ガウス記号と整数の個数

同義語:floor function and counting integers

概要

ガウス記号と整数の個数(floor function and counting integers)とは、ガウス記号 $[x]$($x$ 以下の最大の整数、床関数)を使って、条件をみたす整数の個数を数える方法である。実数 $a\le b$ について $a<m\le b$ をみたす整数 $m$ は $[b]-[a]$ 個あり、正の実数 $x$ 以下の正の整数のうち正の整数 $k$ の倍数は $[x/k]$ 個ある。$xy\le n$ をみたす正の整数の組を縦の列ごとと積の値ごとに 2 通りに数えると、$\sum_{k=1}^n[n/k]$ は $1$ から $n$ までの約数の個数の和に等しい。双曲線 $xy=n$ の対称性から、この和は $q=[\sqrt n]$ として $2\sum_{k=1}^q[n/k]-q^2$ とも書け、その大きさはおよそ $n\log n$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 床関数, 約数, 整数の割り算と互除法

高校での出発点:倍数の個数を数える

「$1$ から $100$ までに $3$ の倍数はいくつあるか」は、$100\mathbin{÷}3=33.3\cdots$ の整数部分 $33$ が答えである。この「整数部分」を表す記号がガウス記号 $[x]$ である。この記事では、ガウス記号を使って「条件をみたす整数の個数」を数える方法をまとめる。

100 以下の 3 の倍数と 5 の倍数

$1$ から $100$ までの整数のうち、$3$ の倍数は $3,6,\dots,99$ で、$99=3\cdot33$ だから $33$ 個である。$\dfrac{100}3=33.3\cdots$ の整数部分が $33$ である。同じく $5$ の倍数は $\dfrac{100}5=20$ から $20$ 個、$15$ の倍数は $\dfrac{100}{15}=6.6\cdots$ から $6$ 個である。
したがって、$3$ でも $5$ でも割り切れない数は
$$ 100-33-20+6=53 $$
個である($3$ の倍数と $5$ の倍数を引くと、$15$ の倍数を 2 回引いてしまうので、1 回足し戻す)。

ある範囲の整数の個数
  1. $100$ 以上 $1000$ 以下の $7$ の倍数の個数。$1000$ 以下の $7$ の倍数は $\dfrac{1000}7=142.8\cdots$ から $142$ 個、$99$ 以下の $7$ の倍数は $\dfrac{99}7=14.1\cdots$ から $14$ 個なので、$142-14=128$ 個である。実際、最小は $105=7\cdot15$、最大は $994=7\cdot142$ で、$142-15+1=128$ 個である。
  2. $50< m^2\le200$ をみたす正の整数 $m$ の個数。$\sqrt{50}=7.07\cdots$、$\sqrt{200}=14.14\cdots$ なので、$m=8,9,\dots,14$ の $7$ 個である。$14-7=7$ と、整数部分の差で求まる。
約数の個数を足す

$1$ から $6$ までの整数の約数の個数を足す。$1$ の約数は $1$ 個、$2$ は $2$ 個、$3$ は $2$ 個、$4$ は $3$ 個、$5$ は $2$ 個、$6$ は $4$ 個なので、合計は $1+2+2+3+2+4=14$ である。
一方、「$1$ から $6$ までの $k$ の倍数の個数」を $k=1,\dots,6$ について足すと、$6+3+2+1+1+1=14$ で、同じ数になる。これは偶然ではない(thm-fnc-divisor-sum)。

この記事で答える問いは次の 4 つである。

  1. ガウス記号はどんな計算規則をみたすか。→ def-fnc-floor、prop-fnc-basic
  2. 区間に入る整数の個数、倍数の個数はどう数えるか。→ prop-fnc-interval、thm-fnc-multiples
  3. ex-fnc-start-divisors の一致はなぜ起こるか。→ thm-fnc-divisor-sum
  4. 約数の個数の和を、少ない計算で求められるか。→ prop-fnc-hyperbola
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $100\mathbin{÷}3$ の整数部分ガウス記号 $[x]$(def-fnc-floor)床関数 $\lfloor x\rfloor$
    $n$ 以下の $k$ の倍数の個数$\left[\dfrac nk\right]$(thm-fnc-multiples)格子点の数え上げ
    約数の個数の和双曲線の下の格子点(thm-fnc-divisor-sum)約数関数の平均、Dirichlet の約数問題
    双曲線を対称に分けるprop-fnc-hyperbolaDirichlet の双曲線法

