Galois群(Galois group)とは、Galois 拡大 $L/K$ に対し、$K$ の元を動かさない $L$ の自己同型全体の群 $\operatorname{Gal}(L/K)$ である。分離多項式 $f$ の分解体の Galois 群は根の置換として対称群 $S_n$ の部分群とみなせ、$f$ の既約性は根への作用の推移性と同値であり、標数が $2$ でなければ群が交代群 $A_n$ に含まれることは判別式が平方であることと同値である。有限次なら位数は拡大次数に等しく、無限次なら有限群の射影極限として Krull 位相をもつコンパクトな位相群になる。例えば $x^3-2$ の Galois 群は $S_3$、$\mathbb{Q}(\zeta_n)/\mathbb{Q}$ の Galois 群は $(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times$ である。
方程式 $x^3-2=0$ の 3 つの根 $\sqrt[3]{2},\ \omega\sqrt[3]{2},\ \omega^2\sqrt[3]{2}$($\omega=e^{2\pi i/3}$)は、有理数の係数から見るかぎり互いに区別できない。実際、3 つの根の間に成り立つ有理数係数の多項式の関係式(たとえば「3 つの根の積は $2$」)は、根をどう入れ替えても成り立ち続け、このような「すべての有理数係数の関係式を保つ入れ替え」は 3 次の対称群 $S_3$ の 6 個すべてであることが分かる(ex-galois-group-cbrt2)。この「係数の体から見た根の対称性」を群として取り出したものが Galois 群である。Galois 群は体の拡大 $L/K$ の中間の体の様子を有限群の言葉に翻訳し(Galois理論)、方程式が根号で解けるかどうか、判別式が平方かどうか、多項式が既約かどうかといった問いを、群の性質の問いに変える。
以下、体の拡大 $L/K$ に対し、$L$ の自己同型(全単射な環準同型 $L\to L$)で $K$ の元をすべて動かさないものを $L$ の $K$ 上の自己同型といい、その全体が写像の合成についてなす群を $\operatorname{Aut}(L/K)$ と書く。$L$ の自己同型からなる群 $H$ に対し、$L^H:=\{x\in L\mid \text{すべての }\sigma\in H\text{ について }\sigma(x)=x\}$ を $H$ の固定体という。
代数拡大 $L/K$ が Galois 拡大であるとは、正規拡大かつ分離拡大であること、すなわち各 $\alpha\in L$ の $K$ 上の最小多項式が、$L$ の中で相異なる根をもつ 1 次式の積に分解することをいう(Galois拡大 の記事の定義「Galois拡大」)。
$L/K$ を Galois 拡大とする。群 $\operatorname{Aut}(L/K)$ を $L/K$ の Galois 群(Galois group)といい、$\operatorname{Gal}(L/K)$ と書く。$L/K$ が無限次のときは、下の def-galois-group-krull の Krull 位相を入れた位相群として $\operatorname{Gal}(L/K)$ を考える。
有限次の Galois 拡大については、$\lvert\operatorname{Gal}(L/K)\rvert=[L:K]$ であり、$L^{\operatorname{Gal}(L/K)}=K$ である。逆に有限次拡大 $L/K$ で $\lvert\operatorname{Aut}(L/K)\rvert=[L:K]$ が成り立てば Galois 拡大である(Galois拡大 の記事の定理「有限次Galois拡大の特徴づけ」)。この記事ではこの特徴づけを繰り返し使う。記号 $\operatorname{Gal}$ は Galois 拡大に限って使い、一般の拡大では $\operatorname{Aut}(L/K)$ と書く。
$K$ を体、$f\in K[x]$ を次数 $n\ge1$ の分離多項式(分解体の中で重根をもたない多項式)とし、$L$ を $f$ の $K$ 上の分解体とする。$L/K$ は Galois 拡大であり、その Galois 群 $\operatorname{Gal}(L/K)$ を $f$ の Galois 群といって $\operatorname{Gal}(f)$ または $G_f$ と書く。
$L/K$ が Galois 拡大であることは、「分離多項式の分解体である」ことが有限次 Galois 拡大の特徴づけの条件の 1 つであることによる。分解体は $K$ 上の同型を除いて一意なので(分解体 の記事の定理「分解体の同型の延長」)、$\operatorname{Gal}(f)$ は群として分解体の選び方によらない。
上の状況で $f$ の $L$ における根を $\alpha_1,\dots,\alpha_n$(相異なる)とする。各 $\sigma\in\operatorname{Gal}(f)$ に対し $\sigma(\alpha_i)=\alpha_{\pi_\sigma(i)}$ で置換 $\pi_\sigma\in S_n$ が定まり、
$$
\rho\colon\operatorname{Gal}(f)\to S_n,\qquad \sigma\mapsto\pi_\sigma
$$
は単射な群準同型である。根の番号の付け方を変えると、像 $\rho(\operatorname{Gal}(f))$ は $S_n$ の中の共役な部分群に変わる。
$f$ の係数は $K$ に属するので $\sigma$ で動かず、$f(\alpha_i)=0$ に $\sigma$ を施すと $f(\sigma(\alpha_i))=0$ を得る。よって $\sigma(\alpha_i)$ は $f$ の根であり、$\sigma$ は単射なので $\sigma$ は根の集合 $\{\alpha_1,\dots,\alpha_n\}$ の上の全単射を与える。これが $\pi_\sigma$ である。$\sigma\tau(\alpha_i)=\sigma(\alpha_{\pi_\tau(i)})=\alpha_{\pi_\sigma\pi_\tau(i)}$ なので $\pi_{\sigma\tau}=\pi_\sigma\pi_\tau$、すなわち $\rho$ は準同型である。$\pi_\sigma=\mathrm{id}$ なら $\sigma$ はすべての根を動かさず、$L=K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)$ の各元は根の $K$ 係数の多項式の分数で書けるので $\sigma=\mathrm{id}$ である。よって $\rho$ は単射である。番号を置換 $\theta\in S_n$ で付け替えて $\beta_i:=\alpha_{\theta(i)}$ とすると、$\sigma(\beta_i)=\alpha_{\pi_\sigma\theta(i)}=\beta_{\theta^{-1}\pi_\sigma\theta(i)}$ なので、新しい番号での置換は $\theta^{-1}\pi_\sigma\theta$ である。$\square$
