約数の個数と約数の総和(number and sum of divisors)とは、正の整数 $n$ の正の約数の個数 $d(n)$ と、正の約数すべての和 $\sigma(n)$ である。$n=p_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}$($p_i$ は相異なる素数)と素因数分解すると、約数は指数の組 $(f_1,\dots,f_k)$($0\le f_i\le e_i$)と 1 対 1 に対応し、$d(n)=\prod(e_i+1)$、$\sigma(n)=\prod(1+p_i+\cdots+p_i^{e_i})$ となる。互いに素な $m,n$ では $d(mn)=d(m)d(n)$、$\sigma(mn)=\sigma(m)\sigma(n)$ が成り立つ(乗法的関数)。$\sigma(n)$ が奇数なのは、$n$ が平方数か平方数の $2$ 倍のときに限る。
$72$ の正の約数を全部書き出すと $1,2,3,4,6,8,9,12,18,24,36,72$ の $12$ 個で、その和は $195$ である。書き出して足すのは数が大きいと大変だが、素因数分解 $72=2^3\cdot3^2$ を使って表に並べると、個数も総和も掛け算 1 回で求まる。この記事では、約数の個数の公式と約数の総和の公式を証明し、その背後にある「互いに素な数の積では掛け算になる」という性質(乗法性)を調べる。
$72=2^3\cdot3^2$ の約数は、$2$ の累乗 $1,2,4,8$ と $3$ の累乗 $1,3,9$ から 1 つずつ選んで掛けた数である。横に $1,2,4,8$、縦に $1,3,9$ をとって掛け算の表を作ると、$4\times3=12$ 個のマスに $72$ の約数がちょうど 1 回ずつ現れる(図 1)。
各行の和は、$1$ の行が $1+2+4+8=15$、$3$ の行が $3\cdot15=45$、$9$ の行が $9\cdot15=135$ なので、総和は
$$
15+45+135=(1+3+9)\cdot15=13\cdot15=195
$$
である。
72 = 2³·3² の約数を、2 の累乗(横)と 3 の累乗(縦)の掛け算の表に並べたもの。各行の和は 15 の倍数で、総和は 15×13
$12=2^2\cdot3$ の約数は、$1,2,4$ と $1,3$ から 1 つずつ選んだ積 $1,2,4,3,6,12$ の $3\cdot2=6$ 個である。総和は $1+2+3+4+6+12=28$ で、$(1+2+4)(1+3)=7\cdot4=28$ と一致する。
$8$ の約数の総和は $1+2+4+8=15$、$9$ の約数の総和は $1+3+9=13$ で、$72=8\cdot9$ の約数の総和 $195$ は $15\cdot13$ である。ところが $72=6\cdot12$ と分けると、$6$ の約数の総和 $12$ と $12$ の約数の総和 $28$ の積は $336$ で、$195$ にならない。$8$ と $9$ は共通の素因数をもたないが、$6$ と $12$ は $2$ と $3$ を共有している。
この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 約数を表に並べる | 指数の組と約数の対応(lem-nsd-divisors) | 約数の束と直積 |
| $(1+2+4+8)(1+3+9)$ を展開する | 総和の公式(thm-nsd-formula) | 分配法則、等比数列の和 |
| 互いに素なら掛け算になる | 乗法的関数(def-nsd-multiplicative) | 乗法的関数、Dirichlet積 |
| 約数の和が奇数 | 偶奇の判定(prop-nsd-parity-sigma) | 法 $2$ での計算 |
正の整数 $n$ について、$n$ の正の約数の個数を $d(n)$、正の約数すべての和を $\sigma(n)$ と書く。和の記号 $\sum_{e\mid n}$ で「$n$ の正の約数 $e$ 全体にわたる和」を表すと
$$
d(n)=\sum_{e\mid n}1,\qquad\sigma(n)=\sum_{e\mid n}e
$$
である。$d(n)$ は $\tau(n)$ とも書かれる。以下、この記事で「約数」は正の約数を指す。
| $n$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ | $5$ | $6$ | $7$ | $8$ | $9$ | $10$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $d(n)$ | $1$ | $2$ | $2$ | $3$ | $2$ | $4$ | $2$ | $4$ | $3$ | $4$ |
