GAGA(Géométrie algébrique et géométrie analytique、Serre の GAGA)とは、複素数体上の射影的スキーム $X$ について、解析化関手 $\mathcal{F}\mapsto\mathcal{F}^{an}$ が $X$ 上の連接層の圏から $X^{an}$ 上の連接解析層の圏への圏同値であり、比較写像 $H^q(X,\mathcal{F})\to H^q(X^{an},\mathcal{F}^{an})$ がすべての $q$ で同型になるという Serre の定理である。代数幾何と複素解析幾何を橋渡しし、Hodge 理論や de Rham の定理を代数多様体に適用する根拠になる。系として射影空間の閉解析的部分空間は代数的である(Chow の定理)。固有スキームにも拡張されるが、アフィン直線では破れる。
前提知識: スキーム, 連接層, 層コホモロジー, 複素多様体, 複素解析空間, 射影空間, Stein空間
複素数体 $\mathbb{C}$ 上の代数多様体は、多項式で定義される対象でありながら、複素数の位相を使って複素解析空間(非特異なら複素多様体)とも見なせる。前者では多項式・有理関数、Zariski位相、代数的な連接層とその層コホモロジーを使い、後者では正則関数、通常の位相、連接解析層を使う。2 つの世界は明らかに違う。アフィン直線 $\mathbb{A}^1$ の大域的な代数的関数は多項式だけだが、解析的には $e^{t}$ がある。それにもかかわらず、空間が射影的(より一般に固有)ならば、連接層とそのコホモロジーに関する限り 2 つの世界は完全に一致する。これが Serre の GAGA(Géométrie algébrique et géométrie analytique、Ser56)である。GAGA は、Hodge理論や Chern類、de Rhamの定理のような解析的・位相的な道具で代数幾何の量を計算する根拠であり、「射影空間の閉解析的部分空間は代数的である」という Chow の定理を系として含む。
まず、スキームから解析空間を作る解析化関手を述べる。複素解析空間は、局所的に、$\mathbb{C}^n$ の開集合 $D$ 上の正則関数の層 $\mathcal{O}_D$ と有限個の正則関数 $f_1,\dots,f_k$ について、零点集合 $V(f_1,\dots,f_k)\subset D$ に構造層 $\mathcal{O}_D/(f_1,\dots,f_k)$ を制限したものと同型な、$\mathbb{C}$ 代数の局所環付き空間である。連接解析層とは、複素解析空間上の $\mathcal{O}$ 加群で、局所的に $\mathcal{O}^p\to\mathcal{O}^q$ の余核として書けるものをいう(Oka の連接定理により $\mathcal{O}$ 自身が連接であり、連接解析層の核・余核・拡大は連接である。GR84)。
$X$ を $\mathbb{C}$ 上局所有限型のスキームとする。$X$ に付随する複素解析空間 $X^{an}$ を次のように定める。
$X^{an}$ は普遍性で特徴づけられる:任意の複素解析空間 $S$ について、$\mathbb{C}$ 上の局所環付き空間の射 $S\to X$ は解析空間の射 $S\to X^{an}$ と 1 対 1 に対応する(アフィンの場合、$\mathbb{C}$ 代数の準同型 $A\to\mathcal{O}(S)$ は $I$ を零化する正則関数の組 $(s_1,\dots,s_n)$、すなわち正則写像 $S\to V(I)$ である。SGA1 Exposé XII, §1)。したがって $X\mapsto X^{an}$ は関手的でファイバー積と両立し、$(X\times_SY)^{an}=X^{an}\times_{S^{an}}Y^{an}$ である。$\mathbb{P}^n$ の解析化は複素射影空間 $\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$、射影的スキーム $X\subset\mathbb{P}^n$ の解析化はその閉解析的部分空間であり、$X$ が滑らかなら $X^{an}$ は複素多様体である。
解析化のよい性質はすべて、次の局所環の比較に帰着する。