この命題により、$\operatorname{Gal}(f)$ は $S_n$ の部分群とみなせる。「$\operatorname{Gal}(f)$ は $S_3$ である」「$\operatorname{Gal}(f)\subset A_n$ である」といった言い方は、この埋め込みを通した言い方であり、共役で変わらない性質(位数、推移性、交代群 $A_n$ に含まれるか)だけが番号の付け方によらずに意味をもつ。
体 $K$ の代数閉包 $\overline{K}$ の中で、$K$ 上分離的な元(最小多項式が重根をもたない元)全体は部分体をなし、これを $K$ の分離閉包といって $K^{\mathrm{sep}}$ と書く。$K^{\mathrm{sep}}/K$ は Galois 拡大であり(MilFT Chapter 7「The Krull topology on the Galois group」)、その Galois 群
$$
G_K:=\operatorname{Gal}(K^{\mathrm{sep}}/K)
$$
を $K$ の 絶対 Galois 群(absolute Galois group)という。代数閉包の選び方を変えると $G_K$ は同型な群に移り、その同型は内部自己同型の差を除いて決まる(MilFT Chapter 7 の脚注 4)。標数 $0$ の体や有限体では $K^{\mathrm{sep}}=\overline{K}$ である。$\overline{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q}$ や $\overline{\mathbb{F}}_p/\mathbb{F}_p$ は無限次の Galois 拡大であり、このような群には位相を入れて扱う。
$L/K$ を Galois 拡大、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ とする。$L$ の有限部分集合 $S$ に対し
$$
G(S):=\{\sigma\in G\mid \text{すべての }s\in S\text{ について }\sigma(s)=s\}
$$
とおく。$\sigma G(S)$($\sigma\in G$、$S\subset L$ は有限部分集合)の形の集合の和集合で書ける部分集合を開集合とする $G$ の位相を Krull 位相(Krull topology)という。
これらの集合 $\sigma G(S)$ は位相の基底の条件を満たし、Krull 位相で $G$ は位相群になる(MilFT Proposition 7.6)。各 $G(S)$ は開部分群であり、開部分群はその剰余類の補集合として閉でもある。$L/K$ が有限次なら、$L$ の $K$ 上の基底 $S$ について $G(S)=\{\mathrm{id}\}$ なので Krull 位相は離散位相であり、有限次の Galois 群は位相を意識せずに有限群として扱ってよい。
$G(S_1)\cap G(S_2)=G(S_1\cup S_2)$ である。$\sigma G(S_1)$ と $\tau G(S_2)$ の共通部分の各点 $\rho$ について、$\rho G(S_1)=\sigma G(S_1)$、$\rho G(S_2)=\tau G(S_2)$(剰余類は交われば一致する)から $\rho G(S_1\cup S_2)\subset\sigma G(S_1)\cap\tau G(S_2)$ となる。よってこれらの集合は位相の基底の条件を満たす。
Galois 群は「係数の体 $K$ の立場からは区別できない元どうしの入れ替え」の全体である。$K$ 上の自己同型 $\sigma$ は $K$ 係数の多項式の関係をすべて保つので、$\alpha$ を $\sigma(\alpha)$ に移しても $K$ 上の代数的な性質は何も変わらない。逆に Galois 拡大では、$K$ の元でない元は必ずある $\sigma$ で動かされる($L^{\operatorname{Gal}(L/K)}=K$)。つまり Galois 群は、$L$ の元のうちどれが $K$ に「降りてくる」かを完全に判定する。
多項式 $f$ の Galois 群を根の置換群とみると、$S_n$ のうち「根の間の $K$ 係数の関係を保つ置換」だけが残ったものになる。関係が多いほど群は小さい。根がすべて $K$ に属すれば群は自明、根の間の $K$ 係数の関係が、根の対称式が $K$ に属することから来るものしかなければ(係数を変数とする「一般の方程式」がそうである)群は $S_n$ 全体になる。具体的な方程式の Galois 群を決めることは、根の間に隠れた関係を見つけることと同じである。以下の節では、既約性・判別式・実根の個数という読み取りやすい情報から群を決める方法を示す。
この節では $K$ を体、$f\in K[x]$ を次数 $n\ge1$ の分離多項式、$L$ をその分解体、$\alpha_1,\dots,\alpha_n\in L$ を $f$ の相異なる根とし、$G=\operatorname{Gal}(f)$ を prop-galois-group-permutation により $S_n$ の部分群とみなす。
$G$ の根の集合 $\{\alpha_1,\dots,\alpha_n\}$ への作用の軌道は、$f$ の $K[x]$ における既約因子それぞれの根の集合と一致する。とくに、$f$ が $K$ 上既約であることと、$G$ が根の集合に推移的に作用すること(群の作用 の記事の定義「推移的な作用と忠実な作用」)は同値である。
