曲面積

同義語:曲面の面積表面積surface area

概要

曲面積(surface area)とは、媒介変数表示 $p\colon W\to\mathbb{R}^N$($W\subset\mathbb{R}^2$)された曲面の面積を、接ベクトル $p_u,p_v$ の張る平行四辺形の面積 $\sqrt{EG-F^2}$($\mathbb{R}^3$ では $|p_u\times p_v|$)の積分 $\iint_W\sqrt{EG-F^2}\,du\,dv$ として定めたものである。この値は媒介変数の取り替えによらず、グラフ $z=f(u,v)$ では $\iint\sqrt{1+f_u^2+f_v^2}$、回転面では $2\pi\int y\sqrt{x'^2+y'^2}\,dt$ になり、球面 $4\pi r^2$ などが計算できる。曲線の長さと違い、内接多面体の面積の極限では定義できない(Schwarz の提灯)。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ベクトル積, Jacobi行列, Riemann積分, 媒介変数表示と曲線の長さ

曲面積(surface area)とは、空間の中の曲がった面の面積のことである。平面図形の面積や曲線の長さと違い、曲面の面積は「曲面を細かい平面片で近似した面積の極限」として素朴に定義しようとすると失敗する。そこで、曲面を 2 つの媒介変数 $(u,v)$ で $p(u,v)$ と表し、各点の接平面の上の小さな平行四辺形の面積 $\lvert p_u\times p_v\rvert\,du\,dv$ を足し合わせる積分
$$ \iint\lvert p_u\times p_v\rvert\,du\,dv=\iint\sqrt{EG-F^2}\,du\,dv $$
によって定義する($p_u,p_v$ は偏導関数、$E,F,G$ は下で定める第一基本量)。
この記事では、まず平行四辺形の面積を内積で表し、それをもとに曲面積を定義する。次に、この定義が媒介変数の選び方によらないことを証明し、グラフや回転面の面積の公式を導いて、球・帯・トーラスの面積を計算する。最後に、曲面に内接する多面体の面積が曲面積に近づかない例(Schwarz の提灯)を示し、定義が接平面を使う理由を説明する。

平行四辺形の面積

$\mathbb{R}^N$ には標準内積 $a\cdot b$ と長さ $\lvert a\rvert=\sqrt{a\cdot a}$ を考える。

平行四辺形の面積と Gram 行列式

$a,b\in\mathbb{R}^N$ とし、$P=\{sa+tb\mid 0\le s,t\le1\}$ を $a,b$ の張る平行四辺形とする。$P$ の面積(底辺 $\lvert a\rvert$ と、$b$ から直線 $\mathbb{R}a$ までの距離の積。$a=0$ なら $0$)は
$$ \sqrt{\lvert a\rvert^2\lvert b\rvert^2-(a\cdot b)^2}=\sqrt{\det\begin{pmatrix}a\cdot a&a\cdot b\\ a\cdot b&b\cdot b\end{pmatrix}} $$
に等しい。$N=3$ ならこれは $\lvert a\times b\rvert$ に等しい。

高さを直交射影で求める

$a=0$ なら両辺とも $0$ である。$a\ne0$ のとき、$b$ の直線 $\mathbb{R}a$ への直交射影は $\frac{a\cdot b}{\lvert a\rvert^2}a$ で、$b$ から直線までの距離 $h$ は $h^2=\bigl\lvert b-\frac{a\cdot b}{\lvert a\rvert^2}a\bigr\rvert^2=\lvert b\rvert^2-\frac{(a\cdot b)^2}{\lvert a\rvert^2}$ を満たす。よって面積の 2 乗は $\lvert a\rvert^2h^2=\lvert a\rvert^2\lvert b\rvert^2-(a\cdot b)^2$ である。$N=3$ の場合は Lagrange の恒等式 $\lvert a\times b\rvert^2=\lvert a\rvert^2\lvert b\rvert^2-(a\cdot b)^2$(ベクトル積 の命題「ベクトル積の基本性質」の 4)による。

右辺は Cauchy–Schwarz の不等式により $0$ 以上で、$0$ になるのは $a,b$ が 1 次従属のときに限る。行列 $(a\ b)$($a,b$ を列とする $N\times2$ 行列)を $L$ と書くと、Gram 行列は $L^{\top}L$ であり、面積は $\sqrt{\det(L^\top L)}$ である。$N=2$ なら $\det(L^\top L)=(\det L)^2$ で、面積は行列式の絶対値になる(1次変換と行列式:面積の拡大率)。

