Artin–Schreier拡大(Artin–Schreier extension)とは、標数 $p$ の体 $K$ の上で、多項式 $X^p-X-a$($a\in K$)の根を添加して得られる拡大のことである。$\wp(x)=x^p-x$ は加法的で核が $\mathbb{F}_p$ なので、$a\notin\wp(K)$ なら次数 $p$ の巡回拡大になる。Artin–Schreier 理論は、$\wp(K)$ を含む $K$ の部分群 $\Delta$ と指数 $p$ のアーベル拡大とを一対一に対応させ、Galois 群は $\operatorname{Hom}(\Delta/\wp(K),\mathbb{F}_p)$ になるので、標数 $p$ で Kummer 理論の代わりをする。有限体では $X^p-X-a$ が既約であることはトレースが $0$ でないことと同値で。
前提知識: Galois拡大, 有限体, Hilbertの定理90, 形式的冪級数
Artin–Schreier拡大(Artin–Schreier extension)とは、標数 $p>0$ の体 $K$ の上で、多項式 $X^p-X-a$($a\in K$)の根を添加して得られる拡大のことである。写像 $\wp(x):=x^p-x$ は標数 $p$ では加法的で、核は素体 $\mathbb F_p$ なので、1 つの根 $\alpha$ が分かれば残りの根は $\alpha+1,\dots,\alpha+p-1$ である。このため $K(\alpha)/K$ は $K$ か、次数 $p$ の巡回拡大になる。
標数 $0$ で巡回拡大を「$n$ 乗根」で書く Kummer理論 は、$1$ の $n$ 乗根が $K$ に入っていることを使う。標数 $p$ では $1$ の $p$ 乗根は $1$ しかないので、$p$ 次の巡回拡大には Kummer 理論が使えない。その代わりをするのが Artin–Schreier 理論で、乗法群 $K^\times/(K^\times)^n$ の役割を加法群 $K/\wp K$ が担う。
この記事では、Artin–Schreier 多項式の既約性と根の形、$K/\wp K$ の部分群と指数 $p$ のアーベル拡大の一対一対応(Artin–Schreier 理論)、有限体の上の既約性の判定、Laurent 級数体 $k((t))$ の上の Artin–Schreier 拡大の分岐(分岐群の飛びの計算)を完全に証明する。分岐の飛びは、野性分岐とSwan導手 で Swan 導手を計算するときの基本の例になる。
$K$ を標数 $p>0$ の体、$K^s$ をその分離閉包とする。
写像 $\wp\colon K^s\to K^s$ を $\wp(x):=x^p-x$ で定める。$a\in K$ について、多項式 $X^p-X-a$ を Artin–Schreier 多項式といい、その根 $\alpha\in K^s$ で生成される拡大 $K(\alpha)/K$ を Artin–Schreier 拡大という。$\alpha$ を $\wp^{-1}(a)$ と書く。より一般に、部分群 $\Delta\subset K$ について $K_\Delta:=K(\wp^{-1}\Delta)$ を、$\Delta$ の元の Artin–Schreier 多項式の根をすべて添加した $K^s$ の部分体とする。
標数 $p$ では $(x+y)^p=x^p+y^p$ なので $\wp$ は加法群の準同型であり、$\wp(x)=0$ の解は $x^p=x$ の根、すなわち $\mathbb F_p$ の $p$ 個の元である。$X^p-X-a$ の導関数は $-1$ なので、この多項式は重根をもたず分離的であり、根は確かに $K^s$ に入る。したがって $\wp\colon K^s\to K^s$ は全射で、加法群の完全列
$$
0\to\mathbb F_p\to K^s\xrightarrow{\ \wp\ }K^s\to0
$$
がある。これを Artin–Schreier 完全列という。$\wp K:=\wp(K)$ は $K$ の部分群である。
$a\in K$ とし、$\alpha\in K^s$ を $\wp(\alpha)=a$ となる元とする。
要点:根は $\alpha$ の $\mathbb F_p$ による平行移動なので、1 つが $K$ に入れば全部入る。因子の 2 番目の係数から $\alpha$ が $K$ に入ってしまう。
