トーナメント

同義語:tournamentトーナメント(グラフ理論)

概要

トーナメント(tournament)とは、どの 2 頂点の間にもちょうど一方向の有向辺がある有向グラフ、すなわち完全グラフの向き付けであり、総当たり戦の勝敗の記録にあたる。どのトーナメントも全頂点を通る有向道をもち(Rédei の定理)、得点最大の頂点からは他の全頂点へ 2 歩以内で行け、3-閉路の個数は得点だけで決まる。強連結なトーナメントでは各頂点が長さ $3$ から $n$ までのすべての有向閉路に含まれ、とくに有向 Hamilton 閉路がある。非負整数の列が得点列になる条件は Landau の不等式で与えられる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 有向グラフ, 完全グラフ, 次数(グラフ)

トーナメント は、$n$ 人の総当たり戦の結果を記録した有向グラフである。どの 2 人もちょうど 1 回対戦し、引き分けはないとして、$u$ が $v$ に勝ったときに有向辺 $u\to v$ を置く。言い換えると、完全グラフ $K_n$ のすべての辺に向きを付けたものがトーナメントである。
勝敗の付き方は自由なので、「$a$ が $b$ に、$b$ が $c$ に、$c$ が $a$ に勝つ」という三すくみが起こりうる。それでも、トーナメントには驚くほど強い構造がある。どのトーナメントでも、全員を 1 列に並べて、各人が次の人に勝っているようにできる(thm-tn-redei)。勝ち数が最も多い人からは、ほかの全員へ 2 歩以内でたどり着ける(thm-tn-king)。三すくみの個数は各人の勝ち数だけで決まり(thm-tn-three-cycles)、どの人からどの人へも勝ちの連鎖でたどり着けるなら、全員を 1 周する勝ちの輪がある(thm-tn-moon)。さらに、どの数の列が勝ち数の一覧として現れるかも、簡単な不等式で判定できる(thm-tn-landau)。

定義

この記事の有向グラフは 有向グラフ の記事の定義のとおりで、頂点の集合 $V$ は有限、有向辺の集合 $A\subset V\times V$ である。$(u,v)\in A$ を $u\to v$ と書く。有向歩道・有向道・有向閉路・強連結性は同記事の定義「有向歩道・有向道・有向閉路」「到達可能性と強連結性」に従う。長さ $k$ の有向閉路を $k$-閉路 という。

トーナメント

有向グラフ $T=(V,A)$ が トーナメント(tournament)であるとは、相異なるどの 2 頂点 $u,v$ についても、$u\to v$ と $v\to u$ のちょうど一方が成り立ち、ループをもたないことをいう。$|V|=n$ のとき $n$ 頂点のトーナメントという。$u\to v$ のとき、$u$ は $v$ に 勝つ という。

トーナメントは、有向グラフ の記事の定義「基礎グラフと向き付け」の意味で、完全グラフ $K_n$ の向き付けにほかならない。頂点に $1,\dots,n$ と名前を付けると、$K_n$ の $\binom n2$ 本の辺それぞれに 2 通りの向きがあるので、頂点に名前を付けた $n$ 頂点のトーナメントは $2^{\binom n2}$ 個ある。

得点と推移的トーナメント

トーナメント $T$ の頂点 $v$ が勝つ頂点の個数、すなわち $v$ の出次数を $v$ の 得点(score)といい、$s(v)$ と書く。得点を小さい順に並べた列を $T$ の 得点列 という。$u\to v$ かつ $v\to w$ ならつねに $u\to w$ となるトーナメントを 推移的 であるという。

すべての頂点を 1 回ずつ通る有向道を 有向 Hamilton 道、すべての頂点を通る有向閉路を 有向 Hamilton 閉路 という。

直感

総当たり戦の順位を勝ち数で決めると、同じ勝ち数の人が並ぶことも、勝ち数の多い人が少ない人に負けていることもある。順位に矛盾が生じる原因は三すくみであり、三すくみが 1 つもないトーナメントは、全員を強い順に並べて「上の人はつねに下の人に勝つ」ようにできる。これが推移的トーナメントである(thm-tn-transitive)。三すくみがあっても、各人が次の人に勝つ並べ方(有向 Hamilton 道)は必ずある。ただしその並べ方は一般に 1 通りではなく、順位を決める根拠にはならない。