主張は局所的なので $X=\operatorname{Spec}\mathbb{C}[z_1,\dots,z_n]/I$、$x=0$ としてよい。$R=\mathbb{C}[z]_{(z_1,\dots,z_n)}$、$R^{an}=\mathbb{C}\{z_1,\dots,z_n\}$(収束冪級数環)とおくと $A:=\mathcal{O}_{X,x}=R/IR$、$B:=\mathcal{O}_{X^{an},x}=R^{an}/IR^{an}$ である。$R$、$R^{an}$ はいずれもNoether環で、極大イデアル $(z_1,\dots,z_n)$ に関する完備化は形式的冪級数環 $\mathbb{C}[\![z_1,\dots,z_n]\!]$ である($R^{an}$ が Noether であることと完備化の計算は GR84 第 2 章)。Noether 局所環の完備化は完全関手なので、$\widehat{A}=\mathbb{C}[\![z]\!]/I\mathbb{C}[\![z]\!]=\widehat{B}$ であり、この同一視は $A\to B$ と両立する。
$B$ が $A$ 上平坦(平坦加群)であることを示す。$M'\subset M$ を有限生成 $A$ 加群(有限生成加群)の包含とし、$K$ を $M'\otimes_AB\to M\otimes_AB$ の核とする。$\widehat{B}$ は Noether 局所環 $B$ の完備化なので $B$ 上忠実平坦である。$\widehat{B}$ を $B$ 上でテンソルすると、$\widehat{B}$ の平坦性により $K\otimes_B\widehat{B}$ は $M'\otimes_A\widehat{B}\to M\otimes_A\widehat{B}$ の核になる。ところが $\widehat{B}=\widehat{A}$ は $A$ 上平坦だから、この写像は単射であり、$K\otimes_B\widehat{B}=0$ である。忠実平坦性により $K=0$ を得る。有限生成加群の包含に対する単射性で平坦性は判定できるので、$B$ は $A$ 上平坦である。さらに $A\to B$ は局所準同型($\mathfrak{m}_AB\subset\mathfrak{m}_B$。ここでは実際に等号が成り立つ)なので、Noether 局所環の間の平坦な局所準同型は忠実平坦である。
$X$ を $\mathbb{C}$ 上局所有限型のスキームとする。
$\phi\colon X^{an}\to X$ は連続写像なので、層コホモロジーの関手性から $H^q(X,\mathcal{F})\to H^q(X^{an},\phi^{-1}\mathcal{F})$ があり、層の射 $\phi^{-1}\mathcal{F}\to\mathcal{F}^{an}$ と合成して自然な準同型
$$
\varepsilon^q\colon H^q(X,\mathcal{F})\longrightarrow H^q(X^{an},\mathcal{F}^{an})
$$
を得る。これを比較写像という。$q=0$ では、代数的な切断を正則な切断と見る写像である。
$X$ を $\mathbb{C}$ 上の射影的スキームとする。
1、2、3 はそれぞれ Ser56 の Théorème 1、2、3 である(Har77 付録 B、Theorem B.2.1 も参照)。圏同値が完全であることは prop-gaga-exact による。本記事では、射影空間上の $\mathcal{O}(k)$ について 1 を完全に証明し(thm-gaga-projective-space)、一般の連接層への帰着と 2、3 の証明の筋を rem-gaga-reduction に述べる。
射影空間 $\mathbb{P}^n=\operatorname{Proj}\mathbb{C}[z_0,\dots,z_n]$ 上の可逆層 $\mathcal{O}(k)$ について、代数的なコホモロジーは Har77 III.5.1 で計算されている:
$$
H^0(\mathbb{P}^n,\mathcal{O}(k))=\mathbb{C}[z_0,\dots,z_n]_k,\qquad H^q(\mathbb{P}^n,\mathcal{O}(k))=0\ (0< q< n),\qquad H^n(\mathbb{P}^n,\mathcal{O}(k))=\bigoplus_{\alpha}\mathbb{C}z^{\alpha}
