Young図形
射影空間 $K\mathrm{P}^{n-1}$ は、$0$ 胞体・$d$ 胞体・$2d$ 胞体……を 1 つずつ貼り合わせた空間である($d=\dim_{\mathbb{R}}K$)。$K\mathrm{P}^{n-1}$ の点は直線であり、直線が「何番目の座標まで使うか」で点を分けたものがこの胞体である。Grassmann 多様体 $\operatorname{Gr}(k,K^n)$ でも同じことができる。$k$ 次元部分空間 $W$ を座標部分空間の列 $K^1\subset K^2\subset\cdots\subset K^n$ と交わらせ、交わりの次元が増える番号の列($k$ 個の番号)で $W$ を分類すると、各類はアフィン空間 $K^m$ と同相になり、全体は CW 複体の胞体分割になる。これが Schubert 胞体 である。
番号の列は $k$ 行 $n-k$ 列の長方形に収まる Young図形 と一対一に対応し、胞体の次元は図形の箱の数の $d$ 倍である。このため Grassmann 多様体の位相(ホモロジー、Euler 標数)や特性類の計算は、長方形の中の Young 図形の数え上げに帰着する。この記事では、行階段形による胞体の記述、CW 構造、胞体の個数と Gauss の 2 項係数、Stiefel–Whitney 類と Chern 類を表す胞体余鎖を証明する。
$K$ を体とし、$K^n$ の標準基底を $e_1,\dots,e_n$、最初の $j$ 個の張る部分空間を $K^j:=\operatorname{span}(e_1,\dots,e_j)$ と書く($K^0=0$)。$\operatorname{Gr}(k,K^n)$ は $K^n$ の $k$ 次元部分空間の全体である(Grassmann多様体 の定義「Grassmann 多様体」)。
$W\in\operatorname{Gr}(k,K^n)$ とする。各 $j=1,\dots,n$ について $\dim(W\cap K^j)-\dim(W\cap K^{j-1})$ は $0$ または $1$ であり、値が $1$ となる $j$ はちょうど $k$ 個ある。
第 $j$ 座標をとる線形写像 $W\cap K^j\to K$ の核は $W\cap K^{j-1}$ であり、像は $K$ の部分空間なので次元は $0$ か $1$ である。よって差は $0$ か $1$ である。差を $j=1,\dots,n$ で足すと $\dim(W\cap K^n)-\dim(W\cap K^0)=k$ なので、差が $1$ の $j$ はちょうど $k$ 個である。$\square$
整数の列 $\sigma=(\sigma_1,\dots,\sigma_k)$ で $1\le\sigma_1< \sigma_2< \cdots< \sigma_k\le n$ となるものを Schubert 記号 という。$W\in\operatorname{Gr}(k,K^n)$ について、lem-schubert-jumps で差が $1$ となる番号を小さい順に並べたものを $\sigma(W)$ と書く。Schubert 記号 $\sigma$ について
$$
e(\sigma):=\{W\in\operatorname{Gr}(k,K^n)\mid\sigma(W)=\sigma\}
=\{W\mid\dim(W\cap K^{\sigma_i})=i,\ \dim(W\cap K^{\sigma_i-1})=i-1\ (i=1,\dots,k)\}
$$
を Schubert 胞体(Schubert cell)という。$K=\mathbb{R},\mathbb{C}$ のとき、その閉包を Schubert 多様体 という。また
$$
\lambda(\sigma):=(\sigma_k-k,\ \sigma_{k-1}-(k-1),\ \dots,\ \sigma_1-1),\qquad \lvert\lambda(\sigma)\rvert:=\sum_{i=1}^k(\sigma_i-i)
$$
とおく。
$\sigma_{i+1}-(i+1)\ge\sigma_i-i$ なので $\lambda(\sigma)$ は広義減少で、成分は $0$ 以上 $n-k$ 以下である。すなわち $\lambda(\sigma)$ は、行の数が $k$ 以下で各行の長さが $n-k$ 以下の分割、言い換えると $k\times(n-k)$ の長方形に収まる Young 図形である。逆に、そのような図形 $\lambda$ から $\sigma_i=\lambda_{k+1-i}+i$ で Schubert 記号が戻るので、Schubert 胞体は長方形に収まる Young 図形と一対一に対応する。定義から、$\dim(W\cap K^j)=\#\{i\mid\sigma_i(W)\le j\}$ であり、
