交点数(微分位相幾何)(oriented intersection number)とは、向き付けられたコンパクトで境界のない $m$ 次元多様体 $M$ から多様体 $W$ への滑らかな写像 $f$ が、法束の向き付けられた余次元 $m$ の閉部分多様体 $N$ に横断的なとき、有限個の交点に微分の向きの符号 $\pm1$ をつけて足した整数 $I(f,N)$ である。これは $N$ の法束の Thom 類を $W$ に移した類 $\tau_N$ の値 $\langle f^*\tau_N,[M]\rangle$ に等しく、$f$ のホモトピーで変わらないので連続写像にも定まる。次元と余次元が等しく、自身と法束が向き付けられたコンパクトな部分多様体の自己交点数は法束の Euler 数であり、ベクトル束の Euler 数は零切断の自己交点数として、横断的な切断の零点の符号つきの個数になる。
向き付けられたコンパクトで境界のない多様体 $M$ からの滑らかな写像 $f\colon M\to W$ が、$W$ の閉部分多様体 $N$ に横断的に交わり、$N$ の余次元が $\dim M$ に等しいとき、交点の逆像 $f^{-1}(N)$ は有限集合になる。$N$ の法束が向き付けられていれば、各交点に、微分が $M$ の向きと $N$ の法方向の向きを合わせるかどうかで $\pm1$ の局所符号を与え、それを足したものが交点数 $I(f,N)$ である。交点の個数そのものは $f$ を少し動かすだけで変わるが、符号をつけた和は変わらない。
この不変性の理由は、交点数がコホモロジーの値として書けることにある。$N$ の法束の Thom 類を管状近傍と切除で $W$ へ運ぶと、類 $\tau_N\in H^m(W;\mathbb{Z})$($m=\dim M$)が得られ、
$$
I(f,N)=\langle f^*\tau_N,[M]\rangle
$$
が成り立つ。右辺は $f$ のホモトピー類だけで決まるので、交点数はホモトピーで変わらず、連続写像にも定まる。とくに、$N$ がコンパクトで、$N$ 自身と法束が向き付けられ、次元と余次元が等しいとき、$N$ 自身の自己交点数は法束の Euler 数であり、ベクトル束の零切断の自己交点数は Euler類 の Euler 数である。
代数幾何学では、射影多様体の因子の交わりを重複度込みで数える交叉数を、層の Euler 標数の交代和として定義する。微分位相幾何学の交点数は、それとは別に、横断的な交点を向きの符号つきで数える。コンパクト複素多様体からの正則写像が閉複素部分多様体に横断的なときは、どの交点の局所符号も $+1$ になり、交点数は交点の個数に一致する(例の節)。
この記事では、局所符号の和が Thom 類の値に等しいことを完全に証明し、ホモトピー不変性、交換の符号 $(-1)^{mn}$、自己交点数と Euler 数の関係を導く。例として、複素射影空間の相補的な次元の線形部分空間の交点数が $1$ であること、$\mathbb{CP}^n\subset\mathbb{CP}^{2n}$ の法束の Euler 数が $1$ であることを示す。
多様体は Hausdorff で第 2 可算な境界のない $C^\infty$ 級多様体(可微分多様体)とし、部分多様体は埋め込まれた部分多様体とする(横断性定理 と同じ)。ホモロジーとコホモロジーは整数係数の特異(コ)ホモロジーで、$H_m(X\,|\,A):=H_m(X,X\setminus A)$ と書く。向きは滑らかな向きと位相的な向きを 向き付け可能多様体 の命題「滑らかな向きと位相的な向きの一致」で同一視し、向き付けられた多様体 $M$ の点 $x$ の局所的な向きを $\mu_x\in H_m(M\,|\,x)$ と書く。$M$ がコンパクトなら、基本類 $[M]$ はすべての $x$ で $\mu_x$ に制限される類である(基本類 の定義「基本類」)。
$N\subset W$ を閉部分多様体とし、その法束を $\nu_N:=TW|_N/TN$(法束 の定義「法束」)、$y\in N$ での商写像を $q_y\colon T_yW\to\nu_y=T_yW/T_yN$ と書く。$N$ の法束の向きとは、ベクトル束 $\nu_N$ の向き(Euler類 の定義「ベクトル束の向き」)のことである。$W$ と $N$ がともに向き付けられているときは、$T_yN$ の正の基底 $(b_1,\dots,b_k)$ と $\nu_y$ の元の代表 $\tilde c_j\in T_yW$ について $(b_1,\dots,b_k,\tilde c_1,\dots,\tilde c_r)$ が $T_yW$ の正の基底になるとき $(q_y\tilde c_1,\dots,q_y\tilde c_r)$ を正とする向きを、$W$ と $N$ の向きから定まる法束の向きとよぶ(代表を取り替えても $\tilde c_j$ に $T_yN$ の元が足されるだけなので、行列式は変わらない)。交点数に使うのは法束の向きだけで、$W$ や $N$ の向きは要らない。