$$
ここで $\mathbb{C}[z]_k$ は $k$ 次斉次多項式の空間($k<0$ なら $0$)、最後の直和は $\alpha=(\alpha_0,\dots,\alpha_n)\in\mathbb{Z}^{n+1}$ ですべての $\alpha_i<0$ かつ $\sum_i\alpha_i=k$ となるものを走る($k>-n-1$ なら $0$)。解析的な側で同じ結果が成り立つことが、GAGA の出発点である。
任意の整数 $k$ と $q\ge0$ について、比較写像 $\varepsilon^q\colon H^q(\mathbb{P}^n,\mathcal{O}(k))\to H^q(\mathbb{P}^n(\mathbb{C}),\mathcal{O}(k)^{an})$ は同型である。特に $H^0(\mathbb{P}^n(\mathbb{C}),\mathcal{O}(k)^{an})$ は $k$ 次斉次多項式全体に等しく、$H^q(\mathbb{P}^n(\mathbb{C}),\mathcal{O}(k)^{an})=0$($0< q< n$)である。
$\pi\colon\mathbb{C}^{n+1}-\{0\}\to\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ を商写像、$U_i=\{z_i\ne0\}$($0\le i\le n$)を標準開被覆とする。$\{0,\dots,n\}$ の空でない部分集合 $I$ に対し $U_I=\bigcap_{i\in I}U_i$ とおくと $\pi^{-1}(U_I)=\{z\in\mathbb{C}^{n+1}\mid z_i\ne0\ (i\in I)\}\cong(\mathbb{C}^{*})^{|I|}\times\mathbb{C}^{n+1-|I|}$ である。
第 1 段(Čech 複体への帰着)。$\mathcal{O}(k)^{an}$ の $U_I$ 上の切断は、$\pi^{-1}(U_I)$ 上の正則関数 $f$ で $k$ 次斉次($f(\lambda z)=\lambda^kf(z)$、$\lambda\in\mathbb{C}^{*}$)なものと同一視される(代数的な側では $\mathbb{C}[z_0,\dots,z_n,z_i^{-1}\,(i\in I)]$ の $k$ 次斉次元、Har77 III.5.1 の証明と同じ同一視)。各 $U_I$ は($i_0\in I$ を固定し、アフィン座標 $w_j=z_j/z_{i_0}$ で見ると)$(\mathbb{C}^{*})^{|I|-1}\times\mathbb{C}^{n+1-|I|}$ と同型なStein空間であり、連接解析層のコホモロジーは Stein 空間上で正の次数で消える(Cartan の定理 B。言明は Stein空間 の記事、証明は GuR65 第 VIII 章)。したがって Leray の定理(Lerayの定理、Har77 III.4.5 の解析版、GR84)により $H^q(\mathbb{P}^n(\mathbb{C}),\mathcal{O}(k)^{an})$ は被覆 $\{U_i\}$ に関するČechコホモロジーで計算でき、代数的な側も同じ被覆の Čech 複体で計算できる(Har77 III.4.5)。比較写像は、代数的な Čech 複体 $C^{\bullet}_{alg}$ から解析的な Čech 複体 $C^{\bullet}_{an}$ への包含(Laurent 多項式を正則関数と見る)が誘導する写像である。
第 2 段(Laurent 展開)。$\pi^{-1}(U_I)$ は Reinhardt領域なので、その上の正則関数 $f$ は一意的な Laurent展開
$$
f=\sum_{\alpha\in\mathbb{Z}^{n+1}}a_{\alpha}z^{\alpha},\qquad a_{\alpha}=0\ \text{unless }\alpha_i\ge0\ (i\notin I)
$$