| $\sigma(n)$ | $1$ | $3$ | $4$ | $7$ | $6$ | $12$ | $8$ | $15$ | $13$ | $18$ |
素数 $p$ では約数は $1$ と $p$ だけなので、$d(p)=2$、$\sigma(p)=p+1$ である。
$n=p_1^{e_1}p_2^{e_2}\cdots p_k^{e_k}$($p_1,\dots,p_k$ は相異なる素数、$e_i\ge1$)と素因数分解する。
方針:約数 $e$ と、$n=ec$ となる $c$ の素因数分解を並べると $n$ の素因数分解になる。素因数分解がただ 1 通りであること(素因数分解の一意性)から、$e$ の指数が $n$ の指数を超えないことを読み取る。
段 1(約数はこの形)。$e$ を $n$ の約数とし、$n=ec$ とする。$e$ と $c$ をそれぞれ素因数分解して並べると、$n$ の素因数分解が 1 つ得られる。一意性により、それは $p_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}$ と同じなので、$e$ に現れる素数は $p_1,\dots,p_k$ のどれかであり、$e$ の中の $p_i$ の指数 $f_i$ は、$n$ の中の指数 $e_i$ 以下である($c$ の中の $p_i$ の指数との和が $e_i$ になるから)。よって $e=p_1^{f_1}\cdots p_k^{f_k}$、$0\le f_i\le e_i$ である。
段 2(この形なら約数)。$0\le f_i\le e_i$ なら、$c:=p_1^{e_1-f_1}\cdots p_k^{e_k-f_k}$ は整数で、$p_1^{f_1}\cdots p_k^{f_k}\cdot c=n$ なので、$p_1^{f_1}\cdots p_k^{f_k}$ は $n$ の約数である。
段 3(組が違えば数が違う)。$p_1^{f_1}\cdots p_k^{f_k}=p_1^{g_1}\cdots p_k^{g_k}$ なら、両辺は同じ数の素因数分解なので、一意性により各 $i$ で $f_i=g_i$ である。$\square$
ex-nsd-start-72 の表のマスは、組 $(f_1,f_2)$($0\le f_1\le3$、$0\le f_2\le2$)にあたる。lem-nsd-divisors の 1 は「表に $72$ の約数がすべて現れる」こと、2 は「どの約数も 1 回しか現れない」ことを言っている。
$n=p_1^{e_1}p_2^{e_2}\cdots p_k^{e_k}$($p_1,\dots,p_k$ は相異なる素数、$e_i\ge1$)とすると
$$
d(n)=(e_1+1)(e_2+1)\cdots(e_k+1),
$$
$$
\sigma(n)=\prod_{i=1}^k\bigl(1+p_i+p_i^2+\cdots+p_i^{e_i}\bigr)=\prod_{i=1}^k\frac{p_i^{e_i+1}-1}{p_i-1}
$$
である。$n=1$ では、右辺を $1$(何も掛けない積)と約束すると $d(1)=\sigma(1)=1$ で成り立つ。
方針:個数は lem-nsd-divisors の指数の組を数える。総和は、右辺の積を分配法則で展開した項が指数の組と 1 対 1 に対応することを使う。
段 1(個数)。lem-nsd-divisors により、約数の個数は組 $(f_1,\dots,f_k)$ の個数に等しい。$f_i$ は $0,1,\dots,e_i$ の $e_i+1$ 通りから独立に選べるので、積の法則により組は $(e_1+1)\cdots(e_k+1)$ 個ある。
段 2(展開)。積 $\prod_{i=1}^k(1+p_i+\cdots+p_i^{e_i})$ を分配法則で展開すると、各因子から 1 項 $p_i^{f_i}$($0\le f_i\le e_i$)を選んで掛けた $p_1^{f_1}\cdots p_k^{f_k}$ を、すべての組 $(f_1,\dots,f_k)$ について 1 回ずつ足したものになる。
段 3(総和)。lem-nsd-divisors により、段 2 の項は $n$ の約数をちょうど 1 回ずつ尽くしている。よって展開の結果は $\sigma(n)$ である。
