Ramseyの定理

同義語:ラムゼーの定理ラムゼイの定理Ramsey's theorem

概要

Ramseyの定理(Ramsey's theorem)とは、完全グラフの辺を赤と青で塗り分けるとき、頂点が十分多ければ、すべての辺が赤の $s$ 頂点の完全部分グラフか、すべての辺が青の $t$ 頂点の完全部分グラフが必ず現れるという定理である。そのような頂点数の最小値を Ramsey 数 $R(s,t)$ といい、$R(s,t)\leq\binom{s+t-2}{s-1}$ が成り立つ。たとえば $R(3,3)=6$ で、6 人いれば互いに知り合いの 3 人か互いに知り合いでない 3 人が必ずいるが、5 人ではそうとは限らない。$R(4,4)=18$ だが、$R(5,5)$ は 2026 年の時点で $43$ 以上 $46$ 以下としか分かっていない。$k\geq3$ では $2^{k/2}<R(k,k)<4^{k-1}$ である。無限集合についての版もある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: グラフ, 完全グラフ, 鳩の巣原理, 二項係数, 数学的帰納法
6 人が集まると、その中には「互いに知り合いである 3 人」か「互いに知り合いでない 3 人」が必ずいる。理由は次のとおりである。1 人 $A$ に注目すると、残りの 5 人は「$A$ の知り合い」と「$A$ の知り合いでない人」に分かれ、どちらかに 3 人以上いる。たとえば $A$ の知り合いが 3 人 $B,C,D$ いれば、$B,C,D$ の中に知り合いの 2 人がいればその 2 人と $A$ が互いに知り合いの 3 人になり、いなければ $B,C,D$ が互いに知り合いでない 3 人になる。一方、5 人ではこれが保証されない。5 人を円形に並べ、隣どうしだけが知り合いだとすると、互いに知り合いの 3 人も、互いに知り合いでない 3 人もいない。Ramsey の定理は、この現象を一般化したものである。どんな正の整数 $s,t$ に対しても、人数を十分多くすれば、互いに知り合いの $s$ 人か互いに知り合いでない $t$ 人が必ず見つかる。どんなに無秩序に見える関係も、十分大きければ、どこかに完全にそろった部分を含むのである。

定義

$n$ 頂点の完全グラフ $K_n$ の各辺を赤か青のどちらかで塗ることを、$K_n$ の辺の 2 色塗り分けという。頂点の部分集合 $S$ について、$S$ の 2 点を結ぶ辺がすべて赤であるとき $S$ を赤い $K_{|S|}$、すべて青であるとき青い $K_{|S|}$ という(1 点だけの集合は結ぶ辺がないので、赤い $K_1$ でも青い $K_1$ でもあるとみなす)。導入の例では、人を頂点、知り合いの 2 人を結ぶ辺を赤、知り合いでない 2 人を結ぶ辺を青とすればよい。

Ramsey 数

$s,t$ を正の整数とする。正の整数 $n$ が $(s,t)$ 性質をもつとは、$K_n$ の辺のどの 2 色塗り分けにも、赤い $K_s$ か青い $K_t$ が現れることをいう。$(s,t)$ 性質をもつ $n$ が存在するとき、その最小値を Ramsey 数 $R(s,t)$ という。

$n$ が $(s,t)$ 性質をもてば $n+1$ ももつ。$K_{n+1}$ の塗り分けを $n$ 個の頂点に制限すれば $K_n$ の塗り分けが得られ、その中に赤い $K_s$ か青い $K_t$ があるからである。したがって $R(s,t)$ が存在すれば、$n$ が $(s,t)$ 性質をもつことと $n\geq R(s,t)$ は同値である。$R(s,t)$ が常に存在することが Ramsey の定理(thm-ramsey-theorem-graph)の内容である。

