体の拡大の形式的滑らかさ(formal smoothness of field extensions)とは、体の拡大 $L/K$ について、$L$ が $K$ 上形式的に滑らかであることと $L/K$ が分離的であることが同値になるという定理である。分離性は代数拡大に限らない意味で、標数 $0$ ではつねに成り立ち、標数 $p$ では $L$ と $K^{1/p}$ が $K$ 上線型無関連であることを指す。標数 $0$ では超越基底の部分と分離代数的な部分に分けて持上げを作り、標数 $p$ では絶対 $p$ 基底を使って持上げを一度に構成する。系として、形式的エタールであることは分離的かつ $\Omega_{L/K}=0$ であることと同値になり、完備局所環が指定した部分体を含む係数体をもつための十分条件が得られる。
前提知識: 形式的滑らかさ, 分離生成拡大, p基底, Kähler微分の基本完全列
体の拡大の形式的滑らかさ(formal smoothness of field extensions)とは、体の拡大 $L/K$ について、$L$ が $K$ 上形式的に滑らか(形式的滑らかさ)であることと、$L/K$ が分離的であることが同値になるという定理である。ここで分離性は代数拡大に限らない一般の意味で、標数 $0$ ではすべての拡大が分離的であり、標数 $p>0$ では $L$ と $K^{1/p}$ が $K$ 上線型無関連であることを指す(分離生成拡大)。
形式的滑らかさは、冪零な厚みをもつ環への準同型を「厚みを取り去った環への準同型」から持ち上げられるか、という条件である。体の拡大は有限型とは限らないので、Jacobi 行列で滑らかさを判定する方法は使えない。この定理は、有限性を仮定しない形式的滑らかさが、体の拡大では古典的な分離性とちょうど一致することを述べる。剰余体が分離的な完備局所環に、指定した部分体を含む係数体がとれることも、この定理から従う(cor-ffs-coefficient-field)。
環は単位元をもつ可換環とする。体の拡大 $L/K$ が形式的に滑らかであるとは、任意の $K$ 代数 $C$、その冪零イデアル $N$、$K$ 代数の準同型 $u\colon L\to C/N$ に対し、$K$ 代数の準同型 $\tilde u\colon L\to C$ で射影 $\pi\colon C\to C/N$ との合成が $u$ になるもの($u$ の持上げ)が存在することをいう。持上げがつねにちょうど $1$ つあるとき形式的エタール、高々 $1$ つのとき形式的不分岐という(形式的滑らかさ の定義「形式的滑らか・形式的不分岐・形式的エタールな環準同型」。$L,K$ には離散位相を入れて考えている)。持上げの存在も一意性も、$N^2=0$ の場合に確かめれば十分である(同じ記事の命題「平方零イデアルで十分なこと」)。
分離性は 分離生成拡大 の定義「分離的な拡大」に従う。すなわち $L/K$ が分離的であるとは、$K$ の任意の拡大体 $K'$ について $L\otimes_KK'$ が被約であることをいう。代数拡大ではこれは通常の分離性と一致し(同じ記事の補題「代数拡大での一致」)、標数 $p$ では $L$ と $K^{1/p}$ が $K$ 上線型無関連であることと同値である(同じ記事の定理「Mac Lane の判定法」)。超越基底 $T$ で $L/K(T)$ が分離代数拡大になるもの(分離超越基底)をもつ拡大を分離生成といい、分離生成なら分離的である。標数 $0$ ではすべての拡大が分離生成である。
体の拡大 $L/K$ について、$L$ が $K$ 上形式的に滑らかであることと、$L/K$ が分離的であることは同値である。とくに標数 $0$ の体の拡大はすべて形式的に滑らかであり、標数 $p>0$ では、$L$ が $K$ 上形式的に滑らかであることと、$L$ と $K^{1/p}$ が $K$ 上線型無関連であることは同値である。$L/K$ の有限生成性や代数性は仮定しない。
標数 $0$ の場合は、純超越拡大と分離代数拡大の 2 つの命題(prop-ffs-transcendental、prop-ffs-separable-algebraic)を合成して証明する。標数 $p$ の場合は、「形式的に滑らかなら分離的」を prf-ffs-necessity で、「分離的なら形式的に滑らか」を prf-ffs-sufficiency で証明する。