段 4(等比数列の和)。$(p-1)(1+p+\cdots+p^e)=(p+p^2+\cdots+p^{e+1})-(1+p+\cdots+p^e)=p^{e+1}-1$ なので、$1+p+\cdots+p^e=\dfrac{p^{e+1}-1}{p-1}$ である(等差数列と等比数列)。$\square$
thm-nsd-formula の右辺は、素数ごとの因子の積である。したがって、共通の素因数をもたない 2 数 $m,n$ の積 $mn$ では、$mn$ の素因数分解は $m$ の分解と $n$ の分解を並べたものになり、$d(mn)$ は $d(m)d(n)$ に、$\sigma(mn)$ は $\sigma(m)\sigma(n)$ になる。この性質に名前をつける。
正の整数に対して定まる関数 $f$ が、$f(1)=1$ であり、互いに素な正の整数 $m,n$ について常に
$$
f(mn)=f(m)f(n)
$$
をみたすとき、$f$ を 乗法的 であるという。互いに素でない $m,n$ についても $f(mn)=f(m)f(n)$ が成り立つとき、完全乗法的 であるという。
$m,n$ が互いに素な正の整数なら
$$
d(mn)=d(m)\,d(n),\qquad\sigma(mn)=\sigma(m)\,\sigma(n)
$$
である。つまり $d$ と $\sigma$ は乗法的関数である。
方針:$m$ と $n$ に共通の素因数がないので、$mn$ の約数 $e$ は「$m$ の素数の部分」と「$n$ の素数の部分」にただ 1 通りに分かれる。これで $mn$ の約数と、組($m$ の約数, $n$ の約数)が 1 対 1 に対応することを示す。
段 1(素因数分解を並べる)。$m=1$ なら $mn=n$ で、$d(1)=\sigma(1)=1$ なので等式は成り立つ。$n=1$ でも同じである。以下 $m,n\ge2$ とし、$m=p_1^{r_1}\cdots p_s^{r_s}$、$n=q_1^{u_1}\cdots q_t^{u_t}$ と素因数分解する。$m,n$ は互いに素なので、$p_i$ と $q_j$ に同じ素数はない(同じ素数があれば、それが $m$ と $n$ の公約数になる)。よって $mn=p_1^{r_1}\cdots p_s^{r_s}q_1^{u_1}\cdots q_t^{u_t}$ は $mn$ の素因数分解である。
段 2(1 対 1 対応)。lem-nsd-divisors により、$mn$ の約数は指数の組 $(f_1,\dots,f_s,g_1,\dots,g_t)$($0\le f_i\le r_i$、$0\le g_j\le u_j$)と 1 対 1 に対応する。この組は、前半 $(f_1,\dots,f_s)$ と後半 $(g_1,\dots,g_t)$ の組に分けられ、前半は $m$ の約数 $a=p_1^{f_1}\cdots p_s^{f_s}$ に、後半は $n$ の約数 $b=q_1^{g_1}\cdots q_t^{g_t}$ に 1 対 1 に対応する(lem-nsd-divisors を $m$ と $n$ に使う)。$mn$ の約数 $e$ は $e=ab$ である。したがって、$e=ab$ という対応で、$mn$ の約数と、$m$ の約数 $a$ と $n$ の約数 $b$ の組 $(a,b)$ は 1 対 1 に対応する。
段 3(個数)。組 $(a,b)$ は $d(m)\,d(n)$ 個あるので、$d(mn)=d(m)\,d(n)$ である。
段 4(総和)。段 2 により
$$
\sigma(mn)=\sum_{e\mid mn}e=\sum_{a\mid m}\ \sum_{b\mid n}ab=\Bigl(\sum_{a\mid m}a\Bigr)\Bigl(\sum_{b\mid n}b\Bigr)=\sigma(m)\,\sigma(n)
$$
である。3 つめの等号は、分配法則で右辺を展開すると、すべての組 $(a,b)$ の積 $ab$ の和になることによる。$d(1)=\sigma(1)=1$ なので、$d$ と $\sigma$ は乗法的である。$\square$
逆に、thm-nsd-multiplicative から thm-nsd-formula を導くこともできる。素数の累乗 $p^e$ の約数は $1,p,\dots,p^e$ なので $d(p^e)=e+1$、$\sigma(p^e)=1+p+\cdots+p^e$ であり、異なる素数の累乗どうしは互いに素なので、乗法性を $k-1$ 回使えば公式になる。「素数の累乗で計算して、掛け合わせる」が、乗法的関数の計算の基本である。
$d$ と $\sigma$ は、それぞれ $1$ と $e$ を約数について足したものだった。足すものを別の乗法的関数に替えても、同じ証明が通る。
