一般次元のPoincaré予想

同義語:generalized Poincaré conjecture一般化されたPoincaré予想高次元のPoincaré予想一般次元のポアンカレ予想

概要

一般次元のPoincaré予想(generalized Poincaré conjecture)とは、$n$ 次元の閉多様体が球面とホモトピー同値なら球面と同相であるという主張で、滑らかな多様体で $n\ge5$ の場合は Smale が証明した。単連結で整数係数のホモロジーが $S^n$ と同じ滑らかな閉多様体 $M$ から円板の内部を除いた $W$ は、単連結でホモロジーが 1 点と同じになる。$n\ge6$ なら $h$ 同境定理により $W$ は円板と同相で、$M$ は 2 枚の円板を縁で貼ったものとして $S^n$ と同相になる。$n=5$ では $W\times[0,1]$ に同じ議論を使い、Brown の定理と組み合わせる。結論を微分同相に強めることはできない(Milnor の異種 7 次元球面)。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: h同境定理, 境界に沿った貼り合わせと連結和, Van Kampenの定理, 相対ホモロジーと長完全列

Poincaré は、3 次元の閉多様体が単連結なら 3 次元球面と同相であるかを問うた。これを高次元に広げた問い「$n$ 次元の閉多様体で、ホモトピーの上で球面と区別できないもの(ホモトピー球面)は、球面と同相か」を一般次元のPoincaré予想(generalized Poincaré conjecture、一般化された Poincaré 予想)という。滑らかな多様体で $n\ge5$ の場合は Smale が肯定的に解決した。この記事ではそれを h同境定理 から導く。

一般次元のPoincaré予想

$n\ge5$ とし、$M$ を $n$ 次元の滑らかな閉多様体とする。$M$ が単連結で、整数係数のホモロジー群が $S^n$ と同型($H_k(M)\cong\mathbb{Z}$($k=0,n$)、ほかの $k$ で $0$)なら、$M$ は $S^n$ と同相である。

仮定と結論についての注意

次元の条件 $n\ge5$ は、h同境定理を使うための条件である。結論は同相であって微分同相ではない。実際、$7$ 次元には $S^7$ と同相だが微分同相でない滑らかな多様体(Milnor の異種球面)がある。$n=3,4$ の場合はこの記事の方法の範囲外で、別の方法が必要になる。

方針は次のとおりである。$M$ から小さな円板の内部を除いた $W$ は、単連結でホモロジーが 1 点と同じである。$n\ge6$ なら、$W$ からさらに円板の内部を除いたものに h同境定理を使うと、$W$ が円板と同相であることがわかる。すると $M$ は 2 枚の円板を縁で貼り合わせたもので、球面と同相である。$n=5$ では、1 つ次元の高い $W\times[0,1]$ に同じ議論を使い、Brown の定理(一般化された Schoenflies 定理)と組み合わせる。この記事の証明で証明なしに使うのは、h同境定理そのものと、$n=5$ の場合の Brown の定理だけである。結論は同相であって、微分同相とは限らない(異種球面)。

定義

この記事では、多様体は Hausdorff かつ第 2 可算で、「滑らか」は $C^\infty$ 級を指す。$D^n\subset\mathbb{R}^n$ は閉単位球体、$S^{n-1}=\partial D^n$、$D_r:=\{\lvert x\rvert\le r\}$、$B_r:=\{\lvert x\rvert< r\}$ とする。ホモロジーは整数係数の特異ホモロジーで、$\tilde H_*$ は被約ホモロジーである。

ホモトピー球面とホモロジー球面

閉多様体 $M$ が $S^n$ とホモトピー同値であるとき、$M$ を $n$ 次元のホモトピー球面という。閉多様体 $M$ の整数係数のホモロジー群が $S^n$ と同型であるとき、$M$ をホモロジー球面という。