形式的エタール性は、形式的滑らかさに Kähler微分 の消滅を加えたものである。
体の拡大 $L/K$ について、$L$ が $K$ 上形式的エタールであることと、$L/K$ が分離的かつ $\Omega_{L/K}=0$ であることは同値である。とくに分離代数拡大は形式的エタールであり、標数 $0$ では、$L$ が $K$ 上形式的エタールであることと $L/K$ が代数拡大であることは同値である。
形式的不分岐であることは $\Omega_{L/K}=0$ と同値である(形式的滑らかさ の命題「形式的不分岐性とKähler微分」)。形式的エタールは形式的に滑らかかつ形式的不分岐なので、前半は thm-ffs-main から従う。分離代数拡大では $\Omega_{L/K}=0$ である(Kähler微分 の命題「分離拡大の微分加群」の 1)。標数 $0$ では、超越基底を $\Lambda$ とすると $\dim_L\Omega_{L/K}=|\Lambda|$ なので(Kähler微分 の例「超越拡大と複素数体」)、$\Omega_{L/K}=0$ は $\Lambda=\emptyset$、すなわち $L/K$ が代数的であることと同値である。$\square$
標数 $p$ では「形式的エタールなら代数的」は成り立たない(ex-ffs-perfect-closure)。
主定理の証明は、純超越的な部分と分離代数的な部分に分けて持上げを作る。どちらでも次の事実を使う:$N$ が冪零イデアルで $c\in C$ の $C/N$ での像が単元なら、$c$ は $C$ の単元である。実際、$cc'=1+n$($n\in N$、$n^m=0$)となる $c'$ をとると、$1+n$ の逆元は $\sum_{i< m}(-n)^i$ である。
$K$ を体、$T$ を任意の集合とし、$K(T)$ を $T$ の元を変数とする有理関数体とする。$K(T)$ は $K$ 上形式的に滑らかである。
$K$ 代数 $C$、冪零イデアル $N$、$K$ 代数の準同型 $u\colon K(T)\to C/N$ をとる。各 $t\in T$ について $u(t)$ の $C$ への持上げ $c_t$ を選ぶと($T$ が無限なら選択公理を使う)、多項式環の普遍性から $K$ 代数の準同型 $v\colon K[T]\to C$、$t\mapsto c_t$ が得られ、$\pi\circ v$ は $u|_{K[T]}$ に一致する。$0$ でない $f\in K[T]$ は $K(T)$ の単元なので $\pi(v(f))=u(f)$ は単元であり、上の事実から $v(f)$ は $C$ の単元である。局所化の普遍性により $v$ は $K$ 代数の準同型 $\tilde u\colon K(T)\to C$ に延び、$\pi\circ\tilde u$ と $u$ は $K[T]$ の上で一致するので、局所化の普遍性の一意性から $\pi\circ\tilde u=u$ である。$\square$
体の分離代数拡大 $L/F$ について、$L$ は $F$ 上形式的エタールである。
$\Omega_{L/F}=0$(Kähler微分 の命題「分離拡大の微分加群」)なので、$L$ は $F$ 上形式的不分岐であり、持上げは存在すれば一意である。持上げの存在の証明は 形式的エタール の命題「分離代数拡大の形式的エタール性」にある。要点は次の 2 つである。$N^2=0$ の場合、$F$ 上有限次の中間体 $E=F(a)$ では $a$ の最小多項式 $g$ が分離的なので、$u(a)$ の持上げ $c$ を $c-g'(c)^{-1}g(c)$ に 1 回補正すれば $g$ の根になる($g(c)\in N$ と $N^2=0$ による)。$L/F$ が無限次の場合は、有限次中間体ごとの持上げを一意性で貼り合わせる。$\square$
2 つの命題と、形式的滑らかさが合成で保たれること(形式的滑らかさ の命題「底変換・合成・局所化」の 2)を合わせると、分離超越基底 $T$ をもつ拡大 $L/K$ は、$K\to K(T)\to L$ と分けて形式的に滑らかである。標数 $0$ の拡大はすべて分離生成なので、標数 $0$ の場合の主定理はこれで証明された(標数 $0$ ではすべての拡大が分離的なので、逆向きは主張することがない)。標数 $p$ では分離的でも分離生成とは限らないので(分離生成拡大 の例「反例:分離的だが分離生成でない拡大」)、別の構成が要る。
