古典群のホモトピー群

同義語:homotopy groups of classical groups

概要

古典群のホモトピー群(homotopy groups of classical groups)とは、位相群としての直交群 $O(n)$・ユニタリ群 $U(n)$・シンプレクティック群 $\mathrm{Sp}(n)$ と $SO(n)$・$SU(n)$ のホモトピー群である。左上のブロックへの包含 $G(n)\to G(n+1)$ は、$O$ では $i\le n-2$、$U$ では $i\le2n-1$、$\mathrm{Sp}$ では $i\le4n+1$ で $\pi_i$ の同型を誘導し、$n$ によらない安定な群が定まる。安定域の外では群は $n$ により変わり、$\pi_3(SO(4))\cong\mathbb Z\oplus\mathbb Z$、$\pi_3(SO(5))\cong\mathbb Z$ である。低次の値は球面上のベクトル束の分類に現れる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 直交群, ユニタリ群, 四元数, ホモトピー群, ファイバー束

古典群のホモトピー群(homotopy groups of classical groups)とは、位相群としての直交群 $O(n)$・ユニタリ群 $U(n)$・シンプレクティック群 $\mathrm{Sp}(n)$ と、その部分群 $SO(n)$・$SU(n)$ のホモトピー群のことである。ここでいう古典群は、実数・複素数・四元数の上で内積を保つ行列のなすコンパクトな群であり、一般の体の上の行列群を群としての構造(単純性など)から扱う 古典群 の記事とは観点が違う(同じ群のコホモロジー環は 古典群のコホモロジー環 にある)。
中心の事実は安定性である。行列を左上のブロックに置く包含 $G(n)\to G(n+1)$ は、$n$ に比例して広がる範囲の次数でホモトピー群の同型を誘導する(thm-hcg-stability)。証明に使うのは、$G(n+1)$ の元にその最後の列を対応させる写像が球面上のファイバー束でファイバーが $G(n)$ になることと、球面の低い次数のホモトピー群が消えることだけである。こうして $n$ によらない安定な群が決まり、その値は Bott の周期性定理が与える。
安定域の外では、群は $n$ によって変わる。たとえば $\pi_3(SO(4))\cong\mathbb Z\oplus\mathbb Z$ であるが、$n\ge5$ では $\pi_3(SO(n))\cong\mathbb Z$ である(prop-hcg-so4、prop-hcg-so5)。この記事では安定性を証明し、$\pi_0$ から $\pi_3$ までの表(一部は $\pi_4$ まで)を、低い次元の同一視と四元数の掛け算による具体的な写像から計算する(thm-hcg-table)。これらの群は、球面の上のベクトル束を貼り合わせ関数で分類するとき、そのまま分類の答えとして現れる(球面上のベクトル束の分類)。

記号

$\mathbb F$ を $\mathbb R$、$\mathbb C$、四元数体 $\mathbb H$(四元数)のいずれかとし、$c:=\dim_{\mathbb R}\mathbb F\in\{1,2,4\}$ とおく。$\mathbb F^n$ は列ベクトルの空間で、スカラーは右から、行列は左から掛ける。内積を $\langle x,y\rangle:=\sum_i\overline{x_i}\,y_i$、標準基底を $e_1,\dots,e_n$、共役転置を $A^*$ とし、
$$ G(n)=U_{\mathbb F}(n):=\{A\in M_n(\mathbb F)\mid A^*A=I\}\qquad(n\ge1),\qquad G(0):=\{1\} $$
とおく。$\mathbb F=\mathbb R,\mathbb C,\mathbb H$ に応じて $U_{\mathbb F}(n)=O(n),\ U(n),\ \mathrm{Sp}(n)$ である。$A^*A=I$ は $\langle Ax,Ay\rangle=\langle x,y\rangle$ がすべての $x,y$ で成り立つことと同値であり、そのような $A$ は単射なので可逆で $A^{-1}=A^*$ である。成分はノルム $1$ 以下なので、$G(n)$ は $M_n(\mathbb F)\cong\mathbb R^{cn^2}$ の有界閉集合で、コンパクトな位相群である。$\mathrm{Sp}(n)$ を(コンパクトな)シンプレクティック群という。$\mathrm{Sp}(1)$ は単位四元数の群、すなわち $S^3$ である。
$SO(n)$、$SU(n)$ は $O(n)$、$U(n)$ のうち行列式が $1$ のものの部分群である。最初のブロックへの包含を
$$ \iota_n\colon G(n)\to G(n+1),\qquad A\mapsto\begin{pmatrix}A&0\\0&1\end{pmatrix} $$
で定め、$SO(n)\to SO(n+1)$、$SU(n)\to SU(n+1)$ も同じ式で定める。ホモトピー群の基点は単位元にとる。位相群 $K$ の単位元の弧状連結成分 $K_0$ は正規部分群であり(位相群 の系「単位元の連結成分」と同じ議論)、$\pi_0(K)=K/K_0$ は群になる。準同型 $K\to K'$ の誘導する $\pi_0(K)\to\pi_0(K')$ は群の準同型である。

