Thom–Matherの同位定理(Thom–Mather isotopy theorem)とは、多様体の閉集合 $S$ の Whitney 層別と写像 $f$ について、$f$ の $S$ への制限が固有で各層の上で沈め込みなら、$f$ は $S$ から底への層別を保つ局所自明なファイバー束であるという定理で、Thom の第一同位補題とも呼ばれる。層が $1$ つなら Ehresmann の補題である。帰結として、底が連結ならファイバーはすべて同相であり、点の層のまわりで $S$ は小さな球面との交わりの上の開錐と同相になる。自明化は同相写像であり、$4$ 本の直線の族のように微分同相には強められない。
前提知識: Whitney層別, 固有写像, Ehresmannの補題, ファイバー束
Thom–Mather の同位定理(Thom–Mather isotopy theorem)は、Whitney 層別された閉集合 $S$ から多様体 $P$ への写像 $f$ が固有で、各層の上で沈め込みなら、$f$ は層別を保つ局所自明なファイバー束になる、という定理である。Thom の第一同位補題(Thom's first isotopy lemma)とも呼ばれる。$S$ が 1 つの層(閉じた部分多様体)だけからなる場合は、固有な沈め込みが局所自明なファイバー束であるという Ehresmannの補題である。同位定理は、これを特異点をもつ集合に広げたものであり、層の間の条件として Whitney の条件 (b) が要る。
考え方は Thom によるもので、Mather が講義録で「制御された管状近傍」と「制御されたベクトル場」を使って完全な証明を与えた(Mat12 の謝辞、p. 475)。自明化は同相写像であって微分同相写像ではない。実際、滑らかな自明化が存在しない族にも同位定理は当てはまる(ex-tm-four-lines)。この記事では定理を述べて証明の骨格を所在とともに示し、帰結として、底が連結ならファイバーが同相であることと、点の層のまわりで集合が錐の形をしていること(局所錐構造)を証明する。また、仮定を外すと結論が成り立たなくなる例を調べる。
以下、多様体と写像は $C^\infty$ 級とする。$M,P$ を多様体、$f\colon M\to P$ を写像、$S\subset M$ を閉集合とし、$\mathcal{S}$ を $S$ の Whitney層別とする。$p\in P$ について $S_p:=S\cap f^{-1}(p)$ をファイバーという。
$f|_S\colon S\to P$ が層別を保って局所自明であるとは、各点 $p\in P$ に開近傍 $U$ と同相写像
$$
h\colon S\cap f^{-1}(U)\longrightarrow S_p\times U
$$
があって、$h$ の第 2 成分が $f$ に等しく、各層 $X\in\mathcal{S}$ について $h(X\cap f^{-1}(U))=(X\cap S_p)\times U$ となることをいう。$U$ として $P$ 全体がとれるとき、自明という。
これは Mat12 §11(pp. 499–500)の「$f$ が $U$ の上で自明」の定義に、層を保つこと(同 Corollary 10.3、p. 498)を加えたものである。
$M,P$ を多様体、$f\colon M\to P$ を写像、$S\subset M$ を閉集合、$\mathcal{S}$ を $S$ の Whitney 層別とする。$f|_S\colon S\to P$ が固有で、各層 $X\in\mathcal{S}$ について $f|_X\colon X\to P$ が沈め込みなら、$f|_S$ は層別を保って局所自明である。$P=\mathbb{R}^k$ なら $f|_S$ は自明である。
これは Mat12 Proposition 11.1(p. 499)である。$P=\mathbb{R}^k$ のとき自明になることは、その証明が引く Corollary 10.2 の証明(p. 497)が $S\cong S_0\times\mathbb{R}^k$ を直接構成していることによる。層を保つことは Corollary 10.3(p. 498)にある。この記事では証明しない。
名前の「同位」は、$P=\mathbb{R}$ のとき、証明が 2 つのファイバー $S_a,S_b$ の間の同位を構成することに由来する(Mat12 p. 499 の Remark。Thom は $P=\mathbb{R}$ の場合を考えた)。
o-極小構造の Hardtの自明化定理は、定義可能な連続写像 $f\colon A\to\mathbb{R}^n$ について、像 $f(A)$ を有限個の定義可能集合に分割して、各片の上で $f$ が定義可能な同相写像で自明になることを述べる(一般の点の上の形は vdD86 p. 192 の GENERIC TRIVIALITY)。層別や沈め込みの仮定は要らないが、自明になるのは分割の各片の上だけで、片の境目ではファイバーの形が変わってよい。同位定理は、Whitney 層別と沈め込みを仮定して、底 $P$ のすべての点の近くで局所自明性を与えるが、自明化が定義可能であることは述べない。