以下、$K$ の標数を $p>0$ とし、標数 $p$ の体 $F$ について $\Omega_F:=\Omega_{F/\mathbb F_p}$ と書く。$F^p=\{x^p\mid x\in F\}$ は部分体であり、$F/F^p$ の $p$ 基底を $F$ の絶対 $p$ 基底という。$p$ 基底 $S$ とは、指数が $0$ 以上 $p$ 未満で有限個を除き $0$ の単項式 $s^\nu=\prod_{s\in S}s^{\nu_s}$(制限単項式)が $F$ の $F^p$ 上の基底になる集合のことである(p基底 の定義「$p$ 独立性と $p$ 基底」)。
$L$ が $K$ 上形式的に滑らかであるとする。$\mathbb F_p\to K\to L$ に Kähler微分の基本完全列 の定理「形式的に滑らかな拡大での分裂」を適用すると、$\Omega_K\otimes_KL\to\Omega_L$ は単射である。分離生成拡大 の命題「微分による分離性の判定」(2 ⇒ 1)により、$L/K$ は分離的である。$\square$
この向きでは、$L$ の絶対 $p$ 基底を使って持上げを一度に構成する。鍵は、平方零イデアルを法として持ち上げた元の $p$ 乗が持上げの選び方によらないことである。
$L/K$ を分離的とする。$K$ の絶対 $p$ 基底 $S$ を 1 つとる(p基底 の定理「$p$ 基底の存在」)。$L/K$ が分離的なので、$S$ は $L$ の中で $L^p$ 上 $p$ 独立である(分離生成拡大 の命題「微分による分離性の判定」の 1 ⇒ 3)。同じ存在定理により $S$ を $L$ の絶対 $p$ 基底 $B\supset S$ に延長できる。
$K$ 代数 $C$、$N^2=0$ をみたすイデアル $N$、$K$ 代数の準同型 $u\colon L\to C/N$ をとり、$\pi\colon C\to C/N$ を射影、$\iota\colon K\to C$ を構造射とする。$C=0$ なら主張は自明なので $C\ne0$ とする。$C$ は $K$ 代数なので標数 $p$ の環である。
段階 1:$L^p$ の持上げ。 $x\in L$ に対し、$u(x)$ の持上げ $\tilde x\in C$ を任意にとり、
$$\sigma(x^p):=\tilde x^{\,p}$$
とおく。$x\mapsto x^p$ は単射なので $x$ は $x^p$ から決まる。別の持上げ $\tilde x+n$($n\in N$)をとっても、標数 $p$ の二項定理と $n^p=0$($p\ge2$、$N^2=0$)により $(\tilde x+n)^p=\tilde x^{\,p}+n^p=\tilde x^{\,p}$ なので、$\sigma$ は well-defined である。$x+y$、$xy$ の持上げとして $\tilde x+\tilde y$、$\tilde x\tilde y$ をとれば、$\sigma$ が環準同型 $L^p\to C$ であり、$\pi(\sigma(x^p))=u(x)^p=u(x^p)$ を満たすことが分かる。
段階 2:$L$ 全体の持上げ。 各 $b\in B$ について $u(b)$ の持上げ $c_b\in C$ を選ぶ。ただし $b\in S$ については $c_b:=\iota(b)$ とする($u$ は $K$ 代数の準同型なので $\pi(\iota(b))=u(b)$)。段階 1 により $c_b^{\,p}=\sigma(b^p)$ である。変数 $X_b$($b\in B$)の多項式環 $L^p[X]$ から $C$ への環準同型 $\Phi$ を、係数には $\sigma$、$X_b$ には $c_b$ を対応させて定める。評価 $\mathrm{ev}\colon L^p[X]\to L$、$X_b\mapsto b$ の核は $X_b^p-b^p$($b\in B$)で生成される。実際、多項式は関係 $X_b^p=b^p$ を使って制限単項式の $L^p$ 係数の一次結合に書き直せ、その評価が $0$ なら $B$ の $p$ 独立性からすべての係数が $0$ である。$\Phi(X_b^p-b^p)=c_b^{\,p}-\sigma(b^p)=0$ なので、$\Phi$ は環準同型 $\tilde u\colon L\to C$ を誘導する。$L$ の元 $\sum_\nu\lambda_\nu b^\nu$($\lambda_\nu\in L^p$)に対し $\tilde u\bigl(\sum_\nu\lambda_\nu b^\nu\bigr)=\sum_\nu\sigma(\lambda_\nu)c^\nu$ である。
