可測関数列の収束

同義語:可測関数の列の収束modes of convergence

概要

可測関数列の収束(modes of convergence)とは、測度空間上の可測関数の列が極限に近づく仕方の総称で、各点収束・一様収束に加え、ほとんどいたるところ収束、本質的一様収束、ほとんど一様収束、測度収束、$L^p$ 収束がある。これらは一列に並ばず、一般の測度では $L^p$ 収束とほとんど一様収束から測度収束が従い、測度有限ならほとんどいたるところ収束からも従う。逆に測度収束はほとんどいたるところ収束を導かないが、Riesz の部分列定理によりほとんど一様収束する部分列をもつ。測度収束は有限測度で擬距離で表せる一方、この判定から、ほとんどいたるところ収束は一般にはどの位相の収束でもないことが分かる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 測度, Lebesgue積分, Lp空間, 一様収束, Egorovの定理

数列の収束は 1 通りの意味しかもたないが、関数の列には「近づく」の意味がいくつもある。各点収束 と 一様収束 に加えて、測度空間の上では、零集合を無視する収束、測度の小さい集合を除いて一様になる収束、ずれの大きい点の集合の測度が $0$ に近づく収束、ずれの積分が $0$ に近づく収束がある。これらは強い順に一列に並ぶわけではない。関数の山が無限遠へ逃げる、横に広がる、縦に伸びる、同じ場所を何度も通り過ぎる、という 4 通りの振る舞いに、それぞれの収束が違う反応をするからである。
この記事では、可測関数列の収束(modes of convergence)の主な 7 種類を定義し、それらの間の含意をすべて証明する。中心になるのは、測度収束する列はほとんどいたるところ収束する部分列をもつという Riesz の部分列定理 と、それから導かれる部分列による判定法である。さらに、有限測度では測度収束が擬距離で表せるのに、ほとんどいたるところの収束は一般にはどんな位相の収束でもないこと($[0,1]$ 上の Lebesgue 測度で示す)、測度収束について Cauchy 列が収束すること、優関数があれば測度収束から $L^p$ 収束が従うことを示し、最後に 4 つの典型的な列で、どの含意がどの条件なしには成り立たないかを確かめる。確率空間での言い換え(概収束・確率収束)と分布収束は 確率変数の収束 で扱う。

定義

以下、$(X,\mathcal{S},\mu)$ を測度空間とし、関数はすべて $X$ 上の $\mathcal{S}$-可測な実数値(または複素数値)関数とする。$\{\lvert h\rvert\ge\eta\}$ は $\{x\in X\mid\lvert h(x)\rvert\ge\eta\}$ を表す。

可測関数列の収束の 7 種類

可測関数の列 $(f_n)$ と可測関数 $f$ について、次のように定める。

  1. 各点収束:すべての $x\in X$ で $f_n(x)\to f(x)$ となる。
  2. 一様収束:$\sup_{x\in X}\lvert f_n(x)-f(x)\rvert\to0$ となる。
  3. ほとんどいたるところ収束(概収束):$\mu(N)=0$ となる $N\in\mathcal{S}$ があって、$x\notin N$ では $f_n(x)\to f(x)$ となる。
  4. 本質的一様収束($L^\infty$ 収束):$\mu(N)=0$ となる $N\in\mathcal{S}$ があって、$\sup_{x\in X\setminus N}\lvert f_n(x)-f(x)\rvert\to0$ となる。
  5. ほとんど一様収束(概一様収束):任意の $\varepsilon>0$ に対し $\mu(A)<\varepsilon$ となる $A\in\mathcal{S}$ があって、$\sup_{x\in X\setminus A}\lvert f_n(x)-f(x)\rvert\to0$ となる。
  6. 測度収束:任意の $\eta>0$ について $\mu(\{\lvert f_n-f\rvert\ge\eta\})\to0$ となる。
  7. $L^p$ 収束($0< p<\infty$):$\int_X\lvert f_n-f\rvert^p\,d\mu\to0$ となる。

