3次方程式と多項式の判別式(discriminants of cubic equations and polynomials)とは、$n$ 次式 $f=a_n(x-\alpha_1)\cdots(x-\alpha_n)$ の判別式 $\Delta(f)=a_n^{2n-2}\prod_{i<j}(\alpha_i-\alpha_j)^2$(2 次式の $b^2-4ac=a^2(\alpha-\beta)^2$ の一般化)である。$\Delta(f)=0$ は重根をもつことと同値である。$x^3+px+q$ の判別式は $-4p^3-27q^2$ で、$p<0$ なら極大値と極小値の積の $-27$ 倍である。実数係数の 3 次式は $\Delta>0,=0,<0$ に応じて相異なる 3 実数解、重解、1 実数解と 2 虚数解をもつ。4 次以上では符号だけで実数解の個数は決まらない。
前提知識: 2次方程式の判別式の正体, 3次関数のグラフ, 微分係数と導関数の定義(高校数学), 複素数, 解と係数の関係
2 次方程式では、判別式 $b^2-4ac$ の符号で実数解の個数が分かった。その正体は、2 つの解 $\alpha,\beta$ の差の 2 乗に $a^2$ を掛けたもの $a^2(\alpha-\beta)^2$ である(2次方程式の判別式の正体)。
3 次方程式の実数解の個数は、高校ではふつうグラフで調べる。極大値と極小値の符号を見るのである。まずその計算をしてみる。
$f(x)=x^3-3x+q$ とする。$f'(x)=3x^2-3=3(x-1)(x+1)$ なので、$f$ は $x=-1$ で極大、$x=1$ で極小になる。
$$
f(-1)=-1+3+q=q+2,\qquad f(1)=1-3+q=q-2
$$
である。
極値や端の値の符号で解の様子を調べる考え方は、2 次方程式の解が決まった範囲に入る条件を調べる 解の配置 でも使う。
y = x³ − 3x + q(q = 1, 2, 3)のグラフ。四角は極値、黒丸は実数解。極値の積の符号で実数解の個数が変わる
$f(x)=x^3-2$ は $f'(x)=3x^2\ge0$ なので増加し、実数解は $\sqrt[3]2=1.259\ldots$ の 1 つだけである。$\omega=\dfrac{-1+\sqrt3\,i}2$($\omega^3=1$)とすると、残りの解は $\sqrt[3]2\,\omega$ と $\sqrt[3]2\,\omega^2$ で、互いに共役な虚数である。極値がないので、ex-cdsc-start の「極値の積」は使えない。
2 つの例から、次の問いが生まれる。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $b^2-4ac=a^2(\alpha-\beta)^2$ | 解の差の 2 乗の積 | 多項式の判別式 |
| 極大値と極小値の積の符号 | $\Delta=-27f(s)f(-s)$ | 判別式の符号と実根の個数 |
| 重解 ⇔ $f(\alpha)=f'(\alpha)=0$ | $f$ と $f'$ の共通の解 | 終結式 $\operatorname{Res}(f,f')$ |
| 直線と 3 次関数のグラフが接する | 連立した 3 次方程式が重解をもつ(prop-cdsc-tangent) | 判別式が $0$ |
$n$ 次方程式は、複素数の範囲で重複を込めてちょうど $n$ 個の解をもつ(代数学の基本定理。この記事では証明しない。高校の言葉で書いた証明は 複素数と方程式:代数学の基本定理 にある)。すなわち $a_n\ne0$ として
$$
f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\dots+a_1x+a_0=a_n(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)\cdots(x-\alpha_n)
$$
となる複素数 $\alpha_1,\dots,\alpha_n$ がある。2 次式の判別式は $a^2(\alpha_1-\alpha_2)^2$ だった。これを、解のすべての組の差に広げる。
$n\ge2$ とし、$f(x)=a_n(x-\alpha_1)\cdots(x-\alpha_n)$($a_n\ne0$)とする。
$$
\Delta(f):=a_n^{\,2n-2}\prod_{1\le i< j\le n}(\alpha_i-\alpha_j)^2
$$
を $f$ の 判別式 という。$\prod_{i< j}$ は、$i< j$ を満たす番号の組 $(i,j)$ すべてについての積を表す。$\alpha_i=\alpha_j$ となる $i\ne j$ があるとき、その値を $f$ の 重根(重解)という。
とくに 3 次式 $f(x)=a(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)$ では
$$
\Delta(f)=a^4(\alpha-\beta)^2(\alpha-\gamma)^2(\beta-\gamma)^2
$$
である。
$n=2$ なら $a^{2}(\alpha_1-\alpha_2)^2$ で、2次方程式の判別式の正体 の $b^2-4ac$ に戻る。各因子は 2 乗してあるので、解の番号の付け方を変えても $\Delta(f)$ は変わらない($(\alpha_j-\alpha_i)^2=(\alpha_i-\alpha_j)^2$)。$a_n^{2n-2}$ を掛ける理由は rem-cdsc-leading で述べる。
