差分商の方法(difference quotient method)とは、関数の平行移動の差を移動量で割った差分商を弱形式の試験関数に使い、移動量によらない評価と弱コンパクト性から、弱解の高階の弱微分の存在を示す方法である。差分商は離散的な部分積分をみたし、$1< p<\infty$ では差分商の一様な $L^p$ 評価から弱微分の存在が従う。この方法により、$\mathbb R^n$ 上の $-\Delta u+u=f$ の弱解は $f\in L^2$ なら $H^2$ に属し、開集合上の $-\Delta u=f$ の弱解は $f\in L^2_{\mathrm{loc}}$ なら内部で $H^2$ に属する。L. Nirenberg による平行移動の方法とも呼ばれる。
前提知識: 弱微分, Sobolev空間の基本事項, 反射的Banach空間
楕円型方程式の弱解は、はじめは 1 階の弱微分が 2 乗可積分であることしか分からない。2 階の弱微分も 2 乗可積分であることを示すには、未知の 2 階微分を直接扱わず、関数の差分商 $\bigl(u(x+h)-u(x)\bigr)/|h|$ を方程式に代入して、$h$ によらない評価を得る。差分商は普通の関数なので弱形式の試験関数にでき、評価が $h$ によらなければ、弱コンパクト性で $h\to0$ の極限から弱微分が得られる。これを差分商の方法(difference quotient method)といい、L. Nirenberg による平行移動の方法とも呼ばれる。
この記事で示すことは次のとおりである。
関数はすべて実数値とする。$1\le p\le\infty$ の共役指数を $p'$ と書く。$W^{k,p}$ は Sobolev空間の基本事項 の定義「Sobolev空間」に従い、$H^k:=W^{k,2}$ とする。$e_1,\dots,e_n$ を $\mathbb R^n$ の標準基底とする。
$\mathbb R^n$ 上の関数 $v$ と $h\in\mathbb R^n\setminus\{0\}$ について、
$$
D_hv(x):=\frac{v(x+h)-v(x)}{|h|}
$$
を $v$ の $h$ 方向の差分商(difference quotient)という。
$h=te_i$($t>0$)なら $D_hv(x)=\bigl(v(x+te_i)-v(x)\bigr)/t$ は第 $i$ 変数についての差分商であり、$v$ が $C^1$ 級なら $t\to+0$ で $\partial_iv(x)$ に近づく。分母を $|h|$ にしたので、$t<0$ の $h=te_i$ では極限は $-\partial_iv(x)$ になる。
$1\le p\le\infty$、$h\in\mathbb R^n\setminus\{0\}$ とする。
1:$y=x+h$ と変数変換すると $\int v(x+h)w(x)\,dx=\int v(y)w(y-h)\,dy$ なので、
$$
\int(D_hv)w\,dx=\int v(y)\,\frac{w(y-h)-w(y)}{|h|}\,dy=\int v\,D_{-h}w\,dy .
