Hasse–Arfの定理

同義語:Hasse-Arfの定理ハッセ・アルフの定理Hasse–Arf theorem

概要

Hasse–Arfの定理(Hasse–Arf theorem)とは、完備離散付値体の有限次アーベル拡大 $L/K$ では、上付き番号の分岐群 $G^v$ の飛びがすべて整数である、という定理である。下付き番号で言えば、$G_u\ne G_{u+1}$ となる整数 $u$ について Herbrand 関数の値 $\varphi_{L/K}(u)$ が整数になる。アーベル拡大では惰性群の共役作用が自明なので $\lvert G_0/G_1\rvert$ が下付き番号の飛びを割り、剰余体が有限の局所体では Lubin–Tate 拡大の飛びが $0,1,\dots,m-1$ であることから定理が従う。$S_3$ 拡大では飛び $1/2$ が現れ、アーベル群の仮定は外せない。Artin 導手が整数になることの根拠でもある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Herbrand関数と上付き番号, 分解群と惰性群, 局所類体論, Lubin–Tate理論

Hasse–Arfの定理(Hasse–Arf theorem)とは、完備離散付値体の有限次アーベル拡大 $L/K$ では、上付き番号の分岐群 $G^v$ の列が変わる番号(飛び)がすべて整数である、という定理である。下付き番号の分岐群 $G_u$ で言えば、$G_u\ne G_{u+1}$ となる整数 $u$ について Herbrand 関数の値 $\varphi_{L/K}(u)$ が整数になる、ということである。
下付き番号の飛びは定義から整数だが、Herbrand 関数 $\varphi_{L/K}$ は区間ごとに傾き $1/(G_0:G_t)$ で進むので、その値は一般には分数になる。実際、$S_3$ を Galois 群にもつ拡大では飛び $\frac12$ が現れる(Herbrand関数と上付き番号 の例「上付き番号の飛びが整数でない例」)。アーベル拡大ではこうした分数が必ず打ち消し合う。これは、局所類体論で上付き番号の分岐群が単数群の減少列 $U_K^{(n)}$(整数 $n$ で番号付けされる)に対応することの反映であり、Artin導手 が整数になることの根拠にもなる。
この記事では、(1) 下付き番号での言い換え(隣り合う飛びの差の割り切れ方)、(2) 惰性群の共役作用の公式と、アーベル拡大では $G_0/G_1$ の位数が下付き番号の飛びを割ること、(3) $G_1$ の中の飛びが 1 つしかない場合(とくに $\lvert G_1\rvert=p$ の場合)の定理、(4) 剰余体が有限の局所体についての定理、を完全に証明する。(4) では Lubin–Tate 拡大の分岐群と局所類体論を引用する。剰余体が一般の完全体の場合は所在を示して引用する。

主張

設定と記号は Herbrand関数と上付き番号 と同じとする。すなわち $K$ は完備離散付値体、$L/K$ は有限次 Galois 拡大で剰余体の拡大は分離的、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$、$G_u$ と $G^v$ は下付き番号と上付き番号の分岐群、$\varphi=\varphi_{L/K}$、$\psi=\psi_{L/K}$ は Herbrand 関数とその逆関数である。$v\ge-1$ が上付き番号の飛びであるとは、すべての $\varepsilon>0$ について $G^{v+\varepsilon}\ne G^v$ となることをいう。$p$ を剰余体の標数とする。

Hasse–Arfの定理

$L/K$ が有限次アーベル拡大なら、上付き番号の分岐群 $G^v$ の飛びはすべて整数である。同じことだが、整数 $u\ge-1$ が $G_u\ne G_{u+1}$ を満たすなら $\varphi_{L/K}(u)$ は整数である。

仮定の役割

アーベル拡大という仮定が本質的に効いており、一般の Galois 拡大では上付き番号の飛びが整数であるとは限らない。たとえば円分拡大 $\mathbb Q_p(\zeta_{p^n})/\mathbb Q_p$ では上付き番号の飛びは $0,1,\dots,n-1$ で、すべて整数である。この定理は、アーベル拡大の指標の導手が整数になることなどに使われる。