解と係数の関係により、解の基本対称式は係数を $a_n$ で割ったもので表される(3 次なら $\alpha+\beta+\gamma=-\dfrac ba$ など)。$\prod_{i< j}(\alpha_i-\alpha_j)^2$ を係数で書くと分母に $a_n$ のべきが残るが、$a_n^{2n-2}$ を掛けると分母が消え、判別式は係数の整数係数の多項式になる(thm-cdsc-polynomial)。2 次式で $(\alpha-\beta)^2=\dfrac{b^2-4ac}{a^2}$ に $a^2$ を掛けたのと同じである。$n$ 次式の解と係数の関係は n次方程式の解と係数の関係 で扱う。
判別式を係数で表したい。まず、判別式を導関数の値で書き直す。
$f(x)=(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)$ とする。このとき
$$
f'(\alpha)=(\alpha-\beta)(\alpha-\gamma),\quad f'(\beta)=(\beta-\alpha)(\beta-\gamma),\quad f'(\gamma)=(\gamma-\alpha)(\gamma-\beta)
$$
であり、
$$
\Delta(f)=-f'(\alpha)f'(\beta)f'(\gamma)
$$
である。
方針:$f'(x)$ を積の微分法で 3 つの項の和に書き、解を代入すると 1 つの項だけが残ることを使う。
段 1(導関数)。$f(x)=(x-\alpha)\cdot\bigl((x-\beta)(x-\gamma)\bigr)$ と見て積の微分法を使うと
$$
f'(x)=(x-\beta)(x-\gamma)+(x-\alpha)\bigl((x-\beta)(x-\gamma)\bigr)'
$$
である。もう一度積の微分法を使うと $\bigl((x-\beta)(x-\gamma)\bigr)'=(x-\gamma)+(x-\beta)$ なので
$$
f'(x)=(x-\beta)(x-\gamma)+(x-\alpha)(x-\gamma)+(x-\alpha)(x-\beta)
$$
となる。
段 2(解を代入)。$x=\alpha$ を代入すると、2 つ目と 3 つ目の項は因子 $x-\alpha$ を含むので $0$ になり、$f'(\alpha)=(\alpha-\beta)(\alpha-\gamma)$ が残る。$x=\beta$、$x=\gamma$ を代入しても同様に、それぞれ 1 つの項だけが残る。
段 3(積)。3 つを掛けて、同じ 2 つの解を含む因子を組にする。
$$
f'(\alpha)f'(\beta)f'(\gamma)=\bigl[(\alpha-\beta)(\beta-\alpha)\bigr]\bigl[(\alpha-\gamma)(\gamma-\alpha)\bigr]\bigl[(\beta-\gamma)(\gamma-\beta)\bigr]
$$
各組は $(\alpha-\beta)(\beta-\alpha)=-(\alpha-\beta)^2$ のように「$-1$ 倍の 2 乗」になるので、
$$
f'(\alpha)f'(\beta)f'(\gamma)=(-1)^3(\alpha-\beta)^2(\alpha-\gamma)^2(\beta-\gamma)^2=-\Delta(f)
$$
である($a=1$ なので $a^4=1$)。両辺に $-1$ を掛ければよい。$\square$
$f(x)=x^3-x$ の解は $0,1,-1$ で、$f'(x)=3x^2-1$ である。
$$
f'(0)=-1,\qquad f'(1)=2,\qquad f'(-1)=2
$$
なので $-f'(0)f'(1)f'(-1)=-(-1)\cdot2\cdot2=4$ となり、ex-cdsc-def (1) の $\Delta=4$ と一致する。lem-cdsc-derivative の形でも、$f'(0)=(0-1)(0+1)=-1$ である。
この補題を使うと、$x^2$ の項がない 3 次式の判別式が計算できる。
$p,q$ を複素数とし、$f(x)=x^3+px+q$ とする。$s$ を $s^2=-\dfrac p3$ を満たす複素数とすると
$$
\Delta(f)=-27\,f(s)\,f(-s)=-4p^3-27q^2
$$
である。
方針:$f'(x)=3x^2+p$ を $3(x-s)(x+s)$ と因数分解し、lem-cdsc-derivative の積を $f(s)$ と $f(-s)$ で書く。最後に $f(s)f(-s)$ を計算する。
段 1($f'$ の因数分解)。$s^2=-\dfrac p3$ より $p=-3s^2$ なので
$$
f'(x)=3x^2+p=3x^2-3s^2=3(x-s)(x+s)
$$
である。
段 2(積を $f(\pm s)$ で書く)。$f(x)=(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)$ とする。段 1 から
$$