ガウス記号

定義

ガウス記号

実数 $x$ に対し、$n\le x< n+1$ をみたす整数 $n$ がただ 1 つある。この $n$ を $[x]$ と書き、$x$ の ガウス記号 という。$[x]$ は「$x$ 以下の最大の整数」である。大学では同じものを $\lfloor x\rfloor$ と書き、床関数 とよぶ。

そのような $n$ がただ 1 つあることは、実数の Archimedes の性質から従う(本記事では証明しない。実数とは何か:無理数の証明 の補題「Archimedes の性質」とその直後の段落、実数 の命題「整数部分」を参照)。「$x$ 以下の最大の整数」と言いかえられるのは、$n\le x$ であり、しかも $n+1$ 以上の整数は $x$ より大きいからである。
小数の各位の数字もガウス記号で書ける。$0\le x<1$ の小数第 $k$ 位の数字は $[10^kx]-10[10^{k-1}x]$ であり、これを使って分数の小数展開がくり返す理由を調べるのが 循環小数と分数 である。

ガウス記号の値
  1. $[2.7]=2$、$[3]=3$、$[\sqrt2]=1$、$[\pi]=3$ である。
  2. 負の数では注意が要る。$[-2.3]=-3$ である。$-3\le-2.3<-2$ だからである。「小数点以下を切り捨てる」と $-2$ になるが、それは $[x]$ ではない。$[-3]=-3$ である。
  3. $\left[\dfrac{100}3\right]=33$、$\left[\dfrac{1000}7\right]=142$ である。

y=[x] のグラフ。黒丸は含み、白丸は含まない。グラフは直線 y=x と y=x−1 の間にある y=[x] のグラフ。黒丸は含み、白丸は含まない。グラフは直線 y=x と y=x−1 の間にある
図 1 のように、$y=[x]$ のグラフは階段になる。各段の左端(整数のところ)は段に含まれ、右端は含まれない。

基本の計算規則

ガウス記号の基本性質

$x,y$ を実数、$m$ を整数とする。

  1. $x-1<[x]\le x$ である。
  2. $[x+m]=[x]+m$ である。
  3. 整数 $m$ について、$m\le x$ であることと $m\le[x]$ であることは同値である。
  4. $[x]+[y]\le[x+y]\le[x]+[y]+1$ である。
定義の不等式 $n\le x< n+1$ を使う

方針:どの主張も、def-fnc-floor の不等式 $[x]\le x<[x]+1$ を変形し、「その不等式をみたす整数はただ 1 つ」を使う。
段 1(1 の証明)。定義により $[x]\le x<[x]+1$ である。右の不等式から $1$ を移項すると $x-1<[x]$ である。
段 2(2 の証明)。$[x]\le x<[x]+1$ の各辺に $m$ を足すと $[x]+m\le x+m<([x]+m)+1$ である。$[x]+m$ は整数なので、$x+m$ についての定義の不等式をみたす整数はこれであり、ただ 1 つなので $[x+m]=[x]+m$ である。
段 3(3 の証明)。$m\le[x]$ なら、$[x]\le x$ から $m\le x$ である。逆に $m\le x$ とする。もし $m>[x]$ なら、整数どうしなので $m\ge[x]+1>x$ となり、$m\le x$ に反する。よって $m\le[x]$ である。
段 4(4 の証明)。$[x]\le x$、$[y]\le y$ を足すと、整数 $[x]+[y]$ は $x+y$ 以下である。段 3 により $[x]+[y]\le[x+y]$ である。また $x<[x]+1$、$y<[y]+1$ を足すと $x+y<[x]+[y]+2$ である。$[x+y]\le x+y$ なので $[x+y]<[x]+[y]+2$ で、整数どうしなので $[x+y]\le[x]+[y]+1$ である。$\square$