$$
2:$\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^n)$ について、変数変換で $\int v(x+h)\partial_i\varphi(x)\,dx=\int v(y)\,\partial_i\varphi(y-h)\,dy=-\int\partial_iv(y)\,\varphi(y-h)\,dy=-\int\partial_iv(x+h)\varphi(x)\,dx$ である($\varphi(\cdot-h)$ もテスト関数である)。よって $v(\cdot+h)$ の弱微分は $(\partial_iv)(\cdot+h)$ であり、差をとって $|h|$ で割ればよい。
3:弱微分 の定理「平行移動の差による特徴づけ」の 1 ⇒ 3 と、その後の注意($\Omega=\mathbb R^n$ の場合)による。
4:$\eta(x+h)v(x+h)-\eta(x)v(x)=\eta(x+h)\bigl(v(x+h)-v(x)\bigr)+\bigl(\eta(x+h)-\eta(x)\bigr)v(x)$ を $|h|$ で割ればよい。$\square$
1 は、$D_h$ の $L^2$ における随伴作用素が $D_{-h}$ であることを意味する。微分の部分積分 $\int(\partial_iv)w=-\int v\,\partial_iw$ にあたる式で、境界の項が出ないので、試験関数の側へ差分商を移すときに使う。
差分商の方法の要は、次の逆向きの主張である。証明は弱コンパクト性を使う。
$1< p<\infty$、$v\in L^p(\mathbb R^n)$、$1\le i\le n$ とする。定数 $C$ と $t_0>0$ があって、$0< t< t_0$ をみたすすべての $t$ について $\|D_{te_i}v\|_{L^p}\le C$ なら、弱微分 $\partial_iv$ が存在して $L^p(\mathbb R^n)$ に属し、$\|\partial_iv\|_{L^p}\le C$ である。
$1< p<\infty$ なので $L^p(\mathbb R^n)$ は反射的であり(反射的Banach空間 の例「$1< p<\infty$ の $L^p$ 空間」)、有界列は弱収束する部分列をもつ(Eberlein–Šmulianの定理 の系「反射性の点列による特徴づけ」)。そこで $t_m\to+0$ を、$D_{t_me_i}v$ がある $g\in L^p(\mathbb R^n)$ に弱収束するようにとる。
$\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^n)$ とする。prop-dq-basic の 1 から
$$
\int(D_{t_me_i}v)\,\varphi\,dx=\int v\,D_{-t_me_i}\varphi\,dx,\qquad D_{-t_me_i}\varphi(x)=\frac{\varphi(x-t_me_i)-\varphi(x)}{t_m}.
$$
左辺は弱収束により $\int g\varphi$ に収束する。右辺の $D_{-t_me_i}\varphi$ は、平均値の定理と $\partial_i\varphi$ の一様連続性により $-\partial_i\varphi$ に一様に収束し、台は $t_m\le t_0$ なら $\operatorname{supp}\varphi+\overline B(0,t_0)$ に入る。$v$ はこのコンパクト集合の上で可積分なので、右辺は $-\int v\,\partial_i\varphi$ に収束する。よって $\int v\,\partial_i\varphi=-\int g\varphi$ であり、$g$ が $v$ の弱微分 $\partial_iv$ である。
ノルムの評価:$\psi\in L^{p'}$ について $\bigl|\int g\psi\bigr|=\lim_m\bigl|\int(D_{t_me_i}v)\psi\bigr|\le C\|\psi\|_{L^{p'}}$ である。$g\ne0$ なら $\psi:=|g|^{p-2}g$ とおくと $\int g\psi=\|g\|_{L^p}^p$、$\|\psi\|_{L^{p'}}=\|g\|_{L^p}^{p-1}$ なので、$\|g\|_{L^p}\le C$ を得る。$\square$
弱微分 の定理「平行移動の差による特徴づけ」の 2 ⇒ 1 は、同じ結論を双対性(Riesz の表現)で示している。ここでは 1 つの座標方向の、小さい $t>0$ だけの評価から結論を出せる形にした。後の主定理ではこの形を使う。$p=1$ では結論が成り立たない(下の反例の表の 1 行目)。
$1\le p<\infty$、$v\in W^{1,p}(\mathbb R^n)$、$1\le i\le n$ とする。$t\to+0$ のとき $D_{te_i}v\to\partial_iv$ が $L^p(\mathbb R^n)$ で成り立つ。
$g\in L^p(\mathbb R^n)$ と $t>0$ について $A_tg(x):=\int_0^1g(x+ste_i)\,ds$ とおく。$[0,1]$ の上の Hölder の不等式から $|A_tg(x)|^p\le\int_0^1|g(x+ste_i)|^pds$ であり、$x$ について積分して Fubiniの定理 を使うと $\|A_tg\|_{L^p}\le\|g\|_{L^p}$ である。