行列式で分ける

$n\ge1$ とする。

  1. $SO(n)$、$U(n)$、$SU(n)$ は弧状連結であり、$O(n)$ の弧状連結成分は $SO(n)$ と $\det=-1$ の部分の 2 つである。
  2. $U(n)\cong SU(n)\times S^1$(位相空間として)であり、$\pi_1(U(n))\cong\pi_1(SU(n))\oplus\mathbb Z$、$i\ge2$ では $\pi_i(U(n))\cong\pi_i(SU(n))$ である。
  3. $i\ge1$ では包含が同型 $\pi_i(SO(n))\cong\pi_i(O(n))$ を誘導する。

1 は 直交群 の定理「直交群の位相」と ユニタリ群 の定理「ユニタリ群の位相と指数写像」の 3 である。2 の同相写像は ユニタリ群 の命題「行列式による分解」の 3 の $\Phi$ で、ホモトピー群は ホモトピー群 の命題「直積のホモトピー群」により成分ごとに計算でき、$\pi_1(S^1)\cong\mathbb Z$、$\pi_i(S^1)=0$($i\ge2$)である。3:$SO(n)$ は単位元を含む弧状連結成分で、$O(n)$ の開かつ閉な部分集合なので、弧状連結な $S^i$($i\ge1$)からの基点付き写像とそのホモトピーはすべて $SO(n)$ に入る。$\square$

球面への評価写像

球面への評価写像

$n\ge0$ とし、$m:=c(n+1)-1$ とおく。$p(A):=Ae_{n+1}$ で定まる $p\colon G(n+1)\to S^m$ は、$p^{-1}(e_{n+1})=\iota_n(G(n))$ をファイバーとするファイバー束である。$n\ge1$ なら、同じ式で $SO(n+1)\to S^n$ と $SU(n+1)\to S^{2n+1}$ も、それぞれファイバー $SO(n)$、$SU(n)$ のファイバー束である。

要点:最後の列が $x$ である元を $x$ について連続に選ぶ局所切断 $\sigma$ を Gram–Schmidt の直交化で作り、$(x,B)\mapsto\sigma(x)\iota_n(B)$ を局所自明化にする。

詳しい証明を開く

$G(n+1)$ の列は正規直交基底をなすので $Ae_{n+1}$ は単位ベクトルであり、$p$ は連続である。$Ae_{n+1}=e_{n+1}$ なら、$A$ は $e_{n+1}$ の直交補 $\mathbb F^n\oplus0$ を保つので $A=\iota_n(B)$、$B\in G(n)$ であり、逆も成り立つ。よって $p^{-1}(e_{n+1})=\iota_n(G(n))$ である。

$x_0\in S^m$ を固定し、$x_0$ を含む正規直交基底 $(b_1,\dots,b_n,x_0)$ をとる(Gram–Schmidt の直交化。四元数の場合も、正規直交化する列を $y_1,y_2,\dots$、そこからすでに正規直交にしたものを $v_1,\dots,v_{j-1}$ として、$y_j-\sum_{i< j}v_i\langle v_i,y_j\rangle$ のように係数を右から掛ければ同じ式で正規直交化できる)。$U:=\{x\in S^m\mid\langle x_0,x\rangle\ne0\}$ の点 $x$ について、$(x,b_1,\dots,b_n)$ は基底であり($x$ を基底 $(b_1,\dots,b_n,x_0)$ で展開したときの $x_0$ の係数が $\langle x_0,x\rangle\ne0$)、これを $x$ から順に正規直交化して $x$ を最後の列に置いた行列を $\sigma(x)$ とする。$\sigma\colon U\to G(n+1)$ は連続で $\sigma(x)e_{n+1}=x$ を満たす。$\varphi(x,B):=\sigma(x)\iota_n(B)$ は $U\times G(n)$ から $p^{-1}(U)$ への連続写像で、逆写像は $A\mapsto(Ae_{n+1},\ \iota_n^{-1}(\sigma(Ae_{n+1})^{-1}A))$ である($\sigma(x)^{-1}A$ は $e_{n+1}$ を固定する)。よって $\varphi$ は局所自明化であり、$x_0$ は任意なので $p$ はファイバー束である。$SO$、$SU$ の場合は、$\sigma(x)$ の第 1 列に $\overline{\det\sigma(x)}$ を掛けて行列式を $1$ にすれば同じ議論が通る($n\ge1$ なので第 1 列は最後の列と異なる)。$\square$