2 つの述べ方が同じであることは、下付き番号の飛びがちょうど $G_u\ne G_{u+1}$ となる整数 $u$ であり、$\varphi$ がその飛びを上付き番号の飛びに移すことによる(Herbrand関数と上付き番号 の定義「上付き番号の分岐群」の後の段落)。
この記事では一般の場合の証明をしない。剰余体の拡大が分離的な一般の完備離散付値体の場合は Ser79 Chapter V, §7, Theorem 1(p. 93)で、証明は pp. 94–96 にある。そこでは Herbrand の定理を使って「巡回拡大で完全分岐、最大の飛びについて示す」場合(同 Proposition 11, p. 94)に帰着し、同章 §§3–6 のノルム写像の解析を使う。定理は剰余体が有限の場合に Hasse が、一般の場合に Arf が証明した(Ser79 Chapter IV, §3, p. 76 の Remark)。

下付き番号での言い換え

飛びの差による言い換え

$u\ge0$ で $G_u\ne G_{u+1}$ となる整数を小さい順に $u_1< u_2<\dots< u_r$ とする($G_0=1$ なら $r=0$)。このとき $G$ の上付き番号の飛びがすべて整数であることは、$k=2,\dots,r$ について
$$ (G_0:G_{u_k})\ \text{が}\ u_k-u_{k-1}\ \text{を割り切る} $$
ことと同値である。

上付き番号の飛びは、$-1$($G\ne G_0$ のとき)と $\varphi(u_1),\dots,\varphi(u_r)$ である。$u_1$ より小さい整数 $u\ge0$ では $G_u=G_{u+1}$ なので $G_0=G_1=\dots=G_{u_1}$ であり、$0< t\le u_1$ で $G_t=G_0$ となるから、$\varphi(u_1)=u_1$ は整数である。$k\ge2$ について、$u_{k-1}< t\le u_k$ では $G_t=G_{u_k}$ で一定なので
$$ \varphi(u_k)-\varphi(u_{k-1})=\frac{u_k-u_{k-1}}{(G_0:G_{u_k})} $$
である。$\varphi(u_1)$ が整数なので、$\varphi(u_1),\dots,\varphi(u_r)$ がすべて整数であることは、この差がすべて整数であることと同値である。$\square$

たとえば $G=G_0$ が位数 $p^n$ の巡回群で、どの $G_u/G_{u+1}$($u\ge1$)も位数 $1$ か $p$ なら、飛びは $n$ 個あり、$(G_0:G_{u_k})=p^{k-1}$ なので、定理は「$u_k\equiv u_{k-1}\pmod{p^{k-1}}$」と言い換えられる。これは Ser79 Chapter IV, §3 の Example(p. 76)の形である。

位数 $p^2$ の巡回拡大

$p$ を奇素数とし、$\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^3})$ の中で $\mathbb{Q}_p$ 上次数 $p^2$ の部分体 $M$ をとる($\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^3})/\mathbb{Q}_p)\cong(\mathbb{Z}/p^3\mathbb{Z})^\times$ の位数 $p-1$ の部分群 $H$ の固定体)。$M/\mathbb{Q}_p$ は位数 $p^2$ の巡回拡大で、上付き番号の飛びは $1,2$、下付き番号の飛びは $u_1=1$、$u_2=1+p$ である。差 $u_2-u_1=p$ は $(G_0:G_{u_2})=p$ で割り切れる。

計算を開く

Herbrand関数と上付き番号 の例「円分拡大」により、$\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^3})/\mathbb{Q}_p$ の上付き番号の分岐群は $v>0$ で $G(3)^{\lceil v\rceil}$ である。同じ記事の定理「上付き番号と商」により、$\bar G:=\operatorname{Gal}(M/\mathbb{Q}_p)$ について $\bar G^v=G(3)^{\lceil v\rceil}H/H$ である。$G(3)^k$ は位数 $p^{3-k}$ で $H$ と交わらないので、$\bar G^v=\bar G$($v\le1$)、位数 $p$($1< v\le2$)、$1$($v>2$)である。$\psi_{M/\mathbb{Q}_p}(v)=\int_0^v(\bar G^0:\bar G^w)\,dw$ から $\psi(1)=1$、$\psi(2)=1+p$ であり、下付き番号の飛びは $1$ と $1+p$ である。