をもち、この級数は $\pi^{-1}(U_I)$ のコンパクト集合上で絶対一様収束する(多変数の Laurent 展開、GuR65 第 I 章)。$f$ が $k$ 次斉次であることは、$|\alpha|:=\sum_i\alpha_i\ne k$ なら $a_{\alpha}=0$ であることと同値である。各 $\alpha$ に対し負の成分の集合 $N(\alpha)=\{i\mid\alpha_i<0\}$ を対応させる。$a_{\alpha}\ne0$ なら $N(\alpha)\subset I$ である。部分集合 $N\subset\{0,\dots,n\}$ を固定し、$f$ の展開のうち $N(\alpha)=N$ の項だけを集めた部分和を $P_Nf$ とおく。絶対一様収束する級数の部分和は同じ集合上で絶対一様収束するので、$P_Nf$ は再び $\pi^{-1}(U_I)$ 上の $k$ 次斉次な正則関数であり、$f=\sum_NP_Nf$ は有限和($N$ は $2^{n+1}$ 通り)である。
Čech 複体の微分は、$f_I$ を $U_{I\cup\{j\}}$ に制限して符号をつけて加えるものであり、Laurent 係数を変えない。よって $P_N$ は微分と可換で、
$$
C^{\bullet}_{an}=\bigoplus_{N\subset\{0,\dots,n\}}C^{\bullet}_{an,(N)},\qquad C^{\bullet}_{alg}=\bigoplus_{N}C^{\bullet}_{alg,(N)}
$$
と有限個の部分複体の直和に分解し、包含はこの分解を保つ。ここで $C^p_{(N)}$ は、$|I|=p+1$、$I\supset N$ なる $I$ ごとに「係数が $N(\alpha)=N$ の $\alpha$ にだけ台をもつ $k$ 次斉次 Laurent 級数(代数的な側では Laurent 多項式)」を成分にもつ族 $(f_I)$ の空間である。$N$ ごとに包含 $C^{\bullet}_{alg,(N)}\to C^{\bullet}_{an,(N)}$ が擬同型であることを示せばよい。
第 3 段($N=\emptyset$)。$f_I$ の展開はすべての成分が非負の冪級数で、$\pi^{-1}(U_I)$ 上で収束する。$k$ 次斉次だから、現れる $\alpha$ は $\alpha_i\ge0$、$|\alpha|=k$ をみたす有限個に限られ、$f_I$ は $k$ 次斉次多項式である。ゆえに $C^{\bullet}_{an,(\emptyset)}=C^{\bullet}_{alg,(\emptyset)}=\mathbb{C}[z]_k\otimes_{\mathbb{C}}C^{\bullet}(\Delta^n)$ である。ここで $C^{\bullet}(\Delta^n)$ は $n$ 単体 $\Delta^n$(標準単体)の(全部の空でない面を使う)単体的コチェイン複体で、そのコホモロジーは $H^0=\mathbb{C}$(定数コチェイン)、$H^p=0$($p>0$)である。したがって両者のコホモロジーは次数 $0$ で $\mathbb{C}[z]_k$、正の次数で $0$ であり、包含は恒等写像である。
第 4 段($\emptyset\ne N\ne\{0,\dots,n\}$)。$j\notin N$ を 1 つ固定する。$I\not\ni j$ に対し、$f_{I\cup\{j\}}$ の Laurent 展開は $z_j$ について非負冪しか含まないので、$\pi^{-1}(U_I)$ 上でも絶対一様収束する。実際、$\pi^{-1}(U_I)$ のコンパクト集合 $K$ に対し、$K$ 上の $|z_j|$ の上界 $R>0$ をとり、$K$ の各点の $z_j$ 成分を絶対値 $R$ の値に置き換えた集合を $K'$ とすると、$K'$ は $\pi^{-1}(U_{I\cup\{j\}})$ のコンパクト集合で、$\alpha_j\ge0$ より $K$ 上で $\sum_{\alpha}|a_{\alpha}||z^{\alpha}|\le\sup_{K'}\sum_{\alpha}|a_{\alpha}||z^{\alpha}|<\infty$ である。こうして $f_{I\cup\{j\}}$ は $U_I$ 上の切断に一意的に延び(一意性は $\pi^{-1}(U_{I\cup\{j\}})$ が $\pi^{-1}(U_I)$ で稠密なことによる)、代数的な側でも Laurent 多項式は $z_j^{-1}$ を含まないので同じ延長がある。そこで
