コンパクト群

同義語:compact group

概要

コンパクト群(compact group)とは、位相空間としてコンパクトな Hausdorff 位相群のことであり、有限群、円周群、直交群・ユニタリ群、$p$ 進整数環や Galois 群のような副有限群が例である。全体の測度を $1$ に正規化した Haar 測度は左右の平行移動と逆元で不変で、群の上の平均として使える。この平均から、有限次元表現が不変な内積をもち既約表現の直和に分かれること、既約表現の行列係数についての Schur の直交関係、行列係数が連続関数を一様近似し $L^2$ の正規直交基底をなすという Peter–Weyl の定理が従う。可換な場合は指標が点を分離し、Pontryagin 双対と Fourier 解析の土台になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相群, コンパクト空間, 局所コンパクト群のユニタリ表現, Hilbert空間

位相がコンパクトな位相群をコンパクト群という。有限群、円周群、直交群・ユニタリ群、$p$ 進整数環の加法群や Galois 群のような副有限群がその例である。コンパクト群では全体の測度が $1$ の Haar 測度が左右どちらの平行移動でも不変になり、群の上の「平均」がとれる。有限群の表現論で群の元についての和をとって行っていた議論は、この平均に置き換えるとほぼそのまま成り立つ。
この記事では、平均の操作から次の三つを証明する。有限次元表現には不変な内積があり既約表現の直和に分かれること(ユニタリ化)、既約表現の行列係数が互いに直交すること(Schur の直交関係)、そして有限次元既約表現の行列係数が連続関数を一様に近似し $L^2$ の正規直交基底をなすこと(Peter–Weyl の定理)である。可換な場合の帰結は Pontryagin双対、$L^2$ ノルムの展開は Plancherelの定理 で扱う。

定義と基本的な構成

コンパクト群

Hausdorff な位相群 $G$ が位相空間としてコンパクト空間であるとき、$G$ をコンパクト群(compact group)という。

コンパクト群の例
  1. 有限群に離散位相を入れたもの。
  2. 円周群 $\mathbb{T}=\{z\in\mathbb{C}\mid\lvert z\rvert=1\}$ とその直積 $\mathbb{T}^n$。
  3. 直交群 $O(n)$、ユニタリ群 $U(n)$、特殊ユニタリ群 $SU(n)$。いずれも $M_n(\mathbb{C})\cong\mathbb{C}^{n^2}$ の有界閉集合($U(n)$ では $A^*A=I$ から各列の長さが $1$)なので、Heine–Borel の定理によりコンパクトである。
  4. 副有限群。たとえば $p$ 進整数環の加法群 $\mathbb{Z}_p$ や、無限次 Galois 拡大の Galois 群(副有限群 の例「Galois 群と絶対 Galois 群」)。
基本的な構成
  1. コンパクト群の閉部分群はコンパクト群である。$H$ が閉正規部分群なら $G/H$ もコンパクト群である。
  2. コンパクト群の族 $(G_i)_{i\in I}$ の直積 $\prod_iG_i$ は、直積位相についてコンパクト群である。
  3. コンパクト群 $G$ から Hausdorff な位相群 $H$ への連続準同型 $f$ の像 $f(G)$ は、$H$ のコンパクトな閉部分群である。
  4. コンパクト群から離散群への連続準同型の像は有限群である。とくに $(\mathbb{Z},+)$ や $(\mathbb{R},+)$ へ(通常の位相で)の連続準同型は $0$ だけである。

要点:閉集合・商・直積(Tychonoff の定理)・連続像のコンパクト性と、離散群・$\mathbb{R}$ のコンパクト部分群が有限・自明であることによる。

詳しい証明を開く

1:コンパクト空間の閉集合はコンパクトである。$G/H$ は射影の像なのでコンパクトであり、位相群 の命題「剰余空間の位相」により Hausdorff な位相群である。