例

頂点が 3 個と 4 個のトーナメント
  1. 頂点 $a,b,c$ のトーナメントは、ある頂点が残りの 2 頂点に勝つもの(推移的、得点列 $(0,1,2)$)と、$a\to b\to c\to a$ の 3-閉路(得点列 $(1,1,1)$)のどちらかと同じ形である。3 頂点の辺の向き付けは $2^3=8$ 個あり、そのうち 2 個が 3-閉路、6 個が推移的である。
  2. 頂点が 4 個のトーナメントは、頂点の名前を除けば 4 種類ある(BM76 図 10.4、p. 175)。得点列はそれぞれ $(0,1,2,3)$、$(0,2,2,2)$、$(1,1,1,3)$、$(1,1,2,2)$ である。$(1,1,2,2)$ のものは、$a\to b\to c\to d\to a$ と $a\to c$、$b\to d$ からなり、有向 Hamilton 閉路 $a,b,c,d,a$ をもつ。
正則トーナメント

$n=2m+1$ を奇数とし、頂点を $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ の元 $0,1,\dots,n-1$ とする。$j-i\equiv1,2,\dots,m\pmod n$ のとき $i\to j$ と定める。相異なる $i,j$ について $j-i$ と $i-j$ の一方だけが $\{1,\dots,m\}$ に $n$ を法として合同なので、これはトーナメントであり、どの頂点の得点も $m$ である。すべての頂点の得点が等しいトーナメントを 正則トーナメント という。得点の和は辺の本数 $\binom n2$ なので、正則トーナメントの頂点の個数は奇数である。

得点の基本性質

得点の和

$n$ 頂点のトーナメント $T$ について $\sum_{v\in V}s(v)=\binom n2$ である。さらに、頂点の部分集合 $S$ について
$$ \sum_{v\in S}s(v)\ge\binom{|S|}2 $$
が成り立つ。

各辺 $u\to v$ は $u$ の得点にだけ 1 を加えるので、得点の和は辺の本数 $\binom n2$ に等しい。$S$ の 2 頂点を結ぶ $\binom{|S|}2$ 本の辺は、それぞれ $S$ のどちらかの頂点の得点に 1 を加えるので、$S$ の頂点の得点の和はそれ以上である。$\square$

有向 Hamilton 道

Rédei の定理

どのトーナメントも有向 Hamilton 道をもつ。

頂点の個数 $n$ についての帰納法で示す。$n\le1$ なら明らかである。$n\ge2$ とし、頂点 $x$ を 1 つ選ぶ。$x$ を除いたトーナメントは、帰納法の仮定により有向 Hamilton 道 $v_1\to v_2\to\dots\to v_{n-1}$ をもつ。$x$ をこの道に差し込む。

  • $x\to v_1$ なら、$x\to v_1\to\dots\to v_{n-1}$ が求める道である。
  • $v_{n-1}\to x$ なら、$v_1\to\dots\to v_{n-1}\to x$ が求める道である。
  • どちらでもなければ $v_1\to x$ かつ $x\to v_{n-1}$ である。$v_i\to x$ となる $i$ のうち最大のものを $i$ とすると $i\le n-2$ で、$i$ の最大性から $x\to v_{i+1}$ である。よって $v_1\to\dots\to v_i\to x\to v_{i+1}\to\dots\to v_{n-1}$ が求める道である。$\square$

この定理は Rédei(1934)による(BM76 Corollary 10.1、p. 175)。Rédei はさらに、有向 Hamilton 道の個数がつねに奇数であることを示した(Moo68 Theorem 14、p. 28。この記事では証明しない)。次に述べる推移的トーナメントでは、有向 Hamilton 道はただ 1 つである(thm-tn-transitive の最後の主張)。逆に有向 Hamilton 道がただ 1 つなら推移的であることは、強連結成分による分解を使って示す(cor-tn-unique-path)。