基本性質を確かめる
  1. 性質 2:$[2.7+5]=[7.7]=7=[2.7]+5$。$[-2.3+3]=[0.7]=0=-3+3$。
  2. 性質 4 の両端:$x=y=0.5$ なら $[x]+[y]=0$、$[x+y]=[1]=1$ で、右の等号が成り立つ。$x=1.2$、$y=1.3$ なら $[x+y]=[2.5]=2=[x]+[y]$ で、左の等号が成り立つ。
反例:ガウス記号は足し算も掛け算も保たない

性質 2 で足す数 $m$ が整数でないと崩れる。$[0.5+0.5]=1$ だが $[0.5]+[0.5]=0$ である。また $[2\cdot0.5]=1$ だが $2[0.5]=0$ で、$[2x]=2[x]$ も成り立たない。性質 4 が言えるのは、差が $0$ か $1$ であることまでである。

整数の個数を数える

区間に入る整数

区間に入る整数の個数

$a\le b$ を実数とする。$a< m\le b$ をみたす整数 $m$ の個数は $[b]-[a]$ である。

条件を整数の範囲に直す

方針:「$a< m$」と「$m\le b$」を、それぞれ $[a]$、$[b]$ を使った整数どうしの不等式に直す。
段 1(右の条件)。prop-fnc-basic の 3 により、整数 $m$ について $m\le b$ は $m\le[b]$ と同値である。
段 2(左の条件)。整数 $m$ について、$a< m$ は $m\ge[a]+1$ と同値である。実際、$a< m$ なら、$m\le a$ ではないので、prop-fnc-basic の 3 により $m\le[a]$ でもなく、整数どうしなので $m\ge[a]+1$ である。逆に $m\ge[a]+1$ なら、$[a]+1>a$(def-fnc-floor)なので $m>a$ である。
段 3(数える)。段 1・2 により、条件をみたす $m$ は $[a]+1,[a]+2,\dots,[b]$ である。その個数は $[b]-([a]+1)+1=[b]-[a]$ である($[a]\le[b]$ なので $0$ 以上。$[b]=[a]$ なら $0$ 個)。$\square$

区間の整数を数える
  1. $\sqrt2< m\le10.5$ をみたす整数は $[10.5]-[\sqrt2]=10-1=9$ 個で、$m=2,3,\dots,10$ である。
  2. $50< m^2\le200$ をみたす正の整数 $m$ は、$\sqrt{50}< m\le\sqrt{200}$ と同値なので、$[\sqrt{200}]-[\sqrt{50}]=14-7=7$ 個である(ex-fnc-start-interval の 2)。
  3. 端の等号に注意する。$3\le m\le7$ の整数の個数は $5$ 個だが、$[7]-[3]=4$ である。prop-fnc-interval は左端を含まない形なので、$3\le m$ を $2< m$ に直して $[7]-[2]=5$ とする。

倍数の個数

倍数の個数

$x$ を正の実数、$k$ を正の整数とする。$1$ 以上 $x$ 以下の整数のうち、$k$ の倍数の個数は $\left[\dfrac xk\right]$ である。

倍数に番号をつける

方針:$k$ の正の倍数を $jk$($j=1,2,\dots$)と番号づけ、条件を $j$ の範囲に直す。
段 1。$1$ 以上 $x$ 以下の $k$ の倍数は、正の整数 $j$ を使って $jk$ と書け、この $j$ はただ 1 つに決まる。したがって、数えるものは「$jk\le x$ をみたす正の整数 $j$」の個数である。
段 2。$k>0$ なので、$jk\le x$ は $j\le\dfrac xk$ と同値であり、prop-fnc-basic の 3 により $j\le\left[\dfrac xk\right]$ と同値である。
段 3。条件をみたす $j$ は $1,2,\dots,\left[\dfrac xk\right]$ なので、個数は $\left[\dfrac xk\right]$ である($\dfrac xk<1$ なら $0$ 個)。$\square$

thm-fnc-multiples は倍数が「いくつあるか」を数える。1 つの数が $k$ の倍数「かどうか」を、割り算をせずに数字から判定する方法は 倍数の判定法 で扱う。