f'(\alpha)f'(\beta)f'(\gamma)=27\,\bigl[(\alpha-s)(\beta-s)(\gamma-s)\bigr]\bigl[(\alpha+s)(\beta+s)(\gamma+s)\bigr]
$$
である。一方、$f(s)=(s-\alpha)(s-\beta)(s-\gamma)$ で、3 つの因子の符号をすべて変えると $(-1)^3=-1$ 倍になるので
$$
(\alpha-s)(\beta-s)(\gamma-s)=-f(s)
$$
である。同じく $f(-s)=(-s-\alpha)(-s-\beta)(-s-\gamma)=-(\alpha+s)(\beta+s)(\gamma+s)$ なので、$(\alpha+s)(\beta+s)(\gamma+s)=-f(-s)$ である。したがって
$$
f'(\alpha)f'(\beta)f'(\gamma)=27\cdot\bigl(-f(s)\bigr)\cdot\bigl(-f(-s)\bigr)=27f(s)f(-s)
$$
であり、lem-cdsc-derivative により $\Delta(f)=-27f(s)f(-s)$ である。
段 3($f(\pm s)$ を計算)。$s^3+ps=s(s^2+p)$ で、$s^2+p=-\dfrac p3+p=\dfrac{2p}3$ なので
$$
f(s)=s^3+ps+q=q+\frac{2p}3s,\qquad f(-s)=-s^3-ps+q=q-\frac{2p}3s
$$
である。和と差の積なので
$$
f(s)f(-s)=q^2-\frac{4p^2}9s^2=q^2-\frac{4p^2}9\cdot\left(-\frac p3\right)=q^2+\frac{4p^3}{27}
$$
である。
段 4(まとめ)。段 2 と段 3 から
$$
\Delta(f)=-27\left(q^2+\frac{4p^3}{27}\right)=-27q^2-4p^3
$$
である。$\square$
thm-cdsc-cubic の式 $\Delta=-4p^3-27q^2$ で計算する。
| 方程式 | $p$ | $q$ | $-4p^3$ | $-27q^2$ | $\Delta$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $x^3-x=0$ | $-1$ | $0$ | $4$ | $0$ | $4$ |
| $x^3-3x+1=0$ | $-3$ | $1$ | $108$ | $-27$ | $81$ |
| $x^3-3x+2=0$ | $-3$ | $2$ | $108$ | $-108$ | $0$ |
| $x^3-3x+3=0$ | $-3$ | $3$ | $108$ | $-243$ | $-135$ |
| $x^3-2=0$ | $0$ | $-2$ | $0$ | $-108$ | $-108$ |
| $x^3+x+1=0$ | $1$ | $1$ | $-4$ | $-27$ | $-31$ |
$x^3-x$ の $4$ は ex-cdsc-def (1) で解から直接求めた値と一致する。
$f(x)=x^3+3x+1$ では $p=3$ なので、$s^2=-1$ となる $s=i$ をとる。
$$
f(i)=i^3+3i+1=-i+3i+1=1+2i,\qquad f(-i)=-i^3-3i+1=i-3i+1=1-2i
$$
で、$f(i)f(-i)=(1+2i)(1-2i)=1-4i^2=5$ である。thm-cdsc-cubic により $\Delta=-27\cdot5=-135$ で、$-4p^3-27q^2=-108-27=-135$ と一致する。$p>0$ のとき $f'(x)=3x^2+p$ は実数の範囲では $0$ にならないが、複素数 $s$ を使えば同じ計算ができる。
$p<0$ のとき、$s=\sqrt{-p/3}$ は正の実数で、$f'(\pm s)=0$ である。つまり $f(-s)$ と $f(s)$ は極値である。
$p,q$ を実数、$p<0$ とし、$f(x)=x^3+px+q$、$s=\sqrt{-\dfrac p3}$ とする。$f$ は $x=-s$ で極大、$x=s$ で極小になり、
$$
\Delta(f)=-27\times(\text{極大値})\times(\text{極小値})=-27f(-s)f(s)
$$
である。
方針:増減表から極大・極小の位置を決め、thm-cdsc-cubic を当てはめる。
段 1。$f'(x)=3(x-s)(x+s)$(prf-cdsc-cubic の段 1)で $s>0$ なので、$f'(x)$ は $x<-s$ で正、$-s< x< s$ で負、$x>s$ で正である。よって $f$ は $x=-s$ で極大、$x=s$ で極小になる。
段 2。$s$ は $s^2=-\dfrac p3$ を満たすので、thm-cdsc-cubic により $\Delta(f)=-27f(s)f(-s)$ である。$\square$
ex-cdsc-start の $f(x)=x^3-3x+q$ では $p=-3$ なので $s=\sqrt{-\dfrac{-3}3}=1$ である。極大値は $f(-1)=q+2$、極小値は $f(1)=q-2$ なので、cor-cdsc-extrema により
$$
\Delta=-27(q+2)(q-2)=-27(q^2-4)=108-27q^2
$$
である。$q=1,2,3$ を代入すると
$$