推移的なトーナメントと 3-閉路

推移的トーナメントの特徴づけ

$n$ 頂点のトーナメント $T$ について、次は同値である。

  1. $T$ は推移的である。
  2. $T$ は 3-閉路をもたない。
  3. $T$ は有向閉路をもたない。すなわち有向非巡回グラフである。
  4. 頂点を $v_1,\dots,v_n$ と並べて、$i< j$ ならつねに $v_i\to v_j$ となるようにできる。
  5. $T$ の得点がすべて相異なる。このとき得点列は $(0,1,\dots,n-1)$ である。
    さらにこのとき、$T$ の有向 Hamilton 道は $v_1\to v_2\to\dots\to v_n$ ただ 1 つである。

1 ⇒ 2:3-閉路 $u\to v\to w\to u$ があれば、推移性から $u\to w$ となり、$w\to u$ と両立しない。
2 ⇒ 3:トーナメントにはループも長さ $2$ の有向閉路($u\to v$ と $v\to u$)もないので、有向閉路の長さは $3$ 以上である。有向閉路があるとして、最も短いもの $v_0\to v_1\to\dots\to v_{\ell-1}\to v_0$ をとる。2 により $\ell\ge4$ である。$v_2\to v_0$ なら $v_0\to v_1\to v_2\to v_0$ が 3-閉路になる。$v_0\to v_2$ なら $v_0\to v_2\to\dots\to v_{\ell-1}\to v_0$ が長さ $\ell-1$ の有向閉路になり、最短性に反する。
3 ⇒ 4:有向グラフ の記事の定理「非巡回性と位相的順序」により、どの辺 $v_i\to v_j$ でも $i< j$ となる並べ方 $v_1,\dots,v_n$ がある。$i< j$ のとき $v_i$ と $v_j$ を結ぶ辺の向きは $v_i\to v_j$ か $v_j\to v_i$ だが、後者なら $j< i$ となるので、$v_i\to v_j$ である。
4 ⇒ 5:$v_i$ は $v_{i+1},\dots,v_n$ のちょうど $n-i$ 頂点に勝つので $s(v_i)=n-i$ であり、得点は相異なる。
5 ⇒ 1:$n$ についての帰納法で示す。$n\le2$ なら推移性の仮定に当てはまる 3 頂点がないので成り立つ。$0\le s(v)\le n-1$ の $n$ 個の相異なる整数なので、得点は $0,1,\dots,n-1$ をちょうど 1 回ずつとる。得点 $n-1$ の頂点 $t$ はほかの全員に勝つ。$t$ を除いたトーナメント $T'$ では、どの頂点も $t$ に負けていたので得点は変わらず、相異なる。帰納法の仮定により $T'$ は推移的である。$u\to v$、$v\to w$ とする。$t$ に勝つ頂点はないので $v,w\ne t$ である。$u=t$ なら $t\to w$。$u\ne t$ なら $u,v,w$ は $T'$ の頂点で、$u\to w$ である。これは 5 の後半も含む。
最後の主張:4 の並べ方で、$v_i\to v_j$ は $i< j$ のときに限るので、有向道に沿って添字は増える。すべての頂点を通る有向道は、添字が $1$ ずつ増えるもの $v_1\to\dots\to v_n$ しかない。$\square$

一般のトーナメントで 3-閉路がいくつあるかは、得点だけで決まる。

3-閉路の個数

$n$ 頂点のトーナメント $T$ の 3-閉路の個数 $c_3(T)$(頂点の 3 点集合で 3-閉路をなすものの個数)は
$$ c_3(T)=\binom n3-\sum_{v\in V}\binom{s(v)}2 $$
である。さらに
$$ c_3(T)\le\begin{cases}\dfrac{n^3-n}{24}&(n\text{ が奇数})\\[2mm] \dfrac{n^3-4n}{24}&(n\text{ が偶数})\end{cases} $$
であり、どちらの場合も等号を満たすトーナメントがある。$n$ が奇数のとき、等号が成り立つのは正則トーナメントのときに限る。