倍数の個数と包除原理
  1. $1000$ 以下の $7$ の倍数は $\left[\dfrac{1000}7\right]=142$ 個である。$100$ 以上 $1000$ 以下なら、prop-fnc-interval と同じ考えで $\left[\dfrac{1000}7\right]-\left[\dfrac{99}7\right]=142-14=128$ 個である(ex-fnc-start-interval の 1)。
  2. $1$ から $100$ までで、$2$ でも $3$ でも $5$ でも割り切れない数の個数。$2,3,5$ のどれかで割り切れる数を集合の要素の個数と包除原理で数えて引くと
    $$ 100-\left(\left[\tfrac{100}2\right]+\left[\tfrac{100}3\right]+\left[\tfrac{100}5\right]\right)+\left(\left[\tfrac{100}6\right]+\left[\tfrac{100}{10}\right]+\left[\tfrac{100}{15}\right]\right)-\left[\tfrac{100}{30}\right] $$
    $$ =100-(50+33+20)+(16+10+6)-3=26 $$
    である。ここで「$2$ と $3$ の両方で割り切れる」は「$6$ で割り切れる」と同じであることを使った($2$ と $3$ が互いに素なので。整数の割り算と互除法 の互いに素な数による割り算)。
  3. $100!$ の末尾に並ぶ $0$ の個数。$100$ 以下の $5$ の倍数は $\left[\dfrac{100}5\right]=20$ 個、そのうち $25$ の倍数は $\left[\dfrac{100}{25}\right]=4$ 個で、これらは $5$ を $2$ 個ずつ含む。$5$ の個数は $20+4=24$ で、$2$ の個数はそれより多いので、末尾の $0$ は $24$ 個である。この数え方は 階乗に含まれる素因数の個数 で一般の形にする。
反例:割り算の商を四捨五入してはいけない

$100$ 以下の $3$ の倍数の個数を $\dfrac{100}3=33.3\cdots$ の四捨五入で求めると $33$ で正しいが、$100$ 以下の $6$ の倍数を $\dfrac{100}6=16.6\cdots$ の四捨五入で求めると $17$ となり、誤りである(正しくは $16$ 個。$6\cdot17=102>100$)。thm-fnc-multiples の証明の段 2 で使ったのは「$j\le\dfrac xk$ となる最大の整数」なので、切り捨て $[\ ]$ でなければならない。

双曲線の下の格子点と約数の個数

2 通りに数える

$x$ 座標と $y$ 座標がともに整数である点を 格子点 という。ex-fnc-start-divisors の一致は、双曲線 $xy=n$ の下にある格子点を 2 通りに数えることで説明できる。

約数の個数の和

正の整数 $j$ の正の約数の個数を $d(j)$ と書く。正の整数 $n$ について
$$ \sum_{k=1}^n\left[\frac nk\right]=\sum_{j=1}^nd(j) $$
であり、どちらも $xy\le n$ をみたす正の整数の組 $(x,y)$ の個数(領域 $x>0$、$y>0$、$xy\le n$ にある格子点の個数)に等しい。

格子点を縦の列ごとと双曲線ごとに数える

方針:$xy\le n$ をみたす正の整数の組 $(x,y)$ の集合 $D$ の要素の個数を、2 通りに数える。
段 1(縦の列ごとに数える)。$x=k$($1\le k\le n$)を固定すると、$ky\le n$ は $y\le\dfrac nk$ と同値である。prop-fnc-basic の 3 により、それは $y=1,2,\dots,\left[\dfrac nk\right]$ の $\left[\dfrac nk\right]$ 個である。$x>n$ では $xy\ge x>n$ なので点はない。よって $D$ の要素の個数は $\displaystyle\sum_{k=1}^n\left[\frac nk\right]$ である。
段 2(積の値ごとに数える)。$D$ の点 $(x,y)$ の積 $j=xy$ は $1$ 以上 $n$ 以下の整数である。$j$ を固定すると、$xy=j$ をみたす正の整数の組 $(x,y)$ は、$x$ を $j$ の正の約数から選べば $y=\dfrac jx$ と決まるので、ちょうど $d(j)$ 個ある。よって $D$ の要素の個数は $\displaystyle\sum_{j=1}^nd(j)$ である。
段 3。段 1 と段 2 は同じ集合 $D$ を数えているので、2 つの和は等しい。$\square$