108-27=81,\qquad 108-108=0,\qquad 108-243=-135
$$
となり、ex-cdsc-values の値と一致する。
極値の積が負(極大値と極小値が $x$ 軸をはさむ)なら判別式は正、積が正なら判別式は負である。
$x^2$ の項がある 3 次式も、平行移動で $x^2$ の項を消せば thm-cdsc-cubic に帰着する。解をすべて同じだけずらしても差は変わらないので、判別式は平行移動で変わらない。また $f$ を $a$ で割っても解は変わらないので、$\Delta(f)=a^4\Delta\!\left(\dfrac fa\right)$ である。
$f(x)=x^3-6x^2+11x-6$ で $x=y+2$ とおくと
$$
(y+2)^3-6(y+2)^2+11(y+2)-6=(y^3+6y^2+12y+8)-(6y^2+24y+24)+(11y+22)-6=y^3-y
$$
となる。$y^3-y$ は $p=-1$、$q=0$ なので $\Delta=-4\cdot(-1)^3=4$ で、ex-cdsc-def (2) の値と一致する。ずらす量 $2$ は、$x^2$ の係数 $-6$ から $-\dfrac{-6}{3}=2$ と決まる。
$a\ne0$ のとき
$$
\Delta(ax^3+bx^2+cx+d)=b^2c^2-4ac^3-4b^3d-27a^2d^2+18abcd
$$
である。
$x=y-\dfrac b{3a}$ とおくと $\dfrac{f}{a}=y^3+py+q$、
$$
p=\frac{3ac-b^2}{3a^2},\qquad q=\frac{2b^3-9abc+27a^2d}{27a^3}
$$
となる。上の 2 つの注意から $\Delta(f)=a^4(-4p^3-27q^2)$ であり、これを展開・整理すると fml-cdsc-general の右辺になる。この展開は長いので途中式を省き、数式処理ソフト(sympy)で両辺が多項式として等しいことを確かめた。$a=1$ の場合の式は Mil22 第 4 章(p. 48)にもある。
たとえば $x^3-6x^2+11x-6$($a=1,b=-6,c=11,d=-6$)では、5 つの項は順に $4356$、$-5324$、$-5184$、$-972$、$7128$ で、和は $4$ である(ex-cdsc-shift と一致)。
ここからは係数が実数の 3 次式を考える。判別式は実数になる(thm-cdsc-cubic と fml-cdsc-general の右辺は係数の多項式である)。2 次式のときと同じく、「実数の差の 2 乗は正、共役な虚数の差の 2 乗は負」が鍵になる。
まず、実数係数の方程式の虚数解は共役な組で現れることを確かめておく。
$f(x)$ を実数係数の多項式とする。複素数 $\beta$ が $f(\beta)=0$ を満たすなら、共役な複素数 $\bar\beta$ も $f(\bar\beta)=0$ を満たす。
方針:共役をとる操作が和と積を保つことを使う。
段 1。複素数 $z,w$ について $\overline{z+w}=\bar z+\bar w$、$\overline{zw}=\bar z\,\bar w$ であり、実数 $c$ については $\bar c=c$ である。積の式をくり返し使うと $\overline{\beta^k}=\bar\beta^{\,k}$ である。
段 2。$f(x)=\sum_k c_kx^k$($c_k$ は実数)とすると、段 1 により
$$
\overline{f(\beta)}=\sum_k\overline{c_k}\,\overline{\beta^k}=\sum_kc_k\bar\beta^{\,k}=f(\bar\beta)
$$
である。$f(\beta)=0$ なら $f(\bar\beta)=\bar0=0$ である。$\square$
$a,b,c,d$ を実数、$a\ne0$ とし、$f(x)=ax^3+bx^2+cx+d$ の判別式を $\Delta$ とする。
方針:解の並び方を (A) 異なる 3 つの実数、(B) 異なる解で実数 1 つと共役な虚数 2 つ、(C) 重解あり、の 3 通りに分け、それぞれで $\Delta$ の符号を求める。3 通りが互いに重ならず、すべての場合を尽くすことを示せば、逆向きも従う。
段 1(3 通りで尽くされる)。解を $\alpha,\beta,\gamma$ とする。重解があれば (C) である。重解がないとする。虚数解 $\beta$ があれば、lem-cdsc-conjugate により $\bar\beta$ も解で、$\beta$ は実数でないので $\bar\beta\ne\beta$ である。したがって虚数解は「$\beta$ と $\bar\beta$」の組で現れ、虚数解の個数は偶数である。解は 3 つなので、虚数解は $0$ 個か $2$ 個であり、$0$ 個なら (A)、$2$ 個なら (B) である。3 通りは明確に異なる条件なので、どの 2 つも同時には起こらない。
段 2((A) なら $\Delta>0$)。$\alpha,\beta,\gamma$ が異なる実数なら、差 $\alpha-\beta$ などは $0$ でない実数で、その 2 乗は正である。$a^4>0$ と合わせて $\Delta=a^4(\alpha-\beta)^2(\alpha-\gamma)^2(\beta-\gamma)^2>0$ である。
