Herbrand関数と上付き番号(Herbrand function and upper numbering)とは、完備離散付値体の有限次 Galois 拡大 $L/K$ の分岐群 $G_u$ の番号を、区分線形な Herbrand 関数 $\varphi_{L/K}(u)=\int_0^u dt/(G_0:G_t)$ で $v=\varphi_{L/K}(u)$ に付け替え、$G^v:=G_u$ とする番号付けのことである。Herbrand の定理 $G_uH/H=(G/H)_{\varphi_{L/K'}(u)}$ と推移律から、上付き番号は Galois 群の商と整合する。$\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^n})/\mathbb{Q}_p$ では上付き番号の飛びが $0,1,\dots,n-1$ になるが、$S_3$ 拡大では飛び $1/2$ が現れる。
前提知識: 局所体, 分解群と惰性群, 不分岐拡大と完全分岐拡大, Galois理論
Herbrand関数と上付き番号(Herbrand function and upper numbering)とは、完備離散付値体の有限次 Galois 拡大 $L/K$ の分岐群の列 $G_u$ の番号を、区分線形な関数
$$
\varphi_{L/K}(u)=\int_0^u\frac{dt}{(G_0:G_t)}
$$
(Herbrand 関数)で $v=\varphi_{L/K}(u)$ に付け替え、$G^v:=G_u$ とする番号付けのことである。$G^v$ を上付き番号(upper numbering)の分岐群といい、もとの $G_u$ を下付き番号の分岐群という。
下付き番号は部分群への制限と相性がよく、中間体 $K'$ について $\operatorname{Gal}(L/K')$ の分岐群は $G_u\cap\operatorname{Gal}(L/K')$ である。しかし Galois 群の商に移ると番号がずれる。このずれをちょうど打ち消すのが Herbrand 関数で、上付き番号は商と整合する(Herbrand の定理)。そのため上付き番号は無限次拡大にも持ち上がり、局所類体論では単数群の減少列 $U_K^{(n)}$ と対応する。
この記事では、(1) $\varphi_{L/K}$ とその逆関数 $\psi_{L/K}$ が連続・区分線形・狭義単調増加であり、$\psi_{L/K}$ が整数を整数に移すこと、(2) 商の $i$ 関数の公式と Herbrand の定理 $G_uH/H=(G/H)_{\varphi_{L/K'}(u)}$、(3) 推移律 $\varphi_{L/K}=\varphi_{K'/K}\circ\varphi_{L/K'}$ と上付き番号の商との整合性、を完全に証明し、$\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^n})/\mathbb{Q}_p$ と $\mathbb{Q}_3(\zeta_3,\sqrt[3]{2})/\mathbb{Q}_3$ で番号を計算する。名前の似た Herbrand商 は巡回群のコホモロジーの不変量で、別の概念である。
この記事を通して、$K$ は完備離散付値体、$v_K$ はその正規化された付値、$\mathcal{O}_K$ は付値環とする。$L/K$ は有限次 Galois 拡大、$G:=\operatorname{Gal}(L/K)$ で、$v_L$、$\mathcal{O}_L$ を $L$ の正規化された付値と付値環とする。剰余体の拡大は分離的と仮定する(剰余体が有限体のとき、すなわち $K$ が 局所体 のときや、剰余体が完全体のときは自動的に成り立つ)。$e_{L/K}$ を分岐指数とする。$G$ の元は $v_L$ を保つ。
実数 $u\ge-1$ について
$$
G_u=G_u(L/K):=\{\sigma\in G\mid\text{すべての }a\in\mathcal{O}_L\text{ について }v_L(\sigma(a)-a)\ge u+1\}
$$
とおく。$v_L$ は整数値なので $G_u=G_{\lceil u\rceil}$ である。$G_{-1}=G$ であり、$G_0$ は惰性群である。$G_i$($i$ は整数)を下付き番号の第 $i$ 分岐群という。
$G_u$ は $u$ について減少する $G$ の正規部分群の列で、十分大きい $u$ で $G_u=1$ となる(Ser79 Chapter IV, §1, Proposition 1, p. 62)。整数 $i\ge1$ の $G_i$ は、代数体の素イデアルについて 分解群と惰性群 の記事の定義「高次分岐群」で扱ったものの局所版であり、同じ記事の定理「分岐群の商」と系「惰性群の構造」($G_0/G_1$ は位数が剰余体の標数 $p$ と素な巡回群、$i\ge1$ の $G_i/G_{i+1}$ は基本 $p$ 群、$G_1$ は $G_0$ のただ 1 つの Sylow $p$ 部分群)は、同じ証明で局所体の場合にも成り立つ(Ser79 Chapter IV, §2, Proposition 7 と Corollaries 1–3, pp. 67–68)。この記事ではこれらを使わない。