$$
\dim(W\cap K^j)\ge i\iff\sigma_i(W)\le j
$$
が成り立つ。以下、この同値を (1) と書く。$K^n\subset K^{n+1}$ により $\operatorname{Gr}(k,K^n)\subset\operatorname{Gr}(k,K^{n+1})$ とみなすと、記号 $\sigma$ の胞体はどちらで定めても同じ集合である。
$K$ を体、$\sigma$ を Schubert 記号とする。
1 の十分性. (a)(b) をみたす $A$ の第 $i$ 行 $v_i$ は、最後の $0$ でない成分が第 $\sigma_i$ 成分である。$\sigma_i$ は相異なるので、$v=\sum_ic_iv_i$ の最後の $0$ でない成分は $c_i\ne0$ となる $i$ のうち最大の $\sigma_i$ の位置にある。とくに $v_1,\dots,v_k$ は 1 次独立であり、$v\in K^j$ となるのは $\sigma_i>j$ の $i$ で $c_i=0$ のときに限る。よって $W\cap K^j=\operatorname{span}(v_i\mid\sigma_i\le j)$、$\dim(W\cap K^j)=\#\{i\mid\sigma_i\le j\}$ であり、$\sigma(W)=\sigma$ である。
1 の必要性. $W\in e(\sigma)$ とする。$\dim(W\cap K^{\sigma_i})>\dim(W\cap K^{\sigma_i-1})$ なので、$W\cap K^{\sigma_i}$ の元で $K^{\sigma_i-1}$ に入らないもの、すなわち第 $\sigma_i$ 成分が $0$ でなく $\sigma_i$ より後の成分が $0$ のものがある。定数倍して第 $\sigma_i$ 成分を $1$ にしたものを $v_i$ とする。$i$ の小さい順に、$v_i$ から $\sum_{j< i}(v_i)_{\sigma_j}v_j$ を引く。すでに $v_j$($j< i$)は (a)〜(c) をみたし、$\sigma_j< \sigma_i$ なので、引いた後の $v_i$ は第 $\sigma_j$ 成分($j< i$)が $0$ になり、(a)(b) は保たれる。$j>i$ の第 $\sigma_j$ 成分は (b) により $0$ である。こうして (a)〜(c) をみたす行列が得られ、十分性の議論から行は 1 次独立なので、行空間は $W$ である。
一意性. (a)(c) により $A$ の第 $I$ 列($I=\{\sigma_1,\dots,\sigma_k\}$、番号の順)からなる小行列は単位行列である。同じ行空間をもつ行列 $A'$ は $gA$($g\in GL_k(K)$)の形なので、第 $I$ 列が単位行列という条件から $g=1$ である。
2. 第 $i$ 行で (a)〜(c) が決めない位置は、$\{1,\dots,\sigma_i-1\}$ から $\sigma_1,\dots,\sigma_{i-1}$ を除いた $\sigma_i-i$ 個であり、合計は $\lvert\lambda(\sigma)\rvert$ である。それらの成分を任意に与えた行列は (a)〜(c) をみたすので、1 から全単射を得る。各 $W$ はただ 1 つの $\sigma(W)$ をもつので、$\operatorname{Gr}(k,K^n)$ は $e(\sigma)$ の交わらない和である。
3. 1 の $A$ は第 $I$ 列が単位行列なので、$W\in U_I$ であり、$A$ は Grassmann多様体 の定義「アフィン座標近傍」の正規化 $M_I(\varphi_I(W))$ そのものである。$\varphi_I(W)$ は $A$ の第 $I$ 列以外の列からなる $k\times(n-k)$ 行列であり、1・2 により、$\varphi_I(e(\sigma))$ はその成分のうち「第 $i$ 行で列番号が $\sigma_i$ より大きいもの」がすべて $0$ である行列の全体、すなわち座標部分空間 $K^{\lvert\lambda(\sigma)\rvert}$ に等しい。$\varphi_I$ は同相写像(同記事の定理「多様体の構造」)で、座標部分空間は閉集合なので、主張を得る。$\square$
