Lagrange補間(高校数学)

同義語:多項式補間(高校数学)補間の誤差(高校数学)Lagrange interpolation (high school mathematics)

概要

Lagrange補間(Lagrange interpolation)とは、相異なる $n+1$ 個の点 $x_0,\dots,x_n$ で関数 $f$ と値が一致するただ 1 つの $n$ 次以下の多項式 $P$ で $f$ を近似することである。$f$ が $n+1$ 回微分可能なら、各 $x$ に対し、$x$ と $x_0,\dots,x_n$ を含む最小の閉区間の中の $\xi$ で $f(x)-P(x)=\frac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}(x-x_0)\cdots(x-x_n)$ となる。$\sin x$ のように導関数がすべて $1$ 以下なら $[-1,1]$ で点を増やすと誤差は $0$ に近づくが、$\frac{1}{1+25x^2}$ を $[-1,1]$ の等間隔の点で補間すると、点を増やしても端で振動し誤差が減らない(Runge の現象)。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 恒等式と未定係数法, Rolleの定理, 関数の近似とテイラー展開

高校での出発点:点を通る多項式で値を見積もる

3 点を通る 2 次関数は、係数を未知数にして連立方程式を解けば求まる。恒等式と未定係数法 の命題「Lagrange の補間公式」は、$n+1$ 個の点を通る $n$ 次以下の多項式がただ 1 つあり、式で書けることを示している。関数の値がいくつかの点でしか分からないとき、その点を通る多項式を作れば、間の点での値を見積もれる。これを 補間 という。
では、その見積もりはどれくらい正しいのだろうか。値の分かっている関数で試す。

$2^x$ を 3 点を通る 2 次式で見積もる

$f(x)=2^x$ の $x=0,1,2$ での値は $1,2,4$ である。この 3 点を通る 2 次以下の多項式 $P(x)=ax^2+bx+c$ を求める。$P(0)=c=1$、$P(1)=a+b+1=2$、$P(2)=4a+2b+1=4$ から $a+b=1$、$4a+2b=3$ で、$a=b=\dfrac12$ である。よって
$$ P(x)=\frac{x^2+x+2}2 $$
である。
(1) 点の間の $x=1.5$ では $P(1.5)=\dfrac{2.25+1.5+2}2=2.875$ で、真の値 $2^{1.5}=2\sqrt2=2.8284\ldots$ との差(真の値 $-$ 近似値)は $-0.0466\ldots$ である。
(2) 点の外の $x=3$ では $P(3)=\dfrac{9+3+2}2=7$ で、真の値 $8$ との差は $1$ である。$x=4$ では $P(4)=11$ で、真の値 $16$ との差は $5$ になる。

y=2^x と、x=0,1,2 の 3 点を通る 2 次式のグラフを重ね、点のある範囲の中の x=1.5 では差が小さく、範囲の外の x=3 では差が大きいことを見る図 y=2^x と、x=0,1,2 の 3 点を通る 2 次式のグラフを重ね、点のある範囲の中の x=1.5 では差が小さく、範囲の外の x=3 では差が大きいことを見る図
図 1 のとおり、点のある範囲の中では 2 つのグラフはほとんど重なるが、外に出ると離れていく。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 補間の誤差は、どんな式で書けるか。真の値を知らなくても大きさを保証できるか。→ thm-lgi-error
  2. 点を増やせば、誤差はいつでも小さくなるか。→ ex-lgi-runge
  3. 誤差の式が使えないのはどんなときか。→ ex-lgi-cx-abs
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    3 点を通る 2 次関数補間多項式Lagrange 補間
    接線で見積もる(1 点で値と傾きを合わせる)補間の点が 1 点に集まった場合Taylor 多項式
    真の値と近似値の差補間の誤差の式補間の剰余項
    点のとり方の工夫Chebyshev 点最良近似、Chebyshev 多項式