ホモトピー球面は単連結なホモロジー球面である(ホモトピー同値 の命題「基本群・ホモロジーへの帰結」)。したがって thm-gpc-main から次が従う。

ホモトピー球面は球面と同相

$n\ge5$ のとき、$n$ 次元の滑らかなホモトピー球面は $S^n$ と同相である。

Mil65 p. 109 の Corollary は、thm-gpc-main(同 Proposition B)からこの形の系を導いている。
滑らかな円板は 円板定理 の定義「滑らかな円板」の意味とする。すなわち $f\colon D^n\to X$ で、ある $\rho>1$ と開埋め込み $F\colon B_\rho\to X$ について $F\vert_{D^n}=f$ となるものである。どの多様体の内部の点にも、座標近傍を縮めてこれを中心とする滑らかな円板がとれる。$X_f:=X\setminus f(\operatorname{Int}D^n)$ と書く。境界に沿った貼り合わせと連結和 の補題「円板をくり抜いた多様体」により、$X_f$ は境界 $\partial X\sqcup f(S^{n-1})$ をもつ滑らかな境界付き多様体である(同補題は $X$ に境界がない場合を述べるが、$F(B_\rho)$ が内部にあれば同じ証明がそのまま使える)。

3 つの補題

2 枚の円板の和

位相空間 $X$ が閉集合 $A$、$B$ の和で、同相写像 $\alpha\colon A\to D^n$、$\beta\colon B\to D^n$ が
$$ A\cap B=\alpha^{-1}(S^{n-1})=\beta^{-1}(S^{n-1}) $$
をみたすなら、$X$ は $S^n$ と同相である。

2 枚の円板の和

$\varphi:=\beta\circ\alpha^{-1}\vert_{S^{n-1}}$ は $S^{n-1}$ の同相写像である。$G\colon D^n\to D^n$ を $G(0):=0$、$y\ne0$ で $G(y):=\lvert y\rvert\,\varphi^{-1}(y/\lvert y\rvert)$ と定める。$\lvert G(y)\rvert=\lvert y\rvert$ なので $G$ は原点でも連続で、$y\mapsto\lvert y\rvert\,\varphi(y/\lvert y\rvert)$ が同じ理由で連続な逆写像なので、$G$ は同相写像である(円周の同相写像を錐に延ばす、Alexander の方法)。
$S^n\subset\mathbb{R}^n\times\mathbb{R}$ の閉じた下半球・上半球への同相写像 $\iota_\pm(y):=\bigl(y,\pm\sqrt{1-\lvert y\rvert^2}\bigr)$($y\in D^n$)をとり、$g\colon X\to S^n$ を
$$ g:=\iota_-\circ\alpha\ \ (A\text{ の上}),\qquad g:=\iota_+\circ G\circ\beta\ \ (B\text{ の上}) $$
と定める。$x\in A\cap B$ なら $u:=\alpha(x)\in S^{n-1}$、$\beta(x)=\varphi(u)$ で、$G(\varphi(u))=u$ なので、$\iota_+(G(\beta(x)))=(u,0)=\iota_-(\alpha(x))$ となり、2 つの定義は一致する。$A$、$B$ は閉集合なので、貼り合わせの補題により $g$ は連続である。$\iota_-\circ\alpha$ は $A$ から閉じた下半球 $S_-$ への、$\iota_+\circ G\circ\beta$ は $B$ から閉じた上半球 $S_+$ への全単射で、どちらも $A\cap B$ をちょうど赤道 $S_-\cap S_+$ の上へ同じ写像で写すので、$g$ は全単射である。$g^{-1}$ は閉集合 $S_\pm$ の上でそれぞれ同相写像の逆写像なので連続で、貼り合わせの補題により $g^{-1}$ も連続である。よって $g$ は同相写像である。$\square$

円板をくり抜いた多様体

$n\ge3$ とし、$X$ を連結な $n$ 次元の多様体(境界があってもよい)、$f\colon D^n\to X$ をその内部の滑らかな円板とする。

  1. $X_f$ は連結で、$\pi_1(X_f)\cong\pi_1(X)$ である。
  2. すべての $k$ で $H_k(X_f,f(S^{n-1}))\cong\tilde H_k(X)$ である。
  3. $X$ が閉多様体でホモロジー球面なら、$\tilde H_*(X_f)=0$ である。
円板をくり抜いた多様体の補題