$f=c\,g_1\cdots g_r$($c\in K^\times$、$g_k$ はモニックな既約多項式)と分解し、$g_k$ の根の集合を $R_k$ とする。$f$ は重根をもたないので $g_1,\dots,g_r$ は相異なり、$R_1,\dots,R_r$ は根の集合を交わりなく分ける。
各 $R_k$ は $G$ で保たれる:$\sigma\in G$ は $g_k$ の係数を動かさないので、$g_k(\beta)=0$ なら $g_k(\sigma(\beta))=0$ である。よって 1 つの軌道が 2 つの $R_k$ にまたがることはない。
逆に $\alpha,\beta\in R_k$ とする。$g_k$ は $\alpha$ と $\beta$ の両方の最小多項式なので、体の拡大 の記事の定理「単純拡大の構造」により、$K$ の元を動かさず $\alpha$ を $\beta$ に移す体の同型 $\varphi\colon K(\alpha)\to K(\beta)$ がある(どちらも $K[x]/(g_k)$ と同型である)。$L$ は $f$ の根を $K(\alpha)$ に添加した体であり、$K(\beta)$ に添加した体でもあるので、$L$ は $f$ の $K(\alpha)$ 上の分解体であり、$K(\beta)$ 上の分解体でもある。$\varphi$ は $f$ の係数を動かさないので、分解体 の記事の定理「分解体の同型の延長」により、$\varphi$ を延長する体の同型 $\tau\colon L\to L$ がある。$\tau$ は $K$ の元を動かさない自己同型なので $\tau\in G$ であり、$\tau(\alpha)=\beta$ である。よって各 $R_k$ は 1 つの軌道である。
とくに軌道が 1 つであることと $r=1$、すなわち $f$ が既約であることは同値である。$\square$
$f$ が既約なら、1 つの根 $\alpha$ について $[K(\alpha):K]=n$ は $[L:K]=\lvert G\rvert$ を割る(体の拡大 の記事の定理「拡大次数の乗法性」)。したがって既約な $n$ 次の分離多項式の Galois 群は、位数が $n$ の倍数の推移的な部分群 $G\subset S_n$ である。
$\delta:=\prod_{1\le i< j\le n}(\alpha_i-\alpha_j)$ とおく。$f$ の最高次の係数を $a_n$ とすると、$f$ の判別式は $\Delta(f)=a_n^{2n-2}\delta^2$ であり(判別式 の記事の定義「多項式の判別式」)、$f$ が重根をもたないので $\delta\neq0$ である。
$\sigma\in G$ が根の置換 $\pi\in S_n$ を引き起こすとき、$\sigma(\delta)=\operatorname{sgn}(\pi)\,\delta$ である。ここで $\operatorname{sgn}$ は置換の符号である。
要点:$\sigma(\delta)$ の各因子は $\delta$ の因子の $\pm1$ 倍で、$-1$ 倍になるのはちょうど $\pi$ の転倒の数だけである。
$\sigma(\delta)=\prod_{i< j}(\alpha_{\pi(i)}-\alpha_{\pi(j)})$ である。$\{i,j\}\mapsto\{\pi(i),\pi(j)\}$ は 2 元部分集合の全体の上の全単射なので、右辺の因子は $\delta$ の因子 $\alpha_k-\alpha_l$($k< l$)をちょうど 1 回ずつ、符号を除いて含む。$i< j$ の因子 $\alpha_{\pi(i)}-\alpha_{\pi(j)}$ が $-(\alpha_{\pi(j)}-\alpha_{\pi(i)})$ の形になるのは $\pi(i)>\pi(j)$ のとき、すなわち $(i,j)$ が $\pi$ の転倒のときに限る。よって $\sigma(\delta)=(-1)^{\operatorname{inv}(\pi)}\delta=\operatorname{sgn}(\pi)\,\delta$ である(置換の符号 の記事の定義「転倒数と置換の符号」)。$\square$
lem-galois-group-delta により、すべての $\sigma\in G$ について $\sigma(\delta^2)=\delta^2$ であり、$a_n\in K$ も動かないので $\Delta(f)$ は $G$ の固定体 $L^G$ に属する。$L/K$ は有限次 Galois 拡大なので $L^G=K$ であり、$\Delta(f)\in K$ である。
1 ならば 2:すべての $\sigma\in G$ が偶置換を引き起こすなら、lem-galois-group-delta により $\sigma(\delta)=\delta$ なので $\delta\in L^G=K$ である。よって $\Delta(f)=(a_n^{n-1}\delta)^2$ は $K$ の元の平方である。
2 ならば 1:$\Delta(f)=c^2$($c\in K$)とすると $(a_n^{n-1}\delta)^2=c^2$ なので $a_n^{n-1}\delta=\pm c\in K$、すなわち $\delta\in K$ である。$\sigma\in G$ が奇置換を引き起こせば $\sigma(\delta)=-\delta$ であるが、$\delta\in K$ は $\sigma$ で動かないので $\delta=-\delta$、すなわち $2\delta=0$ となる。標数が $2$ でないので $\delta=0$ となり、$\delta\neq0$ に反する。よって $G$ のすべての元は偶置換を引き起こす。$\square$
標数 $2$ では $-\delta=\delta$ なので、この判定は使えない(MilFT Corollary 4.2(b) も標数 $2$ を除いている)。同じ事実は 判別式 の記事の注意「Galois群と判別式の平方根」でも述べられている。とくに既約な 3 次式では、推移的な部分群は $A_3$ と $S_3$ しかないので、thm-galois-group-transitive と thm-galois-group-discriminant により、判別式が平方なら $A_3$、平方でなければ $S_3$ である(MilFT Example 4.7)。
要点:巡回置換の冪をとり番号を付け替えて、互換を $(1\ 2)$、巡回置換を $(1\ 2\ \cdots\ p)$ にしてから、共役で隣接互換をすべて作る。