$\mathcal{O}_L=\mathcal{O}_K[x]$ となる $x\in\mathcal{O}_L$ がある。このような $x$ と整数 $i\ge-1$、$\sigma\in G$ について、$\sigma\in G_i$ であることと $v_L(\sigma(x)-x)\ge i+1$ は同値である。
$x$ の存在はこの記事では証明しない。剰余体の拡大が分離的であることから従う(Neu99 Chapter II, Lemma (10.4), p. 178、Ser79 Chapter III, §6, Proposition 12, p. 57)。
$\sigma\in G_i$ なら $a=x$ として右辺が成り立つ。逆に $v_L(\sigma(x)-x)\ge i+1$ とする。$a\in\mathcal{O}_L$ を $a=\sum_j c_jx^j$($c_j\in\mathcal{O}_K$)と書くと、$\sigma(c_j)=c_j$ なので $\sigma(a)-a=\sum_jc_j(\sigma(x)^j-x^j)$ である。$\sigma(x)^j-x^j=(\sigma(x)-x)\sum_{k=0}^{j-1}\sigma(x)^kx^{j-1-k}$ は $\sigma(x)-x$ の $\mathcal{O}_L$ 倍なので、$v_L(\sigma(a)-a)\ge v_L(\sigma(x)-x)\ge i+1$ である。$\square$
lem-hrb-generator の $x$ を 1 つとり、$\sigma\in G$ について
$$
i_G(\sigma):=v_L(\sigma(x)-x)\quad(\sigma\ne1),\qquad i_G(1):=+\infty
$$
とおく。
lem-hrb-generator により $\sigma\in G_u\iff i_G(\sigma)\ge u+1$ であり、$i_G$ は $x$ の選び方によらない。また次が成り立つ。
以下、$g_u:=\lvert G_u\rvert$ とおく。$g_0=e_{L/K}$ である。
$u\ge-1$ について
$$
\varphi_{L/K}(u):=\int_0^u\frac{dt}{(G_0:G_t)}
$$
とおき、Herbrand 関数という。ただし $-1< t\le0$ では $(G_0:G_t)=1$ とみなす。したがって $-1\le u\le0$ では $\varphi_{L/K}(u)=u$ であり、整数 $m\ge0$ と $m\le u\le m+1$ について
$$
\varphi_{L/K}(u)=\frac{1}{g_0}\bigl(g_1+g_2+\dots+g_m+(u-m)g_{m+1}\bigr)
$$
である。
要点:1 と 2 は被積分関数 $1/(G_0:G_t)$ が正で、単調に減少する階段関数であることからすぐ分かる。3 は、区間の端の部分群の位数が前の部分群の位数をすべて割ることによる。
1。被積分関数は $(m,m+1]$ で定数 $g_{m+1}/g_0$ をとる階段関数である。連続性と区分線形性、傾きの値は積分の定義からそのまま従う。傾きは正なので狭義単調増加であり、$G_t$ は $t$ について減少するので傾きは単調に減少し、上に凸である。傾きは $1$ 以下なので、$0$ から積分して $u\ge0$ で $\varphi_{L/K}(u)\le u$、$-1\le u\le0$ では等号である。
2。十分大きい $t$ で $G_t=1$ なので傾きは最終的に $1/g_0>0$ で一定になり、$\varphi_{L/K}(u)\to\infty$ である。$\varphi_{L/K}(-1)=-1$ と合わせて全単射である。逆関数の傾きは $\varphi_{L/K}$ の傾きの逆数 $(G_0:G_{m+1})$ で、これは単調に増加するので $\psi_{L/K}$ は下に凸である。
3。$v\le0$ なら $\psi_{L/K}(v)=v$ である。$v\ge1$ とし、$u:=\psi_{L/K}(v)$、$m\le u\le m+1$($m\ge0$ は整数)とすると $g_0v=g_1+\dots+g_m+(u-m)g_{m+1}$ である。$G_{m+1}$ は $G_0,\dots,G_m$ の部分群なので、$g_{m+1}$ は $g_0,g_1,\dots,g_m$ を割る。よって $u-m=(g_0v-g_1-\dots-g_m)/g_{m+1}$ は整数であり、$u$ も整数である。$\square$