補間多項式

以下、$n\ge0$ とし、$x_0< x_1<\cdots< x_n$ を $n+1$ 個の相異なる実数とする。これらを 補間点 という。

補間多項式

関数 $f$ が補間点で定義されているとき、$P(x_i)=f(x_i)$($i=0,1,\dots,n$)を満たす $n$ 次以下の多項式 $P$ を、$f$ の 補間多項式 という。$P$ はただ 1 つあり、
$$ P(x)=\sum_{i=0}^nf(x_i)L_i(x),\qquad L_i(x)=\prod_{j\ne i}\frac{x-x_j}{x_i-x_j} $$
と書ける(Lagrange の補間公式)。ここで $\prod_{j\ne i}$ は、$j$ を $0,1,\dots,n$ のうち $i$ 以外の $n$ 個の値に動かしてできる分数をすべて掛け合わせることを表す。

$L_i$ は $x_i$ で $1$、ほかの補間点で $0$ になる $n$ 次式で、そのことから $P(x_i)=f(x_i)$ が分かる。$P$ がただ 1 つであることは、$n$ 次以下の多項式が $n+1$ 個の点で一致すれば同じ多項式になることから出る。証明は 恒等式と未定係数法 の命題「Lagrange の補間公式」にある。

$\sin x$ を 3 点で補間する

$f(x)=\sin x$、補間点を $x_0=0$、$x_1=\dfrac\pi6$、$x_2=\dfrac\pi3$ とし、$x=\dfrac\pi4$ での値を見積もる。$\dfrac\pi4$ での $L_i$ の値は
$$ L_0\left(\frac\pi4\right)=\frac{\left(\frac\pi4-\frac\pi6\right)\left(\frac\pi4-\frac\pi3\right)}{\left(0-\frac\pi6\right)\left(0-\frac\pi3\right)}=\frac{\frac\pi{12}\cdot\left(-\frac\pi{12}\right)}{\frac{\pi^2}{18}}=-\frac18 $$
である。同じように計算すると $L_1\left(\dfrac\pi4\right)=\dfrac34$、$L_2\left(\dfrac\pi4\right)=\dfrac38$ である(3 つの和は $1$ になる)。$\sin0=0$、$\sin\dfrac\pi6=\dfrac12$、$\sin\dfrac\pi3=\dfrac{\sqrt3}2$ なので
$$ P\left(\frac\pi4\right)=0\cdot\left(-\frac18\right)+\frac12\cdot\frac34+\frac{\sqrt3}2\cdot\frac38=\frac38+\frac{3\sqrt3}{16}=0.69976\ldots $$
である。真の値は $\sin\dfrac\pi4=\dfrac{\sqrt2}2=0.70711\ldots$ で、差は $0.00735\ldots$ である。

$L_i$ の和がいつも $1$ になるのは、定数関数 $f(x)=1$ の補間多項式が $1$ そのものだからである($\sum_iL_i(x)=\sum_i1\cdot L_i(x)$ は、補間点で $1$ をとる $n$ 次以下の多項式で、ただ 1 つであることから $1$ に等しい)。

主定理:補間の誤差の式

誤差の式を示すために、Rolle の定理をくり返し使う。Rolle の定理は「$g$ が閉区間 $[\alpha,\beta]$ で連続、開区間 $(\alpha,\beta)$ で微分可能で $g(\alpha)=g(\beta)$ なら、$g'(c)=0$ となる $c$ が $\alpha< c<\beta$ の範囲にある」というものである(Rolleの定理。高校の言葉での証明は 平均値の定理による差の評価 の定理「Rolle の定理」)。

零点が多いと高階導関数にも零点がある

$m\ge1$ とし、$g$ は区間 $I$ で $m$ 回微分可能とする。$g$ が $I$ の中に $m+1$ 個の相異なる零点 $t_0< t_1<\cdots< t_m$ をもつなら、$g^{(m)}(\xi)=0$ となる $\xi$ が $t_0<\xi< t_m$ の範囲にある。