$v\in C_c^\infty(\mathbb R^n)$ なら、微積分学の基本定理から $D_{te_i}v=A_t(\partial_iv)$ である。両辺は $v$ について線形で、prop-dq-basic の 3 と上の評価により $W^{1,p}(\mathbb R^n)$ から $L^p(\mathbb R^n)$ への有界作用素である。$C_c^\infty(\mathbb R^n)$ は $W^{1,p}(\mathbb R^n)$ で稠密なので(零境界Sobolev空間 の例「全空間」)、すべての $v\in W^{1,p}(\mathbb R^n)$ について $D_{te_i}v=A_t(\partial_iv)$ である。$g:=\partial_iv$ とおくと、同じ Hölder の不等式から
$$
\|D_{te_i}v-g\|_{L^p}^p=\int\Bigl|\int_0^1\bigl(g(x+ste_i)-g(x)\bigr)ds\Bigr|^pdx\le\int_0^1\|g(\cdot+ste_i)-g\|_{L^p}^p\,ds
$$
である。各 $s$ で被積分関数は $t\to+0$ のとき $0$ に収束し(軟化子 の補題「平行移動の連続性」)、$(2\|g\|_{L^p})^p$ で押さえられるので、優収束定理 により右辺は $0$ に収束する。$\square$
$f\in L^2(\mathbb R^n)$ とする。$u\in H^1(\mathbb R^n)$ が方程式 $-\Delta u+u=f$ の弱解であるとは、すべての $\varphi\in H^1(\mathbb R^n)$ について
$$
\int\nabla u\cdot\nabla\varphi\,dx+\int u\varphi\,dx=\int f\varphi\,dx
$$
が成り立つことをいう。以下、この等式を全空間の弱形式と呼ぶ。$C_c^\infty(\mathbb R^n)$ は $H^1(\mathbb R^n)$ で稠密なので、この等式を $\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^n)$ について確かめれば十分である。弱解は Lax–Milgramの定理 によりただ 1 つ存在する。
$f\in L^2(\mathbb R^n)$ とし、$u\in H^1(\mathbb R^n)$ を $-\Delta u+u=f$ の弱解とする。このとき $u\in H^2(\mathbb R^n)$ であり、すべての $1\le i,j\le n$ について
$$
\|\partial_i\partial_ju\|_{L^2}\le\|f\|_{L^2}
$$
である。さらに整数 $m\ge0$ について $f\in H^m(\mathbb R^n)$ なら $u\in H^{m+2}(\mathbb R^n)$ である(Bre11 Theorem 9.25 の証明の A、pp. 299–301)。
差分商の評価. $h\ne0$ を固定し、$w:=D_hu$ とおく。prop-dq-basic の 2 により $w\in H^1(\mathbb R^n)$、$\nabla w=D_h\nabla u$ であり、同じく $D_{-h}w\in H^1(\mathbb R^n)$ である。全空間の弱形式に $\varphi:=D_{-h}w$ を代入する。prop-dq-basic の 2 と 1 を(各成分について $p=2$ で)使うと
$$
\int\nabla u\cdot\nabla(D_{-h}w)=\int\nabla u\cdot D_{-h}(\nabla w)=\int(D_h\nabla u)\cdot\nabla w=\|\nabla w\|_{L^2}^2,
\qquad
\int u\,D_{-h}w=\int(D_hu)\,w=\|w\|_{L^2}^2
$$
である。右辺は Cauchy–Schwarz の不等式と prop-dq-basic の 3 から
$$
\int f\,D_{-h}w\le\|f\|_{L^2}\|D_{-h}w\|_{L^2}\le\|f\|_{L^2}\|\nabla w\|_{L^2}
$$
である。よって $\|\nabla w\|_{L^2}^2+\|w\|_{L^2}^2\le\|f\|_{L^2}\|\nabla w\|_{L^2}$ であり、$\|\nabla w\|_{L^2}\le\|f\|_{L^2}$ を得る($\nabla w=0$ なら明らか)。
2 階の弱微分. $1\le j\le n$ を固定する。$\nabla w=D_h\nabla u$ なので、すべての $h\ne0$ について $\|D_h(\partial_ju)\|_{L^2}\le\|\nabla w\|_{L^2}\le\|f\|_{L^2}$ である。$h=te_i$($t>0$)として lem-dq-converse($p=2$)を $v=\partial_ju\in L^2$ に当てると、$\partial_i\partial_ju$ が存在して $\|\partial_i\partial_ju\|_{L^2}\le\|f\|_{L^2}$ である。よって $u\in H^2(\mathbb R^n)$ である。
高階. $m$ についての帰納法で示す。$m=0$ はいま示した。$f\in H^{m+1}$ とし、$m$ のときの主張を仮定する。$u\in H^{m+2}\subset H^2$ なので、$v:=\partial_ku\in H^1$ である。$\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^n)$ について、弱微分の定義を 2 回使うと
$$