1。$c\in\mathbb F_p$ について $\wp(\alpha+c)=\wp(\alpha)+\wp(c)=a$ なので、$\alpha+c$ は $p$ 個の相異なる根であり、次数 $p$ のモニック多項式はそれらの 1 次式の積である。
2。$a=\wp(b)$、$b\in K$ なら、$b$ も根で、1 から根は $b+c\in K$ なので分解する。$a\notin\wp K$ とし、$X^p-X-a=gh$ と $K$ の上のモニックな多項式に分解したとする。$g$ の次数を $d$ とし、$0< d< p$ と仮定する。1 から $g=\prod_{j=1}^{d}(X-\alpha-c_j)$($c_j\in\mathbb F_p$)であり、$X^{d-1}$ の係数 $-(d\alpha+\sum_jc_j)$ は $K$ に入る。$d$ は $K$ で可逆なので $\alpha\in K$ となり、$a=\wp(\alpha)\in\wp K$ に反する。よって $d$ は $0$ か $p$ で、既約である。
3。2 により $[K(\alpha):K]=p$ であり、すべての根 $\alpha+c$ が $K(\alpha)$ に入るので $K(\alpha)/K$ は分離的な正規拡大、すなわち Galois 拡大である。$\alpha+1$ は $\alpha$ の共役なので $\sigma(\alpha)=\alpha+1$ となる $\sigma$ があり、$\sigma^j(\alpha)=\alpha+j$ から $\sigma$ の位数は $p$ である。位数 $p$ の群は $\sigma$ で生成される巡回群である。$\square$
逆に、標数 $p$ の体の次数 $p$ の巡回拡大は、すべて 1 つの Artin–Schreier 多項式の根で生成される。これは Hilbertの定理90 の命題「標数 $p$ の $p$ 次巡回拡大」で、加法版の Hilbert 90 から導かれている。次の節の定理は、これを指数 $p$ のアーベル拡大全体に広げ、どの $a$ が同じ拡大を与えるかまで決める。
$\wp K\subset\Delta\subset K$ となる部分群 $\Delta$ と、$\sigma\in\operatorname{Gal}(K_\Delta/K)$、$a\in\Delta$ について
$$
\langle\sigma,a\rangle:=\sigma(\alpha)-\alpha\qquad(\wp(\alpha)=a)
$$
とおく。$\wp(\sigma(\alpha)-\alpha)=\sigma(a)-a=0$ なので値は $\mathbb F_p$ に入る。
$K$ を標数 $p>0$ の体とする。
$\langle\sigma,a\rangle$ の性質。 $\wp(\alpha)=a$ となる別の元は $\alpha+c$($c\in\mathbb F_p$)で、$\sigma(\alpha+c)-(\alpha+c)=\sigma(\alpha)-\alpha$ なので、値は $\alpha$ によらない。$a,b\in\Delta$ の根 $\alpha,\beta$ について $\alpha+\beta$ は $a+b$ の根なので、$\langle\sigma,a+b\rangle=\langle\sigma,a\rangle+\langle\sigma,b\rangle$ である。$\sigma,\tau$ について $\tau(\alpha)-\alpha\in\mathbb F_p$ は $\sigma$ で動かないので
$$
\sigma\tau(\alpha)-\alpha=\sigma\bigl(\tau(\alpha)-\alpha\bigr)+\bigl(\sigma(\alpha)-\alpha\bigr)=\langle\tau,a\rangle+\langle\sigma,a\rangle
$$
である。$a\in\wp K$ なら根 $\alpha$ を $K$ からとれるので $\langle\sigma,a\rangle=0$ であり、写像は $\Delta/\wp K$ の上で定まる。