$\mathbb F=\mathbb R,\mathbb C$ では、最初の列を取り出す写像についての同じ主張が Stiefel多様体 の定理「最初のベクトルへの射影」($k=n$ の場合)であり、三つの体の場合をまとめた記述は Hat02 Example 4.54–4.55(p. 383)にある。

安定性

最初のブロックへの包含の安定性

$n\ge0$ とする。$\iota_n$ が誘導する $(\iota_n)_*\colon\pi_i(G(n))\to\pi_i(G(n+1))$ は

  1. $0\le i\le c(n+1)-3$ のとき同型であり、
  2. $i=c(n+1)-2$ のとき全射である。
    $i=0$ では群 $\pi_0$ の準同型としての主張である。$n\ge1$ なら、$SO(n)\to SO(n+1)$ は $i\le n-2$ で同型、$i=n-1$ で全射であり、$SU(n)\to SU(n+1)$ は $i\le 2n-1$ で同型、$i=2n$ で全射である。

具体的には、$O(n)\to O(n+1)$ は $i\le n-2$、$U(n)\to U(n+1)$ は $i\le 2n-1$、$\mathrm{Sp}(n)\to\mathrm{Sp}(n+1)$ は $i\le 4n+1$ で同型である。

ファイバー束の長完全列

$m:=c(n+1)-1$ とする。prop-hcg-bundle のファイバー束はホモトピー持ち上げ性質をもち(Hat02 Proposition 4.48、p. 379)、ファイバーの包含は $\iota_n$ なので、ホモトピー群の長完全列
$$ \cdots\to\pi_{i+1}(S^m)\xrightarrow{\ \partial\ }\pi_i(G(n))\xrightarrow{(\iota_n)_*}\pi_i(G(n+1))\xrightarrow{\ p_*\ }\pi_i(S^m)\to\cdots\to\pi_0(G(n))\to\pi_0(G(n+1))\to\pi_0(S^m) $$
がある(Hat02 Theorem 4.41、p. 376。$\pi_0$ の項では、像と、基点の成分の逆像が一致するという意味の完全性)。$j< m$ なら $\pi_j(S^m)=0$ である(Hat02 Corollary 4.9、p. 349)。
$1\le i\le m-2$ なら $\pi_{i+1}(S^m)=\pi_i(S^m)=0$ なので $(\iota_n)_*$ は同型であり、$i=m-1\ge1$ なら $\pi_i(S^m)=0$ なので全射である。
$i=0$ を考える。$m\ge1$ なら $S^m$ は弧状連結なので、完全性から $\pi_0(G(n))\to\pi_0(G(n+1))$ は全射である。$m\ge2$ なら $\pi_1(S^m)=0$ なので、$G(n+1)$ の単位元の成分に写る $G(n)$ の成分は単位元の成分だけである。この写像は群の準同型なので、核が自明で単射である。$i\le m-2$ は $i\le c(n+1)-3$ と、$i=m-1$ は $i=c(n+1)-2$ と同じなので、主張が従う。
$SO$、$SU$ の場合は、prop-hcg-bundle の後半のファイバー束 $SO(n)\to SO(n+1)\to S^n$、$SU(n)\to SU(n+1)\to S^{2n+1}$ に同じ議論を当てればよい(球面の次元がそれぞれ $n$、$2n+1$ である)。$\square$

何段も上の群への包含

$0\le n< N$ とする。包含 $G(n)\to G(N)$ は $i\le c(n+1)-3$ で $\pi_i$ の同型、$i=c(n+1)-2$ で全射を誘導する。