Mather の証明は 3 段からなる(Mat12 §§7–10)。
thm-tm-first-isotopy の仮定の下で $P$ が連結なら、任意の $p,q\in P$ について、層別を保つ同相写像 $S_p\to S_q$(各層 $X$ について $X\cap S_p$ を $X\cap S_q$ に写すもの)がある。
$p\sim q$ を「層別を保つ同相写像 $S_p\to S_q$ がある」ことで定めると、これは同値関係である。$p\in P$ について、thm-tm-first-isotopy の $U$ と $h$ をとる。$q\in U$ なら $h$ は $S_q$ を $S_p\times\{q\}$ に層を保って写すので、$p\sim q$ である。よって各同値類は開集合であり、その補集合もほかの同値類の和として開集合である。$P$ は連結なので同値類は 1 つである。$\square$
次の補題は、条件 (b) が「点から見た動径方向」をどう制御するかを示す。これは Mat12 Lemma 7.3(p. 489)の、低い層が 1 点の場合にあたる。
$S\subset\mathbb{R}^n$ の Whitney 層別が 1 点 $\{p\}$ を層にもつとし、$\rho(x):=|x-p|^2$ とおく。$p$ を閉包に含む層 $X\neq\{p\}$ について、$\varepsilon>0$ があって、$\rho|_X$ は $X\cap\{0< \rho< \varepsilon^2\}$ の上で沈め込み(微分が $0$ でない)である。
$x\in X$ で $\rho|_X$ の微分が $0$ になることは、$d\rho_x(v)=2(x-p)\cdot v$ がすべての $v\in T_xX$ で $0$、すなわち $x-p\perp T_xX$ と同値である。結論が成り立たないとすると、$X$ の点列 $x_i\to p$ で $x_i-p\perp T_{x_i}X$ となるものがある。部分列をとって $T_{x_i}X\to\tau$、$u_i:=(x_i-p)/|x_i-p|\to u$ としてよい。$u_i\perp T_{x_i}X$ なので $u\perp\tau$ である(Whitney層別 の節「設定と記号」の事実)。一方、$Y=\{p\}$ の点列として $y_i=p$ をとると、割線 $\overline{x_iy_i}$ は $u$ の張る直線に収束するので、対 $(X,\{p\})$ の条件 (b) により $u\in\tau$ である。$u\in\tau$ かつ $u\perp\tau$ から $u=0$ となり、$|u|=1$ に反する。$\square$
同位定理とこの補題から、点の層のまわりで $S$ が錐の形をしていることが従う。$L$ をコンパクト空間とするとき、開錐 $C^\circ(L)$ を、$L\times[0,1)$ の $L\times\{0\}$ を 1 点(頂点)につぶした空間とする(錐(位相))。
$S\subset\mathbb{R}^n$ を閉集合、$\mathcal{S}$ をその Whitney 層別とし、1 点 $\{p\}$ が層であるとする。$\rho(x)=|x-p|^2$ とおく。このとき $\varepsilon>0$ があって、$0< \delta< \varepsilon$ となる各 $\delta$ について、$L_\delta:=S\cap\{\rho=\delta^2\}$ はコンパクトであり、$p$ の近傍 $S\cap\{\rho< \varepsilon^2\}$ から開錐 $C^\circ(L_\delta)$ への同相写像で、$p$ を頂点に写し、各層 $X\neq\{p\}$ について $X\cap\{0< \rho< \varepsilon^2\}$ を $(X\cap L_\delta)\times(0,1)$ に写すものがある。特に $L_\delta$ の同相の型は $\delta$ によらない。
$\varepsilon$ の選び方。層別は局所有限なので、開球 $B(p,r_0)$ と交わる層は有限個である。そのうち $p$ を閉包に含まない層 $X$ については、$r_X>0$ を $B(p,r_X)\cap X=\emptyset$ となるようにとる。$p$ を閉包に含む層 $X\neq\{p\}$ については、lem-tm-radial の $\varepsilon_X$ をとる。$\varepsilon$ をこれらと $r_0$ の最小値とする。すると、$\{0< \rho< \varepsilon^2\}$ と交わる層 $X$ はどれも $p$ を閉包に含み、$\rho|_X$ はそこで沈め込みである。