段 3((B) なら $\Delta<0$)。実数解を $r$、虚数解を $\beta=u+vi$、$\bar\beta=u-vi$($u,v$ は実数、$v\ne0$)とする。
$$
\Delta=a^4\,(r-\beta)^2(r-\bar\beta)^2\,(\beta-\bar\beta)^2
$$
の各部分の符号を調べる。まず
$$
(r-\beta)(r-\bar\beta)=\bigl((r-u)-vi\bigr)\bigl((r-u)+vi\bigr)=(r-u)^2-(vi)^2=(r-u)^2+v^2
$$
は正の実数なので、$(r-\beta)^2(r-\bar\beta)^2=\bigl((r-u)^2+v^2\bigr)^2>0$ である。次に $\beta-\bar\beta=2vi$ なので $(\beta-\bar\beta)^2=4v^2i^2=-4v^2<0$ である。$a^4>0$ と合わせて $\Delta<0$ である。
段 4((C) なら $\Delta=0$)。重解があれば、def-cdsc-disc の積に $0$ の因子が入るので $\Delta=0$ である。
段 5((C) のとき解はすべて実数)。重解を $\beta$ とし、$\beta$ が実数でないと仮定する。lem-cdsc-conjugate により $\bar\beta\ne\beta$ も解なので、解は $\beta,\beta,\bar\beta$ である。解と係数の関係により解の和 $\beta+\beta+\bar\beta=-\dfrac ba$ は実数だが、$\beta=u+vi$($v\ne0$)とすると
$$
2\beta+\bar\beta=2(u+vi)+(u-vi)=3u+vi
$$
で、虚部 $v$ が $0$ でないので実数でない。これは矛盾なので、重解 $\beta$ は実数である。残りの解 $\gamma$ も、虚数なら $\bar\gamma\ne\gamma$ も解となって解が 4 つになるので、実数である。
段 6(逆向き)。$\Delta$ は正・$0$・負のちょうど 1 つを満たし、段 1 により解の並び方も (A)・(B)・(C) のちょうど 1 つである。段 2〜4 により (A)→正、(B)→負、(C)→$0$ なので、たとえば $\Delta>0$ なら (B) でも (C) でもありえず (A) である。$\Delta=0$、$\Delta<0$ についても同じである。$\square$
ex-cdsc-values の値を thm-cdsc-sign で読む。
| 方程式 | $\Delta$ | 実数解 |
|---|---|---|
| $x^3-3x+1=0$ | $81>0$ | 3 つ($-1.879\ldots$、$0.347\ldots$、$1.532\ldots$) |
| $x^3-3x+2=0$ | $0$ | 重解 $1$ と $-2$ |
| $x^3-3x+3=0$ | $-135<0$ | 1 つ($-2.103\ldots$) |
| $x^3-2=0$ | $-108<0$ | 1 つ($\sqrt[3]2$) |
| $x^3+x+1=0$ | $-31<0$ | 1 つ($-0.682\ldots$) |
$x^3-2$ のように極値をもたない場合も、判別式なら同じ式で判定できる。
図 2 は、$x^3+px+q$ の判別式の符号を $(p,q)$ 平面に描いたものである。境目の曲線 $4p^3+27q^2=0$ は原点でとがっていて、その内側($p<0$ の側)だけで $\Delta>0$ となる。
x³ + px + q の判別式 Δ = −4p³ − 27q² の符号。青い領域で異なる 3 つの実数解、緑の曲線上で重解、それ以外で実数解 1 つ
3 次方程式 $x^3+px+q=0$ の解の公式(Cardano の公式)には、根号の中に
$$
\left(\frac q2\right)^2+\left(\frac p3\right)^3=\frac{27q^2+4p^3}{108}=-\frac{\Delta}{108}
$$
が現れる(複素数と方程式:代数学の基本定理)。この式も「判別式」と呼ばれることがあるが、本記事の $\Delta$ とは符号が逆で、$108$ で割ってある。異なる 3 つの実数解をもつのは、この式が負のときである。
判別式が $0$ であることは、重解をもつことと同じである。これは 3 次に限らず、何次でも成り立つ。
$n\ge2$ とし、$f$ を $n$ 次式とする。$\Delta(f)=0$ であることと、$f$ が重根をもつことは同値である。
方針:def-cdsc-disc の積が $0$ になる条件を調べる。
$a_n\ne0$ なので $a_n^{2n-2}\ne0$ である。複素数の積が $0$ になるのは、因子のどれかが $0$ のときに限る。よって $\Delta(f)=0$ は「ある $i< j$ について $(\alpha_i-\alpha_j)^2=0$」、つまり「ある $i< j$ について $\alpha_i=\alpha_j$」と同値であり、これは重根をもつことである。$\square$