アーベル拡大での割り切れ方

$\pi_L$ を $L$ の素元、$\kappa_L$ を $L$ の剰余体、$U_L^{(0)}:=\mathcal{O}_L^\times$、$U_L^{(i)}:=1+\pi_L^i\mathcal{O}_L$($i\ge1$)とする。$\sigma\in G_0$ について、$\sigma\in G_i$ であることと $\sigma(\pi_L)/\pi_L\in U_L^{(i)}$ は同値であり(Ser79 Chapter IV, §2, Proposition 5, p. 66)、$\sigma\mapsto\sigma(\pi_L)/\pi_L$ は $\pi_L$ の選び方によらない単射準同型
$$ \theta_0\colon G_0/G_1\hookrightarrow U_L^{(0)}/U_L^{(1)}=\kappa_L^\times,\qquad\theta_i\colon G_i/G_{i+1}\hookrightarrow U_L^{(i)}/U_L^{(i+1)}\cong\mathfrak{p}_L^i/\mathfrak{p}_L^{i+1}\quad(i\ge1) $$
を引き起こす(Ser79 Chapter IV, §2, Proposition 7, p. 67、Neu99 Chapter II, Proposition (10.2), p. 177)。ここで $\sigma\in G_i$ について $\sigma(\pi_L)=\pi_L(1+a)$($a\in\mathfrak{p}_L^i$)と書くと、$\theta_i(\sigma)$ は $a$ の類である。これは 分解群と惰性群 の記事の定理「分岐群の商」の写像の局所版で、とくに $G_0/G_1$ は巡回群である(同じ記事の系「惰性群の構造」)。$\mathfrak{p}_L^i/\mathfrak{p}_L^{i+1}$ は $\kappa_L$ 上 1 次元のベクトル空間なので、$\kappa_L^\times$ の元を掛けることができる。

惰性群の共役作用

$s\in G_0$、$t\in G_i$($i\ge1$)について
$$ \theta_i(sts^{-1})=\theta_0(s)^i\,\theta_i(t) $$
である。

$\theta_i$ は素元の選び方によらないので、素元 $\pi':=s^{-1}(\pi_L)$ で計算する。$t(\pi')=\pi'(1+a)$($a\in\mathfrak{p}_L^i$)と書くと、$\theta_i(t)$ は $a$ の類である。$s$ を施すと
$$ sts^{-1}(\pi_L)=s(t(\pi'))=s(\pi')\bigl(1+s(a)\bigr)=\pi_L\bigl(1+s(a)\bigr) $$
なので、$\theta_i(sts^{-1})$ は $s(a)$ の類である。$a=b\pi_L^i$($b\in\mathcal{O}_L$)、$s(\pi_L)=w\pi_L$($w\in\mathcal{O}_L^\times$)と書くと $s(a)=s(b)\,w^i\pi_L^i$ である。$s\in G_0$ なので $s(b)\equiv b\pmod{\mathfrak{p}_L}$ であり、$s(a)\equiv w^ib\pi_L^i=w^ia\pmod{\mathfrak{p}_L^{i+1}}$ となる。$w$ の類は $\theta_0(s)$ なので、$s(a)$ の類は $\theta_0(s)^i\theta_i(t)$ である。$\square$

アーベル拡大の下付き番号の飛び

$G_0$ がアーベル群(たとえば $G$ がアーベル群)とし、$e_0:=\lvert G_0/G_1\rvert$ とおく。整数 $i\ge1$ が $G_i\ne G_{i+1}$ を満たすなら、$e_0$ は $i$ を割り切る。

$t\in G_i\setminus G_{i+1}$ をとると $\theta_i(t)\ne0$ である。$G_0/G_1$ は巡回群なので、その生成元に移る $s\in G_0$ をとる。$G_0$ はアーベル群なので $sts^{-1}=t$ であり、prop-ha-conjugation から $\theta_0(s)^i\theta_i(t)=\theta_i(t)$ である。$\theta_i(t)$ は 1 次元の $\kappa_L$ ベクトル空間の $0$ でない元なので $\theta_0(s)^i=1$ である。$\theta_0$ は単射なので $\theta_0(s)$ の位数は $e_0$ であり、$e_0$ は $i$ を割り切る。$\square$

この系は Ser79 Chapter IV, §2, Proposition 9 の Corollary 2(p. 70)である。これだけで Hasse–Arf の定理が従う場合がある。

$G_1$ の飛びが1つの場合

$G$ をアーベル群とし、ある整数 $m\ge1$ について $G_m=G_1$、$G_{m+1}=1$ とする(たとえば $\lvert G_1\rvert=p$ のとき、または $G_1=1$ のとき)。このとき $L/K$ について Hasse–Arf の定理が成り立つ。