1。 $K_\Delta$ は、分離的な多項式 $X^p-X-a$($a\in\Delta$)の根をすべて添加した体なので、$K$ の Galois 拡大である(無限次でもよい)。$\sigma\mapsto\langle\sigma,\cdot\rangle$ は、2 の計算により $\operatorname{Gal}(K_\Delta/K)$ から $\operatorname{Hom}(\Delta/\wp K,\mathbb F_p)$ への群準同型である。これは単射である:すべての $a\in\Delta$ について $\sigma(\alpha)=\alpha$ なら、$\sigma$ は $K_\Delta$ の生成元をすべて固定するので $\sigma=1$ である。$\operatorname{Hom}(\Delta/\wp K,\mathbb F_p)$ は指数 $p$ のアーベル群なので、その部分群と同型な Galois 群もそうである。
2 の非退化性。 左側の核は、いま示した単射性により自明である。右側の核:$a\in\Delta$ がすべての $\sigma$ について $\langle\sigma,a\rangle=0$ を満たすなら、$\alpha$ は Galois 群全体で固定されるので $\alpha\in K$、$a=\wp(\alpha)\in\wp K$ である。$(\Delta:\wp K)$ が有限とする。左側の核が自明なので $\operatorname{Gal}(K_\Delta/K)$ は有限群 $\operatorname{Hom}(\Delta/\wp K,\mathbb F_p)$ に埋め込まれ、$\lvert\operatorname{Gal}(K_\Delta/K)\rvert\le(\Delta:\wp K)$ である(指数 $p$ の有限アーベル群 $A$ は $\mathbb F_p$ 上のベクトル空間で、$\lvert\operatorname{Hom}(A,\mathbb F_p)\rvert=\lvert A\rvert$)。右側の核が自明なので $\Delta/\wp K$ は $\operatorname{Hom}(\operatorname{Gal}(K_\Delta/K),\mathbb F_p)$ に埋め込まれ、逆向きの不等式が成り立つ。よって位数は等しく、単射 $\operatorname{Gal}(K_\Delta/K)\to\operatorname{Hom}(\Delta/\wp K,\mathbb F_p)$ は同型である。Galois 拡大なので $[K_\Delta:K]=\lvert\operatorname{Gal}(K_\Delta/K)\rvert=(\Delta:\wp K)$ である。
3:$\wp K_\Delta\cap K=\Delta$。 $\supset$ は定義から分かる。$a\in\wp K_\Delta\cap K$ とし、$\Delta':=\Delta+\mathbb F_pa$ とおく。$a$ の根は $K_\Delta$ に入るので $K_{\Delta'}=K_\Delta$ であり、2 を $\Delta$ と $\Delta'$ に使うと $(\Delta':\wp K)=[K_{\Delta'}:K]=[K_\Delta:K]=(\Delta:\wp K)$ である。よって $\Delta'=\Delta$、$a\in\Delta$ である。とくに $\Delta\mapsto K_\Delta$ は単射である。
3:全射性。 $L/K$ を $K^s$ の中の有限次アーベル拡大で、$G:=\operatorname{Gal}(L/K)$ の指数が $p$ のものとし、$\Delta:=\wp L\cap K$ とおく。$\Delta\supset\wp K$ であり、$K_\Delta\subset L$ である。準同型 $\chi\colon G\to\mathbb F_p$ を 1 つとる。$\mathbb F_p\subset K$ は $G$ で固定されるので、$\chi(\sigma\tau)=\chi(\sigma)+\sigma(\chi(\tau))$ であり、$\chi$ は $L$ に値をとる 1 コサイクルである。Hilbertの定理90 の定理「Hilbertの定理90(加法版)」の (i) により、$\chi(\sigma)=\sigma(y)-y$ となる $y\in L$ がある。