$\varphi_{L/K}$ は整数を整数に移すとは限らない(ex-hrb-s3)。3 はその逆向きが常に成り立つことを述べている。
$u\ge-1$ について
$$
\varphi_{L/K}(u)=\frac{1}{g_0}\sum_{\sigma\in G}\min\{i_G(\sigma),u+1\}-1
$$
である。
右辺を $\theta(u)$ とおく。各項 $\min\{i_G(\sigma),u+1\}$ は $u$ の連続な区分線形関数なので、$\theta$ も連続・区分線形である。$u=0$ では、$\sigma\in G_0$ なら $i_G(\sigma)\ge1$ で項は $1$、$\sigma\notin G_0$ なら $i_G(\sigma)=0$ で項は $0$ なので、$\theta(0)=g_0/g_0-1=0=\varphi_{L/K}(0)$ である。整数 $m\ge-1$ と $m< u< m+1$ では、項 $\min\{i_G(\sigma),u+1\}$ の傾きは $i_G(\sigma)>u+1$、すなわち $i_G(\sigma)\ge m+2$ のとき $1$、そうでなければ $0$ である。$i_G(\sigma)\ge m+2$ は $\sigma\in G_{m+1}$ と同値なので、$\theta$ の傾きは $g_{m+1}/g_0$ で、prop-hrb-phi-basic の 1 の $\varphi_{L/K}$ の傾きと一致する。$0$ での値と各区間の傾きが一致する連続関数なので、$\theta=\varphi_{L/K}$ である。$\square$
以下、$H$ を $G$ の正規部分群、$K':=L^H$ とする。$K'/K$ は Galois 拡大で $\operatorname{Gal}(K'/K)=G/H$ であり、$L/K'$ の Galois 群は $H$ である。$e':=e_{L/K'}$ とおくと、$L/K'$ の惰性群 $H_0$ の位数は $e'$ である。
$\sigma\in G/H$ について
$$
i_{G/H}(\sigma)=\frac{1}{e'}\sum_{s\in G,\ s\mapsto\sigma}i_G(s)
$$
である。和は $\sigma$ に移る $G$ の $\lvert H\rvert$ 個の元にわたる。
要点:$\mathcal{O}_{K'}=\mathcal{O}_K[y]$、$\mathcal{O}_L=\mathcal{O}_K[x]$ とすると、両辺は $a=s(y)-y$ と $b=\prod_{t\in H}(st(x)-x)$ の付値であり、$x$ の $K'$ 上の最小多項式を $s$ で動かすと $a$ と $b$ が互いに割り切り合うことが分かる。
$\sigma=1$ なら両辺とも $+\infty$ である。$\sigma\ne1$ とし、$s\in G$ を $\sigma$ に移る元の 1 つとすると、$\sigma$ に移る元は $st$($t\in H$)である。lem-hrb-generator により $\mathcal{O}_{K'}=\mathcal{O}_K[y]$、$\mathcal{O}_L=\mathcal{O}_K[x]$ となる $y,x$ をとる。$K'$ 上では $v_L=e'v_{K'}$ なので $e'\,i_{G/H}(\sigma)=v_L(s(y)-y)$ であり、$\sum_{t\in H}i_G(st)=v_L(b)$ である。よって $a:=s(y)-y$ と $b$ が $\mathcal{O}_L$ の同じイデアルを生成することを示せばよい。
$f(X):=\prod_{t\in H}(X-t(x))$ は $x$ の $K'$ 上の最小多項式で、係数は $\mathcal{O}_{K'}$ に属する。$f$ の係数に $s$ を施した多項式を $s(f)$ と書くと $s(f)(X)=\prod_{t\in H}(X-st(x))$ である。$\mathcal{O}_{K'}$ の各元 $c$ は $y$ の $\mathcal{O}_K$ 係数の多項式なので、prf-hrb-generator と同じ計算で $s(c)-c$ は $a$ で割り切れる。よって $s(f)-f$ の係数はすべて $a$ で割り切れ、$x$ を代入すると $a$ は $s(f)(x)-f(x)=s(f)(x)=\pm b$ を割り切る。
