楕円の共役直径

同義語:共役直径conjugate diameters

概要

楕円の共役直径(conjugate diameters)とは、楕円 $\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1$($a,b>0$)の 2 本の直径で、一方に平行な弦の中点がすべて他方を含む直線の上にあるものである。点 $P=(a\cos t,b\sin t)$ を通る直径に共役な直径は $Q=(-a\sin t,b\cos t)$ を通る直径ただ 1 本で、共役の関係は対称であり、$OP$ が座標軸でなければ傾きの積は $-\frac{b^2}{a^2}$ である。$y$ 座標を $\frac ab$ 倍する 1 次変換で円に移すと、共役直径は垂直な 2 直径になる。共役な半直径について $OP^2+OQ^2=a^2+b^2$ で、2 本が張る平行四辺形の面積は $ab$ である。$P$ での接線は $OQ$ に平行である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 2次曲線の媒介変数表示, 1次変換と行列式:面積の拡大率, 中点連結定理, ベクトルの内積

高校での出発点:平行な弦の中点を集める

楕円に、同じ傾きの直線を何本も引く。直線が楕円と 2 点で交わるとき、その 2 点を結ぶ線分(弦)の中点をとる。中点はどこに並ぶだろうか。まず計算してみる。

楕円の傾き $1$ の弦の中点

楕円 $\dfrac{x^2}9+\dfrac{y^2}4=1$ と直線 $y=x+k$ を考える。$y=x+k$ を楕円の式に代入し、両辺に $36$ を掛けると
$$ 4x^2+9(x+k)^2=36,\qquad\text{つまり}\qquad 13x^2+18kx+9k^2-36=0 $$
である。この 2 次方程式の判別式を $4$ で割ったものは $(9k)^2-13(9k^2-36)=468-36k^2$ なので、$k^2<13$ のとき直線は楕円と 2 点で交わる。2 つの交点の $x$ 座標を $x_1$、$x_2$ とすると、解と係数の関係から $x_1+x_2=-\dfrac{18k}{13}$ である。弦の中点 $M$ の座標は
$$ x_M=\frac{x_1+x_2}2=-\frac{9k}{13},\qquad y_M=x_M+k=\frac{4k}{13} $$
である。$k$ によらず $y_M=-\dfrac49x_M$ が成り立つので、中点はすべて原点を通る直線 $y=-\dfrac49x$ の上にある。たとえば $k=-2$ では交点は $(0,-2)$ と $\left(\dfrac{36}{13},\dfrac{10}{13}\right)$ で、中点 $\left(\dfrac{18}{13},-\dfrac8{13}\right)$ は $-\dfrac49\cdot\dfrac{18}{13}=-\dfrac8{13}$ を満たす。

$k=3$ の弦でも確かめる

$k=3$ では交点は $(-3,0)$ と $\left(-\dfrac{15}{13},\dfrac{24}{13}\right)$ で、中点は $\left(-\dfrac{27}{13},\dfrac{12}{13}\right)$ である。$-\dfrac49\cdot\left(-\dfrac{27}{13}\right)=\dfrac{12}{13}$ なので、この中点も直線 $y=-\dfrac49x$ の上にある。

円の傾き $1$ の弦の中点

円 $x^2+y^2=9$ と直線 $y=x+k$ では、代入すると $2x^2+2kx+k^2-9=0$ で、解と係数の関係から中点は $\left(-\dfrac k2,\dfrac k2\right)$ である。中点は直線 $y=-x$ の上にある。たとえば $k=1$ では交点は $\left(\dfrac{-1\pm\sqrt{17}}2,\dfrac{1\pm\sqrt{17}}2\right)$(複号同順)で、中点は $\left(-\dfrac12,\dfrac12\right)$ である。円では、弦の中点の並ぶ直線 $y=-x$ は弦の向き(傾き $1$)に垂直である。

楕円の傾き 1 の平行な弦(青)の中点(赤)は、原点を通る直線 y=-4x/9 の上に並ぶ 楕円の傾き 1 の平行な弦(青)の中点(赤)は、原点を通る直線 y=-4x/9 の上に並ぶ
円では、平行な弦の中点は弦に垂直な直径の上に並ぶ。楕円でも中点は中心を通る 1 本の直線に並ぶが、その直線は弦に垂直ではない。傾きの積は $1\cdot\left(-\dfrac49\right)=-\dfrac49$ で、楕円の $a=3$、$b=2$ を使うと $-\dfrac{b^2}{a^2}$ である。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 平行な弦の中点は、どの楕円でも、どの向きの弦でも中心を通る 1 本の直線に並ぶか。その直線はどう求まるか。→ thm-cdia-main
  2. 逆向きに、その直線に平行な弦の中点はどこに並ぶか。→ thm-cdia-main の (2)
  3. こうして組になる 2 本の直径の長さや、2 本が張る平行四辺形の面積について何がいえるか。→ thm-cdia-apollonius、cor-cdia-tangent
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    解と係数の関係で弦の中点を求める共役直径2 次形式に付随する内積での直交
    楕円を $y$ 方向に伸ばして円にする1 次変換 $\varphi$ で円にもどすアフィン変換で保たれる性質
    傾きの積 $-\dfrac{b^2}{a^2}$共役直径の傾きの関係対称行列に関する直交
    平行四辺形の面積Apollonius の等式行列式が変換で一律に拡大されること

言葉の準備:楕円の媒介変数と直径

以下、$a>0$、$b>0$ を定数とする($a\ge b$ とは限らない)。

楕円・弦・直径

点 $(x,y)$ で $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ を満たすものの集まりを楕円 $E$ とし、その中心を原点 $O$ とする。$E$ の点は
$$ P(t)=(a\cos t,\ b\sin t)\qquad(0\le t<2\pi) $$
とただ 1 通りに表せる。$t$ が増えると $P(t)$ は $E$ を反時計回りに 1 周する。この $t$ を点 $P(t)$ の 媒介変数 とよぶ。
$E$ の異なる 2 点を結ぶ線分を $E$ の 弦 という。中心 $O$ を通る弦を 直径 という。$E$ は原点に関して対称($(x,y)$ が $E$ の点なら $(-x,-y)$ も $E$ の点)なので、点 $P$ を通る直径の両端は $P$ と $-P$ である。この直径を直径 $P(-P)$ と書く。線分 $OP$ を 半直径 という。