$k=2$、$n=4$ では Schubert 記号は $\binom42=6$ 個で、$\lambda(\sigma)$ は $2\times2$ の正方形に収まる Young 図形である($*$ は自由な成分)。
| $\sigma$ | $\lambda(\sigma)$ | 行階段形 | $\dim_K$ |
|---|---|---|---|
| $(1,2)$ | $\emptyset$ | $\begin{pmatrix}1&0&0&0\\0&1&0&0\end{pmatrix}$ | $0$ |
| $(1,3)$ | $(1)$ | $\begin{pmatrix}1&0&0&0\\0&*&1&0\end{pmatrix}$ | $1$ |
| $(1,4)$ | $(2)$ | $\begin{pmatrix}1&0&0&0\\0&*&*&1\end{pmatrix}$ | $2$ |
| $(2,3)$ | $(1,1)$ | $\begin{pmatrix}*&1&0&0\\ *&0&1&0\end{pmatrix}$ | $2$ |
| $(2,4)$ | $(2,1)$ | $\begin{pmatrix}*&1&0&0\\ *&0&*&1\end{pmatrix}$ | $3$ |
| $(3,4)$ | $(2,2)$ | $\begin{pmatrix}*&*&1&0\\ *&*&0&1\end{pmatrix}$ | $4$ |
最大の胞体 $e(3,4)$ は、$W\cap K^2=0$ となる $W$ の全体、すなわち座標近傍 $U_{\{3,4\}}$ そのものである。$\mathbb{P}^3$ の直線で言えば、直線 $x_3=x_4=0$ と交わらない直線の全体である。
$k=1$ では $\sigma=(j)$($1\le j\le n$)で、$e(j)=\{[x_1:\cdots:x_j:0:\cdots:0]\mid x_j\ne0\}\cong K^{j-1}$ である。その閉包は $K\mathrm{P}^{j-1}$ であり、Schubert 胞体は CW複体 の命題「射影空間の CW 構造」の胞体と一致する。
$K^n$ の元を列ベクトルとし、$\mathrm{GL}_n(K)$ を $W\mapsto gW$ で $\operatorname{Gr}(k,K^n)$ に作用させる。可逆な上三角行列の群を $B$、対角成分がすべて $1$ の上三角行列の群を $U$ とする。各 Schubert 胞体 $e(\sigma)$ は $B$ の 1 つの軌道であり、$e(\sigma)=U\cdot W_\sigma$($W_\sigma:=\operatorname{span}(e_{\sigma_1},\dots,e_{\sigma_k})$)である。
$g\in B$ は各 $K^j$ を $K^j$ に写すので $\dim(gW\cap K^j)=\dim(W\cap K^j)$ であり、$e(\sigma)$ は $B$ の作用で保たれる。$W\in e(\sigma)$ とし、thm-schubert-echelon の行列 $A$ の第 $i$ 行を(転置して)列ベクトル $v_i$ とみる。$v_i-e_{\sigma_i}\in K^{\sigma_i-1}$ である。$ge_{\sigma_i}:=v_i$、$c\notin I$ について $ge_c:=e_c$ で $g$ を定めると、$g$ の第 $\sigma_i$ 列は対角成分が $1$ で対角より下が $0$ なので $g\in U$ であり、$gW_\sigma=W$ である。よって $e(\sigma)=U\cdot W_\sigma\subset B\cdot W_\sigma\subset e(\sigma)$ である。$\square$
この命題は、完全旗の全体が上三角行列の群の軌道に分かれる Bruhat分解 の、Grassmann 多様体での形である。
以下 $K=\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$、$d:=\dim_{\mathbb{R}}K$ とし、$K^n$ に標準内積($K=\mathbb{C}$ では第 1 変数について線形な Hermite 内積 $\langle\ ,\ \rangle$)を入れる。Schubert 記号の間に、すべての $i$ で $\tau_i\le\sigma_i$ のとき $\tau\le\sigma$ という順序を入れる。$\tau\le\sigma$ かつ $\tau\ne\sigma$ なら $\lvert\lambda(\tau)\rvert< \lvert\lambda(\sigma)\rvert$ である。