逆に、$y=g(x)$($g\in\mathcal{O}_K[X]$)と書く。多項式 $g(X)-y\in\mathcal{O}_{K'}[X]$ は $x$ を根にもち、$f$ はモニックなので $g(X)-y=f(X)h(X)$($h\in\mathcal{O}_{K'}[X]$)と書ける。係数に $s$ を施して $X=x$ を代入すると $g(x)-s(y)=s(f)(x)\,s(h)(x)$、すなわち $y-s(y)=\pm b\,s(h)(x)$ である。よって $b$ は $a$ を割り切る。$\square$
この式は、Ser79 Chapter IV, §1, Proposition 3(pp. 63–64、証明は Tate による)と Neu99 Chapter II, Proposition (10.5)(p. 178)にある。CF67 Chapter I(Fröhlich), §9, Proposition 5(pp. 36–37)は、差積を 2 通りに計算して不等式が等式になることを示す別の証明を与えている。
$u\ge-1$、$v:=\varphi_{L/K'}(u)$ とすると
$$
G_uH/H=(G/H)_v
$$
である。
段 1. $\sigma\in G/H$、$\sigma\ne1$ について、$\sigma$ に移る元の $i_G$ の最大値を $j(\sigma)$ とおく。このとき
$$
i_{G/H}(\sigma)-1=\varphi_{L/K'}\bigl(j(\sigma)-1\bigr)
$$
であることを示す。$s\in G$ を $\sigma$ に移り $i_G(s)=m:=j(\sigma)$ となる元とする。$t\in H$ について $i_G(st)=\min\{i_G(t),m\}$ である。実際、$i_G(t)\ge m$ なら $i_G(st)\ge\min\{i_G(s),i_G(t)\}=m$ であり、$m$ の最大性から $i_G(st)=m$ である。$i_G(t)< m$ なら、$i_G(st)\ge\min\{m,i_G(t)\}=i_G(t)$ と $i_G(t)=i_G(s^{-1}\cdot st)\ge\min\{i_G(s^{-1}),i_G(st)\}=\min\{m,i_G(st)\}$ から $i_G(st)=i_G(t)$ である。$i_H=i_G|_H$ なので、prop-hrb-quotient-i により
$$
i_{G/H}(\sigma)=\frac{1}{e'}\sum_{t\in H}\min\{i_H(t),m\}
$$
である。$\lvert H_0\rvert=e'$ なので、$L/K'$ に lem-hrb-phi-sum を $u=m-1$ で使うと右辺は $\varphi_{L/K'}(m-1)+1$ に等しい。
段 2. $\sigma=1$ は両辺に属するので、$\sigma\ne1$ とする。$\sigma\in G_uH/H$ は、$\sigma$ に移る $s$ で $i_G(s)\ge u+1$ となるものがあること、すなわち $j(\sigma)-1\ge u$ と同値である。$\varphi_{L/K'}$ は狭義単調増加なので(prop-hrb-phi-basic の 1)、これは $\varphi_{L/K'}(j(\sigma)-1)\ge v$ と同値であり、段 1 により $i_{G/H}(\sigma)-1\ge v$、すなわち $\sigma\in(G/H)_v$ と同値である。$\square$
$\varphi_{L/K'}$ が恒等写像になるのは $L/K'$ が不分岐のとき($H_0=1$)に限られるので、下付き番号は一般に商と整合しない(ex-hrb-counterexamples の 1 行目)。
$$
\varphi_{L/K}=\varphi_{K'/K}\circ\varphi_{L/K'},\qquad\psi_{L/K}=\psi_{L/K'}\circ\psi_{K'/K}
$$
である。
要点:両辺は $0$ で $0$ になる連続な区分線形関数で、有限個を除く $u$ で傾きが一致する。傾きの一致は、Herbrand の定理から $\lvert(G/H)_v\rvert=g_u/\lvert H_u\rvert$ が分かることによる。
両辺とも連続・区分線形で $0$ を $0$ に移し、$[-1,0]$ では恒等写像である。$u>0$ が整数でなく、$v:=\varphi_{L/K'}(u)$ も整数でないとする(有界な区間の中でこれを満たさない $u$ は有限個である。$\varphi_{L/K'}$ は狭義単調増加なので、$v$ が整数になる $u$ は区間ごとに有限個)。このとき prop-hrb-phi-basic の 1 により、右辺の傾きは連鎖律で
$\varphi_{K'/K}'(v)\,\varphi_{L/K'}'(u)=\dfrac{\lvert(G/H)_v\rvert}{e_{K'/K}}\cdot\dfrac{\lvert H_u\rvert}{e'}$