2:直積がコンパクトであることは Tychonoffの定理、Hausdorff であることは同記事の命題「Hausdorff 性の保存」による。積と逆元は成分ごとに連続なので連続である。

3:コンパクト集合の連続像はコンパクトで、Hausdorff 空間のコンパクト集合は閉集合である。

4:像は離散空間のコンパクト部分集合なので有限である。$\mathbb{Z}$ の有限部分群は $\{0\}$ だけである。$\mathbb{R}$ への場合は 3 により像は $\mathbb{R}$ のコンパクトな部分群で、$a\ne0$ を含めば $na$($n\in\mathbb{Z}$)を含んで有界でなくなるので、像は $\{0\}$ である。$\square$

Haar 測度による平均

局所コンパクト群のユニタリ表現 の定理「Haar測度の存在と一意性」により、コンパクト群 $G$ には左 Haar 測度が正の定数倍を除いてただ一つあり、空でない開集合の測度は正である(Sal20 Theorem 8.12、p. 264)。$G$ はコンパクトなので全体の測度は有限で、以下では $\mu(G)=1$ と正規化したものを $dx$ と書く。同記事の命題「モジュラー関数の基本性質」によりコンパクト群はユニモジュラーなので、$f\in L^1(G)$ と $g\in G$ について
$$ \int_Gf(gx)\,dx=\int_Gf(xg)\,dx=\int_Gf(x^{-1})\,dx=\int_Gf(x)\,dx $$
が成り立つ(最後の等式は同記事の補題「反転公式」で $\Delta\equiv1$ としたもの)。この正規化した Haar 測度による積分を $G$ 上の平均と考える。

Haar 測度の例

有限群では $\lvert G\rvert^{-1}$ 倍した数え上げ測度、$\mathbb{T}$ では $e^{i\theta}$ と書いたときの $d\theta/2\pi$($0\le\theta<2\pi$)である。$\mathbb{Z}_p$ では、$p^n\mathbb{Z}_p$ の剰余類 $p^n$ 個が平行移動で互いに移り合って全体を覆うので、不変性から各剰余類 $a+p^n\mathbb{Z}_p$ の測度は $p^{-n}$ である。

有限次元表現とユニタリ化

有限次元表現

有限次元複素ベクトル空間 $V$ について、連続な群準同型 $\pi\colon G\to GL(V)$ を $G$ の有限次元表現という($GL(V)$ には基底で行列と見たときの位相を入れる)。$\pi(G)$ で保たれる部分空間を不変部分空間といい、$\{0\}$ と $V$ 以外に不変部分空間がなく $V\neq\{0\}$ のとき $\pi$ を既約という。$\pi$ と $\pi'$ が同値とは、線形同型 $S\colon V'\to V$ で $\pi(x)S=S\pi'(x)$($x\in G$)となるものがあることをいう。$V$ に内積 $\langle\cdot,\cdot\rangle$(第 2 変数について線形)があり各 $\pi(x)$ がユニタリのとき $\pi$ をユニタリ表現という。$u,v\in V$ に対する関数 $x\mapsto\langle u,\pi(x)v\rangle$ を $\pi$ の行列係数といい、正規直交基底 $(e_i)$ について $\pi_{ij}(x):=\langle e_i,\pi(x)e_j\rangle$ は $\pi(x)$ の表現行列の $(i,j)$ 成分である。

ユニタリ化と完全可約性

$G$ をコンパクト群、$\pi\colon G\to GL(V)$ を有限次元表現とする。

  1. $V$ には、すべての $\pi(g)$ がユニタリになる内積がある。
  2. $V$ は互いに直交する既約な不変部分空間の直和に分かれる。
  3. $GL_n(\mathbb{C})$ のコンパクト部分群 $K$ に対し、$AKA^{-1}\subset U(n)$ となる $A\in GL_n(\mathbb{C})$ がある。$GL_n(\mathbb{R})$ のコンパクト部分群は、$GL_n(\mathbb{R})$ の元による共役で $O(n)$ に入る。