$U:=X\setminus F(D_{1/2})$、$V:=F(B_\rho)$、$A_0:=F(\{\frac12< \lvert x\rvert\le1\})$ とおく。$F(D_{1/2})$ はコンパクトなので $U$ は開集合で、$U\cup V=X$、$U\cap V=F(\{\frac12< \lvert x\rvert< \rho\})$ は $S^{n-1}\times(\frac12,\rho)$ と同相である。$0\le s\le1$ について、$\frac12< \lvert x\rvert< 1$ の点で $H_s(F(x)):=F\bigl((1-s+s/\lvert x\rvert)x\bigr)$、$U$ のほかの点で $H_s:=\mathrm{id}$ とおくと、$H$ は連続で($\lvert x\rvert=1$ で恒等写像につながる)、$H_1(U)=X_f$、$H_1(A_0)=f(S^{n-1})$ であり、$X_f$ の点は動かない。よって $X_f$ は $U$ の、$f(S^{n-1})$ は $A_0$ の強変形レトラクトである。
1.$U$ が連結であることを示す。$U=U_1\sqcup U_2$(空でない開集合)とすると、連結な $U\cap V$ はたとえば $U_1$ に含まれ、$U_2\cap V=\emptyset$ なので $X=(U_1\cup V)\sqcup U_2$ となって $X$ の連結性に反する。多様体は局所弧状連結なので $U$ は弧状連結で、$U\cap V$($n-1\ge2$ なので弧状連結かつ単連結)と $V$(開球体と同相)も弧状連結である。Van Kampenの定理 の定理「Van Kampenの定理」により $\pi_1(X)\cong\pi_1(U)\ast_{\pi_1(U\cap V)}\pi_1(V)$ で、$\pi_1(U\cap V)$ と $\pi_1(V)$ は自明なので $\pi_1(X)\cong\pi_1(U)$ である。$X_f$ は $U$ の変形レトラクトなので連結で、$\pi_1(X_f)\cong\pi_1(U)\cong\pi_1(X)$ である。
2.包含 $(X_f,f(S^{n-1}))\to(U,A_0)$ は、$X_f\to U$ と $f(S^{n-1})\to A_0$ がホモトピー同値なので、2 つの対の長完全列と 5 項補題により相対ホモロジーの同型を引き起こす。$Z:=F(D_{1/2})$ は閉集合で、$f(D^n)$ の内部 $F(B_1)$ に含まれ、$X\setminus Z=U$、$f(D^n)\setminus Z=A_0$ なので、切除定理(特異ホモロジー) の定理「切除定理」により $H_k(U,A_0)\cong H_k(X,f(D^n))$ である。$f(D^n)$ は可縮なので、相対ホモロジーと長完全列 の命題「被約ホモロジーの対の長完全列」から $H_k(X,f(D^n))\cong\tilde H_k(X)$ である。
3.$x_0:=f(0)$ とする。$X\setminus V$ は閉集合で開集合 $U$ に含まれるので、切除により $H_k(X,U)\cong H_k(V,U\cap V)\cong H_k(B_\rho,B_\rho\setminus D_{1/2})$ であり、同様に $H_k(X,X\setminus\{x_0\})\cong H_k(B_\rho,B_\rho\setminus\{0\})$ である。$B_\rho\setminus D_{1/2}\to B_\rho\setminus\{0\}$ はホモトピー同値なので、包含が引き起こす $H_k(X,U)\to H_k(X,X\setminus\{x_0\})$ は同型で、これは $k=n$ で $\mathbb{Z}$、ほかで $0$ である(切除定理(特異ホモロジー) の定理「Euclid 空間の局所ホモロジーと次元の不変性」)。$H_n(X)\cong\mathbb{Z}\ne0$ なので、向き付け可能多様体 の定理「最高次のホモロジーと向き」により $X$ は向き付け可能で、基本類の $H_n(X,X\setminus\{x_0\})$ への像は生成元である。よって $H_n(X)\to H_n(X,U)$ は同型である。被約ホモロジーの対 $(X,U)$ の長完全列
$$ H_{k+1}(X)\to H_{k+1}(X,U)\to\tilde H_k(U)\to\tilde H_k(X)\to H_k(X,U) $$
を見る。$k\le n-2$ では $H_{k+1}(X,U)=0$、$\tilde H_k(X)=0$ なので $\tilde H_k(U)=0$ である。$k=n-1$ では左の写像 $H_n(X)\to H_n(X,U)$ が全射で $\tilde H_{n-1}(X)=0$ なので $\tilde H_{n-1}(U)=0$ である。$k=n$ では $H_{n+1}(X,U)=0$ で $H_n(X)\to H_n(X,U)$ が単射なので $H_n(U)=0$ であり、$k>n$ では両隣が $0$ である。$X_f$ は $U$ とホモトピー同値なので $\tilde H_*(X_f)=0$ である。$\square$