である。thm-hrb-herbrand により $(G/H)_v=G_uH/H\cong G_u/(G_u\cap H)=G_u/H_u$ なので $\lvert(G/H)_v\rvert=g_u/\lvert H_u\rvert$ であり、$e_{K'/K}e'=e_{L/K}=g_0$ から傾きは $g_u/g_0=\varphi_{L/K}'(u)$ に等しい。傾きが有限個の点を除いて一致する連続な区分線形関数で、$0$ での値が等しいので、$\varphi_{L/K}=\varphi_{K'/K}\circ\varphi_{L/K'}$ である。逆関数をとって 2 つ目の式を得る。$\square$
$v\ge-1$ について
$$
G^v=G^v(L/K):=G_{\psi_{L/K}(v)}
$$
とおき、上付き番号の分岐群という。同じことだが $G^{\varphi_{L/K}(u)}=G_u$ である。
$G^{-1}=G$、$G^0=G_0$ であり、十分大きい $v$ で $G^v=1$ である。$w\mapsto(G^0:G^w)$ は $\psi_{L/K}$ の傾きなので
$$
\psi_{L/K}(v)=\int_0^v(G^0:G^w)\,dw
$$
であり、上付き番号の列 $G^v$ を知ることと下付き番号の列 $G_u$ を知ることは同じである。
$H$ を $G$ の正規部分群とすると、すべての $v\ge-1$ について
$$
G^vH/H=(G/H)^v
$$
である。
$x:=\psi_{K'/K}(v)$ とおくと、定義により $(G/H)^v=(G/H)_x$ である。thm-hrb-herbrand により $(G/H)_x=G_wH/H$、ただし $w=\psi_{L/K'}(x)$ である。cor-hrb-transitivity により $w=\psi_{L/K'}(\psi_{K'/K}(v))=\psi_{L/K}(v)$ なので、$G_wH/H=G^vH/H$ である。$\square$
分岐群の列が変わる番号を飛び(jump)という。すなわち $v$ が上付き番号の飛びであるとは、すべての $\varepsilon>0$ について $G^{v+\varepsilon}\ne G^v$ となることで、下付き番号でも同様に定める。$G_u=G_{\lceil u\rceil}$ なので下付き番号の飛びは整数であり、$u$ が下付き番号の飛びであることと $\varphi_{L/K}(u)$ が上付き番号の飛びであることは同値である。上付き番号の飛びは整数とは限らない(ex-hrb-s3)。$G$ がアーベル群なら整数になるというのが Hasse–Arfの定理 である。
thm-hrb-upper-quotient により、無限次 Galois 拡大 $L/K$ の Galois 群にも、有限次の部分拡大 $L'/K$ の $\operatorname{Gal}(L'/K)^v$ の射影極限として上付き番号の分岐群 $G^v$ を定義できる(Ser79 Chapter IV, §3, Remark 1, p. 75)。同じ箇所で、有限次拡大でも上付き番号の飛びは整数とは限らないことが注意されている(同 §3, Exercise 2, p. 77 を参照している)。
$G_1=1$(順分岐)で $G_0\ne1$ とする。$e:=g_0$ とおくと、$u\ge0$ で $\varphi_{L/K}(u)=u/e$、$\psi_{L/K}(v)=ev$ である。上付き番号では $G^v=G_0$($-1< v\le0$)、$G^v=1$($v>0$)で、飛びは $0$ だけである($G\ne G_0$ なら $-1$ も飛び)。
$p$ を素数、$n\ge1$、$\zeta$ を $1$ の原始 $p^n$ 乗根、$K_n:=\mathbb{Q}_p(\zeta)$、$G:=\operatorname{Gal}(K_n/\mathbb{Q}_p)\cong(\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z})^\times$($a\mapsto s_a$、$s_a(\zeta)=\zeta^a$)とする。$0\le k\le n$ について $G(n)^k:=\{s_a\mid a\equiv1\pmod{p^k}\}$ とおくと、下付き番号の分岐群は
$$
G_0=G,\qquad G_u=G(n)^k\quad(p^{k-1}\le u\le p^k-1,\ 1\le k\le n),\qquad G_u=1\quad(u\ge p^{n-1})
$$
であり、$\varphi_{K_n/\mathbb{Q}_p}(p^k-1)=k$($0\le k\le n$)である。したがって $v>0$ について
$$
G^v=G(n)^{\lceil v\rceil}
$$