1:$V$ の内積 $\langle\cdot,\cdot\rangle_0$ を一つとり、
$$ \langle u,v\rangle:=\int_G\langle\pi(x)u,\pi(x)v\rangle_0\,dx $$
とおく。被積分関数は $x$ の連続関数なので積分は定まり、$\langle\cdot,\cdot\rangle$ は Hermite 形式である。$u\neq0$ なら $x\mapsto\|\pi(x)u\|_0^2$ はコンパクト集合上の正の連続関数で、正の最小値 $m$ をもつから $\langle u,u\rangle\geq m>0$ である。右不変性から
$$ \langle\pi(g)u,\pi(g)v\rangle=\int_G\langle\pi(xg)u,\pi(xg)v\rangle_0\,dx=\langle u,v\rangle $$
なので、各 $\pi(g)$ はこの内積についてユニタリである。
2:$\dim V$ についての帰納法による。1 の内積をとる。$V$ が既約でなければ不変部分空間 $\{0\}\neq W\neq V$ がある。$w^\perp\in W^\perp$、$w\in W$ について $\langle\pi(g)w^\perp,w\rangle=\langle w^\perp,\pi(g)^{-1}w\rangle=0$($\pi(g)^{-1}w=\pi(g^{-1})w\in W$)なので、$W^\perp$ も不変であり $V=W\oplus W^\perp$ となる。$W$ と $W^\perp$ に帰納法の仮定を当てる。
3:$K\hookrightarrow GL_n(\mathbb{C})$ を $\mathbb{C}^n$ の表現とみて 1 を当てると、不変な内積は正定値 Hermite 行列 $B$ によって $\langle u,v\rangle=u^*Bv$ と書け、不変性は $k^*Bk=B$($k\in K$)である。$A:=B^{1/2}$(正定値の平方根)とおくと $(AkA^{-1})^*(AkA^{-1})=A^{-1}k^*Bk\,A^{-1}=A^{-1}BA^{-1}=I$ なので、$AkA^{-1}\in U(n)$ である。実の場合は $\langle u,v\rangle_0$ を実内積にとって同じ平均をとれば $B$ は実対称正定値になり、$A=B^{1/2}$ は実行列で $AkA^{-1}\in O(n)$ となる。$\square$

不変な内積の存在は、有限群で $\sum_{g\in G}\langle\pi(g)u,\pi(g)v\rangle_0$ をとる議論の平均版である(Kna16a Proposition 6.24・Corollary 6.25、pp. 246–247)。コンパクト性を外すと崩れることを下の反例の表で見る。

Schur の直交関係

Schur の補題(有限次元)

$\pi\colon G\to GL(V)$、$\pi'\colon G\to GL(V')$ を既約な有限次元表現とし、線形写像 $T\colon V'\to V$ が $\pi(x)T=T\pi'(x)$($x\in G$)を満たすとする。

  1. $T=0$ であるか、$T$ は同型(したがって $\pi$ と $\pi'$ は同値)である。
  2. $\pi=\pi'$ なら、$T$ はスカラー倍 $\lambda I$ である。

要点:核と像が不変部分空間であることと、固有値 $\lambda$ をとった $T-\lambda I$ に 1 を当てることによる。

詳しい証明を開く

1:$\ker T$ は $\pi'$ の、$T(V')$ は $\pi$ の不変部分空間である。既約性から、$T\neq0$ なら $\ker T=\{0\}$、$T(V')=V$ である。2:$V$ は $\{0\}$ でない複素ベクトル空間なので $T$ は固有値 $\lambda$ をもつ。$T-\lambda I$ も同じ条件を満たし単射でないので、1 により $T-\lambda I=0$ である。$\square$

Schur の直交関係

$G$ をコンパクト群、$\pi,\pi'$ を既約な有限次元ユニタリ表現とし、それぞれの正規直交基底での行列成分を $\pi_{ij}$、$\pi'_{kl}$、$d_\pi:=\dim V$ とする。