定義

媒介変数表示された曲面と面積要素

$W\subset\mathbb{R}^2$ を開集合、$N\ge2$、$p\colon W\to\mathbb{R}^N$ を $C^1$ 級写像とし、偏導関数を $p_u=\partial p/\partial u$、$p_v=\partial p/\partial v$ と書く。

  1. $E:=p_u\cdot p_u$、$F:=p_u\cdot p_v$、$G:=p_v\cdot p_v$ を $p$ の第一基本量といい、
    $$ J_p:=\sqrt{EG-F^2}=\sqrt{\det\bigl(Dp^{\top}Dp\bigr)} $$
    を面積要素の密度という($Dp$ は $p$ の Jacobi行列、$N\times2$ 行列)。$N=3$ なら $J_p=\lvert p_u\times p_v\rvert$ である。
  2. すべての点で $p_u,p_v$ が 1 次独立($J_p>0$)のとき、$p$ は正則であるという。

$J_p(u,v)\,\Delta u\,\Delta v$ は、点 $p(u,v)$ での接ベクトル $p_u\Delta u$ と $p_v\Delta v$ の張る平行四辺形の面積である(lem-sa-gram)。小さな長方形 $[u,u+\Delta u]\times[v,v+\Delta v]$ の像は、この平行四辺形でよく近似される。

曲面積

$p\colon W\to\mathbb{R}^N$ を def-sa-surface の $C^1$ 級写像とする。

  1. Jordan 可測なコンパクト集合 $S\subset W$ に対し、$A(p;S):=\displaystyle\iint_SJ_p(u,v)\,du\,dv$(Riemann 積分)とおく。
  2. $A(p;W):=\sup\{A(p;S)\mid S\subset W\ \text{は Jordan 可測なコンパクト集合}\}\in[0,\infty]$ とおく。
  3. $p$ が単射かつ正則なとき、$A(p;W)$ を曲面 $p(W)$ の曲面積(面積)という。

$J_p$ は連続なので $S$ 上で Riemann 積分できる。$J_p\ge0$ なので $A(p;S)$ は $S$ について単調であり、$W$ が開長方形 $(\alpha,\beta)\times(\gamma,\delta)$ なら、$W$ のコンパクト部分集合は $[\alpha+\varepsilon,\beta-\varepsilon]\times[\gamma+\varepsilon,\delta-\varepsilon]$ のどれかに含まれるので、$A(p;W)$ はこの閉長方形の上の積分の $\varepsilon\to0$ での極限(広義積分)に等しい。
平面の場合に定義が通常の面積と一致することを確かめておく。$p(u,v)=(u,v)$($N=2$)なら $E=G=1$、$F=0$ で $J_p=1$ となり、$A(p;S)$ は $S$ の面積(Jordan 測度)そのものである。

平らな曲面

$a,b,c\in\mathbb{R}^N$ とし、$p(u,v)=c+ua+vb$ とする。長方形 $S=[\alpha,\beta]\times[\gamma,\delta]$ に対し、$p(S)$ は $(\beta-\alpha)a$ と $(\delta-\gamma)b$ の張る平行四辺形を平行移動したもので、$A(p;S)$ はその面積に等しい。

面積要素が定数になる

$p_u=a$、$p_v=b$ は定数なので $J_p=\sqrt{\lvert a\rvert^2\lvert b\rvert^2-(a\cdot b)^2}$ も定数で、$A(p;S)=(\beta-\alpha)(\delta-\gamma)J_p$ である。$p(S)=p(\alpha,\gamma)+\{s(\beta-\alpha)a+t(\delta-\gamma)b\mid 0\le s,t\le1\}$ であり、lem-sa-gram を $(\beta-\alpha)a$、$(\delta-\gamma)b$ に使うと、その面積は $(\beta-\alpha)(\delta-\gamma)J_p$ である。

媒介変数のとり方によらないこと

同じ曲面を、$C^1$ 級の座標変換で移り合う別の媒介変数で表しても面積は変わらない。これが def-sa-area を曲面そのものの量とみなせる理由の一つである(一般に面積が像だけで決まることは rem-sa-hausdorff で述べる)。