3・5・6 の定義は Egorovの定理 の記事の定義「ほとんどいたるところの収束とほとんど一様収束」と同じである。6 で「$\ge\eta$」を「$>\eta$」に替えても同じ収束になる($\{\lvert h\rvert\ge\eta\}\subset\{\lvert h\rvert>\eta/2\}\subset\{\lvert h\rvert\ge\eta/2\}$ による)。7 で $1\le p<\infty$ かつ $f_n,f\in L^p(\mu)$ なら、これは $L^p$ ノルムで $\|f_n-f\|_p\to0$ となることである。4 は $\|f_n-f\|_\infty\to0$ と同値である($N_n:=\{\lvert f_n-f\rvert>\|f_n-f\|_\infty\}$ は Lp空間 の補題「本質的上限は達成される」により零集合なので、$N:=\bigcup_nN_n$ の外で $\lvert f_n-f\rvert\le\|f_n-f\|_\infty$ となる)。
1・2 は 1 点で関数を変えただけで成り立たなくなりうるが、3〜7 は $f_n$ や $f$ を零集合の上で変えても変わらない。そのため 3〜7 の極限は、ほとんどいたるところ等しい関数を同一視したときにだけ一意である(prop-mc-unique)。
確率空間では、3 を 概収束(almost sure convergence)、6 を 確率収束(convergence in probability)、$p=1$ の 7 を 平均収束 と呼ぶ(Tao11 Remark 1.5.1、p. 116)。一般の $p$ の 7 は $p$ 次平均収束とも呼ばれる。

含意の関係

まず、測度について何も仮定せずに成り立つ含意を示す。

一般の測度での含意

$\mu$ を任意の測度とする。

  1. 一様収束 ⇒ 本質的一様収束 ⇒ ほとんど一様収束 ⇒ ほとんどいたるところ収束。また 一様収束 ⇒ 各点収束 ⇒ ほとんどいたるところ収束。
  2. ほとんど一様収束 ⇒ 測度収束。
  3. $0< p<\infty$ について、$L^p$ 収束 ⇒ 測度収束。

1:一様収束なら $N=\emptyset$ として本質的一様収束である。本質的一様収束なら、どの $\varepsilon>0$ についても零集合 $N$ を $A$ にとればよい($\mu(N)=0<\varepsilon$)。ほとんど一様収束からほとんどいたるところ収束が従うことは、Egorovの定理 の記事の命題「ほとんど一様収束からの帰結」の 1 である。残りの 2 つは定義から明らかである。
2:同じ命題の 2 である。
3:$\eta>0$ とし、$E_n:=\{\lvert f_n-f\rvert\ge\eta\}$ とおく。$E_n$ の上で $\lvert f_n-f\rvert^p\ge\eta^p$ なので $\eta^p1_{E_n}\le\lvert f_n-f\rvert^p$ であり、積分して
$$ \mu(E_n)\le\frac1{\eta^p}\int_X\lvert f_n-f\rvert^p\,d\mu\to0 $$
となる(Markov の不等式。Chebyshevの不等式 の系「$L^p$ 収束から測度収束へ」と同じ議論)。$\square$

測度が有限なら、含意はさらに増える。

有限測度での含意

$\mu(X)<\infty$ とする。

  1. ほとんどいたるところ収束とほとんど一様収束は同値である。とくに、ほとんどいたるところ収束 ⇒ 測度収束。
  2. 本質的一様収束 ⇒ $L^p$ 収束($0< p<\infty$)。
  3. $0< q< p<\infty$ について、$L^p$ 収束 ⇒ $L^q$ 収束。

1:ほとんどいたるところ収束からほとんど一様収束が従うことは Egorovの定理 の定理「Egorovの定理」であり、逆は thm-mc-general の 1 である。後半は thm-mc-general の 2 による。
2:$N$ を定義の零集合とし、$s_n:=\sup_{X\setminus N}\lvert f_n-f\rvert$ とおく。$\int_X\lvert f_n-f\rvert^p\,d\mu=\int_{X\setminus N}\lvert f_n-f\rvert^p\,d\mu\le s_n^p\,\mu(X)\to0$ である。
3:$h:=\lvert f_n-f\rvert^q$ と $r:=p/q>1$、その共役指数 $r'$ について、Lp空間 の定理「Hölderの不等式」を $h$ と定数関数 $1$ に使うと
$$ \int_Xh\,d\mu\le\Bigl(\int_Xh^r\,d\mu\Bigr)^{1/r}\mu(X)^{1/r'}=\Bigl(\int_X\lvert f_n-f\rvert^p\,d\mu\Bigr)^{q/p}\mu(X)^{1-q/p} $$
となり、右辺は $0$ に近づく。$\square$