段 1 の数え方は、「$1$ 以上 $n$ 以下の $k$ の倍数の個数」を $k$ について足すことと同じである(thm-fnc-multiples)。列 $x=k$ の点 $(k,y)$ が、倍数 $ky$ に対応している。
xy ≤ 12 をみたす格子点(35 個)。左は縦の列ごとに数えたもので、列 x=k には [12/k] 個の点がある。右は x ≤ 3 の部分と y ≤ 3 の部分に分けたもので、両方に入る 3×3 の正方形の 9 個を 1 回引く xy ≤ 12 をみたす格子点(35 個)。左は縦の列ごとに数えたもので、列 x=k には [12/k] 個の点がある。右は x ≤ 3 の部分と y ≤ 3 の部分に分けたもので、両方に入る 3×3 の正方形の 9 個を 1 回引く

約数の個数の和を 2 通りに求める
  1. $n=6$:$\left[\dfrac61\right]+\left[\dfrac62\right]+\cdots+\left[\dfrac66\right]=6+3+2+1+1+1=14$、$d(1)+\cdots+d(6)=1+2+2+3+2+4=14$ である(ex-fnc-start-divisors)。
  2. $n=12$:$12+6+4+3+2+2+1+1+1+1+1+1=35$ である。$d(1),\dots,d(12)$ は $1,2,2,3,2,4,2,4,3,4,2,6$ で、和は $35$ である。図 2 の左は、この $35$ 個の点を列ごとに数えたものである。

対称性で計算を半分にする

thm-fnc-divisor-sum の左辺は $n$ 項の和である。双曲線 $xy=n$ が直線 $y=x$ について対称であることを使うと、約 $\sqrt n$ 項の和で済む。

双曲線を対称に分ける

正の整数 $n$ について $q=[\sqrt n]$ とおくと
$$ \sum_{k=1}^n\left[\frac nk\right]=2\sum_{k=1}^q\left[\frac nk\right]-q^2 $$
である。

2 つの部分の和から重なりを引く

方針:thm-fnc-divisor-sum の集合 $D$ を、$x\le q$ の部分 $A$ と $y\le q$ の部分 $B$ に分け、要素の個数を「$A$ の個数 $+$ $B$ の個数 $-$ 重なりの個数」で数える(図 2 の右)。
段 1($D=A\cup B$)。$D$ の点 $(x,y)$ で $x\ge q+1$ かつ $y\ge q+1$ となるものはない。実際、$q+1>\sqrt n$(prop-fnc-basic の 1 で $x=\sqrt n$ とする)なので、そうなら $xy\ge(q+1)^2>n$ となり、$xy\le n$ に反する。よって $D$ のどの点も $x\le q$ か $y\le q$ をみたし、$A$ か $B$ に入る。
段 2($A$ と $B$ の個数)。$A$ の点を列 $x=k$($1\le k\le q$)ごとに数えると、thm-fnc-divisor-sum の証明の段 1 と同じく $\displaystyle\sum_{k=1}^q\left[\frac nk\right]$ 個である。$B$ は $A$ の $x$ と $y$ を入れかえたもので(条件 $xy\le n$ は入れかえても変わらない)、個数は同じである。
段 3(重なりの個数)。$A\cap B$ は $x\le q$、$y\le q$ をみたす $D$ の点である。$x\le q$、$y\le q$ なら $xy\le q^2\le n$($q\le\sqrt n$)なので、条件 $xy\le n$ は自動的にみたされる。よって $A\cap B$ は $1\le x\le q$、$1\le y\le q$ の格子点全体で、$q^2$ 個である。
段 4。$A$ と $B$ を足すと重なりを 2 回数えるので、$D$ の個数は
$$ \sum_{k=1}^q\left[\frac nk\right]+\sum_{k=1}^q\left[\frac nk\right]-q^2 $$
である。thm-fnc-divisor-sum により左辺はこれに等しい。$\square$