媒介変数の取り替えによる不変性

$V,W\subset\mathbb{R}^2$ を開集合、$\varphi\colon V\to W$ を全単射な $C^1$ 級写像で、すべての点で $\det D\varphi\ne0$ を満たすものとし、$p\colon W\to\mathbb{R}^N$ を $C^1$ 級、$q:=p\circ\varphi$ とする。このとき

  1. $V$ 上で $J_q=(J_p\circ\varphi)\,\lvert\det D\varphi\rvert$ が成り立つ。
  2. Jordan 可測なコンパクト集合 $T\subset V$ について $\varphi(T)$ は Jordan 可測なコンパクト集合で、$A(q;T)=A(p;\varphi(T))$ である。
  3. $A(q;V)=A(p;W)$ である。
連鎖律と変数変換公式
  1. 連鎖律(Jacobi行列 の系「合成写像のJacobi行列」)により $Dq(x)=Dp(\varphi(x))\,D\varphi(x)$ であるから、$2\times2$ 行列として
    $$ Dq^{\top}Dq=D\varphi^{\top}\,\bigl(Dp^{\top}Dp\bigr)\!\circ\varphi\;D\varphi $$
    である。行列式の積の公式により $\det(Dq^\top Dq)=(\det D\varphi)^2\det\bigl((Dp^\top Dp)\circ\varphi\bigr)$ となり、両辺の平方根をとれば 1 を得る。
  2. $\varphi(T)$ がコンパクトで Jordan 可測であることは Leb26 Proposition 10.5.9(p. 126)による。$J_p$ は連続なので $\varphi(T)$ 上で Riemann 積分でき、重積分の変数変換公式(Jacobi行列 の定理「重積分の変数変換公式」)を $g=\varphi$、$S=T$、$f=J_p$ に使うと、1 により
    $$ A(p;\varphi(T))=\iint_{\varphi(T)}J_p=\iint_TJ_p(\varphi(x))\,\lvert\det D\varphi(x)\rvert\,dx=\iint_TJ_q=A(q;T) $$
    である。
  3. 逆関数定理(Jacobi行列 の定理「逆関数定理の言明」)により $\varphi^{-1}\colon W\to V$ も $C^1$ 級で $\det D\varphi^{-1}\ne0$ である。よって 2 を $\varphi$ と $\varphi^{-1}$ に使うと、$T\mapsto\varphi(T)$ は $V$ と $W$ の Jordan 可測なコンパクト部分集合の間の全単射で、$A(q;T)=A(p;\varphi(T))$ を保つ。両辺の上限をとって 3 を得る。

$p$ を $\mathbb{R}^N$ の合同変換 $x\mapsto Rx+c$($R$ は直交行列)と合成しても、$D(Rp+c)=R\,Dp$ で $R^\top R=I$ だから第一基本量は変わらず、面積も変わらない。すなわち曲面積は曲面の置き方によらない。

面積の公式

グラフの面積

$W\subset\mathbb{R}^2$ を開集合、$f\colon W\to\mathbb{R}$ を $C^1$ 級とし、$p(u,v)=(u,v,f(u,v))$ とする。$p$ は単射かつ正則で、
$$ J_p=\sqrt{1+f_u^2+f_v^2},\qquad A(p;W)=\sup_S\iint_S\sqrt{1+f_u^2+f_v^2}\,du\,dv $$
である(上限は $W$ の Jordan 可測なコンパクト集合 $S$ にわたる)。

第一基本量を計算する

最初の 2 成分が $(u,v)$ なので $p$ は単射である。$p_u=(1,0,f_u)$、$p_v=(0,1,f_v)$ より $E=1+f_u^2$、$F=f_uf_v$、$G=1+f_v^2$ で、
$$ EG-F^2=1+f_u^2+f_v^2+f_u^2f_v^2-f_u^2f_v^2=1+f_u^2+f_v^2\ge1 $$
である。よって $p$ は正則で、$J_p$ は式のとおりである。

$\sqrt{1+f_u^2+f_v^2}=1/\cos\gamma$ と書ける。ここで $\gamma$ は接平面の法線 $(-f_u,-f_v,1)$ と $z$ 軸のなす角である。接平面の小片を $uv$ 平面に正射影すると面積が $\cos\gamma$ 倍になる(正射影と面積)ことの逆である。