頂点の 3 点集合 $\{a,b,c\}$ の間の 3 本の辺は、ex-tn-small の 1 により、3-閉路をなすか、ある 1 頂点が他の 2 頂点に勝つかのちょうど一方である。後者の 3 点集合を、他の 2 頂点に勝つ頂点 $v$ ごとに数えると、$v$ が勝つ $s(v)$ 頂点から 2 つ選ぶ選び方の数 $\binom{s(v)}2$ だけある。よって 3-閉路をなさない 3 点集合は $\sum_v\binom{s(v)}2$ 個で、等式を得る。
不等式:$\sum_v\binom{s(v)}2=\frac12\sum_vs(v)^2-\frac12\binom n2$(prop-tn-score-sum)なので、$\sum_vs(v)^2$ の最小値を求めればよい。和が $\binom n2$ の非負整数 $s_1,\dots,s_n$ で、$s_a\ge s_b+2$ となる組があれば、$s_a,s_b$ を $s_a-1,s_b+1$ に替えると平方和は $2(s_a-s_b)-2>0$ だけ減る。よって平方和が最小になるのは、どの 2 つの差も $1$ 以下のときであり、これは $n$ が奇数なら全員が $\frac{n-1}2$、$n$ が偶数なら半数が $\frac n2$、残りの半数が $\frac n2-1$ のときである。このとき
$$ \binom n3-n\binom{(n-1)/2}{2}=\frac{n(n-1)(n+1)}{24},\qquad \binom n3-\frac n2\Bigl(\binom{n/2}2+\binom{n/2-1}2\Bigr)=\frac{n(n-2)(n+2)}{24} $$
となり、上の上界を得る。$n$ が奇数なら等号は全員の得点が等しいとき、すなわち正則トーナメントのときに限り、ex-tn-regular がその例である。$n$ が偶数なら、$n+1$ 頂点の正則トーナメントから 1 頂点 $x$ を除くと、$x$ に負けていた $\frac n2$ 頂点の得点は $\frac n2$ のまま、$x$ に勝っていた $\frac n2$ 頂点の得点は $\frac n2-1$ になり、等号が成り立つ。$\square$

この等式は Kendall と Babington Smith(1940)、Szele(1943)らによる(Moo68 §5 の系、p. 11)。3-閉路の個数は、得点列が $(0,1,\dots,n-1)$ から離れるほど増え、総当たり戦の結果が「強さの順」からどれだけ外れているかの尺度になる。

王

得点最大の頂点は王である

トーナメント $T$ で得点が最大の頂点 $v$ からは、ほかのどの頂点 $w$ へも長さ $1$ または $2$ の有向道で行ける。すなわち $v\to w$ であるか、$v\to u\to w$ となる頂点 $u$ がある。

ある頂点 $w\ne v$ についてどちらも成り立たないとする。$v\to w$ でないので $w\to v$ である。$v$ が勝つ頂点 $u$ について $u\to w$ でないので $w\to u$ である。よって $w$ は $v$ と、$v$ が勝つ $s(v)$ 頂点のすべてに勝ち、$s(w)\ge s(v)+1$ となる。これは $s(v)$ の最大性に反する。$\square$

ほかの全員へ長さ $2$ 以下の有向道で行ける頂点を 王(king)という。この定理は Landau(1953)による(Moo68 §21 の演習 3、p. 81。BM76 Corollary 10.2、p. 175 は別の証明を与え、Exercise 10.2.4、p. 176 で得点最大の頂点による証明を問うている)。王は 1 人とは限らない。3-閉路では 3 頂点とも王である。

強連結なトーナメント

有向グラフとして強連結なトーナメントを 強連結トーナメント という。$n\ge2$ のとき、強連結トーナメントのどの頂点も、勝つ相手と負ける相手をそれぞれ 1 人以上もつ。勝つ相手がいなければほかの頂点へ行けず、負ける相手がいなければほかの頂点から来られないからである。とくに頂点が 2 個のトーナメントは強連結でない。

強連結トーナメントの閉路

$n\ge3$ 頂点の強連結トーナメント $T$ のどの頂点 $u$ も、$k=3,4,\dots,n$ のすべてについて、$u$ を通る $k$-閉路に含まれる。とくに $T$ は有向 Hamilton 閉路をもつ。