  1. $\pi$ と $\pi'$ が同値でなければ、すべての添字で $\displaystyle\int_G\pi_{ij}(x)\overline{\pi'_{kl}(x)}\,dx=0$。
  2. $\displaystyle\int_G\pi_{ij}(x)\overline{\pi_{kl}(x)}\,dx=\frac{\delta_{ik}\delta_{jl}}{d_\pi}$。
    したがって $\{\sqrt{d_\pi}\,\pi_{ij}\}_{i,j}$ は $L^2(G)$ の正規直交系であり、同値でない既約表現から来る系どうしは直交する。

要点:線形写像 $T$ を $\pi$ と $\pi'$ で挟んで平均すると絡作用素になり、Schur の補題でその形が決まる。
線形写像 $T\colon V'\to V$ に対し $\widetilde T:=\int_G\pi(x)\,T\,\pi'(x)^{-1}\,dx$(行列の成分ごとの積分)とおく。左不変性から
$$ \pi(g)\widetilde T\pi'(g)^{-1}=\int_G\pi(gx)\,T\,\pi'(gx)^{-1}\,dx=\widetilde T $$
なので、$\widetilde T$ は $\pi(g)\widetilde T=\widetilde T\pi'(g)$ を満たす。$T$ として、$e'_l$ を $e_j$ に、ほかの基底ベクトルを $0$ に移す写像 $E_{jl}$ をとる。$\pi'(x)^{-1}=\pi'(x)^*$ なので $(\pi'(x)^{-1})_{lk}=\overline{\pi'_{kl}(x)}$ であり、
$$ (\widetilde{E_{jl}})_{ik}=\int_G\pi_{ij}(x)\,\overline{\pi'_{kl}(x)}\,dx $$
となる。1:lem-cg-schur の 1 により $\widetilde{E_{jl}}=0$ である。2:$\pi'=\pi$ のとき lem-cg-schur の 2 により $\widetilde{E_{jl}}=\lambda I$ であり、トレースをとると $\operatorname{tr}\widetilde T=\int_G\operatorname{tr}(\pi(x)T\pi(x)^{-1})\,dx=\operatorname{tr}T$ から $\lambda d_\pi=\operatorname{tr}E_{jl}=\delta_{jl}$ である。よって $(\widetilde{E_{jl}})_{ik}=\delta_{ik}\delta_{jl}/d_\pi$ である。$\square$

$\pi$ の指標を $\chi_\pi(x):=\operatorname{tr}\pi(x)=\sum_i\pi_{ii}(x)$ と定める。thm-cg-schur-orthogonality で $i=j$、$k=l$ として和をとると、既約表現の指標は $L^2(G)$ で長さ $1$ であり、同値でない既約表現の指標は直交する(Kna16a Corollary 6.29・6.30、pp. 249–251)。thm-cg-unitary-trick の分解 $\pi\cong\pi_1\oplus\cdots\oplus\pi_r$ に対して $\chi_\pi=\sum_s\chi_{\pi_s}$ なので、既約表現 $\tau$ と同値な $\pi_s$ の個数は $\int_G\chi_\pi\overline{\chi_\tau}\,dx$ に等しく、分解の選び方によらない。

Peter–Weyl の定理

以下、有限次元既約ユニタリ表現の同値類ごとに代表 $\pi$ を一つ選び、その全体を $\widehat G$ と書く。各 $\pi$ には正規直交基底を固定する。

Peter–Weylの定理

$G$ をコンパクト群とする。

  1. $g\in G$、$g\neq e$ なら、$\pi(g)\neq I$ となる有限次元既約ユニタリ表現 $\pi$ がある。
  2. 有限次元表現の行列係数の線形結合全体 $\mathcal A$ は、$C(G)$ で一様ノルムについて稠密であり、$L^2(G)$ でも稠密である。
  3. $\{\sqrt{d_\pi}\,\pi_{ij}\mid\pi\in\widehat G,\ 1\le i,j\le d_\pi\}$ は $L^2(G)$ の正規直交基底である。