$m$ についての帰納法

段 1($m=1$)。$g$ は $I$ で微分可能なので、$[t_0,t_1]$ で連続、$(t_0,t_1)$ で微分可能である。$g(t_0)=g(t_1)=0$ なので、Rolle の定理により $g'(\xi)=0$ となる $\xi$ が $t_0<\xi< t_1$ にある。
段 2($m-1$ から $m$ へ、$m\ge2$)。$m-1$ のときの主張が正しいとする。$k=1,2,\dots,m$ のそれぞれについて、$[t_{k-1},t_k]$ で Rolle の定理を使うと、$g'(s_k)=0$ となる $s_k$ が $t_{k-1}< s_k< t_k$ にある。区間 $(t_{k-1},t_k)$ どうしは重ならないので、$s_1< s_2<\cdots< s_m$ は $m$ 個の相異なる $g'$ の零点である。$g'$ は $I$ で $m-1$ 回微分可能なので、$m-1$ のときの主張を $g'$ に使うと、$(g')^{(m-1)}=g^{(m)}$ の零点 $\xi$ が $s_1<\xi< s_m$ にある。$t_0< s_1$、$s_m< t_m$ なので $t_0<\xi< t_m$ である。$\square$

$m=3$ なら、4 つの零点の間に $g'$ の零点が 3 つ、その間に $g''$ の零点が 2 つ、その間に $g'''$ の零点が 1 つある。
補間点をすべて掛けた積を
$$ w(x)=(x-x_0)(x-x_1)\cdots(x-x_n)=\prod_{i=0}^n(x-x_i) $$
と書く。$w$ は $x^{n+1}$ の係数が $1$ の $n+1$ 次式で、補間点で $0$ になる。

補間の誤差の式

$f$ は、補間点 $x_0< x_1<\cdots< x_n$ を含む区間 $I$ で $n+1$ 回微分可能とし、$P$ を $f$ の補間多項式とする。$I$ の各点 $x$ に対し、$x$ と $x_0,\dots,x_n$ をすべて含む最小の閉区間の中に
$$ f(x)-P(x)=\frac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}\,w(x) $$
を満たす $\xi$ がある。

誤差を 1 つの数に閉じこめて Rolle の定理を使う

方針:$f(x)-P(x)=Kw(x)$ となる数 $K$ を決め、$f-P-Kw$ に lem-lgi-rolle を使って $K$ を $f^{(n+1)}$ で表す。$J$ を $x$ と $x_0,\dots,x_n$ をすべて含む最小の閉区間とする。
段 1($x$ が補間点のとき)。$x=x_i$ なら $f(x_i)=P(x_i)$、$w(x_i)=0$ なので両辺とも $0$ で、$\xi$ は $J$ のどの点でもよい。
段 2($K$ を決める)。以下、$x$ は補間点でないとする。$w(x)\ne0$ なので
$$ K=\frac{f(x)-P(x)}{w(x)} $$
とおける。$t$ の関数 $g(t)=f(t)-P(t)-Kw(t)$ を考える。
段 3($g$ の零点を数える)。補間点では $f(x_i)=P(x_i)$、$w(x_i)=0$ なので $g(x_i)=0$ である。また $g(x)=f(x)-P(x)-Kw(x)=0$ である($K$ の決め方)。よって $g$ は $J$ の中に $n+2$ 個の相異なる零点 $x_0,\dots,x_n,x$ をもつ。
段 4(Rolle の定理をくり返す)。$P$ と $w$ は多項式なので、$g$ は $I$ で $n+1$ 回微分可能である。lem-lgi-rolle を $m=n+1$ で使うと、$g^{(n+1)}(\xi)=0$ となる $\xi$ が $J$ の中にある($n+2$ 個の零点の最小のものと最大のものの間にある)。
段 5($g^{(n+1)}$ を計算する)。$P$ は $n$ 次以下なので $P^{(n+1)}=0$ である。$w$ は $x^{n+1}$ の係数が $1$ の $n+1$ 次式なので、$n+1$ 回微分すると、$t^{n+1}$ の項から $(n+1)!$ が残り、次数の低い項は消えて、$w^{(n+1)}=(n+1)!$ である。よって
$$ 0=g^{(n+1)}(\xi)=f^{(n+1)}(\xi)-0-K\cdot(n+1)! $$
で、$K=\dfrac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}$ である。段 2 の $K$ の式に戻すと $f(x)-P(x)=Kw(x)=\dfrac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}w(x)$ である。$\square$