少ない項で求める
  1. $n=12$:$q=[\sqrt{12}]=3$。$\left[\dfrac{12}1\right]+\left[\dfrac{12}2\right]+\left[\dfrac{12}3\right]=12+6+4=22$ なので、$2\cdot22-9=35$ である(ex-fnc-divisor-sum の 2、図 2 の右)。
  2. $n=100$:$q=10$。
    $$ \sum_{k=1}^{10}\left[\frac{100}k\right]=100+50+33+25+20+16+14+12+11+10=291 $$
    なので、$d(1)+d(2)+\cdots+d(100)=2\cdot291-100=482$ である。$100$ 項の和を $10$ 項の和で求めた。

大学数学で見る:約数の個数の平均

thm-fnc-divisor-sum を使うと、約数の個数の平均がおよそ $\log n$ であることが分かる。計算は次のボックスで行う。

約数の個数の平均と Dirichlet の約数問題

$H_n=1+\dfrac12+\cdots+\dfrac1n$ とおく。prop-fnc-basic の 1 により $\dfrac nk-1<\left[\dfrac nk\right]\le\dfrac nk$ なので、$k=1,\dots,n$ について足し、thm-fnc-divisor-sum を使うと
$$ nH_n-n<\sum_{j=1}^nd(j)\le nH_n $$
である。$H_n$ は、$\dfrac1x$ のグラフの下の面積と階段の面積を比べることで
$$ \log(n+1)< H_n\le1+\log n $$
をみたす(調和級数 の命題「積分による上下の評価」。本記事では証明しない。面積で比べる考え方は 区分求積と積分の定義 と同じである)。2 つをあわせて $n$ で割ると、$1$ から $n$ までの整数の約数の個数の平均について
$$ \log(n+1)-1<\frac1n\sum_{j=1}^nd(j)\le1+\log n $$
となり、平均は $\log n$ との差が $1$ 程度の範囲に収まる。これは 約数 の命題「約数の個数の平均」と同じ評価である。
prop-fnc-hyperbola の形から出発して同じ評価を $k\le\sqrt n$ の部分だけで行うと、誤差がずっと小さくなり
$$ \sum_{j=1}^nd(j)=n\log n+(2\gamma-1)n+(\text{大きさが}\ \sqrt n\ \text{の定数倍以下の誤差}) $$
となる($\gamma=0.5772\cdots$ は Euler定数)。この方法を Dirichlet の双曲線法といい、証明は Cri24 §20.3 にある。たとえば $n=10^6$ では左辺は $13970034$、$n\log n+(2\gamma-1)n$ は約 $13969942$ で、差は約 $92$ である($\sqrt n=1000$ より小さい)。誤差の大きさを $\sqrt n$ よりどこまで小さく抑えられるかを Dirichletの約数問題 という。誤差は $n^{1/3}$ の定数倍で抑えられ、一方 $n^{1/4}$ の定数倍では抑えられないことが知られている(本記事では証明しない)。最良の指数はまだ分かっていない。

数学オリンピックの問題から

1968 年第 6 問:2 の累乗でふるい分ける

国際数学オリンピック(1968 年)第 6 問

すべての正の整数 $n$ について、次の和を求めよ。
$$ \sum_{k=0}^\infty\left[\frac{n+2^k}{2^{k+1}}\right]=\left[\frac{n+1}2\right]+\left[\frac{n+2}4\right]+\left[\frac{n+4}8\right]+\cdots $$
ここで $[x]$ は $x$ 以下の最大の整数を表す。
出典:国際数学オリンピック(1968 年)第 6 問 Oly68。筆者による和訳。答は $n$ である。