正規直交枠. $E(\sigma)$ を、$K^n$ の正規直交な $k$ 個の組 $(x_1,\dots,x_k)$ で、各 $x_i$ が $K^{\sigma_i}$ に入り、その第 $\sigma_i$ 成分が $0$ 以上の実数であるものの全体とする。第 $\sigma_i$ 成分がすべて正であるものの全体を $E^\circ(\sigma)$ とする。$E(\sigma)$ は $K^{kn}$ の有界閉集合なのでコンパクトである。$\Phi_\sigma\colon E(\sigma)\to\operatorname{Gr}(k,K^n)$ を $(x_1,\dots,x_k)\mapsto\operatorname{span}(x_1,\dots,x_k)$ と定める。$\Phi_\sigma$ は、行空間をとる商写像を正規直交な行列に制限したものなので連続である(Grassmann多様体 の定理「多様体の構造」)。
$K=\mathbb{R},\mathbb{C}$ とする。
1. $W$ を行空間とする $k\times n$ 行列 $A$ をとる。$W\cap K^j$ は「$W$ の元を第 $j+1,\dots,n$ 成分へ射影する写像」の核なので、$\dim(W\cap K^j)\ge i$ は「$A$ の第 $j+1,\dots,n$ 列からなる小行列の階数が $k-i$ 以下」、すなわちその $(k-i+1)$ 次小行列式がすべて $0$ であることと同値である。これは $A$ について閉じた条件で、$GL_k(K)$ の作用で保たれるので、$F_{i,j}:=\{W\mid\dim(W\cap K^j)\ge i\}$ は商位相で閉集合である。$e(\sigma)\subset\bigcap_iF_{i,\sigma_i}$ なので閉包も含まれ、閉包の点 $W$ は (1) により $\sigma_i(W)\le\sigma_i$ をみたす。
2・3 の要点. $E^\circ(\sigma)$ の元から $W$ への対応の逆は、旗に沿った Gram–Schmidt の直交化である。$E(\sigma)$ が閉球体であることは、$k$ についての帰納法で、$E(\sigma)\cong E(\sigma_1,\dots,\sigma_{k-1})\times D$($D$ は閉じた半球面)を、$K^n$ のユニタリ変換で枠を動かして示す。
全単射.$W\in e(\sigma)$ とする。$W\cap K^{\sigma_i}$ の中で $W\cap K^{\sigma_i-1}$ の直交補空間は $1$ 次元であり、その元で長さ $1$ のもの $x$ の第 $\sigma_i$ 成分は $0$ でない($0$ なら $x\in W\cap K^{\sigma_i-1}$ となり矛盾)。絶対値 $1$ の数を掛けて第 $\sigma_i$ 成分を正にしたものを $x_i$ とすると、$j< i$ なら $x_j\in W\cap K^{\sigma_i-1}$ なので $x_i\perp x_j$ であり、$(x_1,\dots,x_k)\in E^\circ(\sigma)$、$\Phi_\sigma(x)=W$ である。逆に $x\in E^\circ(\sigma)$ について、$x_i$ の最後の $0$ でない成分は第 $\sigma_i$ 成分なので、prf-schubert-echelon の十分性と同じ議論で $\Phi_\sigma(x)\in e(\sigma)$ かつ $W\cap K^{\sigma_i}=\operatorname{span}(x_1,\dots,x_i)$ である。したがって $x_i$ は $W\cap K^{\sigma_i}$ の中の $W\cap K^{\sigma_i-1}$ の直交補空間の長さ $1$ の元で、第 $\sigma_i$ 成分が正のものとして $W$ から決まり、$\Phi_\sigma$ は $E^\circ(\sigma)$ 上で単射である。