ここまでの含意をまとめる。「一般」は thm-mc-general、「有限」は thm-mc-finite による。逆向きの含意が成り立たないことは ex-mc-counterexamples で示す。

含意測度の条件根拠
一様 ⇒ 本質的一様 ⇒ ほとんど一様 ⇒ ほとんどいたるところなし一般の 1
一様 ⇒ 各点 ⇒ ほとんどいたるところなし一般の 1
ほとんど一様 ⇒ 測度なし一般の 2
$L^p$ ⇒ 測度なし一般の 3
ほとんどいたるところ ⇒ ほとんど一様 ⇒ 測度$\mu(X)<\infty$有限の 1
本質的一様 ⇒ $L^p$、$L^p$ ⇒ $L^q$($q< p$)$\mu(X)<\infty$有限の 2・3
測度 ⇒ 部分列がほとんど一様なしthm-mc-riesz

Rieszの部分列定理

測度収束はほとんどいたるところ収束を導かないが(ex-mc-counterexamples の 3 行目)、部分列に移れば導く。鍵は、ずれの大きい集合の測度の和が有限なら、その集合たちの「裾」が小さいことである。

速い測度収束

$\eta_k>0$、$\eta_k\to0$ とし、$\sum_{k=1}^\infty\mu(\{\lvert f_k-f\rvert\ge\eta_k\})<\infty$ とする。このとき $f_k$ は $f$ にほとんど一様収束し、したがってほとんどいたるところ収束する。

$E_k:=\{\lvert f_k-f\rvert\ge\eta_k\}$、$A_m:=\bigcup_{k\ge m}E_k$ とおく。可算劣加法性から $\mu(A_m)\le\sum_{k\ge m}\mu(E_k)$ であり、これは収束する級数の裾なので $m\to\infty$ で $0$ に近づく。$\varepsilon>0$ に対し $\mu(A_m)<\varepsilon$ となる $m$ をとる。$x\in X\setminus A_m$ と $k\ge m$ について $x\notin E_k$ なので $\lvert f_k(x)-f(x)\rvert<\eta_k$ であり、$\sup_{X\setminus A_m}\lvert f_k-f\rvert\le\eta_k\to0$ となる。よってほとんど一様収束であり、ほとんどいたるところ収束は thm-mc-general の 1 による。$\square$

ほとんどいたるところ収束だけなら、Borel–Cantelliの補題 の定理「第 1 の Borel–Cantelli の補題」からも分かる。$\sum_k\mu(E_k)<\infty$ なので、無限個の $E_k$ に属する点の集合は零集合であり、その外の点 $x$ ではある番号から先 $\lvert f_k(x)-f(x)\rvert<\eta_k$ となる。

Rieszの部分列定理

$\mu$ を任意の測度とし、$f_n$ が $f$ に測度収束するとする。このとき部分列 $(f_{n_k})$ で、$f$ にほとんど一様収束する(したがってほとんどいたるところ収束する)ものがある。

測度収束の定義を $\eta=2^{-k}$ に使い、$n_1< n_2<\cdots$ を帰納的に
$$ \mu\bigl(\{\lvert f_{n_k}-f\rvert\ge2^{-k}\}\bigr)<2^{-k} $$
となるように選ぶ。$\sum_k2^{-k}<\infty$ なので、列 $g_k:=f_{n_k}$ と $\eta_k:=2^{-k}$ に lem-mc-fast を当てればよい。$\square$

この定理は Bass24 Proposition 10.2 の (2)(pp. 83–84)で、ほとんどいたるところ収束の形で証明されている。$L^p$ 収束する列は測度収束するので(thm-mc-general の 3)、$L^p$ 収束する列もほとんどいたるところ収束する部分列をもつ($p=1$ の場合は Tao11 Corollary 1.5.10、p. 124)。$1\le p<\infty$ ではさらに部分列全体を $L^p$ の 1 つの関数で抑えられる(Riesz–Fischerの定理 の定理「収束列の部分列の概収束」)。
部分列をとらないと結論は成り立たない。ex-mc-four の走り書きの列は測度収束するが、どの点でも収束しない。この列から、$k$ ごとに $[0,2^{-k}]$ の指示関数だけを拾った部分列は、$0$ 以外のすべての点で $0$ に収束する。