包含は $\iota_{N-1}\circ\cdots\circ\iota_n$ である。$k\ge n+1$ については $c(k+1)-3\ge c(n+1)-3+c\ge c(n+1)-2$ なので、thm-hcg-stability により $\iota_k$ は $i\le c(n+1)-2$ で同型である。最初の $\iota_n$ に同じ定理を当てて合成すればよい。$\square$

$\mathbb F=\mathbb R,\mathbb C$ では、$G(N)/G(n)$ が Stiefel 多様体 $V_{N-n}(\mathbb F^N)$ と同相で(Stiefel多様体 の命題「等質空間としての表示」)、それが $(c(n+1)-2)$ 連結である(同じ記事の定理「低い次数のホモトピー群の消滅」)ことから、ファイバー束 $G(n)\to G(N)\to V_{N-n}(\mathbb F^N)$ の長完全列で cor-hcg-iterated を一度に得ることもできる。

安定な群と周期性

cor-hcg-iterated により、$\pi_i(G(n))$ は $n$ が十分大きければ $n$ によらない。そこで帰納極限
$$ \pi_i(O):=\operatorname*{colim}_n\pi_i(O(n)),\qquad\pi_i(U):=\operatorname*{colim}_n\pi_i(U(n)),\qquad\pi_i(\mathrm{Sp}):=\operatorname*{colim}_n\pi_i(\mathrm{Sp}(n)) $$
を安定ホモトピー群とよぶ。$\pi_i(O)\cong\pi_i(O(n))$($n\ge i+2$)、$\pi_i(U)\cong\pi_i(U(n))$($2n\ge i+1$)、$\pi_i(\mathrm{Sp})\cong\pi_i(\mathrm{Sp}(n))$($4n\ge i-1$)である。安定な群の値は Bott の周期性定理によって次のように与えられる(Hat02 Example 4.55、p. 384、Bott周期性定理。この記事では証明しない)。

$i\bmod 8$$0$$1$$2$$3$$4$$5$$6$$7$
$\pi_i(O)$$\mathbb Z/2$$\mathbb Z/2$$0$$\mathbb Z$$0$$0$$0$$\mathbb Z$
$\pi_i(U)$$0$$\mathbb Z$$0$$\mathbb Z$$0$$\mathbb Z$$0$$\mathbb Z$
$\pi_i(\mathrm{Sp})$$0$$0$$0$$\mathbb Z$$\mathbb Z/2$$\mathbb Z/2$$0$$\mathbb Z$

周期性そのものはこの記事の主張ではない。次の節では、$i\le3$ の値と一部の $\pi_4$ を、周期性を使わずに証明する。

低い次数の群

低い次元の同一視
  1. $O(1)=\{\pm1\}$、$SO(1)=SU(1)=\{1\}$ であり、$SO(2)\cong U(1)\cong S^1$ である。
  2. $\mathrm{Sp}(1)=S^3$ であり、$\mathrm{Sp}(1)\cong SU(2)$(位相群として)である。
  3. 純四元数の空間 $\mathrm{Im}\,\mathbb H\cong\mathbb R^3$ への作用 $\rho(q)(w):=qw\bar q$ により、$\rho\colon S^3\to SO(3)$ は核 $\{\pm1\}$ の 2 重の被覆写像になる。したがって $\pi_1(SO(3))\cong\mathbb Z/2$ であり、$i\ge2$ では $\rho_*\colon\pi_i(S^3)\to\pi_i(SO(3))$ は同型である。

1:$SO(2)$ の元は回転行列 $\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}$ で、$e^{i\theta}$ との対応が同相を与える。2・3 は 二重被覆群 の命題「$\mathrm{Sp}(1)$ と $\mathrm{SU}(2)$ の同型」と定理「$\mathrm{SU}(2)$ による $\mathrm{SO}(3)$ の二重被覆」である。$S^3$ は単連結なので、2 重の被覆の葉の数 $2$ は $\pi_1(SO(3))$ の位数に等しく(Hat02 Proposition 1.32、p. 61)、$\pi_1(SO(3))\cong\mathbb Z/2$ である。被覆写像は $i\ge2$ で $\pi_i$ の同型を誘導する(ホモトピー群 の命題「被覆空間と$n$-単純性」、Hat02 Proposition 4.1、p. 342)。$\square$