以下 $m\ge1$ とし、次を標準の設定とよぶ:$M$ は向き付けられたコンパクトで境界のない $m$ 次元多様体、$W$ は多様体、$N\subset W$ は余次元 $m$ の閉部分多様体で法束が向き付けられている。
$f\colon M\to W$ を $N$ に横断的な滑らかな写像とする(横断性定理 の定義「横断性」)。$x\in f^{-1}(N)$、$y=f(x)$ では $df_x(T_xM)+T_yN=T_yW$ なので、線形写像 $q_y\circ df_x\colon T_xM\to\nu_y$ は全射であり、両辺の次元はともに $m$ だから同型である。また 横断性定理 の定理「横断的な逆像は部分多様体」により、$f^{-1}(N)$ は $M$ の $0$ 次元の部分多様体で閉集合である。コンパクトな $M$ の離散な閉集合なので、$f^{-1}(N)$ は有限集合である。
標準の設定で、$f\colon M\to W$ を $N$ に横断的な滑らかな写像とする。$x\in f^{-1}(N)$ について、同型 $q_{f(x)}\circ df_x\colon T_xM\to\nu_{f(x)}$ が向きを保つとき $\varepsilon_x(f,N):=+1$、逆にするとき $\varepsilon_x(f,N):=-1$ とおき、これを $x$ での局所符号という。有限和
$$
I(f,N):=\sum_{x\in f^{-1}(N)}\varepsilon_x(f,N)
$$
を $f$ と $N$ の交点数という。$M$ が $W$ のコンパクトな部分多様体で $f$ が包含写像のときは $I(M,N)$ と書く。
$N$ が 1 点 $\{y\}$ で $W$ が向き付けられた $m$ 次元多様体なら、$\nu_y=T_yW$ に $W$ の向きを入れると $\varepsilon_x(f,\{y\})=\operatorname{sgn}\det df_x$ であり、$I(f,\{y\})$ は正則値 $y$ での符号つきの個数である。$W$ が連結なら、これは $f$ の写像度に等しい(固有写像の写像度 の定理「正則値での符号つきの数え上げ」)。交点数は写像度の一般化である。
一般の多様体の閉部分多様体 $N\subset W$ は管状近傍をもつ:$N$ 上の滑らかなベクトル束 $\pi\colon E\to N$ と、$E$ から $N$ を含む開集合 $U\subset W$ の上への微分同相写像 $\theta$ で、零切断 $s_0$ について $\theta(s_0(y))=y$ となるものがある(Hir76 Theorem 5.2、p. 110。管状近傍定理 の節「補足」。この記事では証明しない)。
上の $\theta\colon E\to U$ について、$y\in N$ のファイバー $E_y$ を零点 $0_y$ での $E$ の接空間の部分空間(ファイバー方向の接ベクトル)とみなすと、
$$
\lambda_y\colon E_y\to\nu_y,\qquad v\mapsto q_y\bigl(d\theta_{0_y}(v)\bigr)
$$
は線形同型で、これらはベクトル束の同型 $\lambda\colon E\to\nu_N$ を与える。
要点:$d\theta_{0_y}$ は同型で、零切断の接空間を $T_yN$ の上へ写すので、ファイバー方向を $T_yN$ の補空間へ写す。
局所自明化 $E|_V\cong V\times\mathbb{R}^r$ で見ると $T_{0_y}E=T_{0_y}(s_0(N))\oplus E_y$ である。$\theta\circ s_0$ は包含写像 $N\hookrightarrow W$ なので、$d\theta_{0_y}$ は $T_{0_y}(s_0(N))=ds_0(T_yN)$ を $T_yN$ の上へ写す。$\theta$ は微分同相写像だから $d\theta_{0_y}$ は同型で、$d\theta_{0_y}(E_y)$ は $T_yN$ の補空間になる。よって $\lambda_y$ は単射で、$\dim E_y=\dim W-\dim N=\dim\nu_y$ から同型である。$N$ のスライス座標と $E$ の局所自明化で書くと、$\lambda_y$ の表現行列は $\theta$ の偏微分を並べたもので $y$ について連続なので、$\lambda$ はベクトル束の同型である。$\square$
以下、$\nu_N$ の向きを $\lambda$ で $E$ に移し、$E$ を向き付けられたベクトル束とみる。$E$ の Thom 類を $u_E\in H^m(E,E_0)$($E_0$ は零でないベクトルの全体)と書く(Euler類 の定理「Thom 類の存在と一意性」。各ファイバー $V$ への制限は、$V$ の向きの定める生成元 $\mu_V\in H_m(V\,|\,0)$ と $\langle u_V,\mu_V\rangle=1$ になる生成元 $u_V$ である)。