円板の特徴づけ

$n\ge6$ とし、$W$ を $n$ 次元のコンパクトで連結な境界付き多様体とする。$W$ と $\partial W$ が単連結(とくに $\partial W$ は空でなく連結)で、$\tilde H_*(W)=0$ なら、同相写像 $h\colon W\to D^n$ で $h(\partial W)=S^{n-1}$ となるものがある。

円板の特徴づけ

$W$ の内部の滑らかな円板 $f$ をとり、$W':=W_f$ とおく。$\partial W'=f(S^{n-1})\sqcup\partial W$ で、lem-gpc-remove-disk の 1 により $W'$ は単連結、2 により $H_*(W',f(S^{n-1}))\cong\tilde H_*(W)=0$ である。$f(S^{n-1})\cong S^{n-1}$ は $n-1\ge2$ なので単連結である。$W'$ はコンパクト集合 $W$ の閉集合なのでコンパクトで、$(W';f(S^{n-1}),\partial W)$ は h同境定理 の定理「h同境定理」の仮定をすべてみたす。したがって微分同相写像 $F\colon f(S^{n-1})\times[0,1]\to W'$ で $F(y,0)=y$、$F(f(S^{n-1})\times\{1\})=\partial W$ となるものがある。
$h\colon W\to D^n$ を
$$ h(f(x)):=\tfrac12x\ \ (x\in D^n),\qquad h\bigl(F(f(v),t)\bigr):=\tfrac{1+t}{2}\,v\ \ (v\in S^{n-1},\ 0\le t\le1) $$
と定める。$W=f(D^n)\cup W'$ で、2 つの閉集合の共通部分は $f(S^{n-1})$ であり、そこでは $F(f(v),0)=f(v)$ なので 2 つの式はともに $\frac12v$ を与える。貼り合わせの補題により $h$ は連続である。$h$ は $f(D^n)$ を $D_{1/2}$ の上へ、$W'$ を円環 $\{\frac12\le\lvert x\rvert\le1\}$ の上へ全単射に写し($(v,t)\mapsto\frac{1+t}2v$ は $S^{n-1}\times[0,1]$ からこの円環への全単射)、両者の重なりは $\lvert x\rvert=\frac12$ だけなので、$h$ は全単射である。$W$ はコンパクトで $D^n$ は Hausdorff なので $h$ は同相写像であり、$h(\partial W)=h(F(f(S^{n-1})\times\{1\}))=S^{n-1}$ である。$\square$

$h$ は微分同相写像にもとれる(Mil65 Proposition A、p. 108。貼り合わせの滑らかな構造の一意性 Theorem 1.4、p. 2 を使う。Kos93 Ch. VIII (4.5) Corollary、p. 154)。

主定理の証明

$n=5$ の場合に使う Brown の定理を述べておく。位相空間 $Q$ の部分集合 $\Sigma$ が両側カラーをもつとは、$\Sigma\times(-1,1)$ から $Q$ の開集合の上への同相写像 $b$ で $b(y,0)=y$ となるものがあることをいう。

Brown の定理

$S^n$ に位相的に埋め込まれた $(n-1)$ 次元球面 $\Sigma$ が両側カラーをもつなら、$S^n$ の同相写像で $\Sigma$ を赤道 $S^{n-1}$ の上へ写すものがある。とくに $S^n\setminus\Sigma$ はちょうど 2 つの連結成分をもち、各成分の閉包 $K$ について、同相写像 $K\to D^n$ で $\Sigma$ を $S^{n-1}$ の上へ写すものがある。

この定理はこの記事では証明しない(M. Brown による一般化された Schoenflies 定理。Mil65 Theorem 9.7、p. 111 がこの形で引用している)。後半は、赤道で分けた閉じた半球が $D^n$ と同相であることから従う。