$H$ が互換 $(a\ b)$ と長さ $p$ の巡回置換 $c$ を含むとする。$c$ は $\{1,\dots,p\}$ の上で推移的なので、$c^m(a)=b$ となる $1\le m\le p-1$ がある。$p$ は素数で $m$ は $p$ と互いに素なので、$c^m$ も長さ $p$ の巡回置換である($c^m$ の軌道の長さは $c^m$ の位数 $p/\gcd(m,p)=p$ に等しい)。$c^m$ は $a\mapsto b\mapsto\cdots$ と巡るので、番号を付け替えて $a=1$、$b=2$、$c^m=(1\ 2\ \cdots\ p)$ としてよい(付け替えは $S_p$ の内部自己同型なので、$H=S_p$ かどうかは変わらない)。
$d:=c^m=(1\ 2\ \cdots\ p)$、$t:=(1\ 2)$ とおくと、$d^{\,k}td^{-k}=(d^{\,k}(1)\ \ d^{\,k}(2))=(k+1\ \ k+2)$($0\le k\le p-2$)はすべて $H$ に属する。これらは隣接互換 $(i\ i+1)$($1\le i\le p-1$)の全体であり、対称群 の記事の定理「互換による生成」により隣接互換は $S_p$ を生成する。よって $H=S_p$ である。$\square$
$p$ を素数とし、$f\in\mathbb{Q}[x]$ を $p$ 次の既約多項式とする。$f$ の複素数の根のうち実数でないものがちょうど 2 つなら、$\operatorname{Gal}(f)\cong S_p$ である。
$\mathbb{Q}$ は標数 $0$ なので既約多項式 $f$ は分離的である(分離拡大 の記事の命題「標数が 0 の体と有限体の上の代数拡大」)。$f$ の分解体として $\mathbb{C}$ の部分体 $L=\mathbb{Q}(\alpha_1,\dots,\alpha_p)$ をとり、$G=\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q})\subset S_p$ とみる。
$G$ は長さ $p$ の巡回置換を含む:$[\mathbb{Q}(\alpha_1):\mathbb{Q}]=p$ は $\lvert G\rvert=[L:\mathbb{Q}]$ を割るので、Cauchy の定理(Sylowの定理 の記事の系「素数位数の元の存在」)により $G$ は位数 $p$ の元 $\sigma$ をもつ。$\sigma$ を互いに素な巡回置換の積に分解すると、$\sigma$ の位数は巡回置換の長さの最小公倍数であり、長さはどれも $p$ 以下である。最小公倍数が素数 $p$ になるのは長さ $p$ の巡回置換が現れるときに限り、そのとき残りの文字はないので、$\sigma$ は長さ $p$ の巡回置換である。
$G$ は互換を含む:複素共役 $z\mapsto\bar z$ は $f$ の根を $f$ の根に移す($f$ の係数は実数)ので、$L$ を $L$ に移し、$L$ の $\mathbb{Q}$ 上の自己同型 $\gamma$ を与える。$\gamma$ は実根を動かさず、実数でない 2 つの根を入れ替えるので、$\gamma$ が引き起こす置換は互換である。
lem-galois-group-generate-sp により $G=S_p$ である。$\square$
この定理は MilFT Proposition 4.16 にある。$p\ge5$ では $S_p$ は可解群でないので、このような $f$ の根は根号では表せない(Galois理論 の記事の注意「根号による可解性」)。素数次という仮定は外せない:$x^4-2$ は既約で実数でない根がちょうど 2 つだが、Galois 群は位数 $8$ で $S_4$ ではない(ex-galois-group-x4-2)。
$L/K$ を(無限次でもよい)Galois 拡大とし、$K\subset E\subset L$ で $E/K$ が有限次 Galois 拡大となる中間体 $E$ の全体を $\mathcal{E}$ とする。$E\subset E'$ ならば制限 $\operatorname{Gal}(E'/K)\to\operatorname{Gal}(E/K)$、$\sigma\mapsto\sigma|_E$ が定まる($E/K$ は正規なので $\sigma(E)=E$)。
$L$ の任意の有限部分集合 $S$ に対し、$S\subset E$ となる $E\in\mathcal{E}$ がある。とくに $\mathcal{E}$ は包含について有向集合であり、$L=\bigcup_{E\in\mathcal{E}}E$ である。
要点:$S$ の元の最小多項式の積の分解体を $L$ の中にとればよい。
$S$ の各元の $K$ 上の最小多項式の中で相異なるものの積を $h$ とする。$L/K$ は Galois 拡大なので、各最小多項式は $L$ で相異なる根をもつ 1 次式の積に分解し、相異なるモニックな既約多項式は共通根をもたないので、$h$ は $L$ で分解する分離多項式である。$h$ の根を $K$ に添加した体 $E\subset L$ は $h$ の分解体なので $E/K$ は有限次 Galois 拡大であり、$S\subset E$ である。$E_1,E_2\in\mathcal{E}$ に対しては、それぞれの有限個の生成元を合わせた $S$ に同じことを行えば $E_1,E_2\subset E$ となる $E\in\mathcal{E}$ が得られる。$\square$
制限写像の族は群の同型
$$
\Phi\colon\operatorname{Gal}(L/K)\xrightarrow{\ \sim\ }\varprojlim_{E\in\mathcal{E}}\operatorname{Gal}(E/K),\qquad \sigma\mapsto(\sigma|_E)_{E\in\mathcal{E}}
$$
を与える。さらに右辺に、各 $\operatorname{Gal}(E/K)$ を離散空間とする直積位相から誘導される位相(射影極限の位相)を入れると、$\Phi$ は Krull 位相に関する同相写像である。
要点:$L$ の各元はある $E\in\mathcal{E}$ に属する(lem-galois-group-finite-sub)ので、自己同型は $E$ への制限の両立する族と同じものであり、両方の位相の近傍の基本系はどちらも剰余類 $\sigma\operatorname{Gal}(L/E)$($E\in\mathcal{E}$)で与えられる。