$C:=W\setminus U$ は閉集合で、開集合 $W\setminus N$ に含まれる。よって切除(特異コホモロジー の定理「Eilenberg–Steenrod の公理」の (3))により、制限 $\rho\colon H^m(W,W\setminus N)\to H^m(U,U\setminus N)$ は同型である。また $\theta$ は対の同相写像 $(E,E_0)\to(U,U\setminus N)$ である($\theta$ は全単射で零切断を $N$ に写す)。
標準の設定で管状近傍 $\theta\colon E\to U$ を 1 つ固定する。$\rho(u_N)=(\theta^{-1})^*u_E$ となる類 $u_N\in H^m(W,W\setminus N)$ をとり、その $H^m(W)$ での像を $\tau_N$ と書く。
$\tau_N$ は管状近傍の選び方を使って定めたが、$M$ の基本類との値 $\langle f^*\tau_N,[M]\rangle$ が選び方によらないことは、主定理とその系から従う(def-inm-continuous の後)。de Rham コホモロジーで同じ役割を果たすのが 閉部分多様体のPoincaré双対 であり、同記事の定理「閉 Poincaré 双対は法束の Thom 形式で代表される」は、それが法束の Thom 形式を $0$ で延ばしたものであることを述べている。
標準の設定で、$f\colon M\to W$ を $N$ に横断的な滑らかな写像とし、$\tau_N$ を def-inm-class の類とする。このとき
$$
I(f,N)=\langle f^*\tau_N,[M]\rangle
$$
が成り立つ。
$f^{-1}(N)=\{x_1,\dots,x_k\}$、$y_i:=f(x_i)$、$Z:=f^{-1}(N)$ とする($k=0$ もありうる)。
第 1 段:相対類への持ち上げ.$f(M\setminus Z)\subset W\setminus N$ なので、$f$ は対の写像 $(M,M\setminus Z)\to(W,W\setminus N)$ である。包含 $j_M\colon(M,\emptyset)\to(M,M\setminus Z)$、$j_W\colon(W,\emptyset)\to(W,W\setminus N)$ について $f\circ j_M=j_W\circ f$ なので、$f^*\tau_N=f^*j_W^*u_N=j_M^*f^*u_N$ であり、
$$
\langle f^*\tau_N,[M]\rangle=\langle f^*u_N,(j_M)_*[M]\rangle .
$$
第 2 段:交点ごとへの切除.各 $y_i$ について、$N$ の中の開近傍 $V_i\ni y_i$ を、$\mathbb{R}^{\dim N}$ の開球と微分同相で、その上で $E$ が向きを保って自明化されるようにとる。$\theta(\pi^{-1}(V_i))$ は $y_i$ の開近傍なので、$x_i$ の開近傍 $U_i$ を、互いに交わらず、$f(U_i)\subset\theta(\pi^{-1}(V_i))$ となるようにとれる。$M\setminus\bigcup_iU_i$ は開集合 $M\setminus Z$ に含まれる閉集合なので、切除により、包含 $\iota_i\colon(U_i,U_i\setminus\{x_i\})\to(M,M\setminus Z)$ を並べた写像
$$
\bigoplus_{i=1}^kH_m(U_i\,|\,x_i)\xrightarrow{\ \cong\ }H_m(M\,|\,Z)
$$
は同型である(特異単体の像は連結なので、$\bigcup_iU_i$ の単体はどれか 1 つの $U_i$ に入る)。$H_m(M\,|\,Z)\to H_m(M\,|\,x_l)$ と合成すると、$i\ne l$ の成分は $U_i\subset M\setminus\{x_l\}$ により $H_m(U_i,U_i)=0$ を経由して $0$ になり、$i=l$ の成分は切除の同型 $H_m(U_l\,|\,x_l)\cong H_m(M\,|\,x_l)$ になる。$(j_M)_*[M]$ は $H_m(M\,|\,x_l)$ で $\mu_{x_l}$ に制限されるので、$\mu_{x_i}$ に対応する元を $\mu^{U_i}_{x_i}\in H_m(U_i\,|\,x_i)$ と書くと $(j_M)_*[M]=\sum_i(\iota_i)_*\mu^{U_i}_{x_i}$ である。よって
$$
\langle f^*u_N,(j_M)_*[M]\rangle=\sum_{i=1}^k\bigl\langle (f\circ\iota_i)^*u_N,\ \mu^{U_i}_{x_i}\bigr\rangle .