$\sigma(\wp(y))=\wp(y+\chi(\sigma))=\wp(y)$ なので $\wp(y)\in K$、すなわち $\wp(y)\in\Delta$ であり、$y\in K_\Delta$ である。そこで $\sigma\in\operatorname{Gal}(L/K_\Delta)$ をとると、どの $\chi$ についても $\chi(\sigma)=\sigma(y)-y=0$ である。$G$ は $\mathbb F_p$ 上のベクトル空間なので、すべての線形形式で $0$ になる元は $0$、すなわち $\sigma=1$ である。よって $L=K_\Delta$ である。2 の証明の右側の核の議論(有限性は使わない)により $\Delta/\wp K$ は有限群 $\operatorname{Hom}(G,\mathbb F_p)$ に埋め込まれるので有限であり、2 から $(\Delta:\wp K)=[L:K]$ である。$\square$
$\Delta=\wp K+\mathbb F_pa$($a\notin\wp K$)の場合が $p$ 次の巡回拡大 $K(\wp^{-1}a)$ であり、定理から次が従う。
$a,b\in K\setminus\wp K$ について、$K(\wp^{-1}a)=K(\wp^{-1}b)$ であることと、ある $j\in\{1,\dots,p-1\}$ について $b-ja\in\wp K$ であることは同値である。したがって $K$ の $p$ 次巡回拡大($K^s$ の中のもの)は、$\mathbb F_p$ 上のベクトル空間 $K/\wp K$ の 1 次元部分空間と一対一に対応する。
thm-as-theory の 3 により、2 つの拡大が等しいことは $\wp K+\mathbb F_pa=\wp K+\mathbb F_pb$ と同値であり、これは $K/\wp K$ の中で $b$ の類が $a$ の類の $0$ でない $\mathbb F_p$ 倍であることと同値である。$p$ 次巡回拡大 $L$ は指数 $p$ のアーベル拡大なので、定理により $(\Delta:\wp K)=p$ となる $\Delta$ から来る。これは 1 次元部分空間である。$\square$
Galois コホモロジーで言えば、Artin–Schreier 完全列と $H^q(G_K,K^s)=0$($q\ge1$。NSW20 Chapter VI, §1, Proposition (6.1.1), p. 337)から $H^1(G_K,\mathbb Z/p\mathbb Z)\cong K/\wp K$ が従い、これが定理の双対の形である(同 Corollary (6.1.2), p. 338 と p. 340 の同型)。$K/\wp K$ の $\mathbb F_p$ 上の次元は、$K$ の最大 $p$ 拡大の Galois 群(自由副 $p$ 群)の階数に等しい(同 Theorem (6.1.4), p. 338。この記事では証明しない)。指数 $p^n$ のアーベル拡大は、$K$ を Witt ベクトルの環 $W_n(K)$ に替えた同じ形の同型で記述される(Artin–Schreier–Witt の定理、同 Theorem (6.1.9), p. 341。この記事では証明しない)。
$q=p^r$ とし、$\operatorname{Tr}\colon\mathbb F_q\to\mathbb F_p$、$\operatorname{Tr}(x):=x+x^p+\cdots+x^{p^{r-1}}$ をトレースとする(有限体の Galois 群は Frobenius 写像 $x\mapsto x^p$ で生成される)。
$a\in\mathbb F_q$ について、$\wp\mathbb F_q=\ker\operatorname{Tr}$ である。したがって $X^p-X-a$ が $\mathbb F_q$ の上で既約であることと、$\operatorname{Tr}(a)\neq0$ であることは同値であり、そのとき根を添加した体は $\mathbb F_{q^p}$ である。また $\mathbb F_q/\wp\mathbb F_q\cong\mathbb F_p$ である。
要点:$\wp$ の像も $\operatorname{Tr}$ の核も指数 $p$ の部分群で、一方が他方に含まれる。