極限の一意性

7 種類のどの 2 つの収束でも、極限はほとんどいたるところ一致する。

極限の一意性

$f_n$ が $f$ に def-mc-modes の 1〜7 のどれかの意味で収束し、$g$ にもどれかの意味で(同じでも違ってもよい)収束するならば、ほとんどいたるところ $f=g$ である。

thm-mc-general により、1〜5 はほとんどいたるところ収束を、7 は測度収束を導く。よって $f$ と $g$ のそれぞれへの収束は、ほとんどいたるところ収束か測度収束のどちらかだとしてよい。測度収束のほうは thm-mc-riesz により部分列でほとんどいたるところ収束に替えられ、部分列にしてもほかの収束は保たれる。したがって、ある部分列 $(f_{n_k})$ が $f$ にも $g$ にもほとんどいたるところ収束するとしてよい。2 つの零集合の和の外では $f(x)=\lim_kf_{n_k}(x)=g(x)$ である。$\square$

部分列による判定と位相

Riesz の部分列定理を逆向きにも使うと、測度収束を部分列の言葉で言い換えられる。

部分列による測度収束の判定

$\mu$ を任意の測度とする。次は同値である。

  1. $f_n$ は $f$ に測度収束する。
  2. $(f_n)$ のどの部分列も、$f$ にほとんど一様収束するさらなる部分列をもつ。
    $\mu(X)<\infty$ なら、これらは次とも同値である。
  3. $(f_n)$ のどの部分列も、$f$ にほとんどいたるところ収束するさらなる部分列をもつ。

1 ⇒ 2:測度収束する列の部分列も同じ関数に測度収束するので、thm-mc-riesz をその部分列に当てればよい。
2 ⇒ 1:1 が成り立たないとすると、ある $\eta>0$ と $\delta>0$ と部分列 $(f_{n_j})$ で、すべての $j$ について $\mu(\{\lvert f_{n_j}-f\rvert\ge\eta\})\ge\delta$ となるものがある。2 によりそのさらなる部分列が $f$ にほとんど一様収束し、thm-mc-general の 2 により測度収束する。これはさらなる部分列でも測度が $\delta$ 以上であることに反する。
$\mu(X)<\infty$ のとき、2 ⇒ 3 は thm-mc-general の 1 により、3 ⇒ 2 は thm-mc-finite の 1(Egorov の定理)による。$\square$

$\mu(X)=\infty$ では 3 から 1 は従わない。$\mathbb{R}$ 上の $f_n:=1_{[n,n+1]}$ は各点で $0$ に収束するので 3 を満たすが、$\mu(\{f_n\ge1\})=1$ なので測度収束しない。
この判定から、ほとんどいたるところ収束は一般には位相の収束として表せないことが分かる(零集合が空集合だけの測度、たとえば数え上げ測度では、ほとんどいたるところ収束は各点収束と同じで直積位相の収束である)。位相空間の点列 $(y_n)$ について、「どの部分列もさらに $y$ に収束する部分列をもつなら、$y_n\to y$」が成り立つ(成り立たないとすると、$y$ のある開近傍の外にとどまる部分列があり、そのどの部分列もこの開近傍に入らない)。

ほとんどいたるところ収束は位相の収束でない

$[0,1]$ 上の Lebesgue 測度について、$[0,1]$ 上の実数値可測関数全体の集合 $M$ に、「$M$ の列 $f_n$ が $f$ に収束する ⇔ $f_n$ が $f$ にほとんどいたるところ収束する」となる位相は存在しない。