で($k>n$ では $G(n)^k:=1$ とする)、上付き番号の飛びは $0,1,\dots,n-1$ である($p=2$ では $G_0=G_1$ なので $0$ は飛びでない)。
下付き番号の飛びは $p^k-1$ と飛び飛びなのに、上付き番号では $1$ ずつになる。$\mathbb{Z}_p^\times$ の減少列 $1+p^k\mathbb{Z}_p$ に合わせて $G(n)^k$ が並ぶ形で、局所類体論ではこれが一般の有限次アーベル拡大について成り立つ(Neu99 Chapter V, Theorem (6.2), p. 354:局所相互写像は $U_K^{(n)}$ を $G^n$ の上へ移す)。
$K_n/\mathbb{Q}_p$ は次数 $(p-1)p^{n-1}$ の完全分岐拡大で、$\zeta-1$ は素元、$\mathcal{O}_{K_n}=\mathbb{Z}_p[\zeta]$ である(Ser79 Chapter IV, §4, Proposition 17, p. 78。Lubin–Tate理論 の記事の例「$\mathbb{Q}_p$ の円分拡大」も参照)。よって def-hrb-i で $x=\zeta$ とできる。$1\le m\le n$ と $1$ の原始 $p^m$ 乗根 $\zeta'$ について、$\zeta'-1$ は $K_m=\mathbb{Q}_p(\zeta')$ の素元で、$K_n/K_m$ は次数 $p^{n-m}$ の完全分岐拡大なので $v_{K_n}(\zeta'-1)=p^{n-m}$ である。
$a\not\equiv1\pmod{p^n}$ とし、$k$ を $a\equiv1\pmod{p^k}$ となる最大の整数とすると、$\zeta^{a-1}$ は $1$ の原始 $p^{n-k}$ 乗根なので $i_G(s_a)=v_{K_n}(\zeta^a-\zeta)=v_{K_n}(\zeta^{a-1}-1)=p^{k}$ である。$s_a\in G_u\iff p^k\ge u+1$ なので、$p^{k-1}\le u\le p^k-1$ では $G_u=G(n)^k$ である。
$p^{j-1}-1< t\le p^j-1$($1\le j\le n$)では $G_t=G(n)^j$ で位数は $p^{n-j}$、$g_0=(p-1)p^{n-1}$ なので、この区間の長さ $p^j-p^{j-1}$ にわたる積分は $(p^j-p^{j-1})p^{n-j}/((p-1)p^{n-1})=1$ である。$j=1,\dots,k$ について足して $\varphi(p^k-1)=k$ である。$k-1< v\le k$ なら $p^{k-1}-1< \psi(v)\le p^k-1$ なので $G^v=G_{\psi(v)}=G(n)^k$ である。
$L:=\mathbb{Q}_3(\zeta_3,\alpha)$($\alpha^3=2$)、$K:=\mathbb{Q}_3$ とする。$G\cong S_3$ で、$L/K$ は次数 $6$ の完全分岐拡大であり、下付き番号の分岐群は
$$
G_0=G\cong S_3,\qquad G_1=\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}_3(\zeta_3))\cong A_3,\qquad G_2=1
$$
である。よって $0\le u\le1$ で $\varphi_{L/K}(u)=u/2$、$u\ge1$ で $\varphi_{L/K}(u)=\frac12+\frac{u-1}{6}$ であり、上付き番号の飛びは $0$ と $\varphi_{L/K}(1)=\frac12$ である。
$H:=A_3$ とすると $G/H$ は順分岐な 2 次拡大 $\mathbb{Q}_3(\zeta_3)/\mathbb{Q}_3$ の Galois 群で、上付き番号の飛びは $0$ だけである(ex-hrb-tame)。$0< v\le\frac12$ では $G^v=A_3$ の像は自明で、thm-hrb-upper-quotient のとおりである。
$x^3-2$ に $x=y-1$ を代入すると $y^3-3y^2+3y-3$ で、これは Eisenstein 多項式なので $K':=\mathbb{Q}_3(\alpha)$ は $\mathbb{Q}_3$ 上 3 次の完全分岐拡大、$\alpha+1$ はその素元である(不分岐拡大と完全分岐拡大 の記事の定理「Eisenstein多項式が定める拡大」)。$\mathbb{Q}_3(\zeta_3)$ は 2 次の完全分岐拡大なので、$L$ の分岐指数は $2$ と $3$ で割り切れ、$[L:\mathbb{Q}_3]\le6$ から $L/\mathbb{Q}_3$ は次数 $6$ の完全分岐拡大で、$G\cong S_3$ である。