$$
$k=0$ なら $(j_M)_*[M]\in H_m(M,M)=0$ で、両辺とも $0$ である。
第 3 段:自明化での計算.$i$ を固定して添字を省き、$x=x_i$、$y=y_i$、$V=V_i$ と書く。$f\circ\iota$ は対の写像 $(U_i,U_i\setminus\{x\})\to(U,U\setminus N)\to(W,W\setminus N)$ と分解し、後半の制限は $u_N$ を $\rho(u_N)=(\theta^{-1})^*u_E$ に写す。$g:=\theta^{-1}\circ f|_{U_i}\colon(U_i,U_i\setminus\{x\})\to(E|_V,(E|_V)_0)$ とおくと、各項は $\langle g^*u_E,\mu^{U_i}_x\rangle$ である。向きを保つ自明化 $h\colon E|_V\to V\times\mathbb{R}^m$ をとり、$\omega:=u_{\mathbb{R}^m}$ を標準の向きの生成元とする。$V$ は可縮なので、対 $V\times(\mathbb{R}^m,\mathbb{R}^m_0)$ は $\{y\}\times(\mathbb{R}^m,\mathbb{R}^m_0)$ に変形収縮し、1 本のファイバーへの制限は $H^m$ の同型である。$(h^{-1})^*u_E$ と $\mathrm{pr}_2^*\omega$ はどちらもファイバーへの制限が $\omega$ なので、$(h^{-1})^*u_E=\mathrm{pr}_2^*\omega$ である。よって $\varphi:=\mathrm{pr}_2\circ h\circ g\colon U_i\to\mathbb{R}^m$ とおくと
$$
\langle g^*u_E,\mu^{U_i}_x\rangle=\langle\varphi^*\omega,\mu^{U_i}_x\rangle=\langle\omega,\varphi_*\mu^{U_i}_x\rangle .
$$
$\varphi$ は滑らかで、$\varphi^{-1}(0)=U_i\cap f^{-1}(N)=\{x\}$ である。$d\varphi_x$ が可逆なら、固有写像の写像度 の補題「座標での局所写像度」(行き先を標準の向きの $\mathbb{R}^m$ とする)により $\varphi_*\mu^{U_i}_x=\operatorname{sgn}\det d\varphi_x\cdot\mu_{\mathbb{R}^m}$ である。ここで $\mu_{\mathbb{R}^m}\in H_m(\mathbb{R}^m\,|\,0)$ は標準の向きの生成元で、$\langle\omega,\mu_{\mathbb{R}^m}\rangle=1$ である。したがって各項は $\operatorname{sgn}\det d\varphi_x$ に等しい。
第 4 段:微分と局所符号.$A:=d(\mathrm{pr}_2\circ h)_{0_y}\circ(d\theta_{0_y})^{-1}\colon T_yW\to\mathbb{R}^m$ とおくと、連鎖律により $d\varphi_x=A\circ df_x$ である。$\mathrm{pr}_2\circ h$ は零切断の上で $0$ なので、$d(\mathrm{pr}_2\circ h)_{0_y}$ は零切断の接空間の上で $0$ であり、lem-inm-tube の証明のとおり $d\theta_{0_y}$ は零切断の接空間を $T_yN$ の上へ写すから、$A$ は $T_yN$ の上で $0$ である。よって $A=\bar A\circ q_y$ となる線形写像 $\bar A\colon\nu_y\to\mathbb{R}^m$ がある。$v\in E_y$ については、$h$ がファイバーの上で線形同型 $h_y\colon E_y\to\mathbb{R}^m$ なので $A(d\theta_{0_y}(v))=h_y(v)$ であり、一方 $q_y(d\theta_{0_y}(v))=\lambda_y(v)$ である。したがって $\bar A\circ\lambda_y=h_y$、すなわち $\bar A=h_y\circ\lambda_y^{-1}$ で、$h_y$ も $\lambda_y$ も向きを保つ。以上から
$$
d\varphi_x=h_y\circ\lambda_y^{-1}\circ\bigl(q_y\circ df_x\bigr)
$$
であり、$q_y\circ df_x$ は同型なので $d\varphi_x$ は可逆で、$\operatorname{sgn}\det d\varphi_x=\varepsilon_x(f,N)$ である。第 1〜3 段とあわせて $\langle f^*\tau_N,[M]\rangle=\sum_i\varepsilon_{x_i}(f,N)=I(f,N)$ を得る。$\square$
証明のとおり、各交点の寄与は、交点の小さな近傍で $f$ を法方向へ射影した写像の局所写像度であり、横断性はその微分が可逆であることを保証している。Euler類 の定理「零点の指数の和と Euler 数」の証明も同じ形の局所化であり、この定理は零切断を一般の閉部分多様体に替えたものにあたる(cor-inm-zero-section)。