「ただ 1 通り」は、$\left(\dfrac xa\right)^2+\left(\dfrac yb\right)^2=1$ なので $\left(\dfrac xa,\dfrac yb\right)$ が単位円の点になり、単位円の点は $(\cos t,\sin t)$($0\le t<2\pi$)とただ 1 通りに書けることから分かる(2次曲線の媒介変数表示)。
注意したいのは、$t$ は中心 $O$ から見た点 $P(t)$ の向きの角ではないことである。点 $(a\cos t,\ a\sin t)$ は、中心 $O$、半径 $a$ の円(補助円とよぶ)の上で、$x$ 軸の正の向きから角 $t$ の位置にある。$P(t)$ はこの点の $y$ 座標だけを $\dfrac ba$ 倍した点である($a>b$ なら縦に縮めた点)。図 2 のように、$OP(t)$ が $x$ 軸となす角 $\theta$ は一般に $t$ と違う。
補助円の上の角 t の点を縦に b/a 倍に縮めると楕円の点 P になり、OP が x 軸となす角 θ は t と違う 補助円の上の角 t の点を縦に b/a 倍に縮めると楕円の点 P になり、OP が x 軸となす角 θ は t と違う

媒介変数と中心から見た角
  1. $a=3$、$b=2$、$t=\dfrac\pi4$ では $P=\left(\dfrac{3\sqrt2}2,\sqrt2\right)$ である。$OP$ の傾きは $\dfrac{\sqrt2}{3\sqrt2/2}=\dfrac23$ なので、$OP$ が $x$ 軸となす角 $\theta$ は $\tan\theta=\dfrac23$ を満たし、$\theta=33.69\ldots^\circ$ である。$t=45^\circ$ とは違う。
  2. 一般に $0< t<\dfrac\pi2$ では $\tan\theta=\dfrac{b\sin t}{a\cos t}=\dfrac ba\tan t$ である。$a=b$(円)のときだけ、すべての $t$ で $\theta=t$ になる。

冒頭の計算で見た関係に名前を付ける。

共役直径

$E$ の 2 本の直径 $d_1$、$d_2$ について、$d_1$ に平行な $E$ の弦の中点がすべて $d_2$ を含む直線の上にあるとき、$d_2$ を $d_1$ に 共役な直径 という。

ex-cdia-start では、傾き $1$ の直径 $y=x$(両端 $\pm\left(\dfrac{6}{\sqrt{13}},\dfrac{6}{\sqrt{13}}\right)$)に共役な直径は、直線 $y=-\dfrac49x$ の上の直径である。ここでは「どの弦の中点も」と言っているので、ex-cdia-start のように $k$ を文字のまま計算する必要がある。何本かの弦で確かめただけでは、共役とは言えない。
定義は $d_1$ と $d_2$ について対称な形をしていない。$d_2$ が $d_1$ に共役なとき、$d_1$ が $d_2$ に共役になるかどうかは、定義からは分からない。これは thm-cdia-main の (2) で示す。

1 次変換で円にもどす

楕円の点の $y$ 座標を $\dfrac ab$ 倍すると、半径 $a$ の円の点になる。この操作を 1 次変換として書く。

変換 $\varphi$ の性質

平面の点 $X=(x,y)$ を $\varphi(X)=\left(x,\ \dfrac ab\,y\right)$ に移す変換 $\varphi$ について、次が成り立つ。点を位置ベクトルと同一視する。
(1) $\varphi$ は平面の点を 1 対 1 にもれなく移し、逆の変換は $\varphi^{-1}(x,y)=\left(x,\ \dfrac ba\,y\right)$ である。
(2) 点 $X$ が楕円 $E$ の上にあることと、$\varphi(X)$ が円 $C:\ x^2+y^2=a^2$ の上にあることは同値である。
(3) 実数 $s$、$u$ と点 $X$、$Y$ について $\varphi(sX+uY)=s\,\varphi(X)+u\,\varphi(Y)$ である。特に、$\varphi$ と $\varphi^{-1}$ は直線を直線に、平行な 2 直線を平行な 2 直線に、線分の中点を像の線分の中点に移す。
(4) $\varphi$ は $E$ の弦を $C$ の弦に、$E$ の直径を $C$ の直径に移す。$\varphi^{-1}$ は $C$ の弦・直径を $E$ の弦・直径に移す。

要点:$\varphi$ は行列 $\begin{pmatrix}1&0\\0&\frac ab\end{pmatrix}$ による 1 次変換で、逆の変換も 1 次変換である。1 次変換は $sX+uY$ を $s\,\varphi(X)+u\,\varphi(Y)$ に移すので、直線・平行・中点を保つ。楕円の式と円の式は、$y$ を $\dfrac ab\,y$ に置きかえると入れかわる。

詳しい証明を開く

(1) $\varphi^{-1}$ の式で移してから $\varphi$ で移すと $\left(x,\ \dfrac ab\cdot\dfrac ba\,y\right)=(x,y)$ にもどり、逆の順でも同じである。

(2) $\varphi(X)=\left(x,\dfrac ab y\right)$ について

$$x^2+\left(\frac ab\,y\right)^2=a^2\iff\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1$$

である(左の式の両辺を $a^2$ で割ると右の式になる)。

(3) $\varphi$ は行列 $\begin{pmatrix}1&0\\0&\frac ab\end{pmatrix}$ による 1 次変換なので、成分ごとに計算すれば $\varphi(sX+uY)=s\,\varphi(X)+u\,\varphi(Y)$ である(1次変換と行列式:面積の拡大率)。点 $X_0$ を通り向き $\vec d\ne\vec0$ の直線の点 $X_0+s\vec d$ は $\varphi(X_0)+s\,\varphi(\vec d)$ に移り、$\varphi(\vec d)\ne\vec 0$((1) より)なので、像は $\varphi(X_0)$ を通り向き $\varphi(\vec d)$ の直線である。平行な 2 直線は同じ向き $\vec d$ をもつので、像も同じ向き $\varphi(\vec d)$ をもつ。中点は $\dfrac12X+\dfrac12Y$ なので、$\dfrac12\varphi(X)+\dfrac12\varphi(Y)$ に移る。$\varphi^{-1}$ も行列 $\begin{pmatrix}1&0\\0&\frac ba\end{pmatrix}$ による 1 次変換なので、同じことが成り立つ。