グラフの言葉での言い換え

$n$ 頂点の単純グラフ $G$ に対し、$G$ の辺を赤、$G$ の補グラフの辺を青と塗れば $K_n$ の 2 色塗り分けが得られ、逆に 2 色塗り分けから赤い辺の全体としてグラフが定まる。この対応で、赤い $K_s$ は $G$ の $s$ 頂点のクリーク(どの 2 頂点も隣接する頂点集合)に、青い $K_t$ は $G$ の $t$ 頂点の独立集合(どの 2 頂点も隣接しない頂点集合)に対応する。したがって $R(s,t)$ は「$n$ 頂点のどの単純グラフも $s$ 頂点のクリークか $t$ 頂点の独立集合をもつ」ような最小の $n$ である。KT17 §11.1 の Theorem 11.2(p. 230)はこの形で述べている。

Ramsey 数の基本性質

$s,t$ を正の整数とする。

  1. $R(s,t)$ が存在すれば $R(t,s)$ も存在して $R(s,t)=R(t,s)$ である。
  2. $R(1,t)=R(s,1)=1$ である。
  3. $R(2,t)=t$ である。
  1. 赤と青を入れ替えると、$K_n$ の 2 色塗り分けの全体はそれ自身に全単射で移り、赤い $K_s$ か青い $K_t$ があることは、入れ替えた塗り分けに青い $K_s$ か赤い $K_t$ があることに移る。よって $n$ が $(s,t)$ 性質をもつことと $(t,s)$ 性質をもつことは同値である。
  2. 1 点は赤い $K_1$ なので、$n=1$ は $(1,t)$ 性質をもち、$R(1,t)=1$ である。1 と同様に $R(s,1)=1$ である。
  3. $K_t$ の塗り分けで赤い辺が 1 本でもあれば、その両端が赤い $K_2$ であり、赤い辺がなければ全体が青い $K_t$ である。よって $t$ は $(2,t)$ 性質をもつ。$t\geq2$ のとき、$K_{t-1}$ の辺をすべて青に塗ると赤い $K_2$ も青い $K_t$(頂点が $t-1$ 個しかない)もないので、$t-1$ は $(2,t)$ 性質をもたない。$t=1$ のときは 2 により $R(2,1)=1$ である。以上で $R(2,t)=t$ である。$\square$

主定理

Ramsey 数の漸化不等式

$s,t\geq2$ とし、$R(s-1,t)$ と $R(s,t-1)$ が存在するとする。このとき $R(s,t)$ も存在して
$$ R(s,t)\leq R(s-1,t)+R(s,t-1) $$
が成り立つ。

$N:=R(s-1,t)+R(s,t-1)$ とし、$K_N$ の辺の 2 色塗り分けを任意にとる。頂点 $v$ を 1 つ固定し、残りの $N-1$ 個の頂点を、$v$ と赤い辺で結ばれるものの集合 $A$ と青い辺で結ばれるものの集合 $B$ に分ける。$|A|\leq R(s-1,t)-1$ かつ $|B|\leq R(s,t-1)-1$ とすると $|A|+|B|\leq N-2$ となり、$|A|+|B|=N-1$ に反する(鳩の巣原理)。よって $|A|\geq R(s-1,t)$ か $|B|\geq R(s,t-1)$ である。
$|A|\geq R(s-1,t)$ の場合、$A$ に制限した塗り分けには赤い $K_{s-1}$ か青い $K_t$ がある。青い $K_t$ ならそれが求めるものである。赤い $K_{s-1}$ なら、その頂点はすべて $v$ と赤い辺で結ばれているので、$v$ を加えると赤い $K_s$ になる。$|B|\geq R(s,t-1)$ の場合も同様に、$B$ の中の赤い $K_s$ はそのまま求めるものであり、青い $K_{t-1}$ に $v$ を加えると青い $K_t$ になる。
いずれの場合も赤い $K_s$ か青い $K_t$ があるので、$N$ は $(s,t)$ 性質をもつ。よって $R(s,t)$ が存在して $R(s,t)\leq N$ である。$\square$

Ramsey の定理(2 色の場合)

任意の正の整数 $s,t$ に対して Ramsey 数 $R(s,t)$ が存在し、
$$ R(s,t)\leq\binom{s+t-2}{s-1} $$
が成り立つ。すなわち、$n\geq\binom{s+t-2}{s-1}$ ならば、$K_n$ の辺をどのように赤と青で塗り分けても、赤い $K_s$ か青い $K_t$ が現れる。