標準の設定で、$f,g\colon M\to W$ を $N$ に横断的な滑らかな写像とする。
要点:$f^*\tau_N$ はホモトピーで変わらず、$W\setminus N$ を経由すれば $0$ になる。
1:特異コホモロジーのホモトピー不変性(特異コホモロジー の定理「ホモトピー不変性」)により $f^*\tau_N=g^*\tau_N$ なので、thm-inm-main から両辺は等しい。2:$f$ が $h\colon M\to W\setminus N$ にホモトピックとする。$j_W\circ h$ は対 $(W\setminus N,W\setminus N)$ を経由し、$H^m(W\setminus N,W\setminus N)=0$ なので $h^*\tau_N=h^*j_W^*u_N=0$ である。よって $f^*\tau_N=h^*\tau_N=0$ で、thm-inm-main から $I(f,N)=0$ である。$\square$
この系により、交点数は連続写像に対しても定まる。
標準の設定で、連続写像 $f\colon M\to W$ の交点数を $I(f,N):=\langle f^*\tau_N,[M]\rangle$ と定める。
任意の連続写像 $f$ は滑らかな写像にホモトピックであり(Whitneyの近似定理 の定理「多様体への連続写像は滑らかな写像にホモトピック」)、滑らかな写像は $N$ に横断的な滑らかな写像にホモトピックである(横断性定理 の定理「横断性定理」)。そのような $g$ について、特異コホモロジーのホモトピー不変性と thm-inm-main により $I(f,N)=\langle g^*\tau_N,[M]\rangle=I(g,N)$ であり、右辺は局所符号の和なので管状近傍の選び方によらない。したがって def-inm-continuous の値は管状近傍によらず、ホモトピーで変わらず、$N$ に横断的な滑らかな写像では局所符号の和と一致する。この定義は Hir76 Ch. 5 §2(p. 132)の、横断的な滑らかな代表による定義と同じものである。
$W$ を向き付けられた $(m+n)$ 次元多様体($m,n\ge1$)、$M,N\subset W$ を横断的に交わる向き付けられたコンパクトな部分多様体で $\dim M=m$、$\dim N=n$ とし、両者の法束には $W$ の向きと各自の向きから定まる向きを入れる。このとき
$$
I(M,N)=(-1)^{mn}I(N,M).
$$
要点:交点ごとに、$T_xM$ と $T_xN$ の正の基底を並べる順序の違いが符号 $(-1)^{mn}$ を生む。
$M$、$N$ はコンパクトなので $W$ の閉集合であり、包含写像は横断的だから、両辺は def-inm-main で定まる。$x\in M\cap N$ では $T_xM+T_xN=T_xW$ で次元の和が $m+n$ なので、$T_xW=T_xM\oplus T_xN$ である。$T_xM$、$T_xN$ の正の基底を $a=(a_1,\dots,a_m)$、$b=(b_1,\dots,b_n)$ とし、$T_xW$ の基底 $c$ について、正の基底なら $\sigma(c)=+1$、そうでなければ $-1$ と書く。$N$ の法束の向きの定め方から、$q_x(a_1),\dots,q_x(a_m)$ が $\nu_x$ の正の基底であることは $\sigma(b,a)=+1$ と同値なので、$\varepsilon_x(M,N)=\sigma(b,a)$ である。同様に $\varepsilon_x(N,M)=\sigma(a,b)$ である。$(b,a)$ を $(a,b)$ に並べ替えるには、$a$ の $m$ 個の元をそれぞれ $b$ の $n$ 個の元と入れ替えればよいので、$\sigma(b,a)=(-1)^{mn}\sigma(a,b)$ である。交点について和をとればよい。$\square$
法束に向きがなくても、$\mathbb{Z}/2$ 係数の Thom 類はつねに存在する(Hat02 Theorem 4D.10、p. 442)。$M$ の向きの代わりに $\mathbb{Z}/2$ 係数の基本類を使い、上の構成と証明の係数を $\mathbb{Z}/2$ に替えると、横断的な交点の個数の偶奇は、同じ構成で得た $\mathbb{Z}/2$ 係数の類と $\mathbb{Z}/2$ 係数の基本類との値に等しく、ホモトピーで変わらないことが同じ議論で分かる(Hir76 Ch. 5 §2、p. 133 の 2 を法とする交点数)。この記事では細部を繰り返さない。整数の交点数には法束の向きが欠かせない(反例の節の表の 3 行目)。
$M$ が $W$ の次元と余次元の等しいコンパクトな部分多様体なら、包含写像 $i_M$ は $M$ 自身に横断的でない($di_x(T_xM)+T_xM=T_xM\ne T_xW$)。それでも、$M$ と法束が向き付けられていれば def-inm-continuous により $I(i_M,M)$ は定まり、法束の Euler 数になる。
$N\subset W$ を向き付けられたコンパクトな $m$ 次元の部分多様体で余次元が $m$ のものとし、法束 $\nu_N$ を向き付ける。包含写像を $i_N\colon N\to W$ とすると
$$
I(i_N,N)=\langle e(\nu_N),[N]\rangle .