\int\nabla v\cdot\nabla\varphi+\int v\varphi=-\int\nabla u\cdot\nabla(\partial_k\varphi)-\int u\,\partial_k\varphi=-\int f\,\partial_k\varphi=\int(\partial_kf)\varphi
$$
である(真ん中の等号は全空間の弱形式に $\partial_k\varphi$ を代入した)。よって $v$ は右辺 $\partial_kf\in H^m$ の弱解で、帰納法の仮定から $v\in H^{m+2}$ である。すべての $k$ について $\partial_ku\in H^{m+2}$ なので $u\in H^{m+3}$ である。$\square$
証明の流れは、方程式に $D_{-h}D_hu$ を代入して「$D_hu$ の $H^1$ ノルムが $h$ によらず有界」を得て、lem-dq-converse で $\nabla u$ の弱微分に変える、というものである。$D_{-h}D_hu$ は 2 階の差分商で、形式的には $-\partial^2u$ を $u$ と掛けて積分することにあたる。2 階の弱微分が存在するかどうか分からない段階では $\int\nabla u\cdot\nabla(\partial^2u)$ は書けないが、差分商なら書ける。
$\mathbb R^n$ では Fourier 変換でも同じ結論が出る。弱微分 の定理「Fourier 変換による弱微分の特徴づけ」により全空間の弱形式は $(1+|\xi|^2)\widehat u=\widehat f$ と同値で、$|\xi_i\xi_j|\le1+|\xi|^2$ から $\|\partial_i\partial_ju\|_{L^2}\le\|f\|_{L^2}$ である。差分商の方法の利点は、Fourier 変換が使えない状況、すなわち領域の上や係数が定数でない方程式にそのまま移せることにある。次の節で、開集合の内部の場合を扱う。
$\Omega\subset\mathbb R^n$ を開集合とする。$u\in L^2_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ で弱勾配が存在して $L^2_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ に属するものの全体を $H^1_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ と書く。$H^m_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ も同様に、$m$ 階までの弱微分が $L^2_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ に属する関数の全体とする。開集合 $\omega$ の閉包がコンパクトで $\Omega$ に含まれるとき $\omega\Subset\Omega$ と書く。
$f\in L^2_{\mathrm{loc}}(\Omega)$、$u\in H^1_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ とし、すべての $\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ について
$$
\int_\Omega\nabla u\cdot\nabla\varphi\,dx=\int_\Omega f\varphi\,dx
$$
が成り立つとする($-\Delta u=f$ の弱解)。このとき $u\in H^2_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ である。さらに $m\ge0$ について $f\in H^m_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ なら $u\in H^{m+2}_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ である($u\in H^1(\Omega)$、$f\in H^m(\Omega)$ の場合が Bre11 Remark 25、p. 306 にある)。
$\eta\in C_c^\infty(\Omega)$ を固定し、$K:=\operatorname{supp}\eta$ とする。$K\subset\Omega'$ で閉包が $\Omega$ のコンパクト部分集合となる開集合 $\Omega'$ をとると、$u\in H^1(\Omega')$ である。$\Omega'$ の上の $\eta u$ を $\Omega'$ の外で $0$ と延ばした関数を $w$ とすると、$w\in H^1(\mathbb R^n)$ で $\nabla w=\eta\nabla u+u\nabla\eta$ である(Sobolev空間の基本事項 の命題「滑らかな係数との積」と、零境界Sobolev空間 の補題「台が $\Omega$ の中でコンパクトな関数」)。$w$ が全空間の方程式をみたすことを確かめる。$\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^n)$ について $\eta\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ なので、仮定の等式から
$$
\int\eta\,\nabla u\cdot\nabla\varphi=\int\nabla u\cdot\nabla(\eta\varphi)-\int(\nabla u\cdot\nabla\eta)\varphi=\int(\eta f-\nabla u\cdot\nabla\eta)\varphi .