(4) 弦の両端は (2) により $C$ の点に移り、弦は (3) により両端の像を結ぶ線分に移る。$\varphi(O)=O$ なので、$O$ を通る弦は $O$ を通る弦に移る。$\varphi^{-1}$ についても同じである。$\square$

これは 中点連結定理 の「大学数学で見る」や Steinerの内接楕円 で使ったアフィン変換の、いちばん簡単な場合である。
円の場合の答えは、中学校で習う円の性質から出る。

円の平行な弦の中点

円 $C:\ x^2+y^2=a^2$ の弦で、向き $\vec d$ に平行なものの中点は、すべて、$O$ を通り $\vec d$ に垂直な直線 $\ell$ の上にある。逆に、$\ell$ の上の点で $C$ の内部にあるものは、どれも向き $\vec d$ の弦の中点である。

要点:$OX=OY$ なので、$O$ は弦 $XY$ の垂直二等分線の上にあり、中点 $M$ もその上にある。垂直二等分線は $XY$ に垂直なので、$M$ は $O$ を通り $\vec d$ に垂直な直線の上にある。逆は、その直線の上の点を通る向き $\vec d$ の弦をとり、三平方の定理で中点であることを確かめる。

詳しい証明を開く

弦 $XY$ の中点を $M$ とする。$OX=OY=a$ なので、$O$ は線分 $XY$ の垂直二等分線の上にある。$M$ も垂直二等分線の上にある。

  • $M\ne O$ のとき、垂直二等分線は $O$ と $M$ を通る直線で、これは $XY$ に垂直である。$XY$ は向き $\vec d$ なので、直線 $OM$ は $O$ を通り $\vec d$ に垂直な直線 $\ell$ である。よって $M$ は $\ell$ の上にある。
  • $M=O$ のときも、$O$ は $\ell$ の上にある。

逆に、$M$ を $\ell$ の上で $C$ の内部にある点とする。$M$ を通り向き $\vec d$ の直線は $C$ と 2 点 $X$、$Y$ で交わる($OM< a$ なので、この直線と $O$ の距離 $OM$ は半径より小さい)。$OX=OY$ で、$OM$ は $XY$ に垂直なので、直角三角形 $OMX$ と $OMY$ で三平方の定理から $MX=\sqrt{a^2-OM^2}=MY$ である($M=O$ なら $MX=MY=a$ である)。$M$ は線分 $XY$ の上にあるので、$M$ は $XY$ の中点である。$\square$

主定理:共役な直径の求め方

共役直径

楕円 $E:\ \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ の点 $P=P(t)=(a\cos t,\ b\sin t)$ に対して
$$ Q=P\!\left(t+\frac\pi2\right)=(-a\sin t,\ b\cos t) $$
とおく。このとき次が成り立つ。
(1) 直径 $P(-P)$(両端が $P$ と $-P$ の直径)に平行な $E$ の弦の中点は、すべて直線 $OQ$ の上にある。つまり、直径 $Q(-Q)$ は直径 $P(-P)$ に共役である。$P$ の直径に共役な直径はこれ 1 本だけである。
(2) 直径 $Q(-Q)$ に平行な $E$ の弦の中点は、すべて直線 $OP$ の上にある。つまり共役の関係は対称である。
(3) $\sin t\cos t\ne0$($OP$ が座標軸でない)とき、直線 $OP$、$OQ$ の傾きの積は $-\dfrac{b^2}{a^2}$ である。

方針:lem-cdia-phi の $\varphi$ で円 $C:\ x^2+y^2=a^2$ に移し、円の場合 lem-cdia-circle を使ってから $\varphi^{-1}$ でもどす。
段 1(円に移す)。$\varphi(P)=(a\cos t,\ a\sin t)$、$\varphi(Q)=(-a\sin t,\ a\cos t)$ である。これらを $P_1$、$Q_1$ とおく。内積は
$$ \overrightarrow{OP_1}\cdot\overrightarrow{OQ_1}=a\cos t\cdot(-a\sin t)+a\sin t\cdot a\cos t=0 $$
なので、$OP_1\perp OQ_1$ である(ベクトルの内積)。
段 2((1) の前半)。$XY$ を直径 $P(-P)$ に平行な $E$ の弦とし、中点を $M$ とする。lem-cdia-phi の (3)(4) により、$\varphi(X)\varphi(Y)$ は直径 $P_1(-P_1)$ に平行な $C$ の弦で、その中点は $\varphi(M)$ である。lem-cdia-circle により、$\varphi(M)$ は $O$ を通り $OP_1$ に垂直な直線の上にある。段 1 により、この直線は直線 $OQ_1$ である。$\varphi^{-1}$ は直線 $OQ_1$ を直線 $OQ$ に移す(lem-cdia-phi の (3)、$\varphi^{-1}(Q_1)=Q$、$\varphi^{-1}(O)=O$)ので、$M=\varphi^{-1}(\varphi(M))$ は直線 $OQ$ の上にある。
段 3((1) の「1 本だけ」)。lem-cdia-circle の後半により、直線 $OQ_1$ の上で $C$ の内部にある点、たとえば $\dfrac12Q_1$ は、$OP_1$ に平行な $C$ の弦の中点である。$\varphi^{-1}$ でもどすと、$\dfrac12Q$ は $OP$ に平行な $E$ の弦の中点で、$O$ とは異なる。$P$ の直径に共役な直径を含む直線は、$O$ と $\dfrac12Q$ の両方を通らなければならないので、直線 $OQ$ しかない。
段 4((2))。$Q=P\!\left(t+\dfrac\pi2\right)$ なので、(1) を $t$ の代わりに $t+\dfrac\pi2$ で使うと、$Q$ の直径に共役な直径は
$$ P\!\left(t+\pi\right)=(-a\cos t,\ -b\sin t)=-P $$
を通る直径、つまり直径 $P(-P)$ である。
段 5((3))。$\cos t\ne0$、$\sin t\ne0$ なので、傾きは $OP$ が $\dfrac{b\sin t}{a\cos t}$、$OQ$ が $\dfrac{b\cos t}{-a\sin t}$ で、積は
$$ \frac{b\sin t}{a\cos t}\cdot\frac{b\cos t}{-a\sin t}=-\frac{b^2}{a^2} $$
である。$\square$