$$
h\colon C^{p}_{(N)}\to C^{p-1}_{(N)},\qquad (hf)_{I}=(-1)^{\operatorname{pos}(j,I\cup\{j\})}\,f_{I\cup\{j\}}\ (j\notin I),\qquad (hf)_I=0\ (j\in I)
$$
と定める($\operatorname{pos}$ は $j$ の位置)。$h$ は Laurent 係数を定数倍するだけなので、代数的な側と解析的な側の両方で定義され、包含と可換である。$N\ne\{0,\dots,n\}$ なので $N\subset I$ をみたす $I$ は $I\setminus N$ を走らせれば $\{0,\dots,n\}\setminus N$ の(空を含む)部分集合と 1 対 1 に対応し、$C^{\bullet}_{(N)}$ は $\{0,\dots,n\}\setminus N$ 上の単体の添加コチェイン複体(空集合の面も含めたもの)を次数をずらして係数をつけたものである。この複体では、$j$ に関する上の $h$ が $dh+hd=\mathrm{id}$ をみたす(単体的コホモロジーの標準的な錐の構成、Har77 III.5.1 の証明と同じ計算)。したがって $C^{\bullet}_{an,(N)}$ と $C^{\bullet}_{alg,(N)}$ はともに非輪状で、包含は擬同型である。
第 5 段($N=\{0,\dots,n\}$)。$N\subset I$ をみたす $I$ は $I=\{0,\dots,n\}$ だけなので、$C^p_{(N)}$ は $p=n$ 以外で $0$ であり、$C^n_{(N)}$ は $(\mathbb{C}^{*})^{n+1}$ 上の Laurent 級数で、すべての $\alpha_i<0$、$|\alpha|=k$ をみたす項だけからなるものの空間である。そのような $\alpha$ は有限個($k\le-n-1$ のとき $\binom{-k-1}{n}$ 個、それ以外は $0$ 個)なので、この空間は代数的な側の $\bigoplus_{\alpha}\mathbb{C}z^{\alpha}$ に一致し、微分はすべて $0$ である。よって次数 $n$ で両者のコホモロジーは一致し、包含は同型である。
第 3 段から第 5 段により、各 $N$ について包含は擬同型であり、有限直和をとって $\varepsilon^q$ は全ての $q$ で同型である。特に $H^0$ は $k$ 次斉次多項式全体、$H^q=0$($0< q< n$)である。
$H^0$ の主張は Hartogs の拡張定理から直接も分かる。$\mathcal{O}(k)^{an}$ の大域切断 $s$ は $\mathbb{C}^{n+1}-\{0\}$ 上の $k$ 次斉次正則関数 $f$ を与える。$n\ge1$ なら $\mathbb{C}^{n+1}-\{0\}$ の正則関数は原点をこえて $\mathbb{C}^{n+1}$ 全体に延びる(Hartogsの拡張定理、GuR65 第 I 章)。$f$ の原点での冪級数展開を斉次成分に分けると、斉次性から $k$ 次成分以外は $0$ であり、$f$ は $k$ 次斉次多項式である。$k<0$ なら $f=0$(原点で正則な斉次負次数の関数は $0$)である。この計算は、$k=0$ の場合として、Liouvilleの定理(複素解析)の高次元版にあたる「$\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ 上の正則関数は定数である」を含む。
thm-gaga-main の証明は Ser56 §12–§16 にあり、次の 3 段からなる。