これが問い 1 の答えである。誤差は「$f$ の $n+1$ 階導関数の大きさ」と「$x$ から補間点までの距離の積 $\lvert w(x)\rvert$」の積で決まる。$\xi$ の位置は分からないが、$f^{(n+1)}$ の大きさを押さえれば上界が得られる。

補間の誤差の上界

thm-lgi-error の仮定のもとで、$J$ の上で $\lvert f^{(n+1)}\rvert\le M$ ならば
$$ \lvert f(x)-P(x)\rvert\le\frac{M}{(n+1)!}\,\lvert w(x)\rvert $$
である。

誤差の式で確かめる
  1. ex-lgi-sin。$n=2$ で $f'''(t)=-\cos t$ である。$x=\dfrac\pi4$ では
    $$ w\left(\frac\pi4\right)=\frac\pi4\left(\frac\pi4-\frac\pi6\right)\left(\frac\pi4-\frac\pi3\right)=\frac\pi4\cdot\frac\pi{12}\cdot\left(-\frac\pi{12}\right)=-\frac{\pi^3}{576}=-0.053830\ldots $$
    である。$J=\left[0,\dfrac\pi3\right]$ で $\dfrac12\le\cos\xi\le1$ なので、thm-lgi-error により
    $$ f\left(\frac\pi4\right)-P\left(\frac\pi4\right)=\frac{-\cos\xi}{6}\cdot\left(-\frac{\pi^3}{576}\right)=\frac{\pi^3}{3456}\cos\xi $$
    は $\dfrac{\pi^3}{6912}=0.00449$ 以上 $\dfrac{\pi^3}{3456}=0.00897$ 以下である。実際の差 $0.00735$ はこの範囲にある。真の値を知らなくても、補間の値が小さめであることと、差の範囲が分かる。
  2. ex-lgi-start。$f(x)=2^x$ では $f'''(t)=(\log2)^3\,2^t$($\log$ は自然対数、$(\log2)^3=0.3330\ldots$)である。$x=1.5$ では $w(1.5)=1.5\times0.5\times(-0.5)=-0.375$、$J=[0,2]$ で $1\le2^\xi\le4$ なので、差は $-\dfrac{0.375\times0.3330\ldots\times4}{6}=-0.0833$ 以上 $-\dfrac{0.375\times0.3330\ldots}{6}=-0.0208$ 以下である。実際の差 $-0.0466$ はこの範囲にある。$x=3$ では $w(3)=3\times2\times1=6$、$J=[0,3]$ で $1\le2^\xi\le8$ なので、差は $0.333$ 以上 $2.66$ 以下で、実際の差 $1$ はこの範囲にある。

$n=0$ のとき、補間多項式は定数 $f(x_0)$ で、thm-lgi-error は $f(x)-f(x_0)=f'(\xi)(x-x_0)$、つまり平均値の定理そのものである。また、補間点をすべて 1 点 $a$ に近づけると、補間多項式は $a$ での Taylor 多項式に近づき、誤差の式は 関数の近似とテイラー展開 の定理「Lagrange の形の剰余項」$\dfrac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}(x-a)^{n+1}$ と同じ形になる(この記事では、近づけたときの極限の議論はしない)。