位相群のホモトピー群の和は、点ごとの積で計算できる。

点ごとの積と和

$K$ を位相群、$i\ge1$ とし、$f,h\colon(S^i,s_0)\to(K,1)$ を基点付き写像とする。

  1. 点ごとの積 $f\cdot h$ について $[f\cdot h]=[f]+[h]$ が $\pi_i(K)$ で成り立つ。
  2. $a$ が $K$ の単位元の弧状連結成分の元なら、$[afa^{-1}]=[f]$ である。

要点:和をとった写像は、片方を定数にのばした 2 つの写像の点ごとの積に等しい。

詳しい証明を開く

1:写像を $(I^i,\partial I^i)\to(K,1)$ で表す。$f'$ を第 1 座標の前半で $f$(座標を 2 倍に引き延ばす)、後半で $1$、$h'$ を前半で $1$、後半で $h$ とすると、ホモトピー群の和の定義(ホモトピー群 の定義「ホモトピー群の演算($n\geq1$)」)により $f+h=f'\cdot h'$ である。$f'\simeq f$、$h'\simeq h$(境界を $1$ に保つホモトピー)なので、それらの点ごとの積が $f'\cdot h'\simeq f\cdot h$ を与える。2:$a$ と $1$ を結ぶ道 $a_t$ をとると、$a_tfa_t^{-1}$ は境界を $1$ に保つホモトピーである。$\square$

低い次数のホモトピー群の表

$n\ge1$ について次が成り立つ。$O(n)$ の $\pi_0$ は $\mathbb Z/2$ で、$i\ge1$ の $\pi_i(O(n))$ は $\pi_i(SO(n))$ と同じである(prop-hcg-det)。

群$\pi_0$$\pi_1$$\pi_2$$\pi_3$$\pi_4$
$SO(n)$$0$$n=1$:$0$、$n=2$:$\mathbb Z$、$n\ge3$:$\mathbb Z/2$$0$$n\le2$:$0$、$n=3$:$\mathbb Z$、$n=4$:$\mathbb Z\oplus\mathbb Z$、$n\ge5$:$\mathbb Z$$n\le2$:$0$、$n=3$:$\mathbb Z/2$、$n=4$:$(\mathbb Z/2)^2$、$n\ge6$:$0^{*}$
$U(n)$$0$$\mathbb Z$$0$$n=1$:$0$、$n\ge2$:$\mathbb Z$$n=1$:$0$、$n=2$:$\mathbb Z/2$、$n\ge3$:$0^{*}$
$SU(n)$$0$$0$$0$$n=1$:$0$、$n\ge2$:$\mathbb Z$$n=1$:$0$、$n=2$:$\mathbb Z/2$、$n\ge3$:$0^{*}$
$\mathrm{Sp}(n)$$0$$0$$0$$\mathbb Z$$\mathbb Z/2$

$^{*}$ の欄は、thm-hcg-stability で安定な群に等しいことを示し、その値に Bott の周期性定理(この記事では証明しない)を使う。$\pi_4(SO(5))$ はこの表では扱わない。