図 3 と図 4 は、段 1〜段 2 の様子である。左の円では、直径 $OP_1$ に平行な弦の中点が、$OP_1$ に垂直な直径の上に並ぶ。右の楕円は左の図を縦に $\dfrac ba$ 倍に縮めたもので、平行な弦・中点・直径がそのまま移る。垂直という性質だけが保たれない。

円では、赤い直径に平行な弦の中点が、赤い直径に垂直な緑の直径の上に並ぶ 円では、赤い直径に平行な弦の中点が、赤い直径に垂直な緑の直径の上に並ぶ
左の図を縦に縮めた楕円では、赤い直径 OP に平行な弦の中点が緑の直径 OQ の上に並ぶが、2 本は垂直ではない 左の図を縦に縮めた楕円では、赤い直径 OP に平行な弦の中点が緑の直径 OQ の上に並ぶが、2 本は垂直ではない

$t=\dfrac\pi6$ の共役直径

$a=3$、$b=2$、$t=\dfrac\pi6$ とすると
$$ P=\left(\frac{3\sqrt3}2,\ 1\right),\qquad Q=\left(-\frac32,\ \sqrt3\right) $$
である。$Q$ が楕円の上にあることは $\dfrac{9/4}9+\dfrac34=\dfrac14+\dfrac34=1$ で確かめられる。傾きは $OP$ が $\dfrac1{3\sqrt3/2}=\dfrac{2\sqrt3}9$、$OQ$ が $\dfrac{\sqrt3}{-3/2}=-\dfrac{2\sqrt3}3$ で、積は $-\dfrac{4\cdot3}{27}=-\dfrac49=-\dfrac{b^2}{a^2}$ である。
$OP$ に平行な弦を 1 本とって確かめる。2 点 $X=\left(\dfrac32,\sqrt3\right)$、$Y=(-3,0)$ はどちらも楕円の上にある($\dfrac14+\dfrac34=1$、$\dfrac99+0=1$)。$\overrightarrow{YX}=\left(\dfrac92,\sqrt3\right)=\sqrt3\left(\dfrac{3\sqrt3}2,1\right)=\sqrt3\,\overrightarrow{OP}$ なので、弦 $XY$ は $OP$ に平行である。中点は
$$ M=\left(\frac{3/2-3}2,\ \frac{\sqrt3+0}2\right)=\left(-\frac34,\ \frac{\sqrt3}2\right)=\frac12Q $$
で、直線 $OQ$ の上にある。

軸と、冒頭の弦
  1. $t=0$ では $P=(a,0)$、$Q=(0,b)$ である。$x$ 軸に平行な弦 $y=c$($\lvert c\rvert< b$)の両端は $\left(\pm a\sqrt{1-c^2/b^2},\ c\right)$ で、中点 $(0,c)$ は $y$ 軸の上にある。長軸と短軸は、共役で、しかも垂直な直径の組である。
  2. ex-cdia-start の傾き $1$ の直径は、$P=\left(\dfrac6{\sqrt{13}},\dfrac6{\sqrt{13}}\right)$ の直径である。$P=(3\cos t,\ 2\sin t)$ から $\cos t=\dfrac2{\sqrt{13}}$、$\sin t=\dfrac3{\sqrt{13}}$ で、$Q=(-3\sin t,\ 2\cos t)=\left(-\dfrac9{\sqrt{13}},\dfrac4{\sqrt{13}}\right)$ である。$OQ$ の傾きは $-\dfrac49$ で、ex-cdia-start の直線 $y=-\dfrac49x$ と一致する。

証明の段 1 から、共役な半直径 $OP$、$OQ$ は、補助円の上では $90^\circ$ 離れた 2 点 $P_1$、$Q_1$ に対応する。媒介変数で言えば、$t$ を $\dfrac\pi2$ だけ進めると共役な直径が得られる。中心から見た角を $90^\circ$ 進めるのではない(ex-cdia-cx-angle)。

共役な半直径を座標軸にとる

共役な半直径 $OP$、$OQ$ を斜めの座標軸にとると、楕円は「単位円」の式で書ける。

共役な半直径による座標

$P$、$Q$ を thm-cdia-main のとおりとする。平面のどの点 $X$ も、実数 $s$、$u$ を使って $X=sP+uQ$ とただ 1 通りに書ける。さらに
$$ X=sP+uQ\ \text{が楕円}\ E\ \text{の上にある}\iff s^2+u^2=1 $$
である。

要点:$sP+uQ=X$ は係数の行列式が $ab\ne0$ の連立 1 次方程式なので、$s$、$u$ はただ 1 組に決まる。$\varphi$ で移すと $s\,\varphi(P)+u\,\varphi(Q)$ で、$\varphi(P)$、$\varphi(Q)$ は長さ $a$ で垂直なので、長さの 2 乗は $a^2(s^2+u^2)$ になる。これが $a^2$ に等しいことが、$X$ が楕円の上にあることと同値である。

詳しい証明を開く

段 1(ただ 1 通りに書ける)。$X=(x,y)$ について $sP+uQ=X$ は連立 1 次方程式

$$a\cos t\cdot s-a\sin t\cdot u=x,\qquad b\sin t\cdot s+b\cos t\cdot u=y$$

である。係数の行列式は $a\cos t\cdot b\cos t-(-a\sin t)\cdot b\sin t=ab(\cos^2t+\sin^2t)=ab\ne0$ なので、$s$、$u$ はただ 1 組に決まる。