段階 3:持上げであること。 $\pi\circ\tilde u$ と $u$ はともに環準同型で、$L^p$ の上では段階 1 により、$B$ の上では $c_b$ の選び方により一致する。$L$ は $L^p$ と $B$ で生成されるので $\pi\circ\tilde u=u$ である。
段階 4:$K$ 代数の準同型であること。 $a\in K$ について、$\iota(a)$ は $u(a)$ の持上げなので $\sigma(a^p)=\iota(a)^p=\iota(a^p)$ である。すなわち $\sigma$ は $K^p$ の上で $\iota$ に一致する。$S$ は $K$ の絶対 $p$ 基底なので、$a\in K$ は $a=\sum_\nu\mu_\nu s^\nu$($\mu_\nu\in K^p$、$s^\nu$ は $S$ の制限単項式)と書ける。$K^p\subset L^p$、$S\subset B$ なので、これは $a$ の $L^p$ 上の制限単項式による表示でもあり、
$$\tilde u(a)=\sum_\nu\sigma(\mu_\nu)c^\nu=\sum_\nu\iota(\mu_\nu)\iota(s)^\nu=\iota(a)$$
となる。よって $\tilde u$ は $K$ 代数の準同型であり、$u$ の持上げである。平方零の場合に持上げが存在したので、冪零イデアル一般でも存在する。$\square$
段階 4 で $S$ の持上げを $\iota(S)$ に固定したことが、$K$ 全体を保つための要点である。$L$ だけを見て勝手に $B$ の持上げを選ぶと、$\mathbb F_p$ 代数としての持上げしか得られない。$S$ を $B$ の一部にできることが分離性の言い換えであり、これが証明で分離性を使う唯一の箇所である。
以上で thm-ffs-main が証明された。この節の議論は Mat89 定理 26.7 の証明($p$ 乗の持上げが選び方によらないこと)を、$p$ 基底を延長する形に組み替えたものである。主定理は Mat89 定理 26.9(pp. 204–205)、EGA4 $0_{\mathrm{IV}}$(19.6.1)にある。
$k$ を標数 $p$ の体、$K=k(t)$ を有理関数体、$L=K(s)$、$s^p=t$ とする。$L/K$ は分離的でない代数拡大なので、thm-ffs-main により形式的に滑らかでない。直接にも確かめられる。$L$ が $K$ 上形式的に滑らかなら、Kähler微分の基本完全列 の定理「第1基本完全列」の条件 2 と定理「形式的に滑らかな拡大での分裂」により、$K$ の導分 $\partial=d/dt\colon K\to L$ は $L$ の導分 $D$ に延びる。ところが
$$1=\partial(t)=D(s^p)=ps^{p-1}D(s)=0$$
となって矛盾する。
$k$ を標数 $p$ の完全体、$x$ を $k$ 上の不定元とし、$L=\bigcup_{n\ge0}k(x^{1/p^n})$($k(x)$ の完全閉包)とする。完全体上の拡大は分離的なので(分離生成拡大 の系「完全体上の拡大」)、$L$ は $k$ 上形式的に滑らかである。さらに $L$ の各元は $L$ の中で $p$ 乗根をもつので、$y=z^p$ と書けば $dy=pz^{p-1}dz=0$ となり、$\Omega_{L/k}=0$ である。cor-ffs-etale により $L$ は $k$ 上形式的エタールだが、$x$ は $k$ 上超越的なので $L/k$ は代数拡大でない。標数 $0$ では形式的エタールな拡大は代数拡大に限るので、これは標数 $p$ に固有の現象である。