$\operatorname{Tr}$ は Frobenius 写像 $F(x)=x^p$ で不変で($F^r=\mathrm{id}$)、加法的である。$\operatorname{Tr}(\wp(b))=\operatorname{Tr}(F(b))-\operatorname{Tr}(b)=0$ なので $\wp\mathbb F_q\subset\ker\operatorname{Tr}$ である。$\wp$ の核は $\mathbb F_p$ なので $\lvert\wp\mathbb F_q\rvert=q/p$ である。一方 $\operatorname{Tr}(x)$ は次数 $p^{r-1}< q$ の多項式で、$\mathbb F_q$ の $q$ 個の元すべてで $0$ にはならないので、$\operatorname{Tr}$ の像は $\mathbb F_p$ の $0$ でない部分群、すなわち $\mathbb F_p$ 全体であり、$\lvert\ker\operatorname{Tr}\rvert=q/p$ である。よって $\wp\mathbb F_q=\ker\operatorname{Tr}$ で、$\mathbb F_q/\wp\mathbb F_q\cong\operatorname{Tr}(\mathbb F_q)=\mathbb F_p$ である。既約性の判定は prop-as-polynomial の 2 から従う。既約なら根は $\mathbb F_q$ の $p$ 次拡大を生成し、それは $\mathbb F_{q^p}$ である。$\square$
$\mathbb F_q/\wp\mathbb F_q$ が 1 次元なので、cor-as-same-extension は「$\mathbb F_q$ の $p$ 次拡大はただ 1 つ」という有限体の既知の事実と合う。たとえば $\operatorname{Tr}(1)=r\bmod p$ なので、$q=p$ では $X^p-X-1$ が $\mathbb F_p$ の上で既約で、$\mathbb F_{p^p}$ を生成する。$p=2$ では $X^2+X+1$ が $\mathbb F_2$ の上で既約で、$\mathbb F_4$ を生成する。
この節では $k$ を標数 $p$ の完全体、$K:=k((t))$ を Laurent 級数体、$v$ を $v(t)=1$ となる $K$ の付値とする。$K$ は形式的冪級数環 $k[\![t]\!]$ を付値環とする完備離散付値体である。分岐群 $G_i$ は 分解群と惰性群 の定義「高次分岐群」と同じく、有限次 Galois 拡大 $L/K$、$L$ の正規化された付値 $v_L$、付値環の $\mathcal O_K$ 代数としての生成元 $x$ について $i_G(s):=v_L(s(x)-x)$ とおき、$G_i:=\{s\mid i_G(s)\ge i+1\}$ で定める(Ser79 Chapter IV, §1, p. 62)。
要点:正の付値の元は級数で $\wp$ の像に入り、$p$ で割り切れる次数の極は $\wp(et^{-j})$ を引いて $p$ 分の 1 の次数に下げられる。
1。$v(a)\ge1$ とし、$b:=-\sum_{n\ge0}a^{p^n}$ とおく。$v(a^{p^n})=p^nv(a)\to\infty$ なので級数は $K$ で収束する。$b^p=-\sum_{n\ge1}a^{p^n}$ なので $\wp(b)=b^p-b=a$ である。
2。$a\in K$ の極の部分(負の次数の項)を考える。次数 $-pj$($j\ge1$)の項 $dt^{-pj}$ があれば、$k$ は完全体なので $d=e^p$($e\in k$)と書け、$dt^{-pj}=\wp(et^{-j})+et^{-j}$ である。$a$ から $\wp(et^{-j})$ を引くと、この項は次数 $-j$ の項に置き換わる(既にある次数 $-j$ の項とは係数が足される)。$a$ の極の部分のうち、次数 $-n$($n\ge1$)が $p$ で割り切れる項について $n$ を足した数を $\Phi(a)$ とおく。1 回の操作で次数 $-pj$ の項が消えて $\Phi$ は $pj$ 減り、増えるのは高々 $j$ なので、$\Phi$ は真に減る。$\Phi$ は $0$ 以上の整数なので、有限回の操作で $p$ で割り切れる負の次数の項はなくなる。最後に、正の次数の部分を 1 により $\wp K$ の元として除く。
