右完全関手(right exact functor)とは、アーベル圏の間の加法関手 $F$ で、短完全列 $0\to A'\to A\to A''\to0$ を完全列 $F(A')\to F(A)\to F(A'')\to0$ に送るもののことで、余核を保つこと、有限余極限を保つことと同値である。右随伴をもつ加法関手は右完全であり、加群のテンソル積、係数拡大、群の作用の余不変部分がその例だが、どれも単射を保つとは限らない。可換環 $R$ 上の加群の圏からアーベル群の圏への関手で、右完全かつ任意の直和を保つものは、$F(R)$ とのテンソル積に自然に同型である。失われた単射性は左導来関手で測られる。
右完全関手(right exact functor)とは、アーベル圏の間の加法関手で、短完全列 $0\to A'\to A\to A''\to0$ を送ったとき、少なくとも右側の $F(A')\to F(A)\to F(A'')\to0$ が完全になるものである。左端の $F(A')\to F(A)$ が単射になるとは限らない。典型例は加群のテンソル積 $M\otimes_R-$ であり、$\mathbb Z$ の $2$ 倍写像は単射だが、$\mathbb Z/2$ とテンソルすると零写像になる。
右完全性は「余核を保つ」と言い換えられ、圏論的には有限余極限を保つことと同じである。右随伴をもつ加法関手(つまり左随伴である関手)はすべて右完全であり、テンソル積・係数拡大・群の作用の余不変部分はこうして右完全になる。この記事ではこれらを証明したあと、主定理として、可換環上の加群の圏からアーベル群の圏への右完全関手で任意の直和を保つものは、テンソル積で表されることを証明する。
以下、$\mathcal A,\mathcal B$ はアーベル圏、$F\colon\mathcal A\to\mathcal B$ は 加法関手 とする。
$F$ が右完全であるとは、$\mathcal A$ の任意の短完全列 $0\to A'\to A\to A''\to0$ に対し、
$$
F(A')\longrightarrow F(A)\longrightarrow F(A'')\longrightarrow0
$$
が $\mathcal B$ の完全列になることをいう。
この定義は 完全関手 の記事の定義(左完全関手・右完全関手)、Wei94 Definition 1.6.6(p. 27)と同じである。左右の両方を満たすものが完全関手である。$\mathcal A$ の射を逆向きにした反対圏を $\mathcal A^{\mathrm{op}}$ と書くと、$F$ が右完全であることと、$F$ を $\mathcal A^{\mathrm{op}}\to\mathcal B^{\mathrm{op}}$ とみたものが左完全であることは同じである。反対圏では短完全列の矢印がすべて逆になり、「右端の全射」が「左端の単射」に変わるからである。
加法関手 $F\colon\mathcal A\to\mathcal B$ について、次は同値である。
2 ⇒ 1:短完全列は特に 2 の形の完全列である。
1 ⇒ 2:$u$ を像 $I=\operatorname{im}u$ を通して $u=\iota\circ p$($p\colon A\to I$ はエピ射、$\iota\colon I\to B$ はモノ射)と分解する。完全性より $\ker v=I$ で $v$ はエピ射なので、$0\to I\xrightarrow{\iota}B\xrightarrow{v}C\to0$ は短完全列である。また $0\to\ker u\to A\xrightarrow{p}I\to0$ も短完全列である。1 を二つの短完全列に使うと、$F(I)\xrightarrow{F(\iota)}F(B)\xrightarrow{F(v)}F(C)\to0$ は完全で、$F(p)$ はエピ射である。$F(u)=F(\iota)F(p)$ で $F(p)$ がエピ射なので $\operatorname{im}F(u)=\operatorname{im}F(\iota)=\ker F(v)$ となり、2 が従う。
2 ⇔ 3:有限余極限は始対象・二つの対象の余積・余等化子から作れる(左完全関手 の記事の命題(有限極限の判定)を反対圏で読んだもの)。アーベル圏では始対象は零対象、有限余積は有限直和であり、加法関手は零対象と有限直和を保つ(加法圏 の記事の命題(加法関手による双積の保存))。二つの射 $a,b\colon X\to Y$ の余等化子は $a-b$ の余核であり、$F(a-b)=F(a)-F(b)$ である。よって $F$ が有限余極限を保つことは、余核を保つことと同値である。余核 $v\colon B\to C$ を保つことは、$F(A)\to F(B)\to F(C)\to0$ が完全であることにほかならない。$\square$
右完全関手はモノ射を保つとは限らない。これが「右」の意味であり、失われた単射性を測るのが左導来関手である(後の節)。