高校数学で解く

方針:第 $k$ 項が「$1$ 以上 $n$ 以下の整数のうち、素因数 $2$ をちょうど $k$ 個もつものの個数」であることを示し、$k$ についての和が $1$ から $n$ までの整数をちょうど 1 回ずつ数えることを使う。
段 1(和は実質有限)。$2^k>n$ なら $0<\dfrac{n+2^k}{2^{k+1}}<\dfrac{2^k+2^k}{2^{k+1}}=1$ なので、第 $k$ 項は $0$ である。よって和は有限個の項の和である。
段 2(第 $k$ 項の意味)。$1$ 以上 $n$ 以下の整数で、素因数 $2$ をちょうど $k$ 個もつもの($2^k$ で割り切れて $2^{k+1}$ で割り切れないもの)は、正の整数 $j$ を使って $2^k(2j-1)$ とただ 1 通りに書ける。条件 $2^k(2j-1)\le n$ を変形すると
$$ 2j-1\le\frac n{2^k}\iff j\le\frac{1}{2}\left(\frac n{2^k}+1\right)=\frac{n+2^k}{2^{k+1}} $$
である。thm-fnc-multiples の証明と同じく、このような正の整数 $j$ は $\left[\dfrac{n+2^k}{2^{k+1}}\right]$ 個ある。これが第 $k$ 項である。
段 3(足す)。$1$ 以上 $n$ 以下の整数 $m$ は、素因数 $2$ をちょうど何個もつかによって、$k=0,1,2,\dots$ のどれか 1 つの組に入る(素因数分解の一意性)。段 2 により第 $k$ 項は $k$ 番目の組の個数なので、全部の項の和は $1$ 以上 $n$ 以下の整数の個数 $n$ に等しい。$\square$

$n=10$ で確かめる

$n=10$ では、項は $\left[\dfrac{11}2\right]=5$、$\left[\dfrac{12}4\right]=3$、$\left[\dfrac{14}8\right]=1$、$\left[\dfrac{18}{16}\right]=1$、$\left[\dfrac{26}{32}\right]=0$、… で、和は $5+3+1+1=10$ である。組に分けると、奇数 $1,3,5,7,9$($5$ 個)、$2$ をちょうど $1$ 個もつ $2,6,10$($3$ 個)、ちょうど $2$ 個の $4$($1$ 個)、ちょうど $3$ 個の $8$($1$ 個)である。

大学数学で見ると

整数 $m$ に含まれる素因数 $2$ の個数を $v_2(m)$ と書き、$2$ 進付値という(p進付値)。段 2・3 は、$\{1,\dots,n\}$ を $v_2$ の値で分けて数えたことにほかならない。
同じ第 $k$ 項は、「$2^k$ の倍数の個数から $2^{k+1}$ の倍数の個数を引いたもの」とも数えられるので、
$$ \left[\frac{n+2^k}{2^{k+1}}\right]=\left[\frac n{2^k}\right]-\left[\frac n{2^{k+1}}\right] $$
が成り立つ。$x=\dfrac n{2^{k+1}}$ とおくと、これは $\left[x+\dfrac12\right]=[2x]-[x]$ という恒等式の特別な場合である(Hermiteの恒等式 の $2$ 項の場合。証明は 床関数 の記事にある)。この形で和をとると、$\left[\dfrac n1\right]-\left[\dfrac n2\right]+\left[\dfrac n2\right]-\left[\dfrac n4\right]+\cdots$ と隣どうしが打ち消し合い、$\left[\dfrac n1\right]=n$ だけが残る。「素因数 $p$ をちょうど $k$ 個もつ数」の数え方は、$n!$ に含まれる素因数の個数を与える Legendre の公式(階乗に含まれる素因数の個数)と同じ仕組みである。

さらに先へ

  • 双曲線の代わりに円 $x^2+y^2\le r^2$ の中の格子点を数えると、個数は円の面積 $\pi r^2$ に近い。誤差の大きさを問う問題は Gauss の円問題とよばれる(Gaussの円問題)。
  • 格子点の個数と面積の関係は、多角形については Pickの定理 で正確に表せる。
  • 約数の個数の和を $\sum_{k}\left[\frac nk\right]$ と書きかえたのは、「$d(j)=\sum_{k\mid j}1$ の和の順序を入れかえる」ことである。大学では、これを Dirichlet積 の計算として整理する。

関連項目

参考文献

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