3。差 $r-r'$ も還元された元なので、還元された元 $r$ が $\wp K$ に入る条件を調べればよい。$r=\wp(b)$、$b\in K$ とする。$v(b)< 0$ なら $b$ の最低次の項を $b_0t^{v(b)}$ として $\wp(b)$ の最低次の項は $b_0^pt^{pv(b)}$ であり、次数 $pv(b)$ は $p$ で割り切れる負の数である。還元された元はそのような項をもたないので矛盾である。よって $v(b)\ge0$ で、$\wp(b)\in k[\![t]\!]$ となり、$r$ は負の次数の項をもたず $r=c$ である。$t=0$ を代入すると $c=\wp(b(0))\in\wp k$ である。逆に $a_i=a'_i$、$c-c'\in\wp k$ なら $r-r'\in\wp k\subset\wp K$ である。最後の主張:負の次数の項がある還元された元の最低次の項の次数は $p$ と素だからである。$\square$
これは NSW20 Chapter VI, §1, Lemma (6.1.6)(p. 339)と同じ内容であり、同書は証明を「容易な計算」として略しているので、ここでは全部を示した。補題から、$K/\wp K$ は $k/\wp k$ と、$p$ と素な負の整数 $i$ ごとの $k$ の直和になる。$k=\mathbb F_q$ なら $K/\wp K$ は無限次元なので、cor-as-same-extension により $\mathbb F_q((t))$ は $p$ 次の巡回拡大を無限個もつ。
$a\in K$ とする。
lem-as-reduced により、どの $a\notin\wp K$ も $\wp K$ を法として 1 か 2 の形の元と合同であり、cor-as-same-extension により $K(\wp^{-1}a)$ はその元で決まる。したがってこの定理は、$K$ のすべての $p$ 次巡回拡大の分岐を決めている。
要点:$v_L(\alpha)=-m$ が $p$ と素なので $e=p$ となる。一意化元を $\alpha$ と $t$ の冪の積で作ると、$s(\alpha)=\alpha+j$ から $s(\pi)/\pi-1$ の付値がちょうど $m$ と分かる。
1。$X^p-X-c$ の根 $\gamma\in K^s$ をとる。$c\notin\wp k$ なので $X^p-X-c$ は $k$ の上で既約である(prop-as-polynomial の 2)。$c\in\wp K$ と仮定すると $c=\wp(b)$、$b\in K$ で、$v(b)< 0$ なら $v(\wp(b))=pv(b)< 0$ となるので $v(b)\ge0$ であり、$t=0$ を代入して $c=\wp(b(0))\in\wp k$ となり矛盾する。よって $L:=K(\gamma)$ は次数 $p$ の巡回拡大である。$v_L(\gamma)< 0$ なら $v_L(\gamma^p-\gamma)=pv_L(\gamma)< 0$ となって $v_L(c)=0$ に反するので、$\gamma$ は $L$ の付値環に入り、その剰余類 $\bar\gamma$ は $X^p-X-c$ の根である。この多項式は $k$ の上で既約なので、$L$ の剰余体は $k$ の $p$ 次拡大 $k(\bar\gamma)$ を含む。$e_{L/K}f_{L/K}=p$ なので $f_{L/K}=p$、$e_{L/K}=1$ であり、$L/K$ は不分岐である。
2:次数と完全分岐。$a\in\wp K$ と仮定すると $a=\wp(b)$ で、$v(b)\ge0$ なら $v(a)\ge0$、$v(b)< 0$ なら $v(a)=pv(b)$ は $p$ で割り切れる。どちらも $v(a)=-m$、$p\nmid m$ に反するので $a\notin\wp K$ であり、prop-as-polynomial により $L/K$ は次数 $p$ の巡回拡大である。$e:=e_{L/K}$ とおくと $v_L(a)=-em< 0$ である。$v_L(\alpha)\ge0$ なら $v_L(\alpha^p-\alpha)\ge0$ となるので $v_L(\alpha)< 0$ であり、このとき $v_L(\alpha^p)=pv_L(\alpha)< v_L(\alpha)$ から $v_L(a)=pv_L(\alpha)$ である。よって $em=-pv_L(\alpha)$ は $p$ で割り切れ、$p\nmid m$ から $p\mid e$ である。$e\le[L:K]=p$ なので $e=p$、$v_L(\alpha)=-m$ であり、$L/K$ は完全分岐である。