$G_1=1$ なら、上付き番号の飛びは $-1$ と $0$ のうち現れるものだけで、整数である。$G_1\ne1$ とすると、下付き番号の飛びは、$-1$($G\ne G_0$ のとき)、$0$($G_0\ne G_1$ のとき)、$m$ である。$\varphi(-1)=-1$、$\varphi(0)=0$ であり、$1\le t\le m$ では $G_t=G_1$ なので
$$ \varphi(m)=\frac{m\,\lvert G_1\rvert}{\lvert G_0\rvert}=\frac{m}{e_0} $$
である。$G_m\ne G_{m+1}$ なので cor-ha-divisibility により $e_0$ は $m$ を割り切り、$\varphi(m)$ は整数である。$\lvert G_1\rvert=p$ なら $G_1$ の部分群は $1$ と $G_1$ だけなので、$G_1$ が $1$ になる直前の番号を $m$ とすれば仮定を満たす。$\square$

定理が当てはまる例
  • $\mathbb{Q}_2(i)/\mathbb{Q}_2$:$G=G_0=G_1$ は位数 $2$、$G_2=1$ で、$m=1$、$e_0=1$、$\varphi(1)=1$ である。$\pi_L=1+i$ と複素共役 $\sigma$ について $\sigma(\pi_L)-\pi_L=-2i$ の付値が $2$ であることから分かる。
  • $\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^2})/\mathbb{Q}_p$($p$ は奇素数):$\lvert G_1\rvert=p$、$e_0=p-1$、$m=p-1$ で、$\varphi(p-1)=1$ である(Herbrand関数と上付き番号 の例「円分拡大」)。$e_0=p-1$ が $m=p-1$ を割ることは cor-ha-divisibility のとおりである。

局所体での証明

この節では $K$ を 局所体(剰余体が有限の完備離散付値体)とし、剰余体の元の個数を $q$ とする。道具は Lubin–Tate理論 の拡大である。$K$ の素元 $\pi$ と $m\ge1$ について、$K_{\pi,m}$ を $\pi^m$ 等分点で生成される Lubin–Tate 拡大とする(Lubin–Tate理論 の定義「等分点とLubin–Tate拡大」)。同じ記事の定理「Lubin–Tate拡大は完全分岐アーベル拡大」により、$K_{\pi,m}/K$ は次数 $(q-1)q^{m-1}$ の完全分岐アーベル拡大で、$K=K_{\pi,0}\subset K_{\pi,1}\subset\dots\subset K_{\pi,m}$ であり、$[K_{\pi,m}:K_{\pi,k}]=q^{m-k}$ である。$K=\mathbb{Q}_p$、$\pi=p$ なら $K_{p,m}=\mathbb{Q}_p(\zeta_{p^m})$ である。

Lubin–Tate拡大の分岐群

$G:=\operatorname{Gal}(K_{\pi,m}/K)$ の下付き番号の分岐群は、$G_0=G$ であり、$1\le k\le m$ と整数 $u$ について
$$ G_u=\operatorname{Gal}(K_{\pi,m}/K_{\pi,k})\qquad(q^{k-1}\le u\le q^k-1) $$
であり、$u\ge q^{m-1}$ では $G_u=1$ である。このとき $\varphi_{K_{\pi,m}/K}(q^k-1)=k$ であり、$v>0$ について $G^v=\operatorname{Gal}(K_{\pi,m}/K_{\pi,\lceil v\rceil})$($\lceil v\rceil>m$ では $1$)である。とくに上付き番号の飛びは $0,1,\dots,m-1$ のうちにある。

下付き番号の分岐群の式はこの記事では証明しない。Neu99 Chapter V, Proposition (6.1)(p. 353)にある。$G_0=G$ は $K_{\pi,m}/K$ が完全分岐であることによる。$q^{m-1}\le u$ では $G_u\subset G_{q^{m-1}}=\operatorname{Gal}(K_{\pi,m}/K_{\pi,m})=1$ である。
Herbrand 関数を計算する。$g_0=\lvert G\rvert=(q-1)q^{m-1}$ である。$1\le j\le m$ と $q^{j-1}-1< t\le q^j-1$ では $\lceil t\rceil$ が $q^{j-1}$ 以上 $q^j-1$ 以下なので $G_t=\operatorname{Gal}(K_{\pi,m}/K_{\pi,j})$ で、位数は $q^{m-j}$ である。この区間の長さは $q^j-q^{j-1}$ なので
$$ \int_{q^{j-1}-1}^{q^j-1}\frac{g_t}{g_0}\,dt=\frac{(q^j-q^{j-1})\,q^{m-j}}{(q-1)q^{m-1}}=1 $$
であり、$j=1,\dots,k$ について足して $\varphi(q^k-1)=k$ を得る。$k-1< v\le k$($1\le k\le m$)なら、$\varphi$ は狭義単調増加なので $q^{k-1}-1< \psi(v)\le q^k-1$ であり、$G^v=G_{\psi(v)}=\operatorname{Gal}(K_{\pi,m}/K_{\pi,k})$ である。$v>m$ なら $\psi(v)>q^m-1$ で $G^v=1$ である。よって $G^v$ は $k-1< v\le k$ の範囲で一定で、飛びは整数 $0,\dots,m-1$ のいずれかである。$\square$