主定理

$M$ の滑らかな円板 $f\colon D^n\to M$ をとり、$W:=M_f$ とおく。$W$ はコンパクト集合 $M$ の閉集合なのでコンパクトであり、lem-gpc-remove-disk の 1 と 3 により連結、単連結で $\tilde H_*(W)=0$ である。$\partial W=f(S^{n-1})$ は $n-1\ge2$ なので単連結である。また $M=W\cup f(D^n)$ で、2 つの閉集合の共通部分は $f(S^{n-1})=\partial W$ である。したがって、同相写像 $\alpha\colon W\to D^n$ で $\alpha(\partial W)=S^{n-1}$ となるものがあれば、$\beta:=f^{-1}\colon f(D^n)\to D^n$ と合わせて lem-gpc-two-disks により $M$ は $S^n$ と同相である。以下、$\alpha$ を作る。
$n\ge6$ の場合.$W$ は prop-gpc-disk の仮定をみたすので、$\alpha$ がある。
$n=5$ の場合.$W$ は 5 次元なので prop-gpc-disk は直接には使えない。1 つ次元を上げる。
段 1(6 次元の円板).$P:=W\times[0,1]$ は角付き多様体で、角の解消 の定理「積の角の解消」により、位相空間としてはそのままで 6 次元の滑らかな境界付き多様体の構造をもち、境界は
$$ Q:=\partial P=(W\times\{0\})\cup(\partial W\times[0,1])\cup(W\times\{1\}) $$
である。$P$ はコンパクトで、射影 $P\to W$ はホモトピー同値なので $P$ は単連結で $\tilde H_*(P)=0$ である。$Q$ も単連結である(下の「詳細」)。prop-gpc-disk を $n=6$ で $P$ に使うと、同相写像 $P\to D^6$ で $Q$ を $S^5$ の上へ写すものがあり、その制限 $\psi\colon Q\to S^5$ は同相写像である。
段 2(両側カラー).$\Sigma:=\partial W\times\{0\}\subset Q$ は $S^4$ と同相である。境界に沿った貼り合わせと連結和 の補題「円板をくり抜いた多様体」の $\partial W$ のカラー $c\colon\partial W\times[0,1)\to W$ を使い、
$$ b\bigl((y,0),s\bigr):=\begin{cases}\bigl(c(y,-s),0\bigr)&-1< s\le0,\\ (y,s)\in\partial W\times[0,1)&0\le s< 1\end{cases} $$
とおくと、$b$ は $\Sigma\times(-1,1)$ から $Q$ の開集合の上への同相写像で、$\Sigma$ の両側カラーである(下の「詳細」)。よって $\psi(\Sigma)$ は $S^5$ の中の両側カラーをもつ 4 次元球面である。
段 3(成分の特定).$Q\setminus\Sigma$ は、$(W\setminus\partial W)\times\{0\}$ と $(\partial W\times(0,1])\cup(W\times\{1\})$ の非交和である。前者の $Q$ での補集合 $(\partial W\times[0,1])\cup(W\times\{1\})$ と、後者の $Q$ での補集合 $W\times\{0\}$ はどちらも閉集合なので、2 つはともに開集合である。前者は連結である(包含 $\operatorname{Int}W\to W$ はホモトピー同値で(カラー近傍定理 の系「内部とのホモトピー同値」)、$W$ は連結だから)。後者は $W\times\{1\}$ と各 $\{y\}\times(0,1]$ という連結集合の和で、それぞれが $W\times\{1\}$ と交わるので連結である。よってこれらが $Q\setminus\Sigma$ の 2 つの連結成分であり、前者の閉包は $W\times\{0\}$ である(境界の点 $(c(y,0),0)$ は $(c(y,s),0)$、$s\to0$ の極限)。thm-gpc-brown を $\psi(\Sigma)\subset S^5$ に使うと、$\psi(W\times\{0\})$ は $\psi(\Sigma)$ を $S^4$ に写す同相写像で $D^5$ と同相である。$\psi$ と $W\to W\times\{0\}$ を合成すれば、求める $\alpha$ が得られる。$\square$

詳細($Q$ の単連結性と両側カラー)