2:一意化元。$\gcd(m,p)=1$ なので、$-m\lambda+p\mu=1$ となる整数 $\lambda,\mu$ がある。$v_L(t)=e=p$ なので $\pi:=\alpha^\lambda t^\mu$ は $v_L(\pi)=1$ を満たし、$L$ の一意化元である。$-m\lambda\equiv1\pmod p$ なので $p\nmid\lambda$ である。完全分岐なので $\pi$ は $L$ の付値環を $\mathcal O_K$ 代数として生成し(Ser79 Chapter I, §6, Proposition 18, p. 19。$K$ は完備なので $L$ の付値環は離散付値環である)、$i_G(s)=v_L(s(\pi)-\pi)$ である。
2:$i_G$ の計算。$s\ne1$ とすると、prop-as-polynomial により $s(\alpha)=\alpha+j$($j\in\mathbb F_p^\times$)である。$s(t)=t$ なので、$z:=j/\alpha$($v_L(z)=m\ge1$)とおくと $s(\pi)/\pi=\bigl((\alpha+j)/\alpha\bigr)^{\lambda}=(1+z)^\lambda$ である。$\lambda$ が負でも、$(1+z)^{-1}=\sum_{n\ge0}(-z)^n$ を使うと、$(1+z)^\lambda=1+\lambda z+z^2w$($w$ は $L$ の付値環の元)と書ける。$\lambda$ は $p$ で割り切れないので $v_L(\lambda z)=m$、$v_L(z^2w)\ge2m>m$ であり、$v_L(s(\pi)/\pi-1)=m$、すなわち $i_G(s)=v_L(s(\pi)-\pi)=m+1$ である。よって $s\in G_i\iff i\le m$ であり、$G_0=\cdots=G_m=G$、$G_{m+1}=1$ である。
2:上付き番号。Herbrand 関数は $\varphi(u)=\int_0^u\frac{dw}{(G_0:G_w)}$ であり(Herbrand関数と上付き番号 の定義「Herbrand関数」、Ser79 Chapter IV, §3, p. 73)、$0\le w\le m$ で $G_w=G_0$ なので $\varphi(m)=m$ である。よって上付き番号の飛びも $m$ である。$\square$
この飛びの計算は Ser79 Chapter IV, §2, Exercise 5(p. 72。$K$ の標数が $0$ のときは $m< pe_K/(p-1)$ を仮定して述べられた演習で、解答はない)の標数 $p$ の場合にあたる。ここでは演習に頼らず完全に証明した。Lau81 1.1.7(pp. 178–179)も、剰余体を代数閉体として、同じ形の一意化元(根の冪と基礎体の一意化元の冪の積)で同じ計算をしている。
定理から、$\mathbb F_p((t))$ の $p$ 次巡回拡大の飛びは $p$ と素な正の整数を全部とる。これは、Hasse–Arfの定理 が求める「アーベル拡大の上付き番号の飛びは整数」と合っている。飛び $m$ から、Artin 導手 $f=m+1$、Swan 導手 $m$、判別式の指数 $(p-1)(m+1)$ が決まる(野性分岐とSwan導手 の命題「Artin–Schreier拡大のSwan導手」)。
$K=\mathbb F_2((t))$ とする。
$k$ を標数 $p$ の代数閉体、$f\in k[x]$ を次数 $m$ が $p$ と素な多項式とし、$C_0:=\{(x,y)\mid y^p-y=f(x)\}\subset\mathbb A^2$ とおく。