要点:1 は、$e$ の近くに集中した関数 $\varphi$ による畳み込み作用素がコンパクト自己共役で右正則表現と可換なことから、その固有空間に有限次元の表現を見つける。2 は 1 と Stone–Weierstrass の定理、3 は 2 と thm-cg-schur-orthogonality による。

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段 1(畳み込み作用素).$L^2(G)$ 上の右正則表現 $(\rho(g)f)(x):=f(xg)$ は、右不変性によりユニタリであり、強連続である(Kna16a Proposition 6.19、p. 237)。実数値の $\varphi\in C(G)$ で $\varphi(x^{-1})=\varphi(x)$ を満たすものに対し $(Tf)(x):=\int_G\varphi(xy^{-1})f(y)\,dy$ とおく。核 $k(x,y)=\varphi(xy^{-1})$ は $G\times G$ 上連続で $k(y,x)=\overline{k(x,y)}$ を満たすので、$T$ は $L^2(G)$ 上のコンパクトな自己共役作用素である(Kna16a Theorem 2.4、p. 42)。また $y=zg^{-1}$ と置き換えて右不変性を使うと $(T\rho(g)f)(x)=\int\varphi(xgz^{-1})f(z)\,dz=(Tf)(xg)$ なので、$T\rho(g)=\rho(g)T$ である。よって $T$ の $0$ でない固有値 $\lambda$ の固有空間 $E_\lambda$ は有限次元で(スペクトル定理 の定理「コンパクト自己共役作用素のスペクトル定理」)、$\rho$ で不変である。

段 2(1 の証明).$g\neq e$ とする。積の連続性と $G\setminus\{g\}$ が $e$ の開近傍であることから、$e$ の開近傍 $V=V^{-1}$ で $g\notin VV$ となるものがある。Urysohnの補題(コンパクト Hausdorff 空間は正規)で $0\le\varphi_0\le1$、$\varphi_0(e)=1$ で $V$ の外では $0$ となる $\varphi_0\in C(G)$ をとり、$\varphi(x):=\varphi_0(x)+\varphi_0(x^{-1})$ とおく。$\varphi$ は段 1 の条件を満たし、$V$ の外では $0$ で($V=V^{-1}$ による)、$\varphi(e)=2$ である。$\psi:=T\varphi$ は連続関数で、$\psi(e)=\int\varphi(y^{-1})\varphi(y)\,dy=\int\varphi^2\,dy>0$($e$ の近くで $\varphi>0$ で、空でない開集合の測度は正)である。一方 $\psi(g)=\int\varphi(gy^{-1})\varphi(y)\,dy$ の被積分関数は、$y\in V$ かつ $gy^{-1}\in V$ でなければ $0$ で、そのとき $g\in VV$ となるので、$\psi(g)=0$ である。

仮に、すべての $\lambda\neq0$ で $\rho(g)$ が $E_\lambda$ 上恒等写像だったとする。スペクトル定理により $\psi=T\varphi$ は $E_\lambda$($\lambda\neq0$)の和の閉包に入るので、$\rho(g)\psi=\psi$ が $L^2$ で成り立つ。両辺は連続関数なので、ほとんど至るところ等しければ(差が $0$ でない開集合の測度は正だから)至るところ等しく、$\psi(g)=\psi(e)$ となって矛盾する。よって $\rho(g)\neq I$ となる $E_\lambda$ がある。$\rho$ を有限次元の $E_\lambda$ に制限したものは連続なユニタリ表現で、thm-cg-unitary-trick の 2 により直交する既約な不変部分空間の和に分かれ、そのどれかの上で $\rho(g)\neq I$ である。