群の同型であること:$\Phi$ が準同型であることは制限の定義から明らかである。$\sigma|_E=\mathrm{id}$ がすべての $E$ で成り立てば、$L$ の各元はある $E$ に属するので $\sigma=\mathrm{id}$ であり、$\Phi$ は単射である。全射であることを示す。両立する族 $(\sigma_E)_{E\in\mathcal{E}}$($E\subset E'$ なら $\sigma_{E'}|_E=\sigma_E$)が与えられたとき、$x\in L$ に対し $x\in E$ となる $E\in\mathcal{E}$ をとって $\sigma(x):=\sigma_E(x)$ とおく。$x\in E_1\cap E_2$ なら、$E_1,E_2\subset E_3$ となる $E_3$ について $\sigma_{E_1}(x)=\sigma_{E_3}(x)=\sigma_{E_2}(x)$ なので $\sigma(x)$ は $E$ の選び方によらない。$x,y\in L$ に対し両方を含む $E$ をとれば $\sigma(x+y)=\sigma(x)+\sigma(y)$、$\sigma(xy)=\sigma(x)\sigma(y)$ が $\sigma_E$ についての等式から従う。族 $(\sigma_E^{-1})$ も両立するので、同じ作り方で得られる写像が $\sigma$ の逆写像になる。よって $\sigma\in\operatorname{Gal}(L/K)$ であり、$\Phi(\sigma)=(\sigma_E)$ である(同じ議論は 射影極限 の記事の例「Galois群の副有限性」にある)。
同相であること:右辺の位相では、点 $(\sigma|_E)_E$ の近傍の基本系として「有限個の $E_1,\dots,E_r$ で成分が一致する」集合がとれる。$E_1,\dots,E_r\subset E$ となる $E\in\mathcal{E}$ をとれば、$E$ の成分が一致することから $E_1,\dots,E_r$ の成分も一致するので、$\Phi$ で引き戻した近傍の基本系は $U_E(\sigma):=\{\tau\mid \tau|_E=\sigma|_E\}=\sigma\operatorname{Gal}(L/E)$($E\in\mathcal{E}$)である。一方 Krull 位相の $\sigma$ の近傍の基本系は $\sigma G(S)$($S$ は有限部分集合)である。$E\in\mathcal{E}$ の $K$ 上の有限個の生成元を $S_E$ とすれば $\operatorname{Gal}(L/E)=G(S_E)$ であり、逆に有限部分集合 $S$ に対して $S\subset E$ となる $E\in\mathcal{E}$ をとれば $\operatorname{Gal}(L/E)\subset G(S)$ である。よって 2 つの基本系は互いに相手の元を含み合い、同じ位相を定める。$\square$
この定理により、無限次の Galois 群は有限群の射影極限(副有限群)であり、射影極限 の記事の命題「射影極限の位相的性質」から、コンパクト・Hausdorff・全不連結な位相群である(MilFT Proposition 7.8、Example 7.26)。有限次の Galois 部分拡大の Galois 群は、制限によって $\operatorname{Gal}(L/K)$ の有限商として現れる:$E\in\mathcal{E}$ について $\operatorname{Gal}(L/K)\to\operatorname{Gal}(E/K)$ は全射であり(MilFT Proposition 7.7。$L/K$ が有限次なら Galois理論 の記事の定理「Galois理論の基本定理」の 4 による)、その核 $\operatorname{Gal}(L/E)$ は開正規部分群である。
$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ の部分群 $H$ について、$H$ が開であることと、$H$ が閉で指数が有限であることは同値である。
$H$ が開なら、$G$ は互いに交わらない開集合 $\sigma H$ の和集合であり、$G$ はコンパクトなので有限個の剰余類で覆われる。よって指数は有限であり、$H$ の補集合は開集合 $\sigma H$($\sigma\notin H$)の和なので $H$ は閉である。逆に $H$ が閉で指数が有限なら、$H$ の補集合は有限個の閉集合 $\sigma H$($\sigma\notin H$)の和なので閉であり、$H$ は開である。$\square$
$L/K$ を Galois 拡大、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ とする。$H\mapsto L^H$ と $M\mapsto\operatorname{Gal}(L/M)$ は、$G$ の閉部分群の全体と中間体 $K\subset M\subset L$ の全体の間の、包含を逆にする互いに逆な全単射であり、開部分群は $K$ 上有限次の中間体に対応し、そのとき $[G:H]=[L^H:K]$ である(MilFT Theorem 7.13)。任意の部分群 $H$ について $\operatorname{Gal}(L/L^H)$ は $H$ の閉包である(MilFT Proposition 7.12)ので、閉でない部分群は対応から外れる。有限次の場合の対応(Galois理論 の記事の定理「Galois理論の基本定理」)はこの特別な場合で、有限群ではすべての部分群が閉である。
小さい次数の多項式の Galois 群を、上の定理で決めた結果を先に表にまとめる(数値は計算機代数でも確かめた)。
| 多項式 $f\in\mathbb{Q}[x]$ | 既約か | $\Delta(f)$ | 実数でない根 | $\lvert\operatorname{Gal}(f)\rvert$ | $\operatorname{Gal}(f)$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $x^2-2$ | 既約 | $8$ | $0$ | $2$ | $S_2$ |
| $x^3-3x+1$ | 既約 | $81=9^2$ | $0$ | $3$ | $A_3$ |