境界の行き先.$x\in E(\sigma)\setminus E^\circ(\sigma)$ なら、ある $i$ で $x_i$ の第 $\sigma_i$ 成分が $0$ で、$x_1,\dots,x_i\in K^{\sigma_i-1}$ である。$W=\Phi_\sigma(x)$ は $\dim(W\cap K^{\sigma_i-1})\ge i$、すべての $j$ で $\dim(W\cap K^{\sigma_j})\ge j$ をみたすので、(1) により $\sigma(W)\le\sigma$ かつ $\sigma_i(W)< \sigma_i$ である。
回転.長さ $1$ の $u,v\in K^n$ で $t:=\langle u,v\rangle$ が $0$ 以上の実数であるものについて、$T(u,v)y:=y-\frac{\langle y,u+v\rangle}{1+t}(u+v)+2\langle y,u\rangle v$ とおく。$T(u,v)$ は $y$ について線形で、$(u,v,y)$ について連続であり(分母は $1$ 以上)、$Tu=v$、$Tv=2tv-u$、$u,v$ に直交する $y$ では $Ty=y$ である。$u,v$ が 1 次従属なら $v=u$($t\ge0$ による)で $T=\mathrm{id}$ である。1 次独立なら、$T$ は $P:=\operatorname{span}(u,v)$ と $P^\perp$ を保ち、$\langle Tu,Tu\rangle=\langle Tv,Tv\rangle=1$、$\langle Tu,Tv\rangle=t$ なので $P$ 上でも内積を保つ。よって $T(u,v)$ はユニタリ変換である。また $T(u,v)y-y\in\operatorname{span}(u,v)$ である。
帰納法.$k=1$ のとき、$E(\sigma_1)$ は $K^{\sigma_1}$ の単位球面のうち最後の成分が $0$ 以上の実数である部分で、$x\mapsto(x_1,\dots,x_{\sigma_1-1})$ により $K^{\sigma_1-1}$ の閉単位球体と同相である(逆写像は最後の成分を $\sqrt{1-\lvert y\rvert^2}$ とおくもの)。内部は最後の成分が正の部分に対応する。次元は $d(\sigma_1-1)$ である。
$\sigma=(\sigma',\sigma_{k+1})$、$\sigma'=(\sigma_1,\dots,\sigma_k)$ とし、$b_i:=e_{\sigma_i}$ とおく。$x\in E(\sigma')$ について $\langle x_i,b_i\rangle$ は $x_i$ の第 $\sigma_i$ 成分なので $0$ 以上の実数であり、$T_x:=T(b_k,x_k)\circ\cdots\circ T(b_1,x_1)$ が定まる。$j< i$ なら $b_i$ は $b_j$ にも $x_j\in K^{\sigma_j}$ にも直交し、$j>i$ なら $x_i$ は $x_j$ にも $b_j$ にも直交するので、$T_xb_i=x_i$ である。$T_xy-y\in K^{\sigma_k}$ である。$D$ を、$u\in K^{\sigma_{k+1}}$ で長さ $1$、第 $\sigma_1,\dots,\sigma_k$ 成分が $0$、第 $\sigma_{k+1}$ 成分が $0$ 以上の実数であるものの全体とすると、$k=1$ の場合と同じく $D$ は次元 $d(\sigma_{k+1}-k-1)$ の閉球体と同相である。$f(x,u):=(x,T_xu)$ とおくと、$T_xu\in K^{\sigma_{k+1}}$ でその第 $\sigma_{k+1}$ 成分は $u$ のものに等しく($\sigma_{k+1}>\sigma_k$)、長さは $1$、$\langle T_xu,x_i\rangle=\langle T_xu,T_xb_i\rangle=\langle u,b_i\rangle=0$ なので $f(x,u)\in E(\sigma)$ である。$(x,y)\mapsto(x,T_x^{-1}y)$ も同様に $E(\sigma)\to E(\sigma')\times D$ を定め、$f$ の逆である。どちらも連続なので $E(\sigma)\cong E(\sigma')\times D$ であり、$E^\circ(\sigma)$ は $E^\circ(\sigma')\times(D$ の内部$)$ に対応する。閉球体の積は閉球体で内部は内部の積なので、帰納法により $E(\sigma)$ は次元 $d\sum_i(\sigma_i-i)=d\lvert\lambda(\sigma)\rvert$ の閉球体である。以上は MS74 Lemma 6.2・6.3(p. 76)、回転の式(p. 77)の実数の場合の議論を Hermite 内積に移したものである。