回転面の面積

$I=(\alpha,\beta)$($\alpha,\beta$ は実数)を有界な開区間、$t\mapsto(x(t),y(t))$ を $I$ 上の単射な $C^1$ 級の曲線で、$y>0$、$(x',y')\ne(0,0)$ を満たすものとする。これを $x$ 軸のまわりに回した面を
$$ p(t,\theta)=\bigl(x(t),\,y(t)\cos\theta,\,y(t)\sin\theta\bigr)\qquad\bigl((t,\theta)\in I\times(0,2\pi)\bigr) $$
と表すと、$p$ は単射かつ正則で、$J_p=y\sqrt{x'^2+y'^2}$、
$$ A\bigl(p;I\times(0,2\pi)\bigr)=2\pi\int_\alpha^\beta y(t)\sqrt{x'(t)^2+y'(t)^2}\,dt $$
(右辺は広義積分で、値は $\infty$ もありうる)である。

第一基本量が対角になる

$p(t,\theta)=p(t',\theta')$ なら第 1 成分と $y>0$ から $(x(t),y(t))=(x(t'),y(t'))$、よって $t=t'$ であり、$(\cos\theta,\sin\theta)=(\cos\theta',\sin\theta')$ と $\theta,\theta'\in(0,2\pi)$ から $\theta=\theta'$ である。$p_t=(x',y'\cos\theta,y'\sin\theta)$、$p_\theta=(0,-y\sin\theta,y\cos\theta)$ より $E=x'^2+y'^2$、$F=-yy'\cos\theta\sin\theta+yy'\sin\theta\cos\theta=0$、$G=y^2$ なので $J_p=y\sqrt{x'^2+y'^2}>0$ である。$W=I\times(0,2\pi)$ は開長方形なので、$A(p;W)$ は閉長方形 $[\alpha+\varepsilon,\beta-\varepsilon]\times[\varepsilon,2\pi-\varepsilon]$ 上の積分の極限である(def-sa-area の後の注意)。その積分は、連続関数の長方形上の積分を逐次積分で計算して(Fubiniの定理)$(2\pi-2\varepsilon)\int_{\alpha+\varepsilon}^{\beta-\varepsilon}y\sqrt{x'^2+y'^2}\,dt$ であり、$\varepsilon\to0$ で式を得る。

高校数学の 回転体の表面積 では、回転面の面積を円錐台の側面積の極限として定め、定理「媒介変数表示された曲線の回転面の面積」で同じ式を得ている。thm-sa-revolution により、その定め方は曲面積の定義と一致する。この面は回転面から子午線 1 本($\theta=0$ の曲線)を除いたものだが、曲線は面積をもたないので、除いても面積は変わらないとみなせる(rem-sa-hausdorff)。

球・帯・トーラス・放物面
  1. 球面:$p(\theta,\phi)=(r\sin\theta\cos\phi,\ r\sin\theta\sin\phi,\ r\cos\theta)$($0< \theta< \pi$、$0< \phi< 2\pi$)では $E=r^2$、$F=0$、$G=r^2\sin^2\theta$ で $J_p=r^2\sin\theta$ だから、面積は $\int_0^{2\pi}\int_0^\pi r^2\sin\theta\,d\theta\,d\phi=4\pi r^2$ である(球の体積と表面積)。
  2. 球の帯:$-r\le a< b\le r$ とし、thm-sa-revolution を $x(t)=t$、$y(t)=\sqrt{r^2-t^2}$($a< t< b$)に使う。$y'=-t/\sqrt{r^2-t^2}$ より $y\sqrt{1+y'^2}=r$ なので、面積は $2\pi r(b-a)$ であり、帯の幅 $b-a$ だけで決まる(Archimedesの帽子箱定理)。
  3. トーラス:$0< r< R$ とし、$x(t)=r\cos t$、$y(t)=R+r\sin t$($0< t< 2\pi$)を回すと $\sqrt{x'^2+y'^2}=r$ で、面積は $2\pi\int_0^{2\pi}(R+r\sin t)\,r\,dt=4\pi^2Rr$ である(Rud76 Example 10.47、pp. 285–286 にも同じ値がある)。
  4. 回転放物面:$z=x^2+y^2$ の $x^2+y^2< R^2$ の部分は、$x(t)=t^2$、$y(t)=t$($0< t< R$)を回した面(第 1 座標を高さとみる)で、面積は $2\pi\int_0^Rt\sqrt{1+4t^2}\,dt=\frac\pi6\bigl((1+4R^2)^{3/2}-1\bigr)$ である。