球面の場合から安定性で広げる

球面については、$\pi_i(S^1)=0$($i\ge2$。$\mathbb R\to S^1$ が被覆で $\mathbb R$ が可縮なので Hat02 Proposition 4.1)、$\pi_1(S^3)=\pi_2(S^3)=0$、$\pi_3(S^3)\cong\mathbb Z$(ホモトピー群 の例「球面の次元未満の群 $\pi_k(S^n)=0\ (1\leq k< n)$」と例「球面自身: $\pi_n(S^n)\cong\mathbb{Z}$」)、$\pi_4(S^3)\cong\mathbb Z/2$(球面のホモトピー群 の低次の計算表、Hat02 §4.1 の表、p. 339。この記事では証明しない)を使う。
$\pi_0$:$SO(n)$、$U(n)$、$SU(n)$ は prop-hcg-det の 1 による。$\mathrm{Sp}(1)=S^3$ は弧状連結で、thm-hcg-stability の $i=0\le4(n+1)-3$ により $\mathrm{Sp}(n)$ も弧状連結である。
$SO(n)$:$n=1,2$ は prop-hcg-low の 1 と球面の値による。$n=3$ では prop-hcg-low の 3 により $\pi_1\cong\mathbb Z/2$、$\pi_i\cong\pi_i(S^3)$($i=2,3,4$)である。thm-hcg-stability により $SO(n)\to SO(n+1)$ は $i\le n-2$ で同型、$i=n-1$ で全射である。よって $\pi_1(SO(n))\cong\mathbb Z/2$($n\ge3$)であり、$\pi_2(SO(4))$ は $\pi_2(SO(3))=0$ の全射の像なので $0$、$n\ge4$ では $\pi_2(SO(n))\cong\pi_2(SO(4))=0$ である。$\pi_3$ と $\pi_4$ の $n=4$ は prop-hcg-so4、$\pi_3$ の $n=5$ は prop-hcg-so5 により、$n\ge5$ では $3\le n-2$ なので $\pi_3(SO(n))\cong\pi_3(SO(5))\cong\mathbb Z$ である。$n\ge6$ では $4\le n-2$ なので $\pi_4(SO(n))\cong\pi_4(O)=0$ である。
$SU(n)$ と $U(n)$:$SU(1)=\{1\}$、$SU(2)\cong S^3$(prop-hcg-low の 2)である。$SU(n)\to SU(n+1)$ は $i\le2n-1$ で同型、$i=2n$ で全射なので、$n\ge2$ では $i\le3$ について $\pi_i(SU(n))\cong\pi_i(S^3)$ であり、$\pi_1(SU(1))=0\to\pi_1(SU(2))$ も同型、$\pi_2(SU(2))=0$ である。$U(n)$ は prop-hcg-det の 2 による($U(1)=S^1$)。$n\ge3$ では $4\le2n-1$ なので $\pi_4(U(n))\cong\pi_4(U)=0$ であり、$\pi_4(SU(n))\cong\pi_4(U(n))$ である。
$\mathrm{Sp}(n)$:$\mathrm{Sp}(n)\to\mathrm{Sp}(n+1)$ は $i\le4n+1$ で同型なので、$i\le5$ について $\pi_i(\mathrm{Sp}(n))\cong\pi_i(\mathrm{Sp}(1))=\pi_i(S^3)$ である。$\square$

4 次元と 5 次元の回転群

$\mathbb R^4$ を $\mathbb H$ と同一視し(基底 $1,i,j,k$ は正規直交で、$|q|^2=q\bar q$)、$x\in S^3$ について
$$ L_x(z):=xz,\qquad R_x(z):=zx,\qquad C_x(z):=xz\bar x $$
とおく。これらは長さを保つ線形写像で、行列式は $S^3$ の上で連続な $\pm1$ の値をとり $x=1$ で $1$ なので、$SO(4)$ の元である。$SO(4)$ のうち $1$ を固定する元の部分群を $SO(3)$ と同一視する($1$ の直交補は $\mathrm{Im}\,\mathbb H$ で、$C_x$ は prop-hcg-low の 3 の $\rho(x)$ にあたる)。
$$ s:=[x\mapsto L_x],\qquad g:=[x\mapsto C_x]\qquad\in\pi_3(SO(4)) $$
とおく。

4 次元の回転群の 3 次ホモトピー群
  1. $\Phi(A):=\bigl(A(1),\ L_{A(1)}^{-1}A\bigr)$ は同相写像 $SO(4)\to S^3\times SO(3)$ である。
  2. $\pi_3(SO(4))=\mathbb Z s\oplus\mathbb Z g\cong\mathbb Z\oplus\mathbb Z$、$\pi_4(SO(4))\cong(\mathbb Z/2)^2$ である。
  3. $[x\mapsto R_x]=s-g$ である。

要点:$SO(4)$ の元を、$1$ の行き先 $q$ と、$L_q^{-1}$ で $1$ を固定するように直した残りに分ける。$R_x$ は $L_x$ と $C_{\bar x}$ の積に分かれる。

詳しい証明を開く

1:$A(1)$ は単位四元数で、$L_{A(1)}^{-1}A$ は $1$ を固定する $SO(4)$ の元である。逆写像は $(q,B)\mapsto L_qB$ で、どちらも連続である。

2:1 により $\pi_i(SO(4))\cong\pi_i(S^3)\oplus\pi_i(SO(3))$ である(ホモトピー群 の命題「直積のホモトピー群」)。$\Phi$ は $L_q$ を $(q,I)$ に、$SO(3)$ の元 $B$ を $(1,B)$ に写すので、$\pi_3(S^3)$ の生成元 $[\mathrm{id}]$ に対応する元は $s$、$\pi_3(SO(3))$ の生成元 $\rho_*[\mathrm{id}]$(prop-hcg-low の 3)に対応する元は $g$ である。$\pi_4$ は $\pi_4(S^3)\cong\pi_4(SO(3))\cong\mathbb Z/2$ による。