高校では、3 次関数のグラフと直線が接する条件を「連立した方程式が重解をもつ」で調べる。まず、この言い換えが正しいことを確かめる。直線 $y=mx+k$ が曲線 $y=f(x)$ の点 $(x_0,f(x_0))$ で 接する とは、その点を通り、傾き $m$ が $f'(x_0)$ に等しいことをいう(2次方程式の判別式の正体 の放物線の場合と同じ定義。一般の関数の接線は 接線・法線と曲線の凹凸 で扱う)。
$f(x)$ を実数係数の多項式、$m,k,x_0$ を実数とし、$g(x)=f(x)-(mx+k)$ とおく。次の 3 つは同値である。
方針:1 と 2 は定義の言い換えである。2 と 3 は 剰余の定理と因数定理 の因数定理で結ぶ。
段 1(1 ⇔ 2)。点 $(x_0,f(x_0))$ が直線上にあることは $f(x_0)=mx_0+k$、つまり $g(x_0)=0$ である。$g'(x)=f'(x)-m$ なので、傾きが等しいこと $f'(x_0)=m$ は $g'(x_0)=0$ である。
段 2(2 ⇔ 3)。2 も 3 も $g(x_0)=0$ を含む(3 なら $g(x)=(x-x_0)^2r(x)$ に $x=x_0$ を代入して $0$)。そこで $g(x_0)=0$ のもとで考える。因数定理により $g(x)=(x-x_0)h(x)$ となる多項式 $h$ がある。積の微分法で $g'(x)=h(x)+(x-x_0)h'(x)$ なので、$g'(x_0)=h(x_0)$ である。よって
$$
g'(x_0)=0\iff h(x_0)=0\iff h(x)\text{ が }x-x_0\text{ で割り切れる}\iff g(x)\text{ が }(x-x_0)^2\text{ で割り切れる}
$$
である。2 つ目の $\iff$ は因数定理による。3 つ目は、$h=(x-x_0)r$ なら $g=(x-x_0)^2r$ であり、逆に $g=(x-x_0)^2r$ なら $(x-x_0)h=(x-x_0)^2r$ の両辺を多項式として $x-x_0$ で割って $h=(x-x_0)r$ となることによる。$\square$
$y=x^3$ と $y=3x+k$ を連立すると $x^3-3x-k=0$ である。thm-cdsc-cubic で $p=-3$、$q=-k$ として
$$
\Delta=-4\cdot(-3)^3-27k^2=108-27k^2
$$
である。prop-cdsc-multiple により、重解をもつのは $108-27k^2=0$、つまり $k=\pm2$ のときである。prop-cdsc-tangent により、そのときに限って直線は接する。
y = x³ と直線 y = 3x − 2。x³ − (3x − 2) = (x − 1)²(x + 2) で、重解 x = 1 が接点、x = −2 はもう 1 つの交点
$f(x)=x^3-3x+k$ について、$x_0$ が $f$ の重解であることは、$f(x_0)=0$ かつ $f'(x_0)=0$ であることと同値である(prf-cdsc-tangent の段 2 を、$g$ を $f$ に替えて使う)。そこで $f(x_0)=0$ と $f'(x_0)=0$ を連立する。
$f'(x_0)=3x_0^2-3=0$ から $x_0=\pm1$ である。$x_0=1$ なら $f(1)=1-3+k=0$ から $k=2$、$x_0=-1$ なら $f(-1)=-1+3+k=0$ から $k=-2$ である。判別式 $108-27k^2=0$ から求めた $k=\pm2$ と一致する。
「$f$ と $f'$ が共通の解をもつ」という見方は、次の節の終結式につながる。
2 次式では $b^2-4ac$、3 次式では fml-cdsc-general のように、判別式は係数の多項式で書けた。これは一般の $n$ 次式でも成り立つ。
各 $n\ge2$ について、整数を係数とする $n+1$ 変数の多項式 $D_n$ があって、$n$ 次式 $f(x)=a_nx^n+\dots+a_1x+a_0$($a_n\ne0$)の判別式は
$$
\Delta(f)=D_n(a_0,a_1,\dots,a_n)
$$
と表される。
証明はこの記事ではしない。考え方は次のとおりである。$\prod_{i< j}(\alpha_i-\alpha_j)^2$ は、解をどう並べ替えても変わらない式(対称式)である。対称式は基本対称式 $\alpha_1+\dots+\alpha_n$、$\sum_{i< j}\alpha_i\alpha_j$、…、$\alpha_1\cdots\alpha_n$ の整数係数の多項式で書ける(対称式の基本定理(高校数学))。基本対称式は解と係数の関係により $\pm\dfrac{a_{n-k}}{a_n}$ に等しいので、判別式は係数で書ける。$a_n^{2n-2}$ を掛けると分母が消えることまで含めた証明は、用語解説 判別式 の定理「判別式は係数の多項式である」にある。判別式が係数の体に属することは Mil22 Corollary 4.2 にもある。
$D_n$ の項の数は $n$ とともに急に増える。$x^5+ax^4+bx^3+cx^2+dx+e$ の判別式は 59 項になる(Mil22 p. 48)。5 次以上の方程式の解は一般には係数の四則と根号で表せないが、判別式はいつでも係数の多項式として計算できる。
重解は「$f$ と $f'$ の共通の解」だった。そこで、2 つの多項式が共通の解をもつかどうかを判定する量を定める。