$f$ を乗法的関数とし、$F(n):=\sum_{e\mid n}f(e)$ とおく。このとき $F$ も乗法的である。
方針:prf-nsd-multiplicative の段 2 の対応 $e=ab$ を使い、$f(ab)=f(a)f(b)$ で和を積に分ける。
段 1。$F(1)=f(1)=1$ である。
段 2。$m,n$ を互いに素とする。prf-nsd-multiplicative の段 2 により、$mn$ の約数 $e$ は $e=ab$($a\mid m$、$b\mid n$)とただ 1 通りに書ける。$a\mid m$、$b\mid n$ で $m,n$ が互いに素なので、$a,b$ も互いに素である($a$ と $b$ の公約数は $m$ と $n$ の公約数だから $1$)。$f$ は乗法的なので $f(ab)=f(a)f(b)$ である。
段 3。よって
$$
F(mn)=\sum_{a\mid m}\ \sum_{b\mid n}f(a)f(b)=\Bigl(\sum_{a\mid m}f(a)\Bigr)\Bigl(\sum_{b\mid n}f(b)\Bigr)=F(m)\,F(n)
$$
である。$\square$
$f(e)=e^2$ とすると $F(n)=\sum_{e\mid n}e^2$ で、これを $\sigma_2(n)$ と書く。$12$ では $1+4+9+16+36+144=210$ である。prop-nsd-sum-over-divisors により $\sigma_2(12)=\sigma_2(4)\sigma_2(3)=(1+4+16)(1+9)=21\cdot10=210$ と、素数の累乗ごとの計算で求まる。$f(e)=1$ なら $F=d$、$f(e)=e$ なら $F=\sigma$ である。
thm-nsd-multiplicative の仮定を外すと、ex-nsd-start-coprime のように崩れる。$m=6$、$n=12$ では $\sigma(72)=195$ だが $\sigma(6)\sigma(12)=12\cdot28=336$、$d(72)=12$ だが $d(6)d(12)=4\cdot6=24$ である。$6$ の約数 $a$ と $12$ の約数 $b$ の組 $(a,b)$ は $24$ 組あるが、積 $ab$ には重なりがある($2\cdot3=6=1\cdot6=3\cdot2=6\cdot1$ など)。prf-nsd-multiplicative の段 1 で、$m$ と $n$ の素因数分解に同じ素数がないことを使ったのが、ここで崩れている。
公式と乗法性を使うと、約数の個数や総和の偶奇が素因数分解の指数から読める。
正の整数 $n$ について、$d(n)$ が奇数であるための必要十分条件は、$n$ が平方数であることである。
方針:thm-nsd-formula の積 $\prod(e_i+1)$ が奇数になる条件を、指数 $e_i$ の偶奇に言いかえる。
段 1。整数の積が奇数であるのは、どの因数も奇数のときに限る(偶数の因数が 1 つでもあれば積は偶数、すべて奇数なら積も奇数)。よって $d(n)=\prod(e_i+1)$ が奇数 $\iff$ すべての $e_i+1$ が奇数 $\iff$ すべての $e_i$ が偶数である。
段 2。すべての $e_i$ が偶数なら、$m:=p_1^{e_1/2}\cdots p_k^{e_k/2}$ とおくと $n=m^2$ で、$n$ は平方数である。逆に $n=m^2$ なら、$m$ の素因数分解を 2 乗したものが $n$ の素因数分解なので(素因数分解の一意性)、$n$ の指数はすべて偶数である。$n=1$ では $d(1)=1$ は奇数で、$1=1^2$ は平方数である。$\square$
約数を $e$ と $\dfrac ne$ の組にすると、組にならず自分自身と組になるのは $e=\sqrt n$ のときだけである。この見方による証明は 約数 の記事にある。
正の整数 $n$ について、$\sigma(n)$ が奇数であるための必要十分条件は、$n$ が平方数か、平方数の $2$ 倍であることである。
方針:thm-nsd-multiplicative により $\sigma(n)$ は素数の累乗ごとの因子 $\sigma(p^e)=1+p+\cdots+p^e$ の積である。各因子の偶奇を $p=2$ と奇数の素数に分けて調べる。
段 1($p=2$ の因子)。$\sigma(2^a)=1+2+\cdots+2^a=2^{a+1}-1$ は、$a$ によらず奇数である。