段 3(2 の証明).$\mathcal A$ は定数を含む(自明な表現)。表現 $\pi,\sigma$ のテンソル積表現 $\pi\otimes\sigma$ の行列係数は $\langle u,\pi(x)v\rangle\langle u',\sigma(x)v'\rangle$ なので $\mathcal A$ は積で閉じ、ユニタリ表現 $\pi$ の行列を複素共役した表現 $\overline\pi$ を考えると複素共役で閉じる(thm-cg-unitary-trick の 1 によりどの表現もユニタリとしてよい)。$x\neq y$ なら 1 により $\pi(y^{-1}x)\neq I$、すなわち $\pi(x)\neq\pi(y)$ となる $\pi$ があり、ある行列成分が $x$ と $y$ を分離する。$G$ はコンパクト Hausdorff 空間なので、Stone–Weierstrass の定理(Kna16b Theorem 10.50 (b)、p. 529)により $\mathcal A$ は $C(G)$ で一様稠密である。$\mu(G)=1$ から $\| f\|_2\le\| f\|_\infty$ であり、$C(G)$ は $L^2(G)$ で稠密なので(Sal20 Theorem 4.15、p. 121)、$\mathcal A$ は $L^2(G)$ でも稠密である。

段 4(3 の証明).thm-cg-schur-orthogonality により、この族は正規直交系である。有限次元表現は thm-cg-unitary-trick により既約ユニタリ表現の直和と同値であり、同値な表現 $\sigma(x)=S\pi(x)S^{-1}$ の行列成分は $\pi$ の行列成分の線形結合なので、族の線形包は $\mathcal A$ に等しい。2 によりそれは稠密なので、Hilbert空間 の定理「完全正規直交系の特徴づけとParsevalの等式」により族は正規直交基底である。$\square$

局所コンパクト群のユニタリ表現 の定理「Peter--Weylの定理」は、これに加えて、無限次元を含む任意の強連続ユニタリ表現が有限次元既約表現の直交和に分かれることを述べている。その部分はこの記事では証明しない(Kna16a Theorem 6.34・Corollary 6.35、pp. 259–260)。$L^2(G)$ の展開係数でノルムを書く式(Plancherel の公式)は Plancherelの定理 で扱う。

行列群への埋め込み

コンパクト群 $G$ は、ユニタリ群の直積 $\prod_{\pi\in\widehat G}U(d_\pi)$ のある閉部分群と、位相群として同型である。

要点:既約表現を全部並べた写像は Peter–Weyl の定理の 1 により単射で、コンパクト空間からの連続単射なので像への同型になる。

詳しい証明を開く

$\Phi(x):=(\pi(x))_{\pi\in\widehat G}$ は連続な準同型で、thm-cg-peter-weyl の 1 により単射である。直積は prop-cg-constructions の 2 によりコンパクト群であり、同じ命題の 3 により像は閉部分群である。コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な単射は像への同相写像なので、$\Phi$ は像との同型を与える。$\square$

可換なコンパクト群の指標は点を分離する

$G$ を可換なコンパクト群とする。有限次元既約表現はすべて $1$ 次元で、連続準同型 $\chi\colon G\to\mathbb{T}$ で与えられる。$g\neq e$ なら $\chi(g)\neq1$ となる連続準同型 $\chi\colon G\to\mathbb{T}$ がある。

要点:可換群では各 $\pi(h)$ が Schur の補題でスカラーになり、既約表現は $1$ 次元になる。

詳しい証明を開く

$\pi$ を既約ユニタリ表現とする。各 $\pi(h)$ はすべての $\pi(x)$ と可換なので、lem-cg-schur の 2 によりスカラーであり、すべての部分空間が不変になる。既約性から $d_\pi=1$ で、ユニタリな $1\times1$ 行列の値は $\mathbb{T}$ に入る。後半は thm-cg-peter-weyl の 1 から従う。$\square$