3:$R_x=L_x\circ C_{\bar x}$ である($x\bar x=1$ により $L_x(\bar xzx)=zx$)。lem-hcg-product の 1 により $[x\mapsto R_x]=s+[x\mapsto C_{\bar x}]$ である。共役 $x\mapsto\bar x$ は $S^3$ の上で 3 つの座標の符号を変える直交変換なので写像度は $-1$ であり(写像度 の命題「直交変換の写像度」)、$\pi_3(S^3)$ では $-[\mathrm{id}]$ を表す(ホモトピー群 の例「球面自身: $\pi_n(S^n)\cong\mathbb{Z}$」)。よって $[x\mapsto C_{\bar x}]=\rho_*(-[\mathrm{id}])=-g$ である。$\square$

$\mathbb R^4$ の標準内積は $(z,x):=\operatorname{Re}(\bar zx)$ である。単位ベクトル $x$ に関する鏡映を $\rho_x(z):=z-2(z,x)x$ と書く。四元数で書くと $\rho_x(z)=-x\bar zx$ である

確かめを開く

両辺は $z$ について実線形である。$z=x$ なら右辺は $-x\bar xx=-x$ である。$(z,x)=\operatorname{Re}(\bar zx)=0$ なら $\bar zx$ は純虚数で、$\bar xz=\overline{\bar zx}=-\bar zx$ である。よって $-x\bar zx=x\bar xz=z$ である。

。とくに $\rho_1(z)=-\bar z$ であり、
$$ \rho_x\rho_1(z)=\rho_x(-\bar z)=xzx=L_xR_x(z) $$
となる。lem-hcg-product の 1 と prop-hcg-so4 の 3 により、$[x\mapsto\rho_x\rho_1]=s+(s-g)=2s-g$ である。

5 次元の回転群と境界写像

$p\colon SO(5)\to S^4$、$p(A):=Ae_5$ のファイバー束(prop-hcg-bundle、ファイバー $SO(4)$)の境界写像 $\partial\colon\pi_4(S^4)\to\pi_3(SO(4))$ は、生成元を $\pm(2s-g)$ に写す。したがって $\partial$ は単射で、
$$ \pi_3(SO(5))\cong\bigl(\mathbb Z s\oplus\mathbb Z g\bigr)/\mathbb Z(2s-g)\cong\mathbb Z $$
であり、$s$ の像が生成元、$g$ の像はその $2$ 倍である。