| $x^3-2$ | 既約 | $-108$ | $2$ | $6$ | $S_3$ |
| $x^4-10x^2+1$ | 既約 | $147456=384^2$ | $0$ | $4$ | Klein の四元群 |
| $x^4+x^3+x^2+x+1$ | 既約 | $125$ | $4$ | $4$ | 位数 $4$ の巡回群 |
| $x^4-2$ | 既約 | $-2048$ | $2$ | $8$ | $\operatorname{Dih}_4$ |
| $x^5-4x+2$ | 既約 | $-212144$ | $2$ | $120$ | $S_5$ |
$\operatorname{Dih}_4$ は位数 $8$ の二面体群(正方形の対称性の群)である。
既約な 2 次式 $f$ の Galois 群は $S_2$(位数 $2$)である。$L=\mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3)$ は $(x^2-2)(x^2-3)$ の分解体で、Galois 群は $\sqrt2,\sqrt3$ の符号を独立に変える 4 つの自己同型からなる Kleinの四元群 である(Galois理論 の記事の例「$\mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3)/\mathbb{Q}$ の対応図」)。同じ体は既約な 4 次式 $x^4-10x^2+1$($\sqrt2+\sqrt3$ の最小多項式)の分解体でもあり、4 つの根 $\pm\sqrt2\pm\sqrt3$ の上で Galois 群は推移的に作用する(thm-galois-group-transitive)。単位元以外の 3 つの元はどれも根を 2 つずつ入れ替える偶置換なので $\operatorname{Gal}\subset A_4$ であり、判別式 $147456=384^2$ が平方であることと合う(thm-galois-group-discriminant)。
$x^3-2$ は有理数の根をもたない(有理根は $\pm1,\pm2$ に限られ、どれも根でない)ので $\mathbb{Q}$ 上既約であり、判別式 $-4\cdot0^3-27\cdot(-2)^2=-108$ は負なので有理数の平方でない。thm-galois-group-discriminant の後の注意により $\operatorname{Gal}(x^3-2)\cong S_3$ である。分解体は $\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2},\omega)$ で、次数は $6$ である(Galois理論 の記事の例「$x^3-2$ の分解体と 3 次の対称群」)。
$x^3-3x+1$ も有理根 $\pm1$ をもたないので既約で、判別式は $-4(-3)^3-27=81=9^2$ である。よって Galois 群は $A_3$(位数 $3$ の巡回群)であり、分解体は 1 つの根を添加しただけの 3 次拡大である。判別式による判定は MilFT Example 4.7 にある。
$x=2\cos\theta$ とおくと $x^3-3x=2\cos3\theta$ なので、根は $2\cos\frac{2\pi}9,\ 2\cos\frac{4\pi}9,\ 2\cos\frac{8\pi}9$ であり、$2\cos\frac{4\pi}9=(2\cos\frac{2\pi}9)^2-2$ のように 1 つの根の多項式で他の根が書ける。
$\beta=\sqrt[4]{2}>0$ とする。$x^4-2$ は Eisenstein の判定法(素数 $2$)により $\mathbb{Q}$ 上既約で、根は $\beta,\ i\beta,\ -\beta,\ -i\beta$、分解体は $L=\mathbb{Q}(\beta,i)$ である。$[\mathbb{Q}(\beta):\mathbb{Q}]=4$ で、$\mathbb{Q}(\beta)\subset\mathbb{R}$ は $i$ を含まないので $[L:\mathbb{Q}]=8$、$\lvert G\rvert=8$ である。
$G$ は $90^\circ$ 回転にあたる位数 $4$ の元 $r$($\beta\mapsto i\beta$、$i\mapsto i$)と複素共役 $s$ で生成され、$r^4=s^2=1$、$srs=r^{-1}$ を満たすので、位数 $8$ の二面体群 $\operatorname{Dih}_4$ である。
$[L:\mathbb{Q}(i)]=4$ なので $x^4-2$ は $\mathbb{Q}(i)$ 上でも既約であり、thm-galois-group-transitive を $\mathbb{Q}(i)$ 上で使うと、$i$ を動かさず $\beta\mapsto i\beta$ となる自己同型 $r$ がある。$r$ は根を $\beta\mapsto i\beta\mapsto-\beta\mapsto-i\beta\mapsto\beta$ と巡回させ、位数は $4$ である。複素共役 $s$ は $\beta$ を動かさず $i\mapsto-i$ とする位数 $2$ の元である。$srs$ は $\beta\mapsto s(r(\beta))=s(i\beta)=-i\beta$、$i\mapsto i$ となるので $srs=r^{-1}$ である。$r$ の冪は $i$ を動かさず、$s$ は $i$ を動かすので $s\notin\langle r\rangle$、よって $G=\langle r,s\rangle$ は関係式 $r^4=s^2=1$、$srs=r^{-1}$ を満たす位数 $8$ の群、すなわち $\operatorname{Dih}_4$ である(二面体群 の記事の定義「表示で定まる二面体群」)。4 つの根を正方形の頂点 $\beta,i\beta,-\beta,-i\beta$ と見れば、$r$ は $90^\circ$ の回転、$s$ は実軸に関する折り返しである。