そのような位相があったとする。ex-mc-four の走り書きの列 $(t_n)$ は $0$ に測度収束するが、ほとんどいたるところ収束しない。一方、thm-mc-subsequence の 1 ⇒ 3 により、$(t_n)$ のどの部分列も $0$ にほとんどいたるところ収束するさらなる部分列をもち、それは仮定の位相で $0$ に収束する。上の位相空間の性質から $t_n\to0$ がこの位相で成り立ち、仮定によりほとんどいたるところ収束することになって矛盾する。$\square$

一方、有限測度の上の測度収束は擬距離で表せる。

測度収束の擬距離

$\mu(X)<\infty$ とし、可測関数 $f,g$ について $d(f,g):=\int_X\min\{1,\lvert f-g\rvert\}\,d\mu$ とおく。$d$ は擬距離($d(f,g)=0$ はほとんどいたるところ $f=g$ と同値)であり、$f_n$ が $f$ に測度収束することと $d(f_n,f)\to0$ は同値である。

要点:三角不等式は $\min\{1,a+b\}\le\min\{1,a\}+\min\{1,b\}$ から、同値性は $0< \eta\le1$ と $h:=\lvert f-g\rvert$ についての評価 $\eta\,\mu(\{h\ge\eta\})\le d(f,g)\le\eta\,\mu(X)+\mu(\{h\ge\eta\})$ から従う。

詳しい証明を開く

$a,b\ge0$ について、$a+b\le1$ なら $\min\{1,a+b\}=a+b=\min\{1,a\}+\min\{1,b\}$ であり、$a+b>1$ なら左辺は $1$ で、$a\ge1$ か $b\ge1$ なら右辺は $1$ 以上、そうでなければ右辺は $a+b>1$ である。これを $a=\lvert f-g\rvert$、$b=\lvert g-k\rvert$ に使い、$\lvert f-k\rvert\le a+b$ と合わせて積分すれば $d(f,k)\le d(f,g)+d(g,k)$ である。対称性と $d\ge0$ は明らかで、$\mu(X)<\infty$ なので $d$ は有限である。$d(f,g)=0$ は非負可測関数 $\min\{1,h\}$ がほとんどいたるところ $0$ であること、すなわちほとんどいたるところ $f=g$ と同値である。

評価の左側:$\{h\ge\eta\}$ の上で $\min\{1,h\}\ge\eta$ である。右側:$\{h< \eta\}$ の上で $\min\{1,h\}< \eta$、$\{h\ge\eta\}$ の上で $\min\{1,h\}\le1$ である。$f_n$ が $f$ に測度収束するなら、右側の評価で $\limsup_nd(f_n,f)\le\eta\,\mu(X)$ がすべての $\eta\in(0,1]$ で成り立つので $d(f_n,f)\to0$ である。逆に $d(f_n,f)\to0$ なら、$\eta\in(0,1]$ について左側の評価から $\mu(\{\lvert f_n-f\rvert\ge\eta\})\to0$ であり、$\eta>1$ では $\{\lvert f_n-f\rvert\ge\eta\}\subset\{\lvert f_n-f\rvert\ge1\}$ による。$\square$

ほとんどいたるところ等しい関数を同一視した空間 $L^0(\mu)$ では $d$ は距離になる。prop-mc-metric の評価の左側を $f_m-f_n$ に当てると $d$ についての Cauchy 列は測度について Cauchy 列なので、次の定理と prop-mc-metric により $L^0(\mu)$ は $d$ について完備である。

測度収束についての完備性

$\mu$ を任意の測度とし、$(f_n)$ が測度について Cauchy 列であるとする。すなわち任意の $\eta>0$ と $\varepsilon>0$ に対し $n_0$ があって、$m,n\ge n_0$ なら $\mu(\{\lvert f_m-f_n\rvert\ge\eta\})<\varepsilon$ であるとする。このとき可測関数 $f$ があって、$f_n$ は $f$ に測度収束する。

要点:$\mu(\{\lvert f_{n_{k+1}}-f_{n_k}\rvert\ge2^{-k}\})< 2^{-k}$ となる部分列は、測度の小さい集合の外で一様に Cauchy 列になるので極限 $f$ が定まり、部分列が $f$ に測度収束する。Cauchy 列の性質で列全体に戻す。