$s+t$ に関する帰納法で示す。$s=1$ または $t=1$ なら、prop-ramsey-theorem-basic の 2 により $R(s,t)=1$ であり、右辺は $\binom{t-1}{0}=1$ または $\binom{s-1}{s-1}=1$ なので成り立つ。$s,t\geq2$ とし、和が $s+t-1$ の組について主張が成り立つとする。帰納法の仮定により $R(s-1,t)$ と $R(s,t-1)$ が存在するので、lem-ramsey-theorem-recursion と二項係数の漸化式(Pascal の三角形の関係)により
$$ R(s,t)\leq R(s-1,t)+R(s,t-1)\leq\binom{s+t-3}{s-2}+\binom{s+t-3}{s-1}=\binom{s+t-2}{s-1} $$
である。$\square$

この上界は ES35 で与えられた。証明の要点は、1 頂点に注目して残りを 2 つの色で分け、鳩の巣原理で大きいほうを選ぶことにある。KT17 §11.1 の Theorem 11.2 の証明(p. 230)も同じ筋である。

小さい Ramsey 数

6 人の問題

$R(3,3)=6$ である。

thm-ramsey-theorem-graph により $R(3,3)\leq\binom{4}{2}=6$ である(これは導入の議論そのものである)。$K_5$ の頂点を $0,1,2,3,4$ とし、差が $\pm1\pmod 5$ の 2 頂点を結ぶ辺(五角形の辺)を赤、差が $\pm2\pmod 5$ の辺(五角形の対角線)を青に塗る。3 頂点 $x,y,z$ が赤い $K_3$ なら、差 $y-x$、$z-y$、$x-z$ はどれも $\pm1$ で、和は $0$ である。しかし $\pm1$ を 3 つ足した和は $\pm1$ か $\pm3$ であり、$5$ の倍数にならないので矛盾する。青い $K_3$ についても、$\pm2$ を 3 つ足した和は $\pm2$ か $\pm6$ で、$5$ の倍数にならない。よってこの塗り分けには赤い $K_3$ も青い $K_3$ もなく、$R(3,3)>5$ である。$\square$

反例:五角形の塗り分け

prop-ramsey-theorem-r33 の証明で使った $K_5$ の塗り分けは、「$n\geq5$ なら赤い $K_3$ か青い $K_3$ がある」という主張の反例である。満たす性質は「$K_5$ の辺の 2 色塗り分け」、満たさない性質は「頂点が $R(3,3)=6$ 個以上ある」であり、破る含意は「5 人いれば、互いに知り合いの 3 人か互いに知り合いでない 3 人がいる」である。KT17 §11.1(p. 230)も、5 頂点の閉路が大きさ 3 のクリークも独立集合ももたないことを、6 という値が最良であることの根拠に挙げている。