段 2(楕円の式)。lem-cdia-phi の (3) により $\varphi(X)=sP_1+uQ_1$($P_1=\varphi(P)$、$Q_1=\varphi(Q)$)である。$\lvert\overrightarrow{OP_1}\rvert=\lvert\overrightarrow{OQ_1}\rvert=a$、$\overrightarrow{OP_1}\cdot\overrightarrow{OQ_1}=0$ なので

$$\lvert s\overrightarrow{OP_1}+u\overrightarrow{OQ_1}\rvert^2=s^2a^2+2su\cdot0+u^2a^2=a^2(s^2+u^2)$$

である。lem-cdia-phi の (2) により、$X$ が $E$ の上にあることは $\lvert\varphi(X)\rvert^2=a^2$、つまり $s^2+u^2=1$ と同値である。$\square$

この補題から thm-cdia-main の (1) をもう一度見ることができる。$OP$ に平行な直線は、$u$ を一定にした点 $sP+uQ$ の集まりである。$\lvert u\rvert<1$ なら、楕円との交点は $s=\pm\sqrt{1-u^2}$ の 2 点で、中点は $s=0$ の点 $uQ$、つまり直線 $OQ$ の上の点である。ex-cdia-main の弦は $u=\dfrac12$、$s=\pm\dfrac{\sqrt3}2$ の場合で、$X=\dfrac{\sqrt3}2P+\dfrac12Q$、$Y=-\dfrac{\sqrt3}2P+\dfrac12Q$ である。

Apollonius の等式

共役な半直径の長さはいろいろに変わるが、2 乗の和と、2 本が張る平行四辺形の面積は変わらない。

Apollonius の等式

$P=(a\cos t,\ b\sin t)$、$Q=(-a\sin t,\ b\cos t)$ を共役な半直径の端点とする(thm-cdia-main)。このとき、$t$ によらず
(1) $OP^2+OQ^2=a^2+b^2$
(2) $\overrightarrow{OP}$ と $\overrightarrow{OQ}$ が張る平行四辺形の面積は $ab$
である。

  1. 座標から
    $$ OP^2=a^2\cos^2t+b^2\sin^2t,\qquad OQ^2=a^2\sin^2t+b^2\cos^2t $$
    である。足すと、$\cos^2t+\sin^2t=1$ により
    $$ OP^2+OQ^2=a^2(\cos^2t+\sin^2t)+b^2(\sin^2t+\cos^2t)=a^2+b^2 $$
    である。
  2. ベクトル $(p_1,p_2)$、$(q_1,q_2)$ が張る平行四辺形の面積は $\lvert p_1q_2-p_2q_1\rvert$ である(1次変換と行列式:面積の拡大率)。ここでは
    $$ p_1q_2-p_2q_1=a\cos t\cdot b\cos t-b\sin t\cdot(-a\sin t)=ab(\cos^2t+\sin^2t)=ab $$
    なので、面積は $ab$ である。$\square$
  1. は 1 次変換の見方でも分かるが、(1) はこの見方では出てこない。1 次変換は面積を一律に拡大するが、長さを一律には拡大しないからである。
    (2) を 1 次変換で見る別証明を開く

    thm-cdia-main の証明の段 1 の $P_1$、$Q_1$ は長さ $a$ で垂直なので、$\overrightarrow{OP_1}$、$\overrightarrow{OQ_1}$ が張る平行四辺形は 1 辺 $a$ の正方形で、面積は $a^2$ である。$\varphi^{-1}$ は行列式 $\dfrac ba$ の 1 次変換なので、面積を一律に $\dfrac ba$ 倍にする(1次変換と行列式:面積の拡大率)。正方形は $\overrightarrow{OP}$、$\overrightarrow{OQ}$ が張る平行四辺形に移るので、面積は $a^2\cdot\dfrac ba=ab$ である。

Apollonius の等式を数で確かめる

$a=3$、$b=2$ では $a^2+b^2=13$、$ab=6$ である。
(1) $t=\dfrac\pi6$(ex-cdia-main):$OP^2=\dfrac{27}4+1=\dfrac{31}4$、$OQ^2=\dfrac94+3=\dfrac{21}4$ で、和は $\dfrac{52}4=13$ である。面積は $\left\lvert\dfrac{3\sqrt3}2\cdot\sqrt3-1\cdot\left(-\dfrac32\right)\right\rvert=\dfrac92+\dfrac32=6$ である。
(2) $t=\dfrac\pi4$:$P=\left(\dfrac{3\sqrt2}2,\sqrt2\right)$、$Q=\left(-\dfrac{3\sqrt2}2,\sqrt2\right)$ で、$OP^2=OQ^2=\dfrac{13}2$、和は $13$ である。

(2) の面積と、$t=0.3$、$t=1.1$ の数値を開く

(2) の $OP^2=\dfrac92+2=\dfrac{13}2$、面積は $\left\lvert\dfrac{3\sqrt2}2\cdot\sqrt2-\sqrt2\cdot\left(-\dfrac{3\sqrt2}2\right)\right\rvert=3+3=6$ である。

$t=0.3$ では $OP^2=9-5\sin^20.3=8.5633\ldots$、$OQ^2=4+5\sin^20.3=4.4366\ldots$、和は $13$ である。$t=1.1$ では $OP^2=9-5\sin^21.1=5.0287\ldots$、$OQ^2=7.9712\ldots$、和は $13$ である。どちらも面積は $6$ である($OP^2=a^2\cos^2t+b^2\sin^2t=a^2-(a^2-b^2)\sin^2t$ を使った)。

  1. の $t=\dfrac\pi4$ のように、共役な半直径の長さが等しくなることがある。$OP^2-OQ^2=(a^2-b^2)(\cos^2t-\sin^2t)=(a^2-b^2)\cos2t$ なので、$a\ne b$ のとき長さが等しいのは $\cos2t=0$、つまり $t=\dfrac\pi4+\dfrac{k\pi}2$($k$ は整数)のときに限る。このとき $P=\left(\pm\dfrac a{\sqrt2},\pm\dfrac b{\sqrt2}\right)$ で、$P$ は長方形 $\lvert x\rvert\le a$、$\lvert y\rvert\le b$ の対角線の上にある。