$v_L$ で $v_L(\alpha+1)=2$、$v_L(\zeta_3-1)=3$、$v_L(\sqrt{-3})=3$($\sqrt{-3}=\zeta_3-\zeta_3^2=\zeta_3(1-\zeta_3)$)なので、$\Pi:=\sqrt{-3}/(\alpha+1)$ は $L$ の素元であり、完全分岐なので $\mathcal{O}_L=\mathbb{Z}_3[\Pi]$ である(不分岐拡大と完全分岐拡大 の記事の定理「完全分岐拡大の生成元」)。$\sigma(\alpha)=\zeta_3\alpha$、$\sigma(\zeta_3)=\zeta_3$ となる $\sigma$ について
$\sigma(\Pi)-\Pi=\sqrt{-3}\Bigl(\dfrac{1}{\zeta_3\alpha+1}-\dfrac{1}{\alpha+1}\Bigr)=\dfrac{\sqrt{-3}\,\alpha(1-\zeta_3)}{(\zeta_3\alpha+1)(\alpha+1)}$
で、付値は $3+0+3-2-2=2$ である。よって $i_G(\sigma)=i_G(\sigma^2)=2$、すなわち $\sigma\in G_1$、$\sigma\notin G_2$ である。$\tau(\zeta_3)=\zeta_3^2$、$\tau(\alpha)=\alpha$ となる $\tau$ については $\tau(\sqrt{-3})=-\sqrt{-3}$ なので $\tau(\Pi)-\Pi=-2\sqrt{-3}/(\alpha+1)$ で、付値は $3-2=1$ である。よって $i_G(\tau)=1$ で、$\tau$ と共役な残り 2 つの互換も $i_G=1$ である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 上付き番号を下付き番号に替える | $\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^2})/\mathbb{Q}_p$($p\ge3$)、$H$ は位数 $p-1$ の部分群、$u=2$ | 商との整合 $G_uH/H=(G/H)_u$ |
| 商を部分群に替える | $\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^2})/\mathbb{Q}_p$($p\ge3$)、$H=G(2)^1$、$v=2$ | 上付き番号の制限 $H^v=G^v\cap H$ |
| $G$ がアーベル群 | ex-hrb-s3 の $S_3$ 拡大 | 上付き番号の飛びが整数であること |
1 行目は thm-hrb-herbrand で $\varphi_{L/K'}$ を恒等写像にしてはいけないことを、2 行目は上付き番号が部分群への制限と整合しないことを示す。下付き番号では $H_u=G_u\cap H$ が成り立つので、2 つの番号付けはそれぞれ片方の操作とだけ整合する。3 行目は Hasse–Arfの定理 でアーベル群の仮定が外せないことを示す。
$G=\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^2})/\mathbb{Q}_p)\cong(\mathbb{Z}/p^2\mathbb{Z})^\times$ で、ex-hrb-cyclotomic により $G_0=G$、$G_u=G(2)^1$($1\le u\le p-1$)、$G_u=1$($u\ge p$)であり、$G^v=G(2)^1$($0< v\le1$)、$G^v=1$($v>1$)である。
1 行目:$H$ を位数 $p-1$ の部分群とする。$H\cap G(2)^1=1$ なので $H_0=H$、$H_u=1$($u>0$)で、$\varphi_{L/K'}(u)=u/(p-1)$($u\ge0$)である。$p\ge3$ なら $G_2=G(2)^1$ で、これは $H$ と交わらず位数 $p$ なので $G_2H/H=G/H$ である。他方 thm-hrb-herbrand により $(G/H)_2=G_uH/H$、$u=2(p-1)\ge p$ なので $(G/H)_2=1$ である。
2 行目:$H=G(2)^1$ は位数 $p$ で、$H_u=G_u\cap H=H$($0\le u\le p-1$)なので $\varphi_{L/K'}(u)=u$($0\le u\le p-1$)であり、$H^v=H$($0\le v\le p-1$)である。$p\ge3$ なら $H^2=H$ だが $G^2\cap H=1$ である。
3 行目:ex-hrb-s3 により飛び $\frac12$ がある。
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