同相.$\Phi_\sigma$ は $E^\circ(\sigma)$ を $e(\sigma)$ に全単射に写す。$C\subset E^\circ(\sigma)$ が $E^\circ(\sigma)$ の閉集合なら、$E(\sigma)$ での閉包 $\bar C$ はコンパクトで、$\Phi_\sigma(\bar C)$ は Hausdorff 空間 $\operatorname{Gr}(k,K^n)$ の閉集合であり、$\bar C\setminus C\subset E(\sigma)\setminus E^\circ(\sigma)$ は $e(\sigma)$ の外へ写るので $\Phi_\sigma(C)=\Phi_\sigma(\bar C)\cap e(\sigma)$ は $e(\sigma)$ の閉集合である。よって $\Phi_\sigma\colon E^\circ(\sigma)\to e(\sigma)$ は同相写像である。
CW 複体.$X^r$ を次元 $r$ 以下の胞体の和とする。$X^r$ は有限個のコンパクト集合 $\Phi_\tau(E(\tau))$ の和なのでコンパクトである。$X^{r-1}$ と次元 $r$ の $E(\sigma)$ たちの非交和から $X^r$ への写像(包含と $\Phi_\sigma$)は連続な全射で、2 により同じ点に写る組は境界の点とその行き先の組だけである。CW複体 の補題「貼り付けた空間であることの確かめ方」により、$X^r$ は $X^{r-1}$ に $r$ 胞体を貼った空間である。$\sigma_k\le n$ の胞体は $\operatorname{Gr}(k,K^{n+1})$ の中でも同じ特性写像をもつので部分複体である。無限 Grassmann 多様体の各点は有限部分複体 $\operatorname{Gr}(k,K^n)$ に含まれ、弱位相は有限部分複体による位相なので、CW 複体である(MS74 Theorem 6.4、p. 79)。$\square$
1:胞体と図形の対応は def-schubert-cell の直後に述べた。thm-schubert-echelon の 1・2 は任意の体で成り立つので、$q$ 元体 $\mathbb{F}_q$ では $\lvert e(\sigma)\rvert=q^{\lvert\lambda(\sigma)\rvert}$ であり、$\operatorname{Gr}(k,\mathbb{F}_q^n)$ の元の個数は左辺に $q$ を代入した値である。これは Grassmann多様体 の命題「有限体上の Grassmann 多様体の点の個数」により右辺に等しい。両辺は $q$ の有理式(左辺は多項式)で、無限個の素数冪で値が一致するので、恒等式として等しい。$\operatorname{Gr}(k,K^\infty)$ では行の長さの上限がなくなる。
2:胞体はすべて偶数次元なので、胞体鎖複体は奇数次で $0$ であり、境界写像はすべて $0$ である。胞体ホモロジーは特異ホモロジーと同型である(Hat02 Theorem 2.35、p. 139)から、主張を得る。
3:Euler 標数は胞体の個数の交代和である(Euler標数 の系「2 つの Euler 標数は一致する」)。$\square$
$\gamma^k$ を $\operatorname{Gr}(k,K^\infty)$ 上のトートロジー束とする(Grassmann多様体 の命題「トートロジー束」とその後の段落)。胞体の次元が飛び飛びなので、コホモロジー類は胞体の上の値の表として読める。
$1\le r\le k$ とする。
要点:$\lambda$ の行の数 $s$ が $r$ より少ない胞体は、$K^{k-s}$ を含む部分空間のなす部分複体に入り、そこで $\gamma^k$ は自明束と階数 $s$ の束の和になるので、$w_r$($c_r$)は消える。$e(\rho_r)$ の閉包は $K\mathrm{P}^r$ と同相で、そこでの値は射影空間の生成元の冪である。
$K=\mathbb{R}$ のとき $x_r:=w_r$、$K=\mathbb{C}$ のとき $x_r:=c_r$ と書く。