端点での接線と外接する平行四辺形

$P(t)$ を $t$ で微分すると $(-a\sin t,\ b\cos t)$ で、これはちょうど $\overrightarrow{OQ}$ である。$P$ での接線の向きは、共役な直径の向きである。

接線と外接する平行四辺形

$P$、$Q$ を thm-cdia-main のとおりとする。
(1) $P$ での楕円の接線は、直線 $OQ$ に平行である。同じく $Q$ での接線は直線 $OP$ に平行である。
(2) 4 点 $\pm P$、$\pm Q$ での接線が囲む図形は、4 頂点が $P+Q$、$-P+Q$、$-P-Q$、$P-Q$ の平行四辺形で、面積は $t$ によらず $4ab$ である。
(3) 4 点 $P$、$Q$、$-P$、$-Q$ を頂点とする平行四辺形の面積は $2ab$ である。

要点:$P$ での接線の式 $\dfrac{\cos t}a\,x+\dfrac{\sin t}b\,y=1$ は、直線 $P+sQ$ のどの点でも成り立つので、接線は $OQ$ に平行である。4 本の接線の交点は $\pm P\pm Q$ で、外側の平行四辺形は辺が $2\overrightarrow{OP}$、$2\overrightarrow{OQ}$、内側の平行四辺形は対角線が $2\overrightarrow{OP}$、$2\overrightarrow{OQ}$ である。面積は thm-cdia-apollonius の (2) の $ab$ の $4$ 倍と $2$ 倍になる。

詳しい証明を開く

(1) 楕円の点 $(x_0,y_0)$ での接線は $\dfrac{x_0x}{a^2}+\dfrac{y_0y}{b^2}=1$ である(2次曲線の接線と光学的性質 の公式)。$x_0=a\cos t$、$y_0=b\sin t$ を入れると、$P$ での接線は $\dfrac{\cos t}a\,x+\dfrac{\sin t}b\,y=1$ である。$P$ を通り $\overrightarrow{OQ}$ の向きの直線の点 $P+sQ=(a\cos t-sa\sin t,\ b\sin t+sb\cos t)$ を左辺に入れると

$$\cos t(\cos t-s\sin t)+\sin t(\sin t+s\cos t)=\cos^2t+\sin^2t=1$$

となり、どの $s$ でも接線の式を満たす。よって接線は直線 $P+sQ$ で、$OQ$ に平行である。lem-cdia-oblique の座標では $P+sQ$ は $(1,s)$ で、楕円の上にあるのは $1+s^2=1$、つまり $s=0$ のときだけなので、接線と楕円の共有点は $P$ だけであることも分かる。$Q=P\!\left(t+\dfrac\pi2\right)$ での接線は、同じ計算で $Q$ から $\overrightarrow{O(-P)}$ の向き、つまり直線 $OP$ に平行である。

(2) (1) より、$\pm P$ での接線は $\pm P+sQ$、$\pm Q$ での接線は $\pm Q+sP$ である。$P+sQ$ と $Q+s'P$ の交点は、lem-cdia-oblique の座標が $(1,s)=(s',1)$ となる点で、$s=s'=1$ の点 $P+Q$ である。ほかの 3 つの頂点も同じく $-P+Q$、$-P-Q$、$P-Q$ である。この平行四辺形は、辺が $2\overrightarrow{OP}$ と $2\overrightarrow{OQ}$ の平行四辺形なので、面積は $\overrightarrow{OP}$、$\overrightarrow{OQ}$ が張る平行四辺形の $4$ 倍で、thm-cdia-apollonius の (2) により $4ab$ である。

(3) この平行四辺形は、対角線 $P(-P)$、$Q(-Q)$ で 4 つの三角形 $OPQ$、$OQ(-P)$、$O(-P)(-Q)$、$O(-Q)P$ に分かれる。どれも面積は $\overrightarrow{OP}$、$\overrightarrow{OQ}$ が張る平行四辺形の半分の $\dfrac{ab}2$ なので、合わせて $2ab$ である。$\square$

共役な半直径 OP、OQ について、4 点 ±P、±Q を結ぶ平行四辺形(青、面積 2ab)と、4 点での接線が囲む平行四辺形(橙、面積 4ab) 共役な半直径 OP、OQ について、4 点 ±P、±Q を結ぶ平行四辺形(青、面積 2ab)と、4 点での接線が囲む平行四辺形(橙、面積 4ab)
図 5 は $t=\dfrac\pi6$ の場合である。外側の平行四辺形の各辺は楕円に接し、どの $t$ でも面積は $4ab=24$ である。内側の平行四辺形の面積 $2ab=12$ は、楕円に内接する四角形の面積の最大値になっている。これは次に読む 楕円に内接する多角形の最大面積 で示す。

例と反例

共役であることを別の条件ととりかえると、thm-cdia-main や thm-cdia-apollonius の結論が崩れる。$a=3$、$b=2$ の楕円 $\dfrac{x^2}9+\dfrac{y^2}4=1$ で確かめる。

外す条件反例成り立たなくなること
共役である(垂直な直径にとりかえる)直径 $y=x$ と $y=-x$$y=x$ に平行な弦の中点が $y=-x$ の上にある
共役である(垂直な直径にとりかえる)直径 $y=x$ と $y=-x$$OP^2+OQ^2=a^2+b^2$、平行四辺形の面積 $ab$
媒介変数 $t$ を $\dfrac\pi2$ 進める(中心から見た角を $90^\circ$ 進めるのにとりかえる)中心から見た角 $30^\circ$ と $120^\circ$ の点2 本が共役になる(傾きの積が $-\dfrac{b^2}{a^2}$)
反例:垂直な直径は共役でない