点を増やすと誤差は小さくなるか

補間点を増やすと、$(n+1)!$ は急速に大きくなるので、誤差は小さくなりそうに見える。導関数がそろって小さい関数では、実際にそうなる。

導関数がすべて $1$ 以下の関数

$f(x)=\sin x$ を区間 $[-1,1]$ の中の $n+1$ 個の補間点で補間する。$\sin$ の導関数は $\pm\sin x$、$\pm\cos x$ のどれかなので、$\lvert f^{(n+1)}\rvert\le1$ である。$-1\le x\le1$ と補間点 $x_i$ について $\lvert x-x_i\rvert\le2$ なので、$\lvert w(x)\rvert\le2^{n+1}$ である。cor-lgi-bound により、補間点をどう選んでも
$$ \lvert\sin x-P(x)\rvert\le\frac{2^{n+1}}{(n+1)!}\qquad(-1\le x\le1) $$
である。右辺は $n=5$ で $\dfrac{64}{720}=0.089$、$n=10$ で $5.1\times10^{-5}$ で、$n\to\infty$ で $0$ に近づく($k\ge4$ では $\dfrac{2^{k+1}}{(k+1)!}$ は前の項の $\dfrac2{k+1}\le\dfrac25$ 倍になる)。等間隔の点で実際に補間すると、$[-1,1]$ での最大誤差は $n=2$ で $0.060$、$n=5$ で $1.2\times10^{-5}$、$n=10$ で $2.1\times10^{-10}$ である(数値計算)。

ところが、グラフの形がおとなしい関数でも、等間隔に点を増やすと誤差がかえって大きくなることがある。

Runge の現象

$f(x)=\dfrac1{1+25x^2}$ を、$[-1,1]$ を $n$ 等分した $n+1$ 個の点 $x_i=-1+\dfrac{2i}n$ で補間する。$[-1,1]$ での最大誤差 $\max\lvert f(x)-P(x)\rvert$ を数値計算で求めると次のようになる。

$n$$2$$5$$10$$15$$20$
最大誤差$0.646$$0.433$$1.92$$2.11$$59.8$
最大になる $x$$\pm0.405$$0$$\pm0.940$$\pm0.963$$\pm0.975$

$n=2$ から $n=5$ では誤差は減るが、$n=10$、$15$、$20$ と点を増やすと誤差は増えていく。図 2 のとおり、補間多項式は区間の中央ではよく合うが、両端の近くで大きく振動する。等間隔の点を増やしても補間が関数に近づかないこの現象を、Runge の現象 という。

1/(1+25x^2) のグラフと、等間隔の 6 点・11 点・16 点で補間した多項式を重ね、点を増やすほど区間の両端で多項式が大きく振動することを見る図 1/(1+25x^2) のグラフと、等間隔の 6 点・11 点・16 点で補間した多項式を重ね、点を増やすほど区間の両端で多項式が大きく振動することを見る図
thm-lgi-error は、この関数でも正しい。誤差の式の 2 つの因子を見ると、なぜ点を増やしても良くならないかが分かる。
1 つ目の因子は $\dfrac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!}$ である。$x=0$ での偶数階の導関数を計算すると
$$ f''(0)=-50,\qquad f^{(4)}(0)=15000,\qquad f^{(6)}(0)=-11250000,\qquad f^{(8)}(0)=15750000000 $$
で、どれも $2k$ 階の値が $(-1)^k(2k)!\cdot25^k$ に等しい($k=1,2,3,4$ で記号計算により確かめた)。つまりこの範囲では $\dfrac{\lvert f^{(2k)}(0)\rvert}{(2k)!}=25^k=5^{2k}$ で、階数が 2 上がるごとに $25$ 倍になる。$(n+1)!$ で割っても、1 つ目の因子の大きさの最大値は小さくならず、たとえば $n+1=8$ では $25^4=390625$ 以上になる。
2 つ目の因子は $w(x)$ である。図 3 は、11 個の補間点での $w(x)$ のグラフである。等間隔の点では、$w(x)$ は区間の中央では小さいが、両端の近くで大きい。誤差が大きくなるのが両端であることと合っている。
11 個の補間点での w(x) のグラフを、等間隔の点と Chebyshev 点で比べ、等間隔では両端近くで w(x) が大きく、Chebyshev 点では全体に同じ高さの小さな波になることを見る図 11 個の補間点での w(x) のグラフを、等間隔の点と Chebyshev 点で比べ、等間隔では両端近くで w(x) が大きく、Chebyshev 点では全体に同じ高さの小さな波になることを見る図
図 3 の緑の線は、補間点を両端に寄せて
$$ x_i=\cos\frac{(2i+1)\pi}{2(n+1)}\qquad(i=0,1,\dots,n) $$
とした場合である。この点を Chebyshev 点 という(半円の周を $n+1$ 等分した弧の中点を、直径に下ろした足にあたる)。$w(x)$ の最大値は、$n=10$ で等間隔の $8.5\times10^{-3}$ から $9.8\times10^{-4}$ に下がる。