$f=x^5-4x+2$ は Eisenstein の判定法(素数 $2$)で既約である。$f(-2)=-22$、$f(-1)=5$、$f(0)=2$、$f(1)=-1$、$f(2)=26$ なので、中間値の定理により $f$ は区間 $(-2,-1)$、$(0,1)$、$(1,2)$ に実根をもつ。一方 $f'(x)=5x^4-4$ の実数の零点は $\pm(4/5)^{1/4}$ の 2 つだけなので、Rolleの定理により $f$ の実根は高々 $3$ 個である。よって実根はちょうど $3$ 個、実数でない根はちょうど $2$ 個であり、thm-galois-group-sp により $\operatorname{Gal}(f)\cong S_5$ である。$S_5$ は可解群でないので、$f$ の根は根号で表せない。判別式 $-212144<0$ が平方でないことも $\operatorname{Gal}(f)\not\subset A_5$ と合う。
$n\ge1$、$\zeta=e^{2\pi i/n}$ とする。$x^n-1$ の根は $\zeta^k$($0\le k< n$)なので、$\mathbb{Q}(\zeta)$ は $x^n-1$ の分解体であり、$\mathbb{Q}$ 上 Galois である。$\sigma\in G=\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta)/\mathbb{Q})$ に $\sigma(\zeta)=\zeta^{a}$ となる $a\bmod n$ を対応させると、単射な群準同型 $\chi\colon G\to(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times$ が得られ、とくに $G$ はアーベル群である。
$\sigma$ は位数 $n$ の元 $\zeta$ を位数 $n$ の元に移すので、$\sigma(\zeta)=\zeta^{a}$($a$ は $n$ と互いに素、$n$ を法として一意)と書ける。$\sigma(\zeta)=\zeta^a$、$\tau(\zeta)=\zeta^b$ なら $\sigma\tau(\zeta)=\sigma(\zeta^b)=\zeta^{ab}$ なので準同型であり、$\sigma$ は $\zeta$ の行き先で決まるので単射である。
$p$ を素数とする。位数 $p^n$ の有限体 $\mathbb{F}_{p^n}$ について、$\operatorname{Gal}(\mathbb{F}_{p^n}/\mathbb{F}_p)$ は Frobenius写像 $\phi(x)=x^p$ で生成される位数 $n$ の巡回群である(有限体 の記事の定理「有限体の自己同型群」)。$\mathbb{F}_p$ の代数閉包 $\overline{\mathbb{F}}_p$ は有限体 $\mathbb{F}_{p^n}$ の和集合で、$n\mid m$ のとき制限 $\operatorname{Gal}(\mathbb{F}_{p^m}/\mathbb{F}_p)\to\operatorname{Gal}(\mathbb{F}_{p^n}/\mathbb{F}_p)$ は $\phi$ を $\phi$ に送る。thm-galois-group-profinite により
$$
\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb{F}}_p/\mathbb{F}_p)\cong\varprojlim_n\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}=\hat{\mathbb{Z}}
$$
であり(射影極限 の記事の例「Galois群の副有限性」、MilFT Example 7.17)、$\phi$ は $1\in\hat{\mathbb{Z}}$ に対応する。$\phi$ が生成する部分群 $\langle\phi\rangle\cong\mathbb{Z}$ は稠密だが全体ではない。
上の定理や Galois 拡大の性質から仮定を 1 つ外したときに崩れることを、次の表にまとめる(確認は表の下)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 正規性 | $\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})/\mathbb{Q}$ | $\lvert\operatorname{Aut}(L/K)\rvert=[L:K]$ |
| 分離性 | $\mathbb{F}_p(T)/\mathbb{F}_p(T^p)$ | $\lvert\operatorname{Aut}(L/K)\rvert=[L:K]$ |
| $f$ の既約性 | $(x^2-2)(x^2-3)$ | 根への推移的な作用 |
| 次数が素数 | $x^4-2$ | 実数でない根が 2 つなら $\operatorname{Gal}(f)\cong S_n$ |
| 標数が $2$ でない | $\mathbb{F}_2$ 上の $x^2+x+1$ | $\Delta(f)$ が平方 $\Rightarrow$ $\operatorname{Gal}(f)\subset A_n$ |
| 部分群が閉 | $\langle\phi\rangle\subset\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb{F}}_p/\mathbb{F}_p)$ | $H\mapsto L^H$ の単射性 |
| (Krull 位相で)閉 | $\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q})$ の有限指数の部分群 | 有限指数の部分群は開 |
表の 7 つの反例を、上の行から順に確かめる。どれも表の「反例」の対象が「外す条件」以外の仮定を満たし、「成り立たなくなること」が実際に破れることを示す。
1. $L=\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})\subset\mathbb{R}$ の $\mathbb{Q}$ 上の自己同型は $\sqrt[3]{2}$ を $x^3-2$ の $L$ の中の根に移すが、$L$ に含まれる根は実根 $\sqrt[3]{2}$ だけなので $\operatorname{Aut}(L/\mathbb{Q})=\{\mathrm{id}\}$ であり、$[L:\mathbb{Q}]=3$ より小さい。$L/\mathbb{Q}$ は分離的だが正規でない($x^3-2$ は $L$ で 1 次式の積に分解しない)。固定体 $L^{\operatorname{Aut}(L/\mathbb{Q})}=L$ も $\mathbb{Q}$ に一致しない(Galois拡大 の記事の例「反例:正規でない拡大 $\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})/\mathbb{Q}$」)。