$f(x)=a(x-\alpha_1)\cdots(x-\alpha_n)$($a\ne0$、$n\ge1$)と $g(x)=b(x-\beta_1)\cdots(x-\beta_m)$($b\ne0$、$m\ge1$)について
$$
\operatorname{Res}(f,g):=a^mb^n\prod_{i=1}^n\prod_{j=1}^m(\alpha_i-\beta_j)
$$
を $f$ と $g$ の 終結式 という。
この定義と、次の命題の 1 の式は、Mil22 第 4 章の付録(Proposition 4.35 (b)、p. 58)と同じである。
def-cdsc-resultant の記号で、次が成り立つ。
方針:1 は $g(\alpha_i)$ を $g$ の分解で書けば分かる。2 は積が $0$ になる条件である。
段 1。$g(x)=b\prod_j(x-\beta_j)$ に $x=\alpha_i$ を代入すると $g(\alpha_i)=b\prod_{j=1}^m(\alpha_i-\beta_j)$ である。$i=1,\dots,n$ について掛けると、$b$ が $n$ 個出てくるので
$$
g(\alpha_1)\cdots g(\alpha_n)=b^n\prod_{i=1}^n\prod_{j=1}^m(\alpha_i-\beta_j)
$$
である。両辺に $a^m$ を掛けると 1 になる。
段 2。$a^mb^n\ne0$ なので、$\operatorname{Res}(f,g)=0$ は「ある $i,j$ について $\alpha_i-\beta_j=0$」と同値である。これは $f$ の解 $\alpha_i$ と $g$ の解 $\beta_j$ が一致すること、つまり共通の解をもつことである。$\square$
$f(x)=x^2-3x+2=(x-1)(x-2)$ とする。$a=1$、$n=2$ である。
判別式は、$f$ とその導関数 $f'$ の終結式で表せる。
$n\ge2$ とし、$f(x)=a(x-\alpha_1)\cdots(x-\alpha_n)$($a\ne0$)とする。このとき
$$
\operatorname{Res}(f,f')=(-1)^{\frac{n(n-1)}2}\,a\,\Delta(f)
$$
である。
方針:lem-cdsc-derivative を $n$ 次に広げ、prop-cdsc-resultant の 1 に代入する。
段 1($f'(\alpha_i)$)。積の微分法を因子 1 つずつくり返し使うと、prf-cdsc-derivative の段 1 と同じく
$$
f'(x)=a\sum_{i=1}^n\ \prod_{j\ne i}(x-\alpha_j)
$$
となる($i$ 番目の因子だけを微分して $1$ にした積の和)。$x=\alpha_i$ を代入すると、$i$ 番目以外の項は因子 $x-\alpha_i$ を含むので $0$ になり、
$$
f'(\alpha_i)=a\prod_{j\ne i}(\alpha_i-\alpha_j)
$$
が残る。
段 2(終結式に代入)。$f'$ は最高次の係数 $na\ne0$ の $n-1$ 次式なので、prop-cdsc-resultant の 1 を $g=f'$、$m=n-1$ として使うと
$$
\operatorname{Res}(f,f')=a^{n-1}f'(\alpha_1)\cdots f'(\alpha_n)=a^{n-1}\cdot a^n\prod_{i=1}^n\prod_{j\ne i}(\alpha_i-\alpha_j)
$$
である。
段 3(組にする)。右辺の積には、$i< j$ の各組について $(\alpha_i-\alpha_j)$ と $(\alpha_j-\alpha_i)$ が 1 回ずつ現れ、その積は $-(\alpha_i-\alpha_j)^2$ である。組は $\dfrac{n(n-1)}2$ 個あるので
$$
\prod_{i=1}^n\prod_{j\ne i}(\alpha_i-\alpha_j)=(-1)^{\frac{n(n-1)}2}\prod_{i< j}(\alpha_i-\alpha_j)^2
$$
である。
段 4(まとめ)。段 2・段 3 と $a^{2n-1}=a\cdot a^{2n-2}$ から
$$
\operatorname{Res}(f,f')=(-1)^{\frac{n(n-1)}2}\,a\cdot a^{2n-2}\prod_{i< j}(\alpha_i-\alpha_j)^2=(-1)^{\frac{n(n-1)}2}\,a\,\Delta(f)
$$
である。$\square$
$f(x)=ax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)$ とすると $f'(x)=2ax+b$ である。prop-cdsc-resultant の 1 により
$$
\operatorname{Res}(f,f')=a\,(2a\alpha+b)(2a\beta+b)=a\bigl(4a^2\alpha\beta+2ab(\alpha+\beta)+b^2\bigr)
$$
である。解と係数の関係 $\alpha+\beta=-\dfrac ba$、$\alpha\beta=\dfrac ca$ を代入すると
$$
\operatorname{Res}(f,f')=a\,(4ac-2b^2+b^2)=a\,(4ac-b^2)
$$