$K=\mathbb F_p(t)$ とし、$L=\bigcup_{n\ge0}K(t^{1/p^n})$ を $K$ の完全閉包とする。$L$ の各元は $L$ の中で $p$ 乗根をもつので、ex-ffs-perfect-closure と同じく $\Omega_{L/K}=0$、すなわち $L$ は $K$ 上形式的不分岐である。一方、$L$ の部分体 $K(t^{1/p})$ は $K$ 上の分離的でない代数拡大であり、分離的な拡大の部分拡大は分離的なので(分離生成拡大 の補題「有限生成な部分拡大への帰着」)、$L/K$ は分離的でない。thm-ffs-main により $L$ は $K$ 上形式的に滑らかでない。
主定理と系の仮定を 1 つずつ外すと、次のようになる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 分離性(主定理の「分離的なら形式的に滑らか」) | $K=k(t)$、$L=K(t^{1/p})$(ex-ffs-inseparable) | $L$ が $K$ 上形式的に滑らか |
| $\Omega_{L/K}=0$(系の「分離的かつ $\Omega_{L/K}=0$ なら形式的エタール」) | $L=K(t)$、$t$ は $K$ 上の不定元 | 形式的エタール($\Omega_{L/K}=L\,dt\ne0$ なので持上げは一意でない) |
| 分離性(系の同じ含意) | $\mathbb F_p(t)$ の完全閉包 $L$ と $K=\mathbb F_p(t)$(ex-ffs-unramified-not-smooth) | 形式的エタール($\Omega_{L/K}=0$ だが形式的に滑らかでない) |
| 標数 $0$(系の「形式的エタールなら代数拡大」) | 完全体 $k$ 上の $k(x)$ の完全閉包(ex-ffs-perfect-closure) | $L/k$ が代数拡大 |
2 行目の $K(t)/K$ は分離的なので形式的に滑らかであり(prop-ffs-transcendental)、外したのは $\Omega_{L/K}=0$ だけである。3 行目では $\Omega_{L/K}=0$ は成り立っており、外したのは分離性だけである。
完備局所環 $(R,\mathfrak m,\kappa)$ の部分体 $K'$ で、剰余写像が同型 $K'\cong\kappa$ を与えるものを係数体という(Cohenの構造定理 の定義「係数体と係数写像」)。係数体に指定した部分体を含められるかどうかは、剰余体の分離性で決まる。
$(R,\mathfrak m,\kappa)$ を局所環とし、自然な写像 $R\to\varprojlim_rR/\mathfrak m^r$ が同型であるとする。$R$ が部分体 $k$ を含み、剰余体 $\kappa$ が $k$ 上分離的なら、$R$ は $k$ を含む係数体をもつ。
$R_r:=R/\mathfrak m^r$ とおく。全射 $R_{r+1}\to R_r$ の核 $\mathfrak m^r/\mathfrak m^{r+1}$ は $2r\ge r+1$ により平方零である。thm-ffs-main により $\kappa$ は $k$ 上形式的に滑らかなので、恒等写像 $u_1\colon\kappa\to R_1=\kappa$ から始めて、$k$ 代数の準同型 $u_r\colon\kappa\to R_r$ で $u_{r+1}$ と射影 $R_{r+1}\to R_r$ の合成が $u_r$ になるものを順に選べる。仮定により $(u_r)_r$ は $k$ 代数の準同型 $\sigma\colon\kappa\to R$ を定め、剰余写像との合成は $u_1=\mathrm{id}$ である。$\sigma$ は体からの環準同型なので単射であり、像 $K'$ は $k$ を含む部分体で、剰余写像は $K'\cong\kappa$ を与える。$\square$
剰余体が分離的でなければ、指定した部分体を含む係数体は存在しないことがある(Cohenの構造定理 の例「指定した部分体を含めない反例」)。また係数体は一意とは限らない(同じ記事の例「二つの異なる係数体」)。この系は、Noether 局所環の形式的滑らかさと正則性を結ぶ定理で使われる(進位相に関する形式的滑らかさと正則性)。
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