$$
要点:$i_N=\theta\circ s_0$ で、$\tau_N$ を $\theta$ で引き戻すと $E$ の Thom 類の $H^m(E)$ での像になるので、$i_N^*\tau_N$ は Euler 類の定義そのものである。
$N$ はコンパクトなので閉部分多様体であり、標準の設定($M=N$)が成り立つ。$j_U\colon(U,\emptyset)\to(U,U\setminus N)$ を包含とすると、$\tau_N$ の $H^m(U)$ への制限は $j_U^*\rho(u_N)=j_U^*(\theta^{-1})^*u_E$ なので、これを $\theta$ で引き戻すと $u_E|_E\in H^m(E)$ になる。$i_N=\theta\circ s_0$ だから、Euler類 の定義「Euler 類と Euler 数」により $i_N^*\tau_N=s_0^*(u_E|_E)=e(E)$ である。$\lambda\colon E\to\nu_N$ は向きを保つ同型なので、$(\lambda^{-1})^*u_E$ はどのファイバーへの制限も向きの定める生成元であり、Thom 類の一意性から $\nu_N$ の Thom 類である。零切断どうしは $\lambda$ で対応するので $e(E)=e(\nu_N)$ であり、$I(i_N,N)=\langle e(\nu_N),[N]\rangle$ を得る。$\square$
ベクトル束の零切断に当てると、Euler 数が横断的な切断の零点の符号つきの個数として得られる。
$M$ を向き付けられたコンパクトで境界のない $m$ 次元多様体、$E\to M$ を向き付けられた階数 $m$ の滑らかなベクトル束とし、零切断 $s_0$ の像 $Z:=s_0(M)\subset E$ の法束を $E$ と同一視して向き付ける(法束 の例「対角線と零切断」の 2)。
要点:$E$ 自身が零切断の管状近傍なので $\tau_Z$ は Thom 類の像であり、1 は Euler 数の定義そのもの、2 は線形なホモトピー $t\,s$ と thm-inm-main による。
恒等写像 $\theta=\mathrm{id}_E$ は、$E$ を $s_0$ で $Z$ 上の束とみたときの $Z$ の管状近傍であり、lem-inm-tube の $\lambda_x$ はファイバー方向の接ベクトルの類をとる写像、すなわち 法束 の例の同一視 $\nu_Z\cong E$ である。よって $u_Z=u_E$、$\tau_Z=u_E|_E$ である。1:$I(s_0,Z)=\langle s_0^*(u_E|_E),[M]\rangle=\langle e(E),[M]\rangle$ である。2:$(x,t)\mapsto t\,s(x)$ は $s_0$ から $s$ へのホモトピーなので、def-inm-continuous の後の議論と thm-inm-main により $\langle e(E),[M]\rangle=I(s,Z)=\sum_x\varepsilon_x(s,Z)$ である。thm-inm-main の証明の第 4 段を $\theta=\mathrm{id}_E$ として読むと、$\varphi=\mathrm{pr}_2\circ h\circ s$ は座標で $F$ であり、$\varepsilon_x(s,Z)=\operatorname{sgn}\det d\varphi_x=\operatorname{sgn}\det dF_x$ で、$dF_x$ は可逆である。$\square$
2 の各項は、Poincaré–Hopfの定理 の補題「非退化な零点の指数」により、非退化な零点での切断の指数に等しい。したがって 2 は、Euler類 の定理「零点の指数の和と Euler 数」の零点がすべて非退化な場合を交点数の言葉で述べたものである。たとえば同記事の例「球面の接束」により、$TS^m$ の零切断の自己交点数は $1+(-1)^m$ である。2 が使える切断は必ずある。
$M$ をコンパクトな多様体、$E\to M$ を階数 $r$ の滑らかなベクトル束とする。有限個の滑らかな切断 $e_1,\dots,e_L$ で、各点 $x$ で $e_1(x),\dots,e_L(x)$ が $E_x$ を張るものがある。そのような切断について、$s_a:=\sum_ja_je_j$ が零切断に横断的でない $a\in\mathbb{R}^L$ の全体は測度零集合である。
要点:有限個の切断の係数を動かす族は、係数の方向だけでファイバー全体を張るので零切断に横断的であり、パラメータ族の横断性定理が使える。