1。$B:=k[x][y]/(y^p-y-f)$ は $k[x]$ 上の階数 $p$ の自由加群で、$y^p-y-f$ の $y$ についての導関数は $-1$ で可逆なので、$\pi$ はエタールである。$y\mapsto y+c$($c\in\mathbb F_p$)は $B$ の $k[x]$ 自己同型で、$f\notin\wp k(x)$(無限遠点での付値 $-m$ が $p$ と素なので、thm-as-ramification の証明の「2:次数と完全分岐」の段により $f\notin\wp k((s))$ であり、$\wp k(x)\subset\wp k((s))$ だから)から $k(x,y)/k(x)$ は次数 $p$ の Galois 拡大である。
3。$\sum_jc_jx^{m_j}\in\wp k(x)$($c_j\in\mathbb F_p$、$m_j$ は相異なる $p$ と素な正の整数)とすると、$k((s))$ に移して $\sum_jc_js^{-m_j}\in\wp k((s))$ である。左辺は還元された元なので、lem-as-reduced の 3 によりすべての $c_j=0$ である。独立な類は cor-as-same-extension により相異なる拡大を与える。
曲線 $y^p-y=f(x)$ を完備化した射影曲線は Artin–Schreier 曲線と呼ばれる。その種数が $(p-1)(m-1)/2$ であることは、野性分岐とSwan導手 で Grothendieck–Ogg–Shafarevich の公式から計算する。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 標数が $p$ | $\mathbb Q$ の上の $X^3-X-1$ | 既約なら根が $\alpha+c$($c\in\mathbb F_p$)の形で、拡大が巡回拡大 |
| $a\notin\wp K$ | $\mathbb F_p$ の上の $X^p-X-\wp(b)$、たとえば $X^p-X$ | Artin–Schreier 多項式が既約 |
| $p\nmid m$($a$ が還元された元) | $\mathbb F_p((t))$ の上の $a=t^{-p}$ | 飛びが $-v(a)$ に等しい |
| Galois 群の指数が $p$ | $\mathbb F_{p^{p^2}}/\mathbb F_p$ | 拡大が $K_\Delta$ の形に書ける |
各行を確かめる。1 行目:$X^3-X-1$ は $\pm1$ を根にもたないので $\mathbb Q$ の上で既約で、判別式は $-4(-1)^3-27=-23$ で平方数でないので、Galois 群は 3 次の対称群で巡回群でない。根の差は有理数ではない:根 $\alpha,\beta,\gamma$ を巡回的に入れ替える位数 $3$ の元 $\sigma$ があり、$\alpha-\beta=r\in\mathbb Q$ なら $\sigma$ を施して $\beta-\gamma=\gamma-\alpha=r$、3 つを足して $3r=0$ となり、根が重なって矛盾する。prop-as-polynomial の証明で「$\wp$ が加法的で核が $\mathbb F_p$」を使ったところが、標数 $0$ では成り立たない。2 行目:$a=0$ なら $X^p-X=\prod_{c\in\mathbb F_p}(X-c)$ は $\mathbb F_p$ の上で 1 次式の積である。3 行目:ex-as-char2 の 2 と同じく $t^{-p}=\wp(t^{-1})+t^{-1}$ なので、拡大は $K(\wp^{-1}t^{-1})$ で飛びは $1$ だが、$-v(a)=p$ である。thm-as-ramification の証明で $p\nmid m$ を使ったのは、$\pi$ を作る $\lambda,\mu$ の存在と $p\nmid\lambda$ である。4 行目:$\mathbb F_{p^{p^2}}/\mathbb F_p$ は位数 $p^2$ の巡回群を Galois 群にもつので、指数が $p$ でない。thm-as-theory の 1 により $K_\Delta$ の Galois 群は指数 $p$ なので、この拡大は $K_\Delta$ の形に書けない(2 段の Artin–Schreier 拡大の塔にはなる。1 つの式で書くには Witt ベクトルが要る)。
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