3-閉路. $u$ が勝つ頂点の集合を $S$、$u$ に勝つ頂点の集合を $R$ とすると、$V=\{u\}\cup S\cup R$ で、上の段落により $S,R$ はどちらも空でない。$S$ のある頂点から $R$ のある頂点への辺がなければ、$u$ から出る辺の行き先は $S$、$S$ から出る辺の行き先は $S$ の中だけになる($S$ の頂点は $u$ に負けている)。すると $u$ から $R$ へ行けず、強連結性に反する。よって $s\to r$($s\in S$、$r\in R$)となる辺があり、$u\to s\to r\to u$ が 3-閉路である。
$k$ から $k+1$ へ. $3\le k< n$ とし、$u$ を通る $k$-閉路 $C:v_0\to v_1\to\dots\to v_{k-1}\to v_0$($v_0=u$)があるとする。$C$ の外の頂点の集合を $W$ とすると $W\ne\emptyset$ である。
$C$ の頂点の中に $x$ に勝つものと $x$ に負けるものがともにあるような $x\in W$ があるとき:閉路を一周すると、$x$ に勝つ頂点から $x$ に負ける頂点へ移る箇所があるので、$v_i\to x$ かつ $x\to v_{i+1}$ となる $i$ がある(添字は $k$ を法とする)。$C$ の辺 $v_i\to v_{i+1}$ を $v_i\to x\to v_{i+1}$ に替えれば、$u$ を通る $(k+1)$-閉路が得られる。
そうでないとき:$W$ の各頂点は、$C$ の全頂点に負けるか(その全体を $W^-$ とする)、$C$ の全頂点に勝つ(その全体を $W^+$ とする)。$C$ の頂点から出る辺の行き先は $C$ か $W^-$ であり、$W^-$ の頂点から出る辺の行き先は $W^-$ か $W^+$ である。$W^+=\emptyset$ なら $W^-\ne\emptyset$ の頂点から $C$ へ戻れず、$W^-=\emptyset$ なら $C$ から $W^+\ne\emptyset$ の頂点へ行けないので、強連結性から $W^-$ と $W^+$ はどちらも空でない。$W^-$ から $W^+$ への辺がなければ、$u$ から行ける頂点は $C$ と $W^-$ の頂点に限られ、$W^+$ の頂点へ行けない。よって $s\to r$($s\in W^-$、$r\in W^+$)となる辺がある。$k\ge3$ なので $v_2\ne v_0$ であり、
$$ v_0\to s\to r\to v_2\to v_3\to\dots\to v_{k-1}\to v_0 $$
は $u=v_0$ を通る $(k+1)$-閉路である($v_0\to s$ は $C$ が $W^-$ に勝つこと、$r\to v_2$ は $W^+$ が $C$ に勝つことによる)。
$k$ についての帰納法により、$u$ は長さ $3,\dots,n$ のすべての閉路に含まれる。長さ $n$ の閉路は有向 Hamilton 閉路である。$\square$

有向 Hamilton 閉路をもつ有向グラフは強連結なので、$n\ge3$ のトーナメントについて、強連結であることと有向 Hamilton 閉路をもつことは同値である。後半は Camion(1959)による。各頂点がすべての長さの閉路に含まれるという形は Moon(1966)による(BM76 Theorem 10.3、pp. 176–177、Moo68 Theorem 3、p. 7)。
強連結でないトーナメントは、強連結な部分に分けて並べることができる。

強連結成分の並び

トーナメント $T$ の強連結成分は、$C_1,\dots,C_r$ と並べて、$i< j$ なら $C_i$ のすべての頂点が $C_j$ のすべての頂点に勝つようにできる。