右側が完全な列は、反変な Hom 関手で左側が完全な列に変わる。逆に、すべての対象への Hom で調べれば右側の完全性が判定できる。
$\mathcal A$ の列 $X\xrightarrow{a}X'\xrightarrow{b}X''\to0$ について、次は同値である。
1 ⇒ 2:$b$ はエピ射なので $h\circ b=0$ なら $h=0$ であり、$b^*$ は単射である。$ba=0$ から $a^*b^*=0$ である。$g\colon X'\to Y$ が $g\circ a=0$ を満たすとする。完全性より $b$ は $a$ の余核なので、$g=h\circ b$ となる $h\colon X''\to Y$ がある。よって $\ker a^*=\operatorname{im}b^*$ である。
2 ⇒ 1:$Y=X''$ とし $\mathrm{id}_{X''}$ に $a^*b^*=0$ を当てると $ba=0$ である。$b^*$ が単射であることは $b$ がエピ射であることを意味する。最後に $c\colon X'\to Y:=\operatorname{coker}a$ を余核の射とすると $ca=0$ なので、2 の完全性から $c=h\circ b$ となる $h$ がある。よって $\ker b\subset\ker c=\operatorname{im}a$ であり、$ba=0$ と合わせて $\ker b=\operatorname{im}a$ である。$\square$
$\mathcal A$ を加群の圏とし、$Y=N$ を固定すれば、1 ⇒ 2 は「$\operatorname{Hom}_R(-,N)$ は余核を核に変える」こと、すなわち反変関手として左完全であることを述べている。ただし右端 $\operatorname{Hom}(X',N)\to\operatorname{Hom}(X,N)$ が全射になるとは限らない(左完全関手 の記事の節「Hom 関手の左完全性」)。一方、分裂する短完全列はどの加法関手でも分裂する短完全列に写る(加法関手 の記事の命題(加法関手は分裂短完全列を保つ))。たとえば $0\to A\to B\to C\to0$ が $C$ 自由なアーベル群の短完全列なら、$C$ の基底の各元の逆像を一つずつ選んで切断 $C\to B$ が作れるので分裂し、$\operatorname{Hom}(-,G)$ も $-\otimes G$ もこの列を短完全列に送る。
加法関手 $F\colon\mathcal A\to\mathcal B$ が右随伴 $G\colon\mathcal B\to\mathcal A$ をもつ($\operatorname{Hom}_{\mathcal B}(F(X),Y)\cong\operatorname{Hom}_{\mathcal A}(X,G(Y))$ が $X,Y$ について自然な全単射である)ならば、$F$ は右完全である。
$A\xrightarrow{u}B\xrightarrow{v}C\to0$ を完全列とし、$Y$ を $\mathcal B$ の任意の対象とする。prop-rex-hom の 1 ⇒ 2 を対象 $G(Y)$ に使うと、
$$
0\to\operatorname{Hom}(C,G(Y))\to\operatorname{Hom}(B,G(Y))\to\operatorname{Hom}(A,G(Y))
$$
は完全である。随伴の全単射は $X$ について自然なので、この列は
$$
0\to\operatorname{Hom}(F(C),Y)\xrightarrow{F(v)^*}\operatorname{Hom}(F(B),Y)\xrightarrow{F(u)^*}\operatorname{Hom}(F(A),Y)
$$
と同型であり、これも完全である。$Y$ は任意なので、prop-rex-hom の 2 ⇒ 1 により $F(A)\to F(B)\to F(C)\to0$ は完全である。prop-rex-equiv により $F$ は右完全である。$\square$
左随伴は有限とは限らない余極限、たとえば無限直和も保つ(随伴関手 の記事の命題(随伴による保存))。この性質は主定理で使う。
$R$ を可換環、$M$ を $R$ 加群とする。$M\otimes_R-$ は右完全である(テンソル積 の記事の命題(テンソル積の右完全性))。これは $M\otimes_R-$ が $\operatorname{Hom}_R(M,-)$ の左随伴であることからも分かる(Wei94 Application 2.6.2・Proposition 2.6.3、pp. 52–53)。左完全でないことは、$0\to\mathbb Z\xrightarrow{2}\mathbb Z\to\mathbb Z/2\to0$ に $\mathbb Z/2\otimes_{\mathbb Z}-$ を施すと左端が零写像 $\mathbb Z/2\xrightarrow{0}\mathbb Z/2$ になることで分かる(テンソル積 の記事の例(反例:左完全性の破れ))。$M\otimes_R-$ が完全になる $M$ が 平坦加群 である。