円板の持ち上げを境界に制限する

$\mathbb R^5=\mathbb H\oplus\mathbb R e_5$ とし、$x\in S^3$ と $\theta\in\mathbb R$ について、$e_5$ と $x$ の張る平面で $e_5$ を $x$ の方へ角 $\theta$ だけ回し、その直交補を固定する回転を $T_x(\theta)\in SO(5)$ とする。行列で書くと
$$ T_x(\theta)=I+(\cos\theta-1)(e_5e_5^{\mathsf T}+xx^{\mathsf T})+\sin\theta\,(xe_5^{\mathsf T}-e_5x^{\mathsf T}) $$
で、$(x,\theta)$ について連続、$T_x(0)=I$ である。$D^4$ の点を $tx$($t\in[0,1]$、$x\in S^3$)と書き、
$$ \Psi(tx):=T_x(\pi t)\,T_1(\pi)^{-1} $$
とおく。$t=0$ では $x$ によらず $T_1(\pi)^{-1}$ なので、$\Psi\colon D^4\to SO(5)$ は連続である($(x,t)\mapsto tx$ はコンパクト空間から Hausdorff 空間への閉写像で、商写像である)。
$T_x(\pi)$ は $e_5$ と $x$ の符号を変え、その直交補を固定するので、$\mathbb R^4=e_5^\perp$ の上では鏡映 $\rho_x$ であり、$e_5$ を $-e_5$ に写す。よって $t=1$ のとき $\Psi(x)=T_x(\pi)T_1(\pi)^{-1}$ は $e_5$ を固定し、$\mathbb R^4$ の上で $\rho_x\rho_1$ として働く。とくに $\Psi(S^3)\subset SO(4)$、$\Psi(1)=I$ である。一方
$$ p(\Psi(tx))=T_x(\pi t)(-e_5)=-\cos(\pi t)\,e_5-\sin(\pi t)\,x $$
は境界 $S^3$ を基点 $e_5$ に写し、内部を $S^4\setminus\{e_5\}$ の上へ一対一に写す($t$ は $e_5$ の成分で、$x$ は残りの成分の向きで決まる)。したがって $p\circ\Psi$ はコンパクト空間 $D^4/S^3$ から Hausdorff 空間 $S^4$ への連続な全単射、すなわち同相写像を誘導し、その類は $\pi_4(S^4)$ の生成元 $\pm\iota$ である(ホモトピー群 の例「球面自身: $\pi_n(S^n)\cong\mathbb{Z}$」。同相写像の写像度は $\pm1$)。
$\Psi$ は相対ホモトピー群 $\pi_4(SO(5),SO(4),I)$ の元を表す。長完全列の境界写像は、同型 $p_*\colon\pi_4(SO(5),SO(4))\to\pi_4(S^4)$ の逆と、境界 $S^3$ への制限の合成である(Hat02 Theorem 4.41 とその証明、p. 376。対の長完全列の境界写像が境界への制限であることは Theorem 4.3、p. 344)。よって
$$ \partial(\pm\iota)=[\Psi|_{S^3}]=[x\mapsto\rho_x\rho_1]=2s-g $$
である(最後は上の計算)。$2s-g\ne0$ で $\pi_3(SO(4))$ は捩れをもたないので $\partial$ は単射である。長完全列 $\pi_4(S^4)\xrightarrow{\partial}\pi_3(SO(4))\to\pi_3(SO(5))\to\pi_3(S^4)=0$ により、$\pi_3(SO(5))$ は $\partial$ の余核である。準同型 $as+bg\mapsto a+2b$ は $\mathbb Z s\oplus\mathbb Z g$ から $\mathbb Z$ への全射で、核は $as+bg$ で $a=-2b$ のもの、すなわち $\mathbb Z(2s-g)$ である。よって余核は $\mathbb Z$ と同型で、$s\mapsto1$、$g\mapsto2$ である。$\square$

$x\mapsto\rho_x\rho_1$ は 4 次元球面の接束の貼り合わせ関数でもある(球面上のベクトル束の分類)。上の証明は、$\partial$ が生成元をこの接束の貼り合わせ関数の類に写すことを、$n=4$ の場合に直接確かめたものである。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
同型の範囲 $i\le n-2$(thm-hcg-stability の $SO$ の場合)$SO(2)\to SO(3)$ の $\pi_1$($n=2$、$i=1$)包含の誘導する写像が同型
全射の範囲 $i\le n-1$(thm-hcg-stability の $SO$ の場合)$SO(3)\to SO(4)$ の $\pi_3$($n=3$、$i=3$)包含の誘導する写像が全射
安定域 $n\ge i+2$(thm-hcg-stability から従う $\pi_i(SO(n))\cong\pi_i(O)$)$\pi_3(SO(4))$($n=4$、$i=3$)$\pi_i(SO(n))$ が安定な群と同型
表の確かめ

各行で外れているのは 1 つの条件だけである。

確かめを開く

1 行目:$n=2$ では同型の範囲は $i\le0$ で、$i=1$ は全射だけが言える $i=n-1$ にあたる。thm-hcg-table により $\pi_1(SO(2))\cong\mathbb Z$、$\pi_1(SO(3))\cong\mathbb Z/2$ であり、無限群から位数 $2$ の群への準同型は単射でない(全射であることは定理のとおり)。

2 行目:$n=3$ では全射の範囲は $i\le2$ である。$\pi_3(SO(3))\cong\mathbb Z$ から $\pi_3(SO(4))\cong\mathbb Z\oplus\mathbb Z$(prop-hcg-so4)への準同型の像は巡回群なので、全射でない。

3 行目:$i=3$ の安定域は $n\ge5$ で、$\pi_3(O)\cong\pi_3(SO(5))\cong\mathbb Z$(prop-hcg-so5)である。$\mathbb Z\oplus\mathbb Z$ は巡回群でないので $\mathbb Z$ と同型でない。

関連項目

参考文献

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