部分複体 $Y_s$.$0\le s\le k$ について $Y_s:=\{W\mid K^{k-s}\subset W\}$ とおく。(1) により $W\in Y_s$ は $\sigma_i(W)=i$($i\le k-s$)と同値なので、$Y_s$ は胞体の和であり、thm-schubert-cw の 1 の閉集合 $F_{k-s,k-s}$ に等しいので部分複体である。$V:=(K^{k-s})^\perp\subset K^\infty$ とすると、$\psi(W):=W\cap V$ は同相 $Y_s\cong\operatorname{Gr}(s,V)$ を与え(逆は $U\mapsto K^{k-s}\oplus U$。直交射影の行列で見れば両方向とも連続)、$(W,v)\mapsto(W,\ \pi(v),\ v-\pi(v))$($\pi$ は $K^{k-s}$ への直交射影)は束の同型 $\gamma^k|_{Y_s}\cong\varepsilon^{k-s}\oplus\psi^*\gamma^s$ である。Whitney の和公式と自明束の性質(Stiefel–Whitney類 の命題「基本性質」、Chern類 の定義「Chern類の公理的定義」)により $x_r(\gamma^k|_{Y_s})=\psi^*x_r(\gamma^s)$ であり、$r>s$ ならこれは $0$ である。
$\rho_r$ 以外の胞体.$\lvert\lambda(\sigma)\rvert=r$、$\sigma\ne\rho_r$ とする。$\lambda(\sigma)$ の $0$ でない部分の個数 $s$ は、$1$ だけからなるのでなければ $r$ より小さい。$\lambda(\sigma)$ の $0$ の部分は $\sigma_i=i$ を意味するので、$\sigma_i=i$($i\le k-s$)であり $e(\sigma)\subset Y_s$ である。$x_r(\gamma^k)$ の $Y_s$ への制限は $0$ なので、制限した余鎖の $e(\sigma)$ での値は $0$ である。
$\rho_r$ の胞体.$Z:=\{W\mid K^{k-r}\subset W\subset K^{k+1}\}$ は $\tau\le\rho_r$ となる胞体の和で、閉集合なので部分複体であり、最高次元の胞体は $e(\rho_r)$ だけである。$W\mapsto W^\perp\cap K^{k+1}$($K^{k+1}$ の中での直交補空間)は、$Z$ から $K^{k+1}\ominus K^{k-r}\cong K^{r+1}$ の直線の空間 $K\mathrm{P}^r$ への同相写像で、$\gamma^k|_Z\oplus L\cong\varepsilon^{k+1}$($L$ はファイバーが $W^\perp\cap K^{k+1}$ の直線束で、$K\mathrm{P}^r$ のトートロジー直線束に対応する)。よって $x(\gamma^k|_Z)=x(L)^{-1}$ である。$K=\mathbb{R}$ では $w(L)=1+a$(Stiefel–Whitney類 の補題「トートロジー直線束」)なので $w_r(\gamma^k|_Z)=a^r$、$K=\mathbb{C}$ では $c(L)=1-h$(Chern類 の定義「Chern類の公理的定義」の後の注意)なので $c_r(\gamma^k|_Z)=h^r$ であり、どちらも $H^{dr}(K\mathrm{P}^r)$ の生成元である。$Z$ の $dr$ 次の胞体余鎖の群は $e(\rho_r)$ 1 つで生成され、そこへの微分は $0$ である($K=\mathbb{C}$ では奇数次元の胞体がなく、$K=\mathbb{R}$ では $H^r(\mathbb{R}\mathrm{P}^r;\mathbb{Z}/2)\ne0$ だから)。したがって生成元は $e(\rho_r)$ で値 $1$($K=\mathbb{C}$ では $\pm1$)の余鎖であり、$x_r(\gamma^k)$ の $e(\rho_r)$ での値もそうである。$\square$