各点 $x$ に、$E$ が自明化される開近傍 $U_x$ と、台が $U_x$ のコンパクト集合に含まれ $\rho_x(x)>0$ となる滑らかな関数 $\rho_x\colon M\to[0,1]$ をとる。$M$ はコンパクトなので、有限個の $\{\rho_{x_i}>0\}$ が $M$ を覆う。$U_{x_i}$ の上の枠 $\sigma_{i1},\dots,\sigma_{ir}$ について、$\rho_{x_i}\sigma_{ij}$ を $U_{x_i}$ の外で $0$ と延ばすと滑らかな切断になり、各点 $x$ ではある $i$ で $\rho_{x_i}(x)>0$ なので、これらは $E_x$ を張る。これらを $e_1,\dots,e_L$ とする。$\Phi\colon M\times\mathbb{R}^L\to E$、$\Phi(x,a):=\sum_ja_je_j(x)$ を考える。$\Phi(x,a)=0_x$ となる点で、$a$ 方向の微分は $b\mapsto\sum_jb_je_j(x)$ をファイバー方向の接ベクトルとみたものなので、その像は $E_x$ 全体である。$T_{0_x}E$ は零切断の接空間と $E_x$ の直和なので $\Phi$ は零切断に横断的であり、横断性定理 の定理「パラメータ族の横断性定理」から結論が従う。$\square$
$W$ を複素多様体、$N\subset W$ を複素余次元 $d$ の閉複素部分多様体、$M$ を複素次元 $d\ge1$ のコンパクト複素多様体、$f\colon M\to W$ を $N$ に横断的な正則写像とする。$M$ と各 $\nu_y=T_yW/T_yN$(複素ベクトル空間)に複素構造の向き(複素基底 $v_1,\dots,v_d$ について $(v_1,iv_1,\dots,v_d,iv_d)$ を正とする向き)を入れると、すべての交点で $\varepsilon_x(f,N)=+1$ であり、$I(f,N)$ は $f^{-1}(N)$ の点の個数である。
要点:複素線形な同型の実の行列式は正である。
複素構造の向きは複素基底の選び方によらない(基底の取り替えは複素線形で、向き付け可能多様体 の補題「複素線形写像の実の行列式」により実の行列式が正)。$q_y\circ df_x$ は複素線形な同型なので、複素基底に付随する正の基底で表すと、同じ補題により実の行列式は $\lvert\det\rvert^2>0$ である。よって $\varepsilon_x(f,N)=+1$ である。$\square$
$\mathbb{C}^{n+1}$ の標準基底を $e_0,\dots,e_n$ とし、部分空間 $A$ の射影化を $\mathbb{P}(A)\subset\mathbb{CP}^n$ と書く(複素射影空間)。向きはすべて複素構造の向きとする。
要点:1 はアフィン座標で相補的な座標部分空間になることと ex-inm-complex、$GL_{n+1}(\mathbb{C})$ が弧状連結であることによる。2 は cor-inm-self で自己交点数に直し、座標の入れ替えで $L$ を $L$ と 1 点で交わる位置へ動かす。
1:$\mathbb{P}(A)\cap\mathbb{P}(B)=\mathbb{P}(A\cap B)=\{[e_k]\}$ である。$z_k\ne0$ のアフィン座標 $w_j=z_j/z_k$($j\ne k$)は正則な局所座標で、そこで $\mathbb{P}(A)=\{w_j=0\ (j>k)\}$、$\mathbb{P}(B)=\{w_j=0\ (j< k)\}$ は相補的な座標部分空間なので、$[e_k]$ で接空間の和は全体であり、横断的に交わる。ex-inm-complex により $I(\mathbb{P}(A),\mathbb{P}(B))=1$ である。$g\in GL_{n+1}(\mathbb{C})$ について、$p(z):=\det((1-z)I+zg)$ は $p(0)=1$、$p(1)=\det g\ne0$ を満たす多項式なので零点は有限個であり、それを避けて $0$ から $1$ へ行く道 $\gamma$ がとれる。$g_t:=(1-\gamma(t))I+\gamma(t)g$ は $GL_{n+1}(\mathbb{C})$ の中の $I$ から $g$ への道で、$(p,t)\mapsto[g_t](p)$ は $i_{\mathbb{P}(A)}$ から $[g]\circ i_{\mathbb{P}(A)}$ へのホモトピーを与える。def-inm-continuous の値はホモトピーで変わらないので、$I([g]\circ i_{\mathbb{P}(A)},\mathbb{P}(B))=1$ である。
2:cor-inm-self により $\langle e(\nu_L),[L]\rangle=I(i_L,L)$ である。$g$ を $e_j\mapsto e_{2n-j}$ で定めると $[g](L)=\mathbb{P}(\langle e_n,\dots,e_{2n}\rangle)$ であり、1 と同じ構成の道 $g_t$ で $I(i_L,L)=I([g]\circ i_L,L)$ である。$[g]\circ i_L$ は $L$ から $[g](L)$ への双正則写像を経由する正則写像で、1($\mathbb{CP}^{2n}$、$k=n$ の場合)により $[g](L)$ は $L$ と 1 点 $[e_n]$ で横断的に交わる。よって ex-inm-complex により $I([g]\circ i_L,L)=1$ である。法束が自明なら Euler 類は $0$ である(Euler類 の命題「Euler 類の基本性質」の 1)。$\square$