$$
また $u\,\partial_i\eta$ は台が $K$ に入る $H^1$ の関数なので、弱微分の定義($\varphi$ を、$K$ の近傍で $1$ となる $\Omega$ のテスト関数との積に替えて使う)から
$$
\int u\,\nabla\eta\cdot\nabla\varphi=\sum_i\int(u\,\partial_i\eta)\,\partial_i\varphi=-\int(\nabla u\cdot\nabla\eta+u\,\Delta\eta)\varphi .
$$
足し合わせると、$w$ はすべての $\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^n)$ について全空間の弱形式を
$$
g:=\eta f-2\nabla u\cdot\nabla\eta-u\,\Delta\eta+\eta u
$$
を右辺としてみたす。$g$ は台が $K$ に入り $L^2(\mathbb R^n)$ に属するので、thm-dq-whole-space により $w\in H^2(\mathbb R^n)$ である。$\omega\Subset\Omega$ について、$\overline\omega$ の近傍で $\eta=1$ となるようにとれば、$\omega$ の上で $u=w$ なので $u\in H^2(\omega)$ である。
高階は帰納法による。$f\in H^{m+1}_{\mathrm{loc}}$ とし、$m$ のときの主張を仮定すると $u\in H^{m+2}_{\mathrm{loc}}\subset H^2_{\mathrm{loc}}$ である。$v:=\partial_ku\in H^1_{\mathrm{loc}}$ は、$\varphi\in C_c^\infty(\Omega)$ について $\int\nabla v\cdot\nabla\varphi=-\int\nabla u\cdot\nabla(\partial_k\varphi)=-\int f\,\partial_k\varphi=\int(\partial_kf)\varphi$ をみたす。$\partial_kf\in H^m_{\mathrm{loc}}$ なので帰納法の仮定から $v\in H^{m+2}_{\mathrm{loc}}$ であり、$u\in H^{m+3}_{\mathrm{loc}}$ である。$\square$
切り落とし $\eta$ を掛けると、方程式に $\nabla u$ と $u$ を含む低階の項が加わる。$u\in H^1_{\mathrm{loc}}$ なのでそれらは $L^2$ に入り、全空間の結果がそのまま使える。$f\in C^\infty(\Omega)$ なら、すべての $m$ について $u\in H^m_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ であり、Sobolevの埋め込み定理 の定理「高階の Sobolev 埋め込み」を $\eta u$ とその弱微分に当てて、$u$ が $C^\infty$ 級の代表をもつことが分かる(Bre11 Remark 25、pp. 306–307 に主張がある。楕円正則性 も参照。この記事では細部を証明しない)。$u|_\omega$ の滑らかさは $\omega$ の近くの $f$ だけで決まり、$\omega$ から離れたところで $f$ が滑らかでなくてもよい。
係数が滑らかな発散形の作用素 $-\sum_{i,j}\partial_i(a_{ij}\partial_ju)$ でも、prop-dq-basic の 4 で係数の差分商を分けて同じ評価が得られる。Fourier 変換が使えないこの場合が、差分商の方法の主な使い所である(Bre11 Remark 24、p. 299 に主張がある。この記事では証明しない)。