直径 $y=x$ に平行な弦 $y=x+1$ の中点は、ex-cdia-start の式で $k=1$ として $M\left(-\dfrac9{13},\dfrac4{13}\right)$ である。$-\left(-\dfrac9{13}\right)=\dfrac9{13}\ne\dfrac4{13}$ なので、$M$ は直線 $y=-x$ の上にない。$y=x$ に共役な直径は $y=-\dfrac49x$ の上にある(傾きの積は $-\dfrac49$ で、$-1$ ではない)。
長さと面積も確かめる。$y=x$ と楕円の交点は $x^2\left(\dfrac19+\dfrac14\right)=1$ から $x^2=\dfrac{36}{13}$ で、半直径の長さの 2 乗は $2x^2=\dfrac{72}{13}$ である。$y=-x$ でも同じ値である。よって
$$ OP^2+OQ^2=\frac{144}{13}=11.07\ldots\ne13=a^2+b^2 $$
である。2 本は垂直なので、張る平行四辺形は正方形で、面積は $\dfrac{72}{13}=5.53\ldots\ne6=ab$ である。

直径 y=x に平行な弦 y=x+1 の中点 M は、垂直な直線 y=-x(灰色の破線)の上になく、共役な直径 y=-4x/9(緑)の上にある 直径 y=x に平行な弦 y=x+1 の中点 M は、垂直な直線 y=-x(灰色の破線)の上になく、共役な直径 y=-4x/9(緑)の上にある

反例:中心から見た角を $90^\circ$ 進めても共役にならない

中心から見た角が $30^\circ$ の楕円の点 $R$ と、$120^\circ$ の点 $S$ をとる。$R=r(\cos30^\circ,\sin30^\circ)$ を楕円の式に入れると $r^2\left(\dfrac{3/4}9+\dfrac{1/4}4\right)=1$、$r^2=\dfrac{48}7$ で、$R=\left(\dfrac{6\sqrt7}7,\dfrac{2\sqrt{21}}7\right)=(2.267\ldots,\ 1.309\ldots)$ である。同じく $S=\left(-\dfrac{6\sqrt{31}}{31},\dfrac{6\sqrt{93}}{31}\right)$ である。傾きの積は $\tan30^\circ\cdot\tan120^\circ=\dfrac1{\sqrt3}\cdot(-\sqrt3)=-1\ne-\dfrac49$ なので、thm-cdia-main の (3) により $OS$ は $OR$ に共役でない($R$ も $S$ も座標軸の上にないので (3) が使える)。
$OR$ に共役な直径は、中心から見た角が $142.41\ldots^\circ$ の点を通る(下の計算)。

正しい共役な直径と、弦 1 本での確かめを開く

正しい共役な直径を求める。$R=(3\cos t,\ 2\sin t)$ から $\cos t=\dfrac{2\sqrt7}7$、$\sin t=\dfrac{\sqrt{21}}7$ で、$\tan t=\dfrac{\sqrt3}2$、$t=40.89\ldots^\circ$ である(中心から見た角 $30^\circ$ とは違う)。$Q=(-3\sin t,\ 2\cos t)=\left(-\dfrac{3\sqrt{21}}7,\dfrac{4\sqrt7}7\right)$ で、$OQ$ の傾きは $-\dfrac{4\sqrt3}9=-0.769\ldots$、中心から見た角は $142.41\ldots^\circ$ である。$120^\circ$ ではない。

$OR$ に平行な弦 $y=\dfrac x{\sqrt3}+1$ をとる。楕円の式に入れて $36$ を掛けると $4x^2+9\left(\dfrac x{\sqrt3}+1\right)^2=36$、つまり $7x^2+6\sqrt3\,x-27=0$ で、解と係数の関係から中点の $x$ 座標は $-\dfrac{3\sqrt3}7$、$y$ 座標は $-\dfrac37+1=\dfrac47$ である。中点の傾き $\dfrac{4/7}{-3\sqrt3/7}=-\dfrac{4\sqrt3}9$ は $OQ$ の傾きと一致し、$OS$ の傾き $-\sqrt3$ とは違う。

円・楕円・双曲線を比べる

双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$ でも、平行な弦の中点は中心を通る直線に並ぶ(rem-cdia-hyperbola)。3 つの曲線を並べる。

円 $x^2+y^2=a^2$楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$
組になる 2 点$(a\cos t,a\sin t)$、$(-a\sin t,a\cos t)$$(a\cos t,b\sin t)$、$(-a\sin t,b\cos t)$$\left(\dfrac a{\cos t},b\tan t\right)$、$\left(a\tan t,\dfrac b{\cos t}\right)$
傾きの積$-1$(垂直)$-\dfrac{b^2}{a^2}$$\dfrac{b^2}{a^2}$
長さの関係$OP^2+OQ^2=2a^2$$OP^2+OQ^2=a^2+b^2$$OP^2-OQ^2=a^2-b^2$
平行四辺形の面積$a^2$$ab$$ab$
双曲線の共役直径(紹介)

双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$ でも、平行な弦の中点は原点を通る直線に並び、弦の傾きと中点の並ぶ直線の傾きの積は $\dfrac{b^2}{a^2}$ になる。組になる点の片方は双曲線の上になく、$\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=-1$(共役双曲線)の上に来るので、この記事では表の比較にとどめる。

双曲線での計算を開く

双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$ に傾き $m$ の直線 $y=mx+k$ が 2 点で交わるとき($a^2m^2\ne b^2$)、弦の中点は傾き $\dfrac{b^2}{a^2m}$ の原点を通る直線の上にある(下の計算)。傾きの積は $\dfrac{b^2}{a^2}$ である。双曲線の点 $P=\left(\dfrac a{\cos t},b\tan t\right)$($-\dfrac\pi2< t<\dfrac\pi2$)に対し、$Q=\left(a\tan t,\dfrac b{\cos t}\right)$ は $OP$ の傾き $\dfrac ba\sin t$ と積が $\dfrac{b^2}{a^2}$ になる傾き $\dfrac b{a\sin t}$ をもつ($\sin t\ne0$ のとき)。$Q$ は双曲線の上にはなく、$\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=-1$(共役双曲線)の上にある。$1+\tan^2t=\dfrac1{\cos^2t}$ を使うと $OP^2-OQ^2=a^2-b^2$、平行四辺形の面積は $\dfrac a{\cos t}\cdot\dfrac b{\cos t}-b\tan t\cdot a\tan t=ab$ である。双曲線では「直径」の端点の片方が共役双曲線の上に来るので、この記事では表の比較にとどめる。