有限群と円周群

有限群 $G$ では $L^2(G)$ の次元は $\lvert G\rvert$ なので、thm-cg-peter-weyl の 3 の基底の個数を数えて $\sum_{\pi\in\widehat G}d_\pi^2=\lvert G\rvert$ を得る。可換な有限群ではすべて $d_\pi=1$ なので、指標の個数は $\lvert G\rvert$ である(離散Fourier変換 の定理「双対群の位数と点の分離」の 1 と一致する)。円周群 $\mathbb{T}$ の既約表現は指標 $z\mapsto z^m$($m\in\mathbb{Z}$)で尽くされ(Pontryagin双対 の定理「整数・円周・実数の双対群」)、3 は $\{e^{im\theta}\}_{m\in\mathbb{Z}}$ が $L^2(\mathbb{T},d\theta/2\pi)$ の正規直交基底であること、すなわち Fourier級数 の完全性になる。

条件を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
群のコンパクト性(thm-cg-unitary-trick)$(\mathbb{R},+)$ の $\mathbb{C}^2$ 上の表現 $t\mapsto\begin{pmatrix}1&t\\0&1\end{pmatrix}$不変な内積の存在と、既約表現の直和への分解
群のコンパクト性(thm-cg-peter-weyl の 3)$(\mathbb{R},+)$ と Lebesgue 測度有限次元既約ユニタリ表現の行列係数が $L^2$ に属すること
表現の既約性(thm-cg-schur-orthogonality の 2)$\mathbb{T}$ の $\mathbb{C}^2$ 上の自明な表現 $\pi(z)=I$$\int\lvert\pi_{11}\rvert^2dx=1/d_\pi$(左辺は $1$、右辺は $1/2$)
複素数上の表現(lem-cg-schur の 2)$SO(2)$ の $\mathbb{R}^2$ 上の回転絡作用素がスカラーであることと、直交関係 $\int\pi_{11}\pi_{22}\,dx=0$
反例の確かめ

1 行目:$\pi(t)$ に共通な固有ベクトルは $e_1$ の定数倍だけなので、不変な部分空間は $\{0\}$、$\mathbb{C}e_1$、$\mathbb{C}^2$ だけであり、$\mathbb{C}e_1$ の補空間で不変なものはない。不変な内積があれば thm-cg-unitary-trick の 2 の議論で直交補空間が不変になるので、不変な内積もない(ユニタリ行列の成分は有界だが、$\pi(t)$ の成分 $t$ は有界でないことからも分かる)。$\mathbb{R}$ は局所コンパクトだがコンパクトでない。
2 行目:$\mathbb{R}$ は可換なので、cor-cg-abelian-separation の前半の議論(lem-cg-schur の 2 だけを使う)により有限次元既約ユニタリ表現は $1$ 次元で、行列係数は $\lvert\chi\rvert=1$ の定数倍である。$\int_{\mathbb{R}}\lvert\chi\rvert^2dx=\infty$ なので、どれも $L^2(\mathbb{R})$ に属さない。$L^2(\mathbb{R})$ の展開は、和ではなく積分の形の Plancherelの定理 になる。
3 行目:$\pi=\chi_0\oplus\chi_0$ は不変部分空間 $\mathbb{C}e_1$ をもち既約でない。$\pi_{11}=1$ なので左辺は $1$ である。
4 行目:$\theta$ だけの回転 $r_\theta$ は、$\theta\notin\pi\mathbb{Z}$ なら実の固有ベクトルをもたないので、$\mathbb{R}^2$ の不変な直線はなく、実の表現として既約である。$r_{\pi/2}$ はすべての $r_\theta$ と可換だが実数倍ではない。また $\pi_{11}=\cos\theta$、$\pi_{22}=\cos\theta$ で、$\int_0^{2\pi}\cos^2\theta\,\frac{d\theta}{2\pi}=\frac12\neq0$ である。複素化すると $\mathbb{C}^2$ は $e^{\pm i\theta}$ の二つの指標に分かれ、thm-cg-schur-orthogonality はその分解に対して成り立つ。

関連項目

参考文献

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