有限の $\operatorname{Gr}(k,K^n)$($n\ge k+1$)でも、部分複体への制限により同じ形である。$k=1$ では $\rho_1=(2)$ で、$w_1(\gamma^1)\in H^1(\mathbb{R}\mathrm{P}^\infty;\mathbb{Z}/2)$ は $1$ 胞体で値 $1$ の余鎖、すなわち生成元である。MS74 は 1 を Problem 7-A(p. 87)、2 を Problem 14-D(p. 171)として挙げている。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $K=\mathbb{R},\mathbb{C}$(thm-schubert-echelon の 3) | $K=\mathbb{Q}$、$\operatorname{Gr}(1,\mathbb{Q}^2)$ の $e(2)$ | 胞体が開球体と同相であること |
| 開いた胞体 $e(\sigma)$ を考えること(thm-schubert-echelon の 3) | $\operatorname{Gr}(1,\mathbb{R}^2)$ の $e(2)$ の閉包 | 閉球体と同相であること |
| 胞体がすべて偶数次元(cor-schubert-count の 2) | $\operatorname{Gr}(1,\mathbb{R}^3)=\mathbb{R}\mathrm{P}^2$ | 整係数ホモロジーが自由で、階数が胞体の個数に等しいこと |
各行は左の列の条件だけを外している。
1 行目:$\operatorname{Gr}(1,\mathbb{Q}^2)$ には $\mathbb{Q}^2\setminus\{0\}$ からの商位相を入れる。thm-schubert-echelon の 1・2 は $\mathbb{Q}$ でも成り立ち、$e(2)=\{[x:1]\mid x\in\mathbb{Q}\}$ は $\mathbb{Q}$ と同相である。$\mathbb{Q}$ は 1 点でも連結でもないので、どの $\mathbb{R}^m$ とも同相でない。
2 行目:$e(2)=\{[x:1]\}$ の閉包は $\operatorname{Gr}(1,\mathbb{R}^2)=\mathbb{R}\mathrm{P}^1$ 全体で、円周と同相である。円周はどの 1 点を除いても連結だが、閉区間は内部の 1 点を除くと連結でないので、閉包は閉球体と同相でない。特性写像 $\Phi_{(2)}$ は閉区間の両端を同じ点 $[1:0]$ に写す。
3 行目:$\mathbb{R}\mathrm{P}^2$ の胞体は $0,1,2$ 次元に 1 つずつあるが、2 胞体の境界写像は $2$ 倍写像で(Hat02 Example 2.42、p. 144)、$H_1(\mathbb{R}\mathrm{P}^2;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}/2$、$H_2=0$ である。
$K=\mathbb{R},\mathbb{C}$ では、Schubert 多様体 $\overline{e(\sigma)}$ は $\bigcup_{\tau\le\sigma}e(\tau)$ に等しく、したがって条件 $\dim(W\cap K^{\sigma_i})\ge i$($i=1,\dots,k$)で定まる閉集合である。$\subset$ は thm-schubert-cw の 1 である。逆に $\tau\le\sigma$ とし、$0<\lvert t\rvert<1$ について $W_t:=\operatorname{span}(e_{\tau_i}+te_{\sigma_i}\mid i=1,\dots,k)$ とおくと、各ベクトルの最後の $0$ でない成分は第 $\sigma_i$ 成分なので、prf-schubert-echelon の十分性の議論により $W_t\in e(\sigma)$ であり、$t\to0$ で $W_t\to W_\tau$ である。$\overline{e(\sigma)}$ は prop-schubert-borel-orbit の群 $B$ の作用(同相写像による)で保たれる閉集合なので、$e(\tau)=B\cdot W_\tau\subset\overline{e(\sigma)}$ である。複素 Grassmann 多様体のコホモロジー環の生成元と関係式、長方形に収まる Young 図形の Schur 多項式による基底、基底どうしの積が Littlewood–Richardson 係数で与えられることは Grassmann多様体のコホモロジー で証明する。完全旗多様体の同じ形の分解は 旗多様体 の定義「Schubert 胞体と Schubert 多様体」である。
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