写像 $g\colon M\to M$ のグラフと対角線の交点数と Lefschetz 数の関係は、Lefschetz不動点公式 の定理「対角線との交点数としての Lefschetz 数」で扱われている。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $f$ が $N$ に横断的(thm-inm-main) | $f(\theta)=(\cos\theta,1+\sin\theta)$、$M=S^1$、$W=\mathbb{R}^2$、$N$ は $x$ 軸 | 交点に $\pm1$ をつけた和が交点数になること |
| $M$ がコンパクト(cor-inm-homotopy) | $f(t)=(0,t)$、$M=\mathbb{R}$、$W=\mathbb{R}^2$、$N$ は $x$ 軸 | 局所符号の和がホモトピーで変わらないこと |
| 法束の向き(cor-inm-homotopy) | 開いた Möbius の帯 $W$ とその中心の円 $N$、$M=S^1$ | 交点に固定した法方向の向きで測った局所符号の和がホモトピーで変わらないこと |
| 余次元が $\dim M$(def-inm-main) | 単位球面 $S^2\subset\mathbb{R}^3$ の包含、$N=\{z=0\}$ | $f^{-1}(N)$ が有限集合であること |
| $M$ に境界がない(cor-inm-homotopy) | $f(t)=t-\tfrac12$、$M=[0,1]$、$W=\mathbb{R}$、$N=\{0\}$ | 局所符号の和がホモトピーで変わらないこと |
各行は、表の左の条件だけを満たさず、ほかの仮定は満たす。
1 行目:$f^{-1}(N)=\{-\pi/2\}$ で、そこでの速度 $(1,0)$ は $N$ に接するので $q\circ df=0$ であり、局所符号は定まらない。$f$ は $(\theta,s)\mapsto(\cos\theta,1+s+\sin\theta)$ で $N$ と交わらない写像にホモトピックなので、def-inm-continuous の交点数は $0$ であり、ただ 1 つの交点にどちらの符号をつけても一致しない。2 行目:$f$ は $N$ に $(0,0)$ だけで横断的に交わり、$\mathbb{R}$ の向き $\partial_t$ と法方向の向き $\partial_y$ で局所符号は $+1$ だが、$(t,s)\mapsto(0,(1-s)t+s)$ で $N$ と交わらない定数写像 $(0,1)$ にホモトピックである。5 行目も同様で、$(t,s)\mapsto(1-s)(t-\tfrac12)+s$ が定数写像 $1$ へのホモトピーである。4 行目:包含は $N$ に横断的(赤道の各点で接平面と $N$ の和は $\mathbb{R}^3$)だが、$f^{-1}(N)$ は赤道で有限集合でない。
$W:=\mathbb{R}\times(-1,1)/\sim$($(s,t)\sim(s+1,-t)$)、$N$ を $t=0$ の像とする。$N$ は閉部分多様体で余次元 $1$ だが、$\partial_t$ は $s\mapsto s+1$ で $-\partial_t$ に移るので、法束は向き付けられない。$0< \epsilon< 1$、$c\in\mathbb{R}$ について $F_c(x):=(x+c,\,-\epsilon\cos\pi x)$ とおくと $F_c(x+1)\sim F_c(x)$ なので、滑らかな写像 $f_c\colon\mathbb{R}/\mathbb{Z}\to W$ が定まり、$c\mapsto f_c$ は $f_0$ から $f_1$ へのホモトピーである。$f_c^{-1}(N)$ は $x=\tfrac12$ の 1 点で、$t$ 成分の微分 $\epsilon\pi\sin\pi x$ は $0$ でないので横断的である。交点 $p=[(\tfrac12,0)]$ の近くの座標 $(s,t)$ で法方向の向きを $\partial_t$ に固定する。$f_0$ は $x=\tfrac12$ の近くで $(x,-\epsilon\cos\pi x)$ なので $t$ が増える向きに $N$ を横切り、局所符号は $+1$ である。$f_1$ は $(x+1,-\epsilon\cos\pi x)\sim(x,\epsilon\cos\pi x)$ なので $t$ が減る向きに横切り、局所符号は $-1$ である。ホモトピックな 2 つの写像で値が $+1$ と $-1$ になるので、整数の交点数は定まらない。交点の個数の偶奇はどちらも $1$ である(rem-inm-mod2)。
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