可換環の準同型 $R\to S$ による係数拡大 $S\otimes_R-$ も、$S$ 加群を $R$ 加群とみる関手の左随伴なので(テンソル積 の記事の命題(係数拡大の普遍性))、thm-rex-adjoint により右完全である。
群 $\Gamma$ が作用するアーベル群($\Gamma$ 加群)$M$ に対し、$\gamma m-m$($\gamma\in\Gamma$、$m\in M$)が生成する部分群で割った商を $M_\Gamma$ と書き、余不変部分という。$\Gamma$ 加群の準同型 $M\to A$ で、$A$ への作用が自明なものは、ちょうど $\gamma m-m$ をすべて $0$ に送る準同型であり、$M_\Gamma\to A$ と一対一に対応する。この対応は $M$ と $A$ について自然なので、$M\mapsto M_\Gamma$ は「アーベル群に自明な作用を入れる関手」の左随伴であり、thm-rex-adjoint により右完全である(Wei94 Exercise 6.1.1、pp. 160–161)。
左完全でない例を挙げる。$\Gamma=\{1,\sigma\}$ を位数 $2$ の群とし、$\mathbb Z^-$ を $\sigma$ が $-1$ 倍で作用する $\mathbb Z$、$\mathbb Z$ を自明な作用とする。群環 $\mathbb Z[\Gamma]$ について
$$
0\to\mathbb Z^-\xrightarrow{\ 1\mapsto1-\sigma\ }\mathbb Z[\Gamma]\xrightarrow{\ \varepsilon\ }\mathbb Z\to0
$$
($\varepsilon(a+b\sigma)=a+b$)は $\Gamma$ 加群の短完全列である($\sigma(1-\sigma)=-(1-\sigma)$ なので左の写像は作用と両立する)。余不変部分をとると、$(\mathbb Z^-)_\Gamma=\mathbb Z/(\sigma\cdot1-1)=\mathbb Z/2$、$\mathbb Z[\Gamma]_\Gamma\cong\mathbb Z$($\sigma$ を $1$ と同一視する)、$\mathbb Z_\Gamma=\mathbb Z$ となり、左端の $\mathbb Z/2\to\mathbb Z$ は零写像なので単射でない。
$\operatorname{Hom}_{\mathbb Z}(\mathbb Z/2,-)$ は左完全だが右完全でない。全射 $\mathbb Z\to\mathbb Z/2$ を送ると $\operatorname{Hom}(\mathbb Z/2,\mathbb Z)=0\to\operatorname{Hom}(\mathbb Z/2,\mathbb Z/2)\cong\mathbb Z/2$ となり、全射でない(完全関手 の記事の注意(反例:一般の対象からのHom関手は完全とは限らない))。$\operatorname{Hom}_R(P,-)$ が右完全になるのは $P$ が射影加群のときに限る(左完全関手 の記事の命題(射影性と Hom の完全性))。
右完全関手の値は、自由加群での値から余核として計算できる。加群 $M$ の自由表示、すなわち完全列 $R^{(J)}\xrightarrow{a}R^{(I)}\xrightarrow{b}M\to0$($R^{(I)}$ は $I$ を添字とする $R$ の直和)を選ぶと、prop-rex-equiv の 2 により
$$
F(R^{(J)})\xrightarrow{F(a)}F(R^{(I)})\xrightarrow{F(b)}F(M)\to0
$$
は完全である。さらに $F$ が直和を保てば、$F(R^{(I)})$ は $F(R)$ の直和になり、$F$ は $F(R)$ とその上の作用だけで決まる。これを正確に述べたのが次の定理である。
以下この節では $R$ を可換環とし、$R$ 加群の圏を $\mathrm{Mod}_R$ と書く。$r\in R$ の掛け算 $R\to R$、$s\mapsto rs$ を $\lambda_r$、$m\in M$ に対して $R\to M$、$r\mapsto rm$ を $\ell_m$ と書く。どちらも $R$ 準同型である。加法関手 $F\colon\mathrm{Mod}_R\to\mathbf{Ab}$ が直和を保つとは、任意の族 $(M_i)_{i\in I}$ について、包含 $\iota_i\colon M_i\to\bigoplus_iM_i$ が誘導する写像 $\bigoplus_iF(M_i)\to F(\bigoplus_iM_i)$ が同型であることをいう。
$R$ を可換環、$F\colon\mathrm{Mod}_R\to\mathbf{Ab}$ を右完全で直和を保つ加法関手とする。