同位定理の適用。$M':=\{x\in\mathbb{R}^n\mid 0< \rho(x)< \varepsilon^2\}$ は $\mathbb{R}^n$ の開集合で、$S':=S\cap M'$ は $M'$ の閉集合である。$\mathcal{S}':=\{X\cap M'\mid X\in\mathcal{S},\ X\cap M'\neq\emptyset\}$ は $S'$ の Whitney 層別である。実際、層は開集合との共通部分なので部分多様体であり、局所有限性と条件 (b) は局所的な条件であり、$M'$ が開集合なので $M'$ の中での閉包は $\overline{X}\cap M'$ となって境界条件も保たれる。写像 $f:=\rho|_{M'}\colon M'\to(0,\varepsilon^2)$ について、コンパクト集合 $[a,b]\subset(0,\varepsilon^2)$ の逆像 $S\cap\{a\le\rho\le b\}$ は有界閉集合なのでコンパクトであり、$f|_{S'}$ は固有である。$f$ は各層の上で沈め込みである。$(0,\varepsilon^2)$ は $\mathbb{R}$ と微分同相なので、thm-tm-first-isotopy により、同相写像
$$
H\colon S'\longrightarrow L_\delta\times(0,\varepsilon^2)
$$
で、第 2 成分が $\rho$ に等しく、各層 $X\cap M'$ を $(X\cap L_\delta)\times(0,\varepsilon^2)$ に写すものがある($L_\delta$ は $\rho=\delta^2$ のファイバーで、固有性からコンパクトである)。$(0,\varepsilon^2)$ を $(0,1)$ に $t\mapsto t/\varepsilon^2$ で写しておく。
頂点への延長。$\Phi\colon S\cap\{\rho< \varepsilon^2\}\to C^\circ(L_\delta)$ を、$\Phi(p):=$ 頂点、$x\neq p$ では $\Phi(x):=[H(x)]$ で定める。$\Phi$ は全単射である。$L_\delta\times(0,1)$ は $C^\circ(L_\delta)$ から頂点を除いた開集合に同相に写るので、$\Phi$ と $\Phi^{-1}$ は頂点と $p$ 以外で連続である。$L_\delta$ はコンパクトなので、管状近傍の補題により、$\{[l,t]\mid t< \eta\}$($0< \eta\le1$)の形の集合が頂点の近傍の基本系をなす。その $\Phi$ による逆像は $S\cap\{\rho< \eta\varepsilon^2\}$ で、これは $S$ の中の $p$ の近傍の基本系である。よって $\Phi$ と $\Phi^{-1}$ は $p$ と頂点でも連続であり、$\Phi$ は同相写像である。最後の主張は、$L_\delta$ と $L_{\delta'}$($0< \delta,\delta'< \varepsilon$)がともに $f|_{S'}$ のファイバーで、$(0,\varepsilon^2)$ は連結なので、cor-tm-fibres により層別を保って同相であることから従う。$\square$
一般の次元の層 $W$ の点のまわりでは、$S$ は $\mathbb{R}^i\times C^\circ(Z)$($i=\dim W$、$Z$ はコンパクトな層別空間)の形の近傍をもつ(NV23 Theorem 3.6、p. 15。そこでは Mather の 1972 年の論文の Theorem 8.3 に帰され、証明が抽象的な層別集合の枠組みで述べ直されている)。証明は、$W$ の管状近傍の射影と距離関数の組 $(\pi_W,\rho_W)$ に同位定理を当てはめるもので、上の証明の $\rho$ を $(\pi_W,\rho_W)$ に替えたものである。この局所錐構造は、Whitney 層別された空間が円錐的な層別空間であることを意味する。また、同じ層の同じ連結成分の 2 点は、層別を保つ全体の同相写像で移り合う(Mat12 §5 の Remark、p. 480)。
Thom の第二同位補題は、写像の図式 $S'\xrightarrow{g}S\xrightarrow{f}P$ について、$g$ が層を層に沈め込みで写し、Thom の条件 $(a_g)$ を満たすなどの条件の下で、写像の族 $g_p\colon S'_p\to S_p$ が $P$ の上で局所自明になることを述べる(Mat12 Proposition 11.2、p. 501。証明は概略)。Mather の講義の目標は、コンパクトな多様体 $N$ から多様体 $P$ への写像の空間 $C^\infty(N,P)$ で位相的に安定な写像が稠密であることの証明であり、そのために第二同位補題を使う(同 p. 475 の序文、p. 500)。