詳しい証明を開く

$n_1< n_2<\cdots$ を、$m,n\ge n_k$ なら $\mu(\{\lvert f_m-f_n\rvert\ge2^{-k}\})< 2^{-k}$ となるように選ぶ。$E_k:=\{\lvert f_{n_{k+1}}-f_{n_k}\rvert\ge2^{-k}\}$、$A_m:=\bigcup_{k\ge m}E_k$ とおくと $\mu(A_m)< 2^{1-m}$ である。$x\notin A_m$ と $l>k\ge m$ について $\lvert f_{n_l}(x)-f_{n_k}(x)\rvert\le\sum_{i=k}^{l-1}2^{-i}< 2^{1-k}$ なので、$(f_{n_k})$ は $X\setminus A_m$ の上で一様に Cauchy 列である。$B:=\bigcap_mA_m$ は $\mu(B)\le\mu(A_m)< 2^{1-m}$ がすべての $m$ で成り立つので零集合であり、$X\setminus B=\bigcup_m(X\setminus A_m)$ の各点で $f_{n_k}(x)$ は収束する。$X\setminus B$ の上で $f:=\lim_kf_{n_k}$、$B$ の上で $f:=0$ と定めると、$f$ は可測関数の各点極限と定数を可測集合で貼り合わせたものなので可測である。

上の不等式で $l\to\infty$ とすると、$x\notin A_k$ なら $\lvert f(x)-f_{n_k}(x)\rvert\le2^{1-k}$ である。よって $\mu(\{\lvert f_{n_k}-f\rvert>2^{1-k}\})\le\mu(A_k)< 2^{1-k}$ である。$\eta>0$、$\varepsilon>0$ を与える。$\lvert f_n-f\rvert\ge\eta$ なら $\lvert f_n-f_{n_k}\rvert\ge\eta/2$ か $\lvert f_{n_k}-f\rvert\ge\eta/2$ なので、$2^{1-k}<\eta/2$ かつ $2^{1-k}<\varepsilon/2$ となる $k$ で、$n_k$ と $n$ が Cauchy 列の条件($\eta/2$、$\varepsilon/2$)の番号以上なら $$\mu(\{\lvert f_n-f\rvert\ge\eta\})\le\mu(\{\lvert f_n-f_{n_k}\rvert\ge\eta/2\})+\mu(\{\lvert f_{n_k}-f\rvert>2^{1-k}\})<\varepsilon$$ となる。$\square$

測度収束から $L^p$ 収束へ

$L^p$ 収束は測度収束より強いが、関数の列が 1 つの $L^p$ 関数で抑えられていれば逆が成り立つ。これは 優収束定理 の、ほとんどいたるところ収束を測度収束に弱めた形である。

測度収束する列の優収束定理

$0< p<\infty$ とし、$f_n$ が $f$ に測度収束するとする。$\int_Xg^p\,d\mu<\infty$ となる非負可測関数 $g$ があって、すべての $n$ についてほとんどいたるところ $\lvert f_n\rvert\le g$ ならば、ほとんどいたるところ $\lvert f\rvert\le g$ であり、$\int_X\lvert f_n-f\rvert^p\,d\mu\to0$ である。

thm-mc-riesz により、ほとんどいたるところ $f_{n_k}\to f$ となる部分列がある。可算個の零集合の和の外で $\lvert f_{n_k}\rvert\le g$ と $f_{n_k}\to f$ がともに成り立つので、そこで $\lvert f\rvert\le g$ である。
$a_n:=\int_X\lvert f_n-f\rvert^p\,d\mu$ が $0$ に近づかないとすると、ある $\varepsilon>0$ と部分列 $(f_{n_j})$ で、すべての $j$ について $a_{n_j}\ge\varepsilon$ となるものがある。この部分列も $f$ に測度収束するので、thm-mc-riesz によりさらなる部分列 $(f_{m_i})$ がほとんどいたるところ $f$ に収束する。ほとんどいたるところ $\lvert f_{m_i}-f\rvert^p\le(2g)^p$ であり、$(2g)^p$ は可積分なので、優収束定理 により $a_{m_i}\to0$ となる。これは $a_{m_i}\ge\varepsilon$ に反する。$\square$