$q=2$ では $G_0=G_1$ なので $0$ は飛びでない。$K=\mathbb{Q}_p$ の場合は Herbrand関数と上付き番号 の例「円分拡大」と同じ計算である。

局所体でのHasse–Arfの定理

$K$ を局所体とすると、$K$ の有限次アーベル拡大 $L$ について、上付き番号の分岐群の飛びはすべて整数である。

段 1(完全分岐の場合への帰着). $L_0$ を $L/K$ の最大不分岐部分拡大、$H:=\operatorname{Gal}(L/L_0)$ とすると $H=G_0$ であり(不分岐拡大と完全分岐拡大 の記事の定理「最大不分岐部分拡大」)、$L/L_0$ は完全分岐なアーベル拡大である。$u\ge0$ では $H_u=G_u\cap H=G_u$ なので、$L/L_0$ と $L/K$ の Herbrand 関数は同じ式で与えられ、一致する。よって $v\ge0$ で $H^v=G^v$ であり、$-1< v< 0$ では $G^v=G_0$ で一定である。したがって $G$ の飛びは、$-1$(整数)と $H$ の飛びである。以下 $L/K$ は完全分岐とする。
段 2(Lubin–Tate 拡大に入れる). $\pi_L$ を $L$ の素元とし、$\pi:=N_{L/K}(\pi_L)$ とおく。完全分岐なので $v_K(\pi)=v_L(\pi_L)=1$ で、$\pi$ は $K$ の素元である。$N:=N_{L/K}(L^\times)$ は $K^\times$ の開部分群であり(局所類体論 の命題「ノルム群は開部分群」)、$U_K^{(n)}$($n\ge1$)は $1$ の基本近傍系をなすので、ある $m$ で $U_K^{(m)}\subset N$ である。$\pi\in N$ なので $\pi^{\mathbb{Z}}\times U_K^{(m)}\subset N$ である。左辺は $K_{\pi,m}$ のノルム群である(Lubin–Tate理論 の系「Lubin–Tate拡大のノルム群」)。ノルム群が大きいほど体は小さいので(局所類体論 の命題「ノルム群と拡大の対応」の (ii))、$L\subset K_{\pi,m}$ である。
段 3(飛びの比較). $\tilde G:=\operatorname{Gal}(K_{\pi,m}/K)$、$N':=\operatorname{Gal}(K_{\pi,m}/L)$ とすると $G=\tilde G/N'$ であり、Herbrand関数と上付き番号 の定理「上付き番号と商」により $G^v=\tilde G^vN'/N'$ である。$v$ が $G$ の飛びなら、すべての $\varepsilon>0$ で $\tilde G^vN'\ne\tilde G^{v+\varepsilon}N'$ なので $\tilde G^v\ne\tilde G^{v+\varepsilon}$ であり、$v$ は $\tilde G$ の飛びである。thm-ha-lubin-tate により $v$ は整数である。$\square$

この証明は Neu99 Chapter V, Proposition (6.3)(p. 355)の証明の筋道に従った。同じ議論から、局所相互写像が単数群 $U_K^{(n)}$ を上付き番号の分岐群 $G^n$ の上へ移すこと(Neu99 Chapter V, Theorem (6.2), p. 354、CF67 Chapter VI(Serre), §4.1, Theorem 1, p. 155)が従い、Hasse–Arf の定理はその言い換えとみることもできる(同 Corollary, p. 157)。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
$G$ がアーベル群$\mathbb{Q}_3(\zeta_3,\sqrt[3]{2})/\mathbb{Q}_3$($G\cong S_3$)上付き番号の飛び $\tfrac12$ が整数でない
$G$ がアーベル群($G_0$ がアーベル群)同じ $S_3$ 拡大$e_0=2$ が下付き番号の飛び $1$ を割り切る(cor-ha-divisibility)
反例の確認