境界までの正則性では、境界に平行な方向 $h$ の差分商だけを使う。半空間 $\mathbb R^n_+=\{x_n>0\}$ では、境界に平行な平行移動は $C_c^\infty(\mathbb R^n_+)$ を保つので $H^1_0(\mathbb R^n_+)$ を保ち、$v\in H^1(\mathbb R^n_+)$ について $\|D_hv\|_{L^2(\mathbb R^n_+)}\le\|\nabla v\|_{L^2(\mathbb R^n_+)}$ が成り立つ(Bre11 Lemma 9.6、p. 301)。これで $j\le n$、$k\le n-1$ の $\partial_j\partial_ku$ が得られ、残る $\partial_n^2u$ は方程式 $\partial_n^2u=u-f-\sum_{k< n}\partial_k^2u$ から得られる。こうして、$C^2$ 級の境界をもつ開集合(境界が有界なもの)または半空間 $\Omega$ の上で、$u\in H^1_0(\Omega)$ が $-\Delta u+u=f\in L^2(\Omega)$ の弱解なら $u\in H^2(\Omega)$ である(Bre11 Theorem 9.25、p. 298。証明は pp. 299–306。この記事では証明しない)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $p>1$(lem-dq-converse) | $n=1$、$v=\mathbf 1_{(0,1)}$、$p=1$ | 差分商が有界なら $\partial_iv\in L^p$ |
| $p<\infty$(prop-dq-convergence) | $n=1$、$v(x)=\max(1-\lvert x\rvert,0)$、$p=\infty$ | $D_{te_1}v\to v'$($L^\infty$) |
| 右辺が $L^2_{\mathrm{loc}}$(cor-dq-interior) | $n=1$、$\Omega=(-1,1)$、$u(x)=\lvert x\rvert$ | $u\in H^2_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ |
1 行目:$t>0$ について $v(x+t)-v(x)$ は長さ $t$ の 2 つの区間の上で $\pm1$、他では $0$ なので、$\|D_tv\|_{L^1}=2$ は $t$ によらない。しかし $v$ は跳躍関数で、弱微分は $L^1(\mathbb R)$ に存在しない(Sobolev空間の基本事項 の例「反例:跳躍関数」と同じ議論)。
2 行目:$v\in W^{1,\infty}(\mathbb R)$ で、$-1< x< 0$ では $v'(x)=1$ である。$-t< x< 0$ では $D_tv(x)=\bigl(|x|-|x+t|\bigr)/t=-(2x+t)/t$ なので、$v'(x)-D_tv(x)=2(1+x/t)$ であり、$x\to-0$ で $2$ に近づく。よって $\|D_tv-v'\|_{L^\infty}\ge2$ がすべての $0< t<1$ で成り立つ。
3 行目:$u'=\operatorname{sgn}(x)$ なので $u\in H^1(-1,1)$ で、$\varphi\in C_c^\infty(-1,1)$ について $\int u'\varphi'=\int_0^1\varphi'-\int_{-1}^0\varphi'=-2\varphi(0)$ である。cor-dq-interior の仮定の等式をみたす $f\in L^2_{\mathrm{loc}}$ があったとすると、$0$ の近くで $0$ になる $\varphi$ を使って $f=0$ がほとんど至る所分かり、すべての $\varphi$ で $\varphi(0)=0$ となって矛盾する。右辺は $-2\delta_0$ にあたる。$u'=\operatorname{sgn}$ は跳躍関数なので $u\notin H^2_{\mathrm{loc}}(-1,1)$ である。
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