内接多面体の面積は曲面積に近づくとは限らない

曲線の長さは、曲線に内接する折れ線の長さの上限として定義でき、滑らかな曲線ではそれが $\int\lvert c'(t)\rvert\,dt$ に一致する(媒介変数表示と曲線の長さ の定義「内接折れ線の長さと曲線の長さ」)。曲面で同じことをしようとして、「曲面に内接し、面がどれも小さくなる多面体の面積の極限」を面積と定めることは、次の例のためにできない。

Schwarz の提灯

半径 $1$、高さ $1$ の円柱面 $Z=\{(x,y,z)\mid x^2+y^2=1,\ 0\le z\le1\}$ を考える。その曲面積は $2\pi$ である。整数 $m\ge2$、$n\ge1$ に対し、$Z$ 上の点
$$ P_{k,j}=\Bigl(\cos\frac{(2j+k)\pi}{m},\ \sin\frac{(2j+k)\pi}{m},\ \frac kn\Bigr)\qquad(0\le k\le n,\ j\in\mathbb{Z}) $$
を頂点とする $2mn$ 個の三角形 $P_{k,j}P_{k,j+1}P_{k+1,j}$、$P_{k+1,j}P_{k+1,j+1}P_{k,j+1}$($0\le k\le n-1$、$0\le j\le m-1$)のなす多面体の面 $L_{m,n}$ を考える。

  1. $L_{m,n}$ の三角形はすべて合同で、辺の長さはどれも $\frac{2\pi}m+\frac1n$ 以下である。
  2. $L_{m,n}$ の面積は
    $$ A_{m,n}=2m\sin\frac\pi m\sqrt{1+n^2\Bigl(1-\cos\frac\pi m\Bigr)^2} $$
    である。
  3. $m\to\infty$ とし、$n=n(m)$ について $n/m^2\to c\in[0,\infty)$ なら $A_{m,n}\to2\pi\sqrt{1+\pi^4c^2/4}$、$n/m^2\to\infty$ なら $A_{m,n}\to\infty$ である。特に $n=m$ なら $2\pi$、$n=m^3$ なら $\infty$ に近づく。
三角形の高さを計算する

$Z$ の面積は、thm-sa-revolution を $z$ 軸のまわりの回転として $x(t)=t$、$y(t)=1$($0< t< 1$)に使って $2\pi$ である(上下の円と継ぎ目の線分を除いた部分の面積。曲線を除いても面積は変わらないとみなす。rem-sa-hausdorff)。
1, 2.$P_{k,j}$ は高さ $k/n$ の円の上で角 $(2j+k)\pi/m$ にある。三角形 $P_{k,j}P_{k,j+1}P_{k+1,j}$ の底辺 $P_{k,j}P_{k,j+1}$ は高さ $k/n$ の水平な弦で、中心角 $2\pi/m$ に対する弦だから長さは $2\sin(\pi/m)$ である。その中点 $M$ は角 $\psi:=(2j+k+1)\pi/m$ の方向に原点から距離 $\cos(\pi/m)$ の位置(高さ $k/n$)にあり、頂点 $P_{k+1,j}$ は同じ角 $\psi$ の方向に距離 $1$、高さ $(k+1)/n$ にある。$e_\psi=(\cos\psi,\sin\psi,0)$、$e_z=(0,0,1)$ とおくと
$$ P_{k+1,j}-M=\Bigl(1-\cos\frac\pi m\Bigr)e_\psi+\frac1ne_z $$
であり、底辺の方向 $(-\sin\psi,\cos\psi,0)$ はこの両方と直交する。よって三角形の高さは $h=\sqrt{(1-\cos\frac\pi m)^2+\frac1{n^2}}$、面積は $\sin\frac\pi m\cdot h$ である。もう一方の型の三角形 $P_{k+1,j}P_{k+1,j+1}P_{k,j+1}$ も、底辺が高さ $(k+1)/n$ の同じ長さの弦で、頂点 $P_{k,j+1}$ が同じ角 $(2j+k+2)\pi/m$ の方向にあるので、同じ計算で合同である。三角形は $2mn$ 個だから $A_{m,n}=2mn\sin\frac\pi m\cdot h$ となり、2 の式を得る。辺は、底辺が $2\sin\frac\pi m\le\frac{2\pi}m$、残りの 2 辺が角の差 $\pi/m$ の 2 点を高さの差 $1/n$ で結ぶ線分で、水平方向の距離 $2\sin\frac\pi{2m}\le\frac\pi m$ と合わせて長さ $\sqrt{(2\sin\frac\pi{2m})^2+\frac1{n^2}}\le\frac\pi m+\frac1n$ である。これで 1 が示された。
3.$2m\sin\frac\pi m\to2\pi$ であり、$1-\cos x=2\sin^2\frac x2$ より $m^2(1-\cos\frac\pi m)=2m^2\sin^2\frac\pi{2m}\to\frac{\pi^2}2$ である。よって $n(1-\cos\frac\pi m)=\frac n{m^2}\cdot m^2(1-\cos\frac\pi m)$ は $n/m^2\to c$ なら $\frac{\pi^2c}{2}$ に、$n/m^2\to\infty$ なら $\infty$ に近づき、2 の式から 3 を得る。