単連結性:$U_0:=(W\times\{0\})\cup(\partial W\times[0,\frac23))$、$U_1:=(\partial W\times(\frac13,1])\cup(W\times\{1\})$ は、補集合がそれぞれ閉集合 $(\partial W\times[\frac23,1])\cup(W\times\{1\})$、$(W\times\{0\})\cup(\partial W\times[0,\frac13])$ なので $Q$ の開集合で、$U_0\cup U_1=Q$ である。$\partial W\times[0,\frac23)$ の点の第 2 成分を $0$ へ縮めるホモトピーで $U_0$ は $W\times\{0\}\cong W$ に変形レトラクトするので単連結で、$U_1$ も同様である。$U_0\cap U_1=\partial W\times(\frac13,\frac23)$ は $S^4\times$(区間)と同相で弧状連結かつ単連結である。Van Kampenの定理 の系「単連結性の判定」により $Q$ は単連結である。

両側カラー:$s=0$ では 2 つの式はともに $(y,0)$ を与え、$b$ は連続な単射である。$c$ の像 $C:=c(\partial W\times[0,1))$ は $W$ の開集合なので、$b$ の像 $(C\times\{0\})\cup(\partial W\times[0,1))$ の $Q$ での補集合 $((W\setminus C)\times\{0\})\cup(\partial W\times\{1\})\cup(W\times\{1\})$ は閉集合であり、像は開集合である。像の中で $C\times\{0\}$ と $\partial W\times[0,1)$ はそれぞれ閉集合で($Q$ の閉集合 $W\times\{0\}$、$\partial W\times[0,1]$ との共通部分)、その上で $b^{-1}$ はそれぞれ $(x,0)\mapsto((y,0),-t)$($(y,t):=c^{-1}(x)$)と $(y,s)\mapsto((y,0),s)$ で連続なので、貼り合わせの補題により $b^{-1}$ も連続である。

$n\ge6$ の場合の証明は Mil65 Proposition B の証明(pp. 109–110)と同じ筋である。そこでは、$W$ が微分同相の意味で円板になることから、$M$ は 2 枚の $n$ 次元円板を縁の微分同相写像 $h\colon S^{n-1}\to S^{n-1}$ で貼ったねじれ球面 $D^n\cup_hD^n$ と微分同相であることを示し、lem-gpc-two-disks と同じ写像で $S^n$ との同相を与えている。$n=5$ については、Mil65 p. 110 は Kervaire–Milnor・Wall の定理(単連結なホモロジー 5 球面は可縮な 6 次元の多様体の境界になる)を使い、Kos93 Ch. VIII (4.6) Corollary(p. 154)は $M\#(-M)$ が可縮な多様体の境界になること(Ch. VI (1.4)、p. 94)と Mazur の定理(Ch. VI (2.4)、p. 95)を使う。この記事の $n=5$ の証明は後者と同じく Schoenflies 型の定理に帰着させるもので、$M\#(-M)$ のかわりに $W\times[0,1]$ の境界(2 つの $W$ を $\partial W\times[0,1]$ でつないだもの)を使った。

例と注意

ねじれ球面と異種球面
  1. ねじれ球面:$h\colon S^{n-1}\to S^{n-1}$ を微分同相写像とし、$D^n$ の 2 つのコピーの境界を $h$ で貼った多様体 $\Sigma_h:=D^n\cup_hD^n$(境界に沿った貼り合わせと連結和)は、lem-gpc-two-disks により $S^n$ と同相である。$h$ が $D^n$ の微分同相写像に延びるなら $\Sigma_h$ は $S^n$ と微分同相である(Mil65 p. 112 の注意)。
  2. 異種球面:$S^7$ と同相だが微分同相でない滑らかな 7 次元の多様体が存在する(Milnor。Mil65 p. 109 の注意)。これはホモトピー球面なので、cor-gpc-homotopy の結論は同相より強められない。$n\ge5$ ではホモトピー球面の h 同境類が $S^n$ 上の滑らかな構造の群をなす(Kos93 Ch. VIII (5.5)・(5.6)、pp. 158–159)。一方 $n=5,6$ では、単連結なホモロジー球面は $S^n$ と微分同相である(Mil65 p. 110)。
外す条件反例成り立たなくなること
単連結($n=3$ の例で、$n\ge5$ の条件も外れる)Poincaré のホモロジー 3 球面ホモロジー球面は球面と同相
ホモロジーが $S^n$ と同じ$S^2\times S^3$($n=5$)単連結な閉多様体は球面と同相
結論は同相(微分同相に強めない)Milnor の異種 7 次元球面ホモトピー球面は $S^n$ と微分同相
$n\ge6$(prop-gpc-disk の次元)prop-gpc-disk を $n=5$ の $W$ に直接使う1 回の h同境定理で $W$ が円板とわかる
反例の確認