錐 $C=\{x^2+y^2=z^2\}$ を原点と残りに分けた層別は Whitney 層別である(Whitney層別 の例「錐」)。thm-tm-local-cone の $L_\delta$ は $C$ と半径 $\delta$ の球面の共通部分で、2 つの円 $\{z=\pm\delta/\sqrt2,\ x^2+y^2=\delta^2/2\}$ である。よって原点の近くの $C$ は、2 つの円の上の開錐、すなわち頂点で貼り合わせた 2 つの開円板と同相である。Whitney の傘 $W=\{y^2=zx^2\}$ の Whitney 層別 $\{X,Z_+,Z_-,O\}$(Whitney層別 の例「Whitney の傘」)でも、thm-tm-local-cone により、原点の近くの $W$ は $L_\delta=W\cap\{p\in\mathbb{R}^3\mid |p|=\delta\}$ の上の開錐と同相である。
$t>1$ について、原点を通る 4 本の直線 $\ell_1=\{y=0\}$、$\ell_2=\{y=x\}$、$\ell_3=\{x=0\}$、$\ell_4=\{y=tx\}$ の和を $A_t\subset\mathbb{R}^2$ とする。$A_t$ の 8 本の半直線の偏角は、$t>1$ である限り同じ順に並ぶので、円周の向きを保つ区分線形な同相写像 $g_{t,t'}$ で $A_t$ の 8 つの偏角を $A_{t'}$ の 8 つの偏角に写すものがとれ、それは $t'$ について連続に選べる。極座標で $(r,\theta)\mapsto(r,g_{t,t'}(\theta))$ とすれば、$A_t$ を $A_{t'}$ に写す $\mathbb{R}^2$ の同相写像が得られる。
一方、$A_t$ と $A_{t'}$ が原点の近くで $C^1$ 級の微分同相写像 $h$($h(0)=0$、$h(A_t\cap U)=A_{t'}\cap U'$)で移り合うとする。$v$ を $\ell_j$ の方向ベクトルとすると、$h(sv)/s\to Dh(0)v$($s\to0+$)で、$h(sv)$ は $A_{t'}\setminus\{0\}$ の連結成分(8 本の開いた半直線)のどれか 1 つに含まれ続けるので、$Dh(0)v$ はその半直線の上にある。$-v$ についても同じなので、線形同型 $Dh(0)$ は 4 本の直線を 4 本の直線に写す。線形同型は直線の全体 $\mathbb{P}^1(\mathbb{R})$ の射影変換を引き起こし、4 点の複比を保つ。傾きで表すと $A_t$ の 4 本は $0,1,\infty,t$ で、その複比は $t$ の単射な関数である。並べ替えで複比がとる値は高々 6 個なので、各 $t$ について $A_t$ と原点で $C^1$ 同値な $A_{t'}$ は高々 6 個の $t'$ に限る。
同位定理の仮定も満たされる。$M:=\mathbb{R}^2\times(1,2)$ の閉集合 $S:=\{(x,y,t)\mid (x,y)\in A_t,\ x^2+y^2\le1\}$ を、$t$ 軸 $Z:=\{x=y=0\}\cap M$、4 つの「羽根」$F_j:=\{(x,y,t)\in S\mid (x,y)\in\ell_j\setminus\{0\},\ x^2+y^2< 1\}$、その縁 $\partial F_j:=\{(x,y,t)\in S\mid (x,y)\in\ell_j,\ x^2+y^2=1\}$ に分け、$f(x,y,t)=t$ とする。$f|_S$ は固有で、各層の上で沈め込みである。条件 (b) が自明でないのは $(F_4,Z)$ だけで、$F_4$ は $(x,t)\mapsto(x,tx,t)$ で表され、接平面は $(1,t,0)$ と $(0,x,1)$ で張られる。$Z$ の点 $(0,0,s)$ との割線のベクトルは
$$
(x,\ tx,\ t-s)=x(1,t,0)+(t-s)(0,x,1)-(t-s)x\,(0,1,0)
$$
であり、接平面からのずれ $|(t-s)x|$ は、割線の長さ($\max(|x|,|t-s|)$ 以上)の $\min(|x|,|t-s|)$ 倍以下なので、極限で割線は接平面の極限に含まれる。こうして thm-tm-first-isotopy により $f|_S$ は位相的に自明であるが、上の議論から、ファイバーを原点のまわりで $C^1$ 級の微分同相写像で移し合う自明化は存在しない。同位定理の結論の「同相」を「微分同相」に強めることはできない。