$c$ を動かすと、極限の値として $2\pi$ 以上のすべての実数と $\infty$ が現れる。$n$ が $m^2$ より速く増えると、三角形の高さの方向が円柱の接平面からずれていき、三角形は円柱面に対してほぼ垂直に立って、蛇腹のように折りたたまれる。頂点を曲面の上にとって三角形を小さくするだけでは、多面体の面が曲面の接平面に近いことは保証されない。曲面積の定義(def-sa-area)が、内接多面体ではなく接平面の上の平行四辺形を使うのはこのためである。
内接多面体の面積の極限による曲面積の定義は Serret の教科書にあったもので、それが円柱でも成り立たないことを H. A. Schwarz が 1880 年 12 月の書簡で、G. Peano が 1882 年に独立に指摘した(GMP14 p. 1)。

測度論との関係

単射な $C^1$ 級写像 $p\colon W\to\mathbb{R}^N$ について、$A(p;W)$ は像 $p(W)$ の 2 次元 Hausdorff 測度 $\mathcal{H}^2(p(W))$ に等しい(Hausdorff測度と面積・余面積公式 の系「単射な場合の面積公式」を $W$ のコンパクト部分集合ごとに使う。この記事では証明しない)。$C^1$ 級曲線の像の $\mathcal{H}^2$ は $0$ なので、球面から半大円を除いても、回転面から子午線を除いても、$\mathcal{H}^2$ で測った面積は変わらない。この見方では曲面積は媒介変数と無関係に定まり、thm-sa-invariance はその一つの表れである。$k$ 次元の場合も、$p\colon W\to\mathbb{R}^N$($W\subset\mathbb{R}^k$)に対し $J_p=\sqrt{\det(Dp^\top Dp)}$ とおけば、thm-sa-invariance と同じ証明で $k$ 次元の面積(体積)が定まる。

仮定を外すと成り立たなくなること

外す条件反例成り立たなくなること
$p$ が単射球面を経度方向に 2 周する $p$($0< \phi< 4\pi$)$A(p;W)$ が像 $p(W)$ の面積に等しいこと
近似する面が接平面に近いことSchwarz の提灯 $L_{m,m^3}$内接多面体の面積が曲面積に近づくこと
反例:重なりを 2 回数える媒介変数表示

ex-sa-examples の 1 の球面の式で $\phi$ の範囲を $(0,4\pi)$ に広げた $p$ は正則だが単射でない。$J_p=r^2\sin\theta$ は変わらないので $A(p;W)=8\pi r^2$ となり、像(球面から 2 つの極を除いたもの。$\phi=2\pi$ の半大円も含む)の面積 $4\pi r^2$ の 2 倍になる。$A(p;W)$ は重なりを重複度だけ数える量であり、像の面積と一致させるには単射性が要る。

反例:内接多面体の面積が発散する

thm-sa-lantern で $n=m^3$ とすると、$L_{m,m^3}$ の頂点はすべて円柱面の上にあり、三角形の辺の長さは $0$ に近づくが、面積 $A_{m,m^3}$ は $\infty$ に発散する。曲面に内接する多面体の面積の極限は、近似の仕方によって $2\pi$ 以上の任意の値をとりうる。

関連項目

参考文献

[1]
Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1976, 10.46(面積要素、pp. 283–285)、Example 10.47(トーラスの面積、pp. 285–286)
[3]
Gabriele H. Greco, Sonia Mazzucchi, Enrico M. Pagani, Peano on definition of surface area, arXiv:1412.2691, 2014, §1(Serret の定義と Schwarz・Peano の反例、p. 1)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する