相異なる強連結成分 $C,C'$ の間に、$C$ から $C'$ への辺と $C'$ から $C$ への辺がともにあれば、$C$ と $C'$ の頂点は互いに到達可能になり、同じ強連結成分に属してしまう。よって $C$ と $C'$ の間の辺はすべて同じ向きであり、どの 2 頂点も辺で結ばれるので、その向きの辺が少なくとも 1 本ある。したがって 有向グラフ の記事でいう凝縮 $T/{\sim}$ はトーナメントであり、同記事の命題「凝縮は非巡回である」により有向閉路をもたない。thm-tn-transitive の 3 ⇒ 4 により、成分を $C_1,\dots,C_r$ と並べて、$i< j$ なら凝縮で $C_i\to C_j$ となるようにできる。最初に述べたことから、このとき $C_i$ と $C_j$ の間の辺はすべて $C_i$ から $C_j$ へ向かう。$\square$

各 $C_i$ は 1 頂点か、3 頂点以上の強連結トーナメントで thm-tn-moon により有向 Hamilton 閉路をもつ。各 $C_i$ の Hamilton 道(閉路から 1 辺を除いたもの)を $C_1,\dots,C_r$ の順につなげば、thm-tn-redei の別証明が得られる(Moo68 §9、p. 28)。$C_i$ の最後の頂点は $C_{i+1}$ の最初の頂点に勝つので、つないだものは有向道である。

有向 Hamilton 道がただ 1 つのトーナメント

トーナメント $T$ の有向 Hamilton 道がただ 1 つであることと、$T$ が推移的であることは同値である。$T$ が推移的でなければ、有向 Hamilton 道は $3$ 本以上ある。

推移的なら、thm-tn-transitive の最後の主張により有向 Hamilton 道はただ 1 つである。推移的でないとする。強連結成分 $C_1,\dots,C_r$ を prop-tn-components のように並べる。どの成分も 1 頂点なら、成分の頂点をこの順に並べると $i< j$ でつねに前の頂点が後ろの頂点に勝つので、thm-tn-transitive の 4 ⇒ 1 により $T$ は推移的になり、仮定に反する。よってある $C_i$ は 1 頂点でなく、頂点が 2 個のトーナメントは強連結でないので $m:=|C_i|\ge3$ である。thm-tn-moon により $C_i$ は有向 Hamilton 閉路 $w_1\to w_2\to\dots\to w_m\to w_1$ をもつ。$s=1,\dots,m$ について、この閉路から辺 $w_{s-1}\to w_s$($w_0:=w_m$)を除くと、$w_s$ から始まる $C_i$ の有向 Hamilton 道が得られ、始点が異なるのでこれらは相異なる。ほかの成分 $C_j$ の有向 Hamilton 道を 1 つずつ固定し、上の段落のように $C_1,\dots,C_r$ の順につなぐと、$T$ の有向 Hamilton 道が $m\ge3$ 本得られ、$C_i$ の部分が異なるので相異なる。$\square$

得点列の判定

どの数の列が得点列になるかは、prop-tn-score-sum の不等式だけで判定できる。

Landau の定理

$n\ge1$ とし、$s_1\le s_2\le\dots\le s_n$ を非負整数とする。$(s_1,\dots,s_n)$ がある $n$ 頂点のトーナメントの得点列であることと、
$$ \sum_{i=1}^ks_i\ge\binom k2\quad(k=1,\dots,n),\qquad \sum_{i=1}^ns_i=\binom n2 $$
が成り立つことは同値である。

必要性は prop-tn-score-sum を、得点の小さい $k$ 頂点の集合に使えばよい。
十分性を示す。頂点を $1,\dots,n$ とし、次の二部グラフ $B$ を作る。一方の側 $X$ は 2 頂点の組(試合)$\{i,j\}$($i\ne j$)の全体で $\binom n2$ 個、他方の側 $Y$ は組 $(i,r)$($1\le i\le n$、$1\le r\le s_i$)の全体で、$\sum s_i=\binom n2$ 個である。試合 $\{i,j\}$ を、$(i,r)$ と $(j,r)$ の形のすべての元と辺で結ぶ。$(i,r)$ は「$i$ の $r$ 個目の勝ち」を表す。
$X$ の部分集合 $Q$ について、$Q$ の試合に現れる頂点の集合を $U$ とし $w:=|U|$ とする。$Q$ の試合はどれも $U$ の 2 頂点の組なので $|Q|\le\binom w2$ である。一方 $Q$ の $B$ での隣接頂点の全体は $\{(i,r)\mid i\in U\}$ で、その個数 $\sum_{i\in U}s_i$ は、$s$ の小さい方から $w$ 個の和以上なので、仮定により $\binom w2$ 以上である。よって $Q$ の隣接頂点は $|Q|$ 個以上あり、Hallの結婚定理 の記事の系「二部グラフの形」により、$X$ のすべての頂点を端点とするマッチング $M$ がある。$|X|=|Y|$ なので $M$ は $Y$ のすべての頂点も端点とする。
試合 $\{i,j\}$ が $M$ で $(i,r)$ と結ばれるなら $i\to j$、$(j,r)$ と結ばれるなら $j\to i$ と定める。これはトーナメントで、$i$ が勝つ試合は $M$ で $(i,1),\dots,(i,s_i)$ と結ばれる試合のちょうど $s_i$ 個なので、$i$ の得点は $s_i$ である。$\square$