$M=S=\mathbb{R}^2\setminus\{0\}$(層は 1 つ)、$f(x,y)=x$ とする。$f|_S$ は沈め込みだが固有でない($[-1,1]$ の逆像は原点の近くの点列を含み、コンパクトでない)。ファイバーは $x\neq0$ では直線、$x=0$ では 2 本の開半直線で、互いに同相でないので、$f|_S$ は $x=0$ の近くで局所自明でない。
$\mathbb{R}^2$ の中の $S:=\{x=0\}\cup\{x=t\}$(座標 $(x,t)$)を、$Y:=\{x=0\}$ と $X:=\{x=t,\ t\neq0\}$ に分け、$f(x,t)=t$ とする。$f|_S$ は固有で、$f|_X$、$f|_Y$ は沈め込みだが、ファイバーは $t\neq0$ で 2 点、$t=0$ で 1 点である。この層別は、$\overline{X}\setminus X=\{0\}$ が層の和でないので境界条件を満たさない。原点を層として分けると境界条件と (b) は満たされるが、今度は 0 次元の層 $\{0\}$ の上で $f$ が沈め込みでない。
$F=y^2-x^3-z^2x^2$ とし、$0< r< 1/2$、$0< \delta< \sqrt{r/2}$ をとる。$M:=\mathbb{R}^2\times(-\delta,\delta)$ の閉集合 $S:=\{F=0,\ x^2+y^2\le r^2\}$ を、$Z:=\{x=y=0\}\cap M$、$X^\circ:=\{F=0,\ x^2+y^2< r^2\}\setminus Z$、$\partial X:=\{F=0,\ x^2+y^2=r^2\}$ に分け、$f(x,y,z)=z$ とする。
仮定のうち (b) 以外は満たされる。$f|_S$ は固有である。$X^\circ$ は 2 次元の部分多様体で $f|_{X^\circ}$ は沈め込みである:$T X^\circ$ の上で $dz=0$ となるのは $F_x=F_y=0$ のときで、$y=0$、$x\neq0$ から $x=-2z^2/3$ となり、$F=-x^2(x+z^2)=-x^2z^2/3=0$ から $z=0$、$x=0$ となって矛盾する。$\partial X$ の点では $y\neq0$ である($y=0$ なら $x=0$ か $x=-z^2$ である。前者は円周 $x^2+y^2=r^2$ の上になく、後者なら $z^2=|x|=r>\delta^2$ となって矛盾する)。$\nabla F$、$\nabla(x^2+y^2)$、$e_3$ の行列式は $-2xy(3x+2z^2+2)$ で、$x\ge-z^2>-r$ から $3x+2>0$ なので $0$ でない。よって $\partial X$ は曲線で、$f|_{\partial X}$ は沈め込みである。$f|_Z$ も沈め込みである。境界条件と、対 $(X^\circ,Z)$ の条件 (a) は成り立つ(Whitney層別 の反例「Whitney の 3 次曲面」(1))。しかし (b) は原点で成り立たない(同 (2))。
結論は成り立たない。$z\neq0$ なら、ファイバー $S_z$ は $\{(x,y)\mid -z^2\le x\le0,\ y^2=x^2(x+z^2)\}$ を含み、これは円周と同相である($y=\pm|x|\sqrt{x+z^2}$ の 2 つの弧が $x=-z^2$ と $x=0$ でつながる。$x^2+y^2\le z^4(1+z^2)< \delta^4(1+\delta^2)< r^2$ なので円板に入る)。$z=0$ なら $S_0=\{(s^2,s^3)\}\cap\{x^2+y^2\le r^2\}$ は閉区間と同相で、円周と同相な部分集合を含まない(閉区間のコンパクトで連結な部分集合は 1 点か閉区間であり、閉区間は内点を 1 つ除くと連結でなくなるが、円周は 1 点を除いても連結である)。よって $S_0$ と $S_z$ は同相でなく、$f|_S$ は $z=0$ の近くで局所自明でない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $S$ の上での $f$ の固有性 | $\mathbb{R}^2\setminus\{0\}$ 上の $f=x$(ex-tm-not-proper) | 局所自明性($x=0$ のファイバーだけ 2 成分) |
| 各層で沈め込み(境界条件も参照) | 2 本の直線 $x=0$、$x=t$(ex-tm-not-submersion) | 局所自明性(ファイバーの点の個数が変わる) |
| Whitney の条件 (b)((a) は成り立つ) | Whitney の 3 次曲面を円柱で切ったもの(ex-tm-cubic) | 局所自明性(切り口が輪を含むか弧か) |
| 結論を $C^1$ 級に強める | 4 本の直線の族(ex-tm-four-lines) | 滑らかな自明化の存在(複比が不変量になる) |
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