3 と 4 の Ramsey 数

$R(3,4)=9$ である。

$R(3,4)\leq9$。$K_9$ の 2 色塗り分けで、赤い $K_3$ も青い $K_4$ もないものがあると仮定する。頂点 $v$ を 1 つとり、$v$ と赤い辺で結ばれる頂点の集合を $A$、青い辺で結ばれる頂点の集合を $B$ とする。$A$ の 2 点を結ぶ辺が赤なら、その 2 点と $v$ が赤い $K_3$ になるので、$A$ の中の辺はすべて青である。青い $K_4$ はないので $|A|\leq3$ である。また $|B|\geq6$ なら、prop-ramsey-theorem-r33 により $B$ の中に赤い $K_3$ か青い $K_3$ があり、前者は仮定に反し、後者は $v$ を加えて青い $K_4$ になって仮定に反する。よって $|B|\leq5$ である。$|A|+|B|=8$ だから $|A|=3$ である。つまり、どの頂点からも赤い辺がちょうど 3 本出ている。赤い辺だけからなるグラフを考えると、9 個の頂点の次数がすべて $3$ で、次数の総和 $27$ は奇数になる。これは次数の総和が辺の本数の 2 倍に等しいこと(次数(グラフ) の定理「次数の総和と辺数」)に反する。よって $9$ は $(3,4)$ 性質をもつ。
$R(3,4)>8$。$K_8$ の頂点を $0,1,\dots,7$ とし、差が $\pm1$ または $4\pmod 8$ の辺を赤、差が $\pm2$ または $\pm3\pmod 8$ の辺を青に塗る。赤い $K_3$ の頂点を $x,y,z$ とすると、3 つの差 $y-x$、$z-y$、$x-z$ は $8$ を法として $1,-1,4$ のいずれかで、和は $0$ である。$1,-1,4$ から重複を許して 3 つ選んだ和は、$4$ を使わなければ $\pm1,\pm3$、$4$ を 1 つ使えば $4\pm2$ か $4$、$4$ を 2 つ使えば $8\pm1$、3 つ使えば $12$ であり、どれも $8$ の倍数でない。よって赤い $K_3$ はない。
青い $K_4$ があるとし、その頂点集合を $S$ とする。4 つの組 $\{i,i+4\}$($i=0,1,2,3$)はどれも赤い辺で結ばれるので、$S$ は各組からちょうど 1 点 $x_i$ を含む。$x_i$ が $i$ のとき「下」、$i+4$ のとき「上」とよぶ。$i=0,1,2$ について、$x_i$ と $x_{i+1}$ がともに下かともに上なら差が $1$ で赤い辺で結ばれるので、$x_0,x_1,x_2,x_3$ は下と上が交互に並ぶ。すると $x_0$ と $x_3$ は一方が下で他方が上であり、$(x_0,x_3)=(0,7)$ または $(4,3)$ となって、どちらも差が $\pm1$ で赤い辺で結ばれる。これは $S$ が青い $K_4$ であることに反する。よってこの塗り分けには赤い $K_3$ も青い $K_4$ もなく、$R(3,4)>8$ である。$\square$

漸化不等式だけからは $R(3,4)\leq R(2,4)+R(3,3)=4+6=10$ しか得られない。上の証明は、次数の偶奇を使って $1$ だけ改良している。
正確な値が分かっている Ramsey 数はわずかである。KT17 §11.2 の Table 11.3(p. 231)には $R(3,5)=14$、$R(4,4)=18$ などが載っている。$R(4,4)=18$ は GG55 による。$R(5,5)$ はいまだに決まっておらず、2026 年の時点で知られている範囲は $43\leq R(5,5)\leq46$ である。下界は Exo89、上界は計算機による大規模な場合分けを用いた AM26 による(KT17(2017 年版)と Lev §2.5.3(p. 158)はそれ以前の上界 $49$ を挙げている。上界はその後 Angeltveit–McKay(2018 年)による $48$ を経て、$46$ に改良された)。色を 3 色にした場合、どの 3 色塗り分けにも単色の三角形が現れる最小の頂点数は $17$ である(GG55、Lev p. 158)。

大きさの評価

thm-ramsey-theorem-graph で $s=t=k$ とすると上からの評価が得られる。

対角 Ramsey 数の上界

$k\geq2$ のとき $R(k,k)\leq\binom{2k-2}{k-1}<4^{k-1}$ である。

最初の不等式は thm-ramsey-theorem-graph による。二項定理により $4^{k-1}=(1+1)^{2k-2}=\sum_{j=0}^{2k-2}\binom{2k-2}{j}$ であり、$k\geq2$ なら右辺には $\binom{2k-2}{k-1}$ 以外に正の項 $\binom{2k-2}{0}=1$ があるので、$\binom{2k-2}{k-1}<4^{k-1}$ である。$\square$

下からの評価は、塗り分けを 1 つずつ作る代わりに、「条件を破る塗り分けの個数を数えると全体より少ない」ことから、条件を満たす塗り分けの存在を示す。これは Erdős による確率論的方法の古典的な例である(KT17 §11.4、§11.6)。