となる。$n=2$ では $(-1)^{\frac{n(n-1)}2}=-1$ なので、prop-cdsc-resultant-disc から $\Delta(f)=-\dfrac{a(4ac-b^2)}a=b^2-4ac$ で、2 次式の判別式に戻る。
prop-cdsc-resultant-disc と prop-cdsc-resultant の 2 を合わせると、「$\Delta(f)=0$ ⇔ $f$ と $f'$ が共通の解をもつ」が分かる。ex-cdsc-common-root で使ったのはこの形である。
| 外した仮定・変えた条件 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 次数が 3 以下 | 判別式の符号で実数解の個数が決まる | ex-cdsc-quartic |
| 係数が実数 | 判別式の符号と実数解の個数の対応 | ex-cdsc-complex |
| 次数が 2 | 判別式が平方数なら有理数の解がある | ex-cdsc-square |
4 つの 4 次式の判別式を、解から def-cdsc-disc で計算した(数式処理ソフトで確かめた値)。
| 4 次式 | 解 | $\Delta$ | 実数解の個数 |
|---|---|---|---|
| $(x^2-1)(x^2-4)$ | $\pm1,\pm2$ | $5184$ | 4 |
| $(x^2+1)(x^2+4)$ | $\pm i,\pm2i$ | $5184$ | 0 |
| $x^4+1$ | $\dfrac{\pm1\pm i}{\sqrt2}$ | $256$ | 0 |
| $x^4-1$ | $\pm1,\pm i$ | $-256$ | 2 |
1 行目を手で確かめる。差の絶対値は、$1$ と $-1$ で $2$、$1$ と $2$ で $1$、$1$ と $-2$ で $3$、$-1$ と $2$ で $3$、$-1$ と $-2$ で $1$、$2$ と $-2$ で $4$ なので、$\Delta=(2\cdot1\cdot3\cdot3\cdot1\cdot4)^2=72^2=5184$ である。2 行目は、1 行目の解をすべて $i$ 倍したものである。差はすべて $i$ 倍になり、2 乗すると $-1$ 倍になる。差は 6 組あるので $\Delta$ は $(-1)^6=1$ 倍で、同じ $5184$ である。
1 行目と 2 行目は判別式が等しいのに、実数解の個数は 4 と 0 で異なる。判別式が正であることは、4 次式では「実数解が 4 つ」を意味しない。実数係数で重解がないとき、判別式の符号は $(-1)^s$($s$ は共役な虚数解の組の数)になる(Mil22 Remark 4.3。証明は prf-cdsc-sign の段 2・段 3 と同じ組分けでできる)。4 次式では $s=0,1,2$ の 3 通りがあり、$s=0$ と $s=2$ がどちらも正になるので、符号だけでは区別できない。
5 次以上でも同じことが起こる。1 行目と 2 行目の 4 次式に、同じ実数係数の 1 次式 $x-3$ を掛けると、どちらも重解のない 5 次式で、$s$ は $0$ と $2$ のままなので、上の規則により判別式はどちらも正である(数式処理ソフトで計算すると $8294400$ と $87609600$)。一方、実数解の個数は $5$ と $1$ である。$(x-3)(x-4)$、$(x-3)(x-4)(x-5)$ を掛けた 6 次式・7 次式でも、判別式はどちらも正で、実数解の個数は $6$ と $2$、$7$ と $3$ になる。一般に $n\ge4$ なら、$n-4$ 個の異なる整数 $3,4,\dots,n-2$ について 1 次式を掛ければ同じ形の例が作れる。
$f(x)=x(x-1)(x-i)$ の解は $0,1,i$ で、
$$
\Delta=(0-1)^2\,(0-i)^2\,(1-i)^2=1\cdot(-1)\cdot(-2i)=2i
$$
である($(1-i)^2=1-2i+i^2=-2i$)。判別式が実数でないので、正・負を考えることさえできない。thm-cdsc-sign は係数が実数であることを使っている。一方 prop-cdsc-multiple は複素数係数でも成り立ち、実際 $\Delta\ne0$ で解は異なる。
2 次式では、整数係数で判別式が整数の 2 乗なら解は有理数だった(2次方程式の判別式の正体)。3 次式ではそうならない。$f(x)=x^3-3x+1$ の判別式は $81=9^2$ だが、有理数の解はない。
実際、有理数の解 $x=\dfrac rs$($r,s$ は互いに素な整数、$s\ge1$)があるとすると、$f\!\left(\dfrac rs\right)=0$ の両辺に $s^3$ を掛けて
$$
r^3-3rs^2+s^3=0,\qquad\text{つまり}\qquad r^3=s^2(3r-s)
$$
となる。$s\ge2$ なら $s$ の素因数 $\ell$ が $r^3$ を割り、したがって $r$ を割るので、$r,s$ が互いに素であることに反する。よって $s=1$ で、$x=r$ は整数である。$r(r^2-3)=-1$ なので $r$ は $-1$ の約数 $\pm1$ だが、$f(1)=-1$、$f(-1)=3$ でどちらも $0$ でない。
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