2. $L=\mathbb{F}_p(T)$(有理関数体)、$K=\mathbb{F}_p(u)$、$u=T^p$ とする。$x^p-u$ は多項式環 $\mathbb{F}_p[u]$ の素元 $u$ について Eisenstein の条件を満たすので $K$ 上既約であり、$T$ の最小多項式である。よって $[L:K]=p$ である。$L[x]$ では $x^p-u=(x-T)^p$ なので、$K$ 上の自己同型は $T$ を $x^p-u$ の根、すなわち $T$ 自身に移すしかなく、$\operatorname{Aut}(L/K)=\{\mathrm{id}\}$ である。$L/K$ は正規だが分離的でない。
3. $(x^2-2)(x^2-3)$ の Galois 群(ex-galois-group-biquadratic)の根への作用の軌道は $\{\pm\sqrt2\}$ と $\{\pm\sqrt3\}$ の 2 つで、推移的でない。
4. $x^4-2$ は既約で実数でない根がちょうど 2 つ($\pm i\sqrt[4]{2}$)だが、Galois 群は位数 $8$ の $\operatorname{Dih}_4$ で $S_4$(位数 $24$)ではない(ex-galois-group-x4-2)。根に $\beta,i\beta,-\beta,-i\beta$ の順に $1,2,3,4$ と番号を付けると、$r=(1\ 2\ 3\ 4)$ は長さ $4$ の巡回置換、複素共役 $s=(2\ 4)$ は互換であるが、この 2 つは $\operatorname{Dih}_4$ しか生成しない。lem-galois-group-generate-sp の証明で $c^m$ が再び長さ $p$ の巡回置換になることに素数性を使ったが、ここでは $r^2=(1\ 3)(2\ 4)$ が巡回置換でなく、その議論が成り立たない。
5. $\mathbb{F}_2$ 上の $f=x^2+x+1$ は $\mathbb{F}_2$ に根をもたないので既約で、分解体は位数 $4$ の体、$\operatorname{Gal}(f)=S_2$ である。一方 $A_2=\{\mathrm{id}\}$ なので $\operatorname{Gal}(f)\not\subset A_2$ であるが、$\Delta(f)=1-4\cdot1=-3=1=1^2$($\mathbb{F}_2$ で)は平方である。標数 $2$ では $\delta=-\delta$ となり、lem-galois-group-delta から群の情報が取り出せない。
6. $G=\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb{F}}_p/\mathbb{F}_p)$ の部分群 $\langle\phi\rangle$ の固定体は $\{x\mid x^p=x\}=\mathbb{F}_p$ で、$G$ 自身の固定体と同じである。$\langle\phi\rangle\neq G$(ex-galois-group-finite-field)なので $H\mapsto L^H$ は部分群全体の上では単射でない。$\langle\phi\rangle$ は閉でなく、その閉包が $G$ である(rem-galois-group-infinite-correspondence)。
7. prop-galois-group-open-subgroups は「閉」を仮定している。$\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q})$ には、開でない(したがって閉でない)指数 $2^n$ の正規部分群が各 $n>1$ についてある(MilFT Proposition 7.29)。構成は、$\sqrt{-1}$ と素数の平方根をすべて添加した体の Galois 群が $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ の可算無限個の直積になることを使い、その中の直和(稠密な部分群)を含む有限指数の部分群を選択公理(Zorn の補題)で作る。このような部分群は Galois 対応の中に現れない。
MilFT Definition 3.9 は Galois 拡大を有限次に限って定義し、無限次の場合は第 7 章で改めて定義する。本記事は代数拡大一般について定義し、無限次のときは Krull 位相を込めて $\operatorname{Gal}(L/K)$ と書いた。文献によっては Galois 拡大でない $L/K$ についても $\operatorname{Aut}(L/K)$ を $\operatorname{Gal}(L/K)$ と書くが、その場合 $\lvert\operatorname{Gal}(L/K)\rvert=[L:K]$ などの性質は成り立たない(反例の表の最初の 2 行)。多項式の Galois 群 $\operatorname{Gal}(f)\subset S_n$ は根の番号の付け方の分だけ共役の不定性をもつので、「$\operatorname{Gal}(f)$ は $S_n$ のどの部分群か」は共役類として答える。
有限次 Galois 拡大の中間体と Galois 群の部分群の対応は Galois理論 の主題であり、本記事の定理は、その対応を使う前に群そのものを決めるための道具である。群が決まれば、部分群を数えることで中間体が分かる(たとえば $\operatorname{Gal}(x^4-2)\cong\operatorname{Dih}_4$ は部分群を 10 個もつので、$\mathbb{Q}(\sqrt[4]{2},i)/\mathbb{Q}$ の中間体は 10 個ある)。体 $k$ の絶対Galois群は、$k$ の点 $\operatorname{Spec}k$ のエタール基本群と位相群として同型であり(エタール基本群 の記事の命題「体のエタール基本群」)、$k$ の有限次分離拡大は $G_k$ の開部分群と対応する。絶対 Galois 群の連続な作用をもつ加群のコホモロジーが Galoisコホモロジー である。
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