優関数の代わりに一様可積分性を仮定してもよい。$\mu$ が σ-有限、$1\le p<\infty$ で $f_n\in L^p$ が $f$ に測度収束するとき、$f\in L^p$ かつ $\|f_n-f\|_p\to0$ となるための必要十分条件は $\{\lvert f_n\rvert^p\}$ が一様可積分であることである(Vitaliの収束定理 の系「測度収束する列」)。優関数も一様可積分性もなければ結論は成り立たない(ex-mc-counterexamples の 4 行目)。

例

Tao11 Examples 1.5.2–1.5.5(p. 118)に従い、関数の山の 4 通りの逃げ方を表す列を挙げる。1・2 は $\mathbb{R}$ 上、3・4 は $[0,1]$ 上の Lebesgue 測度で考え、極限はどれも $0$ である。

4 つの典型的な列
  1. 水平方向に逃げる山:$\mathbb{R}$ 上で $f_n:=1_{[n,n+1]}$。
  2. 横に広がる山:$\mathbb{R}$ 上で $f_n:=\frac1n1_{[0,n]}$。
  3. 縦に伸びる山:$[0,1]$ 上で $f_n:=n\,1_{(0,1/n)}$。
  4. 走り書きの列(typewriter sequence):$[0,1]$ 上で、$n=2^k+j$($k\ge0$、$0\le j< 2^k$)について $f_n:=1_{[j2^{-k},(j+1)2^{-k}]}$。長さ $2^{-k}$ の区間が $[0,1]$ を左から右へ何度も掃いていく。

それぞれがどの意味で $0$ に収束するかを表にする(○は収束する、×は収束しない)。

列各点一様本質的一様ほとんど一様ほとんどいたるところ測度$L^1$
1. 水平方向に逃げる○×××○××
2. 横に広がる○○○○○○×
3. 縦に伸びる○××○○○×
4. 走り書き×××××○○
表の各欄の確かめ
確かめを開く

1:$x\in\mathbb{R}$ について $n>x$ なら $f_n(x)=0$ なので各点で $0$ に収束する。$\mu(\{f_n\ge1\})=\mu([n,n+1])=1$ なので測度収束せず、$\int f_n=1$ なので $L^1$ 収束しない。$\mu(A)< 1$ となるどの $A$ についても $[n,n+1]\setminus A$ は測度が正で空でないので、$\sup_{\mathbb{R}\setminus A}f_n=1$ がすべての $n$ で成り立ち、ほとんど一様収束しない(したがって本質的一様収束も一様収束もしない)。

2:$\sup f_n=1/n\to0$ なので一様収束し、thm-mc-general によりそれより弱い 5 つの意味でも収束する。$\int f_n=\frac1n\cdot n=1$ なので $L^1$ 収束しない($p>1$ なら $\int f_n^p=n^{1-p}\to0$ で $L^p$ 収束する)。

3:$f_n(0)=0$ であり、$x>0$ なら $n\ge1/x$ で $f_n(x)=0$ なので、各点で $0$ に収束する。$\varepsilon\in(0,1)$ について $A:=(0,\varepsilon)$ を除けば $n>1/\varepsilon$ で $f_n=0$ となるのでほとんど一様収束し、測度収束する。$\mu(\{f_n=n\})=1/n>0$ なので、どの零集合 $N$ についても $\sup_{[0,1]\setminus N}f_n=n$ であり、本質的一様収束しない。$\int f_n=1$ なので $L^1$ 収束しない。

4:$\mu(\{f_n\ne0\})=2^{-k}\to0$ なので測度収束し、$\int f_n=2^{-k}\to0$ なので $L^1$ 収束する。各 $x\in[0,1]$ と各 $k$ について $x$ を含む区間 $[j2^{-k},(j+1)2^{-k}]$ があるので $f_n(x)=1$ となる $n$ は無限にあり、$k\ge2$ では $x$ を含む区間は $2^k$ 個のうち高々 $2$ 個なので $f_n(x)=0$ となる $n$ も無限にある。よってどの点でも収束せず、ほとんどいたるところ収束しないので、thm-mc-general の 1 によりほとんど一様収束・本質的一様収束・一様収束もしない。$\square$