$n$$5$$10$$15$$20$
等間隔の最大誤差$0.433$$1.92$$2.11$$59.8$
Chebyshev 点の最大誤差$0.556$$0.109$$0.0831$$0.0153$
等間隔の $\max\lvert w\rvert$$6.9\times10^{-2}$$8.5\times10^{-3}$$1.3\times10^{-3}$$2.3\times10^{-4}$
Chebyshev 点の $\max\lvert w\rvert$$3.1\times10^{-2}$$9.8\times10^{-4}$$3.1\times10^{-5}$$9.5\times10^{-7}$

Chebyshev 点で補間すると、点を増やすにつれて最大誤差が小さくなっていく(図 4。数値計算)。ただし $n=5$ では等間隔の方が小さく、Chebyshev 点がいつでも良いわけではない。表の $\max\lvert w\rvert$ は、どれも数値計算で求めたものである。
1/(1+25x^2) のグラフと、Chebyshev 点 11 個・16 個で補間した多項式を重ね、両端の振動が起こらず、多項式が関数によく沿うことを見る図 1/(1+25x^2) のグラフと、Chebyshev 点 11 個・16 個で補間した多項式を重ね、両端の振動が起こらず、多項式が関数によく沿うことを見る図
これが問い 2 の答えである。点を増やせば良くなるとは限らない。$f^{(n+1)}$ が $(n+1)!$ より速く大きくなる関数では、誤差の式の上界は小さくならない。ただし、上界が大きいことは、それだけでは実際の誤差が大きいことを示さない(導関数が速く大きくなっても、等間隔の補間がうまくいく関数もある)。Runge の関数で誤差が大きくなることは、上の表の数値計算で確かめたことであり、この記事では証明しない。

例と反例

誤差の式と補間による見積もりには、次の前提がある。1 つを外すと崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
$f$ が $n+1$ 回微分可能$\lvert x\rvert$ を $-1,0,1$ で補間誤差の式 thm-lgi-error
$f^{(n+1)}$ が $(n+1)!$ に比べて大きくならない$\dfrac1{1+25x^2}$ を等間隔の点で補間(ex-lgi-runge)点を増やすと誤差が $0$ に近づく
$x$ が補間点の範囲の中にある$2^x$ を $0,1,2$ で補間して $x=4$誤差が小さい
反例:微分できない点がある

$f(x)=\lvert x\rvert$ を補間点 $-1,0,1$ で補間する($n=2$)。値は $1,0,1$ なので、補間多項式は $P(x)=x^2$ である($x=-1,0,1$ で $1,0,1$ になる 2 次以下の多項式はこれだけ)。$x=\dfrac12$ では
$$ f\left(\frac12\right)-P\left(\frac12\right)=\frac12-\frac14=\frac14 $$
である。
もし thm-lgi-error が使えたとすると、差は $\dfrac{f'''(\xi)}6w\left(\dfrac12\right)$ と書けるはずである。ところが $\lvert x\rvert$ は、$x>0$ では $x$、$x<0$ では $-x$ で、どちらでも $f'''=0$ である。$f'''(\xi)$ が存在するなら $0$ なので、差は $0$ になるはずだが、実際は $\dfrac14$ である。食い違いの原因は、$\lvert x\rvert$ が $x=0$ で微分できず、定理の仮定「$J=[-1,1]$ で 3 回微分可能」が成り立たないことである。
点を増やしても良くならない。等間隔の $n+1$ 点で補間したときの $[-1,1]$ での最大誤差は、$n=2$ で $0.25$、$n=4$ で $0.147$、$n=10$ で $0.664$、$n=20$ で $95.2$ である(数値計算。図 5)。

y=|x| と、等間隔の 3 点・11 点で補間した多項式を重ね、3 点では放物線 y=x^2 になり、11 点では両端の近くで大きく外れることを見る図 y=|x| と、等間隔の 3 点・11 点で補間した多項式を重ね、3 点では放物線 y=x^2 になり、11 点では両端の近くで大きく外れることを見る図