1:$\lambda_r\lambda_{r'}=\lambda_{rr'}$、$\lambda_r+\lambda_{r'}=\lambda_{r+r'}$、$\lambda_1=\mathrm{id}$ であり、$F$ は合成・和・恒等写像を保つので、$F(R)$ は $R$ 加群になる。
2($\theta$ が定まること):$m\mapsto\ell_m$ は加法的で $F$ は加法関手なので、$(m,x)\mapsto F(\ell_m)(x)$ は両変数について加法的である。$\ell_{rm}=\ell_m\circ\lambda_r$($s\mapsto srm$)なので
$$
F(\ell_{rm})(x)=F(\ell_m)\bigl(F(\lambda_r)(x)\bigr)=F(\ell_m)(r\cdot x)
$$
であり、$(rm,x)$ と $(m,r\cdot x)$ の値は等しい。よって $\theta_M$ は $M\otimes_RF(R)$ からの準同型として定まる。$R$ 準同型 $h\colon M\to M'$ について $h\circ\ell_m=\ell_{h(m)}$ なので $F(h)\circ\theta_M=\theta_{M'}\circ(h\otimes\mathrm{id})$ であり、$\theta$ は自然である。
2($M=R$ のとき同型):$R$ は可換なので $\ell_r=\lambda_r$ であり、$\theta_R(r\otimes x)=r\cdot x$ である。これは テンソル積 の記事の命題(単位・可換・結合の同型)の 1 の同型 $R\otimes_RF(R)\to F(R)$ そのものである。
2(自由加群のとき同型):$M=R^{(I)}$ とし、$\iota_i\colon R\to R^{(I)}$ を第 $i$ 成分への包含とする。自然性から $\theta_{R^{(I)}}\circ(\iota_i\otimes\mathrm{id})=F(\iota_i)\circ\theta_R$ である。$\iota_i\otimes\mathrm{id}$ たちが誘導する $\bigoplus_i(R\otimes_RF(R))\to R^{(I)}\otimes_RF(R)$ は同型(テンソル積 の記事の命題(直和との可換性))であり、$F(\iota_i)$ たちが誘導する $\bigoplus_iF(R)\to F(R^{(I)})$ も仮定により同型である。よって $\theta_{R^{(I)}}$ は同型 $\bigoplus_i\theta_R$ をこれらの同型で挟んだものであり、同型である。
2(一般の $M$):自由表示 $R^{(J)}\xrightarrow{a}R^{(I)}\xrightarrow{b}M\to0$ を選ぶ($M$ の生成系で $R^{(I)}\to M$ を作り、その核の生成系で $R^{(J)}$ を作る)。テンソル積は右完全なので上の行が、$F$ は右完全なので下の行が完全であり(prop-rex-equiv)、$\theta$ の自然性から図式は可換である。
$$
\begin{array}{ccccccc}
R^{(J)}\otimes_RF(R)&\xrightarrow{a\otimes1}&R^{(I)}\otimes_RF(R)&\xrightarrow{b\otimes1}&M\otimes_RF(R)&\to&0\\
\downarrow\theta_{R^{(J)}}&&\downarrow\theta_{R^{(I)}}&&\downarrow\theta_M&&\\
F(R^{(J)})&\xrightarrow{F(a)}&F(R^{(I)})&\xrightarrow{F(b)}&F(M)&\to&0
\end{array}
$$
全射:$F(b)$ と $\theta_{R^{(I)}}$ は全射なので、$\theta_M\circ(b\otimes1)=F(b)\circ\theta_{R^{(I)}}$ は全射であり、$\theta_M$ も全射である。単射:$\theta_M(w)=0$ とし、$w=(b\otimes1)(v)$ と書く。$F(b)(\theta_{R^{(I)}}(v))=0$ なので、下の行の完全性から $\theta_{R^{(I)}}(v)=F(a)(y)$ となる $y$ があり、$y=\theta_{R^{(J)}}(v')$ と書ける。すると $\theta_{R^{(I)}}(v)=\theta_{R^{(I)}}((a\otimes1)(v'))$ で、$\theta_{R^{(I)}}$ は単射だから $v=(a\otimes1)(v')$ である。よって $w=(b\otimes1)(a\otimes1)(v')=0$ である。
逆:$-\otimes_RN$ が右完全であることは テンソル積 の記事の命題(テンソル積の右完全性)、直和を保つことは同じ記事の命題(直和との可換性)である。$\square$