Erdős の下界

$k\geq3$ のとき $R(k,k)>2^{k/2}$ である。

$n:=\lfloor2^{k/2}\rfloor$ とし($\lfloor x\rfloor$ は $x$ 以下の最大の整数)、$K_n$ の辺の赤青の塗り分けで、赤い $K_k$ も青い $K_k$ もないものが存在することを示す。$n< k$ なら $K_n$ には $k$ 個の頂点がないので、どの塗り分けでもよい。$n\geq k$ とする。$K_n$ の辺は $\binom n2$ 本なので、塗り分けは全部で $2^{\binom n2}$ 通りある。$k$ 個の頂点の集合 $S$ を 1 つ固定すると、$S$ が赤い $K_k$ になる塗り分けは、$S$ の中の $\binom k2$ 本の辺を赤に決め、残りの辺を自由に塗るので $2^{\binom n2-\binom k2}$ 通りあり、青い $K_k$ になるものも同数ある。$S$ の選び方は $\binom nk$ 通りだから、赤い $K_k$ か青い $K_k$ を含む塗り分けの個数は多くとも
$$ M:=\binom nk\cdot2\cdot2^{\binom n2-\binom k2} $$
である。$\binom nk\leq n^k/k!$ と $n^k\leq2^{k^2/2}$ を使うと
$$ \frac{M}{2^{\binom n2}}=\binom nk2^{1-\binom k2}\leq\frac{2^{k^2/2}}{k!}\,2^{1-\frac{k(k-1)}2}=\frac{2^{1+k/2}}{k!} $$
である。$f(k):=2^{1+k/2}/k!$ とおくと $f(3)=2^{5/2}/6=\sqrt{32}/6<1$ であり、$f(k+1)/f(k)=\sqrt2/(k+1)<1$ だから、$k\geq3$ で $f(k)<1$ である。よって $M<2^{\binom n2}$ であり、赤い $K_k$ も青い $K_k$ も含まない塗り分けが存在する。したがって $n$ は $(k,k)$ 性質をもたず、$R(k,k)\geq n+1>2^{k/2}$ である。$\square$

この証明は Erd47 による。KT17 §11.4(pp. 232–233)は、同じ数え上げを「各辺を確率 $1/2$ で独立に塗ったときの単色の $K_k$ の個数の期待値」として述べ直している。

漸近的な挙動

cor-ramsey-theorem-upper と thm-ramsey-theorem-lower を合わせると $\sqrt2^{\,k}< R(k,k)<4^{k}$ である。上界の底 $4$ は、ES35 以来およそ 90 年にわたって指数的には改良されなかったが、CGMS23 は、ある定数 $\varepsilon>0$ について十分大きい $k$ で $R(k,k)\leq(4-\varepsilon)^k$ となることを示した。$R(k,k)^{1/k}$ が $k\to\infty$ で収束するかどうか、収束するならその値は何かは未解決である。

無限版と一般化

頂点が無限にある場合には、Ramsey の定理は「無限の単色部分」の存在の形をとる。以下、$\mathbb{N}$ の部分集合 $X$ に対し、$X$ の 2 元部分集合全体を $[X]^2$ と書く。

無限 Ramsey の定理

$r$ を正の整数とし、$c\colon[\mathbb{N}]^2\to\{1,\dots,r\}$ を任意の写像とする($\mathbb{N}$ の 2 元部分集合を $r$ 色で塗る)。このとき無限部分集合 $H\subset\mathbb{N}$ で、$c$ が $[H]^2$ の上で一定であるものが存在する。

無限集合 $A_0:=\mathbb{N}$ から始めて、数 $x_1< x_2<\cdots$、色 $\chi_1,\chi_2,\dots$、無限集合 $A_0\supset A_1\supset A_2\supset\cdots$ を次のように順に定める。$A_{i-1}$ が無限集合として定まったとき、$x_i:=\min A_{i-1}$ とする。$A_{i-1}\setminus\{x_i\}$ の元 $y$ を色 $c(\{x_i,y\})$ で $r$ 個の集合に分けると、鳩の巣原理 の記事の命題「無限集合の鳩の巣原理」により、少なくとも 1 つの色 $\chi$ について $\{y\in A_{i-1}\setminus\{x_i\}\mid c(\{x_i,y\})=\chi\}$ は無限集合である。そのような色のうち最小のものを $\chi_i$ とし、この無限集合を $A_i$ とする。
構成から $A_i$ の元はすべて $x_i$ より大きいので $x_i< x_{i+1}$ であり、$j>i$ なら $x_j\in A_{j-1}\subset A_i$ だから $c(\{x_i,x_j\})=\chi_i$ である。つまり $\{x_i,x_j\}$($i< j$)の色は小さいほうの添字 $i$ だけで決まる。色の列 $\chi_1,\chi_2,\dots$ は $r$ 個の値しかとらないので、再び無限集合の鳩の巣原理により、ある色 $\chi$ について $I:=\{i\mid\chi_i=\chi\}$ は無限集合である。$H:=\{x_i\mid i\in I\}$ とおくと、$H$ は無限集合であり、$H$ の 2 元 $x_i,x_j$($i< j$、$i,j\in I$)について $c(\{x_i,x_j\})=\chi_i=\chi$ である。$\square$