反例:補間点の外で使う

ex-lgi-start の $P(x)=\dfrac{x^2+x+2}2$ を $x=4$ で使うと $P(4)=11$ で、真の値 $16$ との差は $5$ になる。thm-lgi-error は $x=4$ でも正しく、$J=[0,4]$ で差は $\dfrac{(\log2)^3\,2^\xi}6\cdot w(4)$、$w(4)=4\cdot3\cdot2=24$ である。点の範囲の中の $\lvert w(1.5)\rvert=0.375$ と比べて、$\lvert w(4)\rvert$ は 64 倍大きい。補間点から離れるほど $\lvert w(x)\rvert$ は急速に大きくなるので、範囲の外での見積もり(外挿)は当てにならない。

大学数学で見る:Chebyshev 点と最良の $w$

ex-lgi-runge の表で、Chebyshev 点の $\max\lvert w\rvert$ は $\dfrac1{2^n}$($n=5,10,15,20$ で $3.1\times10^{-2}$、$9.8\times10^{-4}$、$3.1\times10^{-5}$、$9.5\times10^{-7}$)になっている。これには理由がある。Chebyshev 多項式 $T_{n+1}$ は $T_{n+1}(\cos\theta)=\cos(n+1)\theta$ を満たす $n+1$ 次式で、その零点がちょうど Chebyshev 点である。したがって Chebyshev 点での $w$ は、$x^{n+1}$ の係数を $1$ にした $2^{-n}T_{n+1}$ で、$[-1,1]$ での最大値は $2^{-n}$ になる。

最大値が最も小さいことを開く

Chebyshev多項式 の定理「Chebyshev の最小最大定理」は、$x^{m}$ の係数が $1$ の $m$ 次の実数係数多項式 $p$ について $\max_{-1\le x\le1}\lvert p(x)\rvert\ge2^{1-m}$ であり、$p=2^{1-m}T_m$ で等号が成り立つことを示している。$m=n+1$ とすると、どんな $n+1$ 個の補間点をとっても $\max\lvert w\rvert\ge2^{-n}$ で、Chebyshev 点がこの最小を実現する。cor-lgi-bound の上界のうち $w$ の部分を最も小さくする点のとり方である。ただし、上界の $f^{(n+1)}$ の部分は点のとり方によらないので、これで誤差そのものが最小になるわけではない(ex-lgi-runge の $n=5$ のように、等間隔の方が良いこともある)。


大学の数値解析では、補間多項式を効率よく計算する Newton の差分商による公式や、区間を小さく分けて低い次数の多項式をつなぐ方法(区分的な補間、スプライン)を学ぶ。また、閉区間で連続な関数は、多項式でいくらでもよく(区間全体で一様に)近似できる(Weierstrass の近似定理。Leb26b Theorem 11.7.1)。しかし、ex-lgi-runge が示すとおり、等間隔の点での補間多項式を並べても、そのような近似になるとは限らない。
補間の考え方は整数にもある。「$n+1$ 個の点で値を指定した多項式を作る」ことは、「いくつかの数で割った余りを指定した整数を作る」ことの類似で、中国剰余定理(高校数学) の注意「環の直積とイデアルの言葉」の中で、多項式での類似として扱っている。

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  • 積分への応用:3 点を通る 2 次の補間多項式を積分すると Simpson の公式になる。次の記事 台形公式とSimpsonの公式(高校数学) で、その公式と誤差を扱う。
  • 微分への応用:3 点 $a-h$、$a$、$a+h$ での補間多項式を $x=a$ で微分すると、数値微分(高校数学) の中心差分になる。
  • 有限個の値と一般項:数列の最初の何項かが分かっても、それを通る多項式はいくらでも作れる。数列の一般項の推定と帰納法 の命題「有限個の値を通る多項式」を参照。
  • 因数と零点:$w(x)$ が補間点を零点にもつこと、$L_i$ の作り方は、剰余の定理と因数定理 と同じ考え方である。

関連項目

参考文献

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