段 2(奇数の素数の因子)。$p$ が奇数の素数なら、$1,p,\dots,p^e$ はどれも奇数である。奇数を $e+1$ 個足した和は、$e+1$ が奇数のとき奇数、偶数のとき偶数である。よって $\sigma(p^e)$ が奇数 $\iff$ $e$ が偶数である。
段 3(積)。$n=2^a\,p_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}$($p_i$ は奇数の素数、$a\ge0$)とすると $\sigma(n)=\sigma(2^a)\,\sigma(p_1^{e_1})\cdots\sigma(p_k^{e_k})$ である。prf-nsd-parity-d の段 1 と同じく、積が奇数 $\iff$ すべての因子が奇数である。段 1・2 により、これは「すべての $e_i$ が偶数」と同値である。
段 4(言いかえ)。すべての $e_i$ が偶数とし、$m:=p_1^{e_1/2}\cdots p_k^{e_k/2}$ とおくと $n=2^am^2$ である。$a$ が偶数なら $n=(2^{a/2}m)^2$ は平方数、$a$ が奇数なら $n=2\,(2^{(a-1)/2}m)^2$ は平方数の $2$ 倍である。逆に $n=c^2$ または $n=2c^2$ なら、$c^2$ の指数はすべて偶数で、$2$ を掛けても変わるのは素数 $2$ の指数だけなので、奇数の素数の指数はすべて偶数である。$\square$
$1$ から $50$ までで $\sigma(n)$ が奇数になるのは $n=1,2,4,8,9,16,18,25,32,36,49,50$ の $12$ 個である(図 2)。このうち $1,4,9,16,25,36,49$ は平方数、$2,8,18,32,50$ は平方数の $2$ 倍である。たとえば $\sigma(18)=\sigma(2)\sigma(9)=3\cdot13=39$、$\sigma(50)=\sigma(2)\sigma(25)=3\cdot31=93$ はどちらも奇数である。一方 $d(18)=6$ は偶数なので、「$\sigma(n)$ が奇数」と「$d(n)$ が奇数」は同じ条件ではない。
1 から 50 までの σ(n)。赤は σ(n) が奇数になる n で、どれも平方数か平方数の 2 倍。破線は y=2n で、σ(n)=2n となる 6 と 28 が完全数
2 つの関数 $f,g$ から
$$
(f*g)(n):=\sum_{e\mid n}f(e)\,g\!\left(\frac ne\right)
$$
で新しい関数を作る操作を Dirichlet 積 という(Dirichlet積)。すべての $n$ で $1$ をとる関数を $\mathbf 1$、$n$ をとる関数を $\mathrm{id}$ と書くと、$e$ が $n$ の約数全体を動くとき $\dfrac ne$ も約数全体を動くので
$$
d=\mathbf 1*\mathbf 1,\qquad\sigma=\mathrm{id}*\mathbf 1
$$
である。prop-nsd-sum-over-divisors は「$f$ が乗法的なら $f*\mathbf 1$ も乗法的」ということであり、一般に「乗法的関数どうしの Dirichlet 積は乗法的」が成り立つ(Mos11 Chapter 2 は証明を省いて述べている。本記事では証明しない)。
この積は、数列の母関数の掛け算に似た規則をもつ。母関数 $\sum a_nx^n$ の積では添字が「足して $n$」の組を集める(母関数:数列を関数として扱う)のに対し、Dirichlet 積では「掛けて $n$」の組を集める。そのため $\sum_nf(n)n^{-s}$ の形の級数(Dirichlet 級数)の掛け算に対応する(Mos11 Chapter 2)。
Dirichlet 積には「約数について足す」操作の逆もある。Möbius関数 $\mu$ を使うと、$F=f*\mathbf 1$ から $f=F*\mu$ と元の関数を取り戻せる(Möbiusの反転公式。本記事では証明しない)。たとえば $\mu(1)=1$、$\mu(2)=\mu(3)=-1$、$\mu(6)=1$、$\mu(4)=\mu(12)=0$ なので
$$
\sigma(12)-\sigma(6)-\sigma(4)+\sigma(2)=28-12-7+3=12
$$
となり、$\sigma=\mathrm{id}*\mathbf 1$ から $\mathrm{id}(12)=12$ が戻っている。
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