この定理は Landau(1953)による(Moo68 Theorem 29、p. 79。同書の証明は Ryser による帰納法である)。たとえば $(1,1,1)$ は 3-閉路の得点列で、$(0,1,2,3)$ は推移的トーナメントの得点列である。$(0,0,3)$ は和が $\binom32$ に等しいが、$k=2$ で $0<1$ となり得点列でない。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
どの 2 頂点も辺で結ばれる(thm-tn-redei)頂点 $a,b,c$ と辺 $a\to b$、$c\to b$ だけの有向グラフ有向 Hamilton 道がある
強連結(thm-tn-moon)3 頂点の推移的トーナメント有向 Hamilton 閉路がある
$n\ge3$(thm-tn-moon)1 頂点のトーナメント強連結だが有向 Hamilton 閉路をもたない
得点が最大(thm-tn-king)3 頂点の推移的トーナメントの得点 $0$ の頂点ほかの頂点へ行けない
和の等号(thm-tn-landau)$(1,1,2)$不等式は満たすが和が $4\ne3$ で得点列でない
$k< n$ の不等式(thm-tn-landau)$(0,0,3)$和は $3$ だが $k=2$ で $0<1$、得点列でない

1 行目の有向グラフでは $b$ から出る辺がなく、$a$ と $c$ の間に辺がないので、$a$ と $c$ を両方含む有向道はない。3 行目では、長さ $1$ の有向閉路はループなのでトーナメントにはなく、thm-tn-moon の「とくに」の部分が成り立たない(頂点 2 個のトーナメントは強連結でない)。

補足

  • 順位付け:得点で順位を決める方法のほかに、3-閉路を考慮した順位付けの方法も研究されている(Moo68 §15、p. 55 から)。
  • 有向非巡回グラフとの関係:推移的トーナメントは、有向閉路をもたないトーナメントであり(thm-tn-transitive)、頂点の集合の全順序と 1 対 1 に対応する。一般の有向非巡回グラフは、位相的整列の並べ方を 1 つ選ぶと、推移的トーナメントの部分グラフになる。
  • 文献:トーナメントの基本は BM76 §10.2–10.3(pp. 173–179)にある。Moo68 はトーナメントだけを扱う本で、3-閉路・Hamilton 道・得点列の詳しい結果を集めている。

関連項目

参考文献

[1]
J. A. Bondy, U. S. R. Murty, Graph Theory with Applications, Macmillan / American Elsevier, 1976, §10.2–10.3 pp. 173–179(p. 174 トーナメントの定義、p. 175 図 10.4・Corollary 10.1(Rédei)・Corollary 10.2、p. 176 Exercise 10.2.3–10.2.4・Theorem 10.3(Moon)、p. 177 Camion)
[2]
J. W. Moon, Topics on Tournaments, Holt, Rinehart and Winston(1968)。再刊:Dover(2015、題 Topics on Tournaments in Graph Theory), 1968, §4 Theorem 3 p. 7、§5 の系(3-閉路の個数)p. 11、§9 p. 28(強連結成分による分解・Theorem 14(Hamilton 道の個数は奇数))、§15 p. 55、§21 Theorem 29(Landau)p. 79・演習 3 p. 81(頁は 1968 年版)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する