1 行目と 2 行目は、Herbrand関数と上付き番号 の例「上付き番号の飛びが整数でない例」による。そこでは $G_0=S_3$、$G_1=A_3$、$G_2=1$ で、$\varphi(1)=\lvert G_1\rvert/\lvert G_0\rvert=\frac12$ である。prop-ha-lower の言い換えでは、$u_1=0$、$u_2=1$、$(G_0:G_1)=2$ が $u_2-u_1=1$ を割らない。prop-ha-conjugation で見ると、互換 $s$ は $\theta_0(s)=-1$ なので $\theta_1(sts^{-1})=-\theta_1(t)$、すなわち $s$ は位数 $3$ の元 $t$ を $t^{-1}$ に移し、$G_0$ がアーベル群でないことがそのまま割り切れ方の破れになる。

補足

  • Artin 導手の整数性. $G$ の 1 次元の指標 $\chi$ の Artin 導手の指数は $\varphi_{L/K}(c_\chi)+1$($c_\chi$ は $\chi$ が $G_{c_\chi}$ 上で自明でない最大の整数)で、$\chi$ の核の固定体で計算し直すと Hasse–Arf の定理により整数になる(Ser79 Chapter VI, §2, Proposition 5 と Corollary, p. 102)。これと Brauer の誘導定理から、一般の表現の Artin 導手も整数になる(Artin の定理)。詳しくは Artin導手 を参照。逆に、Artin の定理から Hasse–Arf の定理を導くこともできる(同 p. 102 の Remark 2)。
  • Herbrand の定理との関係. 上付き番号が商と整合すること(Herbrand関数と上付き番号 の定理「上付き番号と商」)により、飛びの整数性は商に遺伝する。thm-ha-local の段 3 と、Ser79 Chapter V, §7 の一般の場合の帰着は、どちらもこの性質を使う。
  • $p$ 群の場合. Ser79 Chapter IV, §3, Exercise 2(p. 77)は、四元数群 $Q_8$ を Galois 群にもち $G_4=1$ となる完全分岐拡大では $G=G_0=G_1$、$\{\pm1\}=G_2=G_3$ となり、上付き番号の飛びに $\frac32$ が現れることを演習としている(拡大が存在することは同書の文献 [57] による。この記事では証明しない)。分岐群がこの形なら $\varphi(3)=1+\frac{2\cdot2}{8}=\frac32$ である。
  • 剰余体の仮定. この記事の設定では剰余体の拡大を分離的と仮定している。剰余体の拡大が分離的でない場合は分岐群の定義そのものを 2 通りに分ける必要がある(Ser79 Chapter IV, §1, p. 65 の Remark 1、CF67 Chapter I(Fröhlich), §9 の Note, p. 35)。

関連項目

参考文献

[1]
Jean-Pierre Serre (translated by Marvin Jay Greenberg), Local Fields, Springer, Graduate Texts in Mathematics 67, 1979, Chapter IV, §1, Remark 1 (p. 65); §2: Proposition 5 (p. 66), Proposition 7 (p. 67), Proposition 9 (p. 69) and its Corollary 2 (p. 70); §3: Theorem (Hasse–Arf), Remark and Example (p. 76), Exercise 2 (p. 77); Chapter V, §7: Theorem 1 (p. 93), Proposition 11 (p. 94), proof (pp. 94–96); Chapter VI, §2: Proposition 5, Corollary, Remark 2 (p. 102)
[2]
Jürgen Neukirch (translated by Norbert Schappacher), Algebraic Number Theory, Springer, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 322, 1999, Chapter II: Proposition (10.2) (p. 177); Chapter V: Proposition (6.1) (p. 353), Theorem (6.2) (p. 354), Proposition (6.3) (p. 355)
[3]
J. W. S. Cassels, A. Fröhlich (eds.), Algebraic Number Theory, Academic Press, 1967, Chapter I(A. Fröhlich, Local Fields), §9 の Note(p. 35);Chapter VI(J.-P. Serre, Local Class Field Theory), §4.1:Theorem 1(p. 155、証明は pp. 155–157)と Corollary(p. 157)

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