中点の傾きの計算を開く

$y=mx+k$ を代入して $a^2b^2$ を掛けると $(b^2-a^2m^2)x^2-2a^2mkx-a^2k^2-a^2b^2=0$ である。中点の $x$ 座標は解と係数の関係から $\dfrac{a^2mk}{b^2-a^2m^2}$、$y$ 座標は $m\cdot\dfrac{a^2mk}{b^2-a^2m^2}+k=\dfrac{b^2k}{b^2-a^2m^2}$ で、$k\ne0$ なら比は $\dfrac yx=\dfrac{b^2}{a^2m}$ である($k=0$ なら中点は原点)。楕円でも同じ計算で、比は $-\dfrac{b^2}{a^2m}$ になる。

大学数学で見る:2 次形式の内積で直交する

楕円の式の左辺から、ベクトル $\vec u=(u_1,u_2)$、$\vec v=(v_1,v_2)$ の「積」
$$ B(\vec u,\vec v)=\frac{u_1v_1}{a^2}+\frac{u_2v_2}{b^2} $$
を作る。$B$ はふつうの内積と同じ計算規則(対称で、各ベクトルについて 1 次、$\vec u\ne\vec0$ なら $B(\vec u,\vec u)>0$)を満たす。楕円 $E$ は $B(\vec x,\vec x)=1$ となる点 $\vec x$ の集まりである。

共役は $B$ で直交すること

楕円 $E$ の 2 点 $P$、$Q$ について、直径 $Q(-Q)$ が直径 $P(-P)$ に共役であることと、$B(\overrightarrow{OP},\overrightarrow{OQ})=0$ は同値である。$a\ne b$ のとき、$B$ でもふつうの内積でも直交する共役直径の組は、長軸と短軸だけである。

要点:thm-cdia-main の点を $Q_0$ とすると $B(\overrightarrow{OP},\overrightarrow{OQ_0})=0$ である。lem-cdia-oblique により楕円の点 $Q$ は $sP+uQ_0$($s^2+u^2=1$)と書け、$B(\overrightarrow{OP},\overrightarrow{OQ})=s$ になる。これが $0$ になるのは $Q=\pm Q_0$ のときだけである。ふつうの内積は $\overrightarrow{OP}\cdot\overrightarrow{OQ_0}=(b^2-a^2)\sin t\cos t$ で、$a\ne b$ なら $P$ が座標軸の上にあるときだけ $0$ になる。

詳しい証明を開く

$P=(a\cos t,\ b\sin t)$ とし、thm-cdia-main の点を $Q_0=(-a\sin t,\ b\cos t)$ とする。$B(\overrightarrow{OP},\overrightarrow{OQ_0})=\dfrac{-a^2\cos t\sin t}{a^2}+\dfrac{b^2\sin t\cos t}{b^2}=0$ である。$E$ の点 $Q$ は lem-cdia-oblique により $Q=sP+uQ_0$($s^2+u^2=1$)と書け、$B$ の計算規則から

$$B(\overrightarrow{OP},\overrightarrow{OQ})=s\,B(\overrightarrow{OP},\overrightarrow{OP})+u\,B(\overrightarrow{OP},\overrightarrow{OQ_0})=s$$

である。よって $B(\overrightarrow{OP},\overrightarrow{OQ})=0$ は $s=0$、$u=\pm1$、つまり $Q=\pm Q_0$ と同値で、thm-cdia-main の (1)(共役な直径は 1 本だけ)により、これは $Q(-Q)$ が $P(-P)$ に共役であることと同値である。

後半:ふつうの内積は $\overrightarrow{OP}\cdot\overrightarrow{OQ_0}=-a^2\cos t\sin t+b^2\sin t\cos t=(b^2-a^2)\sin t\cos t$ で、$a\ne b$ なら $0$ になるのは $\sin t\cos t=0$、つまり $P$ が座標軸の上にあるときだけである。$\square$

共役とは、楕円の式が決める「もう 1 つの内積」$B$ での直交であり、長軸と短軸は 2 つの内積の両方で直交する組である。

一般の 2 次曲線と主軸を開く

一般の 2 次曲線 $\alpha x^2+2\beta xy+\gamma y^2=1$ では、対称行列 $A=\begin{pmatrix}\alpha&\beta\\\beta&\gamma\end{pmatrix}$ で $B(\vec u,\vec v)={}^t\vec u\,A\,\vec v$ とおけば、共役は同じく $B$ での直交である(この記事では楕円の標準形の場合だけを証明した)。$B$ でもふつうの内積でも直交する組は $A$ の固有ベクトルの向き(主軸)で、これを見つけることが 2次曲線と2次形式 で扱う対角化である。共役という関係は、2次形式 が決める内積での直交として、高次元の楕円体にもそのまま広がる。

さらに先へ

  • Steinerの内接楕円 の補題「楕円の媒介変数表示と面積」の楕円 $\vec c+\cos\theta\,\vec p+\sin\theta\,\vec q$ では、$\vec p$、$\vec q$ がいつも共役な半直径になる。点 $\vec c+s\vec p+u\vec q$ が楕円の上にあるのは $(s,u)=(\cos\theta,\sin\theta)$ となる $\theta$ があるとき、つまり $s^2+u^2=1$ のときで、lem-cdia-oblique と同じ形だからである。楕円の面積 $\pi\lvert\det(\vec p,\vec q)\rvert$ は、thm-cdia-apollonius の (2) の面積 $ab$ の $\pi$ 倍にあたる。
  • 共役な半直径が張る平行四辺形 $P$、$Q$、$-P$、$-Q$ は、楕円に内接する四角形のうち面積が最大のものである。三角形や一般の $n$ 角形の場合を含めて 楕円に内接する多角形の最大面積 で示す。
  • 長さの関係 $OP^2+OQ^2=a^2+b^2$ は、1 次変換では長さが一律に拡大されないのに成り立つ等式である。長さを 1 次変換で扱えない例として、周の長さ 楕円の周の長さ がある。

関連項目

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する