1 行目:Poincaré は種数 2 の Heegaard 図式から 3 次元の閉多様体を作り、それがホモロジー球面であるが基本群が自明でない(二十面体群に全射をもつ)ことを示した(Kos93 Ch. VII §7、pp. 140–141)。基本群が $S^3$ と違うので $S^3$ と同相でない。単連結性をホモロジーの条件で代えることはできない。ただしこの例は次元の条件 $n\ge5$ もみたさないので、$n\ge5$ で単連結性だけを外した反例ではない。
2 行目:$S^2\times S^3$ は単連結な 5 次元の閉多様体である(積の基本群は基本群の積)。$y_0\in S^3$ について $x\mapsto(x,y_0)$ と射影の合成は $S^2$ の恒等写像なので、$H_2(S^2)\cong\mathbb{Z}$ は $H_2(S^2\times S^3)$ に単射で入り、$H_2(S^2\times S^3)\ne0=H_2(S^5)$ である。ホモロジーの条件を外すと結論は成り立たない。
3 行目:ex-gpc-twisted の 2 のとおり。満たす性質は「$n\ge5$ の滑らかなホモトピー球面」、破る結論は「$S^n$ と微分同相」である。
4 行目:$n=5$ のとき、$W$ から円板の内部を除いた $W'$ は 5 次元の h 同境で、h同境定理 の次元の仮定 $\dim\ge6$ をみたさない。5 次元の滑らかな h 同境は一般には積でない(h同境定理 の反例の表の 4 行目)ので、この議論は使えず、証明では $W\times[0,1]$ に移った。

低い次元と位相多様体

  • $n=4$:Freedman が、4 次元の位相的なホモトピー球面は $S^4$ と同相であることを示した(Kos93 Ch. VIII §7、p. 164。5 次元の位相的な h同境定理からも従う)。滑らかな 4 次元球面の場合($S^4$ と微分同相か)は、この記事の方法では扱えない。
  • $n=3$:Poincaré のもとの問いで、Perelman が解決した。閉じた単連結な 3 次元多様体は $S^3$ と微分同相である(MT07 Corollary 0.2 (a)、p. 6)。Ricci 流による証明で、h同境定理とはまったく別の方法である。
  • 位相多様体・PL 多様体:Stallings は組合せ多様体について別の方法(呑み込み)で 5 次元より高い次元の場合を証明し、Newman は 1966 年にそれを位相多様体に広げた(Kos93 Ch. VIII §7、pp. 162–163)。

関連項目

参考文献

[1]
John Milnor, Lectures on the h-Cobordism Theorem, Princeton Mathematical Notes, Princeton University Press, 1965, Theorem 1.4(p. 2);§9 Proposition A(円板の特徴づけ、p. 108。証明 pp. 108–109)、Proposition B(一般化された Poincaré 予想、p. 109。証明 pp. 109–110)とその Corollary・異種 7 次元球面の注意(p. 109)、ねじれ球面と Kervaire–Milnor・Wall の定理(p. 110)、Theorem 9.7(Brown、p. 111)、Proposition D の後の注意(p. 112)
[2]
Antoni A. Kosinski, Differential Manifolds, Pure and Applied Mathematics 138, Academic Press, 1993, Ch. VI (1.4) Corollary(p. 94)・(2.4) Proposition(p. 95);Ch. VII §7(Poincaré のホモロジー球面、pp. 140–141);Ch. VIII (4.5)・(4.6) Corollary(p. 154)、(5.5) Theorem・(5.6) Corollary(pp. 158–159)、§7 Remarks(Smale・Stallings、p. 162;Newman、p. 163;Freedman、p. 164)
[3]
John W. Morgan, Gang Tian, Ricci Flow and the Poincaré Conjecture, arXiv:math/0607607, arXiv:math/0607607v2(2007-03-21。のち Clay Mathematics Monographs 3 として刊行)。Introduction の Theorem 0.1(p. 5)・Corollary 0.2 (a)(閉じた単連結な 3 次元多様体は S^3 と微分同相、p. 6)

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