4 つの列の違いは、山の「高さ」($f_n$ の値)、「幅」($f_n\ne0$ となる集合の測度)、「裾」($k\ge n$ にわたる $f_k\ne0$ の集合の和)の振る舞いの違いである。測度収束は幅だけを見るので走り書きの列でも成り立つが、ほとんどいたるところ収束とほとんど一様収束は裾を見るので成り立たない。$L^1$ 収束は高さと幅の積を見るので、縦に伸びる山と横に広がる山では成り立たない(Tao11 §1.5.2、pp. 121–123 の観察)。

含意が成り立たない例

ここでは、thm-mc-general・thm-mc-finite・thm-mc-riesz・thm-mc-dominated の結論が、仮定を 1 つ外すと崩れることを、ex-mc-four の列で示す。どの行も、列は表の「満たす」の収束をし、「成り立たない」の収束をしない。

外す条件列満たす成り立たない
$\mu(X)<\infty$(thm-mc-finite の 1)1. 水平方向に逃げるほとんどいたるところ収束測度収束・ほとんど一様収束
$\mu(X)<\infty$(thm-mc-finite の 2)2. 横に広がる本質的一様収束$L^1$ 収束
部分列に移ること(thm-mc-riesz)4. 走り書き測度収束・$L^1$ 収束ほとんどいたるところ収束
優関数(thm-mc-dominated)3. 縦に伸びる$\mu(X)<\infty$ でほとんど一様収束・測度収束$L^1$ 収束
$\mu(X)<\infty$(thm-mc-subsequence の 3 ⇒ 1)1. 水平方向に逃げるどの部分列もほとんどいたるところ収束測度収束
反例:表の各行の確かめ

どの行も、列の収束と不収束は ex-mc-table-check で確かめた。外した条件が本当に破れていることを確かめる。

確かめを開く

1 行目と 5 行目:$\mathbb{R}$ の Lebesgue 測度は無限である。測度が有限という仮定だけが欠けている(列は可測で、極限は各点で存在する)。

2 行目:同じく $\mathbb{R}$ の測度は無限である。測度が有限なら本質的一様収束は $L^1$ 収束を導くので(thm-mc-finite の 2)、欠けているのは有限性だけである。

3 行目:測度は有限で、列は測度収束しており、thm-mc-riesz の仮定はすべて満たされる。結論は「部分列」についてのものであり、列全体については成り立たない(thm-mc-riesz の後の段落で述べた部分列は $0$ にほとんどいたるところ収束する)。

4 行目:測度は有限で、列は測度収束する。$g$ が $\int g\,d\mu<\infty$ を満たし、すべての $n$ でほとんどいたるところ $f_n\le g$ なら、$(1/(n+1),1/n)$ の上でほとんどいたるところ $g\ge n$ なので $\int_0^1g\ge\sum_n\frac{n}{n(n+1)}=\sum_n\frac1{n+1}=\infty$ となり、矛盾する。よって欠けているのは優関数だけである。$\square$

補足

文献

ほとんどいたるところ収束・測度収束・$L^p$ 収束の定義と、有限測度でのほとんどいたるところ収束から測度収束への含意、Riesz の部分列定理、$L^p$ 収束から測度収束への含意、無限測度での反例は Bass24 Definition 10.1・Proposition 10.2・Example 10.3(pp. 83–84)、Lemma 10.4・Proposition 10.5(p. 85)にある。同書 Example 10.6・10.7(pp. 85–86)は縦に伸びる山と、円周上で弧が回り続ける走り書きの列の変形を挙げている。7 種類の収束の一覧と 4 つの典型的な列、極限の一意性は Tao11 §1.5(pp. 114–130)、とくに Examples 1.5.2–1.5.5(p. 118)、Proposition 1.5.7(p. 120)、Theorem 1.5.9(p. 123)にある。この記事の prop-mc-unique・thm-mc-cauchy・prop-mc-metric・thm-mc-dominated の証明は、Riesz の部分列定理を軸に独自に組み立てた。

確率論では、確率空間が有限測度なので thm-mc-finite がそのまま使え、概収束 ⇒ 確率収束、$L^p$ 収束 ⇒ 確率収束 となる。さらに確率変数の分布だけを見る分布収束が加わり、確率収束はそれより強い。これらは 確率変数の収束 で扱う。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する