$Z$ を定めるイデアル層 $\mathcal{I}\subset\mathcal{O}_{X^{an}}$ は、閉解析的部分空間の定義により局所有限生成であり、Oka の定理により連接である。thm-gaga-main の 3 により $\mathcal{I}\cong\mathcal{J}^{an}$ となる連接層 $\mathcal{J}$ があり、2 により包含 $\mathcal{J}^{an}\cong\mathcal{I}\hookrightarrow\mathcal{O}_{X^{an}}=\mathcal{O}_X^{an}$ は連接層の射 $u\colon\mathcal{J}\to\mathcal{O}_X$ の解析化である。$(\ker u)^{an}=\ker(u^{an})=0$(prop-gaga-exact の 1)なので、同 3 により $\ker u=0$、すなわち $\mathcal{J}$ は $\mathcal{O}_X$ のイデアル層である。$Y=V(\mathcal{J})$ とおくと、$(\mathcal{O}_X/\mathcal{J})^{an}=\mathcal{O}_{X^{an}}/\mathcal{J}^{an}=\mathcal{O}_{X^{an}}/\mathcal{I}$ なので $Y^{an}=Z$ である。
一意性:$Y_1,Y_2$ が $Y_1^{an}=Y_2^{an}=Z$ をみたすとし、対応するイデアル層を $\mathcal{J}_1,\mathcal{J}_2$ とする。$\mathcal{J}_1^{an}=\mathcal{J}_2^{an}=\mathcal{I}$ は $\mathcal{O}_{X^{an}}$ の同じ部分層なので、恒等写像 $\mathcal{J}_1^{an}\to\mathcal{J}_2^{an}$ は包含と両立する。thm-gaga-main の 2 により、これはある $v\colon\mathcal{J}_1\to\mathcal{J}_2$ の解析化で、合成 $\mathcal{J}_1\xrightarrow{v}\mathcal{J}_2\hookrightarrow\mathcal{O}_X$ と包含 $\mathcal{J}_1\hookrightarrow\mathcal{O}_X$ は解析化が一致するから、再び 2(忠実性)により一致する。よって $\mathcal{J}_1\subset\mathcal{J}_2$ であり、対称に $\mathcal{J}_2\subset\mathcal{J}_1$ である。
$\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ の閉解析的部分集合 $Z$(局所的に有限個の正則関数の共通零点集合)は、$Z$ 上で消える正則関数の芽のなすイデアル層が連接である(Cartan の連接定理、GR84 第 4 章)ので、被約な閉解析的部分空間の台である。よって$X=\mathbb{P}^n$ に上を適用して $Z=Y^{an}$、すなわち $Z$ は斉次多項式の共通零点集合である。
$X,Y$ を $\mathbb{C}$ 上の射影的スキームとする。解析化 $f\mapsto f^{an}$ は、スキームの射 $X\to Y$ の集合から解析空間の射 $X^{an}\to Y^{an}$ の集合への全単射である。特に、射影多様体の間の正則写像はすべて代数的である。
$Y\subset\mathbb{P}^m$ を閉埋め込みとする。まず $Y=\mathbb{P}^m$ の場合を示す。スキームの射 $f\colon X\to\mathbb{P}^m$ は、可逆層 $\mathcal{L}=f^{*}\mathcal{O}(1)$ と、$\mathcal{L}$ を生成する大域切断 $s_i=f^{*}z_i$($0\le i\le m$)の組と、同型を除いて 1 対 1 に対応する(Har77 II.7.1)。解析的にも同様に、正則写像 $h\colon X^{an}\to\mathbb{P}^m(\mathbb{C})$ は、正則直線束 $L=h^{*}\mathcal{O}(1)^{an}$ と、$L$ を生成する正則切断 $t_i=h^{*}z_i$ の組と 1 対 1 に対応し、この対応は解析化と両立する。