この定理により、直和を保つ右完全関手 $F$ は、$R$ 加群 $F(R)$ を一つ与えることと同じである。たとえば $F=-\otimes_RN$ なら $F(R)=R\otimes_RN\cong N$ が戻ってくる。右随伴をもつ関手は直和を保ち(随伴関手 の記事の命題(随伴による保存))、加法圏の間の左随伴は加法関手である(加法関手 の記事の系(随伴関手と圏同値は加法的))。thm-rex-adjoint と合わせると、$\mathrm{Mod}_R\to\mathbf{Ab}$ の関手で右随伴をもつものはすべてテンソル積で表される。
$\mathcal A$ が十分な射影対象をもつとき、右完全関手 $F$ の左導来関手 $L_iF$ は、対象 $A$ の射影分解 $P\to A$ に $F$ を施した複体のホモロジー $L_iF(A)=H_i(F(P))$ として定まる。右完全性から $L_0F\cong F$ であり(導来関手 の記事の命題(0次の導来関手はもとの関手に一致する))、短完全列 $0\to A'\to A\to A''\to0$ から長完全列
$$
\cdots\to L_1F(A)\to L_1F(A'')\to F(A')\to F(A)\to F(A'')\to0
$$
が得られる(Wei94 §2.4、Theorem 2.4.6・2.4.7、pp. 45–47。この記事では証明しない)。$F(A')\to F(A)$ が単射にならない分を、$L_1F(A'')$ からの連結準同型の像が測っている。$F=-\otimes_RN$ のとき $L_iF$ は Tor関手 $\operatorname{Tor}_i^R(-,N)$ であり、余不変部分 $M\mapsto M_\Gamma$ の左導来関手は群 $\Gamma$ のホモロジーである。
thm-rex-tensor と thm-rex-adjoint の仮定・結論を、$R=\mathbb Z$ で一つずつ確かめる。各行は一つの条件だけを外す。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 直和を保つ(thm-rex-tensor) | $F(M)=\prod_{k\ge1}M$(可算個の直積) | $\theta_M$ が同型 |
| 右完全(thm-rex-tensor) | $F(M)=\operatorname{Hom}_{\mathbb Z}(\mathbb Z/2,M)$ | $\theta_M$ が同型 |
| 右随伴をもつ(thm-rex-adjoint の後の注意) | $F(M)=\prod_{k\ge1}M$ | 右完全関手が無限直和を保つ |
1 行目:直積をとる関手は成分ごとに完全列を保つので完全、とくに右完全な加法関手である。$F(\mathbb Z)=\prod_k\mathbb Z$ で、$M=\mathbb Q$ のとき $\theta_{\mathbb Q}\colon\mathbb Q\otimes\prod_k\mathbb Z\to\prod_k\mathbb Q$ は $q\otimes(a_k)_k\mapsto(qa_k)_k$ である。$\mathbb Q\otimes A$ の元は分母をそろえて $\sum_j(c_j/b)\otimes a_j=(1/b)\otimes\sum_jc_ja_j$ と一つの単純テンソルに書けるので、$\theta_{\mathbb Q}$ の像の元は、ある正の整数 $b$ で全成分の分母を払える。$(1/k!)_k$ はそうではない($1/k!=c_k/b$ なら $k!$ が $b$ を割り切るが、これはすべての $k$ では起こらない)ので、$\theta_{\mathbb Q}$ は全射でない。
2 行目:$\mathbb Z/2$ の生成元の像は直和の有限個の成分にしか入らないので、$\operatorname{Hom}(\mathbb Z/2,\bigoplus_iM_i)=\bigoplus_i\operatorname{Hom}(\mathbb Z/2,M_i)$ であり、$F$ は直和を保つ加法関手である。右完全でないことは ex-rex-hom-not で見た。$F(\mathbb Z)=0$ なので $\theta_{\mathbb Z/2}\colon\mathbb Z/2\otimes0=0\to F(\mathbb Z/2)\cong\mathbb Z/2$ は同型でない。
3 行目:1 行目の $F$ は右完全である。$M_i=\mathbb Z$($i\in\mathbb N$)の直和について、標準写像 $\bigoplus_iF(\mathbb Z)\to F(\bigoplus_i\mathbb Z)=\prod_k\bigoplus_i\mathbb Z$ の像の元は、全体で有限個の $i$ にしか $0$ でない成分をもたない。$k$ 番目の成分を第 $k$ 基底ベクトル $e_k\in\bigoplus_i\mathbb Z$ とする元 $(e_k)_k$ は像に入らないので、$F$ は直和を保たない。右随伴をもつ関手は直和を保つので、この $F$ は右随伴をもたない。
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