$r=2$ のとき、この定理から「頂点集合が $\mathbb{N}$ のどんなグラフにも、無限のクリークか無限の独立集合がある」ことが従う。鳩の巣原理 の記事では、この定理を 1 元部分集合の塗り分けから 2 元部分集合の塗り分けへの一般化として紹介している。

反例:色が無限にある場合

$[\mathbb{N}]^2$ を $c(\{x,y\}):=\max\{x,y\}$ で塗ると、色は無限に多くある。この塗り分けでは、3 元 $x< y< z$ について $c(\{x,y\})=y\neq z=c(\{x,z\})$ なので、3 元以上の集合 $H$ で $c$ が $[H]^2$ の上で一定になるものは存在しない。満たす性質は「$[\mathbb{N}]^2$ の塗り分け」、満たさない性質は「色が有限個」であり、破る含意は「$[\mathbb{N}]^2$ をどう塗っても単色の無限集合がある」である。thm-ramsey-theorem-infinite で色の個数 $r$ を有限としたことは本質的である。

一般の Ramsey の定理

Ramsey の定理は、色の個数と、塗る部分集合の大きさの両方について一般化される。正の整数 $m,r$ と $h_1,\dots,h_r$ に対し、ある $N$ が存在して、$n\geq N$ なら $\{1,\dots,n\}$ の $m$ 元部分集合全体を $r$ 色でどう塗っても、ある色 $i$ と $h_i$ 元部分集合 $H$ で、$H$ の $m$ 元部分集合がすべて色 $i$ であるものが見つかる($h_i\geq m$ とする)。$m=1$ の場合が有限集合の鳩の巣原理、$m=r=2$ の場合が thm-ramsey-theorem-graph である。無限版も同様に、$[\mathbb{N}]^m$ の有限色の塗り分けに対して単色の無限部分集合が存在する。これらは Ramsey の原論文 Ram30 で示された。KT17 §11.5 の Theorem 11.6(p. 234)は有限版を証明なしで述べ、$r$ と $m$ に関する二重の帰納法で証明できると注意している。

補足

歴史と Ramsey 理論

F. P. Ramsey は、数理論理学の決定問題を扱った論文 Ram30 の補題として、この定理を示した。定理がグラフの言葉で広く知られるようになったのは、Erdős と Szekeres が幾何の問題(平面の点の中から凸多角形をなす点を選ぶ問題)に独立に同じ種類の結果を使い、上界 $\binom{s+t-2}{s-1}$ を与えた ES35 以降である。「十分大きな構造には必ず規則的な部分構造が現れる」という型の定理を研究する分野は Ramsey理論 とよばれ、van der Waerdenの定理(自然数を有限色に塗ると任意の長さの単色の等差数列がある)などもこの型に属する。

関連項目

参考文献

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Paul Erdős, Some remarks on the theory of graphs, Bulletin of the American Mathematical Society 53, pp. 292–294, 1947, 対角 Ramsey 数の下界
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Vigleik Angeltveit and Brendan D. McKay, R(5,5) ≤ 46, Journal of Graph Theory 112, pp. 198–208, 2026, 上界 46(計算機による証明)
[9]
Marcelo Campos, Simon Griffiths, Robert Morris and Julian Sahasrabudhe, An exponential improvement for diagonal Ramsey, arXiv:2303.09521, 2023, 対角 Ramsey 数の上界の指数的な改良

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