全射性:$h$ が与えられたとき、$L$ は連接解析層なので thm-gaga-main の 3 により $L\cong\mathcal{L}^{an}$ となる可逆層 $\mathcal{L}$ があり($\mathcal{L}$ が階数 1 の局所自由層であることは、閉点での茎について prop-gaga-flat の忠実平坦性から従い、局所自由な点の集合が開集合で閉点をすべて含むことから全体で成り立つ)、1 の $q=0$ の場合により $t_i=s_i^{an}$ となる $s_i\in H^0(X,\mathcal{L})$ がある。$\mathcal{O}_X^{m+1}\xrightarrow{(s_i)}\mathcal{L}$ の余核は解析化すると $0$ なので prop-gaga-exact の 3 により $0$ であり、$s_0,\dots,s_m$ は $\mathcal{L}$ を生成する。よって $(\mathcal{L},s_i)$ が定める $f\colon X\to\mathbb{P}^m$ は $f^{an}=h$ をみたす。
単射性:$f^{an}=g^{an}$ なら、$(f^{*}\mathcal{O}(1),f^{*}z_i)$ と $(g^{*}\mathcal{O}(1),g^{*}z_i)$ の解析化は切断込みで同型である。thm-gaga-main の 2 により、この同型は切断と両立する代数的な同型の解析化なので、Har77 II.7.1 の一意性から $f=g$ である。
一般の $Y$:$h\colon X^{an}\to Y^{an}\subset\mathbb{P}^m(\mathbb{C})$ に対し、上で得た $f\colon X\to\mathbb{P}^m$ をとる。閉部分スキーム $f^{-1}(Y)\subset X$ の解析化は $h^{-1}(Y^{an})=X^{an}$ であり、cor-gaga-chow の一意性から $f^{-1}(Y)=X$、すなわち $f$ は $Y$ を経由する。単射性は $\mathbb{P}^m$ への合成で分かる。
射影的スキーム $X$ について、GAGA から次が従う。
$X$ を $\mathbb{C}$ 上の固有なスキームとする。thm-gaga-main の 1、2、3 はそのまま成り立つ。より一般に、$\mathbb{C}$ 上局所有限型のスキームの固有な射(固有射)$f\colon X\to S$ と $X$ 上の連接層 $\mathcal{F}$ について、自然な射 $(R^qf_*\mathcal{F})^{an}\to R^qf^{an}_*\mathcal{F}^{an}$ は同型であり、$f^{an}$ は固有な正則写像である。
SGA1 Exposé XII, §4。射影的な場合の Serre の証明を、Chowの補題(固有射を射影的双有理射で覆う。Har77 II.4 演習 4.10)と Noether帰納法で固有の場合に広げる。相対版(底 $S$ が解析空間で $f$ が射影的な場合)は Grauert–Remmert の比較定理として知られ、Grothendieck の de Rham コホモロジーの比較定理の証明に使われる。本記事ではこれらを引用するにとどめる。
$X=\mathbb{A}^1=\operatorname{Spec}\mathbb{C}[t]$ とする。$X^{an}=\mathbb{C}$ であり、thm-gaga-main の 3 つの主張はすべて破れる。
cor-gaga-chow は「射影空間の中の」閉解析的部分空間についての主張であり、コンパクト複素多様体が一般に代数的であることは意味しない。$\Lambda\subset\mathbb{C}^2$ を一般の位置にある階数 4 の格子とすると、複素トーラス $T=\mathbb{C}^2/\Lambda$ 上の有理型関数は定数だけである(GH78 第 2 章)。$T$ はコンパクト複素多様体だが、$\mathbb{C}$ 上のスキームの解析化ではない($T=X^{an}$ なら $X$ は連結で滑らかな 2 次元の代数多様体になり、その非定数有理関数が $T$ 上の非定数有理型関数を与える)。GAGA が同一視するのは「射影的(固有)な代数多様体の解析化」の上の連接層であって、解析空間一般ではない。
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